腐食液を使用する超音波補助式エッチング
被加工物を化学的にエッチングする超音波エッチング装置が開示されている。この装置は、水溶液で少なくとも一部が満たされた外側タンクと、少なくとも一部が外側タンクの内部に配置されかつ上記水溶液と接している内側タンクであって、エッチング溶液で少なくとも一部が満たされた内側タンクと、上記内側タンクの口部に係合した蓋と、上記外側タンクに結合されており、上記内側タンクの中のエッチング溶液へ超音波エネルギーを付与する超音波変換器とを含む。被加工物をエッチングするためにこの装置を使用する方法もまた開示されている。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、被加工物を超音波により化学エッチングする方法、および本発明を実施するのに使用するシステムに関するものである。
【発明の背景】
【0002】
最近の幾つかの工業プロセスでは、材料を均一にエッチングすることが必要である。エッチングはこの材料に限定されてもよく、あるいはエッチングプロセスは、この材料がそれを通してエッチングされ、それによって下にある材料が露出するまで続けられてもよい。例えば、電子的、光学的あるいは光電子的な被加工物の製作のような多くの工業的用途では、エッチングプロセスは典型的に、被加工物が最終的に製造される精度に影響するため、エッチングステップは、被加工物の製作における重要な段階である。
【0003】
半導体チップの製作には大抵の場合、酸化、拡散、イオン注入、導電体および絶縁体の堆積、フォトリソブラフィおよびエッチングを含む100を超える処理ステップがある。さまざまな導電層および絶縁層が、ウェハーを覆って2〜3ミクロンの厚さまで均一に堆積される。重要な用途では、半導体処理設備の新規部品あるいは中古部品は、初期の機械加工あるいは製造のプロセスからのあるいはそれらの処理ステップからの残留汚染を除去するために、また、半導体ウェハー自体に類似しかつ再生されたその表面モルフォロジーを有する清浄度の水準を達成するために、組み付けおよび使用に先立って清浄化しなければならない。更にまた、多くのウェハーが処理された後に、半導体処理プロセスに使用された設備は、汚染状態あるいは堆積物堆積状態になり、それゆえ使用不能になる。
【0004】
例えば、エッチング機においては、ポリマーが、電極あるいはウェハー支持用チャックの外側周縁に電極とウェハーとの接触を妨げるほどの厚さになるまで堆積する。これは、電極上にポリマー堆積を起こさせるウェハーに起因する誤移送とともに、ウェハーにわたる不均一なエッチングの原因になる。7パーセントを超える不均一性は、幾つかの指定限界を超えるものであり、ひいてはウェハーにわたる側壁プロファイルの多様性に影響を及ぼす。加えて、設備のチャンバーにおける他の構成要素、例えば屋根/ドームおよびライナーもまた、ウェハーへの微粒子、金属不純物および有機不純物を付与するポリマーおよび汚染物質で被覆されている。それゆえ、もしそうなら設備のチャンバーにおける部品を分解して個々の部品を清浄化することが必要である。半導体デバイスの製造に使用される大抵の型の乾燥処理設備では、薄膜堆積およびエッチングのための高温、プラズマおよびガス状混合物の含まれるプロセスが利用される。これらの製造プロセスの間に、有機および無機の副産物が被加工物部分の表面に堆積される。
【0005】
被加工物をエッチングするための幾つかの装置およびデバイスが市販されているが、しかしながら、どれも理想的なものではない。図1には、半導体製作被加工物102を超音波によりエッチングするために使用された従来技術の代表的小規模装置100が示されている。酸性溶液110が内側容器104の中へ収納されて、外側容器130の中に保持された水溶液120を通して超音波により攪拌される。全体の装置は、エッチング反応が起きるときに水溶液および酸性溶液から放出されるガス140の捕獲のための排気フード150の内部に収容されている。濃酸あるいは超音波処理剤が含まれなかった初期エッチングプロセスにわたる進歩を表している一方で、装置100は、被加工物102を回転させるか、または安全な加工条件を作り出す機能をもたらさない。装置100は、ガスを収容するか、または無用の成分、例えば環境からの不純物および水溶液からのエーロゾルガスが、エッチングプロセスの間にエッチング溶液から入ってくるのを防止する特性も、あるいは揮発したエッチング溶液の分圧を増大させてエーロゾル損失あるいは揮発損失に起因するエッチング溶液の濃度変化を防止する特性も有していない。それにはまた、温度を調整するための加熱機構、プローブなども、また、エッチングプロセスにわたるより良好な制御のためにエネルギーを抑制しかつ拡散させるための超音波緩衝器も欠けている。
【0006】
図2に示された従来技術の装置200には2つのビーカー202および204が収容されており、これらのビーカーには、開口206を通してもたらされてビーカーの中へ溢れ、その後に音波処理タンク210の中へ溢れる脱イオン水が収容されている。この脱イオン水に超音波エネルギーをもたらすために、超音波処理変換器220が動力発振器220に接続されている。この装置には、最も重要なことに、酸を収容する機能、音波処理される被加工物を回転させる機能、加熱要素、および超音波拡散器を含む幾つかの望ましい特徴が欠けている。
【0007】
参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,199,563号では、従来技術の超音波処理器への適度な改良が、酸性溶液の中における被加工物を超音波処理するための回転機構を含めることによって加えられているが、それは、酸性ガスを収容するための手段、水溶液からの無用の汚染物質および/または回転機構の磨滅物質が酸性溶液に入るのを防止するための手段、酸性溶液の分圧を増大させる機能をもたらしたり、あるいはより安全な加工環境をもたらしたりすることはできない。
【0008】
必要であるのは、超音波攪拌の間に発生したガスを収容し、直近周囲環境へのエッチング溶液の曝露を最小限にしてエッチングプロセスの間に水溶液からの無用の汚染物質および/または回転機構の磨滅物質がエッチング溶液に入るのをその後に防止し、エッチング溶液の分圧を増大させて危険な蒸気の形成をそれらを液体状態に保つことで阻止する機能を有し、エッチング溶液の濃度を安定に保ち、より安全な加工環境をもたらす機能を有する方法および装置である。本発明は、半導体被加工物が効率的に清浄化されかつ再生利用されて製造コストを減少させるように、現在利用できるものよりも効率的であって汚染物質のない装置および方法をもたらすことで、これらの要求に合致するように設計されている。
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の1つの目的は、1つの態様では、被加工物を化学的にエッチングする超音波エッチング装置を提供することである。一実施形態では、化学物質は酸である。その代替として、化学物質は塩基である。この装置は、水溶液で少なくとも一部が満たされた外側タンクと、耐薬品性ポリマーを含んでいて少なくとも一部が外側タンクの内部に配置されかつ上記水溶液と接している内側タンクとを含む。内側タンクは、少なくとも10重量%の全酸性度あるいは全塩基度を有する少なくとも1リットルの酸性溶液あるいは塩基性溶液で少なくとも一部が満たされており、また、この内側タンクは、少なくとも側壁および基部を有するとともに上方口部を画成しており、かつ、被加工物を受け入れるものである。この装置にまた含まれているのは、上記内側タンクの上記口部に係合した蓋と、上記外側タンクに結合されていて内側タンクの中の酸性溶液へ超音波エネルギーを付与する超音波変換器とである。
【0010】
一実施形態では、蓋の重量によって、上記内側タンクの口部と上記蓋の下面との間に少なくとも一部封止が作り出される。関連した実施形態では、この一部封止は、エッチング溶液の上方におけるガスの分圧を増大させかつ/または化学溶液の成分の変化を引き起こす可能性のある化学ガスの漏れを防止するように作用する。
【0011】
本発明の別の実施形態では、この装置は、水溶液の温度を調整するための加熱要素を含む。
【0012】
更に別の実施形態では、この装置は、内側タンクの中に配置された被加工物と超音波変換器との間の相対運動を付与するように適合された機構を含む。この機構は、一実施形態では、蓋を通して延びておりかつ被加工物へ結合されたロッドを含む。
【0013】
もっと別の実施形態では、タンクの上方に位置決めされかつ水溶液およびエッチング溶液のうちの少なくとも一方から発生したガスを受け入れる排気フードが含まれている。
【0014】
更に別の実施形態では、水溶液の内部に、酸性溶液へ付与された音波エネルギーを抑制しかつ/または拡散させるための超音波緩衝器が定置されている。
【0015】
本発明の一実施形態では、超音波変換器は、水溶液の外側に定置されているとともに動力発振器へ操作可能に接続されている。
【0016】
本発明の別の実施形態では、超音波エネルギー、温度、温度ムラおよび不純物濃度の1つ以上を監視するためのプローブがエッチング溶液の内部に定置されている。
【0017】
別の実施形態では、水溶液は濾過されて脱イオン水槽へ再循環される。
【0018】
エッチング溶液は基本的に静的なものであるのが好ましい。
【0019】
一実施形態では、内側タンクとエッチング溶液に接することが可能な回転機構の任意部分とは、フッ素樹脂および高密度ポリエチレンからなる群から選択された耐薬品性ポリマー材料を備える。
【0020】
別の実施形態では、内側タンクは、10ppb未満の浸出可能な金属性汚染物質と10ppm未満の浸出可能な陰イオン性および有機性の汚染物質とを生成させる。
【0021】
更に別の実施形態では、エッチング溶液は酸性であって、フッ化水素酸、硝酸および塩酸からなる群から選択された化学物質を含む。関連した実施形態では、この酸性溶液は、フッ化水素酸、硝酸および水が1:1:1の比で含まれるものである。その代替として、エッチング溶液は塩基性であって、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択された化学物質を含む。
【0022】
もっと別の実施形態では、水溶液の温度は約20℃から約50℃までに維持されている。
【0023】
更にもっと別の実施形態では、被加工物は、炭化ケイ素、石英、およびシリコンからなる材料の群から選択されている。
【0024】
本発明の一実施形態では、この機構は、上記基板をある軸を中心に回転させるための回転運動アクチュエーターを含む。関連した実施形態では、その軸は実質的に水平な軸である。その代替として、その軸は実質的に垂直な軸である。
【0025】
別の実施形態では、この機構は、上記内側タンクおよび/または上記超音波変換器を回転させるための回転運動アクチュエーターを含む。
【0026】
更に別の実施形態では、その蓋は、内側タンクの口部の断面と実質的に同じである断面を有する。
【0027】
もっと別の実施形態では、内側タンクの口部および蓋はそれぞれ、蓋の断面に対応している円形形状を有する。
【0028】
更に別の実施形態では、内側タンクの断面は、被加工物の断面と実質的に同じである。
【0029】
更にもっと別の実施形態では、内側タンクの口部は正方形、長方形、三角形、円あるいは楕円の形状を有する。
【0030】
この装置の内側タンクは、別の実施形態では、直方体、立方体あるいは円筒の形状を有する。
【0031】
したがって、本発明の別の目的は、1つの態様では、被加工物を超音波により化学的にエッチングする方法を提供することである。その方法を実施するのに関与したステップは、耐薬品性ポリマーを備える内面を有するとともに上方口部を画成しており、かつ、被加工物を受け入れる内側タンクであって、水溶液で少なくとも一部が満たされた外側タンクの内部に少なくとも一部が配置されている内側タンクを設けるステップと、少なくとも10%の全酸性度あるいは全塩基度を有する少なくとも1リットルのエッチング溶液で内側タンクを少なくとも一部を満たすステップと、被加工物をエッチング溶液の中へ浸漬するステップと、エッチング溶液を封入するために、かつ、エッチング溶液の化学濃度が実質的に同じものとして残るようにエッチング溶液の上方の分圧を増大させるために、内側タンクの口部を蓋で被覆するステップと、被加工物のエッチングを加速するために、外側タンクに結合された超音波変換器でエッチング溶液を超音波により攪拌するステップと、を含む。
【0032】
この方法の一実施形態では、蓋の重量によって、上記内側タンクの口部と上記蓋の下面との間に少なくとも一部封止が作り出される。
【0033】
別の実施形態では、この方法は、水溶液の温度を調整するための加熱要素を設けるステップを含む。
【0034】
更に別の実施形態では、この方法は、内側タンクの中に浸漬された被加工物と超音波変換器との間の相対運動を付与するように適合された機構を設けるステップを含む。
【0035】
もっと別の実施形態では、この機構は、蓋を通して延びておりかつ被加工物へ結合されたロッドを含む。
【0036】
もっと更に別の実施形態では、この方法は、タンクの上方に位置決めされかつ水溶液およびエッチング溶液のうちの少なくとも一方から発生したガスを受け入れる排気フードを設けるステップを更に含む。
【0037】
この方法は、一実施形態では、水溶液の内部に定置され、エッチング溶液へ付与された音波エネルギーを抑制しかつ/または拡散させるための超音波緩衝器を更に含む。
【0038】
別の実施形態では、超音波変換器は、水溶液の外側に定置されているとともに動力発振器へ操作可能に接続されている。
【0039】
更に別の実施形態では、この方法は、超音波エネルギー、温度、温度ムラおよび不純物濃度の1つ以上を監視するためにエッチング溶液の内部に定置されたプローブを設けるステップを更に含む。
【0040】
もっと別の実施形態では、水溶液は濾過されて脱イオン水槽へ再循環される。
【0041】
もっと更に別の実施形態では、エッチング溶液は基本的に静的なものである。
【0042】
内側タンクとエッチング溶液に接することが可能な回転機構の任意部分とは、一実施形態において、フッ素樹脂および高密度ポリエチレンからなる群から選択された耐薬品性ポリマー材料を含む。
【0043】
別の実施形態では、内側タンクは、10ppb未満の浸出可能な金属性汚染物質と10ppm未満の浸出可能な陰イオン性および有機性の汚染物質とを生成させる。
【0044】
更に別の実施形態では、エッチング溶液は、フッ化水素酸、硝酸および塩酸からなる群から選択された酸を備える。関連した実施形態では、エッチング溶液は、フッ化水素酸、硝酸および水が1:1:1の比で含まれるものである。
【0045】
更に別の実施形態では、エッチング溶液は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択された塩基を備える。関連した実施形態では、エッチング溶液は30%水酸化カリウムを備える。
【0046】
もっと更に別の実施形態では、水溶液の温度は約20℃から約50℃までに維持されている。
【0047】
被加工物は、一実施形態では、炭化ケイ素、石英あるいはシリコンであってよい。
【0048】
別の実施形態では、この機構は、上記基板をある軸を中心に回転させるための回転運動アクチュエーターを含む。
【0049】
更に別の実施形態では、その軸は実質的に水平な軸である。その代替として、別の実施形態によれば、その軸は実質的に垂直な軸である。
【0050】
一実施形態では、この機構は、上記内側タンクおよび/または上記超音波変換器を回転させるための回転運動アクチュエーターを備える。
【0051】
別の実施形態では、その蓋の断面は、内側タンクの口部の断面と実質的に同じである。
【0052】
更に別の実施形態では、内側タンクの口部および蓋はそれぞれ、蓋の断面に対応している円形形状を有する。
【0053】
もっと別の実施形態では、内側タンクの断面は被加工物の断面と実質的に同じである。
【0054】
本発明のこれらのそして他の目的および特徴は、本発明の次の詳細な説明を添付図面ととともに読むことで、より充分に認識される。
【発明の詳細な説明】
【0055】
I.定義
他に特に指示のない限り、本明細書の中で使用された技術用語および科学用語はすべて、それらが本発明の当業者によるものと同じ意味を有する。本発明は、説明された特定の方法論、プロトコル、および反応物質に限定されないと理解すべきであるが、その理由はこれらが変化するものであるからである。本明細書の中で引用されたすべての刊行物および特許は、本発明に関連して使用されることのある構成および方法論を説明しかつ開示する目的のために、参照として本明細書に特別に組み入れられる。
【0056】
本明細書の中で使用されたように、用語「エッチング」は、材料の選択的除去を言い、また、限定はされないが、清浄化、テキスチャリングおよび研磨を含む。
【0057】
「耐薬品性ポリマー」に関しては、ポリマー組成物を、被加工物をエッチングするのに充分な時間について高い酸性あるいは塩基性のモル濃度の溶液と接触して維持することができ、また、好ましくは、拡張された時間帯についてポリマーの分解を受けることなく溶液と接触して残すことができるということを意味している。
【0058】
本明細書の中で使用されるように、「超音波の」とは一般に、約18キロヘルツより高くかつ2メガヘルツを超えるまで延びる周波数範囲における音響攪乱を言う。
【0059】
本明細書の中で使用されたように、「被加工物」とは、製造、エッチング、テキスチャリング、あるいは超音波エネルギーを受けた液体の内部における清浄化操作を被る部品を言う。一例として、1つの被加工物は極めて小さい特徴を有する半導体ウェハーであり、他の実施例は、ガス配給用のプレート、ドーム/屋根あるいはウェハーチャックのような半導体プロセスチャンバー構成要素を含む。被加工物は、ディスクドライブ、半導体構成要素などを含む、コンピュータ産業における構成要素を大抵は画成している。
【0060】
本明細書の中で使用されたように、用語「蓋」は、タンクを少なくとも一部封止する閉鎖具として作用する任意の型の容器閉鎖用キャップ、カバー、ストッパー、プラグ、クラウン、トップ、プレートなどを容器の型の関数として含むように広く定義されている。
【0061】
用語「密閉封止」とは、2つの部材、例えばタンクの口部と蓋との間におけるガス密および液密である封止を言う。
【0062】
「清浄な」に関して、それは、耐薬品性ポリマー、例えばポリエチレンあるいはフルオロカーボンが10ppbを超える浸出可能な金属性汚染物質と10ppmを超える浸出可能な陰イオン性および有機性の汚染物質とを酸性溶液の中へ導入しないことを意味している。これらの汚染物質は、エッチング溶液と接触している材料の表面に存在する可能性があり、または、酸あるいは塩基によってタンクあるいは蓋の材料から浸出することがある。
【0063】
「化学的に不活性な」に関して、それは、エッチング溶液が耐薬品性ポリマーの化学的あるいは物理的な性質を実質的に変化させないことを意味している。
【0064】
「適合性のある」に関して、それは、エッチング溶液が材料の有孔率のような材料の特性と物理的に適合していることを意味している。換言すれば、化学試料は、その試料が、小さい分子寸法と高い移動度とに起因して、材料の壁における顕微鏡的細孔を通して移動することのできる機能を有するときには、(それがその材料に関して化学的に不活性であるときであっても)その材料とは非適合性のものであるとみなすことができる。
【0065】
II.発明の装置および方法
本発明は、1つの態様では、被加工物を超音波により化学的にエッチングする装置および一体型システムを提供する。以下に詳しく説明されるように、この装置が、直近の周囲環境へのエッチング溶液の曝露を最小化してこれらの溶液から入ってくる無用の汚染物質をこの装置から減少させること、危険な蒸気の形成を阻止するためにエッチング溶液の分圧を制御可能に調節する機能、被加工物をスケールアップ処理する機能、より安全な加工環境をもたらすとともにエッチング溶液の化学組成の変化を防止する機能を含む、従来技術に勝る幾つかの利点を提供することが発見されている。以下で考慮されているのはこの装置の構成要素である。
【0066】
図3aは、本発明の一実施形態による装置300を示している。装置300には、耐薬品性ポリマーから形成されたかあるいはそれで被覆された2つの内側タンク302および304が含まれている。耐薬品性ポリマーには、Nalgene, Inc. (米国におけるVWRによって供給された; www. nalgene. com) および Norton Performance Plastics Corporation (Wayne, N.J.) のような供給源から市販されている高密度炭化水素ポリマー(例えば高密度ポリエチレン)およびDuPont de Nemours, Inc. (Wilmington, Del.) からTeflon(www. teflon. com) の商品名で市販されているフルオロカーボンポリマー(例えば、ペルフルオロアルコキシ、フッ素化エチレンプロピレンおよびポリテトラフルオロエチレン)が含まれる。
【0067】
本発明の幾つかの実施形態に有用である可能性がある容器および化学物質は、1998年9月8日に発行された米国特許第5,804,744号、1999年12月7日に発行された米国特許第5,996,424号、および1999年12月21日に発行された米国特許第6,003,666号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体を参照として本明細書に組み入れられる。タンクは、事前に清浄されてもよく、必要であれば、例えば、濃縮された2種類の酸の中でおよそ2週間、連続的に浸され、次いで、超純水の中で数日間すすがれる。
【0068】
市場には入手することのできる低密度ポリエチレン樹脂および高密度ポリエチレン樹脂の両方が存在していることに留意すべきである。低密度ポリエチレンは、高密度ポリエチレンよりも扱いやすくてより可撓性がある(すなわち、より「弾性的である」)が、耐薬品性がより低い。本発明は、高密度ポリエチレンよりも扱いやすくてより可撓性があるものの低密度ポリエチレンよりも耐薬品性が高い混合物を発生させるために、低密度ポリエチレン樹脂を高密度ポリエチレン樹脂に混合することで「中密度」ポリエチレンの使用を意図するものである。
【0069】
記載された材料は、それらが、清浄な様式で製造することができ、当該化学物質に対して化学的に不活性であり、また、当該化学物質との適合性があるので、好ましい。これらの特徴の3つはすべて重要なものであるので、用語「清浄な」、「化学的に不活性な」、および「化学的に適合性のある」は、先の節Iで一層詳しく説明された。
【0070】
本発明における2つの好ましい材料の種類のうちポリエチレンは、それが比較的安価であり、また、フルオロカーボンよりも扱いやすい点で望ましい。本発明のタンクおよび/または蓋に製造されると、結果として得られた製造品は、10×10億分の1(ppb)未満の浸出可能な金属性汚染物質と10×100万分の1(ppm)未満の浸出可能な陰イオン性および有機性の汚染物質とを含むが、これらの両方はその製造品の表面にあり、また、エッチング溶液によってその製造品の材料から抽出される。
【0071】
フルオロカーボンポリマーは、比較的高価であり、また、より扱いにくいものであるが、高純度用途についての半導体産業において一般に受け入れられるという利点を有する。本発明の装置は、好ましい実施形態では、1ppb未満の浸出可能な金属性汚染物質と1ppm未満の抽出可能な陰イオン性および有機性の汚染物質とを有するフルオロカーボン製の内側タンクおよび/または蓋の使用を含む。
【0072】
前述の材料は化学的に不活性であって半導体の製造に使用される大部分の化学物質との適合性があることがわかっている。例えば、本発明の内側タンクおよび蓋の材料は両方とも、化学的に不活性であり、フッ化水素酸(HF)、塩酸(HCL)、硫酸(H2SO4)、リン酸(H3PO4)、硝酸(HNO3)、酢酸(CH3COOH)、過酸化水素(H2O2)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)およびイソプロピルアルコール(IPA)との適合性がある。本発明のフルオロカーボンの実施形態はとりわけ、化学的に不活性であって言及したすべての化合物との適合性がある。
【0073】
再び図3aを参照すると、内側タンク302および304は、少なくとも一部が外側タンク306の内部に配置されており、また、側壁310および312、基部314および316および口部318および320を含む。外側タンク306は少なくとも一部が、超音波エネルギーを伝播することのできる水溶液308で満たされている。この水溶液は水であるのが好ましい。示されていないある実施形態では、外側タンクは、水溶液を濾過するとともにそれを外側タンクへ戻すことによって微粒子を除去する循環器を含んでいてもよい。先に説明された水溶液の温度の減少を最小限にするために、もしあれば水溶液供給部および/または循環管路に、外側タンクの中へ供給される前に水溶液を所定温度まで予熱する水溶液加熱要素が設けられていてもよい。
【0074】
内側タンク302および304は、少なくとも一部が、典型的にはシリコン、セラミック(例えば、AlN、Al2O3)、石英および/または炭化ケイ素から形成された被加工物305を清浄化し、エッチングしかつ/またはテキスチャリングするための、フッ化水素酸、硝酸および/または塩酸のようなエッチング溶液322で、あるいはNaOHまたはKOHのような塩基で満たされている。耐薬品性ポリマーは、金属、陰イオン、有機物のような汚染物質を酸性溶液の中へ導入すべきではない。内側タンクは10ppb未満の浸出可能な金属性汚染物質と10ppm未満の浸出可能な陰イオン性および有機性の汚染物質とを生成させるのが好ましい。
【0075】
タンクは、好ましくは少なくとも1リットルの、一層好ましくは少なくとも10リットルの、そしてなお一層好ましくは少なくとも30リットルのエッチング溶液で満たされている。全酸性度あるいは全塩基度は、所望の用途あるいは被加工物によって変わるであろうが、典型的には約1%から約40%までの範囲にある。好ましい酸性度あるいは塩基度は少なくとも約10%である。エッチング溶液は、フッ化水素酸、硝酸のような酸および水を、さまざまな比、例えば1:1:1、1:2:2あるいは1:7:2で含む。別の実施形態では、エッチング溶液は、さまざまな比の塩基性溶液、例えば5〜50%あるいは20〜30%のKOHと50〜95%あるいは70〜80%の水とをそれぞれ備える。エッチング溶液は、基板、時間、温度、エッチング深さ、被加工物の運動/回転および/または当業者に明らかである他のパラメーターに応じて調節することができる。石英およびポリシリコンの基板をエッチングするための酸および塩基の代表的な比は実施例1〜3に記載されている。
【0076】
内側タンクの口部324および326の上端には蓋324および326が設置されているが、その形状は正方形、長方形、三角形、円、楕円などであってよい。好ましくは、蓋の断面は内側タンクの口部の断面と実質的に同じである。蓋によって、内側タンク口部と蓋の下面との間に少なくとも一部封止が作り出される。一実施形態では、この封止は密閉封止である。図3bに表示されたように、蓋326は、エッチング溶液を液体状態に保ちエッチング溶液の濃度変化を防止することでエッチング溶液のエーロゾル形成および/または蒸発がほとんど起きないように、エッチング溶液322の上方におけるガス385の分圧を増大させるようにも作用する。一実施形態では、蓋は、危険な水準が達成される前に、例えばエッチング溶液がある温度に達する前に圧力を解放することのできる簡単な安全バルブとしても作用することは認識されている。蓋はまた、耐薬品性ポリマーから形成されているのが好ましい。内側タンクあるいは外側タンクから逃げるおそれのあるガスのために、タンクの上方に位置決めされてこれらのガスを受け入れかつ/またはこれらのガスとの適合性がある排気フード370が設けられている。
【0077】
本発明の一実施形態では、先に説明されたように、例えば中密度ポリエチレンあるいはTeflon(登録商標)からなる一部変形可能な耐薬品性コーティングが、内側タンクの口部および/または蓋の裏面に設けられているとともに内側タンクを蓋で封止するときに押し付けられる。圧力をかけて加熱すると、このコーティングは変形を受けてその結果、内側タンクの内部の封止閉鎖具を形成する。このことは、内側タンクをエッチングする間にその内側に起きる圧力に起因して漏れないということを保証するために、少なくとも一部が満たされて封止された内側タンクのエッチングの間にとりわけ有利である。この実施形態に設けられた変形可能なコーティングはまた、内側タンクおよび/または蓋の次のような拡張された使用が必要であれば、一層堅固な封止が可能になるという利点も有する。
【0078】
装置300は、超音波変換器330も含み、超音波変換器330は、内側タンク302および304の中のエッチング溶液322へ超音波エネルギーを付与するように、動力発振器336および外側タンク306に結合されている。超音波変換器は、被加工物305のエッチングを加速するために、水溶液308を通して化学溶液322を攪拌する。示された実施形態では、超音波変換器は水溶液の外側に定置されている。しかしながら、別の実施形態では、変換器は水溶液の中に定置されている。必要であれば、例えば、発明の名称が「複数の超音波変換器を有する超音波生成ユニット」であり、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,181,052号(2001年1月30日)に記載されたように、複数の超音波変換器を採用することができる。超音波変換器はBransonあるいはMisonix (www.misonix.com)のような幾つかの供給源から購入することができる。さまざまな周波数範囲の超音波エネルギーを制御する方法は、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,433,460号(2002年8月13日)に記載されている。超音波エネルギーは典型的には25〜40kHzの間にあるかあるいはそれよりも大きい。しかしながら、このエネルギーは、先に検討したように、必要であれば付加的なパラメーターによって調節することができる。超音波動力は、典型的には30〜50ワット/ガロンの範囲にあるが、この範囲よりも小さいかあるいは大きい動力を含むように変えることができる。
【0079】
装置300には加熱要素332もまた含まれている。この加熱要素は、水溶液308の温度を調整するために使用することができるように、外側タンク306の側壁に熱的に結合されている。制御可能な化学エッチングはより高い温度で達成することができるということが発見されている。この温度は、被加工物をエッチングするために必要な時間に反比例しており、先に検討したように付加的なパラメーターに関係がある。こういうわけで、加熱要素を本発明の装置に結合する利点は、エッチングに必要な時間を減少させて複数の被加工物をエッチングするための処理能力を増大させることができるという点である。典型的には、この温度は約18〜45℃の間で調節される。
【0080】
装置300には、被加工物305と超音波変換器330との間で相対運動が達成されるように回転のための機構340および350もまた含まれている。機構340は、基板305を垂直軸に関して回転させるためのモーター342と蓋326を通って延びているロッド344とを含む。しかしながら、回転機構は、示された構造に限定されることなく、また、基板305が実質的に水平な軸に関して回転されるよう、モーター342による駆動トルクをロッド344へ伝達するために傘歯車、ベルトなどで一部変更することができる。例えば、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,199,563号(2001年3月13日)を参照のこと。その代替として、ターンテーブル360を機構350によって回転させることができるが、これには、モーター352と、ターンテーブル360の回転のための信号を生成させる手段354とが含まれている。その代替として、あるいは被加工物の回転と組み合わせて、超音波変換器330を、内側タンクの中に配置された被加工物とこの超音波変換器との間における相対運動が達成されるように回転させてもよい。好ましい実施形態では、被加工物は、被加工物の均一なエッチングが達成されるように、ゆっくりと、例えば約1rpmから約20rpmまでの速度で回転される。
【0081】
水溶液の内部には、エッチング溶液322のへ付与された音波エネルギーを抑制しかつ/または拡散させるための超音波緩衝器380が定置されている。このエネルギーの拡散および抑制によって、エッチングプロセスにわたるより優れた制御が可能になる。こういうわけで、その緩衝器を形成するための材料は耐薬品性ポリマーであるのが好ましいが、緩衝器の寸法は、望ましいエネルギーの抑制あるいは拡散の量によって変わるであろう。
【0082】
エッチング溶液322の内部には、この装置の任意の構成要素、例えばエッチング溶液および/または水溶液の超音波エネルギー、温度、温度ムラ、不純物濃度などを監視するためのプローブ390が定置されている。このプローブは、先に説明したように、耐酸性ポリマーから形成されているかあるいは耐酸性ポリマーで被覆されているのが好ましい。示されていない1つ以上の付加的プローブは、先に説明したパラメーターのうち任意のものを監視するために、この装置の任意の構成要素の内部あるいは近傍に定置することができる。一実施形態では、水溶液は約20℃から約50℃までに維持されている。内側タンクが水溶液の中に浸漬されているので、エッチング溶液は、水溶液の中に維持されているのと実質的に同じ温度を有する。上で述べたように、典型的には、エッチング溶液の温度が高ければ高いほど、エッチングプロセスの速度はよく高く、そしてそれゆえ、被加工物はその表面から材料がより速く除去される。こういうわけで、水溶液の温度と被加工物がエッチング溶液の中に残る時間とは、被加工物から除去されようとする材料の量に左右される。これらのパラメーターは、したがって当業者によって調節することができ、また典型的には、用途、例えば損傷の除去などに左右されるが、約1〜約1000μmの均一なエッチング深さを達成するために調節される。被加工物をさまざまな速度でさまざまな深さまでエッチングするための代表的な時間および温度のパラメーターは、実施例1〜3に与えられている。
【0083】
研究室的処理能力を増大させるとともに更に、研究室職員が本明細書に説明された有害な反応物質に曝露されることを減少させるために、この装置の1つ以上の構成要素を組み入れるロボットシステムおよび/またはその方法ステップを採用することができる。例えば、エッチングプロセスの処理能力を向上させるために、ロボットによるタンクの中への溶液(酸性、塩基性、水溶性)の導入、被加工物および/または変換器の回転および温度制御を実施することができる。こういうわけで、本発明の一実施形態では、接種ステップが、そのような作業を実施するために開発されたロボットによるかあるいは自動化されたシステムによって実施される。
【0084】
以下で説明するように、個々の部材(例えば、被加工物、内側あるいは外側のタンク、変換器、プローブなど)に実施される任意の操作は、連続状にあるいは並行して実施することができる。ある物理的な方式が並行操作(すなわち、タンクへの関連溶液のほぼ同時の添加によって、またはタンクからの被加工物のほぼ同時の除去によって実施されたものと同じかあるいは類似した操作、および/または他の操作を有する)に一層適している。ロボットによるマニピュレーション処理かあるいは他のマニピュレーション処理は、選択的なあるいは並行的なマニピュレーション処理を達成するために使用された実際の運動を適切な制御デバイス、例えばロボット要素あるいは他の材料マニピュレーション処理要素を調整するための命令セットを備えるソフトウェア付きのロボット要素につながれたコンピュータによって制御することができるように、実施することができる。これらのコンピュータ制御式自動化ワークステーションには、科学者によって実施されたマニュアル操作を模倣するロボットアームが含まれていてもよい。これらのデバイスが本明細書の中で検討したように作動することができるようにするこれらのデバイスの一部変更(もしあれば)の本質および実施は、当業者には明らかである。
【0085】
本発明の装置および方法は、共有に係る、2001年8月21日に出願されて発明の名称が「有機溶剤を使用する半導体処理設備のチャンバー部品の清浄化」であり、その全体を参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願第09/945,257号(法定代理人事件覚書番号:59081−8006.US01)と、2001年8月10日に出願されて発明の名称が「半導体製作設備の部品を清浄化するシステムおよび方法」であり、その全体を参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願第09/927,263号(法定代理人事件覚書番号:59081−8005.US01)に記載された方法、装置および化学物質と組み合わせて使用することもできる。
【0086】
図4は、ねじ404,406および408が貫通して延びてねじの先端が被加工物410を定位置に固定するように適合されたジグ402を示している。ジグおよびねじは、先に説明したように、耐薬品性ポリマーから形成されている。被加工物410のジグ402への固定に続いて、デバイス全体は、先に説明したように内側タンクの内部に定置して、ねじ404,406および408が内側タンクの内面と接するようにしてもよい。このような構成によって、超音波攪拌の間に被加工物が内側タンクに対して定位置に保持される。ジグは、先に説明したように回転機構と接続するように適合することができる。
【0087】
図5aに示されたように、例えば円筒形状の被加工物を固定するために、実質的に先がとがった先端の備わったねじを使用することができ、一方では、図5bに示されたように、ウェハー形状の被加工物510を固定するために、溝付きのねじ504を使用することができる。
【0088】
図6aおよび図6bは、本発明によって達成することのできる回転運動における変形例を示している。図6aは、コネクティングロッド610,612,614および616を通して接続された3つの被加工物602,604および606を示している。これらの被加工物は、被加工物を内側タンク600の基部616に対して実質的に水平な方向に回転させるためのモーター642に接続された回転機構ロッド644に結合されている。その代替として、図6bに示されたように、コネクティングロッド610,612,614および616を通して接続された被加工物602,604および606は、内側タンクの中でサスペンションバー630および632で懸架された水平ロッド618に更に結合された回転機構ロッド644に結合されている。回転機構ロッド644は、被加工物を内側タンク600の基部616に対して実質的に垂直な方向に回転させるためのモーター642に接続されている。
【0089】
図7は、本発明の一実施形態による、被加工物を超音波によりエッチングするプロセス700を示している。プロセス700は、内面を有する内側タンクを設けることによる操作710で開始される。その内面は耐薬品性ポリマーを含む。内側タンクは被加工物を受け入れる上方口部を有しており、また、そのタンクは、水溶液で少なくとも一部が満たされた外側タンクの内部に少なくとも一部が配置されている。内側タンクは次いで、操作720で与えられたように、少なくとも1リットルの、好ましくは10リットルの、そして一層好ましくは30リットルの、少なくとも約10%の全酸性度あるいは全塩基度を有するエッチング溶液で満たされる。操作730では、被加工物はエッチング溶液の中へ全体として浸漬される。内側タンクの口部は次いで、操作740において、エッチング溶液を封入するために、かつ、酸性溶液の上方の分圧を増大させるために、蓋で被覆される。操作750によって、エッチング溶液は次いで、被加工物のエッチングを加速するために外側タンクに結合された超音波変換器で超音波により攪拌される。
【0090】
被加工物は、被加工物の不純物の水準あるいはエッチングの程度を視覚的に検査しかつ/または試験するために、所定の時間帯の後に除去することができる。
【0091】
VII.実施例
以下の実施例は、本明細書に記載された本発明を更に図解しており、また、本発明の範囲を限定することを決して意図していない。
【0092】
実施例1
フッ化水素酸(49重量%)/硝酸(70重量%)/水の1:1:1の比からなり、16重量%のHFおよび23重量%のHNO3の酸濃度に相当する混合物を、20±5℃で25〜40kHzの超音波エネルギーと30〜50ワット/ガロンの超音波動力とを使用する石英の被加工物の酸性エッチングについては、毎分0.5μmのエッチングが得られた。
【0093】
実施例2
半導体用具から石英絶縁体リングが、フッ化水素酸(49重量%)/硝酸(70重量%)/水の1:1:1あるいは1:2:2の容積比からなり、20±5℃における25〜40kHzの超音波エネルギーと30〜50ワット/ガロンの超音波動力とで、材料の5〜100μmが超音波エッチングされた。1:1:1の容積比は、16重量%のHFおよび23重量%のHNO3であり、また、1:2:2の比については、10重量%のHFおよび30重量%のHNO3である。
【0094】
実施例3
材料の5〜200μmを除去するために、酸性および塩基性の超音波補助式エッチングを使用して、ポリシリコンが等方的にあるいは非等方的にエッチングされた。一実施例では、5重量%のフッ化水素酸および7重量%の硝酸に対応するフッ化水素酸(49重量%)/硝酸(70重量%)/水の1:7:2の比からなり、20±5℃における25〜40kHzの超音波エネルギーと30〜50ワット/ガロンの超音波動力とで、材料を除去するために使用された。別の実施例では、30%水酸化カリウム溶液が、20±5℃における25〜40kHzの超音波エネルギーと30〜50ワット/ガロンの超音波動力とで、材料を除去するために使用された。
【0095】
本発明は特定の実施形態に関して説明されてきたが、本発明から逸脱することなくさまざまな変更および修正を行うことができるということは、当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】従来技術の超音波酸エッチング装置の図である。
【図2】従来技術の超音波水洗浄溢流装置の図である。
【図3a】本発明の一実施形態による、酸あるいは塩基を使用してチャンバー部分あるいは他の被加工物をエッチングする装置の図である。
【図3b】本発明の一実施形態による、分圧の増大を示している内側タンクの図である。
【図4】本発明の一実施形態による、被加工物の外側環境を保持するためのジグの図である。
【図5a】本発明の一実施形態による図4のねじの先端を示している拡大図である。
【図5b】本発明の別の実施形態による図4の溝付きねじの先端を示している拡大図である。
【図6a】本発明の一実施形態による、被加工物を実質的に垂直な軸の周りに回転させる機構を示している図である。
【図6b】本発明の別の実施形態による、被加工物を実質的に水平な軸の周りに回転させる機構を示している図である。
【図7】本発明による、被加工物を超音波により酸エッチングするプロセスを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0097】
300…装置、302…内側タンク、304…内側タンク、305…被加工物、306…外側タンク、308…水溶液、310…側壁、312…側壁、314…基部、316…基部、318…口部、320…口部、322…エッチング溶液、324…蓋、326…蓋、330…超音波変換器、332…加熱要素、336…動力発振器、340…機構、342…モーター、344…ロッド、350…機構、352…モーター、354…手段、360…ターンテーブル、370…排気フード、385…ガス。
【発明の分野】
【0001】
本発明は、被加工物を超音波により化学エッチングする方法、および本発明を実施するのに使用するシステムに関するものである。
【発明の背景】
【0002】
最近の幾つかの工業プロセスでは、材料を均一にエッチングすることが必要である。エッチングはこの材料に限定されてもよく、あるいはエッチングプロセスは、この材料がそれを通してエッチングされ、それによって下にある材料が露出するまで続けられてもよい。例えば、電子的、光学的あるいは光電子的な被加工物の製作のような多くの工業的用途では、エッチングプロセスは典型的に、被加工物が最終的に製造される精度に影響するため、エッチングステップは、被加工物の製作における重要な段階である。
【0003】
半導体チップの製作には大抵の場合、酸化、拡散、イオン注入、導電体および絶縁体の堆積、フォトリソブラフィおよびエッチングを含む100を超える処理ステップがある。さまざまな導電層および絶縁層が、ウェハーを覆って2〜3ミクロンの厚さまで均一に堆積される。重要な用途では、半導体処理設備の新規部品あるいは中古部品は、初期の機械加工あるいは製造のプロセスからのあるいはそれらの処理ステップからの残留汚染を除去するために、また、半導体ウェハー自体に類似しかつ再生されたその表面モルフォロジーを有する清浄度の水準を達成するために、組み付けおよび使用に先立って清浄化しなければならない。更にまた、多くのウェハーが処理された後に、半導体処理プロセスに使用された設備は、汚染状態あるいは堆積物堆積状態になり、それゆえ使用不能になる。
【0004】
例えば、エッチング機においては、ポリマーが、電極あるいはウェハー支持用チャックの外側周縁に電極とウェハーとの接触を妨げるほどの厚さになるまで堆積する。これは、電極上にポリマー堆積を起こさせるウェハーに起因する誤移送とともに、ウェハーにわたる不均一なエッチングの原因になる。7パーセントを超える不均一性は、幾つかの指定限界を超えるものであり、ひいてはウェハーにわたる側壁プロファイルの多様性に影響を及ぼす。加えて、設備のチャンバーにおける他の構成要素、例えば屋根/ドームおよびライナーもまた、ウェハーへの微粒子、金属不純物および有機不純物を付与するポリマーおよび汚染物質で被覆されている。それゆえ、もしそうなら設備のチャンバーにおける部品を分解して個々の部品を清浄化することが必要である。半導体デバイスの製造に使用される大抵の型の乾燥処理設備では、薄膜堆積およびエッチングのための高温、プラズマおよびガス状混合物の含まれるプロセスが利用される。これらの製造プロセスの間に、有機および無機の副産物が被加工物部分の表面に堆積される。
【0005】
被加工物をエッチングするための幾つかの装置およびデバイスが市販されているが、しかしながら、どれも理想的なものではない。図1には、半導体製作被加工物102を超音波によりエッチングするために使用された従来技術の代表的小規模装置100が示されている。酸性溶液110が内側容器104の中へ収納されて、外側容器130の中に保持された水溶液120を通して超音波により攪拌される。全体の装置は、エッチング反応が起きるときに水溶液および酸性溶液から放出されるガス140の捕獲のための排気フード150の内部に収容されている。濃酸あるいは超音波処理剤が含まれなかった初期エッチングプロセスにわたる進歩を表している一方で、装置100は、被加工物102を回転させるか、または安全な加工条件を作り出す機能をもたらさない。装置100は、ガスを収容するか、または無用の成分、例えば環境からの不純物および水溶液からのエーロゾルガスが、エッチングプロセスの間にエッチング溶液から入ってくるのを防止する特性も、あるいは揮発したエッチング溶液の分圧を増大させてエーロゾル損失あるいは揮発損失に起因するエッチング溶液の濃度変化を防止する特性も有していない。それにはまた、温度を調整するための加熱機構、プローブなども、また、エッチングプロセスにわたるより良好な制御のためにエネルギーを抑制しかつ拡散させるための超音波緩衝器も欠けている。
【0006】
図2に示された従来技術の装置200には2つのビーカー202および204が収容されており、これらのビーカーには、開口206を通してもたらされてビーカーの中へ溢れ、その後に音波処理タンク210の中へ溢れる脱イオン水が収容されている。この脱イオン水に超音波エネルギーをもたらすために、超音波処理変換器220が動力発振器220に接続されている。この装置には、最も重要なことに、酸を収容する機能、音波処理される被加工物を回転させる機能、加熱要素、および超音波拡散器を含む幾つかの望ましい特徴が欠けている。
【0007】
参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,199,563号では、従来技術の超音波処理器への適度な改良が、酸性溶液の中における被加工物を超音波処理するための回転機構を含めることによって加えられているが、それは、酸性ガスを収容するための手段、水溶液からの無用の汚染物質および/または回転機構の磨滅物質が酸性溶液に入るのを防止するための手段、酸性溶液の分圧を増大させる機能をもたらしたり、あるいはより安全な加工環境をもたらしたりすることはできない。
【0008】
必要であるのは、超音波攪拌の間に発生したガスを収容し、直近周囲環境へのエッチング溶液の曝露を最小限にしてエッチングプロセスの間に水溶液からの無用の汚染物質および/または回転機構の磨滅物質がエッチング溶液に入るのをその後に防止し、エッチング溶液の分圧を増大させて危険な蒸気の形成をそれらを液体状態に保つことで阻止する機能を有し、エッチング溶液の濃度を安定に保ち、より安全な加工環境をもたらす機能を有する方法および装置である。本発明は、半導体被加工物が効率的に清浄化されかつ再生利用されて製造コストを減少させるように、現在利用できるものよりも効率的であって汚染物質のない装置および方法をもたらすことで、これらの要求に合致するように設計されている。
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の1つの目的は、1つの態様では、被加工物を化学的にエッチングする超音波エッチング装置を提供することである。一実施形態では、化学物質は酸である。その代替として、化学物質は塩基である。この装置は、水溶液で少なくとも一部が満たされた外側タンクと、耐薬品性ポリマーを含んでいて少なくとも一部が外側タンクの内部に配置されかつ上記水溶液と接している内側タンクとを含む。内側タンクは、少なくとも10重量%の全酸性度あるいは全塩基度を有する少なくとも1リットルの酸性溶液あるいは塩基性溶液で少なくとも一部が満たされており、また、この内側タンクは、少なくとも側壁および基部を有するとともに上方口部を画成しており、かつ、被加工物を受け入れるものである。この装置にまた含まれているのは、上記内側タンクの上記口部に係合した蓋と、上記外側タンクに結合されていて内側タンクの中の酸性溶液へ超音波エネルギーを付与する超音波変換器とである。
【0010】
一実施形態では、蓋の重量によって、上記内側タンクの口部と上記蓋の下面との間に少なくとも一部封止が作り出される。関連した実施形態では、この一部封止は、エッチング溶液の上方におけるガスの分圧を増大させかつ/または化学溶液の成分の変化を引き起こす可能性のある化学ガスの漏れを防止するように作用する。
【0011】
本発明の別の実施形態では、この装置は、水溶液の温度を調整するための加熱要素を含む。
【0012】
更に別の実施形態では、この装置は、内側タンクの中に配置された被加工物と超音波変換器との間の相対運動を付与するように適合された機構を含む。この機構は、一実施形態では、蓋を通して延びておりかつ被加工物へ結合されたロッドを含む。
【0013】
もっと別の実施形態では、タンクの上方に位置決めされかつ水溶液およびエッチング溶液のうちの少なくとも一方から発生したガスを受け入れる排気フードが含まれている。
【0014】
更に別の実施形態では、水溶液の内部に、酸性溶液へ付与された音波エネルギーを抑制しかつ/または拡散させるための超音波緩衝器が定置されている。
【0015】
本発明の一実施形態では、超音波変換器は、水溶液の外側に定置されているとともに動力発振器へ操作可能に接続されている。
【0016】
本発明の別の実施形態では、超音波エネルギー、温度、温度ムラおよび不純物濃度の1つ以上を監視するためのプローブがエッチング溶液の内部に定置されている。
【0017】
別の実施形態では、水溶液は濾過されて脱イオン水槽へ再循環される。
【0018】
エッチング溶液は基本的に静的なものであるのが好ましい。
【0019】
一実施形態では、内側タンクとエッチング溶液に接することが可能な回転機構の任意部分とは、フッ素樹脂および高密度ポリエチレンからなる群から選択された耐薬品性ポリマー材料を備える。
【0020】
別の実施形態では、内側タンクは、10ppb未満の浸出可能な金属性汚染物質と10ppm未満の浸出可能な陰イオン性および有機性の汚染物質とを生成させる。
【0021】
更に別の実施形態では、エッチング溶液は酸性であって、フッ化水素酸、硝酸および塩酸からなる群から選択された化学物質を含む。関連した実施形態では、この酸性溶液は、フッ化水素酸、硝酸および水が1:1:1の比で含まれるものである。その代替として、エッチング溶液は塩基性であって、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択された化学物質を含む。
【0022】
もっと別の実施形態では、水溶液の温度は約20℃から約50℃までに維持されている。
【0023】
更にもっと別の実施形態では、被加工物は、炭化ケイ素、石英、およびシリコンからなる材料の群から選択されている。
【0024】
本発明の一実施形態では、この機構は、上記基板をある軸を中心に回転させるための回転運動アクチュエーターを含む。関連した実施形態では、その軸は実質的に水平な軸である。その代替として、その軸は実質的に垂直な軸である。
【0025】
別の実施形態では、この機構は、上記内側タンクおよび/または上記超音波変換器を回転させるための回転運動アクチュエーターを含む。
【0026】
更に別の実施形態では、その蓋は、内側タンクの口部の断面と実質的に同じである断面を有する。
【0027】
もっと別の実施形態では、内側タンクの口部および蓋はそれぞれ、蓋の断面に対応している円形形状を有する。
【0028】
更に別の実施形態では、内側タンクの断面は、被加工物の断面と実質的に同じである。
【0029】
更にもっと別の実施形態では、内側タンクの口部は正方形、長方形、三角形、円あるいは楕円の形状を有する。
【0030】
この装置の内側タンクは、別の実施形態では、直方体、立方体あるいは円筒の形状を有する。
【0031】
したがって、本発明の別の目的は、1つの態様では、被加工物を超音波により化学的にエッチングする方法を提供することである。その方法を実施するのに関与したステップは、耐薬品性ポリマーを備える内面を有するとともに上方口部を画成しており、かつ、被加工物を受け入れる内側タンクであって、水溶液で少なくとも一部が満たされた外側タンクの内部に少なくとも一部が配置されている内側タンクを設けるステップと、少なくとも10%の全酸性度あるいは全塩基度を有する少なくとも1リットルのエッチング溶液で内側タンクを少なくとも一部を満たすステップと、被加工物をエッチング溶液の中へ浸漬するステップと、エッチング溶液を封入するために、かつ、エッチング溶液の化学濃度が実質的に同じものとして残るようにエッチング溶液の上方の分圧を増大させるために、内側タンクの口部を蓋で被覆するステップと、被加工物のエッチングを加速するために、外側タンクに結合された超音波変換器でエッチング溶液を超音波により攪拌するステップと、を含む。
【0032】
この方法の一実施形態では、蓋の重量によって、上記内側タンクの口部と上記蓋の下面との間に少なくとも一部封止が作り出される。
【0033】
別の実施形態では、この方法は、水溶液の温度を調整するための加熱要素を設けるステップを含む。
【0034】
更に別の実施形態では、この方法は、内側タンクの中に浸漬された被加工物と超音波変換器との間の相対運動を付与するように適合された機構を設けるステップを含む。
【0035】
もっと別の実施形態では、この機構は、蓋を通して延びておりかつ被加工物へ結合されたロッドを含む。
【0036】
もっと更に別の実施形態では、この方法は、タンクの上方に位置決めされかつ水溶液およびエッチング溶液のうちの少なくとも一方から発生したガスを受け入れる排気フードを設けるステップを更に含む。
【0037】
この方法は、一実施形態では、水溶液の内部に定置され、エッチング溶液へ付与された音波エネルギーを抑制しかつ/または拡散させるための超音波緩衝器を更に含む。
【0038】
別の実施形態では、超音波変換器は、水溶液の外側に定置されているとともに動力発振器へ操作可能に接続されている。
【0039】
更に別の実施形態では、この方法は、超音波エネルギー、温度、温度ムラおよび不純物濃度の1つ以上を監視するためにエッチング溶液の内部に定置されたプローブを設けるステップを更に含む。
【0040】
もっと別の実施形態では、水溶液は濾過されて脱イオン水槽へ再循環される。
【0041】
もっと更に別の実施形態では、エッチング溶液は基本的に静的なものである。
【0042】
内側タンクとエッチング溶液に接することが可能な回転機構の任意部分とは、一実施形態において、フッ素樹脂および高密度ポリエチレンからなる群から選択された耐薬品性ポリマー材料を含む。
【0043】
別の実施形態では、内側タンクは、10ppb未満の浸出可能な金属性汚染物質と10ppm未満の浸出可能な陰イオン性および有機性の汚染物質とを生成させる。
【0044】
更に別の実施形態では、エッチング溶液は、フッ化水素酸、硝酸および塩酸からなる群から選択された酸を備える。関連した実施形態では、エッチング溶液は、フッ化水素酸、硝酸および水が1:1:1の比で含まれるものである。
【0045】
更に別の実施形態では、エッチング溶液は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択された塩基を備える。関連した実施形態では、エッチング溶液は30%水酸化カリウムを備える。
【0046】
もっと更に別の実施形態では、水溶液の温度は約20℃から約50℃までに維持されている。
【0047】
被加工物は、一実施形態では、炭化ケイ素、石英あるいはシリコンであってよい。
【0048】
別の実施形態では、この機構は、上記基板をある軸を中心に回転させるための回転運動アクチュエーターを含む。
【0049】
更に別の実施形態では、その軸は実質的に水平な軸である。その代替として、別の実施形態によれば、その軸は実質的に垂直な軸である。
【0050】
一実施形態では、この機構は、上記内側タンクおよび/または上記超音波変換器を回転させるための回転運動アクチュエーターを備える。
【0051】
別の実施形態では、その蓋の断面は、内側タンクの口部の断面と実質的に同じである。
【0052】
更に別の実施形態では、内側タンクの口部および蓋はそれぞれ、蓋の断面に対応している円形形状を有する。
【0053】
もっと別の実施形態では、内側タンクの断面は被加工物の断面と実質的に同じである。
【0054】
本発明のこれらのそして他の目的および特徴は、本発明の次の詳細な説明を添付図面ととともに読むことで、より充分に認識される。
【発明の詳細な説明】
【0055】
I.定義
他に特に指示のない限り、本明細書の中で使用された技術用語および科学用語はすべて、それらが本発明の当業者によるものと同じ意味を有する。本発明は、説明された特定の方法論、プロトコル、および反応物質に限定されないと理解すべきであるが、その理由はこれらが変化するものであるからである。本明細書の中で引用されたすべての刊行物および特許は、本発明に関連して使用されることのある構成および方法論を説明しかつ開示する目的のために、参照として本明細書に特別に組み入れられる。
【0056】
本明細書の中で使用されたように、用語「エッチング」は、材料の選択的除去を言い、また、限定はされないが、清浄化、テキスチャリングおよび研磨を含む。
【0057】
「耐薬品性ポリマー」に関しては、ポリマー組成物を、被加工物をエッチングするのに充分な時間について高い酸性あるいは塩基性のモル濃度の溶液と接触して維持することができ、また、好ましくは、拡張された時間帯についてポリマーの分解を受けることなく溶液と接触して残すことができるということを意味している。
【0058】
本明細書の中で使用されるように、「超音波の」とは一般に、約18キロヘルツより高くかつ2メガヘルツを超えるまで延びる周波数範囲における音響攪乱を言う。
【0059】
本明細書の中で使用されたように、「被加工物」とは、製造、エッチング、テキスチャリング、あるいは超音波エネルギーを受けた液体の内部における清浄化操作を被る部品を言う。一例として、1つの被加工物は極めて小さい特徴を有する半導体ウェハーであり、他の実施例は、ガス配給用のプレート、ドーム/屋根あるいはウェハーチャックのような半導体プロセスチャンバー構成要素を含む。被加工物は、ディスクドライブ、半導体構成要素などを含む、コンピュータ産業における構成要素を大抵は画成している。
【0060】
本明細書の中で使用されたように、用語「蓋」は、タンクを少なくとも一部封止する閉鎖具として作用する任意の型の容器閉鎖用キャップ、カバー、ストッパー、プラグ、クラウン、トップ、プレートなどを容器の型の関数として含むように広く定義されている。
【0061】
用語「密閉封止」とは、2つの部材、例えばタンクの口部と蓋との間におけるガス密および液密である封止を言う。
【0062】
「清浄な」に関して、それは、耐薬品性ポリマー、例えばポリエチレンあるいはフルオロカーボンが10ppbを超える浸出可能な金属性汚染物質と10ppmを超える浸出可能な陰イオン性および有機性の汚染物質とを酸性溶液の中へ導入しないことを意味している。これらの汚染物質は、エッチング溶液と接触している材料の表面に存在する可能性があり、または、酸あるいは塩基によってタンクあるいは蓋の材料から浸出することがある。
【0063】
「化学的に不活性な」に関して、それは、エッチング溶液が耐薬品性ポリマーの化学的あるいは物理的な性質を実質的に変化させないことを意味している。
【0064】
「適合性のある」に関して、それは、エッチング溶液が材料の有孔率のような材料の特性と物理的に適合していることを意味している。換言すれば、化学試料は、その試料が、小さい分子寸法と高い移動度とに起因して、材料の壁における顕微鏡的細孔を通して移動することのできる機能を有するときには、(それがその材料に関して化学的に不活性であるときであっても)その材料とは非適合性のものであるとみなすことができる。
【0065】
II.発明の装置および方法
本発明は、1つの態様では、被加工物を超音波により化学的にエッチングする装置および一体型システムを提供する。以下に詳しく説明されるように、この装置が、直近の周囲環境へのエッチング溶液の曝露を最小化してこれらの溶液から入ってくる無用の汚染物質をこの装置から減少させること、危険な蒸気の形成を阻止するためにエッチング溶液の分圧を制御可能に調節する機能、被加工物をスケールアップ処理する機能、より安全な加工環境をもたらすとともにエッチング溶液の化学組成の変化を防止する機能を含む、従来技術に勝る幾つかの利点を提供することが発見されている。以下で考慮されているのはこの装置の構成要素である。
【0066】
図3aは、本発明の一実施形態による装置300を示している。装置300には、耐薬品性ポリマーから形成されたかあるいはそれで被覆された2つの内側タンク302および304が含まれている。耐薬品性ポリマーには、Nalgene, Inc. (米国におけるVWRによって供給された; www. nalgene. com) および Norton Performance Plastics Corporation (Wayne, N.J.) のような供給源から市販されている高密度炭化水素ポリマー(例えば高密度ポリエチレン)およびDuPont de Nemours, Inc. (Wilmington, Del.) からTeflon(www. teflon. com) の商品名で市販されているフルオロカーボンポリマー(例えば、ペルフルオロアルコキシ、フッ素化エチレンプロピレンおよびポリテトラフルオロエチレン)が含まれる。
【0067】
本発明の幾つかの実施形態に有用である可能性がある容器および化学物質は、1998年9月8日に発行された米国特許第5,804,744号、1999年12月7日に発行された米国特許第5,996,424号、および1999年12月21日に発行された米国特許第6,003,666号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体を参照として本明細書に組み入れられる。タンクは、事前に清浄されてもよく、必要であれば、例えば、濃縮された2種類の酸の中でおよそ2週間、連続的に浸され、次いで、超純水の中で数日間すすがれる。
【0068】
市場には入手することのできる低密度ポリエチレン樹脂および高密度ポリエチレン樹脂の両方が存在していることに留意すべきである。低密度ポリエチレンは、高密度ポリエチレンよりも扱いやすくてより可撓性がある(すなわち、より「弾性的である」)が、耐薬品性がより低い。本発明は、高密度ポリエチレンよりも扱いやすくてより可撓性があるものの低密度ポリエチレンよりも耐薬品性が高い混合物を発生させるために、低密度ポリエチレン樹脂を高密度ポリエチレン樹脂に混合することで「中密度」ポリエチレンの使用を意図するものである。
【0069】
記載された材料は、それらが、清浄な様式で製造することができ、当該化学物質に対して化学的に不活性であり、また、当該化学物質との適合性があるので、好ましい。これらの特徴の3つはすべて重要なものであるので、用語「清浄な」、「化学的に不活性な」、および「化学的に適合性のある」は、先の節Iで一層詳しく説明された。
【0070】
本発明における2つの好ましい材料の種類のうちポリエチレンは、それが比較的安価であり、また、フルオロカーボンよりも扱いやすい点で望ましい。本発明のタンクおよび/または蓋に製造されると、結果として得られた製造品は、10×10億分の1(ppb)未満の浸出可能な金属性汚染物質と10×100万分の1(ppm)未満の浸出可能な陰イオン性および有機性の汚染物質とを含むが、これらの両方はその製造品の表面にあり、また、エッチング溶液によってその製造品の材料から抽出される。
【0071】
フルオロカーボンポリマーは、比較的高価であり、また、より扱いにくいものであるが、高純度用途についての半導体産業において一般に受け入れられるという利点を有する。本発明の装置は、好ましい実施形態では、1ppb未満の浸出可能な金属性汚染物質と1ppm未満の抽出可能な陰イオン性および有機性の汚染物質とを有するフルオロカーボン製の内側タンクおよび/または蓋の使用を含む。
【0072】
前述の材料は化学的に不活性であって半導体の製造に使用される大部分の化学物質との適合性があることがわかっている。例えば、本発明の内側タンクおよび蓋の材料は両方とも、化学的に不活性であり、フッ化水素酸(HF)、塩酸(HCL)、硫酸(H2SO4)、リン酸(H3PO4)、硝酸(HNO3)、酢酸(CH3COOH)、過酸化水素(H2O2)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)およびイソプロピルアルコール(IPA)との適合性がある。本発明のフルオロカーボンの実施形態はとりわけ、化学的に不活性であって言及したすべての化合物との適合性がある。
【0073】
再び図3aを参照すると、内側タンク302および304は、少なくとも一部が外側タンク306の内部に配置されており、また、側壁310および312、基部314および316および口部318および320を含む。外側タンク306は少なくとも一部が、超音波エネルギーを伝播することのできる水溶液308で満たされている。この水溶液は水であるのが好ましい。示されていないある実施形態では、外側タンクは、水溶液を濾過するとともにそれを外側タンクへ戻すことによって微粒子を除去する循環器を含んでいてもよい。先に説明された水溶液の温度の減少を最小限にするために、もしあれば水溶液供給部および/または循環管路に、外側タンクの中へ供給される前に水溶液を所定温度まで予熱する水溶液加熱要素が設けられていてもよい。
【0074】
内側タンク302および304は、少なくとも一部が、典型的にはシリコン、セラミック(例えば、AlN、Al2O3)、石英および/または炭化ケイ素から形成された被加工物305を清浄化し、エッチングしかつ/またはテキスチャリングするための、フッ化水素酸、硝酸および/または塩酸のようなエッチング溶液322で、あるいはNaOHまたはKOHのような塩基で満たされている。耐薬品性ポリマーは、金属、陰イオン、有機物のような汚染物質を酸性溶液の中へ導入すべきではない。内側タンクは10ppb未満の浸出可能な金属性汚染物質と10ppm未満の浸出可能な陰イオン性および有機性の汚染物質とを生成させるのが好ましい。
【0075】
タンクは、好ましくは少なくとも1リットルの、一層好ましくは少なくとも10リットルの、そしてなお一層好ましくは少なくとも30リットルのエッチング溶液で満たされている。全酸性度あるいは全塩基度は、所望の用途あるいは被加工物によって変わるであろうが、典型的には約1%から約40%までの範囲にある。好ましい酸性度あるいは塩基度は少なくとも約10%である。エッチング溶液は、フッ化水素酸、硝酸のような酸および水を、さまざまな比、例えば1:1:1、1:2:2あるいは1:7:2で含む。別の実施形態では、エッチング溶液は、さまざまな比の塩基性溶液、例えば5〜50%あるいは20〜30%のKOHと50〜95%あるいは70〜80%の水とをそれぞれ備える。エッチング溶液は、基板、時間、温度、エッチング深さ、被加工物の運動/回転および/または当業者に明らかである他のパラメーターに応じて調節することができる。石英およびポリシリコンの基板をエッチングするための酸および塩基の代表的な比は実施例1〜3に記載されている。
【0076】
内側タンクの口部324および326の上端には蓋324および326が設置されているが、その形状は正方形、長方形、三角形、円、楕円などであってよい。好ましくは、蓋の断面は内側タンクの口部の断面と実質的に同じである。蓋によって、内側タンク口部と蓋の下面との間に少なくとも一部封止が作り出される。一実施形態では、この封止は密閉封止である。図3bに表示されたように、蓋326は、エッチング溶液を液体状態に保ちエッチング溶液の濃度変化を防止することでエッチング溶液のエーロゾル形成および/または蒸発がほとんど起きないように、エッチング溶液322の上方におけるガス385の分圧を増大させるようにも作用する。一実施形態では、蓋は、危険な水準が達成される前に、例えばエッチング溶液がある温度に達する前に圧力を解放することのできる簡単な安全バルブとしても作用することは認識されている。蓋はまた、耐薬品性ポリマーから形成されているのが好ましい。内側タンクあるいは外側タンクから逃げるおそれのあるガスのために、タンクの上方に位置決めされてこれらのガスを受け入れかつ/またはこれらのガスとの適合性がある排気フード370が設けられている。
【0077】
本発明の一実施形態では、先に説明されたように、例えば中密度ポリエチレンあるいはTeflon(登録商標)からなる一部変形可能な耐薬品性コーティングが、内側タンクの口部および/または蓋の裏面に設けられているとともに内側タンクを蓋で封止するときに押し付けられる。圧力をかけて加熱すると、このコーティングは変形を受けてその結果、内側タンクの内部の封止閉鎖具を形成する。このことは、内側タンクをエッチングする間にその内側に起きる圧力に起因して漏れないということを保証するために、少なくとも一部が満たされて封止された内側タンクのエッチングの間にとりわけ有利である。この実施形態に設けられた変形可能なコーティングはまた、内側タンクおよび/または蓋の次のような拡張された使用が必要であれば、一層堅固な封止が可能になるという利点も有する。
【0078】
装置300は、超音波変換器330も含み、超音波変換器330は、内側タンク302および304の中のエッチング溶液322へ超音波エネルギーを付与するように、動力発振器336および外側タンク306に結合されている。超音波変換器は、被加工物305のエッチングを加速するために、水溶液308を通して化学溶液322を攪拌する。示された実施形態では、超音波変換器は水溶液の外側に定置されている。しかしながら、別の実施形態では、変換器は水溶液の中に定置されている。必要であれば、例えば、発明の名称が「複数の超音波変換器を有する超音波生成ユニット」であり、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,181,052号(2001年1月30日)に記載されたように、複数の超音波変換器を採用することができる。超音波変換器はBransonあるいはMisonix (www.misonix.com)のような幾つかの供給源から購入することができる。さまざまな周波数範囲の超音波エネルギーを制御する方法は、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,433,460号(2002年8月13日)に記載されている。超音波エネルギーは典型的には25〜40kHzの間にあるかあるいはそれよりも大きい。しかしながら、このエネルギーは、先に検討したように、必要であれば付加的なパラメーターによって調節することができる。超音波動力は、典型的には30〜50ワット/ガロンの範囲にあるが、この範囲よりも小さいかあるいは大きい動力を含むように変えることができる。
【0079】
装置300には加熱要素332もまた含まれている。この加熱要素は、水溶液308の温度を調整するために使用することができるように、外側タンク306の側壁に熱的に結合されている。制御可能な化学エッチングはより高い温度で達成することができるということが発見されている。この温度は、被加工物をエッチングするために必要な時間に反比例しており、先に検討したように付加的なパラメーターに関係がある。こういうわけで、加熱要素を本発明の装置に結合する利点は、エッチングに必要な時間を減少させて複数の被加工物をエッチングするための処理能力を増大させることができるという点である。典型的には、この温度は約18〜45℃の間で調節される。
【0080】
装置300には、被加工物305と超音波変換器330との間で相対運動が達成されるように回転のための機構340および350もまた含まれている。機構340は、基板305を垂直軸に関して回転させるためのモーター342と蓋326を通って延びているロッド344とを含む。しかしながら、回転機構は、示された構造に限定されることなく、また、基板305が実質的に水平な軸に関して回転されるよう、モーター342による駆動トルクをロッド344へ伝達するために傘歯車、ベルトなどで一部変更することができる。例えば、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,199,563号(2001年3月13日)を参照のこと。その代替として、ターンテーブル360を機構350によって回転させることができるが、これには、モーター352と、ターンテーブル360の回転のための信号を生成させる手段354とが含まれている。その代替として、あるいは被加工物の回転と組み合わせて、超音波変換器330を、内側タンクの中に配置された被加工物とこの超音波変換器との間における相対運動が達成されるように回転させてもよい。好ましい実施形態では、被加工物は、被加工物の均一なエッチングが達成されるように、ゆっくりと、例えば約1rpmから約20rpmまでの速度で回転される。
【0081】
水溶液の内部には、エッチング溶液322のへ付与された音波エネルギーを抑制しかつ/または拡散させるための超音波緩衝器380が定置されている。このエネルギーの拡散および抑制によって、エッチングプロセスにわたるより優れた制御が可能になる。こういうわけで、その緩衝器を形成するための材料は耐薬品性ポリマーであるのが好ましいが、緩衝器の寸法は、望ましいエネルギーの抑制あるいは拡散の量によって変わるであろう。
【0082】
エッチング溶液322の内部には、この装置の任意の構成要素、例えばエッチング溶液および/または水溶液の超音波エネルギー、温度、温度ムラ、不純物濃度などを監視するためのプローブ390が定置されている。このプローブは、先に説明したように、耐酸性ポリマーから形成されているかあるいは耐酸性ポリマーで被覆されているのが好ましい。示されていない1つ以上の付加的プローブは、先に説明したパラメーターのうち任意のものを監視するために、この装置の任意の構成要素の内部あるいは近傍に定置することができる。一実施形態では、水溶液は約20℃から約50℃までに維持されている。内側タンクが水溶液の中に浸漬されているので、エッチング溶液は、水溶液の中に維持されているのと実質的に同じ温度を有する。上で述べたように、典型的には、エッチング溶液の温度が高ければ高いほど、エッチングプロセスの速度はよく高く、そしてそれゆえ、被加工物はその表面から材料がより速く除去される。こういうわけで、水溶液の温度と被加工物がエッチング溶液の中に残る時間とは、被加工物から除去されようとする材料の量に左右される。これらのパラメーターは、したがって当業者によって調節することができ、また典型的には、用途、例えば損傷の除去などに左右されるが、約1〜約1000μmの均一なエッチング深さを達成するために調節される。被加工物をさまざまな速度でさまざまな深さまでエッチングするための代表的な時間および温度のパラメーターは、実施例1〜3に与えられている。
【0083】
研究室的処理能力を増大させるとともに更に、研究室職員が本明細書に説明された有害な反応物質に曝露されることを減少させるために、この装置の1つ以上の構成要素を組み入れるロボットシステムおよび/またはその方法ステップを採用することができる。例えば、エッチングプロセスの処理能力を向上させるために、ロボットによるタンクの中への溶液(酸性、塩基性、水溶性)の導入、被加工物および/または変換器の回転および温度制御を実施することができる。こういうわけで、本発明の一実施形態では、接種ステップが、そのような作業を実施するために開発されたロボットによるかあるいは自動化されたシステムによって実施される。
【0084】
以下で説明するように、個々の部材(例えば、被加工物、内側あるいは外側のタンク、変換器、プローブなど)に実施される任意の操作は、連続状にあるいは並行して実施することができる。ある物理的な方式が並行操作(すなわち、タンクへの関連溶液のほぼ同時の添加によって、またはタンクからの被加工物のほぼ同時の除去によって実施されたものと同じかあるいは類似した操作、および/または他の操作を有する)に一層適している。ロボットによるマニピュレーション処理かあるいは他のマニピュレーション処理は、選択的なあるいは並行的なマニピュレーション処理を達成するために使用された実際の運動を適切な制御デバイス、例えばロボット要素あるいは他の材料マニピュレーション処理要素を調整するための命令セットを備えるソフトウェア付きのロボット要素につながれたコンピュータによって制御することができるように、実施することができる。これらのコンピュータ制御式自動化ワークステーションには、科学者によって実施されたマニュアル操作を模倣するロボットアームが含まれていてもよい。これらのデバイスが本明細書の中で検討したように作動することができるようにするこれらのデバイスの一部変更(もしあれば)の本質および実施は、当業者には明らかである。
【0085】
本発明の装置および方法は、共有に係る、2001年8月21日に出願されて発明の名称が「有機溶剤を使用する半導体処理設備のチャンバー部品の清浄化」であり、その全体を参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願第09/945,257号(法定代理人事件覚書番号:59081−8006.US01)と、2001年8月10日に出願されて発明の名称が「半導体製作設備の部品を清浄化するシステムおよび方法」であり、その全体を参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願第09/927,263号(法定代理人事件覚書番号:59081−8005.US01)に記載された方法、装置および化学物質と組み合わせて使用することもできる。
【0086】
図4は、ねじ404,406および408が貫通して延びてねじの先端が被加工物410を定位置に固定するように適合されたジグ402を示している。ジグおよびねじは、先に説明したように、耐薬品性ポリマーから形成されている。被加工物410のジグ402への固定に続いて、デバイス全体は、先に説明したように内側タンクの内部に定置して、ねじ404,406および408が内側タンクの内面と接するようにしてもよい。このような構成によって、超音波攪拌の間に被加工物が内側タンクに対して定位置に保持される。ジグは、先に説明したように回転機構と接続するように適合することができる。
【0087】
図5aに示されたように、例えば円筒形状の被加工物を固定するために、実質的に先がとがった先端の備わったねじを使用することができ、一方では、図5bに示されたように、ウェハー形状の被加工物510を固定するために、溝付きのねじ504を使用することができる。
【0088】
図6aおよび図6bは、本発明によって達成することのできる回転運動における変形例を示している。図6aは、コネクティングロッド610,612,614および616を通して接続された3つの被加工物602,604および606を示している。これらの被加工物は、被加工物を内側タンク600の基部616に対して実質的に水平な方向に回転させるためのモーター642に接続された回転機構ロッド644に結合されている。その代替として、図6bに示されたように、コネクティングロッド610,612,614および616を通して接続された被加工物602,604および606は、内側タンクの中でサスペンションバー630および632で懸架された水平ロッド618に更に結合された回転機構ロッド644に結合されている。回転機構ロッド644は、被加工物を内側タンク600の基部616に対して実質的に垂直な方向に回転させるためのモーター642に接続されている。
【0089】
図7は、本発明の一実施形態による、被加工物を超音波によりエッチングするプロセス700を示している。プロセス700は、内面を有する内側タンクを設けることによる操作710で開始される。その内面は耐薬品性ポリマーを含む。内側タンクは被加工物を受け入れる上方口部を有しており、また、そのタンクは、水溶液で少なくとも一部が満たされた外側タンクの内部に少なくとも一部が配置されている。内側タンクは次いで、操作720で与えられたように、少なくとも1リットルの、好ましくは10リットルの、そして一層好ましくは30リットルの、少なくとも約10%の全酸性度あるいは全塩基度を有するエッチング溶液で満たされる。操作730では、被加工物はエッチング溶液の中へ全体として浸漬される。内側タンクの口部は次いで、操作740において、エッチング溶液を封入するために、かつ、酸性溶液の上方の分圧を増大させるために、蓋で被覆される。操作750によって、エッチング溶液は次いで、被加工物のエッチングを加速するために外側タンクに結合された超音波変換器で超音波により攪拌される。
【0090】
被加工物は、被加工物の不純物の水準あるいはエッチングの程度を視覚的に検査しかつ/または試験するために、所定の時間帯の後に除去することができる。
【0091】
VII.実施例
以下の実施例は、本明細書に記載された本発明を更に図解しており、また、本発明の範囲を限定することを決して意図していない。
【0092】
実施例1
フッ化水素酸(49重量%)/硝酸(70重量%)/水の1:1:1の比からなり、16重量%のHFおよび23重量%のHNO3の酸濃度に相当する混合物を、20±5℃で25〜40kHzの超音波エネルギーと30〜50ワット/ガロンの超音波動力とを使用する石英の被加工物の酸性エッチングについては、毎分0.5μmのエッチングが得られた。
【0093】
実施例2
半導体用具から石英絶縁体リングが、フッ化水素酸(49重量%)/硝酸(70重量%)/水の1:1:1あるいは1:2:2の容積比からなり、20±5℃における25〜40kHzの超音波エネルギーと30〜50ワット/ガロンの超音波動力とで、材料の5〜100μmが超音波エッチングされた。1:1:1の容積比は、16重量%のHFおよび23重量%のHNO3であり、また、1:2:2の比については、10重量%のHFおよび30重量%のHNO3である。
【0094】
実施例3
材料の5〜200μmを除去するために、酸性および塩基性の超音波補助式エッチングを使用して、ポリシリコンが等方的にあるいは非等方的にエッチングされた。一実施例では、5重量%のフッ化水素酸および7重量%の硝酸に対応するフッ化水素酸(49重量%)/硝酸(70重量%)/水の1:7:2の比からなり、20±5℃における25〜40kHzの超音波エネルギーと30〜50ワット/ガロンの超音波動力とで、材料を除去するために使用された。別の実施例では、30%水酸化カリウム溶液が、20±5℃における25〜40kHzの超音波エネルギーと30〜50ワット/ガロンの超音波動力とで、材料を除去するために使用された。
【0095】
本発明は特定の実施形態に関して説明されてきたが、本発明から逸脱することなくさまざまな変更および修正を行うことができるということは、当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】従来技術の超音波酸エッチング装置の図である。
【図2】従来技術の超音波水洗浄溢流装置の図である。
【図3a】本発明の一実施形態による、酸あるいは塩基を使用してチャンバー部分あるいは他の被加工物をエッチングする装置の図である。
【図3b】本発明の一実施形態による、分圧の増大を示している内側タンクの図である。
【図4】本発明の一実施形態による、被加工物の外側環境を保持するためのジグの図である。
【図5a】本発明の一実施形態による図4のねじの先端を示している拡大図である。
【図5b】本発明の別の実施形態による図4の溝付きねじの先端を示している拡大図である。
【図6a】本発明の一実施形態による、被加工物を実質的に垂直な軸の周りに回転させる機構を示している図である。
【図6b】本発明の別の実施形態による、被加工物を実質的に水平な軸の周りに回転させる機構を示している図である。
【図7】本発明による、被加工物を超音波により酸エッチングするプロセスを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0097】
300…装置、302…内側タンク、304…内側タンク、305…被加工物、306…外側タンク、308…水溶液、310…側壁、312…側壁、314…基部、316…基部、318…口部、320…口部、322…エッチング溶液、324…蓋、326…蓋、330…超音波変換器、332…加熱要素、336…動力発振器、340…機構、342…モーター、344…ロッド、350…機構、352…モーター、354…手段、360…ターンテーブル、370…排気フード、385…ガス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を化学的にエッチングする超音波エッチング装置であって、
水溶液で少なくとも一部が満たされた外側タンクと、
耐薬品性ポリマーを備えていて少なくとも一部が前記外側タンクの内部に配置されかつ前記水溶液と接している内側タンクであって、少なくとも10重量%の全酸性度あるいは全塩基度を有する少なくとも1リットルのエッチング溶液で少なくとも一部が満たされており、少なくとも側壁および基部を有するとともに上方口部を画成しており、かつ、被加工物を受け入れるものである内側タンクと、
前記内側タンクの前記口部に係合した蓋であって、エッチング溶液の上方におけるガスの分圧を増大させるために、この蓋の重量によって、前記内側タンクの口部とこの蓋の下面との間に少なくとも一部封止が作り出される蓋と、
前記外側タンクに結合されており、前記内側タンクの中の前記エッチング溶液へ超音波エネルギーを付与する超音波変換器と
を備える、装置。
【請求項2】
水溶液の温度を調整するための加熱要素を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記内側タンクの中に配置された被加工物と前記超音波変換器との間の相対運動を付与するように適合された機構を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
この機構が、蓋を通して延びているとともに被加工物へ結合されたロッドを備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
タンクの上方に位置決めされているとともに水溶液およびエッチング溶液のうちの少なくとも一方から発生したガスとの適合性のある排気フードを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
水溶液の内部に定置されていてエッチング溶液へ付与された音波エネルギーを抑制しかつ/または拡散させるための超音波緩衝器を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
超音波変換器が、水溶液の外側に定置されているとともに動力発振器へ操作可能に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
超音波エネルギー、温度、温度ムラおよび不純物濃度の1つ以上を監視するためにエッチング溶液の内部に定置されたプローブを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
水溶液が、濾過されて脱イオン水槽へ再循環される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
エッチング溶液が、基本的に静的なものである、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
内側タンクとエッチング溶液に接することが可能な回転機構の任意部分とが、フッ素樹脂および高密度ポリエチレンからなる群から選択された材料を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
内側タンクが、10ppb未満の浸出可能な金属性汚染物質と10ppm未満の浸出可能な陰イオン性および有機性の汚染物質とを生成させる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
エッチング溶液が、フッ化水素酸、硝酸および塩酸からなる群から選択された酸を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
酸性溶液が、フッ化水素酸、硝酸および水を1:1:1、1:2:2および1:7:4からなる群から選択された比で備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
水溶液の温度が、約20℃から約50℃までに維持されている、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
被加工物が、炭化ケイ素、石英、セラミックおよびシリコンからなる群から選択されている、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
この機構が、前記基板をある軸を中心に回転させるための回転運動アクチュエーターを備える、請求項3に記載の装置。
【請求項18】
その軸が、実質的に水平な軸である、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
その軸が、実質的に垂直な軸である、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
この機構が、前記内側タンクおよび/または前記超音波変換器を回転させるための回転運動アクチュエーターを備える、請求項3に記載の装置。
【請求項21】
蓋の断面が、内側タンクの口部の断面と実質的に同じである、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
内側タンクの口部および蓋がそれぞれ、蓋の断面に対応している円形形状を有する、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
内側タンクの断面が、被加工物の断面と実質的に同じである、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
内側タンクの口部が、正方形、長方形、三角形、円または楕円からなる群から選択された形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
内側タンクが、直方体、立方体あるいは円筒からなる群から選択された形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
エッチング溶液が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択された塩基を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項27】
エッチング溶液が、30%水酸化カリウムを備える、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
被加工物を超音波により化学的にエッチングする方法であって、
耐薬品性ポリマーを備える内面を有するとともに上方口部を画成しており、かつ、被加工物を受け入れる内側タンクであって、水溶液で少なくとも一部が満たされた外側タンクの内部に少なくとも一部が配置されている内側タンクを設けるステップと、
少なくとも10%の全酸性度あるいは全塩基度を有する少なくとも1リットルのエッチング溶液で内側タンクを少なくとも一部を満たすステップと、
被加工物をエッチング溶液の中へ浸漬するステップと、
エッチング溶液を封入するために、かつ、エッチング溶液の上方の分圧を増大させるために、内側タンクの口部を蓋で被覆するステップと、
被加工物のエッチングを加速するために、外側タンクに結合された超音波変換器でエッチング溶液を超音波により攪拌するステップと
を備える、方法。
【請求項1】
被加工物を化学的にエッチングする超音波エッチング装置であって、
水溶液で少なくとも一部が満たされた外側タンクと、
耐薬品性ポリマーを備えていて少なくとも一部が前記外側タンクの内部に配置されかつ前記水溶液と接している内側タンクであって、少なくとも10重量%の全酸性度あるいは全塩基度を有する少なくとも1リットルのエッチング溶液で少なくとも一部が満たされており、少なくとも側壁および基部を有するとともに上方口部を画成しており、かつ、被加工物を受け入れるものである内側タンクと、
前記内側タンクの前記口部に係合した蓋であって、エッチング溶液の上方におけるガスの分圧を増大させるために、この蓋の重量によって、前記内側タンクの口部とこの蓋の下面との間に少なくとも一部封止が作り出される蓋と、
前記外側タンクに結合されており、前記内側タンクの中の前記エッチング溶液へ超音波エネルギーを付与する超音波変換器と
を備える、装置。
【請求項2】
水溶液の温度を調整するための加熱要素を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記内側タンクの中に配置された被加工物と前記超音波変換器との間の相対運動を付与するように適合された機構を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
この機構が、蓋を通して延びているとともに被加工物へ結合されたロッドを備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
タンクの上方に位置決めされているとともに水溶液およびエッチング溶液のうちの少なくとも一方から発生したガスとの適合性のある排気フードを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
水溶液の内部に定置されていてエッチング溶液へ付与された音波エネルギーを抑制しかつ/または拡散させるための超音波緩衝器を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
超音波変換器が、水溶液の外側に定置されているとともに動力発振器へ操作可能に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
超音波エネルギー、温度、温度ムラおよび不純物濃度の1つ以上を監視するためにエッチング溶液の内部に定置されたプローブを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
水溶液が、濾過されて脱イオン水槽へ再循環される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
エッチング溶液が、基本的に静的なものである、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
内側タンクとエッチング溶液に接することが可能な回転機構の任意部分とが、フッ素樹脂および高密度ポリエチレンからなる群から選択された材料を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
内側タンクが、10ppb未満の浸出可能な金属性汚染物質と10ppm未満の浸出可能な陰イオン性および有機性の汚染物質とを生成させる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
エッチング溶液が、フッ化水素酸、硝酸および塩酸からなる群から選択された酸を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
酸性溶液が、フッ化水素酸、硝酸および水を1:1:1、1:2:2および1:7:4からなる群から選択された比で備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
水溶液の温度が、約20℃から約50℃までに維持されている、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
被加工物が、炭化ケイ素、石英、セラミックおよびシリコンからなる群から選択されている、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
この機構が、前記基板をある軸を中心に回転させるための回転運動アクチュエーターを備える、請求項3に記載の装置。
【請求項18】
その軸が、実質的に水平な軸である、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
その軸が、実質的に垂直な軸である、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
この機構が、前記内側タンクおよび/または前記超音波変換器を回転させるための回転運動アクチュエーターを備える、請求項3に記載の装置。
【請求項21】
蓋の断面が、内側タンクの口部の断面と実質的に同じである、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
内側タンクの口部および蓋がそれぞれ、蓋の断面に対応している円形形状を有する、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
内側タンクの断面が、被加工物の断面と実質的に同じである、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
内側タンクの口部が、正方形、長方形、三角形、円または楕円からなる群から選択された形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
内側タンクが、直方体、立方体あるいは円筒からなる群から選択された形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
エッチング溶液が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択された塩基を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項27】
エッチング溶液が、30%水酸化カリウムを備える、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
被加工物を超音波により化学的にエッチングする方法であって、
耐薬品性ポリマーを備える内面を有するとともに上方口部を画成しており、かつ、被加工物を受け入れる内側タンクであって、水溶液で少なくとも一部が満たされた外側タンクの内部に少なくとも一部が配置されている内側タンクを設けるステップと、
少なくとも10%の全酸性度あるいは全塩基度を有する少なくとも1リットルのエッチング溶液で内側タンクを少なくとも一部を満たすステップと、
被加工物をエッチング溶液の中へ浸漬するステップと、
エッチング溶液を封入するために、かつ、エッチング溶液の上方の分圧を増大させるために、内側タンクの口部を蓋で被覆するステップと、
被加工物のエッチングを加速するために、外側タンクに結合された超音波変換器でエッチング溶液を超音波により攪拌するステップと
を備える、方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【公表番号】特表2007−500431(P2007−500431A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521293(P2006−521293)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/023905
【国際公開番号】WO2005/010950
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(506026003)ケムトレース プレシジョン クリーニング, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/023905
【国際公開番号】WO2005/010950
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(506026003)ケムトレース プレシジョン クリーニング, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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