説明

膜張設構造

【課題】膜部材の設置作業が容易な膜張設構造を提供することを課題とする。
【解決手段】膜張設構造1は、第一筒部20を有する第一ケース2と、第二筒部30を有する第二ケース3と、第一筒部20と第二筒部30との間に介装される膜部材4と、を備える。膜部材4は、張力Tを加えられた状態で、第一筒部20と第二筒部30との間に取り付けられる。取付後において、膜部材4は、第一筒部20と第二筒部30との間に区画される挟持部Aで挟持される被挟持部Bと、被挟持部Bの外側に配置される非延伸部Cと、被挟持部Bの内側に配置され自然状態に対して面方向に延伸された延伸状態の延伸部Dと、を備える。非延伸部Cが挟持部Aを外側から内側に通過しにくいことを利用して、膜部材4が第一筒部20と第二筒部30との間から脱落するのを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ダイヤフラムアクチュエータやダイヤフラムポンプの膜部材などの固定に用いられる膜張設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ダイヤフラムアクチュエータには、駆動力および変位を出力するために、膜部材が利用されている。すなわち、膜部材と出力軸とを連結し、当該膜部材を変形させることにより、出力軸から駆動力および変位を出力している。また、ダイヤフラムポンプには、ポンプ室の容積を変化させるために、膜部材が利用されている。すなわち、ポンプ室を区画する壁部の一部を膜部材により形成し、当該膜部材を変形させることにより、ポンプ室の容積を変化させている。つまり、ポンプ室の流体を圧送している。
【特許文献1】特開2001−263486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、ダイヤフラムアクチュエータやダイヤフラムポンプは、膜部材の変形を利用して、駆動力および変位の出力や流体の圧送を行っている。このため、ダイヤフラムアクチュエータやダイヤフラムポンプの筐体に膜部材を取り付ける場合は、膜部材の変形を確保しつつ、膜部材を筐体にしっかりと設置する必要がある。
【0004】
筐体に対する膜部材の設置には、クランプリングや接着剤(特許文献1の[図10]参照)などが用いられている。しかしながら、クランプリングや接着剤を用いる場合、膜部材の設置作業が煩雑である。すなわち、クランプリングを用いる場合は、まず筐体の外周面に膜部材の周縁部を配置し、次いで外側から膜部材の周縁部をクランプリングで締め付ける必要がある。また、接着剤を用いる場合は、予め筐体あるいは膜部材に、接着剤を塗布しておく必要がある。特に、近年においては、膜部材を、自然状態(無荷重状態)に対して面方向に延伸された延伸状態で、筐体に設置したいとの要請がある。この場合、膜部材の設置作業の間、延伸状態を保持しておく必要がある。このため、さらに膜部材の設置作業が繁雑になる。
【0005】
本発明の膜張設構造は、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、膜部材の設置作業が容易な膜張設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するため、本発明の膜張設構造は、第一筒部を有する第一ケースと、第二筒部を有する第二ケースと、該第一筒部と該第二筒部との間に介装される弾性を有する膜部材と、を備えてなる膜張設構造であって、前記膜部材は、張力を加えられた状態で、前記第一筒部と前記第二筒部との間に取り付けられ、該張力が解除される取付後において、該膜部材は、該第一筒部と該第二筒部との間に区画される挟持部で該第一筒部と該第二筒部とにより挟持される被挟持部と、取付前の該膜部材において該被挟持部の外側に配置される非延伸部と、取付前の該膜部材において該被挟持部の内側に配置され自然状態に対して面方向に延伸された延伸状態の延伸部と、を備え、該非延伸部の膜厚は、該挟持部の隙間幅よりも大きく、該非延伸部が該挟持部を外側から内側に通過しにくいことを利用して、該膜部材が該第一筒部と該第二筒部との間から脱落するのを抑制することを特徴とする(請求項1に対応)。
【0007】
本発明の膜張設構造の膜部材は、張力を加えられた状態で、第一筒部と第二筒部との間に取り付けられる。すなわち、膜部材は、自然状態(無荷重状態)に対して、面方向に延伸された延伸状態で、取り付けられる。取付後に膜部材から張力を解除すると、被挟持部の外側(取付前の膜部材における外側)の部分が、自身の有する弾性復元力により、延伸状態から自然状態に向かう方向に、復帰する(必ずしも、自然状態まで復帰しなくてもよい)。当該復帰により、被挟持部の外側に、非延伸部が配置される。一方、取付後に膜部材から張力を解放しても、被挟持部の内側(取付前の膜部材における内側)の部分の延伸状態は、引き続き保持される。当該保持により、被挟持部の内側に、延伸部が配置される。
【0008】
非延伸部の膜厚は、挟持部の隙間幅よりも大きい。このため、仮に、被挟持部を介して、延伸部の弾性復元力が、非延伸部に作用しても、つまり非延伸部が内側に引っ張られても、非延伸部は挟持部を通過しにくい。したがって、膜部材が、第一筒部と第二筒部との間から脱落するのを抑制することができる。また、被挟持部は、第一筒部と第二筒部とに、圧接している。このため、被挟持部と、第一筒部および第二筒部と、の間の摩擦抵抗が大きい。この点においても、膜部材が、第一筒部と第二筒部との間から脱落するのを抑制することができる。また、膜部材を設置する際、敢えて、クランプリングや接着剤を使用する必要がない。このため、膜部材の設置作業が容易である。
【0009】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記挟持部は、前記第一筒部の第一内周面と、前記第二筒部の第二外周面と、の間に区画されており、該第一内周面は、第一基部と、該第一基部に対して径方向内側に突出する第一突出部と、を有しており、該第二外周面は、該第一突出部に径方向に対向する第二基部と、該第二基部に対して径方向外側に突出し該第一基部に径方向に対向する第二突出部と、を有している構成とする方がよい(請求項2に対応)。
【0010】
本構成によると、第一突出部と第二基部とが径方向に対向している。並びに、第二突出部と第一基部とが径方向に対向している。被挟持部は、第一突出部と第二基部との隙間と、第二突出部と第一基部との隙間と、に径方向に湾曲しながら延在している。本構成によると、さらに、膜部材が、第一筒部と第二筒部との間から脱落するのを抑制することができる。
【0011】
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、前記第一突出部と、前記被挟持部のうち前記第二突出部の径方向外側に配置される部分と、が軸方向に係合し、該第二突出部と、該被挟持部のうち該第一突出部の径方向内側に配置される部分と、が軸方向に係合している構成とする方がよい(請求項3に対応)。本構成によると、第一筒部と第二筒部とが軸方向に分離するのを抑制することができる。
【0012】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、さらに、前記膜部材に接続される出力部材を有し、該膜部材は、複数の電極膜と、複数の該電極膜間に介在し複数の該電極膜間の印加電圧の変化に応じて面方向に伸縮する誘電体エラストマー製の誘電膜と、を有し、該誘電膜が伸縮することを利用して、該膜部材を該面方向に対して交差する往復動方向に変形させ、該出力部材を移動させ、駆動力を取り出す構成とする方がよい。
【0013】
つまり、本構成は、本発明の膜張設構造を、ダイヤフラムアクチュエータとして用いるものである。本構成によると、第一筒部と第二筒部との間から膜部材が脱落しにくいダイヤフラムアクチュエータを提供することができる。また、組付作業が容易なダイヤフラムアクチュエータを提供することができる。
【0014】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記第一筒部および前記第二筒部のうち少なくとも一方と、前記膜部材と、の間には、流体が出入りするポンプ室が区画されており、該膜部材は、複数の電極膜と、複数の該電極膜間に介在し複数の該電極膜間の印加電圧の変化に応じて面方向に伸縮する誘電体エラストマー製の誘電膜と、を有し、該誘電膜が伸縮することを利用して、該膜部材を該面方向に対して交差する往復動方向に変形させ、該ポンプ室の容積を変化させ、流体を圧送する構成とする方がよい。
【0015】
つまり、本構成は、本発明の膜張設構造を、ダイヤフラムポンプとして用いるものである。本構成によると、第一筒部と第二筒部との間から膜部材が脱落しにくいダイヤフラムポンプを提供することができる。また、組付作業が容易なダイヤフラムポンプを提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、膜部材の設置作業が容易な膜張設構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の膜張設構造の実施の形態について説明する。
【0018】
[膜張設構造の構成]
まず、本実施形態の膜張設構造の構成について説明する。図1に、本実施形態の膜張設構造の斜視図を示す。図2に、同膜張設構造の分解斜視図を示す。図3に、同膜張設構造の軸方向断面図を示す。図4に、図3の枠IV内の拡大図を示す。図1〜図4に示すように、本実施形態の膜張設構造1は、第一ケース2と、第二ケース3と、膜部材4と、を備えている。
【0019】
第一ケース2は、アルミニウム製であって、第一筒部20を有している。第一筒部20は、短軸円筒状を呈している。第一筒部20の第一内周面200は、第一基部200aと、第一突出部200bと、を備えている。第一基部200aは、第一内周面200の周方向に延在している。第一基部200aは、円周面状を呈している。第一突出部200bは、第一基部200aの下方に配置されている。第一突出部200bは、第一内周面200の周方向に延在している。第一突出部200bは、円周面状を呈している。第一突出部200bは、第一基部200aに対して径方向内側に突出している。
【0020】
第二ケース3は、アルミニウム製であって、第二筒部30を有している。第二筒部30は、短軸円筒状を呈している。第二筒部30の最大外径(後述する第二突出部300bの外径)は、第一筒部20の最小内径(第一突出部200bの内径)と、略一致している。第二筒部30は、第一筒部20の径方向内側に配置されている。第二筒部30の第二外周面300は、第二基部300aと、第二突出部300bと、を備えている。第二基部300aは、第二外周面300の周方向に延在している。第二基部300aは、円周面状を呈している。第二基部300aは、第一突出部200bの径方向内側に配置されている。第二突出部300bは、第二基部300aの上方に配置されている。第二突出部300bは、第二外周面300の周方向に延在している。第二突出部300bは、円周面状を呈している。第二突出部300bは、第二基部300aに対して径方向外側に突出している。第二突出部300bは、第一基部200aの径方向内側に配置されている。
【0021】
第一筒部20と第二筒部30とは、軸方向に所定量だけずれて配置されている。第一筒部20と第二筒部30とが、径方向から見て重複する部分には、挟持部Aが配置されている。挟持部Aは、第一基部200aと第二突出部300bとの隙間、第一突出部200bと第二基部300aとの隙間を含んでいる。挟持部Aは、上から下に向かって、ジグザグ状に延在している。具体的には、挟持部Aは、図4に示すように、まず径方向外側に膨出し、次いで径方向内側に没入している。
【0022】
膜部材4は、弾性を有しており、円形膜状を呈している。膜部材4は、所定の張力が加えられた状態で、第一筒部20と第二筒部30との間に介装されている。図5に、図4の枠V内の拡大図を示す。図5に示すように、膜部材4は、伸縮膜40と、保護膜41と、を備えている。伸縮膜40は、五層の誘電膜400と、六層の電極膜401と、を備えている。誘電膜400は、ニトリルゴム製である。電極膜401は、アクリルゴム製である。電極膜401と誘電膜400とは、最上層および最下層が電極膜401になるように、交互に積層されている。保護膜41は、ニトリルゴム製である。保護膜41は、最下層の電極膜401の下面に接合されている。
【0023】
図3に戻って、膜部材4は、被挟持部Bと、非延伸部Cと、延伸部Dと、を備えている。被挟持部Bは、挟持部Aに配置されている。具体的には、図4に示すように、被挟持部Bは、第一基部200aと第二突出部300bとにより、径方向から挟持されている。並びに、被挟持部Bは、第一突出部200bと第二基部300aとにより、径方向から挟持されている。被挟持部Bの膜厚は、自然状態の膜部材4の膜厚よりも、薄い。被挟持部Bは、径方向から圧縮された状態で、挟持部Aに配置されている。被挟持部Bは、挟持部Aの形状に沿って、上から下に向かって、ジグザグ状に延在している。具体的には、被挟持部Bは、図4に示すように、まず径方向外側に膨出し、次いで径方向内側に没入している。
【0024】
非延伸部Cは、被挟持部Bの外側(組付前の膜部材4(図2参照)における径方向外側)に配置されている。非延伸部Cは、第一突出部200bの下方に配置されている。このため、非延伸部Cは、第一突出部200bにより、径方向外側から規制されていない。したがって、非延伸部Cは、自然状態に近い状態である。非延伸部Cの膜厚は、被挟持部Bの膜厚(つまり挟持部Aの隙間幅)よりも、厚い。
【0025】
延伸部Dは、被挟持部Bの内側(組付前の膜部材4(図2参照)における径方向内側)に配置されている。延伸部Dは、第二筒部30の上端開口を覆っている。後述する膜張設構造1の組付の際、膜部材4には、径方向外側に、所定の張力T(図2参照)が加えられる。組付後においても、延伸部Dには、当該所定の張力Tが残留している。このため、延伸部Dは、自然状態に対して面方向(水平方向)に延伸された、延伸状態である。
【0026】
[膜張設構造の組付方法]
次に、本実施形態の膜張設構造1の組付方法について説明する。本実施形態の膜張設構造1の組付方法は、膜部材張設工程と、ケース合体工程と、を有している。図6に、本実施形態の膜張設構造の膜部材張設工程後であってケース合体工程前の軸方向断面図を示す。図7に、同膜張設構造のケース合体工程後の被挟持部および非延伸部付近の拡大軸方向断面図を示す。なお、図7に示す部位は、図4に示す部位に、対応している。
【0027】
膜部材張設工程においては、膜部材4を、径方向外側から所定の張力Tで引っ張りながら、第二筒部30の上端開口に被せる。この際、膜部材4の周縁部を、第二筒部30の第二基部300aの下方まで、引き延ばす。
【0028】
ケース合体工程においては、膜部材4が配置された第二ケース3と、第一ケース2と、を合体させる。なお、膜部材4には、膜部材張設工程から引き続き、張力Tが加えられている。具体的には、第一筒部20の径方向内側に、第二筒部30を、第一筒部20の下方開口から挿入する。そして、膜部材4を介して、第一基部200aと第二突出部300bとを係合させる。並びに、膜部材4を介して、第一突出部200bと第二基部300aとを係合させる。第一筒部20と第二筒部30との間には、挟持部Aが形成される。
【0029】
第二ケース3と第一ケース2との合体後においては、膜部材4から、張力Tを解除する。図7に示すように、張力Tを解除すると、膜部材4の周縁部は、自身の有する弾性復元力により、自然状態に近い状態まで復帰する。すなわち、膜部材4の周縁部は、径方向内側に収縮する。並びに、膜部材4の周縁部の膜厚は、厚くなる。これら一連の膜部材4の周縁部の変形により、非延伸部Cが形成される。
【0030】
膜部材4のうち、挟持部Aに配置される部分は、第一基部200aと第二突出部300bとにより挟持されている。並びに、膜部材4のうち、挟持部Aに配置される部分は、第一突出部200bと第二基部300aとにより挟持されている。このため、張力Tを解除しても、膜部材4のうち、挟持部Aに配置される部分の膜厚は、挟持部Aの隙間幅までしか、厚くならない。したがって、張力Tを解除すると、膜部材4のうち、挟持部Aに配置される部分は、自身の有する弾性復元力により、第一基部200a、第二突出部300b、第一突出部200b、第二基部300aに圧接する。膜部材4のうち、挟持部Aに配置される部分により、被挟持部Bが形成される。
【0031】
膜部材4のうち、挟持部Aの内側に配置される部分の変形は、張力Tが解除された後においても、被挟持部Bにより規制されている。このため、挟持部Aの内側に配置される部分は、張力Tによる延伸状態を、引き続き保持している。膜部材4のうち、挟持部Aの内側に配置される部分により、延伸部Dが形成される。このようにして、本実施形態の膜張設構造1は組み付けられる。
【0032】
[作用効果]
次に、本実施形態の膜張設構造1の作用効果について説明する。本実施形態の膜張設構造1によると、非延伸部Cの膜厚は、挟持部Aの隙間幅よりも大きい。このため、被挟持部Bを介して、延伸部Dの弾性復元力が、非延伸部Cに作用しても、つまり非延伸部Cが内側に引っ張られても、非延伸部Cは挟持部Aを通過しにくい。したがって、膜部材4が、第一筒部20と第二筒部30との間から脱落するのを抑制することができる。また、被挟持部Bは、第一筒部20と第二筒部30とに、圧接している。このため、被挟持部Bと、第一筒部20および第二筒部30と、の間の摩擦抵抗が大きい。この点においても、膜部材4が、第一筒部20と第二筒部30との間から脱落するのを抑制することができる。また、膜部材4を設置する際、敢えて、クランプリングや接着剤を使用する必要がない。このため、膜部材4の設置作業が容易である。
【0033】
また、本実施形態の膜張設構造1によると、被挟持部Bは、第一突出部200bと第二基部300aとの隙間と、第二突出部300bと第一基部200aとの隙間と、に径方向に湾曲しながら延在している。この点においても、膜部材4が、第一筒部20と第二筒部30との間から脱落するのを抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態の膜張設構造1によると、第一筒部20の径方向内側に第二筒部30が収容されている。このため、第一筒部20と第二筒部30とが径方向に分離しにくい。また、本実施形態の膜張設構造1によると、第一突出部200bと、被挟持部Bのうち第二突出部300bの径方向外側に配置される部分と、が軸方向に係合している。並びに、第二突出部300bと、被挟持部Bのうち第一突出部200bの径方向内側に配置される部分と、が軸方向に係合している。このため、第一筒部20と第二筒部30とが軸方向に分離しにくい。
【0035】
また、本実施形態の膜張設構造1の組付方法によると、まず第二筒部30に膜部材4を被せ(膜部材張設工程)、次に第二ケース3と第一ケース2とを合体させるだけで(ケース合体工程)、延伸状態の膜部材4を有する膜張設構造1を組み付けることができる。すなわち、膜部材4の設置と第一ケース2と第二ケース3との合体とを、同時に行うことができる。この点においても、膜部材4の設置作業が容易である。
【0036】
[その他]
以上、本発明の膜張設構造の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0037】
例えば、上記実施形態の膜張設構造1においては、第一内周面200に、単一の第一基部200aと、単一の第一突出部200bと、を配置した。並びに、第二外周面300に、単一の第二基部300aと、単一の第二突出部300bと、を配置した。しかしながら、第一基部200a、第一突出部200b、第二基部300a、第二突出部300bは、各々、複数配置してもよい。こうすると、被挟持部Bが、さらにジグザグ状に延在することになる。したがって、さらに、膜部材4が、第一筒部20と第二筒部30との間から脱落するのを抑制することができる。並びに、さらに、第一筒部20と第二筒部30とが軸方向に分離しにくくなる。また、上記実施形態の膜張設構造1においては、上下方向(軸方向)に被挟持部Bを延在させたが、水平方向(径方向)に被挟持部Bを延在させてもよい。
【0038】
本実施形態の膜張設構造1の膜部材4は、電圧を印加することにより、面方向に伸張可能である。すなわち、任意の誘電膜400を介して上下方向に隣り合う一対の電極膜401間に電位差を設定するように、六層の電極膜401に電圧を印加する。電圧を印加すると、任意の誘電膜400を介して上下方向に隣り合う一対の電極膜401間の、静電引力が大きくなる。このため、誘電膜400は膜厚方向(上下方向)から圧縮される。したがって、誘電膜400の膜厚は小さくなる。並びに、膜厚が小さくなる分、誘電膜400は、面方向に伸張する。ここで、膜部材4の被挟持部Bは、挟持部Aにおいて、固定されている。このため、誘電膜400は、面方向に伸張した分だけ、弛む。反対に、電圧の印加を解除すると、誘電膜400の有する弾性復元力により、誘電膜400の弛みが取れる。当該弛みを膜部材4の軸方向の変位に変換することにより、本実施形態の膜張設構造1は、ダイヤフラムアクチュエータやダイヤフラムポンプとして具現化することも可能である。
【0039】
ダイヤフラムアクチュエータとして具現化する場合は、膜部材4に出力部材を連結する。そして、膜部材4の印加電圧を変化させることにより、膜部材4を変形させ、出力部材を変位させる。ダイヤフラムポンプとして具現化する場合は、第一筒部20および第二筒部30のうち少なくとも一方と、膜部材4と、の間に、流体が出入りするポンプ室を区画する。そして、膜部材4の印加電圧を変化させることにより、膜部材4を変形させ、ポンプ室の容量を増減させ、流体を圧送する。なお、膜部材4の変形を補助するために、コイルスプリングなどの付勢部材を、ダイヤフラムアクチュエータやダイヤフラムポンプに配置してもよい。また、本実施形態の膜張設構造1は、スピーカーの振動膜を取り付けるための構造として具現化することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態である膜張設構造の斜視図である。
【図2】同膜張設構造の分解斜視図である。
【図3】同膜張設構造の軸方向断面図である。
【図4】図3の枠IV内の拡大図である。
【図5】図4の枠V内の拡大図である。
【図6】同膜張設構造の膜部材張設工程後であってケース合体工程前の軸方向断面図である。
【図7】同膜張設構造のケース合体工程後の被挟持部および非延伸部付近の拡大軸方向断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1:膜張設構造、2:第一ケース、3:第二ケース、4:膜部材、20:第一筒部、30:第二筒部、40:伸縮膜、41:保護膜、200:第一内周面、200a:第一基部、200b:第一突出部、300:第二外周面、300a:第二基部、300b:第二突出部、400:誘電膜、401:電極膜、A:挟持部、B:被挟持部、C:非延伸部、D:延伸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一筒部を有する第一ケースと、第二筒部を有する第二ケースと、該第一筒部と該第二筒部との間に介装される弾性を有する膜部材と、を備えてなる膜張設構造であって、
前記膜部材は、張力を加えられた状態で、前記第一筒部と前記第二筒部との間に取り付けられ、
該張力が解除される取付後において、該膜部材は、該第一筒部と該第二筒部との間に区画される挟持部で該第一筒部と該第二筒部とにより挟持される被挟持部と、取付前の該膜部材において該被挟持部の外側に配置される非延伸部と、取付前の該膜部材において該被挟持部の内側に配置され自然状態に対して面方向に延伸された延伸状態の延伸部と、を備え、
該非延伸部の膜厚は、該挟持部の隙間幅よりも大きく、
該非延伸部が該挟持部を外側から内側に通過しにくいことを利用して、該膜部材が該第一筒部と該第二筒部との間から脱落するのを抑制することを特徴とする膜張設構造。
【請求項2】
前記挟持部は、前記第一筒部の第一内周面と、前記第二筒部の第二外周面と、の間に区画されており、
該第一内周面は、第一基部と、該第一基部に対して径方向内側に突出する第一突出部と、を有しており、
該第二外周面は、該第一突出部に径方向に対向する第二基部と、該第二基部に対して径方向外側に突出し該第一基部に径方向に対向する第二突出部と、を有している請求項1に記載の膜張設構造。
【請求項3】
前記第一突出部と、前記被挟持部のうち前記第二突出部の径方向外側に配置される部分と、が軸方向に係合し、
該第二突出部と、該被挟持部のうち該第一突出部の径方向内側に配置される部分と、が軸方向に係合している請求項2に記載の膜張設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−127266(P2010−127266A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306565(P2008−306565)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】