説明

膜分離プロセスを利用する流体化合物の選択分離

選択透過性膜を利用する流体混合物群の経済的分離のための装置およびプロセスが開示される。広義には、本発明の装置は、固体選択透過性膜を含む向流カスケード配置状態にある複数の膜モジュールと、装置内で所与の流体のエンタルピーを制御する手段と、具備する。有利には、膜モジュールは第1生成物群、第2生成物群および少なくとも1の中間体群内に配設されている。本発明の装置は、適切に変動された温度および/または圧力の条件にさらされるとき泡立ち点を示す2種以上の化合物の流体混合物から、非常に純粋な透過生成物および/または所望の非透過流の同時回収に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択透過性膜分離装置によって、流体混合物から精製生成物を回収する方法に関する。特に、本発明の一体化された装置は、固体選択透過性膜を含む複数の膜モジュールおよび装置内で所与の流体のエンタルピーを制御する手段を具備する。本発明の装置は、温度および/または圧力の適切に変化した条件に供される際に泡立ち点を示す2種以上の化合物の流体混合物から、非常に純粋な透過生成物、および/または所望の非透過流の同時回収に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
気体状混合物の分離に有用な膜プロセスは、分離を行わせしめるために、通常は膜を横断する圧力傾斜として付与される化学ポテンシャルにおける大きな差を用いる。膜の透過側では、通常は圧縮器、真空ポンプまたは低温凝縮器を用いることによって低圧力が維持される。膜の供給側では、高圧または高温を用いることによって駆動力が高く維持される。
【0003】
気体状混合物の分離に有用な膜は2種の非常に異なるタイプである。一方は細孔性であり、他方は非孔性である。細孔膜を通して流出するガスに対する選択性を管理する基本的な法則の開示は、T. Grahamの功績である。細孔膜のポアサイズが混合物中の非凝縮性気体分子の平均自由行程と比べて小さい場合には、より低い分子量の気体中に透過物が豊富になる。本技術によって達成可能な実用的で理論的な富化は非常に小さい。なぜなら、ほとんどの気体の分子量比はあまり大きくなく、付随物選択性はこれらの比率の平方根に比例するからである。したがって、気体状混合物からの所与の気体の効率的分離を達成するために多数の分離ステージが必要になる。しかし、この分離方法は質量比にのみ依存し、流出種の中での化学物質差には依存しないので、所与の元素の同位体を分離することができる唯一の膜に基づく方法である。このため、この方法は、第二次世界大戦中、原子爆弾の開発のために核分裂性物質同位体235中でウランを濃縮させるために選ばれた。しかし、この分離方法は、必要な多量の気体を処理するために必要な多額の資本投資、高い多孔度および小さなポアサイズを要求する厳しい膜仕様および運転のための高エネルギー要求ゆえに、本来的に高価である。
【0004】
非孔性膜系において、分子は膜を透過する。非孔性膜を横断する透過中、膜マトリックス内での拡散性および溶解性の差ゆえに、異なる分子は分離される。分子サイズは、マトリックスを通る各種の移動速度に影響するだけでなく、透過する分子およびポリマーマトリックス自身の両者の化学的性質にも影響する。よって、理論上有用な分離が達成されるべきである。
【0005】
ガス分離が膜技術の最も大きな用途のひとつであることから指摘されるように、蒸気透過は、膜ガス分離に非常に密接に関連する。たとえば、Lee and Koros、"Membranes, Synthetic, Applications"、the Encyclopedia of Physical Science and Technology, Third Edition, Volume 9, Academic Press (2002)参照。
【0006】
空気からの窒素の製造、天然ガスからの二酸化炭素の除去、および水素の精製に対する膜ベース技術は、これらのプロセスに対する市場の非常に大きなシェアを占める。これらの用途に対する膜の技術的試行のほとんどは、所望の成分を選択的に除去することができる膜材料の開発である。特定の膜材料に関する多数の特許が発行されているが、基本的に膜ベース分離についてこれまで考慮されてきた成分(窒素、酸素、二酸化炭素、メタン、水素)は固定ガスであるから、膜装置周囲の熱バランスにはあまり関心が向けられていない。このようなガスは、産業プロセスの典型的な条件下では液体および蒸気として存在しない。
【0007】
本技術分野は、高選択性および高流量の両者を有する膜を加工するプロセスばかりである。十分に高い流量がなければ、必要な所要膜面積が非常に大きくなり、不経済となる。今や、非極性ガス(N2、O2およびCH4)よりも極性ガス(例としてH2O、CO2、H2SおよびSO2を挙げる)に対してもっと大きな透過性を有する多数のポリマーが周知であり、小さな分子サイズのガス(He、H2)は大きな分子サイズのガス(CH4、C2H4)よりももっと容易に透過することが周知である。
【0008】
パーベーパレーションとは、膜への供給物が液体である膜プロセスをいう。液体を暖めて、透過物を低圧に維持することにより、高駆動力が維持される。物質が膜を横断して通過する際に、エネルギーは供給物から透過物に移動する。この供給物側からのエネルギー損失は、供給物を冷却し、膜駆動力を低下させる傾向がある。高駆動力を再確立するために、液体は再加熱されなければならない。実際、これはステージ間再加熱を伴う段階的な膜をもたらす。しかし、RautenbachおよびAlbrechtは、Journal of Membrane Science, vol. 25, pp. 25-54 (1985)において公開された"The Separation Potential of Parveporation, Part 2: Process Design and Economics"と題する論文の中で、マルチステージパーベーパレーションプロセスの複雑性は商業的用途を不利にすると述べている。
【0009】
パーベーパレーションが産業規模で実施するに十分効率的であるケースが現れた。Bakerは、McGraw-Hill (2000)により公開された"Membrane Technology and Applications"と題する本の中で、パーベーパレーションの最も大きな用途の一つはエタノールの脱水であると述べている。Hendrikusらは、米国特許4,925,562号明細書において、数種のアルコールの透過に有用なパーベーパレーション膜を記載する。Shuckerらは、欧州特許公開0457981A1公報において、マルチステージパーベーパレーションプロセスを記載する。パーベーパレーションは、さらに、他の分離技術と提携して用いる場合に魅力的であるようだ。LipnizkiらによりJournal of Membrane Science, vol. 153, pp. 183-22 (1999)において公開された" Parvaporation-based hybrid process: a review of process design, applications, and economics"と題するレビューは、数種のパーベーパレーション膜ハイブリッドを試験した。
【0010】
膜の供給側での駆動力を高く維持するための一方法は、透過ゆえのエネルギー損失があまり大きくないように供給流のエネルギーを上昇させることである。供給物を気化させるためにエネルギーを供給物に添加することは、蒸気透過と呼ばれるプロセスを生じさせる。従来技術においては、蒸気透過に関する記載は非常に少ない。Friesenらは、欧州特許公開EP0701856A1公報において、蒸気の混合物を分離するために有用なプロセスを記載する。
【0011】
重合性膜にとって、膜を横断する大きな圧力傾斜は、透過用の駆動力を与える。この駆動力は、低圧力透過物を製造するために、膜内の冷却(正のジュールトンプソン係数:positive Joule-Thomson coefficientsを有する物質に対する)を誘発する。この影響は促進輸送膜には存在せず、これらに基づく従来のプロセスに組み込まれてもいない。この仕事のほとんどは促進輸送膜装置の内部の詳細に焦点を当てており、市場の仕様に合致した製品を製造するプロセスにこれらをいかに組み込むかには焦点が当てられていなかった。
【0012】
石油化学産業における最も困難な分離のいくつかは、別のおよび/または他の有機化合物群、たとえばキシレンの異性体群およびエチルベンゼンからの芳香族化合物の異性体の1種の分離を含む。混合キシレン群からのパラキシレン(PX)の分離および精製は、エネルギーおよび資本集約的プロセスである。今日用いられている産業プロセスは、エネルギー集約的極低温分離もしくは資本集約的吸着技術を用いて、高純度PXを生産する。供給原料費用に続いて、精製区域がパラキシレン製造の最も高価な部分であることは広く認識されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、適切に変動された温度および/または圧力のプロセス条件に供されるときに泡立ち点を示す混合物からの所与化合物の分離用膜が圧力駆動(フガシティー(逃散度)駆動)される熱統合型膜装置を提供するために選択透過性膜を用いるプロセス及び装置が現在、必要とされている。有利には、新規なプロセスは、パーベーパレーション中に遭遇する膜冷却により付与される回収限界を解消すべきである。
【0014】
改良された装置は、適切な駆動力差で所望の生成物の選択透過性を示す適切な選択透過性膜、好ましくは固体選択透過性膜を用いて、ガスおよび/または液体状態にある流で行われる一体型シーケンスを提供すべきである。すなわち圧力駆動(フガシティー(逃散度)駆動)膜を現存する分離資産に組み込む。
【課題を解決するための手段】
【0015】
広い側面において、本発明は、流体混合物の経済的分離のための一体型膜分離装置およびその使用に関する。特に、本発明の装置は、固体選択透過性膜を含む複数の膜モジュールおよび装置内での所与の流体のエンタルピー制御手段を具備する。本発明の装置は、適切に変動された温度および/または圧力の条件に供されるときに泡立ち点を示す2種以上の化合物の流体混合物からの非常に純粋な透過生成物、および/または所望の非透過流の同時回収に特に有用である。
【0016】
有利には、膜モジュールは、第1生成物群、第2生成物群および少なくとも1の中間体群に配設されている。各モジュールは、適切な駆動力差で供給原料の化合物の1種に対する少なくとも0.1Barrerの透過性を示す固体選択透過性膜によって分離されている第1及び第2ゾーンを含む。各第1ゾーンは、流体流用の少なくとも1の入口および出口を有し膜と接触状態にあり、膜の反対側と接している第2ゾーンは透過流用の少なくとも1の出口を有する。有利なことに、本発明の装置は、有機化合物を含有する混合物からの非常に純粋な透過生成物および他の所望の生成物の同時回収に用いられる。
【0017】
一側面において、本発明は、化合物の流体混合物からの透過生成物および所望の非透過生成物の同時回収用の選択透過性膜を用いるプロセスを提供する。本プロセスは、(a)適切に変動された温度および/または圧力の条件に供されるときに泡立ち点を示す2種以上の化合物の混合物を含む供給流を提供する工程;(b)装置内で所与の流体のエンタルピーを制御する手段および1以上の膜モジュールを具備し、各膜モジュールは適切な駆動力差で供給原料の化合物の1種に対する少なくとも0.1Barrerの透過性を示す固体選択透過性膜によって分離されている第1及び第2ゾーンを含み、各第1ゾーンは流体流用の少なくとも1の入口および出口を有し膜と接触していて、膜の反対側と接している第2ゾーンは透過流用の少なくとも1の出口を有する、装置を提供する工程;(c)透過に適切な条件下で供給流を1以上のモジュールの第1ゾーンに導入して、モジュールからの透過流および非透過流を得る工程;および(d)非透過流体の膜効率指数を約0.5〜約1.5の範囲内に維持するようにエンタルピーを制御する工程を含む。
【0018】
本発明の目的にとって、「膜効率指数」(MEI)とは、供給流の比エンタルピーと非透過生成物圧力および組成での非透過流体の泡立ち点比エンタルピーとの差に対する、膜装置に入る供給流の比エンタルピーと非透過流体流出物の比エンタルピーとの間の差の比率として定義される。
【0019】
別の側面において、本発明は、流体混合物からの所望の非透過生成物および精製透過生成物の同時回収用の多重群において選択透過性膜を用いるプロセスを提供する。本プロセスは、(i)適切に変動された温度および/または圧力の条件に供されるときに泡立ち点を示す2種以上の化合物の混合物を含む供給流を提供する工程;(ii)装置内で所与の流体のエンタルピーを制御する手段と、第1生成物群、第2生成物群および少なくとも1の中間体群内に配設されている複数の膜モジュールと、を具備し、各モジュールは適切な駆動力差で供給原料の化合物の1種に対して少なくとも0.1Barrerの透過性を示す固体選択透過性膜によって分離されている第1及び第2ゾーンを含み、各第1ゾーンは流体流用の少なくとも1の入口および出口を有し膜と接触していて、膜の反対側と接している第2ゾーンは透過流用の少なくとも1の出口を有する、装置を提供する工程;(iii)透過に適切な条件下で、供給流を1以上の第1生成物モジュールの第1ゾーンに導入して、第1生成物モジュールからの透過流および非透過生成物流を得る工程;(iv)透過に適切な条件下で第1生成物モジュールからの透過物を1以上の中間体モジュールの第1ゾーンに分配して、中間体モジュールからの透過流および非透過流を得る工程;(v)透過に適切な条件下で、中間体モジュールからの非透過流の少なくとも一部を1以上の第1生成物モジュールの第1ゾーンに戻す工程;(vi)透過に適切な条件下でモジュールの中間体群の第2ゾーンからの透過流を第2生成物群モジュールの第1ゾーンに分配して、第2生成物モジュールからの非透過流および最終的な透過生成物流を得る工程;(vii)透過に適切な条件下で、第2生成物モジュールからの非透過流の少なくとも一部を1以上の中間体モジュールの第1ゾーンに戻す工程;および(viii)少なくとも1の非透過流体の膜効率指数を約0.5〜約1.5の範囲内に維持するようにエンタルピーを制御する工程を含む。
【0020】
一側面において、本発明は、少なくとも第2生成物モジュールからの非透過流体の膜効率指数が約0.5〜約1.5の範囲内に維持される一体型分離装置を提供する。有利には、第2生成物モジュールおよび中間体モジュールおよび/または第1生成物モジュールからの非透過流体の膜効率指数は、約0.5〜約1.5の範囲内に維持される。
【0021】
本発明は、流体供給原料、たとえば種々のタイプの有機物質、特に石油化学由来の化合物の流体混合物の処理を意図する。一般に、流体供給原料は、より選択的に透過する成分およびあまり透過しない成分を含む気体状混合物である。有利なことに、1以上のモジュール入口流は、液体および凝縮性蒸気の混合物を含むものでもよい。場合によっては、装置は、透過チャンバへの「掃引」流の分配手段をさらに含むものでもよいが、典型的には掃引は必要ではない。
【0022】
本発明の装置は、より選択的に透過する芳香族化合物の異性体、たとえばキシレンの少なくとも1種の異性体および/またはエチルベンゼンから構成される気体状混合物の処理プロセスに特に有用である。
【0023】
また別の側面において、本発明は、流体混合物からの所望の非透過生成物および精製透過生成物の同時回収用の多重群において選択透過性膜を用いる一体型分離装置を提供する。本装置は、第1生成物群、第2生成物群および少なくとも1の中間体群内に配設されている複数の膜モジュールを含み、各モジュールは適切な駆動力差で供給原料の化合物の1種に対する少なくとも0.1Barrerの透過性を示す固体選択透過性膜によって分離されている第1及び第2ゾーンを含み、各第1ゾーンは流体流用の少なくとも1の入口および出口を有し膜と接触していて、膜の反対側と接している第2ゾーンは透過流用の少なくとも1の出口を有する、複数の膜モジュールと;透過に適切な条件下で第1生成物モジュールからの透過流を1以上の中間体モジュールの第1ゾーンに分配して、中間体モジュールからの非透過流を第1生成物モジュールの入口に戻す手段と;透過に適切な条件下で中間体モジュールからの透過流を1以上の第2生成物モジュールの第1ゾーンに分配して、第2生成物モジュールからの非透過流を中間体モジュールの入口に戻す手段と;少なくとも1の非透過流体の膜効率指数が約0.5〜約1.5の範囲内に維持されるように、装置内で所与の流体のエンタルピーを制御する手段とを具備する。
【0024】
本発明は、有機化合物、特に分別結晶化などの慣用の手段によっては分離が困難である化合物を含む分離に対して特に有用である。典型的には、これらは、たとえば混合キシレン群からのパラキシレンの分離および精製プロセスなどの化学的に関連する有機化合物を含む。パラキシレン精製に関する現行の技術と比較して、資本投資、運転コストおよびエネルギーコストを大幅に削減して、パラキシレンは本明細書に記載されている膜プロセスから製造される。本発明は、さらに、パラキシレン純度要求に合致し、同時に、慣用のパラキシレン精製プロセスよりも多量のパラキシレンを回収することもできる。同様の沸点を有するので、単純な蒸留は、法外な費用がかかるC8芳香族からパラキシレンを精製する方法である。
【0025】
本発明をより完全に理解するために、本発明の例示として以下および添付図面に詳細に示す実施形態を参照されたい。
[図面の簡単な説明]
以後、添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。図面は、非常に純粋な透過生成物および1以上の所望の非透過生成物の同時回収のための本発明の膜分離プロセスおよび装置の側面を図示する概略フローダイアグラムである。図面は、化学化合物群の混合物の組成を改質するために複数の膜分離装置が用いられる本発明の一実施形態を示す。
【0026】
[一般的記載]
適切な駆動力差で透過性および所望の分離に適切な他の特性を示す任意の固体選択透過性膜を本発明に従って用いることができる。適切な膜は、均質膜、複合膜または非対称膜の形態を採ることができ、たとえばゲル層、固体層または液体層を組み込んでもよい。広範に用いられているポリマーは、シリコーンおよび天然ゴム、酢酸セルロース、ポリスルホン類およびポリイミド類を含む。
【0027】
本発明の蒸気分離実施形態に用いるに好ましい膜は、一般に2タイプである。第1は、超薄コーティングとして選択透過性層が配設されている細孔担体を含む複合膜である。複合膜は、ゴム状ポリマーが選択透過物質として用いられる場合に好ましい。第2は、非対称膜の薄い緻密な皮が選択透過性層である非対称膜である。複合膜および非対称膜のいずれも当該分野で公知である。本発明において用いられる膜の形態は重要ではない。これらは、たとえば平坦なシートまたはディスク、被覆中空繊維、螺旋巻き状モジュール、その他任意の利便な形態で用いることができる。
【0028】
膜透過による蒸気成分の分離駆動力は、主として、膜の第1側および第2側の間の分圧差を含む。膜を横断する圧力降下は、第1ゾーンを加圧することにより、第2ゾーンを真空にすることにより、掃引流を導入することにより、またはこれらの任意の組み合わせにより達成することができる。
【0029】
モジュールの各群において用いられる膜は、同一タイプまたは異種タイプでもよい。両方のユニットは分離されるべき所望の成分に選択的である膜を含むことができるが、膜の選択性は異なっていてもよい。たとえば、中間体モジュールが流体供給原料のバルクを処理する場合には、これらのモジュールは高流量および中程度の選択性の膜を含むものでよい。少量の流を処理するモジュール群は、高選択性であるが低流量の膜を含むものでよい。同様に、中間体モジュールは、あるタイプの膜を含むものでもよく、生成物モジュールは別のタイプを含むものでもよく、あるいはこれらの群のすべてが異なるタイプを含むものでもよい。有用な実施形態は、中間体モジュールおよび生成物モジュール内で異なる選択性の膜を用いることもできる。
【0030】
適切なタイプの膜モジュールとしては、中空微細繊維、キャピラリー繊維、螺旋巻きタイプ、プレートーフレームタイプおよび管状タイプを挙げることができる。特定の膜分離に対する最も適切な膜モジュールタイプの選択は、多数の因子を平衡させなければならない。決定に資する主要なモジュール設計パラメータは、高圧運転、透過側圧力降下、濃度分極付着制御、任意の掃引流の透過性および最後に大事なことだが製造コストに適切な特定のタイプの膜物質に限定する。
【0031】
中空繊維膜モジュールは、2種の基本的な配置で用いられる。第1のタイプは、シェルサイド供給設計であり、水素分離システムおよび逆浸透システムで用いられている。このようなモジュールにおいて、繊維のループまたは閉鎖束は圧力容器内に内蔵されている。システムはシェルサイドから加圧され、透過物は繊維壁を通過して開繊維端部から出る。この設計は、製作が容易で、経済的なシステムに非常に大きな膜面積を含ませることができる。繊維壁はかなりの静水圧を支持しなければならないので、繊維は通常小径で肉厚壁、例えば100mm〜200mm外径で、典型的には外径のおよそ半分の内径を有する。
【0032】
中空繊維モジュールの第2のタイプは、ボアサイド供給タイプである。ユニットのこのタイプの繊維は両端部が開放されていて、供給物流体は繊維の穴を通して循環する。繊維内部での圧力降下を最小化するために、直径は通常、シェルサイド供給システムに用いられる微細繊維の直径よりも大きく、一般に溶液紡績により製造される。これらのいわゆるキャピラリー繊維は、限外濾過、 パーベーパレーションおよび数種の低圧〜中圧のガス用途に用いられる。
【0033】
濃度分極は、ボアサイド供給モジュール内で良好に制御される。供給溶液は膜の活性面を直接横断して通過し、よどんだデッドスペースは発生しない。これは、顕著な濃度分極の問題を引き起こす繊維間のフローチャネリングおよびよどみ領域を回避することが困難であるシェルサイド供給モジュールの場合とは大きく異なる。これらのよどみ領域に供給溶液中の懸濁粒子状物質が容易に捕捉され、不可逆的な膜の汚れを招く。供給フローを送るバッフルが試行されているが広範には用いられていない。濃度分極を最小化するより一般的な方法は、供給フローを中空繊維の方向に垂直な方向に送ることである。これは、繊維表面を横断する比較的良好なフロー分配を有するクロスフローモジュールを与える。数種の膜モジュールは直列に連結されてもよく、高い供給溶液速度を用いることができる。この基本的な設計の多数の変形例は、たとえば米国特許3,536,611号明細書(Fillipら)、同5,169,530号明細書(Stickerら)、同5,352,361号明細書(Parsedら)、同5,470,469号明細書(Beckman)(これらは全体として本明細書に参照として組み込まれる)に記載されている。中空繊維モジュール単独での最大の利点は、非常に大きな膜面積を単独のモジュールに詰め込む能力である。
【0034】
[好ましい実施形態の説明]
パラキシレンは、ポリエステル繊維および樹脂の製造に最終的に用いられる有用化学物質として、石油化学および化学物質供給原料から製造または分離される。ほとんどの石油化学由来供給原料から除去される場合に、パラキシレンは他のC8芳香族、すなわちメタキシレン(mX)、オルソキシレン(oX)およびエチルベンゼン(EB)との混合物中に見出される。3種のキシレン異性体は、PX:mX:oXについて約1:2:1の平衡比率を有し、源によってエチルベンゼンは約20wt%以下で含まれ、残りのC8芳香族混合物は典型的には約80〜約99wt%のキシレンであり得る。本発明の有利なプロセスは、平衡に近い混合物から精製パラキシレンを効率的に回収し、異性化反応器に残りの流を与えて平衡を再確立する。
【0035】
図面の右側を参照すれば、膜装置20は、本発明の好ましい側面に従って配設されている。膜装置20は、適切な駆動力の差の下で少なくとも0.01Barrerの透過性を示す選択透過性膜と、膜の一方の側と接触している流体流用の少なくとも1の入口および少なくとも1の出口を有するチャネルと、膜の反対側と接していて透過流用の少なくとも1の出口を有する透過チャンバとを具備する。適切に変動された温度および/または圧力の条件にさらされると泡立ち点を示す2種以上の化合物の混合物は、導管18を通して導入される。供給物流のエンタルピーは、導管22を通して抜き出されている非透過流体の膜効率指数が約0.5〜約1.5の範囲内となるように、適切な手段、たとえば交換器10によって調節される。透過流は導管24を通して抜き出される。
【0036】
多くの産業用途において、利用可能な膜装置の透過選択性は、要求されている生成物純度および/または生成物回収に合致するには不充分である。このような場合、多重群において選択透過性膜を用いるプロセスは、流体混合物からの所望の非透過生成物および精製透過生成物の同時回収のために必要である。たとえば本発明によれば、複数の膜モジュールは、2以上の群、たとえば第1生成物群および第2生成物群および場合によっては1以上の中間体群に配設されている。
【0037】
図面に示されている装置において、膜モジュール20、50および80は本発明の一側面に従って配設されている。分離されるべき適切な混合物は、源12から導管14およびマニフォールド16を通して交換器10に供給される。モジュール50からの非透過流を含む混合物は、導管18を通って入口を介して膜モジュール20に導入される。非透過生成物は、膜モジュール20から導管22を通って貯蔵部(図示せず)に送られる。透過流は、膜モジュール20から導管24および交換器30を通って抜き出される。熱交換器30は、低温で運転し、膜モジュール20での透過用の適切な駆動力を発生させるために十分低い圧力を発生させる。
【0038】
ポンプ34は、交換器30から導管32を通して抜き出された流体を加圧して、流を導管36を通してマニフォールド38に送るために用いられる。本発明の別の実施形態において、分離されるべき混合物の全量または一部はマニフォールド38を通して導入される。モジュール80からの非透過流を含む混合流は、交換器40および導管42を通して入口を介して膜モジュール50に導入される。非透過生成物は、膜モジュール50から導管52を通してマニフォールド16に送られる。透過流は、導管54および交換器60を通して膜モジュール50から抜き出される。熱交換器60は、低温で運転し、膜モジュール50内での透過のための適切な駆動力を発生させるに十分低い圧力を発生させる。
【0039】
ポンプ64は、交換器60から導管62を通して抜き出された流体を加圧し、流を導管66、交換器70を通して、導管72を通してマニフォールド74に送るために用いられる。本発明の別の実施形態において、分離されるべき混合物の全量又は一部は源112から導管114を通して供給され、マニフォールド74を通して導入される。モジュール80からの非透過流は、導管82およびマニフォールド38を通して膜モジュール50に戻される。透過流は、導管84および交換器90を通して膜モジュール80から抜き出される。熱交換器90は低温で運転し、膜モジュール80内での透過のための適切な駆動力を発生させるに十分低い圧力を発生させる。ポンプ9 4は、交換器90から導管92を通して抜き出された流体を加圧し、導管96を通して精製生成物流を貯蔵(図示せず)に送るために用いられる。
【0040】
本発明のこの実施形態によれば、選択透過性膜分離モジュールの側面間の協働および相互作用は、膜装置に分配された圧縮流出物のエンタルピーを制御するために有利に作用し、膜装置からの非透過流体の膜効率指数を約0.5〜約1.5の範囲、好ましくは約0.7〜約1.1の範囲、より好ましくは約0.8〜約1.05の範囲に維持する。
【0041】
本発明の好ましい 実施形態において、ポンプ34および64、熱交換器10、40および70およびたとえば源12および/または112からの分離されるべき混合物のエンタルピーは、膜モジュール20からの非透過生成物流体のMEIが約0.5〜約1.5の範囲内にあるように同時に調節される。本発明の別の実施形態において、ポンプ64、熱交換器70および/または源112からの流体混合物のエンタルピーは、膜モジュール80からの非透過流体のMEIが約0.5〜約1.5の範囲内にあるように、調節される。本発明のまた別の実施形態において、ポンプ34、熱交換器40および/または供給混合物のエンタルピーは、導管52内の流体のMEIが約0.5〜約1.5の範囲内にあるように調節され、熱交換器40および/または別の供給混合物のエンタルピーは、膜モジュール50からの非透過流体のMEIが約0.5〜約1.5の範囲にあるように調節される。
【実施例】
【0042】
以下の実施例は、本明細書に開示された発明の数種の特定の実施形態を説明するために提示される。しかし、これらの実施例は、新規な発明の範囲を限定するものではなく、当業者には認識されるように開示された発明の範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変形例がなされてもよい。
【0043】
[一般]
これらの実施例は、キシレン異性体群の混合物からのパラキシレンの分離および精製のための他の処理工程と一体化されているフガシティー(逃散度)駆動膜を利用する処理構成の有利な側面を提示する。これらの実施例において、結果は、断熱膜のモデルが標準的な化学処理均等モデルに組み込まれている市販の化学処理モデル化プログラム(たとえば、Aspen Technology, Inc.のAspen Plus)を用いて行われたコンピュータ計算から得られた。膜のモデルは、BPによって開発され、一般に受け入れられているガス透過方程式に基づいている(Shindo et al., "Calculation Methods for Multicomponennt Gas Separation by Permeation," Sep. Sci. Technol. 20, 445-459 (1985), Kovvali et al., "Models and Analyses of Membrane Gas Permeators," J. Memb. Sci.73, 1-23 (1992)およびCoker et al., "Modeling Multicomponent Gas Separation Using Hollow-Fiber Membrane Contactors," AIChE J. 44, 1289-1302 (1998)参照)。
【0044】
計算は、7%エチルベンゼン、22%パラキシレン、50%メタキシレンおよび22%オルソキシレンを含有する混合キシレン供給物で行った。すべての計算は、110゜F(43.3℃)で運転する透過流凝縮器を用いて行った。これは、ほぼ25Torrの透過流圧力を発生させるために十分であった。膜の最大運転温度は、300゜F(148.9℃)となるように限定した。
【0045】
本発明の目的のために、膜を通過するガスの透過性は、10-10[cm3(STP)cm/(cm2・sec・cm Hg)]として定義され、R M. Barrerにちなんで名付けられた"Barrer"で測定される。膜透過性は、ガスを透過させる膜の能力の測定値である。用語「膜選択性」とは、2種のガスの透過性の比率として定義され、2種のガスを分離する膜の能力の測定値である(たとえば、Baker, Richard W. ,"Membrane Technology and Applications", pp. 290-291, McGraw-Hill, New York, 2000参照)。
【0046】
[実施例1]
図面に示したようにモジュール20だけからなる装置を50のパラキシレン選択性および5Barrerのパラキシレン透過性を用いて模した。導管18内の流体を膜モジュールに300゜F(148.9℃)(ほぼ18psia)で供給した。導管22内の流体に対してMEIが1となるように、膜モジュール20に用いられた面積の量を変動させ、供給物圧力を同時に調節した。結果をTable Iに示す。
【0047】
【表1】

【0048】
Table Iの結果は、透過流回収が増加するにつれて、透過流純度が減少することを示す。同時に、膜面積が増加するにつれて、より多くの物質が膜を通過し、膜冷却が増加する。膜冷却が増加するので、MEIを1に維持するために、供給物をさらに気化させることが必要であった。
【0049】
本発明は、パーベーパレーションおよび蒸気透過の一体化を提示し、供給物を部分的に気化させるかまたはその露点近くまで加熱するために供給物を加熱することは、駆動力を高く維持し、回収に何らの制限も観察されないことを示す。供給物をそれほど加熱せずに分離目的に合致できるから、蒸気透過よりもよりエネルギー効率的である。
【0050】
MEIが1のとき、非透過流は、その泡立ち点において液体として膜モジュールを出た。(さらなる処理、貯蔵などに送られるべき)非透過流を加圧することが必要であれば、追加の冷却なしに揚水してもよい。処理コストを低下させるので、これは望ましい。
【0051】
[実施例2]
本実施例は、膜性能に対する非透過流過冷却の効果を提示する。本実施例において、実施例1で用いたものと同じ膜面積であるが、膜供給蒸気分率を0.02に維持して、計算を行った。50のパラキシレン選択性、5Barrerのパラキシレン透過性および300゜F(148.9℃)の膜供給物温度を再び用いた。
【0052】
本実施例において、膜は蒸気透過およびパーベーパレーションモードの両者で運転する。Table IIに示した結果は、膜面積が増加するにつれて、非透過流の過冷却もまた増加することを示す。よって、透過物回収は実施例1ほど高くはなかった。なぜなら、膜過冷却は透過駆動力を低下させるからである。これは、顕著な過冷却が生じない膜の運転の有利性を示す。
【0053】
【表2】

【0054】
[実施例3]
本実施例は、非透過流が蒸気−液体混合物であるように膜供給物を加熱する効果を提示する。実施例1で用いたものと同じ膜面積であるが本実施例では膜供給物蒸気分率を0.3に維持して、計算を再び行った。50のパラキシレン選択性、5Barrerのパラキシレン透過性および300゜F(148.9℃)の膜供給物温度を再び用いた。
【0055】
これらの計算の結果は、Table IIIに示す。膜面積が増加するにつれて、透過流回収および膜冷却も増加した。したがって、非透過流の蒸気含有量もまた減少した。必要であれば、非透過流をポンプで加圧する前に、非透過流を完全に凝縮するために用いられるべき冷却装置が必要であろう。しかし、これは追加の設備およびエネルギーコストをもたらす。Table IIIに示した結果は、本実施例における透過流回収が実施例1よりも良好であったことを示す。なぜなら、駆動力は、本実施例においてより高かったからである。
【0056】
【表3】

【0057】
[実施例4]
繊維グレードパラキシレン製造の現在の市販源は、99.8%パラキシレンのパラキシレン生成物純度仕様に合致するように設計されている。晶析技術を用いてパラキシレンを純化するユニットは、ほぼ67%の回収率を達成する。パラキシレン精製用の膜ベースプロセスもまた、これらの性能目標に合致しなければならない。実施例1にあるような単独の膜装置を用いてこれらの目標に合わせるためには、パラキシレン選択性を約200まで上昇させることが必要であった。有利には、これらの高性能目標は、本発明による図面に示されている装置によって達成される。
【0058】
計算を行って、導管96内で99.8%パラキシレンの純度仕様に合致し、同時に慣用の晶析プロセスで得られる67%のパラキシレン回収に合った透過生成物を製造するために、図面に示されたプロセスの使用を擬した。本実施例において、新鮮な混合キシレン供給物を源12だけから導管14を介して導入した。15のパラキシレン膜選択性および0.5Barrerのパラキシレン透過性を各膜モジュール内で用いた。
【0059】
導管96内の透過生成物が繊維グレードパラキシレン生成物仕様に合致するように、装置80内の膜面積の量を調節した。同時に、装置に対するパラキシレン回収率が67%となるように、膜装置20内で用いた膜面積を調節した。膜装置50内での膜面積の量は、熱交換器40および70の寸法および総負荷を最小化するように選択した。導管74および42内の流のエンタルピーは、導管22内の非透過生成物のMEIが1となるように調節した。同時に、冷却装置10を用いる必要がないように、導管14内の供給物のエンタルピーを調節することが可能であった。
【0060】
Table IVに示した結果は、図面に示したプロセスを用いて、99.8%パラキシレンを含有するパラキシレン生成物を製造し、パラキシレンの67%を同時に回収することが可能であったことを示す。これは、繊維グレードパラキシレン精製技術の性能要求に合った膜プロセスの最初に知られた実施例である。
【0061】
【表4】

【0062】
[実施例5]
本実施例について、75%のパラキシレン回収率を達成したが同時に99.8%パラキシレンの繊維グレード純度仕様に合致する透過生成物を導管96内で製造した、図面に示されたプロセスを実証するために、計算を行った。
【0063】
新鮮な混合キシレン供給物を導管14だけを介して再び導入した。各膜モジュールにおいて、15のパラキシレン膜選択性および0.5Barrerのパラキシレン透過性を用いた。装置80内での膜面積の量は、導管96内の透過生成物が繊維グレードパラキシレン生成物仕様に合致するように調節した。同時に、装置に対するパラキシレン回収率が75%となるように、膜モジュール20内で用いた膜面積を調節した。膜装置50内の膜面積の量は、熱交換器40および70の寸法および総負荷を最小化するように選択した。導管74および42内の流のエンタルピーは、導管22内の非透過生成物のMEIが1となるように調節した。同時に、冷却装置10を用いる必要がないように、源12からの供給物のエンタルピーを調節することが可能であった。
【0064】
Table Vに示す模擬結果は、図面に示したような本発明によるプロセスを用いて、99.8%パラキシレンを含有するパラキシレン生成物を製造し、パラキシレンの75%を同時に回収することが可能となるように意図されたものであったことを示す。これは、慣用のパラキシレン精製技術の性能要求を超える膜プロセスの初めて知られた実施例である。パラキシレン回収率を増加させ、同時にパラキシレン純度要求を満たす影響はとてつもなく大きいと予測される。この技術は、プラントに存在する「ボトルネックを脱(debottleneck)」するために用いることができ、製造コストを低下させるか、または新規パラキシレンプラントを構築するための資本要求を低下させ、関連する反応および分別区域の相対的寸法および費用を削減することができる。Table Vに示した結果は、多少大きな膜面積がこれらのより厳しい仕様に合致させるために要求されることを示す。
【0065】
【表5】

【0066】
[実施例6]
本実施例について、図示した装置の性能に対するより低い膜選択性の影響を説明するために、10のパラキシレン選択性および0.4Barrerのパラキシレン透過性を用いて計算を行った。装置80内の膜面積の量は、導管96内の透過生成物が繊維グレードパラキシレン生成物仕様に合致するように調節した。同時に、膜装置20で用いた膜面積は、装置に対するパラキシレン回収率が67%となるように調節した。膜装置50内の膜面積の量は、熱交換器40および70の寸法および総負荷を最小化するように選択した。導管74および42内の流のエンタルピーは、導管22内の非透過生成物のMEIが1であるように調節した。同時に、冷却装置10を用いる必要がないように、源12からの供給物のエンタルピーを調節することが可能であった。
【0067】
Table VIに示す結果は、パラキシレン選択性が10であった場合に図示されたように本発明のプロセスを用いて、99.8%パラキシレンを含むパラキシレン生成物を製造し同時にパラキシレンの67%を回収することが可能となるように意図されたものであったことを示す。
【0068】
【表6】

【0069】
上記実施例から、ポリマー膜の組み合わせを用いて効果的なパラキシレンプロセスを作ることができる多くのプロセスがあることが当業者には明らかであろう。以下の実施例は、パラキシレンおよびエチルベンゼン選択性膜とエチルベンゼン選択性膜の組み合わせを説明する。パラキシレンおよびエチルベンゼン膜は、サイズに基づいて分離する膜であり、エチルベンゼン選択性膜は溶解性に基づいて分離する。これら2種の膜を別個にまたは単一の膜モジュールに組み合わせて用いることができる。図面には別個に処理されているものとして示されているが、この流は異性化反応器に再循環されてもよく、エチルベンゼン転化および異性化が同一の反応器内で達成されてもよい。
【0070】
本発明の目的にとって、用語「非凝縮性」とは、たとえば、窒素、二酸化炭素、酸素およびこれらの殆どからなる混合物などの化学または石油化学処理ユニットからの冷却によっては容易に凝縮されないガスとして定義される。
【0071】
本発明の目的にとって、用語「凝縮性」とは、適切に変更された温度および/または圧力の条件下にさらされるときに液体になるガスまたは蒸気として定義される。
本発明の目的にとって、用語「膜分離モジュール」とは、膜装置を形成するように配設された複数の選択透過性膜として定義される。
【0072】
本発明の目的にとって、「主として」とは、約50%よりも多いことを意味する。「実質的に」とは、関連する化合物または系の巨視的特性に計測可能な影響を与えるような十分な頻度で生じるかまたは比率で存在することを意味する。このような影響に対する頻度または比率が明らかでない場合には、「実質的に」とは約20%以上と考えられる。
【0073】
用語「本質的」とは、巨視的な品質および最終的な製品に無視できる影響、典型的には約1%以下の影響があってもよいわずかな変動を除いて、絶対的なものとしてを意味する。
実施例は、本発明のいくつかの属性をよりよく理解するために、提示され仮説的に改良されている。本発明の範囲は特許請求の範囲のみによって決定される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物の流体混合物から透過生成物および所望の非透過生成物を同時に回収するための選択透過性膜を用いるプロセスであって、
(1-a)温度および/または圧力の適切に変化した条件に供される際に泡立ち点を示す2種以上の化合物の混合物を含む供給流を提供する工程;
(1-b)装置内で所与の流体のエンタルピーを制御する手段および、各々適切な駆動力差で供給原料の化合物の1種に対する少なくとも0.1Barrerの透過性を示す固体選択透過性膜によって分離された第1及び第2ゾーンを含み、各第1ゾーンは流体流用の少なくとも1の入口および出口を有し膜と接触状態にあり、膜の反対側と接している第2ゾーンは透過流用の少なくとも1の出口を有する、1以上の膜モジュールを具備する装置を提供する工程;
(1-c)透過に適切な条件下で1以上のモジュールの第1ゾーン内に供給流を導入して、モジュールからの透過流および非透過流を得る工程;
(1-d)非透過流体の膜効率指数を約0.5〜約1.5の範囲内に維持するように、エンタルピーを制御する工程
を含むプロセス。
【請求項2】
前記供給流は、液体および凝縮性蒸気の混合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記供給流は、有機化合物の混合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記有機化合物の混合物は、芳香族化合物の少なくとも1の異性体を含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記有機化合物の混合物は、キシレンの少なくとも1の異性体を含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項6】
前記有機化合物の混合物は、エチルベンゼンを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
流体混合物からの所望の非透過生成物および精製透過生成物の同時回収用の複数群における選択透過性膜の使用方法であって、
(7-a)温度および/または圧力の適切に変化した条件に供される際に泡立ち点を示す2種以上の化合物の混合物を含む供給流を提供する工程;
(7-b)装置内で所与の流体のエンタルピーを制御する手段、および第1生成物群、第2生成物群および少なくとも1の中間体群内に配設されている複数の膜モジュールを具備し、各モジュールは適切な駆動力差で供給原料の化合物の1種に対して少なくとも0.1Barrerの透過性を示す固体選択透過性膜によって分離されている第1および第2のゾーンを含み、各第1ゾーンは流体流用の少なくとも1の入口および出口を有し膜と接触状態にあり、膜の反対側と接している第2ゾーンは透過流用の少なくとも1の出口を有する、複数の膜モジュールを具備する装置を提供する工程;
(7-c)透過に適切な条件下で、1以上の第1生成物モジュールの第1ゾーンに供給流を導入して、第1生成物モジュールからの透過生成物流および非透過生成物流を得る工程;
(7-d)透過に適切な条件下で、前記第1生成物モジュールからの透過流を1以上の中間体モジュールの第1ゾーンに分配して、中間体モジュールからの透過流および非透過流を得る工程;
(7-e)透過に適切な条件下で、中間体モジュールからの非透過流の少なくとも一部を1以上の第1生成物モジュールの第1ゾーンに戻す工程;
(7-f)透過に適切な条件下で、モジュールの中間体群の第2ゾーンからの透過流を第2生成物群モジュールの第1ゾーンに分配して、第2生成物モジュールからの非透過流および最終透過生成物流を得る工程;
(7-g)透過に適切な条件下で、第2生成物モジュールからの非透過流の少なくとも一部を1以上の中間体モジュールの第1ゾーンに戻す工程;
(7-h)少なくとも1の非透過流体の膜効率指数を約0.5〜約1.5の範囲内に維持するように、エンタルピーを制御する工程
を含む方法。
【請求項8】
前記供給流は、液体および凝縮性蒸気の混合物を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記供給流は、有機化合物の混合物を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記有機化合物の混合物は、芳香族化合物の少なくとも1種の異性体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機化合物の混合物は、キシレンの少なくとも1種の異性体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記有機化合物の混合物は、エチルベンゼンを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第2生成物モジュールからの非透過流体の膜効率指数は、約0.5〜約1.5の範囲内に維持される、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記供給流は、キシレンの少なくとも1種の異性体を含有する有機化合物の混合物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記有機化合物の混合物は、エチルベンゼンを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1生成物モジュールからの非透過流体の膜効率指数は、約0.5〜約1.5の範囲内に維持される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記供給流は、キシレンの少なくとも1種の異性体を含有する有機化合物の混合物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記有機化合物の混合物は、エチルベンゼンを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第1生成物モジュールからの非透過流体の膜効率指数は、約0.5〜約1.5の範囲内に維持される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
流体混合物から所望の非透過生成物および精製透過生成物の同時回収用の多数群における選択透過性膜を使用する分離装置であって、
第1生成物群、第2生成物群および少なくとも1の中間体群内に配設されている複数の膜モジュールであって、各モジュールは適切な駆動力差で供給原料の化合物の1種に対する少なくとも0.1Barrerの透過性を示す固体選択透過性膜によって分離されている第1及び第2ゾーンを含み、各第1ゾーンは流体流用の少なくとも1の入口および出口を有し膜と接触状態にあり、膜の反対側と接している第2ゾーンは透過流用の少なくとも1の出口を有する、複数の膜モジュール;
透過に適切な条件下で、第1生成物モジュールからの透過流を1以上の中間体モジュールの第1ゾーンに分配し、中間体モジュールからの非透過流を第1生成物モジュールの入口に戻す手段:
透過に適切な条件下で、中間体モジュールからの透過流を1以上の第2生成物モジュールの第1ゾーンに分配し、第2生成物モジュールからの非透過流を中間体モジュールの入口に戻す手段;
少なくとも1の非透過流体の膜効率指数を約0.5〜約1.5の範囲内に維持するように、装置内の所与の流体のエンタルピーを制御する手段
を具備する分離装置。

【公表番号】特表2007−503976(P2007−503976A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524635(P2006−524635)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/021546
【国際公開番号】WO2005/023399
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】