説明

腫瘍イメージング及び治療用のマルチモーダル剤

(1)腫瘍細胞で発現するインテグリンのアンタゴニストと、(2)腫瘍集積性テトラピロール光増感剤、蛍光染料、及び放射線同位体標識された部分のうち少なくとも1つ、とのコンジュゲートである化合物であって、前記放射同位体が11C、18F、64Cu、124I、99Tc、111In又はGdIIIである化合物、並びに、腫瘍など過剰増殖組織を診断、撮影及び治療するための前記化合物の使用方法。好ましくは、前記光増感剤は、ポルフィリン、クロリン又はバクテリオクロリンなどの腫瘍集積性テトラピロール光増感剤であり、フェオホルビド及びピロフェオホルビドが例として挙げられる。そのようなコンジュゲートは、極端な腫瘍親和性を有し、光吸収により腫瘍を抑制又は完全に破壊するために用いられ得る。前記インテグリンは通常αvβ3、α5β1、αvβ5、α4β1又はα2β1である。好ましくは、前記アンタゴニストはRGDペプチド、又は4−[{2−(3,4,5,6−テトラ−ヒドロピリミジン−2−イルアミノ)エチルオキシ}−ベンゾイル]アミノ−2−(S)−アミノ−エチル−スルホニルアミノ基などの合成物質であってもよいその他のアンタゴニストである。そのような化合物は腫瘍親和性及び造影能力を提供するため、選択的且つ鮮明な腫瘍イメージングが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
光線力学療法(PDT)は、治療部位に照射した長波長の光により活性化した腫瘍局所的光増感剤(PS)をベースとした有効な局所療法である。現在の光増感剤は高い腫瘍選択性を有しており、細く柔らかい光ファイバーにより体内のほぼどこにでも光が届く。
【0002】
近年、クロリン、バクテリオクロリン、及びそれらのアナログや誘導体を含む他のポルフィリン系誘導体を含むポルフィリンなどのテトラピロール光増感剤が、疾患の診断及び治療、特に特定の腫瘍や、黄斑変性症などの他の過剰増殖性疾患の診断及び治療に用いるための光力学化合物として優れた有用性を有することが分かった。これらの化合物は、乾癬や乳頭腫症の治療においても有用であると分かった。
【0003】
そのような誘導体には、前記化合物の二量体や三量体が含まれる。許容される誘導体としては、前記化合物の中心にある4個の窒素を有する16角のへテロ環がそのまま残っている場合には、前記化合物の環状バリエーションが挙げられる。従って、クロロフィリン、プルプリン、フェオホルビド(pheophorbides)及びこれらの誘導体は、「ポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン及びそれらの誘導体やアナログ」に含まれる。そのような誘導体には、これらの環状構造上の置換基を変更したもの、例えばピロフェオホルビド(pyropheophorbides)が含まれる。
【0004】
この主題について多数の論文が書かれており、例えば以下のものが挙げられる。“Use of the Chlorophyll Derivative Purpurin−18, for Synthesis of Sensitizers for Use in Photodynamic Therapy”,Lee et al.,J.Chem.Soc.,1993,(19)2369−77;“Synthesis of New Bacteriochlorins And Their Antitumor Activity”,Pandey et al.,Biology and Med.Chem.Letters,1992;“Photosensitizing Properties of Bacteriochlorophyllin a and Bacteriochlorin a, Two Derivatives of Bacteriochlorophyll a”,Beems et al.,Photochemistry and Photobiology,1987,v.46,639−643;“Photoradiation Therapy. II. Cure of Animal Tumors With Hematoporphyrin and Light”,Dougherty et al.,Journal of the National Cancer Institute,July 1975,v.55,115−119;“Photodynamic therapy of C3H mouse mammary carcinoma with hematoporphyrin di−esters as sensitizers”,Evensen et al.,Br.J.Cancer,1987,55,483−486;“Substituent Effects in Tetrapyrrole Subunit Reactivity and Pinacol−Pinacolone Rearrangements: VIC−Dihydroxychlorins and VIC−Dihydroxybacteriochlorins”Pandey et al.,Tetrahedron Letters,1992,v.33,7815−7818;“Photodynamic Sensitizers from Chlorophyll: Purpurin−18 and Chlorin p6“,Hoober et al.,1988,v.48,579−582;“Structure/Activity Relationships Among Photosensitizers Related to Pheophorbides and Bacteriopheophorbides”,Pandey et al.,Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters,1992,v.2,491−496;“Photodynamic Therapy Mechanisms”,Pandey et al.,Proceedings Society of Photo−Optical Instrumentation Engineers (SPIE),1989,v.1065,164−174;“Fast Atom Bombardment Mass Spectral Analyses of Photofrin II(登録商標) and its Synthetic Analogs”,Pandey et al.,Biomedical and Environmental Mass Spectrometry,1990,v.19,405−414。
これらの論文は、背景技術として参照することにより本明細書に援用される。
【0005】
世界中で、この領域における多数の特許出願がこれらの光力学化合物に関してなされ、特許になっている。例えば、参照されることにより本明細書に援用される以下の米国特許に言及してもよい:米国特許番号4,649,151;米国特許番号4,866,168;米国特許番号4,889,129;米国特許番号4,932,934;米国特許番号4,968,715;米国特許番号5,002,962;米国特許番号5,015,463;米国特許番号5,028,621;米国特許番号5,145,863;米国特許番号5,198,460;米国特許番号5,225,433;米国特許番号5,314,905;米国特許番号5,459,159;米国特許番号5,498,710;及び米国特許番号5,591,847。
【0006】
これらの化合物の1つ「フォトフリン(登録商標)」は、米国、カナダ及び日本において使用承認を受けている。これらの化合物の中には、少なくとも制限的に承認を受けている化合物もあり、例えば黄斑変性症の治療に用いられるBPDなどが挙げられる。また、臨床試験中であるか、臨床試験を行うことが検討されている化合物もある。
【0007】
本明細書で用いられる「ポルフィリン、クロリン及びバクテリオクロリン」とは、上記で述べたように、並びに、背景技術として本明細書に援用される前記論文や特許により記載及び例証されているように、それらの誘導体やアナログを含むことを意図している。
【0008】
そのような化合物は、肝臓及び脾臓を除いて、大半の正常細胞や正常臓器よりもむしろ腫瘍に特異的に蓄積するという顕著な特徴を有していることが分かっている。また、前記化合物は光により活性化されて腫瘍に対して毒性を示すようになるので、そのような腫瘍の多くを殺すことができる。
【0009】
そのような化合物は腫瘍細胞に選択的に吸収され、近赤外(NIR)吸収付近の選択的波長吸光度の光にさらされると腫瘍細胞を破壊する。また、そのような化合物は前記選択的吸収波長よりも長波長の放射線を放出し、その結果、光が数センチメートルの組織を透過する。従って、散光の伝搬を測定することにより、表面下の組織における光増感剤濃度を感知し定量化することが可能である。
【0010】
しかしながら、小さな病変、巨大病変、若しくは埋没した病変に関しては、悪性腫瘍を検出すること及び/又は腫瘍に十分に光を当てるために光ファイバーを適切に配置することが難しい可能性がある。従って、腫瘍の可視化、画像誘導による光ファイバーの配置、及びその後のこの病変の光力学的破壊を可能にする、高選択性の光学的且つ放射性核種の腫瘍イメージング(造影)を用いた誘導治療アプローチは、腫瘍の診断と治療において非常に有効であると考えられる。
【0011】
光学的イメージングは急速に進展している分野である。光造影剤(optical contrast agents)は、高感度の平面断層画像を提供することが出来る。小動物に関しては、平面画像が適切であるが、蛍光画像の光断層再構成が実現可能になりつつある。
【0012】
ポルフィリン系光増感剤(PS)のほとんどは蛍光を発し、in vivoにおけるこれらのポルフィリンの蛍光特性は、肺、膀胱及び様々な他の部位における早期癌を検出するための検査に利用され、治療用の活性光を誘導するのに利用されている。しかしながら、PSは腫瘍検出や治療誘導のための最適な蛍光色素分子(fluorophores)ではない:(1)これらは、シアニン染料と比べると蛍光が弱い。これらは小さなストローク・シフトを有しているため、当該蛍光を励起光から分離するのが困難になる。
【0013】
NIR励起と発光波長を有する蛍光シアニン染料は、高い量子収率、励起係数、及び適切なストークス・シフトを有し得る。これらは高い励起係数と適切なストークス・シフトを有する。発明者らは、光増感剤と結合したそのような化合物を「二機能性剤」(すなわち、腫瘍イメージングと光線治療)として用いることが出来ることを見出した。例えば、同時係属中のPCT特許出願番号PCT/US05/24782を参照することが出来る。
【0014】
ポジトロン断層法(positron emission tomography)(PET)は、主に生化学プロセスや循環機能を撮影、分析するのに用いられている。しかしながら、悪性腫瘍を標的とする放射標識ペプチドリガンドを使用することが多くなってきている。利用可能な同位体標識には、11C(t1/2=20.4分)、18F(t1/2=110分)、64Cu(t1/2=12.8時間)及び124I(t1/2=4.2日)が含まれる。標的指向化光増感剤については、腫瘍に当該光増感剤を多く運ぶことができるため、長い循環時間を要求してもよい。発明者らは、I−124標識の光増感剤がPETイメージング及びPDTに用いられ得ることを示した。例えば、同時係属中の、2006年2月14日に出願された米国特許出願番号11/353,626を参照することが出来る。
【0015】
インテグリンは、細胞表面介在性シグナル伝達において重要な役割を担うヘテロ二量体膜貫通接着受容体である。18種のαサブユニット及び8種のβサブユニットから組み立てられる、24種以上の異なるインテグリン受容体が特定されている。αvβ3、α5β1、αvβ5、α4β1、α2β1は、腫瘍細胞で発現する公知のインテグリンである。本発明に従う例として、インテグリンαvβ3は、本発明を例証するために用いられ、RGDペプチド、RGD配列(アルギニン(Arg)−グリシン(Gly)−アスパラギン酸(Asp)のトリアミノ酸配列)を有する小さなペプチドと結合する。RGD配列を有する10個以上のアミノ酸などのより長い配列が用いられてもよく、そのようなペプチド全てを本明細書においてRGDペプチドと呼ぶこととする。非ペプチドのアンタゴニスト又はリガンドの例としては、4−[{2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イルアミノ)エチルオキシ}−ベンゾイル]アミノ−2−(S)−アミノエチルスルホニルアミノ基(THPAB基)を有する化合物が用いられる。腫瘍細胞で発現するそのようなインテグリンの例として、我々はまず最初に特異的な受容体であるインテグリンαvβ3に焦点を当てている。インテグリンαvβ3は、腫瘍細胞(3)において高発現すること及びRGDペプチドと結合することが知られている。
【0016】
T−Coffee及びClustalW多配列アラインメントプログラムを用いて行われた、様々な生物(ヒト、マウス、雄牛、鶏、蛙、ゼブラフィッシュ)由来のインテグリンαvサブユニットの配列分析では、特に哺乳類の中において高い保存性が示されている。様々な生物(ヒト、マウス、ラット、鶏、蛙、ゼブラフィッシュ)由来のインテグリンβ3サブユニットの配列分析からも類似した結果が観察されている。関係するリガンドが結合する残基の厳格な保存性が明確に観察されている。
【0017】
インテグリンの三次元構造に関し、いくつかの結晶構造がPDBで入手できる。インテグリンβ3サブユニットに関しては、インテグリンβ3−タリンのキメラ複合体(1MK7,1MK9)の結晶構造、インテグリンβ3の細胞質ドメイン(1S4X)のNMR構造、並びに、インテグリンαIIbβ3受容体の結晶構造(1TXV,1TY3,1TY5,1TY6,1TY7,1TYE)及びNMR構造(1M8O)が存在する。インテグリンαvβ3系に関しては、インテグリンαvβ3(1JV2)の細胞外ドメインの構造、並びに、それとMn2+との複合体(1M1X)及びRGDリガンドとの複合体(1L5G)の構造が入手できる。また、近年、βサブユニット構造のN末端のPSI(プレキシン−セマフォリン−インテグリン)ドメインが、αvβ3受容体(1U8C)の構成の中で報告された。我々は、αvβ3及びαIIbβ3の全体構造の対比較を行った。それによると、イオン結合残基の保存が明確に示されている。
【0018】
インテグリンαvβ3RGDペプチド複合体の結晶構造を慎重に調査した。RGDペプチドは、αvサブユニットとβ3サブユニットの界面で結合するが、この界面においては、3個のMnカチオンが関与する相互作用の複雑なネットワークがRGDのAsp残基の認識に重要な役割を果たしている(図1、2参照)。
【0019】
インテグリンは、接着機能及びシグナル伝達機能の両方を有する細胞膜受容体の主要グループである。インテグリンは、周囲の細胞外マトリックスと相互作用することにより腫瘍細胞の性質に影響を与え、腫瘍成長に関与する。インテグリンの発現増加は悪性度の上昇と関連がある。αvβ3の有意な過剰発現が、結腸癌、肺癌、膵臓癌及び乳癌で報告されており、インテグリンの発現は、腫瘍転移のない患者の腫瘍よりも腫瘍転移のある患者の腫瘍において有意に高かった。
【0020】
下記の文献は、背景技術として本明細書に援用される。
(1) Yihui Chen,Amy Gryshuk,Samuel Achilefu,Tymish Ohulchansky,William Potter,Tuoxiu Zhong,Janet Morgan,Britton Chance,Paras N.Prasad,Barbara W.Henderson,Allan Oseroff及びRavindra K.Pandey,“A Novel Approach to a Bifunctional Photosentizer for Tumor Imaging and Phototherapy”, Bioconjugate Chemistry,2005,16,1264−1274。
(2) Suresh K.Pandey,Amy L.Gryshuk,Munawwar Sajjad,Xiang Zheng,Yihui Chen,Mohei M.Abouzeid,Janet Morgan,Ivan Charamisinau,Hani A.Nabi,Allan Oseroff及びRavindra K.Pandey,“Multiomodality Agents for Tumor Imaging (PET, Fluorescence) and Photodynamic Therapy: A Possible See and Treat Approach”,J. Med. Chem.2005,48,6286−6295。
(3) Xiaoyuan C.et al.,“Integrin avb3−Targeted Imaging of Lung Cancer”,Neoplasia,2005,7,271−279.;Yihui Chen,Amy Gryshuk,Samuel Achilefu,Tymish Ohulchansky,William Potter,Tuoxiu Zhong,Janet Morgan,Britton Chance,Paras N.Prasad,Barbara W.Henderson,Allan Oseroff及びRavindra K.Pandey,“A Novel Approach to a Bifunctional Photosentizer for Tumor Imaging and Phototherapy”,Bioconjugate Chemistry,2005,16,1264−1274。
(4) Suresh K.Pandey,Amy L.Gryshuk,Munawwar Sajjad,Xiang Zheng,Yihui Chen,Mohei M.Abouzeid,Janet Morgan,Ivan Charamisinau,Hani A.Nabi,Allan Oseroff及びRavindra K.Pandey,“Multiomodality Agents for Tumor Imaging (PET, Fluorescence) and Photodynamic Therapy: A Possible See and Treat Approach”,J.Med.Chem.2005,48,6286−6295。
(5) Xiaoyuan C.et al.,“Integrin avb3−Targeted Imaging of Lung Cancer”,Neoplasia,2005,7,271−279。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、インテグリンRGDペプチド複合体の結晶構造を示す。平らな矢印はβ鎖を示し、円筒はαへリックスを示す。白色は、αvサブユニット、及び例えばフェオホルビド及びピロフェオホルビドなどのポルフィリン、クロリン又はバクテリオクロリンに用いられており、灰色はβ3サブユニットに用いられている。インテグリンRGDペプチド、Arg−Gly−Asp−D−Phe−N−メチルValは、球棒図中に示されるαvサブユニットとβ3サブユニットの間に位置している。MnイオンはRGDペプチド付近に位置し、球で示されている。
【0022】
【図2】図2はAspがどのようにβ3サブユニット由来の残基及びβ3サブユニットに埋め込まれたMnイオンと相互作用するかを示す図である。特に、中央のMnイオンはAspの側鎖(COO−)基と直接配位結合する。次に、このMnイオンはSer121、Ser123及びGlu220により配位結合する。次に、これらの残基は、β3サブユニットの他の残基と別途に配位結合を形成している他の2個のMnイオンと配位結合する。RGDペプチドのAsp側鎖はAsn215とも直接相互作用する。3個のMnイオンが関与するこの相互作用ネットワークは非常に重要な安定化要因であるように思われる。
【発明の概要】
【0023】
本発明は、以下の(1)と(2)とのコンジュゲート(複合体、抱合体)である化合物、並びに、腫瘍、及び黄斑変性症において見られるようなその他の制御不能な増殖組織などの過剰増殖組織を診断、撮影(イメージ)及び/又は治療するための前記化合物の使用方法である。
(1)腫瘍細胞で発現するインテグリンのアンタゴニスト。
(2)蛍光染料、元素Xと複合体(complex)を形成していてもよい腫瘍集積性テトラピロール光増感剤のうち、少なくとも1つ(ここで、XはZn、In、Ga、Al若しくはCuからなる群から選択される金属、又は放射性同位体標識された部分であって、前記放射性同位体が11C、18F、64Cu、124I、99Tc、111In及びGdIIIからなる群から選択されるものである)。
【0024】
好ましい実施態様において、前記化合物は、腫瘍細胞で発現するインテグリンのアンタゴニストと結合(抱合)した腫瘍集積性テトラピロール光増感剤化合物である。そのような化合物は、極端な腫瘍親和性(集積性)を有し、光吸収により腫瘍を抑制又は完全に破壊するために用いられ得る。前記テトラピロール光増感剤は通常、フェオホルビド及びピロフェオホルビドを含むポルフィリン、クロリン又はバクテリオクロリンであり、前記インテグリンは通常、αvβ3、α5β1、αvβ5、α4β1、又はα2β1インテグリンである。
【0025】
好ましい実施態様において、前記アンタゴニストは、RGDペプチドや、4−[{2−(3,4,5,6−テトラ−ヒドロピリミジン−2−イルアミノ)エチルオキシ}−ベンゾイル]アミノ−2−(S)−アミノエチル−スルホニルアミノ基などの合成物質であってもよい他のアンタゴニストである。前記インテグリンはαvβ3が最も一般的である。
【0026】
前記アンタゴニストは、蛍光染料などのイメージング(造影)化合物や元素Xを有する構造と結合してもよく、ここで、XはZn、In、Ga、Al若しくはCuからなる群から選択される金属又は放射性同位体標識された部分であって、前記放射性同位体は11C、18F、64Cu、124I、99Tc、111Inからなる群から選択される。そのような化合物は腫瘍集積性及び造影能力を提供するため、選択的且つ鮮明な腫瘍イメージングが可能となる。
【0027】
本発明の目的としては以下のものが挙げられる。
1.αvβ3標的特異的な光増感剤を製造するための効果的な合成方法:
(a)RGDの結合(抱合)した光増感剤
(b)インテグリンに対するアンタゴニストの結合した光増感剤
2.RGDペプチドを有する/有さないマルチモーダル剤(光増感剤−シアニン染料コンジュゲート)
3.標的特異的なPET/蛍光イメージング剤(造影剤)。
【0028】
[発明の詳細な説明]
上記で述べたように、本発明は、(1)腫瘍細胞で発現するインテグリンのアンタゴニストと、(2)蛍光染料、及び元素Xと複合体(complex)を形成していてもよい腫瘍集積性テトラピロール光増感剤の少なくとも1つ、とのコンジュゲートである化合物(ここで、XはZn、In、Ga、Al若しくはCuからなる群から選択される金属、又は放射性同位体標識された部分であって、前記放射性同位体は11C、18F、64Cu、124I、99Tc、111In及びGdIIIからなる群から選択される)、並びに、腫瘍やその他の制御不能な増殖組織、例えば黄斑変性症において見られるような制御不能な増殖組織を、診断、撮影及び/又は治療するための前記化合物の使用方法である。
【0029】
テトラピロール光増感剤が存在する場合には、通常、前記化合物は、以下の構造式、それとXとの複合体、及びその多核複合体(polynuclide complexes)を有する。
【0030】
【化1】

式中、R1は−CH=CH2、−CH2CH3、−CHO、−COOH、又は、
【化2】

であり、
9は−OR10であり、R10は炭素数1〜8の低級アルキル基、−(CH2−O)nCH3、−(CH22CO2CH3、−(CH22CONH−フェニレン−CH2DTPA、
−CH2CH2CONH(CONH−フェニレン−CH2DTPA)2、−CH211、若しくは、
【化3】

又は蛍光染料部分であり;
2、R2a、R3、R3a、R4、R5、R5a、R7及びR7aはそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基若しくは置換低級アルキル基であり、あるいは隣接する炭素原子間にあるR2、R2a、R3、R3a、R5、R5a、R7及びR7aのうちの2つが統合して共有結合を形成していてもよく、あるいは同一の炭素原子上にあるR2、R2a、R3、R3a、R5、R5a、R7及びR7aのうちの2つが二価のペンダント基と二重結合を形成していてもよく;R2及びR3が共に、酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を有する5若しくは6員環のヘテロ環を形成してもよく;R6は−CH2−、−NR11−若しくは共有結合であり;R8は−(CH22CO2CH3、−(CH22CONH−フェニレン−CH2DTPA、−CH2CH2CONH(CONH−フェニレン−CH2DTPA)2、−CH211、又は、
【化4】

であり、
11は、−CH2CONH−RGD−Phe−Lys、−CH2NHCO−RGD−Phe−Lys、蛍光染料部分、若しくは−CH2CONHCH2CH2SO2NHCH(CO2)CH2NHCO−フェニル−OCH2CH2NH−シクロ−CNH(CH23Nである。
ここで、前記化合物は、−CH2CONH−RGD−Phe−Lys、−CH2NHCO−RGD−Phe−Lys、−CH2CONHCH2CH2SO2NHCH(CO2)CH2NHCO−フェニル−OCH2CH2NH−シクロ−CNH(CH23Nからなる群から選択される少なくとも1つのインテグリンアンタゴニストを有し、XがZn、In、Ga、Al、Cuからなる群から選択される金属又は放射性同位体標識された部分であって、前記放射性同位体が11C、18F、64Cu、124I、99Tc、111In及びGdIIIからなる群から選択されることを条件とする。
【0031】
Xとの複合体は、単に前記化合物を塩化物などのXの塩とともに加熱することにより容易に製造される。前記複合体は、存在するときには、−DTPA部分のキレートとして若しくはアミン構造の窒素原子間のテトラピロール構造中に、又はその両方に生ずるであろう。そのような構造の例としては、以下のものが挙げられる。
【0032】
【化5】

式中、Mは2Hであるか、又は
MはIn、Cu、Ga(放射性同位元素を有していてもいなくてもよい)である。
【0033】
【化6】

式中、Mは2Hであるか、又は
MはIn、Cu、Ga(放射性同位元素を有していてもいなくてもよい)である。
ここで、X=Mである。
【0034】
蛍光染料がインテグリンアンタゴニスト(リガンドであることが多い)と抱合(結合)している例において、前記蛍光染料は、800から約900nmの波長で前記コンジュゲート(抱合体、複合体)に選択的に蛍光を発させるいかなる非毒性染料であってもよい。例えば、インドシアニン染料が挙げられる。通常そのような染料は、共役二重結合、芳香族炭素環、共鳴へテロ環、又はそれらの組み合わせの中間共鳴構造によって共に結合された少なくとも2つの共鳴環構造、これは発色団であることが多いが、を有している。
【0035】
そのような染料の例には、2個のインドール又は改変されたインドール環構造が、上記のように中間共鳴構造によってそれぞれ31炭素原子及び21炭素原子で共に結合したビスインドール染料が含まれる。そのような染料は一般にトリカルボシアニン(tricarboclyanine)染料として知られている。ほとんどの場合、そのような染料は、前記染料を水溶性にする1個以上、通常は2個以上の親水性の置換基を有する。そのような水溶性は、該構造が生物及びその細胞構造の中に入り込むのを促進し、脂肪組織に蓄積されにくく体内から素早く取り除かれるため毒性の可能性を減らす。通常、前記中間共鳴構造は、通常共役二重結合である多数の二重結合性炭素原子を有し、不飽和カルボン酸環又はヘテロ環を有していてもよい。そのような環は、前記中間構造の共鳴を著しく妨げることなくポルフィリンや他の構造との結合を可能にする。好ましい染料はインドシアニングリーンである。
【0036】
放射性同位体がインテグリンアンタゴニストと組み合わされる場合、共有結合若しくは半イオン結合により化学的に結合してもよく、前記化合物中にキレートを形成してもよい。そのような例において、前記化合物はDTPAなどの公知のキレート構造を有することが多い。
【実施例】
【0037】
[172(175−N−t−Bu−エチレン−ジアミド−)ピロフェオホルビド−a(下記式2)の製造]
【0038】
【化7】

【0039】
文献の手順に従って、スピルリナ(spirolina)藻類からピロフェオホルビド−aカルボン酸1(200mg)を得た。それを乾燥ジクロロメタン(DCM)(5mL)に溶解し、窒素雰囲気下でこの溶液にトリエチルアミン(0.3mL)、Bocで保護したジエチルアミン(66.6μL)及びBOP(146mg)を順に添加した。排気(2〜3回)した後に、この反応混合液を窒素雰囲気下、室温で一晩攪拌した。この反応混合液を濃縮して、シリカ上でクロマトグラフィーを行い(溶離剤:ジクロロメタン中の4%メタノール)、所望の化合物2を主要生成物として分離した。収率90%。NMR(AMX400):(CDCl3,δppm):9.35,9.15及び8.50(各々のs,1H,メソH);7.80(m,1H,CH=CH2);6.25,6.1(各々のd,1H,CH−CH2);5.22(dd,2H,−CH2エキソ環(exocyclic ring)));4.41(q,1H,18H);4.28(d,1H,17H);3.75(q,2H,CH2−CH3);3.62,3.4,3.25(各々のs,3H,環CH3),2.8−2.0(いくつかのm,CH2−CH2−CO−NH−CH2−CH2−NH);1.2(s,9H,Boc)。
【0040】
[ピロフェオホルビド−シクロ(Lys−Arg−Gly−Asp−L−Phe)コンジュゲートの製造]
【0041】
【化8】

【0042】
ピロフェオホルビド(前記式2)を90%トリフルオロ酢酸(TFA)で処理してBoc基を除去した。回転蒸発器(rotaevaporator)を用いてTFAを除去し、上記式3の化合物を次の反応のために高真空下で乾燥した。上記式3の化合物(15mg)を乾燥DCMに溶解し、この溶液に、窒素雰囲気下でシクロ(Lys−Arg−Gly−Asp−L−Phe)(20mg)とEDCI(12mg)を添加した。この反応混合液を窒素雰囲気下、室温で一晩攪拌した。この反応混合液を濃縮し、用意したシリカプレート上でクロマトグラフィーを行った(溶離剤:ジクロロメタン中の10%メタノール)。分離した化合物を更に90%TFA/DCMで3〜4時間処理して、所望のピロフェオホルビド(上記式4)を得た。TFAを蒸発させて、前記化合物をC−18カラムを用いてHPLCで更に精製した(溶離剤:90%メタノール水溶液〜100%メタノール水溶液のグラジエント、流速0.5mL/min)。収量10mg。質量:m/z=1161(M+H)+
【0043】
[メソ−プルプリンイミド(下記式6)の製造]
【0044】
【化9】

【0045】
メソ−プルプリンイミド(60mg)及びBocで保護されたジエチルアミン(2.24g)を最少量のDCMに溶解し、その反応混合液を窒素雰囲気下、室温で48時間攪拌した。UV−VISの結果、吸光度が685nmから651nmに完全にシフトした。この反応混合液に、用意したばかりのジアゾメタン(200〜400mg)を添加し、その反応をTLC(DCM中の5%メタノール)でモニターした。10分後、UV−VISの結果、651nmのピークが完全に消失し、695nmの生成物ピークが現れた。その反応混合液を2%の酢酸水溶液ですぐに洗浄した後、水で3回洗浄した。該化合物をNa2NO4で乾燥、濃縮してシリカ上でクロマトグラフィーを行った(溶離剤:ジクロロメタン中の2〜3%メタノール)。分離した化合物を90%TFA/DCMで3〜4時間更に処理し、TFAを回転蒸発して所望の化合物(上記式6)を主要生成物として得た。収率90%。NMR(AMX400):9.54(s,1H,10H);9.16(s,1H,5H);8.4(s,1H,20H);5.34(m,1H,17H),4.67(m,2H,N−CH2),4.34(q,1H,18H),3.78,3.58,3.23,3.15(各々,3H,12CH3,172CH3,2CH3,7CH3),3.74(q,2H,8’CH2),3.605(CH2−CH3),2.71(m,1H,1×172H),2.402(m,2H,2×171H),2.0(m,1H,172H),1.76(d,3H,18CH3),1.7−1.64(8H,82CH2CH3,3CH2CH3,N−CH2CH2−NH2),0.11−.1(2H,各々のs,−NH)。
【0046】
[メソ−プルプリンイミド−シクロ(Lys−Arg−Gly−Asp−L−Phe)コンジュゲート(下記式8)の製造]
【0047】
【化10】

【0048】
メソ−プルプリンイミド(上記式6)(17mg)を乾燥DCMに溶解し、この溶液に、窒素雰囲気下でシクロ(Lys−Arg−Gly−Asp−L−Phe)(20mg)とEDCI(12mg)を添加した。この反応混合液を窒素雰囲気下、室温で一晩攪拌した。この反応混合液を濃縮し、用意したシリカプレート上でクロマトグラフィーを行った(溶離剤:ジクロロメタン中の10%メタノール)。その分離した化合物を90%TFA/DCMで3〜4時間更に処理し、所望のメソ−プルプリンイミド−シクロ(Lys−Arg−Gly−Asp−L−Phe)コンジュゲート(上記式8)を得た。TFAを回転蒸発し、前記化合物を高真空下で乾燥した。収量19mg。質量:m/z=1207(M+H)+
【0049】
[ピロフェオホルビド−シクロ(Lys−Arg−Gly−Asp−D−Phe)コンジュゲート(下記式8)の製造]
【0050】
【化11】

【0051】
文献の手順に従って、スピルリナ(spirolina)藻類からピロフェオホルビド−aカルボン酸(上記式7)(200mg)を得た。上記式7の化合物(14mg)を乾燥DCMに溶解し、この溶液に、窒素雰囲気下でシクロ(Lys−Arg−Gly−Asp−D−Phe)(20mg)、EDCI(12mg)及びDMAP(12mg)を添加した。この反応混合液を窒素雰囲気下、室温で一晩攪拌した。この反応混合液を濃縮し、用意したシリカプレート上でクロマトグラフィーを行った(溶離剤:ジクロロメタン中の10%メタノール)。分離した化合物を90%TFA/DCMで3〜4時間更に処理し、固体生成物をメタノールで洗浄して、所望のピロフェオホルビド−シクロ(Lys−Arg−Gly−Asp−D−Phe)コンジュゲート(上記式8)を得た。TFAを回転蒸発し、前記化合物を真空下で乾燥した。収量10mg。質量:m/z=1119.6(M+H)+
【0052】
[メソ−プルプリンイミド−グリシンエステル(下記式10)の製造]
【0053】
【化12】

【0054】
58mgのプルプリン−18を最少量のトルエンに溶解し、この溶液にグリシン−t−BuエステルのHCl塩、10〜15滴のトリエチルアミンを添加し、反応液を窒素雰囲気下で還流した。3時間後、UV−VISの結果、出発物質の696nmのピークが完全に消失し、705nmの新たなピークが現れた。この反応混合物を濃縮し、シリカ上でクロマトグラフィーを行った(溶離剤:ジクロロメタンの2%メタノール)。所望のメソ−プルプリンイミド−グリシンエステル(上記式10)を主要生成物として分離した。収率90%。NMR(AMX400):9.64(s,1H,10H),9.39(s,1H,15H),8.58(s,1H,20H),7.84(d,1H,3CH−CH2),6.16(d,1H,3CH=CH2),5.4(m,1H,17H),4.46(m,2H,N−CH2CH2−CO2H),4.31(q,1H,18H),3.84(s,3H,7CH3);2.68及び2.39(各々のm,1H+2H,2×171H);1.99(m,1H,1×172H);1.74(d,3H,18CH3),1.64(t,3H,82CH3);0.07及び−0.16(各々のbr,1H,2NH)。
【0055】
[メソ−プルプリンイミド−グリシン−シクロ(Lys−Arg−Gly−Asp−D−Phe)コンジュゲート(下記式12)の製造]
【0056】
【化13】

【0057】
メソ−プルプリンイミド−グリシンエステル(前記式10)(17mg)を乾燥DCMに溶解し、この溶液に窒素雰囲気下で、シクロ(Lys−Arg−Gly−Asp−D−Phe)(20mg)、EDCI(12mg)及びDMAP(12mg)を添加した。この反応混合液を窒素雰囲気下、室温で一晩攪拌した。反応混合液を濃縮し、固体粉末をメタノールで洗浄した。分離した化合物を90%TFA/DCMで3〜4時間更に処理して、所望のメソ−プルプリンイミド−グリシン−シクロ(Lys−Arg−Gly−Asp−D−Phe)コンジュゲート(上記式12)を得た。TFAを回転蒸発し、メタノールで洗浄し、真空下で乾燥した。収量:20mg。質量:m/z=1220(M+H)+
【0058】
[モノ−I−シパート(Cypate)の製造]
【0059】
【化14】

【0060】
シパート(上記式13)(260mg、0.4mM)を乾燥DMF(10〜15mL)に溶解し、この溶液に窒素雰囲気下、m−I−ベンジルアミン(92mg、0.4mM)、EDCI(92mg、0.48mM)及びHoBt(64.75mg、0.48mM)を添加した。この反応混合液を窒素雰囲気下、室温で一晩攪拌した。一晩反応させた後、DMFを高真空下で除去し、この反応混合液をブライン(塩水)(3回)及び水(3回)で洗浄し、Na2SO4で乾燥して濃縮した。メタノール/DCMを溶離剤として用いて、Siカラム上で精製を行った。収量:57mg(17%)。質量:m/z=839(M+H)+。NMR(AMX400):7.25−8.03(m,16H,芳香族),6.28−6.80(m,4H,−CH),2.47−3.0(m,10H,CH2),1.88(s,12H,CH3)。
【0061】
[モノ−I−シパート−シクロ(Lys−Arg−Gly−Asp−D−Phe)コンジュゲート(下記式16)の製造]
【0062】
【化15】

【0063】
モノ−I−シパート(30mg)を乾燥DCMに溶解し、この溶液に窒素雰囲気下で、シクロ(Lys−Arg−Gly−Asp−D−Phe)(20mg)、EDCI(12mg)及びDMAP(12mg)を添加した。この反応混合液を窒素雰囲気下、室温で一晩攪拌した。一晩攪拌した後、反応混合液を濃縮し、用意したシリカプレート上でクロマトグラフィーを行った(溶離剤:ジクロロメタン中の13%メタノール)。分離した化合物を90%TFA/DCMで3〜4時間更に処理し、油性の生成物をHPLCで更に分析、精製した(Waters社製、996光ダイオードアレイ検出器を有するDelta600)。Ana.カラム:Waters社製Symm−C−81、4.6×150mm、5μ:Semiprepカラム:Waters社製Symm−C−18、7.8×150mm、7μ:溶離剤としてアセトニトリル/水(グラジエント:30%〜100%ACN)を用いた。その結果、所望のモノ−I−シパート−シクロ(Lys−Arg−Gly−Asp−D−Phe)コンジュゲート(下記式16)を得た。収量:24mg。質量:m/z=1424(M+H)+
【0064】
[ピロ−IA(メチルエステル)(19)]
窒素雰囲気下で、無水DMF(5.0mL)中のメチル3−[4−{2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イルアミノ)エチルオキシ}−ベンゾイル]アミノ−2−(S)−アミノエチルスルホニルアミノプロピオナート(17)(47mg、0.1mmol)とピロカルボン酸(18)(60mg、0.11mmol)の溶液に、PyBOP(65mg、0.12mmol)と無水トリエチルアミン(0.3mL)を添加した。得られた反応混合液を室温で一晩攪拌した。その後、反応混合液を回転蒸発して乾燥し、最初にprepシリカTLCプレートで(溶離剤:CH2Cl2中の10%メタノール)、次にショートシリカカラム(溶離剤:CH2Cl2中の8%メタノール)で粗反応混合液を精製した後、所望の生成物(19)を得た。収量:50mg(50%)。
【0065】
1H−NMR(CDCl3中の10%CD3OD;400MHz):δ9.39,9.28及び8.56(全てのs,1H,メソ−H);7.95(dd,J=11.4,18.2,1H,3−ビニル);7.73(d,J=8.8,2H,ArH);6.84(d,J=8.8,2H,ArH);6.28(d,J=17.6,1H,3−ビニル);6.18(d,J=11.6,1H,3−vinyl);5.26(d,J=20,1H,132−CH2);5.06(d,J=20,1H,132−CH2);4.51(m,1H,18−H);4.30−4.20(m,2H,CH及び17−H);4.00(t,J=5.0,2H,OCH2);3.85(m,1H,CONHC2);3.67(s,3H,環CH3);3.62(m,2H,8−C2CH3);3.60(m,1H,CONHC2);3.58(s,3H,OCH3);3.42(t,J=5.0,2H,SO22);3.38(s,3H,環CH3);3.37−3.31(m,6H,3×NHC2);3.19(s,3H,環CH3);3.14(m,2H,3×NCH2);2.66,2.45,2.28,2.20(全てのm,4H,171及び172−H);1.93(t,J=5.6,2H,CH2);1.80(d,J=7.2,3H,18−CH3);1.68(t,J=7.8,3H,8−CH23)。C5262108Sの質量:986.45(Calculated);986.6(Found,M+)。
【0066】
[ピロ−インテグリンアンタゴニスト−IA(20)]
乾燥THF(10mL)中のピロ−IA(メチルエステル)(19)(40mg)の溶液に、アルゴン雰囲気下、LiOH(水(5mL)とメタノール(4mL)中に80mg)の溶液を添加し、この反応混合液を45分間攪拌した。その後、カチオン交換樹脂を用いて反応を慎重に中和した。樹脂を濾過して取り除き、反応混合液を回転蒸発して乾燥した。生成物を精製するために更に何かを行うことはなかった。
【0067】
収量:35mg(90%)。1H−NMR(CDCl3中の25%CD3OD;400MHz):δ9.39,9.28及び8.56(全てのs,1H,メソ−H);7.95(dd,J=11.4,18.2,1H,3−ビニル);7.73(d,J=8.8,2H,ArH);6.84(d,J=8.8,2H,ArH);6.28(d,J=17.6,1H,3−ビニル);6.18(d,J=11.6,1H,3−ビニル);5.26(d,J=20,1H,132−CH2);5.06(d,J=20,1H,132−CH2);4.51(m,1H,18−H);4.30−4.20(m,2H,CH及び17−H);4.00(t,J=5.0,2H,OCH2);3.85(m,1H,CONHC2);3.67(s,3H,環CH3);3.62(m,2H,8−C2CH3);3.60(m,1H,CONHC2);3.42(t,J=5.0,2H,SO22);3.38(s,3H,環CH3);3.37−3.31(m,6H,3×NHC2);3.19(s,3H,環CH3);3.14(m,2H,3×NCH2);2.66,2.45,2.28,2.20(全てのm,4H,171及び172−H);1.93(t,J=5.6,2H,CH2);1.80(d,J=7.2,3H,18−CH3);1.68(t,J=7.8,3H,8−CH23)。C5262108Sの質量:972.4(Caluculated);972.6(Found,M+)。
【0068】
[プルプリンイミド−Gly−IA(メチルエステル)(22)]
窒素雰囲気下で、無水DMF(3.0mL)中のメチル3−[4−{2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イルアミノ)エチルオキシ}−ベンゾイル]アミノ−2−(S)−アミノエチルスルホニルアミノプロピオナート(17)(20mg、0.04mmol)とグリシンプルプリンイミド(21)(20mg、0.03mmol)の溶液に、PyBOP(20mg、0.04mmol)と無水トリエチルアミン(0.1mL)を添加した。得られた反応混合液を室温で一晩攪拌した。その後、反応混合液を回転蒸発して乾燥し、最初にprepシリカTLCプレートで(溶離剤:CH2Cl2中の10%メタノール)、次にショートシリカカラムで(溶離剤:CH2Cl2中の8%メタノール)粗反応混合液を精製した後、所望の生成物(22)を得た。収量:15mg(45%)。
【0069】
1H−NMR(CDCl3中の10%CD3OD;400MHz):δ9.07,8.94及び8.58(全てのs,1H,メソ−H);7.82(dd,J=11.4,18.2,1H,3−ビニル);7.70(d,J=8.8,2H,ArH);6.75(d,J=8.8,2H,ArH);6.26(d,J=17.6,1H,3−ビニル);6.16(d,J=11.6,1H,3−ビニル);5.25(d,J=7.2,1H,17−H);5.10(dd,J=8.6,16.0,2H,NCH2);4.42(dd,J=4.4,7.6,1H,CH);4.35(q,J=6.8,1H,18−H);3.89(m,2H,OCH2);3.85(m,1H,CONHC2);3.80(m,2H,NHC2);3.72,3.52,3.36,3.33及び2.85(全てのs,全ての3H,3×環CH3及び2×OCH3について);3.67(m,1H,CONHC2);3.35(m,4H,2×NHC2);3.26(m,4H,8−C2CH3及びSO22);3.15(m,2H,NCH2);3.62(m,2H,8−C2CH3);2.68,2.38,1.98(全てのm,4H,171及び172−H);1.83(t,J=5.6,2H,CH2);1.80(d,J=7.2,3H,18−CH3);1.41(t,J=7.8,3H,8−CH23)。C55651111Sの質量:1087.46(Caluculated);1087.8(Found,M+)。
【0070】
[プルプリンイミド−Gly−IA(23)]
【0071】
【化16】

【0072】
乾燥THF(7mL)中のプルプリンイミド−Gly−IA(メチルエステル)(22)(15mg)の溶液に、アルゴン雰囲気下、LiOH(水(4mL)とメタノール(3mL)中に30mg)の溶液を添加し、この反応混合液を45分間攪拌した。その後、カチオン交換樹脂を用いて反応を慎重に中和した。樹脂を濾過して取り除き、反応混合液を回転蒸発して乾燥した。生成物を精製するために更に何かを行うことはなかった。収量:12mg(85%)。
1H−NMR(CDCl3中の25%CD3OD;400MHz):δ9.07,8.94及び8.58(全てのs,1H,メソ−H);7.82(dd,J=11.4,18.2,1H,3−ビニル);7.70(d,J=8.8,2H,ArH);6.75(d,J=8.8,2H,ArH);6.26(d,J=17.6,1H,3−ビニル);6.16(d,J=11.6,1H,3−ビニル);5.25(d,J=7.2,1H,17−H);5.10(dd,J=8.6,16.0,2H,NCH2);4.42(dd,J=4.4,7.6,1H,CH);4.35(q,J=6.8,1H,18−H);3.89(m,2H,OCH2);3.85(m,1H,CONHC2);3.80(m,2H,NHC2);3.36,3.33,2.85(全てのs,全ての3H,3×環CH3について);3.67(m,1H,CONHC2);3.35(m,4H,2×NHC2);3.26(m,4H,8−C2CH3及びSO22);3.15(m,2H,NCH2);3.62(m,2H,8−C2CH3);2.68,2.38,1.98(全てのm,4H,171及び172−H);1.83(t,J=5.6,2H,CH2);1.80(d,J=7.2,3H,18−CH3);1.41(t,J=7.8,3H,8−CH23)。C55651111Sの質量:1059.43(Caluculated);1059.8(Found,M+)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)腫瘍細胞で発現するインテグリンに対するアンタゴニスト、及び(2)腫瘍集積性テトラピロール光増感剤、蛍光染料及び元素Xのうち少なくとも1つ、のコンジュゲートを有する化合物であって、前記Xが、Zn、In、Ga、Al若しくはCuからなる群から選択される部分を有する金属、又は放射同位体標識された部分であり、前記放射同位体が11C、18F、64Cu、124I、99Tc、111In及びGdIIIからなる群から選択される、化合物。
【請求項2】
腫瘍細胞で発現するインテグリンに対するアンタゴニストと結合した腫瘍集積性テトラピロール光増感剤化合物を有することを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記光増感剤が、フェオホルビド及びピロフェオホルビドを含む、ポルフィリン、クロリン又はバクテリオクロリンであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記インテグリンがαvβ3、α5β1、αvβ5、α4β1又はα2β1インテグリンであることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
前記インテグリンがαvβ3、α5β1、αvβ5、α4β1又はα2β1インテグリンであることを特徴とする、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
前記アンタゴニストがRGDペプチドであることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
前記アンタゴニストが、4−[{2−(3,4,5,6−テトラ−ヒドロピリミジン−2−イルアミノ)エチルオキシ}ベンゾイル]アミノ−2−(S)−アミノエチル−スルホニルアミノ基を有することを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項8】
前記インテグリンがαvβ3であることを特徴とする、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
前記インテグリンがαvβ3であることを特徴とする、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
以下の構造式を有する、請求項1に記載の化合物、前記化合物とXとの複合体、又は、その多核複合体:
【化1】

式中、R1は−CH=CH2、−CH2CH3、−CHO、−COOH、又は
【化2】

であり、
9は−OR10であり、ここで、R10は炭素数1〜8の低級アルキル基、−(CH2−O)nCH3、−(CH22CO2CH3、−(CH22CONH−フェニレン−CH2DTPA、−CH2CH2CONH(CONH−フェニレン−CH2DTPA)2、−CH211、若しくは
【化3】

又は蛍光染料部分であり;
2、R2a、R3、R3a、R4、R5、R5a、R7及びR7aはそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基若しくは置換低級アルキル基であり、あるいは隣接する炭素原子上にあるR2、R2a、R3、R3a、R5、R5a、R7及びR7aのうちの2つが統合して共有結合を形成していてもよく、あるいは同一の炭素原子上にあるR2、R2a、R3、R3a、R5、R5a、R7及びR7aのうちの2つが二価のペンダント基と二重結合を形成していてもよく;R2及びR3が共に、酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を有する5若しくは6員環のヘテロ環を形成してもよく;R6は−CH2−、−NR11−若しくは共有結合であり;R8は−(CH22CO2CH3、−(CH22CONH−フェニレン−CH2DTPA、−CH2CH2CONH(CONH−フェニレン−CH2DTPA)2、−CH211、又は
【化4】

であり;
11は−CH2CONH−RGD−Phe−Lys、−CH2NHCO−RGD−Phe−Lys、蛍光染料部分、若しくは−CH2CONHCH2CH2SO2NHCH(CO2)CH2NHCO−フェニル−OCH2CH2NH−シクロ−CNH(CH23Nであり;
ここで、前記化合物は、−CH2CONH−RGD−Phe−Lys、−CH2NHCO−RGD−Phe−Lys、−CH2CONHCH2CH2SO2NHCH(CO2)CH2NHCO−フェニル−OCH2CH2NH−シクロ−CNH(CH23Nからなる群から選択される少なくとも1つのインテグリンアンタゴニストを有し、XがZn、In、Ga、Al、Cuからなる群から選択される金属又は放射性同位体標識された部分であって、前記放射性同位体が11C、18F、64Cu、124I、99Tc、111In及びGdIIIからなる群から選択されることを条件とする。
【請求項11】
腫瘍細胞で発現するインテグリンに対するアンタゴニストと蛍光染料とのコンジュゲートを有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記蛍光染料がインドシアニン染料であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−539163(P2010−539163A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524861(P2010−524861)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/010609
【国際公開番号】WO2009/038660
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(593108772)ヘルス リサーチ インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】Health Research,Inc.
【出願人】(506102112)ザ リサーチ ファンデーション オブ ステイト ユニヴァーシティ オブ ニューヨーク (3)
【Fターム(参考)】