説明

腫瘍形成形質転換に関連する内因性レトロウイルスポリペプチド

【課題】本発明の目的は、癌(例えば、前立腺癌)の予防、処置および診断において使用され得る物質をさらに提供することである。癌(例えば、前立腺癌および乳癌)の予防、処置および診断における改善を提供することが、さらなる目的である。
【解決手段】本発明者らは、+2リーディングフレームを利用するいくつかのものを含む、HERV−Kゲノムのenv領域においてスプライシングによって生じる一連のタンパク質をここで見出した。これらのタンパク質は、転写調節因子に典型的な活性を示し、そしてまた、腫瘍形成能を有する。これらのタンパク質は、癌の診断および治療において使用され得、そしてまた、例えばアジュバント治療のための、薬物標的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、以下の利益を主張する:2001年12月7日出願の国際特許出願PCT/U
S01/47824(WO02/46477として2002年6月13日に英語で公開さ
れた);2001年12月7日出願の米国特許出願番号10/016,604;2001
年12月7日出願の米国仮出願番号60/340,064;および2002年6月12日
出願の米国仮出願番号60/388,046。
【0002】
本明細書中で言及される全ての刊行物および特許は、各個々の文書が参考として具体的
かつ個別に援用されることが示されるのと同程度に、参考として本明細書中で援用される

【0003】
(技術分野)
本発明は、癌(例えば、前立腺癌)の診断に関する。特に、本発明は、前立腺腫瘍にお
いてアップレギュレートされた発現を示すヒト内因性レトロウイルス(HERV)の亜群
、およびこれらのウイルスによって発現されるスプライシングされたmRNAによってコ
ードされるポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0004】
(背景技術)
参考文献1および2は、HERV−KファミリーのHML−2亜群のヒト内因性レトロ
ウイルス(HERV)が、前立腺腫瘍においてアップレギュレートされた発現を示すこと
を開示している。参考文献1および2の内容は、本明細書中で参考として援用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、癌(例えば、前立腺癌)の予防、処置および診断において使用され得
る物質をさらに提供することである。癌(例えば、前立腺癌および乳癌)の予防、処置お
よび診断における改善を提供することが、さらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の開示)
HERVは、長年にわたって知られており、そしてHERV−Kファミリーゲノム配列
は、1986年以降公知である{参考文献187}。通常のgag、prt、polおよ
びenvのレトロウイルスタンパク質が、cORFまたはRecとして公知のHIV R
evまたはHTLV Rexのアナログを有するとして、HERV−Kについて同定され
ているが{3}、他の調節タンパク質(例えば、HIV Tatタンパク質またはHTL
V Taxタンパク質)のアナログは同定されていない。したがって、本発明は、以下をも提供する。
(1) 前立腺癌を診断する方法であって、該方法は、患者サンプルにおけるHML−2発現産
物の存在または非存在を検出する工程を包含し、ここで、該発現産物は、スプライシング
事象によって生成され、ここで、envコード領域の5’領域および開始コドンが、en
vのリーディングフレームに対して+2のリーディングフレームにおける下流コード領域
に連結される、方法。
(2) 項目1に記載の方法であって、前記患者サンプルが、前立腺組織サンプル、胸部組織
サンプル、または血液サンプルである、方法。
(3) 項目1または2に記載の方法であって、前記発現産物が、mRNA転写物またはポリ
ペプチドである、方法。
(4) 項目1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、前記mRNA転写物が、配列番号
19、20、21、24、25、26、38、40および/または42のうちの1つ以上
に対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列を含む、方法。
(5) 項目1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、前記mRNA転写物が、配列番号
7、8、9、10、11、12、28、29、30、31、34、35、36、39、4
1、43、67、68および69のうちの1つ以上に対して少なくとも50%の配列同一
性を有するポリペプチドをコードする、方法。
(6) 項目1〜5のいずれか1項に記載の方法であって、該方法が、前記患者サンプルから
RNAを抽出する工程を包含する、方法。
(7) 項目1〜6のいずれか1項に記載の方法であって、前記発現産物が、ハイブリダイゼ
ーションによって検出される、方法。
(8) 単離されたポリヌクレオチドであって、以下:(a)配列番号19、20、21、24
、25、26、38、40、42、51、52および278〜477および/または42
のヌクレオチド配列;(b)(a)の少なくとも約7ヌクレオチドのフラグメント;(c
)(a)に対して少なくとも50%の同一性を有するヌクレオチド配列;または(a)、
(b)もしくは(c)の相補体、を含む、単離されたポリヌクレオチド。
(9) スプライシング事象により生成される転写物によりコードされる単離されたポリペプチ
ドであって、ここで、HERV−K envコード領域の5’領域および開始コドンが、
HERV−Kゲノムにおけるenvのリーディングフレームに対して+2のリーディング
フレームにおける下流コード領域に連結される、ポリペプチド。
(10) 項目9に記載のポリペプチドであって、以下:配列番号7、8、9、10、11、1
2、28、29、30、31、34、35、36、39、41、43、66、67、68
および78〜277からなる群から選択されるアミノ酸配列;(b)(a)の少なくとも
5アミノ酸のフラグメント;または(c)(a)に対して少なくとも50%の同一性を有
するポリペプチド配列、を含む、ポリペプチド。
(11) 項目10に記載のポリペプチドであって、ここで、(b)前記フラグメントが、配列
番号7、8、9、10、11、12、28、29、30、31、34、35、36、39
、41、43、66、67、68および78〜277の1つ以上のT細胞エピトープまた
はB細胞エピトープを含む、ポリペプチド、
(12) 項目9、項目10または項目11に記載のポリペプチドをコードする、単離され
たポリヌクレオチド。
(13) 項目9、項目10または項目11に記載のポリペプチドに結合する、抗体。
(14) 項目13に記載の抗体であって、該抗体が、モノクローナル抗体である、抗体。
(15) 番号7、8および/または9のアミノ酸配列を含むタンパク質に結合し得、かつ該タン
パク質が転写活性化因子として作用するのを防止し得る、単離されたポリペプチド。
(16) 医薬として使用するための、項目8〜15のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド
、ポリペプチドまたは抗体。
(17) 前立腺癌、乳癌、精巣癌、多発性硬化症および/またはインシュリン依存性糖尿病を予
防または処置するための医薬の製造における、項目8から5のいずれか1項に記載のポ
リヌクレオチド、ポリペプチドまたは抗体の使用。
(18) 項目9、項目10または項目11に記載のポリペプチドおよび薬学的に受容可能
なキャリアを含む、免疫原性組成物。
(19) アジュバントをさらに含む、項目18に記載の組成物。
【0007】
Rev/Rexアナログである「cORF」は、envと同じ5’領域および開始コド
ンを共有するORFによってコードされているが、スプライシング事象によりenvコー
ド配列が除去され、そしてenvのリーディングフレームに対してリーディングフレーム
を+1にシフトさせる{4、5}。従って、PCAVのenv領域の最終エキソン内で、
リーディングフレーム1および2は、それぞれ、envおよびcORFをコードするが、
第3のリーディングフレームによってコードされるタンパク質は以前に報告されておらず
、そしてこの+2リーディングフレームは、HERV−Kにおいて既知の機能を有さない

【0008】
本発明者らは、+2リーディングフレームを利用するいくつかのものを含む、HERV
−Kゲノムのenv領域においてスプライシングによって生じる一連のタンパク質をここ
で見出した。これらのタンパク質は、転写調節因子に典型的な活性を示し、そしてまた、
腫瘍形成能を有する。これらのタンパク質は、癌の診断および治療において使用され得、
そしてまた、例えばアジュバント治療のための、薬物標的である。
【0009】
これらの新規ポリペプチド産物の同定は、注目に値する。なぜなら、完全な配列情報は
、15年以上にわたってHERV−Kウイルスについて利用可能であったからである。
【0010】
本発明は、癌を診断するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:患
者サンプルにおける、スプライシング事象によって生成されるHML−2発現産物の存在
または非存在を検出する工程であって、ここで、envコード領域の5’領域および開始
コドンは、ゲノム中のenvのリーディングフレームに対してリーディングフレーム+2
で、下流のコード領域に連結される。正常組織に対してより高いレベルの発現産物は、サ
ンプルが由来する患者が癌(例えば、前立腺癌)を有していることを示す。発現産物は、
ウイルス生活環において機能的であってもなくてもよい。
【0011】
検出される発現産物は、mRNA転写物またはこのような転写物から翻訳されたポリペ
プチドのいずれかである。これらの発現産物は、直接的または間接的に検出され得る。直
接的試験は、患者サンプル中でHML−2のRNAまたはポリペプチドを検出するアッセ
イを使用する。間接的試験は、HML−2からインビボで直接発現されない生体分子を検
出するアッセイ(例えば、HML−2 mRNAから逆転写されたcDNAを検出するア
ッセイ、またはHML−2ポリペプチドに応答して生じた抗体を検出するアッセイ)を使
用する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、HERV−K(CH)ポリヌクレオチドの描写を有するヒト内在性レトロウイルスおよびこのレトロウイルスに関連する位置の概略図である。
【図2】図2は、HERV−K(HML−2.HOM)(「ERVK6」としても公知)ゲノム内のオープンリーディングフレームの概略図である(7)。
【図3】図3は、HERV−K mRNAについて先行技術で記載されたスプライシング事象である。
【図4】図4は、env ORFの5’末端およびお3’末端の付近の、同定された複数のスプライス部位を示す。3つのリーディングフレームは、別々に影を付けられている。5つの多重スプライシング産物は、env ORFの下に示され、これはまた、図5において、図4の上において矢印で示されるプライマーから生じるPCR産物を示すゲルと共に示されている。
【図5】図5は、図4の上において矢印で示されるプライマーから生じるPCR産物を示すゲルである。
【図6】図6は、tat活性について試験するための発現アッセイにおいて使用されるアデノウイルスベクターを示す。
【図7】図7は、上記ベクターから駆動されるGFP発現の結果を示す。
【図8】図8は、PCAPポリペプチドの活性を試験するために使用されるベクターを示す。
【図9】図9は、図6のベクターと共に、上記ベクターを使用して得られたFACSデータを示す。
【図10】図10は、PCA−mRNAのLTRにおいて作製される欠失を示す。
【図11】図11は、上記LTRから駆動されたGFP発現を示す。
【図12】図12は、PCA−mRNAの5’末端のRNAマッピングについてのデータを示す。
【図13】図13は、配列番号14の推定二次構造を示す。
【図14】図14は、癌細胞株におけるPCAV転写物のノーザンブロット分析を示す。左上の矢印は、ゲノムmRNA転写物の位置を示す。隣の矢印は、env転写物の位置を示す。下の2つの矢印は、他のORFの位置を示す。これらのレーンは、以下の細胞株由来のRNAを含む:(1)Tera 1;(2)DU145;(3)PC3;(4)MDA Pca−2b;(5)LnCaP。Tera 1は、奇形癌細胞株であり;他は、前立腺癌細胞株である。
【図15】図15は、LTRの間のスプライス事象を検出するために使用されるPCRストラテジーを例示する。図15において、横線は、HML−2ゲノムを表し、ゲノムの上の縦線は、スプライス部位であり、そしてゲノムの下の縦線は、gag、polおよびenvのATGコドンである。順方向(F)および逆方向(R)PCRプライマーのおおよその位置もまた示される。
【図16】図16は、上記ストラテジーの結果を示す。
【図17】図17は、HML−2におけるスプライシングのパターンを示す。
【図18】図18は、エキソン2における様々なスプライス結合部を示す。
【図19】図19は、スプライス結合領域におけるエキソン1のアライメントを示す。
【図20】図20は、エキソン1.5のアライメントを示す。
【図21−1】図21−1は、エキソン2のアライメントを示す。
【図21−2】図21−2は、エキソン2のアライメントを示す。
【図21−3】図21−3は、エキソン2のアライメントを示す。
【図22】図20は、エキソン3のアライメントを示す。全てのアライメント中の数字は、プロトタイプHERV−K配列のGenBankエントリーY17832の位置を表す。
【図23】図23は、PCAV mRNAの5’末端をマッピングするために使用されるRT−PCR走査アッセイの結果を示す。
【図24】図24は、RNase保護アッセイの詳細を示す。2つのアンチセンスプローブ(長いプローブ(24B)および短いプローブ(24C))を使用した。両方のプローブは、24Aで示される領域を保護した。24Bにおいて、TATAシグナルの位置に基づいて「通常の」5’末端に基づいて予測されるバンドの位置、および達成される実際のバンドが示される。24Bにおける3つのレーンは、(1)Tera1;(2)RNAなし、(3)プローブ、RNaseなしである。24Cにおける2つのレーンは、(1)Tera1;(2)プローブ、RNAなしである。
【図25】図25は、mRNAの5’領域について試験するための、図13で削除された領域を示す。
【図26】図26は、欠失変異体から駆動されたGFP発現のFACS分析を示す。
【図27】図27は、PCAP4が、HERV−K LTR(「LTR62」)を活性化するが、マウス白血病ウイルスLTR(「MoLTR」)を活性化しないことを示す。
【図28】図28は、PCAP4が、HIV LTRを活性化し得ることを示す。
【図29】図29Aは、PCAP4がEF1Aプロモーターを活性化することを示し、そして図29Bは、PCAP4が、CMVプロモーターを活性化しないことを示す。
【図30】図30は、PCAP2の細胞成分局在化を示す。
【図31】図31は、マトリゲルにプレーティングされた種々の細胞を示す。
【図32】図32は、軟寒天で培養された細胞を示す。
【図33】図33は、種々の細胞のRT−PCR分析を示す(204)。レーン1は、200、300、400、および500bpのマーカーを含む。他のレーンについて、偶数のレーンが、RTを用いて得られ、そして奇数は、RTを用いずに得られる:(2および3)一次ヒトリンパ球;(4および5)形質転換されたB細胞;(6および7)Tera1細胞;(8および9)乳癌生検;(10および11)セミノーマ生検;(12および13)コントロール。
【図34】図34は、PCAP4の細胞成分局在化を示す。
【図35】図35は、3週間の培養後、メチレンブルーで染色された細胞を示す。
【図36】図36は、空のpCEP4ベクターを示す。
【図37】図37は、種々のベクターでの形質転換の4日後の増殖後のNIH3T3細胞を示す。細胞密度をグラフに示し、これらの細胞自体は、1×および200×の倍率で示される。
【図38】図38は、(A)PCAP2、(B)PCAP3、または(C)非感染を発現する細胞のTUNEL分析を示す。
【図39】図39は、PCAP2でトランスフェクトしたPrEC(図39B)およびコントロールPrEC(39AおよびC)を示す。アスタリスクは、1つより多い核を有する細胞を示す。
【図40】図40は、細胞増殖を検出するための、PrECのブロモ−デオキシウリジン標識を示す。
【図41】図41は、乳癌組織(41A)および正常胸部組織(41B)のRT−PCRを示す。PCAP2およびgusB(βグルクロニダーゼ)転写物の位置を示す。
【図42】図42は、前立腺癌患者から採取した組織の染色部分に対する抗gagモノクローナル抗体5G2を使用する免疫蛍光実験を示す。図42Bは、萎縮組織を示し、図42Cは、グリーソン分類3の癌を示し、そして図42Dは、グリーソン分類4の癌を示す。
【図43】図43は、MDALTRからのGFP発現を示すFACSスペクトルである。左から右への3つのトレースは、以下である:(1)非感染細胞;(2)PCAP3;(3)PCAP4。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A−患者サンプル)
本発明の診断方法は、癌の診断についてmRNAに基づくが、患者サンプルは、一般に
、目的の組織由来の細胞(例えば、前立腺癌について前立腺細胞、乳癌について乳房細胞
など)を含む。これらの細胞は、関連する器官から採取された組織サンプル中に存在し得
るか、または(例えば、転移の間に)循環中に逃れた細胞であり得る。細胞を含むことの
かわりに、または細胞を含むのと同様に、サンプルは、HML−2由来のmRNAを含む
ビリオンまたは体液を含み得る。
【0014】
本発明の診断方法がポリペプチドに基づく場合、患者サンプルは、(mRNAについて
上記したように)細胞および/またはビリオンを含み得るか、あるいはポリペプチドを認
識する抗体を含み得る。このような抗体は、代表的に、循環中に存在する。
【0015】
従って、一般に、雄性についての患者サンプルは、前立腺サンプル(例えば、生検)ま
たは血液サンプルであり、そして雌性については、乳房サンプル(例えば、生検)または
血液サンプルである。
【0016】
患者は、一般にはヒトであり、そして好ましくは成体のヒトである。
【0017】
発現産物は、患者サンプル自体において検出され得るか、またはサンプル由来の物質(
例えば、細胞溶解物の上清またはRNA抽出物またはRNA抽出物から生成されたcDN
AまたはRNA抽出物から翻訳されたポリペプチドまたは患者から抽出された細胞の培養
物由来の細胞など)において検出され得る。これらは、本発明の意味において「患者サン
プル」であるとなおみなされる。
【0018】
本発明の方法は、インビトロまたはインビボで実施され得る。
【0019】
患者サンプルの他の可能な供給源としては、単離された細胞、全組織または体液(例え
ば、血液、血漿、血清、尿、胸水、脳脊髄液、乳汁、初乳、乳房によって分泌される他の
流体、精液(semen、seminal fluid)など)が挙げられる。
【0020】
(B−mRNA発現産物)
本発明の診断方法がmRNA検出に基づく場合、これは代表的に、本発明のポリペプチ
ドをコードするRNAを検出することを含む。RNAは、Env ORFのATGコドン
を含み、これは、図17において示されるようにスプライシングされる、Env ORF
の3’由来の配列と同じリーディングフレームにあるが、(HML−2のゲノムDNAコ
ピー中のATGに対して)+2リーディングフレーム(すなわち、第3のリーディングフ
レーム)である。従って、本発明は、スプライシング事象によって生成されるRNAを検
出する工程を包含し得、ここで、envコード領域の5’領域および開始コドンは、en
vのリーディングフレームに対してリーディングフレーム+2で、下流のコード領域に連
結される。
【0021】
好ましいRNAは、配列番号52に対して少なくともs%の配列同一性を有する配列を
含む。配列番号52は、図22の「潜在的スプライシング部位B」の直ぐ下流のHERV
−K(C7)ウイルス{参考文献6}の50ヌクレオチドである。
【0022】
他の好ましいRNAは、配列番号19、20、21、24、25、26、38、40お
よび/または42の1つ以上に対して少なくともs%の配列同一性を有する配列を含む。
特に好ましいRNAは、配列番号38、40および/または42の1つ以上に対して少な
くともs%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする配列を含む。
【0023】
好ましいRNAは、配列番号7、8、9、10、11、21、28、29、30、31
、34、35、36、39、41、43、67、68および69の1つ以上に対して少な
くともs%の配列同一性を有する配列を含む。特に好ましいRNAは、配列番号7、8お
よび/または9の1つ以上に対して少なくともs%の配列同一性を有するポリペプチドを
コードする配列を含む。
【0024】
sの好ましい値は、少なくとも50(例えば、少なくとも55、60、65、70、7
5、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99
.5、99.9など)である。
【0025】
好ましいRNA配列は、配列番号49を含むRNAに結合し得るポリペプチドをコード
する。
【0026】
PNAはまた、通常、以下のうちの1つ、2つ、3つ、4つまたは5つを含む:
1.配列番号49に対して少なくとも75%の同一性(例えば、76%、77%、78
%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88
%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98
%、99%、99.5%、99.9%、100%の同一性)を有する上流配列;または配
列番号49に対して少なくとも50%の同一性(例えば、51%、52%、53%、54
%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64
%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74
%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84
%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94
%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、100%の同
一性)を有し、かつ少なくとも95%の信頼係数で、正常(すなわち、非癌性)細胞にお
ける発現と比較して、少なくとも1.5倍(例えば、2倍、2.5倍、5倍、10倍、2
0倍、50倍など)高いレベルで発現される、配列;または配列番号49のうちの少なく
とも20個連続したヌクレオチドフラグメント(例えば、25、30、35、40、45
、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、1
15、120、125、130、135、140、145、150、155、160、1
65、170、175、180、190、195、200、205、210、215、2
20、225、230、235、240、245、250、255個連続したヌクレオチ
ドなど)に対して、少なくとも80%の同一性(例えば、81%、82%、83%、84
%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94
%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、100%の同
一性)を有する配列;または配列番号49の少なくとも20個連続したヌクレオチドフラ
グメント(例えば、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、7
5、80、85、90、95、100、110、115、120、125、130、13
5、140、145、150、155、160、165、170、175、180、19
0、195、200、205、210、215、220、225、230、235、24
0、245、250、255個連続したヌクレオチドなど)に対して、少なくとも80%
の同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%
、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%
、99%、99.5%、99.9%、100%の同一性)を有し、かつ少なくとも95%
の信頼係数で、正常(すなわち、非癌性)細胞における発現と比較して、少なくとも1.
5倍(例えば、2倍、2.5倍、5倍、10倍、20倍、50倍など)高いレベルで発現
される、配列。この配列は、代表的には、RNAの5’末端にある。配列番号49は、「
ERVK6」HML−2ウイルス(参考文献7)のLTRにおけるR領域の初めのヌクレ
オチド配列である。R領域のこの部分は、HML−2転写物において見出され得、そして
このR領域の部分を含むmRNA分子の転写は、前立腺癌においてアップレギュレートさ
れる。
【0027】
2.以下の配列を含む上流領域:配列番号50に対して少なくとも75%の配列同一性
(例えば、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%
、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%
、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、100%の同一
性)を有する配列;または配列番号50に対して少なくとも50%の同一性(例えば、5
1%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、6
1%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、7
1%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、8
1%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、9
1%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%
、99.9%、100%の同一性)を有し、かつ少なくとも95%の信頼係数で、正常(
すなわち、非癌性)細胞における発現と比較して、少なくとも1.5倍(例えば、2倍、
2.5倍、5倍、10倍、20倍、50倍など)高いレベルで発現される、配列;または
配列番号50の少なくとも20個連続したヌクレオチドフラグメント(例えば、25、3
0、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95
、100、110、115、120、125、130、135、140、145個連続し
たヌクレオチドなど)に対して、少なくとも80%の同一性(例えば、81%、82%、
83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、
93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、
100%の同一性)を有する配列;または配列番号50の少なくとも20個連続したヌク
レオチドフラグメント(例えば、25、30、35、40、45、50、55、60、6
5、70、75、80、85、90、95、100、110、115、120、125、
130、135、140、145個連続したヌクレオチドなど)に対して、少なくとも8
0%の同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、8
8%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、9
8%、99%、99.5%、99.9%、100%の同一性)を有し、かつ少なくとも9
5%の信頼係数で、正常(すなわち、非癌性)細胞における発現と比較して、少なくとも
1.5倍(例えば、2倍、2.5倍、5倍、10倍、20倍、50倍など)高いレベルで
発現される、配列。配列番号50は、ERVK6 LTRにおける配列番号49の下流の
RU領域のヌクレオチド配列である。この領域は、全長HML−2転写物において見出
されるが、HML−2 LTRプロモーターから転写される全てのmRNAに存在し得る
わけではない(例えば、転写が弱められる場合)。
【0028】
3.以下の配列を含む上流領域:配列番号6に対して少なくとも75の同一性(例えば
、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%
、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%
、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、100%の同一性)を有
する配列;または配列番号6に対して少なくとも50%の同一性(例えば、51%、52
%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62
%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72
%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82
%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92
%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9
%、100%の同一性)を有し、かつ少なくとも95%の信頼係数で、正常(すなわち、
非癌性)細胞における発現と比較して、少なくとも1.5倍(例えば、2倍、2.5倍、
5倍、10倍、20倍、50倍など)高いレベルで発現される、配列;または配列番号6
の少なくとも20個連続したヌクレオチドフラグメント(例えば、25、30、35、4
0、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100の連
続したヌクレオチドなど)に対して、少なくとも80%の同一性(例えば、81%、82
%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92
%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9
%、100%の同一性)を有し、かつ少なくとも95%の信頼係数で、正常(すなわち、
非癌性)細胞における発現と比較して、少なくとも1.5倍(例えば、2倍、2.5倍、
5倍、10倍、20倍、50倍など)で発現される、配列;または、配列番号6の少なく
とも20個連続したヌクレオチドフラグメント(例えば、25、30、35、40、45
、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100個連続したヌ
クレオチドなど)に対して、少なくとも80%の同一性(例えば、81%、82%、83
%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93
%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、10
0%の同一性)を有し、かつ少なくとも95%の信頼係数で、正常(すなわち、非癌性)
細胞における発現と比較して、少なくとも1.5倍(例えば、2倍、2.5倍、5倍、1
0倍、20倍、50倍など)高いレベルで発現される、配列。配列番号6は、U領域と
初めの5’スプライス部位との間のERVK6ウイルスの領域のヌクレオチド配列である
。この領域は、全長HML−2転写物において見出されるが、いくつかの改変体により欠
失されており、そして上記の領域2と同様に、HML−2 LTRプロモーターから転写
される全てのmRNAにおいて存在し得るわけではない。
【0029】
4.以下の配列を含む下流領域:配列番号5に対して少なくとも75%の同一性(例え
ば、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85
%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95
%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、100%の同一性)を
有する配列;または配列番号5に対して少なくとも50%の同一性(例えば、51%、5
2%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、6
2%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、7
2%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、8
2%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、9
2%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.
9%、100%の同一性)を有し、かつ少なくとも95%の信頼係数で、正常(すなわち
、非癌性)細胞における発現と比較して、少なくとも1.5倍(例えば、2倍、2.5倍
、5倍、10倍、20倍、50倍など)高いレベルで発現される、配列;または配列番号
5の少なくとも20の連続したヌクレオチドフラグメント(例えば、25、30、35、
40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、
110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、
160、165、170、175、180、190、195、200、205、210、
215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、
265、270、275、280、285、290、295、300、350、400、
450、500、550、600、650、700、750、800個連続したヌクレオ
チドなど)に対して、少なくとも80%の同一性(例えば、81%、82%、83%、8
4%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、9
4%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、100%の
同一性)を有する配列;または配列番号5の少なくとも20個連続したヌクレオチドフラ
グメント(例えば、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、7
5、80、85、90、95、100、110、115、120、125、130、13
5、140、145、150、155、160、165、170、175、180、18
5、190、195、200、205、210、215、220、225、230、23
5、240、245、250、255、260、265、270、275、280、28
5、290、295、300、350、400、450、500、550、600、65
0、700、750、800個連続したヌクレオチドなど)に対して、少なくとも80%
の同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%
、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%
、99%、99.5%、99.9%、100%の同一性)を有し、かつ少なくとも95%
の信頼係数で、正常(すなわち、非癌性)細胞における発現と比較して、少なくとも1.
5倍(例えば、2倍、2.5倍、5倍、10倍、20倍、50倍など)高いレベルで発現
される、配列。配列番号5は、ERVK6の3’末端におけるUR領域のヌクレオチド
配列である。この配列は、代表的に、Tatコード領域の停止コドンと、任意のポリAテ
イルの直前にある。
【0030】
5.下流3’ポリAテイル。
【0031】
上記の配列の同一性%は、Smith−Watermanアルゴリズムによって、デフ
ォルトパラメーター(オープンギャップペナルティー=−20および伸長ペナルティー=
−5)を使用して決定される。
【0032】
これらのmRNA分子は、以下で、「PCA−mRNA」分子(「前立腺癌関連mRN
A」)と称され、そしてこれらのPCA−mRNAを発現する内在性ウイルスは、PCA
V(「前立腺癌関連ウイルス」)と称される。それにもかかわらず、これらのPCAVは
また、他のタイプの癌、特に、乳癌と関連し得る。
【0033】
従って、一般的に、検出されるmRNAは、式N−N−N−N−N−ポリA
を有し、ここで、
は、配列番号49に対して少なくとも75%の配列同一性を有するか;または配列
番号49に対して少なくとも50%の同一性を有し、かつ少なくとも95%の信頼係数で
、正常(すなわち、非癌性)細胞における発現と比較して、少なくとも1.5倍高く現さ
れるか;または配列番号49の少なくとも20の連続したヌクレオチドフラグメントに対
して少なくとも80%の同一性を有するか;または配列番号49の少なくとも20の連続
したヌクレオチドフラグメントくとも80%の同一性を有し、かつ少なくとも95%の信
頼係数で、正常(すなわち、非癌性)細胞における発現と比較して、少なくとも1.5倍
高くされ;
は、配列番号50に対して少なくとも75%の配列同一性を有するか;または配列
番号50に対して少なくとも50%の同一性を有し、かつ少なくとも95%の信頼係数で
、正常(すなわち、非癌性)細胞における発現と比較して、少なくとも1.5倍高くされ
るか;または配列番号50の少なくとも20の連続したヌクレオチドフラグメントに対し
て少なくとも80%の同一性を有するか;または配列番号50の少なくとも20の連続し
たヌクレオチドフラグメントに対して少なくとも80%の同一性を有し、かつ少なくとも
95%の信頼係数で、正常(すなわち、非癌性)細胞における発現と比較して、少なくと
も1.5倍高く現され;
は、配列番号6に対して少なくとも75%の配列同一性を有するか;または配列番
号6に対して少なくとも50%の同一性を有し、かつ少なくとも95%の信頼係数で、正
常(すなわち、非癌性)細胞における発現と比較して、少なくとも1.5倍高くされるか
;または配列番号6の少なくとも20連続したヌクレオチドフラグメントに対して少なく
とも80%の同一性を有するか;または配列番号6の少なくとも20個続したヌクレオチ
ドフラグメントに対して少なくとも80%の同一性を有し、かつ少なくとも95%の信頼
係数で、正常(すなわち、非癌性)細胞における発現と比較して、少なくとも1.5倍高
く発現され;
は、envのリーディングフレームに対して+2のリーディングフレームにおける
下流コード領域にスプライシングされたenvコード領域の開始コドンを含むRNA配列
を含む。
【0034】
は、配列番号5に対して少なくとも75%の配列同一性を有するか;または配列番
号5に対して少なくとも50%の同一性を有し、かつ少なくとも95%の信頼係数で、正
常(すなわち、非癌性)細胞における発現と比較して、少なくとも1.5倍高く発現され
るか;または配列番号5の少なくとも20個連続したヌクレオチドフラグメントに対して
少なくとも80%の同一性を有するか;または配列番号5少なくとも20個連続したヌク
レオチドフラグメントに対して少なくとも80%の同一性を有し、かつ少なくとも95%
の信頼係数で、正常(すなわち、非癌性)細胞における発現と比較して、少なくとも1.
5倍高く発現され;
およびNは存在するが、N、N、NおよびポリAは、必要に応じてである

【0035】
は、検出されるmRNAに存在し、より好ましくは、N−Nが存在する。
【0036】
は、好ましくは、mRNAの5’末端(すなわち、5’−N−...)にある。
N1は、上記の配列番号49を参照して規定されるが、配列番号49の5’末端から10
0ヌクレオチド(例えば、10、20、30、40、50、60、70、71、72、7
3、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86
、87、88、89、90または100)までは、転写の開始部位に依存して省かれても
よい(例えば、Nは、配列番号478に対して少なくとも75%の配列同一性であり得
る)。
【0037】
N5が存在する場合、これは3’ポリAテイルの直前にあることが好ましい(すなわち
,...−N−ポリA−3’)。
【0038】
RNAは、一般に、5’キャップを有する。
【0039】
(B.1−サンプル中のRNAの富化)
診断がmRNA検出に基づく場合、本発明の方法は、好ましくは、以下の初期工程を包
含する:RNA(例えば、mRNA)を患者サンプルから抽出する工程;(b)mRNA
を除去することなく、患者サンプルからDNAを除去する工程;および/または(c)配
列番号4を含むRNAではなく、配列番号4を含むDNAを、患者サンプルから除去もし
くは破壊する工程。これは必要である。なぜなら、正常な細胞および癌細胞の両方のゲノ
ムは、複数のPCAV DNAテンプレートを含み、一方、PCA−mRNAレベルの増
加は、癌細胞においてのみで見出されるからである。代替として、相同なDNAの存在に
より影響を受けないRNA特異的アッセイが使用され得る。
【0040】
生物学的サンプルからRNAを抽出する方法は、周知であり(例えば、参考文献8およ
び17)、この方法には、グアニジニウム緩衝液、塩化リチウム、SDS/酢酸カリウム
などに基づく方法が挙げられる。総細胞RNAが抽出された後、mRNAは、例えば、オ
リゴ−dT技術によって富化され得る。
【0041】
mRNAを除去することなく、生物学的サンプルからDNAを除去する方法は、周知で
あり(例えば、添付物Cおよび参考文献8)、そしてこれにはDNase消化が挙げられ
る。
【0042】
PCR−mRNA配列を含む、RNAではなくDNAを除去する方法は、PCRーmR
NA内の配列(例えば、配列番号4内のDNA配列を認識する制限酵素)に特異的である
が、対応するRNA配列を切断しない、試薬を使用する。
【0043】
サンプルからPCA−mRNAを特異的に精製する方法もまた、使用され得る。1つの
このような方法は、PCA−mRNAに結合する親和性支持体を使用する。この親和性支
持体は、PCAVのLTRに結合するポリペプチド配列(例えば、以下に記載のポリペプ
チド)を含み得る。
【0044】
(B.2−RNAの直接検出)
サンプル中の特定のRNA配列の存在または非存在を検出するための種々の技術が利用
可能である(例えば、参考文献8および17)。サンプルが、ゲノムPCAV DNAを
含む場合、検出技術は、一般に、RNA特異的であり;サンプルが、PCAV DNAを
含まない場合、検出技術は、RNA特異的であってもなくてもよい。
【0045】
ハイブリダイゼーションベースの検出技術が使用され得、ここで、PCA−mRNAの
領域に相補的なポリヌクレオチドプローブは、ハイブリダイゼーション条件下で、RNA
含有サンプルと接触される。ハイブリダイゼーションの検出は、プローブに相補的な核酸
が存在することを示す。RNAを用いて使用するためのハイブリダイゼーション技術とし
ては、ノーザンブロット、インサイチュハイブリダイゼーションおよびアレイが挙げられ
る。
【0046】
サンプル中のRNA分子の配列が得られる配列決定もまた使用され得る。これらの技術
は、目的の配列がサンプル中に存在するか否かを直接示す。Nに対応するRNAの5’
末端の配列の決定が、一般的に適している。
【0047】
増幅をベースにした技術もまた、使用され得る。これらとしては、PCR増幅、SDA
増幅、SSSR増幅、LCR増幅、TMA増幅、NASBA増幅、T7増幅などが挙げら
れる。この技術は、好ましくは、指数増幅を与える。RNAを用いる使用のために好まし
い技術は、RT−PCR(例えば、参考文献8の第15章を参照のこと)である。前立腺
細胞からのmRNAのRT−PCRは、参考文献9、10、11、12などにおいて報告
され、そして胸部細胞からのmRNAのRT−PCRは、参考文献13、14、15、1
6などにおいて報告されている。
【0048】
(B.3 RNAの間接検出)
RNAを直接検出するよりむしろ、RNAに由来する分子を検出すること(すなわち、
RNAの間接検出)が好ましくあり得る。mRNAを検出する代表的な間接方法は、逆転
写によってcDNAを調製することであり、次いでcDNAを直接検出することである。
cDNAの直接検出は、一般的にRNAを直接するための、上述された技術と同じ技術を
使用する(が、RT−PCRのような方法は、DNA検出については適切ではないこと、
およびcDNAが二本鎖であり、そのため検出技術が、配列、その相補体、または二本鎖
分子に基づき得ることが理解される)。
【0049】
(B.4 ポリヌクレオチド物質)
本発明は、例えば、PCAV核酸の検出において使用するためのポリヌクレオチド物質
を提供する。
【0050】
本発明は、以下:(a)上で定義されたようなヌクレオチド配列N−N−N−N
−N−ポリA;(b)上で定義されたようなヌクレオチド配列N−N−N−N
−Nの少なくともx個のヌクレオチドのフラグメント;(c)上で定義されたような
ヌクレオチド配列N−N−N−N−Nと少なくともs%の同一性を有するヌク
レオチド配列;あるいは(d)(a)、(b)または(c)の相補体、を含む単離された
ポリヌクレオチドを提供する。これらのポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列N−N
−N−N−N−ポリAの改変体(例えば、変性改変体、対立遺伝子改変体、ホモ
ログ、オルソログ(ortholog)、変異体など)を含む。
【0051】
フラグメント(b)は、好ましくは、Nのフラグメントを含む。
【0052】
xの値は、少なくとも7(例えば、少なくとも8、9、10、11、12、13、14
、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、
40、45、50、60、70、75、80、90、100など)である。xの値は、2
000未満(例えば、1000、500、100、または50未満)であり得る。
【0053】
sの値は、好ましくは、少なくとも50(例えば、少なくとも55、60、65、70
、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、
99.5、99.9など)である。
【0054】
本発明はまた、式5’−A−B−C−3’を有する単離されたポリヌクレオチドを提供
し、ここで:−A−は、aヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり;−C−は、c
ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり;−B−は、(a)上で定義されたような
ヌクレオチド配列N−N−N−N−Nのbヌクレオチドのフラグメントまたは
(b)上で定義されたようなヌクレオチド配列N−N−N−N−Nのbヌクレ
オチドのフラグメントの相補体のいずれかからなるヌクレオチド配列であり;そして該ポ
リヌクレオチドは、(a)ヌクレオチド配列N−N−N−N−Nのフラグメン
トでも(b)ヌクレオチド配列N−N−N−N−Nのフラグメントの相補体の
どちらでもない。
【0055】
−B−領域は、好ましくは、Nのフラグメントである。−A−および/または−C−
位置は、例えば、TMAにおいて使用するためのプロモーター配列(またはその相補体)
含み得る。
【0056】
a+cの値は、少なくとも1(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11
、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、
25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、9
0、100など)である。bの値は、少なくとも7(例えば、少なくとも8、9、10、
11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、2
4、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100など)であ
る。a+b+cの値は、少なくとも9(例えば、少なくとも10、11、12、13、1
4、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35
、40、45、50、60、70、80、90、100など)であることが好ましい。a
+b+cの値は、多くても500(例えば、多くても450、400、350、300、
250、200、190、180、170、160、150、140、130、120、
110、100、90、80、70、60、50、40、30、25、20、19、18
、17、16、15、14、13、12、11、10、9)であることが好ましい。
【0057】
−B−がN−N−N−N−Nのフラグメントである場合、−A−のヌクレオ
チド配列は、代表的にはN−N−N−N−Nにおける配列−B−の5’である
aヌクレオチドとn%未満の配列同一性を共有し、そして/または−C−のヌクレオチド
配列は、代表的にはN−N−N−N−Nにおける配列−C−の3’であるcヌ
クレオチドとn%未満の配列同一性を共有する。同様に、−B−がN−N−N−N
−Nのフラグメントの相補体である場合、−A−のヌクレオチド配列は、代表的には
−N−N−N−Nにおける配列−B−の相補体の5’であるaヌクレオチド
の相補体とn%未満の配列同一性を共有し、そして/または−C−のヌクレオチド配列は
、代表的にはN−N−N−N−Nにおける配列−C−の相補体の3’であるc
ヌクレオチドの相補体とn%未満の配列同一性を共有する。nの値は、概して60以下(
例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、10以下)である。
【0058】
本発明はまた、上述されたようなヌクレオチド配列N−N−N−N−Nを有
する核酸、または上述されたようなヌクレオチド配列N−N−N−N−Nの相
補体を有する核酸に選択的にハイブリダイズする単離されたポリヌクレオチド配列を提供
する。このポリヌクレオチドは、好ましくは、少なくともNにハイブリダイズする。
ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」の条件下で実行され得る
。これは、当該分野において広く公知であり、かつ公開されているハイブリダイゼーショ
ン反応のストリンジェンシーを増大する条件である(例えば、参考文献17の7.52頁
を参照のこと)。関連する条件の例としては、(ストリンジェンシーを増大する順で):
25°C、37°C、50°C、55°Cおよび68°Cのインキュベーション温度;1
0×SSC、6×SSC、1×SSC、0.1×SSCの緩衝液濃縮物(ここで、SSC
は、0.15M NaClおよび15mMクエン酸緩衝液である)および他の緩衝系を使
用する等価なもの;0%、25%、50%、および75%のホルムアミド濃縮物;5分間
〜24時間のインキュベーション時間;1回、2回、またはそれ以上の洗浄工程;1分間
、2分間、または15分間の洗浄インキュベーション時間;ならびに6×SSC、1×S
SC、0.1×SSC、または脱イオン水の洗浄溶液が挙げられる。ハイブリダイゼーシ
ョン技術は、当該分野において周知である(例えば、参考文献8、17、18、19、2
0などを参照のこと)。当業者によって理解されるように、特定のポリヌクレオチド配列
およびこのポリヌクレオチド配列によってコードされる特定のドメインに依存して、本発
明のポリヌクレオチドと既知のポリヌクレオチドとを比較する際のハイブリダイゼーショ
ン条件が異なり得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、低ストリンジ
ェンシー条件下で、選択的にハイブリダイズする;他の実施形態において、この単離され
たポリヌクレオチドは、中間のストリンジェンシー条件下で、選択的にハイブリダイズす
る;他の実施形態において、この単離されたポリヌクレオチドは、高ストリンジェンシー
条件下で、選択的にハイブリダイズする。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション
の例示的なセットは、50°Cおよび10×SSCである。中間のストリンジェンシーハ
イブリダイゼーション条件の例示的なセットは、55°Cおよび1×SSCである。高ス
トリンジェンシーハイブリダイゼーション条件の例示的なセットは、68°Cおよび0.
1×SSCである。
【0060】
本発明の特に好ましいポリヌクレオチドは、以下に規定されるようなポリヌクレオチド
をコードする。「コード」によって、ポリヌクレオチド(例えば、RNA)は翻訳される
が、以下に規定されるポリヌクレオチドのアミノ酸をコードする一連のコドンを含むこと
が必ずしも意味されるのではない。
【0061】
本発明はまた、以下:(a)配列番号278〜477からなる群から選択されるヌクレ
オチド配列;(b)(a)の少なくともx個のヌクレオチドのフラグメント;(c)(a
)と少なくともs%同一性を有するヌクレオチド配列;または(d)(a)、(b)また
は(c)の相補体、を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0062】
本発明はまた、(a)配列番号18、19、20、21、22、23、24、25、2
6、27、38、40、42、51および52からなる群から選択されるヌクレオチド配
列;(b)(a)の少なくともx個のヌクレオチドのフラグメント;(c)(a)と少な
くともs%同一性を有するヌクレオチド配列;または(d)(a)、(b)または(c)
の相補体、を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0063】
本発明のポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション反応および/または増幅反応に
おいて使用するためのプローブおよび/またはプライマーとして、特に有用である。
【0064】
本発明の1つ以上のポリヌクレオチドは、同じ核酸標的にハイブリダイズし得る(例え
ば、1つ以上が単一RNAにハイブリダイズし得る)。
【0065】
2つの核酸配列間のパーセンテージ配列同一性についての言及は、アライメントされた
場合、この塩基のパーセンテージは、2つの配列を比較した際と同じであることを意味す
る。このアライメントおよびパーセント相同性または配列同一性は、当該分野において公
知のソフトウェアプログラム(例えば、参考文献20のセクション7.7.18において
記載されるもの)を使用して実行され得る。好ましいアライメントプログラムは、GCG
Gap(Genetics Computer Group、Wisconsin、S
uite Version 10.1)であり、好ましくは、以下のとおりのデフォルト
パラメーターを使用する:オープンギャップ=3;伸長ギャップ=1。
【0066】
本発明のポリヌクレオチドは、種々の形態(例えば、一本鎖、二本鎖、線状、環状、ベ
クター、プライマー、プローブなど)を取り得る。
【0067】
本発明のポリヌクレオチドは、多くの方法(例えば、化学合成(少なくとも一部分)に
よって、生物自体などに由来するゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーからの
より長いポリヌクレオチドを、制限酵素を使用して消化することによって)において調製
され得る。
【0068】
本発明のポリヌクレオチドは、固形支持体(例えば、ビーズ、プレート、フィルター、
フィルム、スライド、樹脂など)に結合され得る。
【0069】
本発明のポリヌクレオチドは、検出標識(例えば、放射性標識または蛍光標識、または
ビオチン標識)を含み得る。このポリヌクレオチドが核酸検出技術において使用されるべ
きである場合(例えば、この核酸が、PCR、LCR、TMA、NASBA、bDNAな
どのような技術において使用するためのプライマーであるかまたはプローブである場合)
、これは特に有用である。
【0070】
用語「ポリヌクレオチド」は、一般的に任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を意
味し、これは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはそのアナ
ログを含む。ポリヌクレオチドとしては、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド
、およびDNAアナログまたはRNAアナログ(例えば、改変された骨格または塩基を含
むもの)、そしてまた、ペプチド核酸(PNA)などが挙げられる。用語「ポリヌクレオ
チド」は、特に示されない限り、核酸の長さまたは構造について制限することは意図され
ず、そして以下が、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子フラグ
メント、エキソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA
、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の供給
源から単離された任意のDNA、任意の供給源から単離された任意のRNA、核酸プロー
ブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、任意の3次元構造を有し得、そして既知ま
たは未知の任意の機能を実行し得る。他で特定されるか、または必要とされない限り、ポ
リヌクレオチドを含む本発明の任意の実施形態は、二本鎖形態および二本鎖形態を作るこ
とが公知であるかまたは予測される2つの相補的な各一本鎖形態の両方を含む。
【0071】
本発明のポリヌクレオチドは、単離されそして実質的な純度で、一般的にインタクトな
染色体以外として得られ得る。通常、ポリペプチドは、他の天然に存在する核酸配列が実
質的に含まない(一般的に、少なくとも約50%(重量)の純度、通常は少なくとも約9
0%の純度である)状態で得られる。
【0072】
本発明のポリヌクレオチド(特にDNA)は、代表的には、「組換え」(例えば、天然
に存在する染色体には、通常会合しない1つ以上のヌクレオチドによって隣接される)で
ある。
【0073】
このポリヌクレオチドは、例えば:ポリペプチドを産生するために;生物学的サンプル
における核酸検出のためのプローブとして;ポリペプチドのさらなるコピーを生成するた
めに;リボザイムまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを生成するために;そして一本
鎖DNAプローブとしてまたは三本鎖形成オリゴヌクレオチドとして使用され得る。この
ポリペプチドは、好ましくはPCA−mRNAを検出するために使用される。
【0074】
「ベクター」は1つ以上の細胞型の形質導入/トランスフェクションのために設計され
たポリヌクレオチド構築物である。ベクターは、例えば、挿入されたヌクレオチドの単離
、増殖および複製のために設計される「クローニングベクター」、宿主細胞中でのヌクレ
オチド配列の発現のために設計される「発現ベクター」、組換えウイルスまたはウイルス
様粒子を産生するために設計される「ウイルスベクター」、または「シャトルベクター」
であり得、これらは、1つ以上の型のベクターの特性を含む。
【0075】
「宿主細胞」は、外因性のポリヌクレオチドのレシピエントであり得るかまたはレシピ
エントであった、個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一の宿主細胞の子
孫を含み、そしてこの子孫は、天然の、偶発的な、または意図的な変異および/または変
化に起因して、本来の親細胞と必ずしも完全に同一(形態学的にまたは総DNA相補体に
おいて)ではあり得ない。宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチドで、インビボまたはイ
ンビトロで、トンラスフェクトまたは感染された細胞を含む。
【0076】
(B.5 核酸検出キット)
本発明は、PCAV核酸内に含まれるテンプレート配列を増幅するためのプライマー(
例えば、PCRプライマー)を含むキット、第1プライマーおよび第2プライマーを含む
キットを提供し、ここで第1プライマーは、該テンプレート配列に対して実質的に相補的
であり、そして第2プライマーは、該テンプレート配列の相補体に対して実質的に相補的
であり、ここで、実質的に相補性を有する該プライマーの部分が、増幅されるべきテンプ
レート配列の末端を規定する。第1プライマーおよび/または第2プライマーは、検出可
能な標識を含み得る。
【0077】
本発明はまた、一本鎖核酸または二本鎖核酸(またはそれらの混合物)中に含まれるP
CAVテンプレート核酸配列の増幅を可能にする第1および第2の一本鎖オリゴヌクレオ
チドを含みキットを提供し、以下:(a)第1オリゴヌクレオチドは、該テンプレート核
酸配列に対して実質的に相補的であるプライマー配列を含む;(b)第2オリゴヌクレオ
チドは、該テンプレート核酸配列の相補体に対して実質的に相補的であるプライマー配列
を含む;(c)第1オリゴヌクレオチドおよび/または第2オリゴヌクレオチドは、該テ
ンプレート核酸に対して相補的ではない配列を含む;そして(d)該プライマー配列は、
増幅されるべきテンプレート配列の末端を規定する。特徴(c)の非相補性配列は、好ま
しくは、このプライマー配列の上流(すなわち、5’側)である。(c)配列の一方また
は両方は、制限部位(21)またはプロモーター配列(22)を含み得る。この第1オリ
ゴヌクレオチドおよび/または第2オリゴヌクレオチドは、検出可能な標識を含み得る。
【0078】
本発明のキットはまた、テンプレート配列のフラグメント(またはその相補体)を含む
標識化ポリヌクレオチドを含み得る。これは、増幅されたテンプレートを検出するための
ハイブリダイゼーション技術において使用され得る。
【0079】
これらのキットにおいて使用されるプライマーおよびプローブは、好ましくは、セクシ
ョンB.4において記載されるポリヌクレオチドである。
【0080】
標的は、セクションB.1において記載されるようなポリヌクレオチド配列であること
が好ましい。
【0081】
(C ポリペプチド発現産物)
本方法がポリペプチドの検出に基づく場合、本方法は、スプライシング事象(envコ
ード領域の5’領域および開始コドンが、ゲノムにおけるenvのコード領域に対して、
リーディングフレーム+2において下流コード領域に結合される)によって産生される転
写物によってコードされるHML−2ポリペプチドの発現を検出する工程を包含する。こ
のポリペプチドは、ウイルスの生活環において機能的であっても、機能的でなくでもよい

【0082】
HML−2ポリペプチドをコードする転写物は、内因性ゲノムの全長のmRNAのコピ
ーの選択的スプライシングによって生成される(例えば、参考文献195の図4;本明細
書中の図17)。
【0083】
本発明のポリペプチドは、envと同じ5’領域(および開始コドン)を共有するOR
Fによってコードされる。スプライシング事象は、envコード配列を除去するが、この
コード配列は、envのコード配列に対してリーディングフレーム+2において続く。ス
プライシングされたヌクレオチド配列の例としては、配列番号18〜27、38、40お
よび42である。コードされたポリペプチド配列の例は、配列番号7〜12および配列番
号28、29、30、31、34、35、36、39、41、43、67、68および6
9である。これらのうちのいくつか(例えば、配列番号10〜12)は、トランスドミナ
ント(transdominant)様式でPCAP4の機能を阻害する。
【0084】
(C.1 HML−2ポリペプチドの直接検出)
サンプル中の特定のポリペプチドの存在または非存在を検出するために、種々の技術が
利用される。これらは、一般的に、抗体とポリペプチドにおける抗原性アミノ酸配列との
間の特定の相互作用に基づく免疫アッセイ技術である。適切な技術としては、標準的な免
疫組織学的方法、免疫沈降、ELISA、RIA、FIA、免疫蛍光検査法などが挙げら
れる。
【0085】
それゆえ、一般的に、本発明は、生物学的サンプルにおける本発明のTatポリペプチ
ドの存在を検出し、そして/またはそのレベルを測定するための方法を提供し、本方法は
、このポリペプチドに特異的な抗体を使用する。概して本方法は、以下の工程:a)サン
プルとこのポリペプチドに特異的な抗体を接触させる工程;およびb)この抗体とサンプ
ル中のポリペプチドとの間の結合を検出する工程を含む。
【0086】
本発明のポリペプチドはまた、機能アッセイ(例えば、結合活性または酵素活性を検出
するためのアッセイ)によって検出され得る。例えば、本発明の転写的に活性ポリペプチ
ドは、本明細書中の実施例において記載されるように、PCAV LTRによって駆動す
るレポーター遺伝子の発現を検出することによってアッセイされ得る。
【0087】
本発明のポリペプチドを検出するための別の方法は、標準的なプロテオミクス技術(例
えば、ポリペプチドの精製しそして分離する)を使用し、次いでペプチド配列決定を使用
することである。配列が標的ポリペプチド中に存在するか否かを同定するために、例えば
、ポリペプチドは、2D−PAGEを使用して分離され得、そしてポリペプチドスポット
が(例えば、質量分光学によって)配列決定され得る。
【0088】
検出方法は、インビボで使用するために(例えば、癌細胞が存在する部位を位置付ける
か、または同定するために)適応され得る。これらの実施形態において、標的ポリペプチ
ドに特異的な抗体は個体に(例えば、注射によって)投与され、そして抗体は、標準的な
画像化技術(例えば、磁気共鳴画像法、コンピューター連動断層撮影走査など)を使用し
て、位置付けられる。適切な標識(例えば、スピン標識など)が使用される。これらの技
術を使用して、癌細胞は差次的に標識される。
【0089】
免疫蛍光アッセイは、標的ポリペプチドの精製の必要なく細胞上で容易に実行され得る
。まず細胞は、顕微鏡用スライドまたはマイクロタイターウェルのような固形支持体上で
固定される。次いで、これらの細胞の膜は、ポリペプチドに特異的な抗体の進入を許容す
るために、透過可能にされる(NB:固定および透過可能化は、共に達成され得る)。次
に、固定化細胞は、コードされたポリペプチドに特異的であり、そして蛍光標識された抗
体に曝露される。この標識の存在(例えば、顕微鏡下で視覚化される)は、標的PCAV
ポリペプチドを発現する細胞を同定する。アッセイの感受性を増大させるために、抗PC
AV抗体に結合するような二次抗体(標識が二次抗体によって保持されている)を使用す
ることが可能である(23)。
【0090】
(C.2 HML−2ポリペプチドの間接検出)
ポリペプチドを直接的に検出するより、ポリペプチドに応答して生体によって産生され
る分子を検出することが好ましくはあり得る(すなわち、ポリペプチドの間接検出)。こ
れは、代表的には抗体の検出に関し、そのため患者サンプルは概して血液サンプルである
。抗体は、従来の免疫アッセイ技術によって(例えば、本発明のPCAVポリペプチドを
使用して)検出され得、これは、代表的には固定される。
【0091】
HERV−Kポリペプチドに対する抗体が、ヒトにおいて発見されている(195)。
【0092】
(C.3 ポリペプチド物質)
本発明は、以下:(a)配列番号7、8、9、10、11、12、28、29、30、
31、34、35、36、39、41、43、67、68および69からなる群から選択
されるアミノ酸配列;(b)(a)の少なくともx個のアミノ酸のフラグメント;または
(c)(a)と少なくともs%の同一性を有するポリペプチド配列を含む単離されたポリ
ペプチドを提供する。これらのポリペプチドは、改変体(例えば、対立遺伝子改変体、ホ
モログ、オルソログ、機能的変異体および非機能的変異体)を含む。
【0093】
xの値は、少なくとも5(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、1
3、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30
、35、40、45、50、60、70、75、80、90、100など)である。xの
値は、2000未満(例えば、1000未満、500未満、100未満、または50未満
)であり得る。
【0094】
sの値は、好ましくは、少なくとも50(例えば、少なくとも55、60、65、70
、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、
99.5、99.9など)である。
【0095】
本発明はまた、式NH−A−B−C−COOHを有する単離されたポリペプチドを提
供し、ここで:Aは、aアミノ酸からなるポリペプチド配列であり;Cは、cアミノ酸か
らなるポリペプチド配列であり;Bは、配列番号7、8、9、10、11、12、28、
29、30、31、34、35、36、39、41、43、67、68および69からな
る群から選択されるアミノ酸配列のbアミノ酸のフラグメントからなるポリペプチド配列
であり;そして該ポリペプチドは、ポリペプチド配列の配列番号7、8、9、10、11
、12、28、29、30、31、34、35、36、39、41、43、67、68ま
たは69のフラグメントではない。
【0096】
a+cの値は、少なくとも1(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、
10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、2
3、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70
、80、90、100など)である。bの値は、少なくとも7(例えば、少なくとも8、
9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22
、23、24、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100
など)である。a+b+cの値は、少なくとも9(例えば、少なくとも10、11、12
、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、
30、35、40、45、50、60、70、80、90、100など)であることが好
ましい。a+b+cの値は、多くても500(例えば、多くても450、400、350
、300、250、200、190、180、170、160、150、140、130
、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、25、20、
19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9)であることが好ま
しい。
【0097】
−A−のアミノ酸配列は、代表的には、配列番号7、8、9、10、11、12、28
、29、30、31、34、35、36、39、41、43、67、68および69にお
ける配列−B−のN末端であるaアミノ酸とn%未満の配列同一性を共有し、そして−C
−のアミノ酸配列は、代表的には、配列番号7、8、9、10、11、12、28、29
、30、31、34、35、36、39、41、43、67、68および69における配
列−B−のC末端であるcアミノ酸とn%未満の配列同一性を共有する。nの値は、一般
的に60以下(例えば、50、40、30、20、10以下)である。
【0098】
(b)または−B−のフラグメントは、配列番号7、8、9、10、11、12、28
、29、30、31、34、35、36、39、41、43、67、68および69のT
細胞エピトープまたは、好ましくはB細胞エピトープを含み得る。T細胞エピトープおよ
びB細胞エピトープは、実験的に(例えば、PEPSCAN方法(24、25)または類
似の方法を使用して)同定され得るか、またはそれらは予測され得る(例えば、Jame
son−Wolf抗原性指標(26)、マトリクスベースのアプローチ(27)、TEP
ITOPE(28)、神経ネットワーク(29)、OptiMer & EpiMer(
30、31)、ADEPT(32)、Tsites(33)、親水性(34)、抗原性指
標(35)または参考文献36などにおいて開示される方法を使用する)。これらの方法
は、HIVtatおよびHTLVtaxについてのB細胞エピトープおよびT細胞エピト
ープを同定する際の首尾よさを証明する(例えば、31、37、38、39、40、41
、42、43、44など)。
【0099】
(b)または−B−の好ましいフラグメントは、スプライシング部位の下流(すなわち
、エキソン3内)に位置付けられる。そのようなフラグメントの例は、61〜68(また
はそのサブフラグメント)である。ポリペプチドは、これらの配列の1つ以上を含み得る
。例えば、これは、配列番号62〜65のうちの2つ以上(例えば、2、3、4)、好ま
しくは順番に(例えば、NH−O−62−O−63−O−64−O−65−O
−COOH、ここでO〜Oは、1つ以上のアミノ酸の最適配列である)、そして必
要に応じて、配列番号61(好ましくは、配列番号62の上流に)も含み得る。他のポリ
ペプチドは、配列番号66および/または配列番号67を含み得る。
【0100】
従って、本発明は、以下:(a)配列番号61〜68からなる群から選択されるアミノ
酸配列;(b)(a)の少なくともx個のアミノ酸のフラグメント;または(c)(a)
と少なくともs%の同一性を有するポリペプチド配列を含むポリペプチドを提供する。
【0101】
本発明はまた、以下:(a)配列番号78〜277からなる群から選択されるアミノ酸
配列;(b)(a)の少なくともx個のアミノ酸のフラグメント;または(c)(a)と
少なくともs%の同一性を有するポリペプチド配列を含むポリペプチドを提供する。
【0102】
配列番号7、8、9、10、11、12、28、29、30、31、34、35、36
、39、41、43、67、68および69からなる群の内で、好ましいサブセットは、
配列番号7、8、11および12(PCAP2、PCAP3、PCAP4およびPCAP
4a)である。
【0103】
好ましいポリペプチドは、配列番号49を含むRNAに結合し得る。
【0104】
2つのアミノ酸配列間のパーセンテージ配列同一性に対する参考は、整列された場合、
そのアミノ酸パーセンテージは、2つの配列を比較した際に同じであることを意味する。
この整列およびパーセント相同性または配列同一性は、当該分野において公知のソフトウ
ェアプログラム(例えば、参考文献20のセクション7.7.18において記載されるも
の)を使用して決定され得る。好ましい整列は、ギャップ開放ペナルティー12およびギ
ャップ伸長ペナルティー2を有するアフィンギャップ検索を使用するSmith−Wat
erman相同性検索アルゴリズム(62のBLOSUMマトリクス)によって決定され
る。このSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、参考文献45におい
て教示される。
【0105】
本発明のポリペプチドは、多くの方法で(例えば、化学合成(少なくとも一部分)によ
って、より長いポリペプチドをプロテアーゼを使用して消化することによって、RNAか
らの翻訳によって、細胞培養物(例えば、組換え発現)からの精製によって)、生物自体
(例えば、前立腺組織または胸部組織からの単離物)、細胞株供給源などから調製され得
る。
【0106】
本発明のポリペプチドは、種々の形態(例えば、ネイティブ、融合、グリコシル化、非
グリコシル化など)で調製され得る。
【0107】
本発明のポリペプチドは、固形支持体に結合され得る。
【0108】
本発明のポリペプチドは、検出可能な標識(例えば、放射性標識または蛍光標識、ある
いはビオチン標識)を含み得る。
【0109】
一般的に、本発明のポリペプチドは、天然では存在しない環境において提供される(例
えば、それらは、その天然で存在する環境から分離される)。特定の実施形態において、
本ポリペプチドは、コントロールと比較してポリペプチドを富化にされた組成物中に存在
する。このように、精製されたポリペプチドは提供され(精製されたとは、このポリペプ
チドは、他の発現されたポリペプチドを実質的に含まない組成物中に存在することを意味
する)、(実質的に含まないとは、その組成物の90%未満、通常は60%未満およびよ
り通常は50%未満が、他の発現されたポリペプチドから作られることを意味する。
【0110】
用語「ポリペプチド」とは、任意の長さのアミノ酸ポリマーをいう。ポリマーは、線状
または分枝であり得、これは、改変されたアミノ酸を含み得、そしてこれは、非アミノ酸
によって中断され得る。この用語はまた、天然にまたは介入によって改変されたアミノ酸
ポリマーを含む;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、
リン酸化、あるいは任意の他の操作または改変(例えば、標識成分を用いる結合体化)。
例えば、1つ以上のアミノ酸アナログ(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)を含むポ
リペプチドならびに当該分野において公知の他の改変体もまた、定義内に含まれる。ポリ
ペプチドは、単鎖または関連鎖として生じ得る。本発明のポリペプチドは、天然または非
天然にグリコシル化され得る(すなわち、ポリペプチドは、対応する天然に存在するポリ
ペプチド中に見出されるグリコシル化パターンとは異なるグリコシル化パターンを有する
)。
【0111】
変異体は、アミノ酸置換、付加または欠失を含み得る。アミノ酸置換は、非必須のアミ
ノ酸を除去するための(例えば、グリコシル化部位、リン酸化部位またはアセチル化部位
を変更する)または機能のために必ずしも必要ではない1つ以上のシステイン残基の置換
または欠失による誤った折り畳みを最小にするための保存的アミノ酸置換または置換であ
り得る。保存的アミノ酸置換は、置換されたアミノ酸の通常電荷、親水性/疎水性、およ
び/または立体化学的な膨張性を保護する置換である。改変体は、このポリペプチドの特
定領域(例えば、機能ドメインおよび/またはこのポリペプチドがポリペプチドファミリ
ーのメンバーである場合、コンセンサス配列に関連する領域)の生物活性を保持するか、
または高めるように設計され得る。改変体の産生のためのアミノ酸改変の選択は、アミノ
酸の接近しやすさ(内部 対 外部)(例えば、ref.46)、改変ポリペプチドの熱
安定性(例えば、ref.47)、所望のグリコシル化部位(例えば、ref.48)、
所望のジスルフィド結合(例えば、ref.49および50)、所望の金属結合部位(例
えば、ref.51および52)、およびプロリンループにおける所望の置換(例えば、
ref.53)に基づき得る。システイン欠失ムテインは、参考文献54において開示さ
れるように産生され得る。
【0112】
(C.4 抗体材料)
本発明はまた、本発明のポリペプチドに結合する、単離された抗体またはその抗原結合
性フラグメントを提供する。本発明はまた、単離された抗体またはまたはその抗原結合性
フラグメントを提供し、これらは、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリ
ペプチドに結合する。
【0113】
本発明の抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得、そして任意の適切な
手段によって(例えば、組換え発現によって)産生され得る。
【0114】
本発明の抗体は、標識を含み得る。この標識は、放射性標識または蛍光標識のように、
直接的に検出可能であり得る。あるいは、この標識は、その産物が検出可能である酵素(
例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼなど)のように、間
接的に検出可能であり得る。
【0115】
本発明の抗体は、固形支持体に結合され得る。本発明の抗体は、本発明のポリペプチド
を適切な動物(例えば、ウサギ、ハムスター、マウスまたは他のげっ歯類)に投与する(
例えば、注射する)ことによって調製され得る。
【0116】
抗体の抗原結合性フラグメントは、Fv、scFv、Fc、Fab、F(ab’)
どを含む。
【0117】
ヒト免疫系との適合性を増強するために、抗体は、キメラまたはヒト化であり得るか(
例えば、ref.55および56)、あるいは完全なヒト抗体が使用され得る。ヒト化抗
体は、本来の非ヒトモノクローナル抗体よりヒトにおいて免疫原性が非常に低いので、そ
れらは、アナフィラキシーの危険性をほとんど伴わずヒトの処置のために使用され得る。
従って、これらの抗体は、ヒトへのインビボ投与を含む治療適用(例えば、腫瘍性疾患の
処置のために放射能感作物質としての使用または癌治療の副作用を減少するための方法に
おける使用)において好ましくあり得る。
【0118】
ヒト化抗体は、種々の方法によって達成され得、この方法は、例えば:(1)非ヒト抗
体からの1つ以上のフレームワーク残基の必要に応じた転移を伴う、ヒトフレームワーク
領域および定常領域上に非ヒト相補性決定領域(CDR)を移植する工程(「ヒト化」)
;(2)表面残基の置換によってヒト様表面で非ヒト可変ドメインを「覆うこと」ではな
く、非ヒト可変ドメイン全体を移植する工程(「被膜化」(veneering))を包
含する。本発明において、ヒト化抗体は、「ヒト化」抗体および「被膜化」抗体の両方を
含む(57、58、59、60、61、62、63)。
【0119】
CDRは、ネイティブな免疫グロブリン結合部位の結合親和性およびFv領域の特異性
をともに規定するアミノ酸配列である(例えば、ref.64および65)。
【0120】
用語「定常領域」とは、エフェクター機能を供与する抗体分子の一部をいう。キメラ抗
体において、マウスの定常領域は、ヒト定常領域によって置換される。ヒト化抗体の定常
領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する。重鎖の定常領域は、5個のアイソタイプ(α、
δ、ε、γまたはμ)のいずれかから選択され得る。
【0121】
抗体をヒト化する1つの方法は、ヒト重鎮配列およびヒト軽鎖配列に対して非ヒト抗体
の重鎖配列および軽鎖配列を整列する工程、非ヒトフレームワーク残基を、このようなア
ライメントに基づくヒトフレームワーク残基で置換する工程、非ヒト親抗体のコンホメー
ションと比較するヒト化配列のコンホメーションの分子モデリング、およびヒト化配列モ
デルにおけるCDRの予測されるコンホメーションが、親非ヒト抗体の非ヒトCDRのコ
ンホメーションを密接に近づけるまでの、非ヒトCDRの構造を分配するフレームワーク
領域内の残基の繰り返し復帰変異を包含する。このようなヒト化抗体は、例えば、Ash
wellレセプター(ref.66および67)を介して、さらに吸収およびクリアラン
スを促進するように誘導され得る。
【0122】
ヒト化抗体または完全なヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン座を含むように操作され
るトランスジェニック動物を使用して産生され得る。例えば、ref.68は、ヒトIg
座を有するトランスジェニック動物を開示し、この動物は、内因性の重鎖座および軽鎖座
の不活化に起因して、機能的な内因性免疫原を産生しない。ref.69はまた、免疫原
に対する免疫応答をマウントし得るトランスジェニック非霊長類哺乳動物宿主を開示し、
この抗体は、霊長類の定常領域および/または可変領域を有し、そして内因性免疫グロブ
リンをコードする座が置換されるか、または不活化される。ref.70は、哺乳類にお
ける免疫グロブリン座の改変するための(例えば、改変された抗体分子を形成するために
、定常領域および可変領域の全てまたは一部分を置換するための)Cre/Lox系の使
用を開示する。ref.71は、不活化内因性Ig座および機能的なヒトIg座を有する
非ヒト哺乳動物宿主を開示する。ref.72は、トランスジェニックマウス(このマウ
スは、内因性の重鎖を欠失し、そして1つ以上の外因性(xenogeneic)の定常
領域を含む外因性(exogeneous)の免疫グロブリン座を発現する)を作る方法
を開示する。
【0123】
上記のトランスジェニック動物を使用して、PCAVポリペプチドに対する免疫応答が
生じられ得、そして抗体産生細胞は動物から除去され得、そしてヒトモノクローナル抗体
を分泌するハイブリドーマを産生するために使用され得る。免疫化プロトコル、アジュバ
ントなどは当該分野において公知であり、そして例えば、ref.73において記載され
るように、トランスジェニックマウスの免疫化において使用される。モノクローナル抗体
は、対応するポリペプチドの生物活性または生理的効果を阻害するか、または中和する能
力について試験され得る。
【0124】
(D コントロールサンプルとの比較)
(D.1 コントロール)
HML−2転写物は、腫瘍においてアップレギュレートされる。このようなアップレギ
ュレーションを検出するために、基準点(すなわち、コントロール)が必要とされる。コ
ントロールサンプルの分析は、患者のサンプルが比較され得る標準レベルのRNAおよび
/またはタンパク質発現を与える。
【0125】
ネガティブコントロールは、患者サンプルが比較され得る発現のバックグラウンドレベ
ルまたはベースレベルを与える。寿命ベースラインまたはプールされた正常サンプルのよ
うなネガティブコントロールに関して発現産物のより高いレベルは、サンプルが得られた
患者は、腫瘍を有することを示す。逆に言えば、発現産物の同レベルは、患者がHML−
2関連腫瘍を有さないことを示す。
【0126】
ポジティブコントロールは、患者サンプルが比較され得る発現のレベルを与える。ポジ
ティブコントロールに関して同レベルまたは発現産物のより高いレベルは、サンプルが得
られた患者は、腫瘍を有することを示す。逆に言えば、発現産物のより低いレベルは、患
者がHML−2関連腫瘍を有さないことを示す。
【0127】
直接的または間接的なRNA測定のために、あるいは直接的なポリペプチド測定のため
に、ネガティブコントロールは、一般的に腫瘍細胞に由来しない細胞(例えば、胸部腫瘍
または前立腺腫瘍)を含む。間接的なポリペプチド測定のために、ネガティブコントロー
ルは、一般的に腫瘍を有さない患者由来の血液サンプルである。ネガティブコントロール
は、HML−2発現がアップレギュレートされない組織(例えば、雄性の非腫瘍性の非前
立腺細胞、または雌性の非腫瘍性の非胸部細胞)ではなく、この患者サンプルと同じ患者
由来のサンプルであり得る。ネガティブコントロールは、この患者サンプルと同じ患者由
来の前立腺細胞または胸部細胞であり得るが、これらは、患者の生命における初期ステー
ジで得られる。ネガティブコントロールは、腫瘍のない患者由来の細胞であり得る。この
細胞は、前立腺/胸部細胞であってもなくてもよい。ネガティブコントロール細胞は、B
PHを有する患者由来の前立腺細胞であり得る。ネガティブコントロールは、正常な精液
(semen)、精液(seminal fluid)、初乳、乳ミルクなどであり得る

【0128】
直接的または間接的なRNA測定のために、あるいは直接的なポリペプチド測定のため
に、ポジティブコントロールは、一般的に問題の腫瘍の型に由来する細胞を含む。間接的
なポリペプチド測定のために、ネガティブコントロールは、一般的に前立腺腫瘍または胸
部腫瘍を有する患者由来の血液サンプルである。ネガティブコントロールは、この患者サ
ンプルと同じ患者由来の前立腺腫瘍細胞または胸部腫瘍細胞であり得るが、これらは、例
えば、寛解をモニタリングするために、患者の生命における初期ステージで得られる。ポ
ジティブコントロールは、前立腺腫瘍または胸部腫瘍を有する別の患者由来の細胞であり
得る。ポジティブコントロールは、前立腺細胞株または胸部細胞株であり得る。
【0129】
他の適切なポジティブコントロールまたはネガティブコントロールは、当業者に理解さ
れる。
【0130】
コントロールにおけるHML−2発現は、患者サンプルにおける発現として同時に評価
され得る。あるいは、コントロールにおけるHML−2発現は、別個に(初期または後期
に)評価され得る。
【0131】
しかし、2つのサンプルを実際に比較するよりも、コントロールは、正確なコントロー
ル(すなわち、例えば、通常の条件下での腫瘍患者から得られたサンプルから経験的に決
定された()発現レベル)であり得る。
【0132】
(D.2 アップレギュレーションの程度)
コントロール(100%)に関するアップレギュレーションは、通常少なくとも150
%(例えば、200%、250%、300%、400%、500%、600%以上)であ
る。
【0133】
(D.3 診断)
本発明は、癌を診断するための方法を提供する。本発明に従う「診断」は、疾患の一定
の臨床診断から、患者が一定の診断を導き得るさらなる試験を受けるべきであるという指
標の範囲にあり得ることが理解される。例えば、本発明の方法は、さらなる分析に供され
るポジティブサンプルを有するスクリーニングプロセスの一部として使用され得る。
【0134】
さらに、診断は、癌を有することが既知である患者中の癌の進行のモニタリングを含む
。癌はまた、本発明の方法によって段階付けられ得る。
【0135】
例えば、その効力を決定するために、癌の処置レジメンの効力(テラメトリクス(th
erametrics))もまた、本発明の方法によってモニタリングされ得る。
【0136】
例えば、発現のアップレギュレーションが生じる場合、癌が発症する前だけでなく、癌
に対する感受性もまたは検出され得る。予後法もまた含まれる。
【0137】
種々の癌の型のうち、本発明は、前立腺癌(前立腺上皮内腫瘍を含む)および胸部癌(
乳腺癌を含む)に対して、特に研究される。
【0138】
これらの技術の全ては、本発明における一般的な意味の「診断」に含まれる。
【0139】
(E.推定TAR)
HIV Tatは、転写因子として作用し、そしてそのRNA標識は、TARである。
配列番号14および49は、推定のHML−2TARを含む150個のヌクレオチドのR
NAの例である。HIVに関する限りでは、TARにおける最小のtat−結合モチーフ
は、これら2つの分子より短くあり得る。
【0140】
本発明は、以下:(a)配列番号14または49のヌクレオチド配列;(b)(a)の
少なくともx個のヌクレオチド配列のフラグメント;(c)(a)と少なくともs%の同
一性を有するヌクレオチド配列;または(d)(a)、(b)または(c)の相補体を含
む単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0141】
単離されたポリヌクレオチドは、好ましくは、250個のヌクレオチドより短い(例え
ば、240個のヌクレオチド、230個のヌクレオチド、220個のヌクレオチド、21
0個のヌクレオチド、200個のヌクレオチド、190個のヌクレオチド、180個のヌ
クレオチド、170個のヌクレオチド、160個のヌクレオチド、または150個のヌク
レオチドより短い)。
【0142】
xの値は、少なくとも7(例えば、少なくとも8、9、10、11、12、13、14
、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、
40、45、50、60、70、75、80、90、100など)である。xの値は、2
000未満(例えば、1000、500、100、または50未満)であり得る。
【0143】
sの値は、好ましくは、少なくとも50(例えば、少なくとも55、60、65、70
、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、
99.5、99.9など)である。
【0144】
単離されたポリヌクレオチドは、好ましくはアミノ酸配列(配列番号7、8および/ま
たは9)(推定tatアナログ)を含むタンパク質に結合し得る。
【0145】
(F.阻害性のPCAP機能)
Tat/TAR相互作用の阻害はHIV治療のために使用され、そしてTax機能の阻
害はHTLV治療のために使用される。類推によって、PCAVにおける同等の機能の阻
害は、癌の処置、および/またはHERV−Kウイルスに結合する他の疾患(例えば、精
巣癌(194)、多発性硬化症(74)、インスリン依存性糖尿病(IDDM)(75)
など)を処置するための方法を提供する。
【0146】
種々の方法が、Tat/TAR相互作用を阻害するために提唱されてきた(例えば:
Tatを隔離するような複数のTARを含むおとりRNAの使用(76)
アンチセンスTat(77)
優位なネガティブTat変異体(78)
Tatリボザイム(79)
抗TARハンマーヘッドリボザイム(80)
Tat/TAR相互作用の低分子インヒビターの使用(81、82、83)
アプタマー(aptamer)の使用(84)
RNA干渉のための阻害性RNA(siRNA)の使用(85))。
【0147】
類似のアプローチが、Tax機能を阻害するために使用されている(86、87、88
)が、TaxとTatとの間の有意な差異は、Tatが核酸に直接結合することである。
これらの方法の全ては、推定のPCAV tat/TAR相互作用またはTax機能に適
用され得る。
【0148】
従って、本発明は、医薬としてのそれらの使用および前立腺癌、精巣癌、多発性硬化症
および/またはインスリン依存性糖尿病を処置するための薬の製造における使用とともに
以下を提供する:
推定のHML−2 TARの2つ以上のコピーをコードするか、またはこれらを含むポ
リヌクレオチド;
推定のtat−コード配列と相補的なポリヌクレオチド;
機能的な推定のtatに結合し、そしてトランスドミナント(transdomina
nt)方法で作用し得るポリペプチド;
tat配列および/またはtar配列を攻撃し得るリボザイム;
推定のTat/TAR相互作用の低分子インヒビター;
推定のtatに特異的に結合する抗体またはオリゴ体(oligobody)(89、
90);および
推定のTat/TAR相互作用のアプタマーインヒビター;
推定のTAR配列に対して相補的な低阻害性RNA(例えば、ref.91〜96)。
【0149】
推定のtat機能のトランスドミナントインヒビターに関して、本発明は、上記のセク
ションC3において規定されたようなタンパク質を提供し、これは、以下:(a)配列番
号10、11、12および13からなる群から選択されるアミノ酸配列;(b)(a)の
少なくともx個のアミノ酸のフラグメント;または(c)(a)と少なくともs%の同一
性を有するポリペプチド配列を含む。配列番号10、11、12および13のアミノ酸を
有するタンパク質は全て、最も強く優位にネガティブである配列番号13(cORF)を
有する推定のtatの活性を抑制することが見出されてきた。
【0150】
(スクリーニング方法および薬剤設計)
本発明はまた、癌に対して活性を有する化合物についてのスクリーニング方法を提供し
、該方法は、以下:試験化合物を推定のTatポリヌクレオチドまたはポリペプチドと、
あるいは推定のTARポリヌクレオチドとを接触させる工程;および試験化合物とこれら
のポリヌクレオチド/ポリペプチドとの間の結合相互作用を検出する工程を包含する。結
合相互作用は、試験化合物の潜在的な抗癌効果を示す。
【0151】
本発明はまた、前立腺癌に対して活性を有する化合物についてスクリーニング方法を手
供し、該方法は、以下:試験化合物を本発明の推定のTatポリペプチドと接触させる工
程;およびポリペプチドの機能をアッセイする工程を包含する。このポリペプチドの機能
の阻害(例えば、本明細書中の実施例において記載されるような、PCAV LTRによ
って作動されるレポーター遺伝子の発現の消失)は、試験化合物の潜在的な抗癌効果を示
す。
【0152】
代表的な試験化合物としては、ペプチド(環状ペプチド(82)を含む)、ペプトイド
、脂質、金属、ヌクレオチド、ヌクレオシド、低有機分子(97)、抗生物質、ポリアミ
ン、ならびにこれらの組み合わせおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
低有機分子は、50ダルトン以上および約2,500ダルトン未満、そして最も好ましく
は、約300ダルトンと約800ダルトンとの間の分子量を有する。天然の産物または混
合されたコンビナトリアル合成の産物を含む抽出物のような基質の複合混合物がまた試験
され、そして標的RNAに結合する化合物が、引き続く工程において、この混合物から精
製され得る。
【0153】
試験化合物は、合成化合物または天然の化合物の巨大ライブラリーに由来され得る(9
8)。例えば、合成化合物ライブラリーは、Maybridge Chemical C
o.(Trevillet、Cornwall、UK)またはAldrich(Milw
aukee、WI)から市販される。あるいは、天然化合物のライブラリーは、細菌抽出
物、真菌抽出物、植物抽出物および動物抽出物の形態で使用され得る。さらに、試験化合
物は、個々の化合物または混合物のいずれかとして、コンビナトリアル化学を使用して合
成的に産生され得る。
【0154】
本発明のポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストは、当該分野において公知の
任意に利用可能な方法(例えば、シグナル伝達、抗体結合、レセプター結合、マイトジェ
ンアッセイ、走化性アッセイなど)を使用してスクリーニングされ得る。アッセイ条件は
、理想的には、ネイティブの活性がインビボで示される下での(すなわち、生理的pH、
温度、およびイオン強度の下での)条件と似ているべきである。適切なアゴニストまたは
アンタゴニストは、被験体において有毒な副作用を引き起こさない濃度で、ネイティブな
活性の強い阻害または増加を示す。ネイティブなポリペプチドへの結合に関して競合する
アゴニストまたはアンタゴニストは、ネイティブな濃度と同等な濃度またはより高い濃度
を必要とし得るが、ポリペプチドに不可逆的に結合し得るインヒビターは、ネイティブな
濃度のオーダーに類似するように濃縮して添加され得る。
【0155】
そのようなスクリーニングおよび実験法は、HML−2ポリペプチドのアゴニストまた
はアンタゴニストの同定を導き得る。このようなアゴニストまたはアンタゴニストは、H
ML−2の発現および/または機能を調節するか、増強するか、または阻害するために使
用され得る(99)。
【0156】
本発明は、本発明のポリペプチド(例えば、組換え的に産生されたHML−2ポリペプ
チド)を使用して、結合するか、そうでなければHML−2ポリペプチドの活性を調節す
る(例えば、阻害する)能力について、化合物をスクリーニングし、従って、例えば、H
ML−2ポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用し得る化合物を同定
する方法に関連する。1つのスクリーニングアッセイにおいて、HML−2ポリペプチド
は、試験化合物の存在または非存在下でHML−2の増殖刺激活性に対して感受性のある
細胞とともにインキュベーションされる。HML−2活性の改変または試験化合物の結合
効力が測定される。次いで、細胞増殖が決定される。試験サンプルにおける細胞増殖の減
少は、この試験化合物がHML−2ポリペプチドに結合し、それによってHML−2ポリ
ペプチドを不活化するか、そうでなければHML−2ポリペプチド活性を阻害することを
示す。
【0157】
HML−2遺伝子を過剰発現するように形質転換されたトランスジェニック動物(例え
ば、げっ歯類)は、HML−2の過剰発現から生じる腫瘍発生を阻害する能力または一旦
発生したそのような腫瘍を処置する能力について、インビボで化合物をスクリーニングす
るために使用され得る。増大した侵襲性の前立腺腫瘍または悪性の可能性のある前立腺腫
瘍を有するトランスジェニック動物は、HML−2ポリペプチドの効果を阻害する能力に
ついて、化合物(抗体またはペプチドを含む)をスクリーニングするために使用され得る
。そのような動物は、例えば、本明細書中の実施例において記載されるように生成され得
る。
【0158】
上で記載されるようなスクリーニング手順は、前立腺癌処置の際の薬理学的な介入スト
ラテジーにおける潜在的な使用のための薬剤を同定するために有用である。さらに、HM
L−2に対応するポリヌクレオチド配列(LTRを含む)は、高められた遺伝子発現のイ
ンヒビターについてアッセイするために使用され得る。
【0159】
HERV−Kプロテアーゼの強力なインヒビターは、既知である(100)。HIV−
1プロテアーゼインヒビターによるHERV−Kプロテアーゼの阻害もまた報告されてい
る(101)。これらの化合物は、前立腺癌治療における使用のために研究され得、そし
てまた薬物設計のための有用なリード化合物であり得る。
【0160】
cORFのトランスドミナント(transdominant)ネガティブ変異体もま
た報告されている(102、103)。トランスドミナントcORF変異体は、前立腺癌
治療における使用のために研究され得る。
【0161】
HML−2 mRNAに対して相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ポリペプ
チドの発現を選択的に減少させるか、またはオブレート(oblate)するために使用
され得る。より詳細には、アンチセンス構築物またはアンチセンスオリゴヌクレオチドは
、前立腺腫瘍細胞中でのHML−2ポリペプチドの産生を阻害するために使用され得る。
アンチセンスmRNAは、標的癌細胞に本発明のHML−2ポリヌクレオチド(PCAV
−mRNA転写の方向に関してアンチセンスの方向で配向される)を有する発現ベクター
でトランスフェクトすることによって産生され得る。適切なベクターとしては、ウイルス
ベクター(レトロウイルスベクターを含む)および非ウイルスベクターが挙げられる。あ
るいは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、同じ目的を達成するために直接標的細胞に
導入され得る。オリゴヌクレオチドは、最大レベル特異性を達成し、そして例えば、イニ
シエーターATGでPCAV−mRNAに結合するために選択/設計され得る。
【0162】
HML−2ポリペプチドに対するモノクローナル抗体は、ポリペプチドの作用をブロッ
クし、そしてこれによって癌細胞の増殖を制御するために使用され得る。これは、HML
−2ポリペプチドに結合し、そしてその作用をブロックする抗体の注入によって達成され
得る。
【0163】
本発明はまた、Tatおよび/またはTARに結合する化合物を同定するためのハイス
ループットのスクリーニング方法を提供する。好ましくは、このアッセイのための全ての
生化学的工程は、単一溶液中で、例えば、試験管またはマイクロタイタープレートにおい
て実行され、そして試験化合物は、初めに単一の化合物濃度で分析される。ハイスループ
ットのスクリーニングの目的の為に、実験条件は、スクリーニングされた総化合物の中か
ら「ポジティブ」化合物として同定された試験化合物の比を達成するように調整される。
このアッセイは、好ましくは、例えば、巨大な化合物ライブラリーからの0.1%〜1%
の総試験化合物が、10μM以下(例えば、1μM、100nM、10nMまたはそれよ
り下)のKで所定の標的に結合することが示される場合、標的に対して測定可能な親和
性を有する化合物を同定するために設定される。
【0164】
本発明はまた、推定の相互作用をブロックし得る化合物を同定するために、推定のTa
tおよび/または推定のTARの構造表示に対して適用され得る構造ベースの薬物設計技
術を提供する。種々の適切な技術(例えば、ref.104)が当業者に利用可能である

【0165】
構造ベースの薬物設計において使用するために分子モデルリング技術を実行するための
ソフトウェアパッケージとしては、SYBYL(105)、AMBER(106)、CE
RIUS(107)、INSIGHT II(107)、CATALYST(107)
、QUANTA(107)、HYPERCHEM(108)、CHEMSITE(109
)などが挙げられる。このソフトウェアは、ファン・デル・ワールス接触、静電相互作用
、および/または水素結合機会のような特徴を明らかにするために、推定のTatおよび
/または推定のTARの結合性表面を決定するために使用され得る。
【0166】
本発明はまた、推定のTatおよび/またはTARに結合する化合物を同定するための
インシリコでのスクリーニング方法を提供する。潜在的リガンドの構造表示は、SD形式
またはMDL形式のようなコンピューターで読み取り可能な形態で保存される。リガンド
の3D構造は、好ましくは、CORINA、CONCORDEまたはInsight I
Iのようなプログラムを使用する2D表示から作成される。一旦インシリコでレセプター
と相互作用するリガンドが同定されれば、これは、提供され得(例えば、合成され得るか
、精製され得るか、または購入され得る)、そしてこの相互作用は、実験的に証明され得
る。本発明は、本発明の方法を使用して同定されるリガンドを提供する。
【0167】
構造ベースのインシリコスクリーニングは、HIVのTat/TAR相互作用のインヒ
ビターを同定するために使用されている(110)。
【0168】
これらの種々の方法の効力は、本発明の組成物の投与後、本発明のポリヌクレオチドお
よび/またはポリペプチドの発現をモニタリングすることによって試験され得る。tat
ベースのHIV免疫においてこれまで首尾よく使用されている本発明の全てが、使用され
得る。
【0169】
(G.ワクチン)
Tatタンパク質は、HIV治療のためのワクチン抗原として使用されており、そして
Taxタンパク質は、HTLV治療のためのワクチン抗原として使用されている。ポリペ
プチドワクチン(111、112、113、114、115)およびDNAワクチン(1
16、117)が提唱されてきた。類推によって、本発明のポリペプチドは、前立腺癌ま
たは乳癌に対して免疫するために使用され得、そしてまたHERV−Kウイルスに関連す
る他の疾患(例えば、精巣癌、多発性硬化症、IDDMなど)を処置するために使用され
得る。
【0170】
それゆえ、本発明は、以下を含む組成物を提供する:(a)上のセクションC.3にお
いて規定されるようなポリペプチドおよび(b)薬学的に受容可能キャリア。本発明はま
た、以下を含む組成物を提供する:(a)上で規定されるようなポリペプチドをコードす
るポリヌクレオチドおよび(b)薬学的に受容可能キャリア。
【0171】
さらに組成物は、アジュバントを含み得る。例えば、組成物は、1つ以上の以下のアジ
ュバントを含み得る:(1)水中油型のエマルジョン処方(ムラミルペプチド(以下を参
照のこと)または細菌細胞壁成分のような他の特異的な免疫刺激剤のあるまたはなしで)
(例えば、(a)マイクロフルダイザー(microfluidizer)を使用してミ
クロン以下の粒子で処方される、5% Squalene、0.5% Tween 80
、および0.5% Span 85(必要に応じてMTP−PEを含む)を含むMF59
TM(118:ref.119における第10章)、(b)10% Squalene、
0.4% Tween 80、5%プルロニック(pluronic)でブロックされた
ポリマー(L121)を含むSAF、およびミクロン以下の粒子にマイクロフルダイズさ
れるか、またはより大きな粒子サイズのエマルジョンを生成するためにボルテックスされ
るthr−MDP、ならびに(c)2% Squalene、0.2% Tween 8
0およびモノホスホリリピッドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)から
なる群からの1つ以上の細菌細胞壁成分、ならびに細胞壁骨格(CWS)(好ましくは、
MPL+CWS(DetoxTM))を含むRibiTMアジュバント系(RAS)(R
ibi Immunochem、Hamilton、MT));(2)QS21またはS
timulonTM(Cambridge Bioscience、Worcester
、MA)のようなサポニンアジュバントが使用され得るか、あるいはそれから生成された
粒子(例えば、ISCOM(免疫刺激性複合体))(ISCOMSは、さらなる界面活性
剤を含まなくてよい)(120);(3)完全フロイントアジュバント(CFA)および
不完全フロイントアジュバント(IFA);(4)インターロイキン(例えば、IL−1
、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)、インターフ
ェロン(例えば、γインターフェロン)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF
)、腫瘍壊死因子(TNF)などのようなサイトカイン;(5)モノホスホリルリピドA
(MPL)または3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)(例えば、121、122)
;(6)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油型エマルジョンとの組み
合わせ(例えば、123、124、125);(7)CpGモチーフ(すなわち、必要に
応じて5−メチルシトシンがシトシンの代わりに使用される、少なくとも1つのCGジヌ
クレオチドを含む)を含むオリゴヌクレオチド;(8)ポリオキシエチレンエーテルまた
はポリオキシエチレンエステル(126);(9)オクトキシノールとの組み合わせたポ
リオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(127)またはオクトキシノールのよ
うな少なくとも1つのさらなる非イオン性界面活性剤との組み合わせたポリオキシエチレ
ンアルキルエーテル界面活性剤あるいはポリオキシエチレンアルキルエステル界面活性剤
(128);(10)免疫刺激性のオリゴヌクレオチド(例えば、CpGオリゴヌクレオ
チド)およびサポニン(129);(11)免疫刺激剤および金属塩の粒子(130);
(12)サポニンおよび水中油型エマルジョン(131);(13)サポニン(例えば、
QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて+ステロール)(132);(14
)アルミニウム塩(好ましくは水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム)(しかし
任意の他の適切な塩がまた、使用され得る(例えば、ヒドロキシリン酸アルミニウム、オ
キシ水酸化アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなど(ref.
119の第8章および第9章))。異なるアルミニウム塩の混合物がまた使用され得る。
この塩は、任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶、アモルファスなど)を採り得る;(
15)キトサン;(16)コレラ毒素またはE.coliの熱不安定性毒素、あるいはそ
れらの無毒化された変異体(133);(17)PLGのようなポリ(a−ヒドロキシ)
酸の微粒子;(18)組成物の効力を高めるために免疫刺激剤として作用する他の物質。
アルミニウム塩および/またはMF59TMが好ましい。
【0172】
組成物は、好ましくは、無菌であり、そして/または発熱物質を含まない。それは、代
表的には、pH7周辺に緩衝化される。
【0173】
組成物は、好ましくは免疫原性の組成物であり、そしてより好ましくはワクチン組成物
である。組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)において抗体を生成するために使用され得
る。
【0174】
本発明のワクチンは、予防薬(すなわち、疾患を防止するため)であり得るか、または
治療薬(すなわち、疾患の症状を減少させるか、または除去するため)であり得る。
【0175】
効力は、本発明の組成物の投与後、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプ
チドの発現をモニタリングすることによって試験され得る。tatベースのHIV免疫に
おいて以前から使用されている方法の全てが、使用され得る。
【0176】
(H.薬学的組成物)
本発明は、上記で定義されたようなポリヌクレオチド、ポリペプチド、また抗体を含む
薬学的組成物を提供する。本発明はまた、薬としての使用および癌を処置するための薬の
製造におけるそれらの使用を提供する。本発明はまた、免疫応答を生じるための方法を提
供し、この方法は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの免疫原性用量を動物
に投与する工程を包含する。
【0177】
本発明によって含まれる薬学的組成物は、活性薬剤として、本明細書中で開示される本
発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体を薬学的有効量で含む。「有効量」
とは、有益または所望の結果(臨床結果を含む)をもたらすために十分な量である。有効
量は、1回以上の投与で投与され得る。本発明の目的のために、有効量は、癌の症状およ
び/または進行を軽減するか、改善するか、安定にするか、後退させるか、遅らせるか(
slow)または遅らせる(delay)ために十分である量である。
【0178】
組成物は、癌および原発性癌の転移を処置するために使用され得る。さらに、薬学的組
成物は、癌処置の従来の方法(例えば、腫瘍を放射線療法または従来の化学療法に感作す
るような)とともに使用され得る。用語「処置」「処置している」「処置する」などとは
、本明細書中で概して、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることをい
うために用いられる。この効果は、その疾患および/またはこの疾患に起因し得る副作用
または症状を完全にまたは部分的に予防する点では予防であり得、そして/あるいは疾患
のための部分的または完全な安定化または治療の点では治療であり得る。本明細書中で使
用される場合、「処置」は、哺乳動物(特に、ヒト)における疾患の任意の処置を含み、
そして以下を含む:(a)疾患または症状の素因があり得るが、まだそれらを有している
と診断されていない被験体において、疾患または症状が生じるのを防ぐこと;(b)疾患
の症状を阻害すること(すなわち、その発症を阻止すること);または(c)疾患の症状
を軽減すること(すなわち、疾患または症状の後退を引き起こすこと)。
【0179】
薬学的組成物が、差示的に発現したポリヌクレオチドによってコードされる遺伝子産物
に特異的に結合する抗体を含む場合、抗体は処置部位への送達のための薬物に結合され得
るか、または前立腺癌細胞のような癌細胞を含む部位の画像化を促進するために検出可能
な標識に結合され得る。抗体を薬物および検出可能な標識に結合する方法は、検出可能な
標識を使用して画像化するための方法のように、当該分野において周知である。
【0180】
本明細書中で使用される場合、用語「治療的に有効な量」とは、所望の疾患もしくは状
態を処置するか、改善するか、もしくは予防するような、または検出可能な治療効果もし
くは予防効果を示すような治療剤の量をいう。この効果は、例えば、化学的マーカーまた
は抗原レベルによって検出され得る。治療効果はまた、身体的症状の減少を含む。被験体
のための正確な有効量は、被験体のサイズおよび健康、状態の特性および程度、ならびに
投与のために選択される治療法または治療法の組み合わせに依存する。所定の状態のため
の有効量は、慣用的な実験によって決定され、そして医師の判断にある。本発明の目的の
ために、有効用量は、該して、投与される個体において、約0.01mg/kg〜約5m
g/kg、または約0.01mg/kg〜約50mg/kgもしくは約0.05mg/k
g〜約10mg/kgの本発明の組成物である。
【0181】
薬学的組成物はまた、薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。用語「薬学的に受容可
能なキャリア」とは、抗体またはポリペプチド、遺伝子、および他の治療剤のような治療
剤の投与のためのキャリアをいう。この用語は、それ自体は組成物を受け入れる個体に対
して有害な抗体の産生を誘導せず、そして過度な毒性なしに投与され得る任意の薬学的キ
ャリアをいう。適切なキャリアは、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、
ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子のような、巨大でゆ
っくりと代謝される高分子であり得る。そのようなキャリアは、当業者に周知である。治
療組成物中の薬学的に受容なキャリアは、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノー
ルのような液体を含み得る。湿潤剤または乳化剤のような補助物質、pH緩衝物質なども
また、そのようなビヒクル中に存在し得る。代表的に、治療組成物は、注射可能物(液体
の溶液または懸濁液のいずれか)として調製される;注射前に液体ビヒクルに溶解または
懸濁するに適切な固形形態もまた、調製され得る。リポソームは、薬学的に受容可能なキ
ャリアの定義内に包含される。例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの
鉱酸塩;および、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸塩のよ
うな薬学的に受容可能な塩もまた、薬学的組成物中に存在し得る。薬学的に受容可能な賦
形剤の一貫した考察は、Remington:The Science and Pra
ctice of Pharmacy(1995) Alfonso Gennaro、
Lippincott、Williams、およびWilkins、または参考文献13
4で入手可能である。
【0182】
一旦処方されたならば、本発明によって企図される組成物は、(1)被験体に直接投与
され得るか(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、低分子アゴニストまたは低分子
アンタゴニストなどとして);または(2)被験体に由来する細胞にエクスビボで送達さ
れ得る(例えば、エクスビボでの遺伝子治療として)。組成物の直接送達は、一般的に非
経口の注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内もしくは筋内、腫瘍内あるいは組織の間隙空
間に対して)によって達成される。他の投与形態としては、経口投与および肺への投与、
坐剤、ならびに経皮への塗布、針、かつ遺伝子銃(gene gun)またはハイポスプ
レーが挙げられる。投薬処理は、単回用量スケジュールまたは複数回用量スケジュールで
あり得る。
【0183】
エクスビボで送達し、そして形質転換された細胞を被験体に再移植するための方法は、
当該分野において公知である(例えば、ref.135)。エクスビボでの適用において
有用な細胞の例としては、例えば、幹細胞(特に、造血幹細胞)、リンパ球、マクロファ
ージ、樹状細胞、または腫瘍細胞が挙げられる。一般的に、エクスビボでの適用およびイ
ンビトロでの適用の両方についての核酸の送達は、例えば、デキストラン媒介性のトラン
スフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン(polybrene)媒介性のト
ランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム中への
ポリヌクレオチドのカプセル化、および核内へのDNAの直接の微量注入によって達成さ
れ得、これらは全て当該分野において周知である。
【0184】
PCAVポリヌクレオチドの差示的発現は、腫瘍と相関することが見出されてきた。腫
瘍は、提供されたポリヌクレオチド、対応するポリペプチドまたは他の対応する分子(例
えば、アンチセンス、リボザイムなど)をベースにした治療剤の投与による処置を受けや
すくあり得る。他の実施形態において、障害は、例えば、正常細胞と比較して癌細胞中で
発現が増加した遺伝子のコードされた遺伝子産物の機能のインヒビター(アンタゴニスト
)として、または癌細胞中で発現が増加した遺伝子産物についてアゴニスト(例えば、腫
瘍サプレッサーとして作用する遺伝子産物の活性を促進するような)として作用する低分
子薬物の投与による処置手順を受けやすくあり得る。
【0185】
本発明の薬学的組成物の投与の用量および方法は、治療組成物の特定の質、患者の状態
、年齢、および体重、疾患の進行、および他の関連因子に基づいて決定される。例えば、
ポリヌクレオチド治療組成物薬剤の投与は、局所投与または全身投与を含み、これは、注
射、経口投与、粒子銃またはカテーテル投与、および局所投与を含む。好ましくは、治療
ポリヌクレオチド組成物は、本発明のポリヌクレオチドに作動可能に連結するプロモータ
ーを含む発現構築物を含む。種々の方法が、治療組成物を直接体内の特定部位に投与する
ために使用され得る。例えば、小さい転移性の病巣が位置付けられ、そして治療組成物が
腫瘍体のいくつかの異なる位置において数回注射される。あるいは、腫瘍に供給する動脈
が同定され、そして組成物を直接腫瘍内へ送達するために、治療組成物がそのような動脈
中に注射される。壊死性中心を有する腫瘍が吸引され、そして組成物が、今や空の腫瘍中
心に直接注射される。アンチセンス組成物は、例えば、組成物の局所適用によって、直接
腫瘍表面に投与される。X線画像化が、特定の上記の送達方法を補助するために使用され
る。
【0186】
アンチセンスポリヌクレオチド、サブゲノムのポリヌクレオチド、または抗体を含む治
療組成物の特定の組織への標的化送達もまた使用され得る。レセプター媒介性DNA送達
技術が、例えば、参考文献136〜141において記載される。ポリヌクレオチドを含む
治療組成物は、遺伝子治療プロトコルにおける局所投与について、約100ng〜約20
0mgのDNAの範囲で投与される。約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、
約5μg〜約500μg、および約20μg〜約100μgの濃度範囲のDNAがまた、
遺伝子治療プロトコルの間に使用され得る。作用方法(例えば、コードされた遺伝子産物
のレベルを上昇させるか、または阻害するために)のような要素ならびに形質転換および
発現の効力は、アンチセンスサブゲノムポリヌクレオチドの最終的効力に必要とされる投
薬量に影響を与える考慮すべき問題である。より多い発現が、組織のより広い領域にわた
って所望される場合、連続投与のプロトコルにおいて再投与されたものより多い量のアン
チセンスサブゲノムのポリヌクレオチドもしくは同量のアンチセンスサブゲノムのポリヌ
クレオチド、または例えば腫瘍部位とは異なる隣接の組織部分、もしくは近い組織部分へ
の数回の投与が、ポジティブな治療の結果をもたらすために必要とされ得る。全ての場合
において、臨床試験における慣用的な実験は、最適な治療効果のための特定範囲を決定す
る。
【0187】
本発明の治療ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、遺伝子送達ビヒクルを使用して
送達され得る。この遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス起源または非ウイルス起源であり得
る(一般的には、参考文献142、143、144および145を参照のこと)。そのよ
うなコード配列の発現は、内在性の哺乳動物プロモーターまたは異種のプロモーターを使
用して誘導され得る。このコード配列の発現は、構成的または調節的のいずれかであり得
る。
【0188】
所望のポリヌクレオチドの送達および所望の細胞中での発現のためのウイルスベースの
ベクターは、当該分野において周知である。例示的なウイルスベースのビヒクルとしては
、組換えレトロウイルス(例えば、参考文献146〜156)、αウイルスベースのベク
ター(例えば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−
67;ATCC VR−1274)、ロス川ウイルス(ATCC VR−373;ATC
C VR−1246)およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR−923;A
TCC VR−1250;ATCC VR 1249;ATCC VR−532))、ア
デノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、参考文献
157〜162を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。殺傷されたアデノウイ
ルスに連結したDNAの投与(163)もまた、用いられ得る。
【0189】
非ウイルス送達ビヒクルおよび方法もまた使用され得、これらとしては、殺傷されたア
デノウイルスに連結しているか、または連結していない単独の、多陽イオン性(poly
cationic)の縮合DNA(例えば、163)、リガンド連結DNA(164)、
真核生物細胞送達ビヒクル細胞(例えば、ref.165〜169)および核電荷中和ま
たは細胞膜との融合が挙げられるが、これらに限定されない。裸のDNAがまた使用され
得る。例示的な裸のDNA導入方法が、ref.170および171において記載される
。遺伝子送達ビヒクルとして作用し得るリポソームは、ref.172〜176において
記載される。さらなるアプローチが、ref.177および178において記載される。
【0190】
さらに、使用に適切な非ウイルス送達としては、ref.178において記載されるア
プローチのような機械的な送達系が挙げられる。そのうえ、そのようなコード配列および
発現産物は、光重合性ヒドロゲル物質の沈積または電離放射線の使用を介して送達され得
る(例えば、ref.179および180)。コード配列の送達のために使用され得る遺
伝子送達のための他の従来の方法としては、例えば、携帯型遺伝子移入粒子銃の使用(1
81)または移入された遺伝子を活性化するための電離放射線の使用(179および18
2)が挙げられる。
【0191】
(I ヒト内因性レトロウイルスのHML−2ファミリー)
全真核生物のゲノムは、感染性レトロウイルスに関連する配列の複数のコピーを含む。
これらの内在性レトロウイルスは、実際の感染形態および何千もの欠損レトロウイルス様
エレメント(例えば、IAPおよびEtn配列ファミリー)の両方が存在するマウスにお
いて十分研究されてきた。生殖細胞系突然変異または腫瘍形成形質転換を引き起こすこれ
らのエレメントの挿入が証明されてきたので、IAPおよびEtnファミリーのいくつか
のメンバーは、「活性」なレトロトランスポゾンである。
【0192】
内在性レトロウイルスは、ヒトゲノムDNAにおいて、他の脊椎動物のレトロウイルス
とのその相同性によって同定された(183、184)。ヒトゲノムは、おそらく内在性
のプロウイルスDNAの多数のコピーを含むと考えられているが、その機能についてはほ
とんど未知である。ほとんどのHERVファミリーは、相対的に数個のメンバー(1〜5
0個)を有するが、1つのファミリー(HERV−H)は、全ての染色体について分配さ
れるハプロイドゲノムあたり約1000個のコピーからなる。胚細胞株および腫瘍細胞株
における大多数のHERVおよびHERVの普遍的な転写活性は、それらが、疾患を引き
起こす挿入突然変異として作用し得るか、または中立的の方法または有益な方法で隣接す
る遺伝子の発現に影響を及ぼし得ることを示唆する。
【0193】
ヒト内在性レトロウイルスのKファミリー(HERV−K)は、周知である(185)
。これは、マウス乳腺癌ウイルス(MMTV)と関連し、そしてヒト、サル(ape)、
および旧世界ザルのゲノム中に存在するが、いくつかのヒトHERV−Kプロウイルスは
、ヒトに独特である(186)。HERV−Kファミリーは、ハプロイドヒトゲノムあた
り30〜50個の全長コピーで存在し、そして潜在的にウイルスのタンパク質中へ翻訳さ
れる長型オープンリーディングフレームを保持する(187、188)。2つの型のプロ
ウイルスゲノムが公知であり、これは、pol遺伝子およびenv遺伝子の重複する境界
における292個のヌクレオチドのストレッチの存在(2型)または非存在(1型)によ
って異なる。HERV−Kファミリーのいくつかのメンバーは、gagタンパク質および
レトロウイルス粒子をコードすることが公知であり、これは、生殖細胞腫瘍および誘導細
胞株の両方において検出可能である(190)。全長HERV−KのRNA発現パターン
分析はまた、HIVのRevタンパク質と機能的に等価な配列特異的な核RNAエクスポ
ート因子である中心ORF(cORF)と命名された105個のアミノ酸タンパク質をコ
ードする二重スプライシングRNAを同定する(191)。HERV−K10は、全長g
agと相同的な73kDaのタンパク質および機能的なプロテアーゼをコードすることが
示されてきた(192)。
【0194】
生殖細胞腫瘍に罹患する患者は、腫瘍検出時にHERV−Kgagおよびenvタンパ
ク質に対する高い抗体力価を示す(193)。正常な精巣および精巣腫瘍において、HE
RV−K膜貫通エンベロープタンパク質は、生殖細胞および腫瘍細胞の両方において検出
されるが、周辺組織では検出されない。精巣腫瘍の場合、envに特異的なmRNAの発
現、膜貫通envの存在、cORFと、患者の血漿中のgagタンパク質およびHERV
に特異的なペプチドに対する抗体との間の相関が、報告されてきた。参考文献194は、
HERV−K10gagタンパク質および/またはenvタンパク質は、セミノーマ細胞
中で合成されること、およびその腫瘍を有する患者は、相対的にgagおよび/またはe
nvに対して高い抗体力価を示すことを報告する。
【0195】
HERV−Kから粒子の形態で放出されるGagタンパク質は、奇形癌由来細胞株Te
ra 1の細胞培養上清中で同定された。これらのレトロウイルス様粒子(「ヒト奇形癌
由来ウイルス」またはHTDVと命名された)は、HERV−K10ゲノムと90%の配
列相同性を有することが示されてきた(190、195)。
【0196】
HERV−Kファミリーが、ヒト細胞ごとのゲノムにおいて存在する一方で、mRNA
の高レベル発現、タンパク質および粒子は、ヒト奇形癌細胞株においてのみ観察される(
196)。他の組織および細胞株において、非常に感度の高い方法を使用してでも、mR
NAの基底レベルの発現が証明されただけであった(197)。レトロウイルスのプロウ
イルスの発現は、一般的に5’長末端反復(LTR)のエレメントによって調節される。
HERV−K LTRの活性は、転写因子によってアップレギュレートされることが公知
である。さらに、内因性レトロウイルスの発現の活性化は、腫瘍性作用の引き金となる下
流遺伝子の発現の引き金となり得る。
【0197】
HERV−K(II)の配列(第3染色体に位置する)が開示されてきた(198)。
【0198】
HML−2は、HERV−Kファミリーのサブグループである(199)。HML−2
小群のメンバーであるHERV単離体としては、HERV−K10(189、194)、
参考文献200の図面4において示された27個のHML−2ウイルス、HERV−K(
C7)(201)、HERV−K(II)(198)、およびHERV−K(CH)が挙
げられる。
【0199】
HML−2は十分認識されたファミリーであるため、当業者は、任意の特定の内因性レ
トロウイルスがHML−2であるか否かを困難なく決定し得る。本発明に従って使用する
ために好ましいHML−2ファミリーのメンバーは、そのプロウイルスゲノムが配列番号
44と少なくとも75%の配列同一性を有するLTR(HML−2.HOM(7)に由来
するLTR配列)を有するメンバーである。LTRの例としては、配列番号45〜48が
挙げられる。
【0200】
(否認(disclaimer))
いくつかの実施形態において、本発明は、配列番号69〜76のアミノ酸配列のうちの
1つを有するポリペプチド、または配列番号69〜76を含むポリペプチドを含み得ない
(204)。
【0201】
いくつかの実施形態において、本発明は、以下を含み得ない:(i)参考文献1におい
て開示されるヌクレオチド配列を含む核酸;(ii)参考文献1における配列1〜225
内のヌクレオチド配列を含む核酸;(iii)公知の核酸;(iv)参考文献1において
開示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(v)参考文献1における配列1〜225
内のアミノ酸配列を含むポリオペプチド;(vi)公知のポリペプチド;(vii)20
01年12月7日の核酸またはポリペプチドとして公知の核酸またはポリペプチド(例え
ば、その配列は、2001年12月7日以前のGeneBankまたはGeneSeqの
ような公開のデータベースで利用可能である);または(viii)2002年6月10
日のポリペプチドまたは核酸として公知のポリペプチドまたは核酸(例えば、その配列は
、2002年6月10日以前のGeneBankまたはGeneSeqのような公開のデ
ータベースで利用可能である)。
【0202】
(定義)
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」および「
構成する(consisting)」(例えば、Xを「含む」組成物は、独占的にXから
なり得るか、またはさらなる何か(例えば、X+Y)を含み得る)を意味する。
【0203】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0204】
用語「腫瘍性細胞」、「新形成」、「腫瘍」、「腫瘍細胞」、「癌」および「癌細胞」
(交換可能に使用される)とは、相対的に自立性増殖を示す細胞をいい、そのため、これ
らは、細胞増殖の制御の有意な消失(すなわち、統制解除された細胞分裂)によって特徴
付けられる異常な増殖の表現型を示す。腫瘍性細胞は、悪性または良性であり得、そして
前立腺癌または乳癌に由来する組織を含む。
【0205】
単語「実質的に」は、「完全に」を排除しない(例えば、Yを「実質的に含まない」組
成物は、完全にYを含まない状態であり得る。必要な場合、単語「実質的に」は、本発明
の定義から削除され得る。
【0206】
(本発明を実行するための様式)
本発明の特定の局面は、以下に続く非限定的な例においてより詳細に記載される。当業
者に本発明の作製方法および使用方法の完全な開示および記載を提供するように、実施例
が示され、そして本発明者らが、その発明であるとみなすものの範囲に限定することが意
図されなければ、以下の実験が実行された全ての実験および実行された実験のみであるこ
とを示すことも意図されない。使用される数(例えば、量、温度など)に関する正確さを
保証するための努力が為されるが、いくつかの実験誤差および偏差が考慮されるべきであ
る。他で示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度はセ
氏温度であり、そして圧力は大気圧であるか、または大気圧周辺である。
【0207】
(HML−2配列の前立腺関連発現)
参考文献1は、前立腺癌とHERV−K内因性レトロウイルスのHML−2サブグルー
プの発現のアップレギュレーションとの関連を記載する。
【0208】
(mRNAのスプライシングパターン)
前立腺癌細胞株のノーザンブロットは、それらがいくつかのサイズ(全長ウイルスゲノ
ム配列およびサブゲノムのスプライシングされた転写物の両方に対応する)のPCAV転
写物の発現することを示す(図14)。そのような転写物の発現はまた、図14のレーン
1において示されるように、奇形癌細胞株においても観察される(4)。さらに、PCA
Vのスプライシングパターンを特徴付けるために、取り込まれたプロウイルス配列の隣接
するLTR間の任意のスプライス事象を検出し得るRT−PCRストラテジーを使用した
。統合PCAVゲノムの一般的な特徴に対して、このアプローチにおいて使用された順方
向プライマー(配列番号15)および逆方向プライマー(配列番号16および17)のお
よその位置は、図15中の矢印によって示される。
【0209】
逆転写酵素がRT−PCR反応物中に含まれる場合のみ(図16中のレーン1、3、5
、7、および9)、envおよび他のORFの転写物に対応するDNAフラグメントは、
これらの実験において検出され得、これは、このDNAフラグメントがスプライシングさ
れたPCAV mRNAに由来されることを示す。これらのスプライシングされたmRN
Aは、奇形癌細胞株Tera1(図16、レーン1)ならびに前立腺癌細胞株DU145
、PC3、LNCaP、およびMDA−PCa−2b(図16)において検出された。類
似の結果がまた、前立腺癌患者から得られたいくつかの腫瘍サンプルにおいて観察された

【0210】
正確なスプライシングパターンを決定するために、細胞株および患者組織から得られた
RT−PCR産物をクローニングし、そして配列決定した。envのスプライシングされ
たmRNAに加えて、多くの他のスプライス改変体が見られた(図17および18におい
てスプライスA〜Jと命名された;これらのスプライス改変体のコンセンサス配列につい
て、以下を参照のこと)。これらの結果の詳細な分析は、4つのエキソン(エキソン1、
1.5、2および3)およびHML−2ゲノム配列の全域で13個のスプライス連結(図
17〜22においてI〜XIIIと命名された)を同定する。
【0211】
図17において略図で示されるように、エキソン1は、LTRにおける転写開始部位か
らスプライス部位Iの配列を含む。スプライス連結Iは、HML−2の全ての統合された
コピーの間で保存され、そしてgagについての開始メチオニンの上流(図19、ヌクレ
オチド1502とヌクレオチド1503との間)に位置する。試験された全てのスプライ
シングされたmRNAは、スプライスJのmRNA(エキソン2とエキソン3との間のイ
ントロンのみを除去するようである)を除いて、正確にこの部位でスプライシングされる

【0212】
エキソン1.5は非常に小さく、そしてスプライスDのmRNAにおいて検出されるの
みであった(図17)。このエキソンは、gagコード配列(ヌクレオチド2624と2
668との間、図20を参照のこと)に位置し、そして潜在的な開始メチオニンをコード
する。PCAVゲノムの統合されたコピーのうちのいくつかのみが、原型Y17832ゲ
ノムの2622位〜2623位で見出されるAG3’スプライス連結コンセンサス配列を
含む。おそらくこれは、ウイルスを含まない進化の間に、統合ウイルスゲノムとしての霊
長類の進化の間に、いくつかのPCAV改変体におけるこのイントロンの獲得または消失
のいずれかを示す。
【0213】
エキソン2は非常に異質性であり、これは、エキソンの5’末端に2個の異なる3’ス
プライス連結(スプライス部位IVおよびV、図18および21を参照のこと)およびエ
キソンの3’末端に7個の5’スプライス連結(スプライス部位VI〜XII、図19お
よび21を参照のこと)を含む。さらに、エキソン2は、実験の分析で検出されなかった
他の潜在的なプライス部位を含む。これらの潜在的な部位のうちの1つ(図21において
、「潜在的なスプライス部位A」として示される)は、HIVtatまたはHTLVta
xと等価なものをコードするmRNAを生成するために使用され得る(以下を参照のこと
)。
【0214】
各スプライス改変体におけるエキソン2のサイズは、いずれのスプライス部位がそれぞ
れ個々のスプライス事象において使用されるかに依存する。図18は、観察されたスプラ
イス改変体(配列番号18〜43もまた参照のこと)の全てを要約するが、原則として、
2つ以上のエキソンを有するmRNAにおける内部エキソンについて非常に巨大であるエ
キソンを潜在的に除いて、任意の他の組み合わせが可能である。複雑性のレベルに加えて
、これらのスプライス部位のうちの4つが、ヒトゲノム中に統合されたことが見出された
2つのPCAV配列改変体に特異的である。I型ウイルス(図21における配列AB04
7240、Y18890およびM14123)は、envのN末端領域における約300
個のヌクレオチドの欠失、2つの潜在的な開始メチオニンの後ろに続く約35〜43個の
ヌクレオチドの欠失を含む(図18を参照のこと)。この欠失部位に近位のスプライス部
位VIは、I型ウイルスにおいてのみ見出される(図21を参照のこと)。それらを含む
配列がI型ウイルスにおいて欠失されるので、スプライス部位VII、VIIIおよびI
Xは、II型ウイルスにおいて見出されるのみである(図21における配列Y17832
、AF074086−T1、AF074086−T2、Y17833、Y17834、A
P000346およびAL035587)。従って、エキソン2によってコードされるペ
プチドのサイズは、スプライシングのパターンおよびそのmRNAが由来するウイルスの
型の両方に依存する。envについての開始メチオニンは、全てのエキソン2の検出され
る形態で存在し、そしてそのオープンリーディングフレームは、特徴付けられた全てのス
プライス部位をとおって開いている。
【0215】
エキソン3配列は、第2のLTRの前にある約90個のヌクレオチド(原型配列Y17
832の8817位で、図22を参照のこと)で始まり、そしてLTR内に含まれるポリ
アデニル化部位に続く。検出される全てのスプライス形態は、8816位と8817位と
の間のスプライス部位XIIIを使用する(図22)。第2の潜在的なスプライス部位コ
ンセンサス部位は、8824位と8825位との間に位置する(図22、潜在的なスプラ
イス部位B)が、分析されたcDNAクローンのいずれにおいても観察されなかった(す
なわち、それは、低頻度で使用され得る)。このスプライス部位はまた、PCAV ta
tまたはtax等価物を生成するために使用され得る(以下を参照のこと)。このエキソ
ンにおいて、3つのリーディングフレーム全てが開放されている。フレーム1がエキソン
2の配列を有するフレームにある場合、フレームIは、8871位(図22)で終わり、
そして18個のアミノをこのコードされたポリペプチドに添加する。このリーディングフ
レームは、スプライス部位IXにおけるエキソン2が、PCAVrevポリペプチドをコ
ードするようにスプライス部位IXがスプライス部位XIIIでエキソン3に連結される
、前もって特徴付けられたスプライス形態(cORFと呼ばれる)で使用される。エキソ
ン2を有するフレームにある場合、フレーム2は、8995位(図9)で終わり、そして
59個のアミノ酸をコードされたポリペプチドに添加する。このフレームは、以下に記載
されるPCAVtat/tax等価物をコードする。エキソン3における第3のフレーム
は、PCAV envのC末端に対応し、そして図22における整列内の8954位で終
わる。
【0216】
このスプライシングのパターンおよびいずれのスプライシング部位が利用されるかに依
存する複数の産物をコードする能力は、一般的にHIVおよびHTLVのスプライシング
パターンに類似する。これは、PCAVがレトロウイルスのレンチウイルス型に属するこ
とを示唆する。全ての可能なスプライス改変体は、配列番号18〜43(コンセンサス配
列)として同定され、そして表1において記載される。
【0217】
(tatまたはtaxに類似のポリペプチドの同定)
レンチウイルスの明確な特徴は、それらがウイルスLTRプロモーターからの転写を活
性化し得るポリペプチドをコードすることである。HIVのtatポリペプチドは、これ
らのアクチベーターの最も理解される例である。tat遺伝子は、HIVにおけるrev
遺伝子およびenv遺伝子と物理的に重複し、そしてenv領域にわたるHIVのmRN
Aの変更スプライシングを介して作られる。Tatポリペプチドは、TARと呼ばれる特
定部位でHIVのmRNAの5’末端に結合し、そしてHIVに特定の活性化を提供する

【0218】
全長HERV−KのmRNAは、2度スプライスされ得る(1度は、gag−prt−
polを除去するためであり、1度は、大部分のenv遺伝子を除去するために)(図3
)。二重にスプライシングされるRNAによってコードされるポリペプチドが同定され、
そして「cORF」と呼ばれる。このポリペプチドは、HIVrevと類似の活性を有す
ると考えられるが、tatポリペプチドは、HERV−Kファミリーのメンバーについて
以前に同定されていない。潜在的なtatホモログをコードするスプライシングPCAV
のmRNAが、これまでに同定されてきた。
【0219】
PCAV−mRNAにおける複数の変更スプライシング部位が同定されてきた(図4お
よび5)。これらは、env領域における最後のエキソンが、3つのリーディングフレー
ム全てにおいて使用され得ることを示す。フレーム1および2は、それぞれ、envおよ
びcORFをコードするが、第3のフレームは、3つのうちの最長のオープンリーディン
グフレームを含む。いくつかの変更mRNAは、第1のコードエキソンとこのリーディン
グフレームを結合させる。
【0220】
機能的な発現アッセイは、最後のenvエキソンにおける第3のリーディングフレーム
が、PCAV−mRNAの転写を活性化する能力を有するポリペプチドをコードするか否
かを決定するために設計された。このアッセイの第1成分は、GFP発現を駆動させるP
CAV LTR(配列番号45)を有するアデノウイルスベクターである(図6)。種々
のヒト細胞株にこのウイルスで感染させ、そして蛍光を、蛍光顕微鏡またはFACSのい
ずれかによって測定した。ポジティブコントロールとして、GFP発現がEFαプロモー
ターによって駆動されるベクターを使用した。これは、全ての真核生物細胞において活性
であるべきである。
【0221】
このLTRからのGFP発現は、卵巣癌細胞、乳癌細胞、結腸癌細胞および肝臓癌細胞
においては最小であった。それはまた、293細胞(不死化腎臓細胞株)および初代前立
腺上皮細胞においても最小であった。GFPは、種々の前立腺癌細胞株(PC3、LNC
aP、MDA2B PCA、DU145)において容易に検出された。代表的なデータが
、図7において示される。GFP発現パターンは、正確に患者サンプルからのゲノム結果
とマッチする。これらのデータは、PCAV−mRNA LTRから駆動される発現が、
前立腺癌についてのマーカーであることを示す。
【0222】
LTRからのGFP発現が、初代前立腺細胞においてサイレントであり、そして前立腺
癌において活性であることが明白であったので、env領域からのポリペプチドを、初代
前立腺細胞における発現を活性化する能力について試験した。図5において示されるコー
ド配列が発現カセット中に挿入され、そしてこれらは、アデノウイルスベクターに組み込
まれた。第1のコードエキソンは、env産物、rev産物および5個のPCAP産物と
共通である。このエキソンは、核局在シグナル(NLS)としても機能するRNA結合ド
メイン、ポリペプチド二量化領域、および高度に疎水性の配列を含む。cORFポリペプ
チドは、末端エキソンにおける非常に短い領域に融合するこれらのドメインの3つ全て含
む(図4)。PCAP1転写物は、正常部位の57塩基上流にある変更5’スプライス部
位を使用するポリペプチドをコードし、そしてcORFからの疎水性ドメインを欠く。P
CAP2は、3つのドメイン全てを破壊するが、最後のエキソンにおいてenv ATG
が第3のフレームと連結するI型HERV−K欠失に由来する。PCAP3は、PCAP
2と類似であるが、欠失の代わりに変更スプライシングが産物を作る異なるウイルスに基
づく。PCAP4は、正常なcORF部位の52塩基上流にある潜在的な5’スプライス
部位が、cORFにおいて使用される3’スプライス部位に連結されるゲノム配列に基づ
き、そしてこれは、最後のエキソンにおいて第3のコードフレームと融合するRNA結合
ドメインおよび二量化領域を含む。別の実験において、3’スプライス部位は、cORF
部位の7塩基下流に存在することが見出された。この部位は、cORF5’スプライス部
位およびこの部位から57塩基上流にある部位にマッチした。この上流部位を有する産物
は、PCAP4aと呼ばれ、そしてPCAP4と同じ構造を有するが、4個のアミノ酸が
欠けている。変更に対して曲げられたcORF5’スプライス部位は、PCAP5と呼ば
れ、そして第3のコードフレームに対して曲げられた3個のドメインを有する。図5にお
ける標識「sag」は、「スプライスA」産物に対応する(以下参照のこと)。
【0223】
cORFまたは5個のPCAP産物をコードするベクター(図8)は、GFPベクター
により初代前立腺上皮細胞に共感染させられた。代表的なFACSデータは、図9におい
て示される。3個のPCAP産物(すなわち、PCAP4、PCAP4aおよびPCAP
5)は、発現を活性化し得る一方で、PCAP1、PCAP2およびPCAP3ならびに
cORFは全て、発現を活性化しなかった。PCAP4aは、このアッセイにおいて、最
大活性を示した。
【0224】
PCAP4産物および非活性なPCAP産物の相互作用が、細胞をGFPベクター、P
CAP4ベクター、および非活性な産物をコードする過剰なベクターで感染することによ
って試験した。PCAP1、PCAP2およびPCAP3ならびにcORFは全てPCA
P4の活性を抑制し得、cORFは、最も強い優位なネガティブ(dominant n
egative)であった。
【0225】
これらのデータは、PCAV−mRNAが、RNA結合ドメイン(NLS)、ポリペプ
チド二量化領域および第3のリーディングフレームを含むtatホモログをコードする。
このポリペプチド産物を作るヌクレオチド配列は、1986以来公知であったが、変更ス
プライシングを介するその機能的な連結は、以前に報告されていなかった。
【0226】
HIVにおいて、tatポリペプチドのRNAリガンドは、TARである。PCAV−
mRNAのLTRにおける潜在性TAR部位が、調査されている(図10)。LTRにお
ける欠失は、Rでの領域が発現に対してとても強い影響を有することを示し(図11)、
PCAV−mRNAの5’末端は規定TATA配列の30塩基下流を脱落すると推定して
いる(図12)。従って、変異体LTR570および変異体LTR641(図10)にお
ける欠失は、PCAV mRNAの5’末端に位置し、そしてこれらの効果は、TARで
の効果と一致する。さらに、PCAV mRNA(配列番号14)の最初の150ヌクレ
オチドは、HIV TARのように、高度に安定した二次構造(図13)を有するRNA
を形成をし得る。
【0227】
しかし、他の研究では、PCAV−mRNAの5’末端がさらに下流であることを示唆
する。図23は、5’末端をマップするために使用されるRT−PCRスキャニングアッ
セイの結果を示す。5’LTRのcDNAを、プロウイルスゲノム(配列番号53)にお
ける997〜972を占めるアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、全Teral
RNAをプライムすることにより調製した。次いで、このcDNAを分離し、そして、お
そらく5’末端を含むように設計されたプライマーセット由来のセンスプライマーと共に
、968〜950(配列番号54)由来のアンチセンスプライマーを用いてPCR分析で
電気泳動した:1)571<配列番号55>、2)600<配列番号56>、3)626
<配列番号57>、4)660<配列番号58>、5)712<配列番号59>。1μg
のゲノムHeLa DNAでの二重のPCR反応をポジティブコントロールとして使用し
、そしてこれらの反応は、全てのプライマー対が有効であったことを示した。cDNAで
プライムした反応は、プライマー600およびプライマー626との間で著名な差異を示
し、それは、5’末端がプロウイルスゲノムにおいて、626位に密接に位置することを
示唆している。
【0228】
この結果を、RNaseプロテクションアッセイを用いて確認した(図24)。プロウ
イルスゲノムにおいて、塩基(24B)509〜735および塩基(24C)600〜7
35を含む標識アンチセンスRNAプローブを、Teral細胞由来の全RNAとハイブ
リダイズし、標準的な条件下でRNaseを用いて消化した。プロセシングおよび尿素含
有PAGEによる検出後、両プローブは100塩基の生成物を与えた。これらの二つの結
果は一致し、そして、HERV−K RNAの5’末端は、プロウイルスゲノムにおいて
約635塩基(すなわち、TATA依存性遺伝子にとって通常30bpというよりむしろ
、TATAシグナルの約100bp下流)であることを示す。
【0229】
これらの二つの実験は、初期のデータを作成するために使用された欠失は、プロモータ
ー配列および転写された配列の欠失を生じ得ることを示唆する。
【0230】
不一致を解決するために、予測されるTAR構造(図13)のステム配列およびループ
配列を、LTR60で欠失した。PCAVが転写のtat/TARシステムを使用する場
合、これらの欠失は、翻訳を大きく縮小する。ステムおよびループのそれぞれの欠失(図
25)を、各LTR欠失変異体を動因するGFPを有するE1欠失アデノウイルスベクタ
ーを用いて試験した。PC−3細胞を、50の感染多重度(moi)で、各ベクターを用
いて感染し、そして、3日後、蛍光をFACSにより測定した(図26)。全長および全
欠失は、類似のGFP発現を示した。PrEC細胞での同時感染アッセイにおいて、各変
異体LTRがPCAP4によって誘発される能力をまた、試験し(図26)、そして、再
度、全LTRを同じ範囲まで誘発した。
【0231】
従って、これらのデータは、ステム領域およびループ領域がHERV−K LTR−駆
動発現に関与しないことを示し、このことは、PCAVが、レンチウイルス様tat/T
AR系を用いて制御されないことを示唆している。ウイルス発現に対して感染細胞を活性
化するために、複合レチノウイルスで使用される別のメカニズムは、tax型であり、H
TLVIおよびHTLVIIにより使用される。Taxは、感染T細胞において多数のレ
ベルで作用する(202)。いくつかの転写因子およびコアクチベーターに結合すること
によって、これは、HTLVの転写をアップレギュレートし、そしてCDK4/6インヒ
ビターに結合することによって、細胞周期をデレギュレートする。この組み合わせは、ウ
イルスが活性化される感染細胞の異常な分化を導き、最終的に感染した個体に、成体T細
胞白血病を導入する手段であると考えられている。tax型活性化の特徴の一つは、HI
V TARに対する高い特異性のtatに対して、多数のプロモーターがtaxに反応す
ることである。
【0232】
PCAP4は、マウス白血病ウイルス(MLV)LTRではなく、HERV−K LT
R(LTR60)を活性化する(図27)。驚くことに、PCAP4はまた、HIV L
TRからの発現を誘導することが発見された(図28)。HIV LTR駆動GFP、ア
デノウイルスベクターで感染させたPrEC細胞において、GFPの発現は、PCAP4
を発現するベクターで共感染させることにより、誘導され(10倍)、そして、HIV
LTR発現は、tatベクターで同時感染することにより、とても強く活性化され(10
0倍)、一方、lacZベクターでの同時感染は、効果を有さなかった。さらにA549
細胞での実験において、伸長因子1Aプロモーター(EF1A)はまた、誘導されること
が発見された(図29A)が、CMVプロモータ−では発見されなかった(図29B)。
【0233】
別個の実験において、主なPrEC継代(老化をアプローチする)は、古い型のHER
V−K LTR(‘MDALTR’配列番号77)からGFPを発現するアデノウイルス
ベクター、および約20のmoiにおいてPCAP3またはPCAP4を発現する第二ベ
クターとを同時感染した。3日後、蛍光強度をFACsにより測定し、PCAP3および
PCAP4による活性を認めた(図43)。しかしながら、LTR60およびPCAP3
を用いた類似の実験においては、活性化が無かった。
【0234】
従って、本発明のPCAPタンパク質は、tatよりもtaxにより類似してると考え
られるが、これらの活性の正確なメカニズムは、本発明の基本的な実施では重要でない。
【0235】
(PCAP2)
PCAVのenv領域内の最終エキソン内において、リーディングフレーム1およびリ
ーディングフレーム2は、それぞれenvおよびcORFをコードする(図4および5)
。配列番号11、配列番号28、配列番号29および配列番号31は、PCAP2であり
、それは、同一の5’領域および開始コドンをenvとして共有するが、1型ウイルスで
発見された欠失は、下流3’スプライス部位に連結する5’スプライス部位を誘導する(
図4)。
【0236】
従って、PCAP2をコードする配列の大部分は、スプライス後に位置され、3’LT
Rを含むエキソン内である。+2リーディングフレームは、HERV−Kでの公知の機能
を有さないが、前立腺癌から調製されたcDNAは、PCAP2をコードする転写物を含
有した。
【0237】
種々の整列されたHERV−Kゲノムの検査は、PCAP2が元のタンパク質の変異形
態であることを示唆する。従って、このタンパク質は、元の容量において機能がありそう
もないが、癌遺伝子活性は、機能ドメインの保持力を通じて生じ得た。フラグメントによ
る活性の保持力は、tatというよりむしろtaxに一致する別な特性である。
【0238】
(PCAP2細胞成分の局在)
PCAP2の細胞成分の局在を試験するために(その役割をより理解するために)、C
末端V5タグ(配列番号60)を用いてPCAP2を発現するアデノウイルスを、始原前
立腺上皮細胞に感染に使用した。このタンパク質は、高度に発現しなかったが、抗V5を
用いて、より広汎的に、全ての細胞にわたる核小体内を明らかにした(図30)。この細
胞内に位置する小タンパク質の濃度は、核内にあるものと特に相互作用することを示す。
【0239】
これらの結果は、PCAP2におけるNLSモチーフの存在と一致する。
【0240】
(PCAP2および前立腺細胞増殖)
PWPE1細胞を、ヒトパピローマウイルス18(203)を用いて正常前立腺内皮細
胞を不朽化することによって、作製した。この細胞は,ヌードマウスにおいては非腫瘍形
成性であり、そして、正常前立腺内皮細胞のマーカーおよび増殖特性を有する。
【0241】
EF1AカセットからPCAP2を発現するプラスミドを、プロマイシン選択マーカー
を用いてPWPE1へコトランスフェクトした。個々の耐性コロニーを拡大し、全RNA
を調製し、RT−PCRの分析に基づいて陽性クローンを拾った。増殖特性を評価するた
めに、親細胞、DU145前立腺癌細胞、または選択されたクローンを、マトリゲルプラ
ス完全ケラチノサイト無血清培地(完全KSFMは、ウシ下垂体抽出物およびEGF補給
を含む培地である)へプレーティングした。プレーティングされた細胞を、図31に示す

【0242】
正常前立腺内皮細胞およびRWPE1細胞は、マトリゲルへのプレーティングの際に、
互いに向かって移動し、そして、これらの凝集物は、1週間にわたり、腺を暗示する中空
構造を形成した。対照して、DU145癌細胞は、明白な移動も分化もなく、中実コアコ
ロニーを播種した。試験した細胞株において、GFP株の両方は、親PWPE1に似てお
り、このことは、ベクターの導入選択過程およびこの培養条件は、この細胞を変化させな
いことを示す。PCAP1を発現する細胞はまた、PWPE1と類似に機能した。cOR
Fを発現するクローンは、初めはRWPE1のように凝集したが、次いで、この構造は溶
解し、そしてこの細胞はさらなるコロニーの形態をとった。三つの独立したPCAP2コ
ロニーは、凝集しなかったが、その代わりに、DU145癌細胞のようなコロニーを播種
した。これらのデータは、PCAP2が、正常前立腺細胞の増殖および分化を妨げること
を示唆する。
【0243】
同一の細胞株を用いて、RWPE1の足場独立性(anchorage−indepe
ndent)増殖に対するPCAP2の効果を試験した。RWPE1細胞は、0.35%
軟寒天で増殖しないが、これらは、より低い寒天濃度(例えば、0.3%)で増殖し、各
型の1,000細胞を、完全KSFMプラス軟寒天(0.35%)へ播種した。図32へ
示すように、PCAP2を発現する細胞は、ポジティブコントロールPC−3細胞と同じ
ような範囲で、軟寒天内で増殖した。
【0244】
(腫瘍組織および形質転換細胞株におけるPCAP2の発現)
PCAP2発現は、正常非形質転換細胞には関連していないが、各種の腫瘍組織および
形質転換細胞株に関連することが発見されている(204)。特に、発現は、乳癌細胞株
および乳癌患者組織において認められている。
【0245】
参考文献204に記載されるように、組織または細胞株から抽出されたRNAは、確立
された細胞株、腫瘍生検、白血病および正常個体由来のリンパ球、ならびに正常非形質転
換細胞のパネルで、RT−PCRによって分析されている。図33は、PCAP2が乳癌
およびセミノーマ生検、および形質転換B細胞およびTera−1奇形癌細胞において発
現されることを示す。発現は、形質転換細胞株(n=15)の>90%で認められた。P
CAP2は、サンプルの>45%で検出され得たが、腫瘍型に共通して一様には分布され
ていない。これは、乳癌細胞(52%;n=21)において最も頻繁に認められるが、腫
瘍原基細胞(37%;n=8)および白血病血リンパ球(33%;n=6)ではあまり頻
繁に認められなかった。二つの卵巣癌は、ネガティブと試験された。同時に、健康な組織
(n=14;リンパ球、線維芽細胞、腸、胎盤および胃)は、PCAP2を発現していな
かった。野生型p53を欠失する不死化非形質転換ヒト041線維芽細胞およびこれらの
175H形質導入誘導体がポジティブと同様に、正常な複相体ヒト線維芽細胞KH510
9およびp53腫瘍サプレッサの優性ネガティブ変異体175Hを発現するように設計さ
れた非形質転換誘導体もまた、ポジティブと試験されなかった。従って、PCAP2発現
は、形質転換と密接に相関する。
【0246】
図41におけるRT−PCRの結果は、さらに、乳房癌のPCAP2発現の証拠を与え
る。RNAを調製し、腫瘍組織および腫瘍周囲の正常組織において、レーザー捕獲顕微鏡
を用いて、七つの乳房癌生検サンプルから増幅した。cDNAをdTプライマーおよびP
CAP2で調製するか、または、gusB配列を30サイクル(gusB)もしくは35
サイクル(PCAP2)のPCRを用いて増幅した。PCAP2は、乳房癌組織(41A
)で認められるが、正常乳房組織(41B)には認められない。
【0247】
(PCAP3)
配列番号12および配列番号36は、PCAP3であり、これは、envとして同一の
5’領域および開始コドンを共有するが、スプライシングは、envをコードする配列で
除去し、そして以下のenvのリーディングフレームに対して+2のリーディングフレー
ムへシフトする。以下:
【0248】
【化1】


従って、PCAP3は、PCAP2に類似であるが、PCAP3に対して+2のリーデ
ィングフレームへのシフトは、PCAP2に対する1型ゲノムで認められた大きな欠失と
いうよりむしろ、2型ゲノムにおける小さな欠失によって引き起こされる。
【0249】
例えば、79%の患者サンプルにおいて2倍以上、そして53%の患者サンプルにおい
て5倍以上の、前立腺癌mRNAが調製される場合、前立腺癌細胞株MDA Pca−2
bから調製されるcDNAは、PCAP3転写物を含有した。これらの図は、PCAP3
が多数の前立腺癌に含有されるという見解を支持する。さらに、この図は、癌発現とPC
AP3発現との間で、全体の関連性を示さない。患者がGleasonグレードに従って
グループ化される場合、グレード3の腫瘍は、PCAP3の高いアップレギュレーション
を示すが、さらに発達したグレード4の腫瘍は、PCAP3抑制を示すと思われる(図1
8)。同様なパターンは、gag発現で認められ(図42)、PCAV発現は、早期前立
腺癌に関与することを示唆している。
【0250】
PCAP3の細胞成分の局限化は、PCAP2に対して上記に記載されるのと同じ方法
で試験された。このタンパク質は、相対的に安定であり、核質に認められた。この細胞位
置におけるこの小タンパク質の濃度は、核内の標的と特異的な相互作用があることを示す

【0251】
(PCAP4)
上記に言及されるように、PCAP4は、PCAV LTRからの発現を活性化し、ま
た、HIV LTRからの発現を活性化する。PCAP4は、正常cORFスプライス部
位の52塩基上流の5’スプライス部位を含む、スプライシング後に生成する。このスプ
ライシングは、最終エキソンにおいて、3番目のリーディングフレームへのシフトの原因
となる。
【0252】
PCAP2およびPCAP3に対して上記に記載されるように、PCAP4の染色は、
核小体の位置を示す(図34)。核の位置を保持することにおいて、PCAP4は、細胞
分裂における役割を示唆する他の活性を示す。一つの実験において、NIH3T3細胞を
、GFP、V12活性化変異を有するras、cORF、PCAP1、PCAP2、PC
AP4またはPCAP4a(PCAP4のスプライシング改変体)をコードする発現プラ
スミドを用いて、一過性にトランスフェクトした。次いで、これらの細胞を3週間培養し
、そして、細胞増殖に対する全体的な効果を、細胞をメチレンブルーで染色することによ
り測定した(図35)。比較目的のためにGFPを用いて、PCAP4および4aを、活
性化rasと同じ方法で、NIH3T3細胞の増殖を誘発したが、他の遺伝子では、効果
が無いかもしくは細胞増殖を阻害したかのいずれかであった。
【0253】
さらに、この発見を調査するために、外部遺伝子である、PCAP4もcORFも発現
しない安定なNIH3T3細胞株をpCEP4(ハイグロマイシンマーカーを有するプラ
スミド)に遺伝子を挿入することにより、作製した(図36)。各々の安定な細胞プール
を回収し、計数し、そして二重のウェルで、4日間増殖させた。一つのウェルを染色し、
そして写真を撮り、また、もう一つのウェルをトリプシンで処理し、そして計数した(図
37)。再び、PCAP4は、NIH3T3細胞の増殖を促進し、そしてcORFは、わ
ずかに抑制された増殖を有し得る。PCAP3を用いた類似の実験は、拡張しない細胞集
団を与えたが、代わりに、予定外の高い死亡率および高い分裂率が現れた。
【0254】
PCAP2のように、PCAP4は、DU145癌細胞のように作用するRWPE1細
胞を作製し得た(図31)。
【0255】
(PCAPタンパク質および老化)
上記のデータは、PCAP2、PCAP3およびPCAP4(これらの全てが、エキソ
ン3の第3番目のリーディングフレームを利用する)が、不死化細胞株(ほとんどの正常
ヒト前立腺内皮細胞に含む)の増殖特性に強い効果を有することを示す。この癌遺伝子の
潜在能は、正常組織ではなく腫瘍組織における発現と結合し、癌との明らかな関連を示唆
する。
【0256】
前立腺癌は、管腔内皮層に生じると考えられているが、正常管腔内皮細胞は、とてもわ
ずかの細胞分裂しか受けない。対照的に、NIH3T3細胞およびRWPE1細胞は、不
死である。PCAVは、早期癌(上記を参照のこと)に含まれると思われるので、始原前
立腺内皮細胞(PrEC)(通常は急速に老化する)に対するPCAPポリペプチドの効
果を試験した。
【0257】
始原ヒト内皮細胞は、かなり限定された分裂潜在能を有する。特定数の分裂後、この細
胞は、老化に入る。老化は、休止(ポジティブな増殖シグナルが取り消される場合、また
は阻害シグナル、例えば細胞と細胞との接触が受け取られる場合、不死化細胞またはプレ
老化細胞は、休止に入るが、増殖因子を付加することにより、もしくは低濃度で細胞を再
び播種することにより、再度分裂を誘導され得る)とは異なり、そして分裂においての永
久の停止であるが、増殖培地を定期的に新しくする場合、老化細胞は、分裂しないで数ヶ
月間生存し得る。
【0258】
特定の遺伝子は、特にウイルス性の癌遺伝子(例えば、SV40T抗原)は、細胞に老
化シグナルを無視させる。T抗原は、「複製クリーゼ」と称される拡大バリア(expa
nsion barrier)に対して、分裂を続けるために、細胞を刺激する。二つの
過程は、クリーゼで生じる;細胞は分裂し続けるが、細胞は、平行して、累積された遺伝
子損傷によってとても高い割合で死ぬ。細胞死が分裂を超える場合、実質的に、全ての細
胞は、短期間で死ぬ。クリーゼ後に増殖する珍しい細胞は、不死化細胞株および産出細胞
株になる。代表的に、細胞株は、明らかな遺伝子再配列を有す:これらは、しばしば四倍
体に終結し、たびたび非相互性の染色体転座があり、そして、多くの染色体が多数の位置
で欠失および増幅を有する(205、206、207)。
【0259】
前立腺癌は、高いゲノム不安定性(老化後の複製によって、引き起こされ得た)を表す
ので、クリーゼを導く遺伝子産物は、特に興味がもたれる。最近の理論では、前立腺癌は
前立腺上皮内腫瘍(PIN)と称される病変から生じると考える(208)。PINの遺
伝子分析は、多くの前立腺癌の特有の遺伝子再配列が、この段階で既に生じていることを
示す(209)。従って、このウイルスが、早期前立腺癌で役割を果たし得るかどうかを
決定するために、PIN細胞をPCAVの発現について試験した。PCAVgagが多く
発現されることを発見し、このことは、前立腺癌と関連する遺伝子変化が生じる場合、P
CAVがこの時期に高く発現することを示している。PCAP2 およびPCAP3は、
前立腺腫瘍において発現されることが認められているので、老化後にPrECにおける細
胞分裂の誘導を受けやすい場合、これらの役割を、検査することによって調査した。
【0260】
PCAP発現プラスミドを用いてトランスフェクション後、薬剤耐性PrECを選択す
るための最初の試みは、失敗した。GFP、PCAP2またはPCAP3を発現するアデ
ノウイルスベクターで感染後、PrECの分析は、感染4日目にPCAP細胞において、
多くの細胞死を示した。ニックDNAで核をマークするために、ターミナルデオキシトラ
ンスフェラーゼ末端標識(TUNEL)における用量依存性の増加は、細胞がアポトーシ
スを受けていることを確証した(図38)。このアポトーシスは、薬剤耐性PrECを単
離する失敗を明らかにし得、そして、不平衡の増殖シグナルがアポトーシス誘導因子であ
る場合に、PCAP3による細胞分裂のしくみの進入機序と一致する。
【0261】
これらの結果は、PrECにおけるPCAP発現の効果を評価し得る前に、アポトーシ
スをブロックしなければならないことを示唆した。従って、PCAP2、PCAP3およ
びPCAP4をコードするプラスミド+ネオマイシンマーカーは、アポトーシスをブロッ
クするために、bcl-2またはbcl-Xのいずれかをコードする発現プラスミドで同
時感染した。コントロールとして、細胞を、単独でタンパク質を発現するプラスミドでト
ランスフェクトした。選択下で2週後、bcl-2ディッシュおよびbcl-XLディッシ
ュ全てが、ディッシュの分画内に十分に増殖した多数の耐性細胞を有した。これらの細胞
を分割した場合、これらはさらに分裂しなかったが、生存可能であり、そして老化親細胞
に似ていた。対照して、抗アポトーシスタンパク質存在下でPCAP2、PCAP3また
はPCAP4を発現した細胞は、開始プレートで十分に分裂した小細胞、および分割する
場合に分裂し続ける小細胞を作製するコロニーを産出した。
【0262】
上記の薬剤選択に平行して、細胞の増殖潜在能を評価した。親PrECは、老化に達す
る前に倍増する七つの集団を検討した。対照して、抗アポトーシス遺伝子とPCAPとで
同時感染させた薬剤耐性細胞は、増殖が終わる前に、老化ポイントに及び十分に拡大した

【0263】
【化2】


PCAP4でトランスフェクトした細胞は、約2週間の間、早く増殖した。次いで、細
胞の拡大は遅くなり、そして最終的には終了した。同時に、浮遊細胞の数および死細胞の
数は増殖し、そして、細胞の出現は変化した。これらは、もはや内皮細胞の規則的な「玉
石」の出現ではないが、代りにいくつかの形態を有し、そして多くの多核性細胞が存在し
た。2週後、細胞は死んだが、lacZまたはlacZ+bcl−2でトランスフェクト
した細胞は、1ヵ月後もまだ生存していた。
【0264】
PCAP2細胞およびPCAP3細胞は、同様に作用した。図39は、培養は、補充前
立腺内皮増殖培地(PrEM)を、一週間に2回取り換えて、維持したことを示す(トラ
ンスフェクトされた細胞はG418を含む)。図39Bは、コントロール細胞と比較して
拡大が終了している段階においての、PCAP2+bcl−X細胞を示す。老化PrE
C(図39A)細胞およびlacZをトランスフェクトした細胞(図39C)は、規則的
な出現であり、そして各細胞内に単一の核を中心に有するが、PCAP2細胞は、不規則
の形をとり、そして多くは多数の核を有する。
【0265】
老化細胞またはクリーゼをアプローチする細胞のいずれも、集団で拡大しない。しかし
、これらの間での一つの差異は、クリーゼをアプローチする細胞は、かなりの割合で分裂
および染色しているため、細胞分裂は、二つの段階の間で区別し得る。ブロモデオキシウ
リジンで標識後、10%のPrECがPCAP2またはPCAP3(+抗アポトーシスタ
ンパク質)のいずれかでトランスフェクトされた場合、30%のプレ老化PrECを標識
したが、老化のlacZまたはcORF+bcl−2コントロールを標識したものは一つ
もない(図40)。
【0266】
これらの結果は、PCAPタンパク質が、前立腺内皮細胞において増殖を誘発し得、そ
して、この増殖が前立腺癌の根本の原因であり得たことを示す。老化以上に細胞を駆動す
る能力は、tatよりむしろtaxに適合する別の特性である。
【0267】
(他のHERV−Kウイルス由来のPCAP産物)
ヒトゲノムにおいて発見された各種のHERV−Kに対して、エキソン3の第3番目の
リーディングフレームによってコードされるアミノ酸配列は、配列番号78〜配列番号2
77として与えられる。他のヌクレオチド配列(ヒトゲノムにおいて天然に発見されたか
、または人工的に設計されたかのいずれか)は、コドン縮重に起因して同一のアミノ酸配
列をコードし得るが、これらの200アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配
列番号278〜配列番号477として与えられる。アミノ酸配列を、以下に整列させる。

【0268】
【化3】

【0269】
【化4】

【0270】
【化5】

【0271】
【化6】

【0272】
【化7】

【0273】
【化8】

【0274】
【化9】


それぞれの個々の公開または特許出願は、具体的および個別に参考として援用されるか
のように、本明細書中にて言及された全ての公開物および特許出願物は、本明細書中で同
じ範囲で参考として援用される。
【0275】
本発明の好ましい実施形態の前述の説明は、例示ならびに明白な目的および理解に対す
る実施例によって表されている。これは、明確に開示された形態に対して、徹底的である
こと、または本発明を限定することを意図しない。これは、本発明(多くの変化および改
変が、本発明の意図から離れることなく、作製され得る)の技術の見地において、当業者
にとって容易に明らかである。本発明の範囲は、追加の特許請求の範囲およびこれらの同
義語によって、定義されることを意図する。
【0276】
【表1−1】

【0277】
【表1−2】

【0278】
【表2−1】

【0279】
【表2−2】

【0280】
【数1】

【0281】
【数2】

【0282】
【数3】

【0283】
【数4】

【0284】
【数5】


(配列表)
【表101】


【表102】


【表103】


【表104】


【表105】


【表106】


【表107】


【表108】


【表109】


【表110】


【表111】


【表112】


【表113】


【表114】


【表115】


【表116】


【表117】


【表118】


【表119】


【表120】


【表121】


【表122】


【表123】


【表124】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21−1】
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【図21−3】
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【図22】
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【図24】
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【図28】
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【図29】
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【図36】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図21−2】
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【図23】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【公開番号】特開2009−100768(P2009−100768A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23155(P2009−23155)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【分割の表示】特願2003−551280(P2003−551280)の分割
【原出願日】平成14年12月9日(2002.12.9)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】