説明

膜分離活性汚泥処理装置

【課題】膜分離活性汚泥法処理装置において、分離膜に発生する目詰まりを低減する。
【解決手段】曝気槽内に生物処理部と分離膜処理部とを下部の流通路を介して連通した状態で仕切壁で仕切り、前記分離膜処理部内には、四弗化エチレン樹脂製の分離膜からなる分離膜モジュールを吊設して浸漬し、該分離膜モジュールは吸引濾過式で前記生物処理部から被処理水を分離膜に吸引するものとし、かつ、該分離膜処理部では分離膜モジュールの下方にオゾン発生器を配置し、かつ、前記分離膜モジュールに自動洗浄装置を付設し、薬液と逆洗水で分離膜を洗浄することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離活性汚泥処理装置に関し、生活排水や工業排水等の下水処理を行うものである。
【背景技術】
【0002】
従来、膜分離活性汚泥法により下水処理を行う水処理装置が提供されている。
膜分離活性汚泥法による水処理では、1つの曝気槽内に生物膜と分離膜とを配置する槽内設置型と、別の槽に配置して配管を介して接続する槽外設置型とがある。
前記槽内設置型は水処理装置を簡単にできるが、分離膜が生物膜槽内に配置されるため、分離膜面に懸濁成分が付着し易く目詰まりが発生し易い問題がある。一方、槽外設置型は分離膜面を定期的に薬液洗浄と逆洗浄ができるため、目詰まりによる透過流速の低下を抑制できる。しかしながら、逆洗浄により分離膜面から剥離した懸濁成分を生物膜槽に還流すると、元の微粒子になり、かつ、付着した微生物が生物膜槽で余剰になる問題がある。また、生物膜槽から分離膜槽への配管に詰まりやすいと共に2個の槽が必要となり水処理装置が大型化する問題もある。
このように、槽内設置型と槽外設置型のいずれも長所と短所を備えている。
【0003】
前記槽外設置型において、特開2008−86863号公報(特許文献1)では、分離膜槽内の分離膜を逆洗することにより生じた膜面閉塞物質を含む逆洗排水をオゾン槽に通してオゾン処理して、逆洗排水に膜面閉塞物質を分解して微小化し、生物膜槽で活性汚泥処理した後に分離膜槽で濾過し、該濾過時に分離膜面を閉塞しないようにしている。
また、前記槽内設置型において、特開2001−62483号公報(特許文献2)では、曝気槽に配管する散気管から散気する空気に所定量のオゾン化空気を混入して曝気槽内に供給して、曝気空気量を増加させることなく必要量の酸素を活性汚泥に供給している。
【0004】
特許文献1の槽外設置型では逆洗浄水をオゾン槽に通した後に生物膜槽に還流しており、生物膜槽へ還流される逆洗浄水中の有機物の微小化を図ることはできるが、分離膜自体の目詰まりの問題は解消されておらず、かつ、槽内設置型とした場合には前記のように分離膜に目詰まりが発生しやすくなる。
特に、膜分離活性汚泥法のような高汚濁性水処理において槽内設置型とすると、処理液の粘度が高いうえ、生物処理特有の粘着性のある堆積物により分離膜の表面にも膜の汚れ(バイオファウリング)が発生する。よって、一般の排水系の濾過に比べて、分離膜に懸濁成分が堆積しやすく、堆積物の付着や目詰まりによる透過流量の低下が顕著である。
そのため、膜モジュールを用いた濾過装置は、通常、運転時には散気管から加圧空気を送り、エアバブリング等で排水の流れを作り、これによる堆積物の剥離や濾過膜の揺動による機械的負荷による堆積物を取り除く清浄操作(散気処理)が行われる。
よって、分離膜は高い濾過性能を有することに加えて、長期間運転時の機械的負荷に耐えうる強度が要求される。
また、特に活性汚泥が分離膜表面に付着する分離膜は、薬液を用いて殺菌洗浄する必要があるため、酸・アルカリに対して優れた耐薬品性を兼ね備えていることが要望されている。
【0005】
しかしながら、前記した従来用いられている分離膜は、塩素化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質膜を用いたものや、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系樹脂からなる多孔質膜を用いられている場合が多い。
このように、従来汎用されている分離膜はポリオレフィン系樹脂が多く、そのほか、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース、ポリスルホン等から形成されている。
これらの従来分離膜として用いられている樹脂は、高濃度の酸やアルカリからなる洗浄液に対する耐薬品性は十分でない。
【0006】
また、特許文献2の槽内設置型として、オゾンを含む空気を散気管から散気すると、溶存酸素量は多くなるが、分離膜は目詰まりを低減するため常時散気する必要があり、散気中にオゾンを含めておくと、溶存酸素量が多くなり過ぎ、微生物が過剰になる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−86863号公報
【特許文献2】特開2001−62483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、槽内設置型の膜分離活性汚泥処理装置として、簡単な構成とし、かつ、槽内に浸漬する分離膜に目詰まりの発生を低減して透過流速を保持しながら、微生物を過剰に増殖させないことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、
曝気槽内に生物処理部と分離膜処理部とを下部の流通路を介して連通した状態で仕切壁で仕切り、
前記分離膜処理部内には、四弗化エチレン樹脂製の分離膜からなる分離膜モジュールを吊設して浸漬し、該分離膜モジュールは吸引濾過式で前記生物処理部から被処理水を分離膜に吸引するものとし、かつ、該分離膜処理部では分離膜モジュールの下方にオゾン発生器を配置し、かつ、
前記分離膜モジュールに自動洗浄装置を付設し、薬液と逆洗水で分離膜を洗浄することを特徴とする膜分離活性汚泥処理装置を提供している。
【0010】
前記のように、本発明では、槽内設置型の分離膜活性汚泥処理方法を用いているが、曝気槽内は下部流通路を介して連通した状態で仕切壁で生物処理部と分離膜処理部とを仕切り、生物処理部で発生する活性汚泥の一部を生物処理部内で沈殿させ、下部流通路を通して分離膜処理部へ流入している。そのため、分離膜処理部へ流入する活性汚泥量を減少でき、分離膜の目詰まり発生を低減できる。かつ、槽外設置型の用いる配管を用いずに生物処理部と分離膜処理部とを下部流通路で連通することで、配管内のフロックによる閉塞を防止し且つ装置を簡単としている。
特に、曝気槽内で生物処理部と仕切り、下部流通路を通して分離膜処理部に流入して分離膜の表面に付着する活性汚泥(凝集したフロック)にオゾンを供給することで、有機物を分解してフロックを微小化しているため、分離膜の表面および膜内での目詰まりの発生を低減することができる。さらに、分離膜表面で殺菌処理することができるため、分離膜の透過液を殺菌する殺菌処理槽を省略することも可能である。
また、仕切壁で仕切った分離膜処理部にオゾン発生器を設置し、生物処理部にはオゾン発生器を設置していないため、生物処理部内での溶存酸素量が過剰となって微生物が適正数より過剰となることを防止できる。
【0011】
前記分離膜処理部内で液中に設置する前記オゾン発生器は上下開口の遮蔽枠で囲み、オゾン発生器から発生させるオゾンを分離膜モジュールの分離膜に対して供給して分離膜に直接に供給されるようにしている。
これにより、分離膜モジュールの分離膜の表面にオゾンを効率良く供給でき、分離膜の表面に付着するフロックの有機物を酸化処理して微細化でき、分離膜表面および膜間に目詰まりを低減できる。かつ、一方、生物処理部には直接的にオゾンを供給していないため、微生物が過剰に増殖するのを抑制できる。
【0012】
また、本発明では分離膜を四弗化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、以下、PTFEと称す)で形成していることを特徴とする。PTFEは耐薬品性、化学安定性、高強度、滑り易く懸濁成分が付着しにくい非粘着性、低摩擦係数、不燃性、耐候性に優れた特性を備え、特に、高濃度のアルカリ液や酸性液を洗浄液として用いることができる。該PTFE製の分離膜として、住友電工ファインポリマー(株)製「ポアフロン(登録商標)メンブレン」シリーズを好適に用いることができる。
このように、膜分離活性汚泥処理装置の曝気槽内に配置し、フロックが付着する分離膜をPTFE製の分離膜からなる分離膜モジュールとすることにより、分離膜の表面にフロックや難溶解性成分が蓄積しても高濃度のアルカリ液や酸性液を洗浄液として用いることで目詰まりを低減でき、長期間安定して高い透過流速を維持して水処理することができる。
【0013】
前記PTFE製の分離膜は単層または複層の中空糸とし、前記分離膜モジュールは中空糸膜モジュールとしている。
あるいはPTFE製の分離膜は単層または複層の平膜とし、前記分離膜モジュールは平膜モジュールとしている。
【0014】
具体的には、例えば、PTFE製の複層の中空糸とする場合には、特許第385186号に記載した多孔質複層中空糸等が好適に用いられ、また、中空糸を集束した分離膜モジュールとしては、特許第3077260号公報および前記特許第385186号に記載した中空糸膜モジュールが好適に用いられる。
【0015】
前記のように分離膜を延伸PTFE多孔質膜で構成すると、強度、耐久性、耐食性に優れ、高濁度排水処理において極めて有用性を発揮することができる。さらに、延伸PTFE多孔質膜は押出および延伸工程を経て製造されるため、高度な分子配向により微細孔を高気孔率にすることができる。よって、透過水量が多い高性能の濾過膜としながら、散気処理で揺れを発生させても、分離膜に亀裂ができたり、破断したりせず、優れた耐久性を有する。
【0016】
特に、前記のように、延伸PTFE多孔質膜は殆どの薬品に犯されない化学的安定性を有し、耐食性に優れている。一般的に、比表面積の大きい多孔質膜は、バルク体に比べて薬品に浸食されやすく強度も小さいが、延伸PTFE多孔質膜は有機・無機の酸、アルカリ、酸化剤、還元剤及び有機溶剤等のほとんど全ての有機・無機薬品に対して不活性であり、耐薬品性に極めて優れる。そのため、従来のポリオレフィンやポリエチレン等からなる分離膜のように洗浄薬剤が制約されず、堆積物の種類に応じて種々の化学薬品を選択して、必要時には高濃度の洗浄液で濾過膜を長期間洗浄することができる。例えば、バイオファウリングを完全に溶解除去・殺菌するために、過酸化水素水や塩酸などの強酸化剤の高濃度溶液を使用でき、排水中の油分等を除去するために、次亜塩素酸ナトリウム水溶液や水酸化ナトリウム水溶液等の強アルカリ水溶液を使用することができる。
【0017】
前記延伸PTFE製の分離膜は、例えば、濾過面の平均孔径が0.01μm以上、平均膜厚が0.1〜10mm、気孔率が40〜90%、JIS K 7113に規定の引張強度が10N/mm以上としていることが好ましい。
前記平均孔径は0.01μm以上、上限は10μm以下、さらに、5.0μm以下であることが好ましい。該平均孔径はPMI社製パームポロメーター(型番 CFP-1200A)により測定している。
該延伸PTFE製の分離膜は、活性汚泥を含む排水や微小な粒子を含む排水を原水とする場合では、粒子径0.5μmである粒子の粒子捕捉率が90%以上としていることが好ましい。
前記平均膜厚はダイアルゲージにより測定している。前記気孔率はASTM D792に記載の方法で測定している。
さらに、pH10以上の強アルカリ洗浄液およびpH3以下の強酸性洗浄液に対する耐性を有するものとしていることが好ましい。
【0018】
濾過膜として用いる延伸多孔質PTFEとは、PTFEが重量比80%以上のことを指し、更に好ましくは90%以上である。
併用する熱可塑性のフッ素樹脂はPFA、FEP、ETFE、PCTFE、PVDF、PVF等が挙げられ、その中でもPTFEの融点ピーク以上(327℃以上)でも比較的分解速度が低いFEPが好ましく、更にはPFAがより好ましい。
【0019】
前記生物処理部は、一体的に連結した小粒径の砂利やプラスチック等の球体や糸状体を担体(充填材)あるいは四弗化エチレン樹脂製の多孔質体を担体とし、これら担体に微生物を付着させ、これら担体の表面や担体の隙間に微生物を付着した固定床式の生物膜としている。
なお、流動床式としても良いが、分離膜処理部と下部流通路を介して接続するため、流動式とすると、被処理水中に浮遊した担体が分離膜処理部へ流入する恐れがあるため、固定床式の生物膜が好適に用いられる。かつ、固定床式の生物膜とすると、その下方に配管する散気管より生物膜に対して的確に酸素を供給することができる。該生物処理部には、凝集剤を添加してもよい。
【0020】
また、前記のように、分離膜モジュールに自動洗浄装置を付設し、薬液と逆洗水で分離膜を洗浄する構成としている。
前記薬液として次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、これらの混合液を用いることが好ましい。
特に、自動洗浄装置から、逆洗水と、クロスフローで前記洗浄用薬液とを、交互に前記分離膜に供給して洗浄することが好ましい。
前記のように、PTFEは耐薬品性がポリオレフィンやポリエチレン等より優れているため、高濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、これらの混合液からなる洗浄用薬液を用いて洗浄することができる。よって、分離膜の表面に付着、蓄積する難溶解性成分を溶解できる。さらに、PTFE製の分離膜は表面平滑性が良く滑りやすいため、洗浄液により分離膜表面に付着する浮遊した懸濁成分(MLSS)を除去しやすい利点もある。
【0021】
また、本発明では、生物処理部と分離膜処理部とは下部流通路を介して連通しているだけで、仕切壁で仕切っているため、薬液の影響を直接的に生物膜に与えない利点があり、かつ、中性の水を逆洗水として供給することにより、生物処理部の微生物に適した中性とすることができる。
【0022】
本発明の曝気槽では、生物処理部と分離膜処理部とにはそれぞれ独立した散気管を配管し、これら散気管からの散気を個別制御している。
このように、生物処理部の散気管と分離膜処理部の散気管とを分離することで、これら散気管から噴射する噴射時間、エア量およびエア噴射圧を、生物膜と分離膜とにそれぞれ適したものに制御することができる。よって、生物処理部の散気管では、例えば、生物膜の微生物の活性状態をモニタ手段でモニタリングしながら、酸素の供給が必要な時に散気を行う一方、分離膜用の散気管では、分離膜の表面の目詰まりを防止するために常時散気を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
上述したように、本発明の膜分離活性汚泥処理装置では、曝気槽内に生物処理部と分離膜処理部とを下部流通路を介して連通した状態で仕切壁で仕切り、分離膜濾過分離部では分離膜モジュールの下方にオゾン発生器を設置して、生物処理部から流入して分離膜の表面に付着するフロックの微生物を殺菌し有機物を分解するため、フロックの付着による分離膜の目詰まりを更に低減できる。かつ、分離膜の透過液を殺菌液とすることもできる。
また、分離膜として、耐薬品性を有すると共に強度が大きいPTFE製の分離膜を用いることにより、懸濁成分が付着して目詰まりが発生しやすい分離膜の効果的な洗浄を行え、長期間安定して稼働することができる。
さらに、前記特許文献1ではオゾン処理槽を膜分離処理槽とは別に設けて配管を介して接続しているが、本発明では分離膜処理部にオゾン発生器を配置しているため、水処理装置の構成が簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一実施形態の膜分離活性汚泥処理装置の全体図である。
【図2】中空糸の分離膜モジュールを示し、(A)は斜視図、(B)は一部拡大断面図である。
【図3】第二実施形態の平膜の分離膜モジュールを示し、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2に第一実施形態の膜分離活性汚泥処理装置を示す。該処理装置は下水や工場排水等の高濁度の懸濁成分を含む原水を浄化処理するものである。
【0026】
曝気槽1内に、内部を2分する仕切壁2を曝気槽1の底壁1aとの間に下部流通路3をあけて仕切り、一方側を生物処理部4、他方側を分離膜処理部5としている。
生物処理部4には固定床式の生物膜6を配置し、分離膜処理部5には延伸PTFE多孔質体からなる中空糸7を集束した中空糸分離膜モジュール8を配置している。
【0027】
前記分離膜処理部5では中空糸分離膜モジュール8の下方に、複数個のオゾン発生器10を並設している。並設したオゾン発生器10を上下開口の保持枠11で囲み、これらの複数個のオゾン発生器10から中空糸分離膜モジュール8の全中空糸7に向けて直接的にオゾンを供給している。
【0028】
前記オゾン発生器10の下部に散気管12を配管し、該散気管12に接続した空気供給管をポンプP1を介してブロア13と接続している。この散気管12により下方から噴射される散気により、オゾン発生器10から発生するオゾンを中空糸7の隙間に確実に流入させることができる。オゾン発生器10から供給するオゾン量は、微生物を殺菌すると共にフロックの有機物を酸化分解できる量としている。
【0029】
前記生物処理部4には固定床式の生物膜6を配置している。生物膜6は、PTFE製の多孔質体を担体とし、その表面および空孔に好気性の微生物を付着させている。該PTFE多孔質体からなる担体は強度を有するため、散気時および洗浄時に破損せず、かつ、付着させる微生物の量に応じて空孔を容易に設けることができる。なお、担体として小粒または糸状の充填材を隙間をあけて保持した担体とし、これら充填材の表面は充填材の隙間に好気性の微生物を付着させてもよい。
前記生物膜6の下方には、生物膜6に向けて散気する生物膜用の散気管14を配管し、該散気管14をポンプP2を介してブロア13と接続している。
該生物膜用の散気管14のポンプP2と前記分離膜用の散気管12のポンプP1とは独立制御し、分離膜用の散気管12からは洗浄時を除いて常時散気して中空糸7を揺動させる一方、生物膜用の散気管14からは酸素の補給が必要な時に散気している。
また、生物処理部4の底壁には沈降する活性汚泥をポンプP6で吸引排出する排出管19を接続している。
【0030】
前記中空糸分離膜モジュール8は、濾過液の集水管16で吊り下げて分離膜処理部5内に配置している。
中空糸分離膜モジュール8は、図2に示すように、多数本の延伸PTFE製の中空糸7をそれぞれU形状に2つ折りして隙間をあけて並設し、これら中空糸7の上端を封止固定材24で連結固定している。該封止固定材24には、各中空糸7の中空部と連通する集水部24aを設け、該集水部24aに集水ヘッダー25を外嵌固定し、該集水ヘッダー25を前記集水管16と接続して分離膜処理部5内に吊り下げている。一方、各中空糸7の下端の湾曲部には支持棒26を通してU形状を保持している。支持棒26は保持枠27で保持している。
このように、中空糸分離膜モジュール8では、間隔をあけて中空糸7の下端を封止固定材に固定していないことより、下方に配管するオゾン発生器10から供給されるオゾンを中空糸7の隙間に通し易くしている。
【0031】
前記集水管16は吸引ポンプP4と接続し、中空糸7の中空部へ透過した濾過液を吸引しており、本実施形態の分離膜は吸引濾過式としている。
【0032】
前記中空糸7は、本実施形態では多孔質複層中空糸を用いている。該複層の中空糸は支持層となる多孔質延伸PTFEチューブの外周面に濾過層となる多孔質延伸PTFEシートを密着させて巻き付けて複層とし、強度を高めている。
前記濾過膜を形成する延伸PTFE多孔質シートは、1軸延伸、2軸延伸で得られたものでもよいが、PTFE未焼結粉末と液状潤滑剤のペースト押出によって得られる成形体を2軸延伸して得られた多孔質シートを焼結して得られたものであることが好ましい。2軸延伸することで、空孔を囲む繊維状骨格の強度を高めることができる。
また、濾過膜と支持膜とは未焼結状態のPTFE多孔質膜を焼結一体化することにより、容易に積層体を形成することができる。
【0033】
なお、中空糸7は前記複層中空糸に限定されず、単層でもよい。
中空糸7は濾過面の平均孔径が0.01μm以上10μm以下、平均膜厚(複層では濾過層と支持層を加えた厚さ)が0.1〜10mm、気孔率が40〜90%、内径が0.3〜10mm、IPAバブルポイントを10〜200kPaの範囲としている。
さらに、中空糸7はJIS K 7113に規定の引張強度が10N/mm以上としている。
さらに、PTFE製の中空糸7はpH10以上の強アルカリ洗浄液およびpH3以下の強酸性洗浄液に対する耐性を有する。
【0034】
前記中空糸膜モジュール8の洗浄用として自動洗浄装置30を付設している。
該自動洗浄装置30は高圧の水と空気とを中空糸7の内部に供給する逆洗水の供給部31と、薬液をクロスフローで中空糸7の表面に供給する薬液供給部32とを備えている。薬液は次亜塩素酸ナトリウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液の混合液を用いている。
前記自動洗浄装置30は、中空糸7の内外差圧を検出する測定器(図示せず)と接続して制御部33を備え、該制御部33を測定器からの検出信号に応じて、内外差圧が閾値以上に達すると洗浄を開始している。
【0035】
前記構成からなる水処理装置では、曝気槽1内に投入される下水あるいは工場排水からなる被処理水は、固定床式の生物膜6の微生物と付着して活性汚泥となる。該生物膜6から剥離して原水中に浮遊して凝集する活性汚泥(フロック)からなる懸濁成分は、分離膜処理部5は吸引濾過式としているため下部流通路3へと下方へ吸引され、生物処理部4内で一部は沈殿すると共に、生物処理部4から下部流通路3を通して分離膜処理部5に流入する。
【0036】
分離膜処理部5に流入したフロックや無機スケールを含む被処理水は、中空糸7の表面に付着する。
該中空糸7にはオゾン発生器10からオゾンが供給されているため、中空糸7の表面に付着するフロックはオゾンにより有機物が酸化分解して微細化し、中空糸7の表面および膜間の目詰まりを低減できる。かつ、オゾンにより微生物殺菌される。かつ、中空糸7に付着した活性汚泥が微細化されると共に微細物が殺菌されるため、該活性汚泥を含む被処理水を循環管(図示せず)で生物処理部4へ還流する場合、特許文献1のようにオゾン処理槽を通す必要がない。
かつ、中空糸膜モジュール8には、分離膜用の散気管12から常時散気を行っているため、中空糸7の表面が懸濁成分で目詰まりが発生するのを低減できる。
【0037】
中空糸分離膜モジュール8は、前記のように、内外差圧が閾値に達すると自動洗浄装置30から洗浄液を供給して洗浄している。
その際、本発明では中空糸7をPTFEで形成しているため、高濃度の薬液からなる洗浄液で洗浄でき、中空糸7の表面に付着した難溶性の懸濁成分を除去できると共に、平滑性が良いため、洗浄液でスムーズに懸濁成分を除去できる。かつ、薬液を中空糸7に供給する際、分離膜処理部5は仕切壁2で生物処理部4と仕切っているため、生物膜6に薬液の影響を直接的にあたえない。かつ、中性の水を逆洗水として供給しているため、生物処理部4内の原水を微生物に適した中性近傍(pH5−8)に保持することができる。
さらに、洗浄液を高圧で中空糸7に噴射しても、PTFEは高強度があるため、中空糸7の損傷や折れを発生させない利点がある。
【0038】
図3に第二実施形態を示す。
第一実施形態はPTFE製の中空糸を用いて、中空糸膜分離モジュールとしているが、第二実施形態ではPTFE製の平膜を用いた平膜エレメント61を集束した平膜式分離膜モジュール60としている点を相違させている。他の構成は第一実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0039】
平膜エレメント61は、下端を折り曲げてU形状に配置する多孔質延伸PTFE製シートからなる濾過膜62と、該濾過膜62の対向濾過部の間にポリエチレン樹脂製のネットからなる支持体63を介設し、処理液流路用の空間を確保している。
前記濾過膜62はU形状に折り曲げた状態で、対向する対向濾過部の外周縁を、上端の処理液取出口を空けて、熱融着してシールして外周封止部64を形成している。
前記処理液取出口には、集水管との接続する集水ヘッダー65を外周封止部64と固着して設けている。
【0040】
濾過膜62とする延伸PTFE多孔質膜は、単層でも良いし複層でもよい。
0.01〜20μmの空孔を備え、粒子径0.45μmの粒子捕捉率が90%以上のものを用いている。平均膜厚が5〜200μm、空孔を囲む繊維状骨格の平均最大長さを5μm以下としている。また、該濾過膜62は引張強度が10N/mm以上の強度を有している。かつ、3質量%の硫酸、4質量%の水酸化ナトリウム水溶液、有効塩素濃度10%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の各々に温度50℃で10日間浸漬しても透過水量が低下せず、損傷されない優れた耐薬品性を備えたものとしている。
【0041】
このように、平膜エレメント61の構成材は、多孔質延伸PTFEからなる濾過膜62、ネットからなる支持材63としているため、平膜エレメント61自体を容易に撓むフレキシブルなものとすることができる。かつ、濾過膜62を強度があり、平面保持力を有するPTFE製としているため、フレキシブルでありながら保形性を有する。かつ、平膜エレメント61は全体肉厚を2mmと非常に薄としている。
このように、平膜エレメント61を薄く且つ撓みやすいものとしているため、下方に配置する分離膜用の散気管からエアを噴出し気泡が発生すると、濾過膜62は気泡との接触で揺れが生じ、懸濁成分による目詰まりの発生を抑制することができる。
【0042】
前記のように分離膜を平膜とした場合にも、第一実施形態と同様に、オゾン発生器から平膜にオゾンを供給しているため、平膜表面に付着するフロックの微生物を殺菌できると共に有機物を分解でき、目詰まりの発生を低減でき、長期間安定して原水の消化処理を行うことができる。
【0043】
なお、本発明の膜分離活性汚泥処理装置は前記実施形態に限定されず、分離膜モジュールの構成は第一、第二実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0044】
1 曝気槽
2 仕切壁
3 流通路
4 生物処理部
5 分離膜処理部
6 生物膜
7 中空糸
8 中空糸膜分離モジュール
10 オゾン発生器
12、14 散気管
30 自動洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曝気槽内に生物処理部と分離膜処理部とを下部の流通路を介して連通した状態で仕切壁で仕切り、
前記分離膜処理部内には、四弗化エチレン樹脂製の分離膜からなる分離膜モジュールを吊設して浸漬し、該分離膜モジュールは吸引濾過式で前記生物処理部から被処理水を分離膜に吸引するものとし、かつ、該分離膜処理部では分離膜モジュールの下方にオゾン発生器を配置し、かつ、
前記分離膜モジュールに自動洗浄装置を付設し、薬液と逆洗水で分離膜を洗浄することを特徴とする膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項2】
前記四弗化エチレン製の分離膜は単層または複層の中空糸とし、前記分離膜モジュールは中空糸膜モジュールとし、
または、前記四弗化エチレン製の分離膜は単層または複層の平膜とし、前記分離膜モジュールは平膜モジュールとしている請求項1に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項3】
前記分離膜は、平均孔径が0.01μm以上、平均膜厚が10μm以上、JIS K 7113に規定の引張強度が10N/mm以上、pH10以上の強アルカリ洗浄液およびpH3以下の強酸性洗浄液に対する耐性を有する延伸PTFE多孔質体からなる請求項2に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項4】
前記生物処理部に四弗化エチレン樹脂からなる多孔質体を担体に微生物を付着した生物膜を配置している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項5】
前記自動洗浄装置から洗浄時に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、これらの混合液からなる薬液を洗浄液として用い、逆洗水と、クロスフローで前記薬液とを、交互に前記分離膜に供給している請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項6】
前記生物処理部と分離膜処理部とにはそれぞれ独立した散気管を配管し、これら散気管からの散気を個別制御している請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の膜分離活性汚泥処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−253354(P2010−253354A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104463(P2009−104463)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】