説明

腰壁構造

【課題】 腰壁パネルを壁面に固定する際、床面が歪むことにより生じる、巾木と床面との隙間を、美観を損なうことなく解消する。
【解決手段】
床面4近傍において、巾木2により腰壁パネル1,1を壁面5に固定する腰壁構造であって、巾木2の下部を構成し、その底部が壁面5及び床面4に当接され、その上面に嵌合部を有する下部材22と、下部材22の嵌合部に上方から嵌合されて巾木2の上部を構成し、腰壁パネル1,1を壁面5に固定する上部材21と、下部材22内を垂直方向に貫通し、床面4に螺合される垂直ネジ32とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面近傍において、巾木より腰壁パネルを壁面に固定する腰壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図5に示すような、壁面下部に、腰壁パネルを貼り付ける構造が施工されている。具体的にこの腰壁構造は、同図に示すように、腰壁パネル1を複数、幅方向(水平方向)に連結して壁面5下部に配置するとともに、腰壁パネル1の上部を見切材3で固定し、下部を巾木2で固定する。
【0003】
ところで、この腰壁構造では、腰壁構造の施工後或いは施工中に床面4に不陸等の歪みが生じ、巾木2の下面と、床面4との間に隙間が形成される場合がある。このような隙間を解消する方法として、例えば、特開2002−364165号公報(特許文献1)に開示されたものがある。
【0004】
この特許文献1に開示された技術では、巾木2の下部を変形容易に形成して、巾木2の下部を変形させ、床面の凹凸に追従させて当接させることによって、上述した隙間を塞ぐことによって解消することができる。
【特許文献1】特開2002−364165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された技術では、巾木2を床面4の歪みに追従させて変形させることから、巾木2自体の形状が歪んで見えることとなり、仕上がり後の美観が損なわれることとなる。また、上記技術では、隙間を塞ぐに過ぎないため、床面4上の歪みはそのまま残存することとなり、施工精度の低下を招くこととなる。
【0006】
そこで、本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、巾木により腰壁パネルを壁面に固定する腰壁構造であって、床面が歪むことにより生じる、巾木と床面との隙間を、床面の歪みを矯正することによって、美観を損なうことなく解消することのできる腰壁構造を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、床面近傍において、巾木により腰壁パネルを壁面に固定する腰壁構造であって、巾木の下部を構成し、その底部が壁面及び床面に当接され、その上面に嵌合部を有する巾木下部材と、巾木下部材の嵌合部に上方から嵌合して巾木の上部を構成し、腰壁パネルを壁面に固定する巾木上部材と、巾木下部材内を垂直方向に貫通し、床面に螺合される垂直ネジとを有することを特徴とする。
【0008】
このような本発明では、先ず、壁面と床面との境界に巾木下部材を当接させて配置し、巾木下部材の上面から垂直方向に垂直ネジを貫通させ、垂直ネジを床面に螺合させて打込む。次いで、このように固定された巾木下部材上面の嵌合部に、上方から巾木上部材を嵌め込み、この巾木上部材により腰壁パネルの下部を壁面に固定する。そして、腰壁パネルの上部は、通常の施工通り見切材により壁面に固定する。
【0009】
このような本発明によれば、垂直ネジを、巾木下部材を貫通させて床面に螺合させることにより、巾木の底面が床面に押しつけられるようにして、巾木が反りになじみ、隙間が解消される。そして、この巾木下部材上面に打込まれた垂直ネジは、その上方から巾木上部材が嵌め込まれることによって隠されることとなり、美観が損なわれることがない。
【0010】
また、巾木上部材を着脱可能に嵌合させるようにすれば、本腰壁構造の完成後に床面に不陸が生じた場合であっても、腰壁構造を一旦分解し巾木上部材を取り外すことによって、不陸が発生した箇所に対応させて垂直ネジを打込むことができる。これにより、事後的に発生した隙間も解消することが可能となり、メンテナンスが容易となる。
【0011】
なお、上記発明において、前記嵌合部は、巾木下部材の上面から突出した凸部であり、前記巾木上部材は、凸部が嵌合される凹部を有し、前記垂直ネジは、巾木下部材上面の凸部より前方位置において貫通されるようにしてもよい。この場合には、垂直ネジを打込む箇所が、壁面から離れた位置となるため、垂直ネジを打込む際の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上、説明したように本発明の腰壁構造によれば、巾木や見切材により腰壁パネルを壁面に固定する際に、床面が歪むことにより生じる、巾木と床面との隙間を、床面の歪みを矯正することによって、美観を損なうことなく解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(腰壁構造の構成)
本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る腰壁構造の概略構成を示す斜視図である。
【0014】
同図に示すように、本実施形態に係る腰壁構造は、壁面5の下部(床面4近傍)において、腰壁パネル1,1…を複数、幅方向(水平方向)に連結して配置するとともに、腰壁パネル1の下部を巾木2で固定し、上部を見切材3で固定する。
【0015】
図2(a)は、巾木2の側面図であり、同図(b)は、その正面図である。これら図2(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る巾木2は、上部材21と下部材22というように上下に分割され、上部材21を腰壁パネル1の固定用部材とし、下部材22を床面4への固定用部材とする。
【0016】
上部材21は、下部材22の凸部22bに対して上方から嵌合する凹部21cと、腰壁パネル1,1…を壁面5に固定するための切欠部21aと、壁面5に対して垂直となるように水平方向に水平ネジ31が打込まれる溝部21bとを有している。
【0017】
一方、下部材22は、その上面22aから突出した嵌合部としての凸部22bと、垂直ネジ32が打込まれる貫通孔22dが形成される打込面22cとを有している。打込面22cは、下部材22の凸部より前方位置(壁面5よりも手前の位置)に形成されている。垂直ネジ32は、この打込面22cから下部材22内の貫通孔22dを貫通して、床面4に螺合される。なお、打込面22cは、垂直ネジ32を打込みやすいように、溝状に形成してもよい。
【0018】
前記腰壁パネル1は、図3に示すように、表板11と後板12とからなる形状に削り出しており、側面には、幅方向に連結できるように、側方に突出した凸部12bと、この凸部12bと係合する切欠部12cが形成されている。また、腰壁パネル1の下部では、表板11と後板12とが段差を構成し、後板12が表板11よりも下方に迫り出しており、上記上部材21の切欠部21aに係合する継合部12aが形成されている。
【0019】
(腰壁構造の施工方法)
このような本実施形態に係る腰壁構造の施工法は、以下の手順による。図4(a)〜(c)は、腰壁構造の施工手順を示す説明図である。
【0020】
先ず、図4(a)に示すように、壁面5と床面4との境界に、下部材22の底部を当接させて配置し、下部材22上面の打込面22cにドリル等で貫通孔22dを形成する。この貫通孔22dは、床面4に形成された不陸41の位置に対応させて形成する。なお、打込面22cは、凸部22bよりも手前にあるため、貫通孔を形成する際の作業性が向上される。そして、貫通孔22dに垂直ネジ32を打込み、下部材22を垂直方向に貫通させ、床面4に螺合させる。
【0021】
次いで、同図(b)に示すように、このように固定された下部材22上面の凸部22bに、上方から上部材21の凹部21cを嵌め込み、上部材21の切欠部21aに、腰壁パネル1,1の継合部12aを嵌め込む。このとき、上部材21は、下部材22に対して着脱可能に嵌合される。
【0022】
その後、上部材21を水平方向に貫通するように水平ネジ31を打込み、上部材21背後の壁面5に螺合させる。これにより、同図(c)に示すように、腰壁パネル1,1の下部が壁面5に固定される。そして、腰壁パネル1,1の上部を、通常の施工通り見切材3により壁面5に固定する。
【0023】
(腰壁構造による作用・効果)
このような本実施形態によれば、垂直ネジ32を、下部材22を貫通させて床面4に螺合させることにより、巾木2の底面が床面4に押しつけられるようにして、巾木2が床面4になじみ、不陸が解消される。そして、下部材22上面に打込まれた垂直ネジ32は、その上方から上部材21が嵌め込まれることによって隠されることとなり、施工後の美観が損なわれることがない。
【0024】
また、本実施形態において、下部材22の上面から突出した凸部22bと、この凸部に嵌合される凹部21cにより、上下に嵌合させるため、より強固に上下の部材を連結固定することができる。また、垂直ネジ32は、凸部22bより前方位置(手前位置)の打込面22cに打込まれるため、垂直ネジを打込む作業位置が、壁面5から離れた位置となり、ドリル等の作業性を向上させることができる。
【0025】
また、本実施形態において下部材22,22は、着脱可能に嵌合されていることから、本腰壁構造の完成後に、床面4に不陸が生じた場合であっても、腰壁構造を一旦分解し上部材21を取り外すことによって、不陸が発生した箇所に対応させて垂直ネジ32を打込むことができる。これにより、事後的に発生した不陸及び隙間も解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態に係る腰壁構造の概略構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は、実施形態に係る巾木の側面図であり、(b)は、その正面図である。
【図3】実施形態に係る腰壁パネルの下部周辺を示す斜視図である。
【図4】実施形態に係る腰壁構造の施工手順を示す説明図である。
【図5】従来の腰壁構造の概略構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1,1…腰壁パネル
2…巾木
3…見切材
4…床面
5…壁面
11…表板
12…後板
12a…継合部
12b…凸部
12c…切欠部
21…上部材
21a…切欠部
21b…溝部
21c…凹部
22…下部材
22a…上面
22b…凸部
22c…打込面
22d…貫通孔
31…水平ネジ
32…垂直ネジ
41…不陸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面近傍において、巾木により腰壁パネルを壁面に固定する腰壁構造であって、
前記巾木の下部を構成し、その底部が前記壁面及び前記床面に当接され、その上面に嵌合部を有する巾木下部材と、
前記巾木下部材の嵌合部に上方から嵌合して前記巾木の上部を構成し、前記腰壁パネルを前記壁面に固定する巾木上部材と、
前記巾木下部材内を垂直方向に貫通し、前記床面に螺合される垂直ネジと
を有することを特徴とする腰壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−100392(P2007−100392A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291744(P2005−291744)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(593040117)タシロ産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】