説明

膜形成用組成物、絶縁膜、および電子デバイス

【課題】本発明は、低誘電性、高耐熱性、かつ優れた機械強度を達成できる膜を形成するための架橋性官能基を有する化合物を含む膜形成用組成物、この膜形成用組成物を用いて得られる膜、および絶縁膜、並びに、この絶縁膜を有する電子デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物を含む膜形成用組成物。
【化1】


(一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。RとRは、互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは、水素原子または置換基を表す。*は、結合位置を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成用組成物、これを用いて得られる膜および絶縁膜、さらにそれを有する電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野においては、高集積化、多機能化、高性能化の進行に伴い、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力や遅延時間の増大を招いている。中でも、遅延時間の増大は、デバイスの信号スピードの低下やクロストークの発生の大きな要因となるため、この遅延時間を減少させてデバイスの高速化を図るべく、寄生抵抗や寄生容量の低減が求められている。この寄生容量を低減するための具体策の一つとして、配線の周辺を低誘電性の層間絶縁膜で被覆することが試みられている。また、層間絶縁膜には、実装基板製造時の薄膜形成工程やチップ接続、ピン付け等の後工程に耐え得る優れた耐熱性やウェットプロセスに耐え得る耐薬品性が求められている。さらに、近年は、Al配線から低抵抗のCu配線が導入されつつあり、これに伴い、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)による平坦化が一般的となっており、このプロセスに耐え得る高い機械強度が求められている。
【0003】
そこで、低誘電性、耐熱性の付与、および機械強度の向上のために、架橋性官能基として炭素−炭素三重結合を有する化合物を絶縁膜組成物に含有させ、絶縁膜中に架橋構造を形成させる方法が提案されている(特許文献1−3)。
【0004】
【特許文献1】特表2004−504424号公報
【特許文献2】特表2004−504455号公報
【特許文献3】特開2005−60626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、これら炭素―炭素三重結合は、主にパラジウムや銅といった金属触媒を用いて導入する必要があった。発明者らが従来技術について鋭意検討した結果、このような官能基を使用する場合、特に片末端が水素原子である炭素−炭素三重結合の場合、金属触媒が官能基に配位して除去しづらくなっており、結果として得られる絶縁膜の絶縁性能が低下する場合があることを見出した。
【0006】
また、炭素−炭素三重結合末端の水素原子をメチル基などの有機基、トリメチルシリル基やフェニル基で塞いだまま用いる場合、金属触媒の除去能の向上は期待できるが、架橋反応が進行しにくく狙い通りの性能に達しない場合があった。そのため、架橋反応を阻害せず、かつ絶縁膜としての絶縁性能、耐熱性、機械強度を向上させることができる架橋性官能基を有する化合物の開発が求められていた。
【0007】
そこで、本発明は、低誘電性、高耐熱性、かつ優れた機械強度を達成できる膜を形成するための架橋性官能基を有する化合物を含む膜形成用組成物、この膜形成用組成物を用いて得られる膜、および絶縁膜、並びに、この絶縁膜を有する電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題が下記の<1>〜<10>の構成により解決されることを見出した。
【0009】
<1> 一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物を含む膜形成用組成物。
【化1】


(一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。RとRは、互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは、水素原子または置換基を表す。*は、結合位置を表す。)
<2> 前記一般式(1)中、RおよびRが、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基であり、Rが水素原子である<1>に記載の膜形成用組成物。
<3> 前記一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物が、一般式(A)〜一般式(C)のいずれかで表される化合物である<1>または<2>に記載の膜形成用組成物。
【化2】


(一般式(A)中、Xは、一般式(1)で表される部分構造を表す。Yは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、シクロヘキサン環、フルオレン環、アダマンタン環、ジアマンタン環、またはビアダマンタン環を表す。Lは、−CONH−、−COO−、−O−、アリーレン基、アルキレン基または単結合を表す。Lは、−CONH−、−COO−、−O−、2価または3価の芳香族炭化水素基、アルキレン基、または単結合を表す。mは、1〜6の整数を表す。nは、1または2を表す。)
【化3】


(一般式(B)中、Xは、一般式(1)で表される部分構造を表す。Lは、−CONH−、−COO−、−O−、アリーレン基、アルキレン基または単結合を表す。Lは、−CONH−、−COO−、−O−、2価または3価の芳香族炭化水素基、アルキレン基、または単結合を表す。nは、1または2の整数を表す。pは、0〜3の整数を表す。)
【化4】


(一般式(C)中、Xは、一般式(1)で表される部分構造を表す。LおよびLは、それぞれ独立に、−CONH−、−COO−、−O−、アリーレン基、アルキレン基または単結合を表す。Wは、−COOHを表す。q、sおよびtは、それぞれ独立に、0または1の整数を表す。ただし、sが1の時、Lは−CONH−を表し、tが1の時、Lは−CONH−を表す。)
<4> さらに、カゴ型構造を有する化合物および/または該化合物の重合体を含む<1>〜<3>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
<5> 前記カゴ型構造を有する化合物が、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を少なくとも一つ有する<4>に記載の膜形成用組成物。
<6> 前記カゴ型構造が、アダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタンおよびテトラマンタンよりなる群から選択されるいずれかの構造である<4>または<5>に記載の膜形成用組成物。
<7> 前記カゴ型構造を有する化合物が、一般式(2)〜一般式(7)のいずれかで表される化合物である<4>〜<6>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【化5】


(一般式(2)〜一般式(7)中、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基またはカルバモイル基を表す。Y〜Yは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基またはシリル基を表す。mおよびmは、それぞれ独立に、1〜16の整数を表す。nおよびnは、それぞれ独立に、0〜15の整数を表す。m、m、m、およびmは、それぞれ独立に、1〜15の整数を表す。n、n、n、およびnは、それぞれ独立に、0〜14の整数を表す。mおよびmは、それぞれ独立に、1〜20の整数を表す。nおよびnは、それぞれ独立に、0〜19の整数を表す。)
<8> 絶縁膜を形成するために用いられる<1>〜<7>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
<9> <8>に記載の膜形成用組成物を用いて得られる絶縁膜。
<10> <9>に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低誘電性、高耐熱性、かつ優れた機械強度を達成できる膜を形成するための架橋性官能基を有する化合物を含む膜形成用組成物、この膜形成用組成物を用いて得られる膜、および絶縁膜、並びに、この絶縁膜を有する電子デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明に係る膜形成用組成物、この膜形成用組成物を用いて得られる膜および絶縁膜、並びに、この絶縁膜を有する電子デバイスについて説明する。
【0012】
<一般式(1)で表される部分構造を少なくとも一つ有する化合物>
まず、膜形成用組成物に含まれる一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物について詳述する。
【0013】
【化6】


(一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。RとRは、互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは、水素原子または置換基を表す。*は、結合位置を表す。)
【0014】
一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基としては、目的とする製品の品質に悪影響を与えないものであれば、特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、炭素数1〜10の直鎖、分岐、または環状のアルキル基(メチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル基、プロペニル基等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基、t−ブチルエチニル基等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等)、炭素数2〜10のアシル基(ベンゾイル基等)、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基等)、炭素数1〜10のカルバモイル基(N,N−ジエチルカルバモイル基等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシ基等)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(フェニルスルホニル基等)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリビニルシリル基等)等が挙げられる。
好ましくは、水素原子、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状のアルキル基(メチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル基、プロペニル基等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基、t−ブチルエチニル基等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等)、シリル基(トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリビニルシリル基等)であり、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状のアルキル基(メチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル基、プロペニル基等)、水素原子であり、さらに好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、水素原子であり、特に好ましくは、プロピル基、エチル基、メチル基、水素原子である。これらの置換基はさらに別の置換基で置換されていてもよい。また、RとRは互いに結合して環構造を形成してもよく、好ましくはシクロヘキサン環である。
【0015】
一般式(1)中、Rは、水素原子、または置換基を表す。置換基としては、目的とする製品の品質に悪影響を与えないものであれば、特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、炭素数1〜10の直鎖、分岐、または環状のアルキル基(メチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル基、プロペニル基等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基、t−ブチルエチニル基等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等)、炭素数2〜10のアシル基(ベンゾイル基等)、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基等)、炭素数1〜10のカルバモイル基(N,N−ジエチルカルバモイル基等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシ基等)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(フェニルスルホニル基等)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリビニルシリル基等)等が挙げられる。
好ましくは炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状のアルキル基(メチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル基、プロペニル基等)であり、より好ましくは、プロピル基、エチル基、メチル基、水素原子である。さらに好ましくは、水素原子である。水素原子の場合、分子間で水素結合できるために化合物の分子量が300程度でも、膜製造時のキュア温度に耐えうるほど沸点が高くなる。
【0016】
一般式(1)で表される部分構造の好ましい実施態様としては、以下の一般式(1−1)〜一般式(1−4)で表される基が挙げられる。これらの基を使用した場合、溶媒への溶解性が高く取り扱いやすく、かつ、得られる膜の耐熱性、低誘電性がより優れる。
【0017】
【化7】

【0018】
上述の化合物は、一般式(1)で表される部分構造は少なくとも1つ有しており、得られる膜の耐熱性、低誘電性がより優れる点で、2個以上が好ましく、より具体的には2〜4個が好ましい。
【0019】
一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物の分子量は、好ましくは100〜100000、より好ましくは200〜50000、特に好ましくは300〜30000である。上記範囲内であれば、溶剤溶解性およびろ過性の点で好ましい。
【0020】
一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物は、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)を含む化合物であることが好ましい。この中でも、より好ましくは、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アリール基を含む化合物であり、さらに好ましくはアリール基を含む化合物である。
【0021】
一般式(1)で表される部分構造は、加熱処理を施すことにより、その一部が脱離し、エチニル基を生成する。この生成したエチニル基は、上述のように架橋性官能基として作用し、硬膜時に架橋構造の形成に寄与する。この部分構造(保護基)により、炭素−炭素三重結合と金属触媒との配位が抑制され、さらには化合物の保存安定性も向上する。
【0022】
一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物の好ましい実施態様として、以下の一般式(A)〜一般式(C)で表される化合物が挙げられる。
【0023】
【化8】


(一般式(A)中、Xは、一般式(1)で表される部分構造を表す。Yは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、シクロヘキサン環、フルオレン環、アダマンタン環、ジアマンタン環、またはビアダマンタン環を表す。Lは、−CONH−、−COO−、−O−、アリーレン基、アルキレン基、または単結合を表す。Lは、−CONH−、−COO−、−O−、2価または3価の芳香族炭化水素基、アルキレン基、または単結合を表す。mは、1〜6の整数を表す。nは、1または2を表す。)
【化9】


(一般式(B)中、Xは、一般式(1)で表される部分構造を表す。Lは、−CONH−、−COO−、−O−、アリーレン基、アルキレン基、または単結合を表す。Lは、−CONH−、−COO−、−O−、2価または3価の芳香族炭化水素基、アルキレン基、または単結合を表す。nは、1または2の整数を表す。pは、0〜3の整数を表す。)
【化10】


(一般式(C)中、Xは、一般式(1)で表される部分構造を表す。LおよびLは、それぞれ独立に、−CONH−、−COO−、−O−、アリーレン基、アルキレン基または単結合を表す。Wは、−COOHを表す。q、sおよびtは、それぞれ独立に、0または1の整数を表す。ただし、sが1の時、Lは−CONH−を表し、tが1の時、Lは−CONH−を表す。)
【0024】
一般式(A)中、Xは、一般式(1)で表される部分構造を表す。Xの好ましい態様としては、上述の一般式(1−1)〜(1−4)で表される基が挙げられる。
【0025】
【化11】

【0026】
一般式(A)中、Yは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、シクロヘキサン環、フルオレン環、アダマンタン環、ジアマンタン環、またはビアダマンタン環などのm価の環状基を表す。なかでも、合成が簡便であるという点から、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、アダマンタン環、ジアマンタン環が好ましい。上述の環状基を表すY上でのXを含む基の結合位置は、特に限定されない。
【0027】
一般式(A)中、Lは、−CONH−、−COO−、−O−、アリーレン基、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基)または単結合を表す。なかでも、誘電率が低く、耐熱性が優れるという点で、アリーレン基、アルキレン基が好ましい。なお、単結合とは、YとLとが直接結合することを意味する。
【0028】
一般式(A)中、Lは、−CONH−、−COO−、−O−、2価または3価の芳香族炭化水素基、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基)または単結合を表す。芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環基が挙げられる。より具体的には、2価の芳香族炭化水素基としてアリーレン基などが挙げられる。なかでも、誘電率が低く、耐熱性が優れるという点で、アリーレン基、アルキレン基が好ましい。
【0029】
一般式(A)中、mは、1〜6の整数を表す。なかでも、誘電率が低く、耐熱性が優れるという点で、2〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。なお、mが2以上の場合は、L、L、およびXを含む基は同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
一般式(A)中、nは、1または2を表す。なかでも、誘電率がより低いという点で、1がより好ましい。なお、Lが3価の芳香族炭化水素基の場合に、nは2を表す。
【0031】
一般式(A)で表される化合物の好適な実施態様としては、以下の一般式(A−1)または一般式(A−2)で表される化合物が挙げられる。
【0032】
【化12】

【0033】
一般式(A−1)および一般式(A−2)中の、X、L、L、Xおよびmは、上述の一般式(A)中の各基の定義と同義である。
【0034】
一般式(B)中、Xは、一般式(1)で表される部分構造を表す。Xの好ましい態様としては、上述の一般式(1−1)〜(1−4)で表される基が挙げられる。
【0035】
一般式(B)中、Lは、−CONH−、−COO−、−O−、アリーレン基、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基)または単結合を表す。なかでも、誘電率が低く、耐熱性が優れるという点で、アリーレン基、アルキレン基が好ましい。なお、単結合とは、ベンゼン環とLとは直接結合することを意味する。
【0036】
一般式(B)中、Lは、−CONH−、−COO−、−O−、2価または3価の芳香族炭化水素基、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基)または単結合を表す。芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環基が挙げられる。より具体的には、2価の芳香族炭化水素基としてアリーレン基などが挙げられる。なかでも、誘電率が低く、耐熱性が優れるという点で、アリーレン基、アルキレン基が好ましい。
【0037】
一般式(B)中、nは、1または2の整数を表す。なかでも、誘電率がより低いという点で、1がより好ましい。なお、Lが3価の芳香族炭化水素基の場合に、nは2を表す。
【0038】
一般式(B)中、pは、0〜3の整数を表す。なかでも、耐熱性がより優れるという点で、0〜1が好ましく、0がより好ましい。pが2以下の場合、L、L、およびXを含む基は、同一であっても異なっていてもよい。L、L、およびXを含む基のベンゼン環上での結合位置は、特に制限されない。
【0039】
一般式(B)で表される化合物の好適な実施態様として、以下の一般式(B−1)で表される化合物が挙げられる。
【0040】
【化13】

【0041】
一般式(B−1)中の、X、n、LおよびLは、上述の一般式(B)中の各基の定義と同義である。
【0042】
一般式(C)中、Xは、一般式(1)で表される部分構造を表す。Xの好ましい態様としては、上述の一般式(1−1)〜(1−4)で表される基が挙げられる。
【0043】
一般式(C)中、LおよびLは、それぞれ独立に、−CONH−、−COO−、−O−、アリーレン基、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基)または単結合を表す。なかでも、誘電率が低く、耐熱性が優れるという点で、アリーレン基、アルキレン基が好ましい。LおよびLのベンゼン環上での結合位置は、特に制限されない。
【0044】
一般式(C)中、Wは、−COOHを表す。
【0045】
一般式(C)中、q、sおよびtは、それぞれ独立に、0または1の整数を表す。qは、好ましくは0を表す。また、sが1の時、Lは−CONH−を表し、sが0の時は、Lは上記のいずれの基でもよい。tが1の時、Lは−CONH−を表し、tが0の時、Lは上記のいずれの基でもよい。sが1の時は、WがLとの間でイミド環を形成できる。tが1の時は、WがLとの間でイミド環を形成できる。
【0046】
一般式(C)で表される化合物の好適な実施態様として、以下の一般式(C−1)で表される化合物が挙げられる。
【0047】
【化14】

【0048】
一般式(C−1)中のX、Lは、上述の一般式(C)中の各基の定義と同義である。
【0049】
以下に、本発明の一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物の具体例を記載するが、本発明はこれらに限定はされない。
【0050】
【化15】

【0051】
【化16】

【0052】
【化17】


【0053】
【化18】


【0054】
【化19】


【0055】
【化20】

【0056】
【化21】

【0057】
【化22】

【0058】
【化23】

【0059】
【化24】

【0060】
【化25】

【0061】
【化26】

【0062】
【化27】

【0063】
【化28】

【0064】
【化29】

【0065】
【化30】

【0066】
【化31】

【0067】
【化32】

【0068】
【化33】

【0069】
【化34】

【0070】
上述の一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有するの製造は、特にその製造ルートは限定されず、どの様な製造方法でも採用することが可能である。例えば、Tetrahedron Letters, 38, 1485 (1997)、 Organic Letters, 4, 3631 (2002)などを参照して、これらに記載される具体的条件を必要に応じ、調整することにより所望の化合物を合成することができる。また、市販品を用いてもよい。
【0071】
本発明の膜形成用組成物において、一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
本発明の膜形成用組成物において後述するカゴ型構造を有する化合物および/または該化合物の重合体を含有する場合、一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物としては、一般式(A−2)または一般式(B−1)で表される化合物が好ましい。上記化合物であれば、比較的誘電率の上昇度合いも小さく、カゴ型構造を有する化合物の機械強度および耐熱性がより向上する。
【0073】
<カゴ型構造を有する化合物>
本発明の膜形成用組成物は、カゴ型構造を有する化合物および/または該化合物の重合体を含有してもよい。上述の一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物とカゴ型構造を有する化合物および/または該化合物の重合体を併用することにより、誘電性を悪化させること無く、耐熱性および機械強度を向上させることができる。
本発明で述べる「カゴ型構造」とは、共有結合した原子で形成された複数の環によって容積が定まり、容積内に位置する点は環を通過せずには容積から離れることができないような分子を指す。例えば、アダマンタン構造はカゴ型構造と考えられる。対照的にノルボルナン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン)などの単一架橋を有する環状構造は、単一架橋した環状化合物の環が容積を定めないことから、カゴ型構造とは考えられない。
【0074】
本発明におけるカゴ型構造は、飽和、不飽和結合のいずれを含んでいてもよく、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を含んでもよいが、低誘電率の見地から飽和炭化水素が好ましい。
【0075】
本発明におけるカゴ型構造は、好ましくはアダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン又はドデカヘドランであり、より好ましくはアダマンタン、ビアダマンタン又はジアマンタンであり、低誘電率である点で、特に好ましくはビアダマンタン又はジアマンタンである。
【0076】
本発明におけるカゴ型構造は、1つ以上の置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は沃素原子)、炭素数1〜10の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基(メチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル、プロペニル等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル、フェニルエチニル等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等)、炭素数2〜10のアシル基(ベンゾイル等)、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル等)、炭素数1〜10のカルバモイル基(N,N−ジエチルカルバモイル等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシ等)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(フェニルスルホニル等)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(トリエトキシシリル、メチルジエトキシシリル、トリビニルシリル等)などである。
【0077】
本発明におけるカゴ型構造は、2〜4価の基であることが好ましい。このとき、カゴ型構造に結合する基は、1価以上の置換基でも2価以上の連結基でもよい。カゴ型構造は、より好ましくは2価または3価の基であり、特に好ましくは2価の基である。
【0078】
本発明においてカゴ型構造を有する化合物とは、低分子化合物であっても、高分子化合物(例えば重合体(ポリマー))であってもよいが、好ましいものはカゴ型構造を有する化合物(モノマー)の重合体である。ここでモノマーとは、互いに重合して2量体以上の重合体になるものを指す。この重合体は、ホモポリマーでもコポリマーでもよく、カゴ型構造を有する化合物の単独重合体、カゴ型構造を有する化合物と他の重合性化合物との共重合体、2種以上のカゴ型構造を有する化合物の共重合体などが挙げられる。
【0079】
カゴ型構造を有する化合物の重合反応は、化合物に置換した少なくとも一つの炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合などの重合性基によって起こる。ここで重合性基とは、化合物を重合せしめる反応性の置換基を指す。該重合反応としてはどのような重合反応でもよいが、例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重縮合、重付加、付加縮合、または、遷移金属触媒重合などが挙げられる。
【0080】
カゴ型構造を有する化合物の重合反応は、非金属の重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を有する化合物を、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤存在下で重合することができる。
重合開始剤としては、有機過酸化物又は有機アゾ系化合物が好ましく用いられるが、特に有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、日本油脂株式会社より市販されているパーヘキサH等のケトンパーオキサイド類、パーヘキサTMH等のパーオキシケタール類、パーブチルH−69等のハイドロパーオキサイド類、パークミルD、パーブチルC、パーブチルD等のジアルキルパーオキサイド類、ナイパーBW等のジアシルパーオキサイド類、パーブチルZ、パーブチルL等のパーオキシエステル類、パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート等が好ましく用いられる。
有機アゾ系化合物としては、和光純薬工業株式会社で市販されているV−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70等のアゾニトリル化合物類、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111等のアゾアミド化合物類、VA−044、VA−061等の環状アゾアミジン化合物類、V−50、VA−057等のアゾアミジン化合物類等が好ましく用いられる。
【0081】
重合開始剤は1種のみ、または、2種以上を混合して用いてもよい。
重合開始剤の使用量は、使用する化合物1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0082】
カゴ型構造を有する化合物の重合反応は、遷移金属触媒存在下で行うこともできる。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を有する化合物をテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh)、酢酸パラジウム(Pd(OAc))等のPd系触媒、Ziegler−Natta触媒、ニッケルアセチルアセトネート等のNi系触媒、WCl等のW系触媒、MoCl等のMo系触媒、TaCl等のTa系触媒、NbCl等のNb系触媒、Rh系触媒、Pt系触媒等を用いて重合することが好ましい。
【0083】
遷移金属触媒は1種のみ、または、2種以上を混合して用いてもよい。
遷移金属触媒の使用量は、化合物1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0084】
本発明におけるカゴ型構造は、ポリマー中にペンダント基として置換していてよく、ポリマー主鎖の一部となっていてもよいが、ポリマー主鎖の一部となっている形態がより好ましい。ここで、ポリマー主鎖の一部になっている形態とは、本ポリマーからカゴ型構造の化合物を除去するとポリマー鎖が切断されることを意味する。この形態においては、カゴ型構造は直接単結合するか、または適当な2価の連結基によって連結される。連結基の例としては例えば、−C(R11)(R12)−、−C(R13)=C(R14)−、−C≡C−、アリーレン基、−CO−、−O−、−SO2−、−N(R15)−、−Si(R16)(R17)−またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。ここで、R11〜R17はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表す。これらの連結基は置換基で置換されていてもよく、例えば前述の置換基が好ましい例として挙げられる。
この中でより好ましい連結基は、−C(R11)(R12)−、−CH=CH−、−C≡C−、アリーレン基、−O−、−Si(R16)(R17)−又はこれらを組み合わせた基であり、特に好ましいものは、低誘電率である見地から−C(R11)(R12)−、−CH=CH−である。
【0085】
重合反応で使用する溶媒は、原料化合物が必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成する膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用してもよい。例えば、水や、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤、アルコールアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエート等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−オルトキシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤などが利用できる。
これらの中でより好ましい溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−オルトキシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、より好ましくはテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、特に好ましくはγ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応液中の化合物の濃度は、使用する化合物などにより適宜最適な条件が選択されるが、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。
【0086】
本発明における重合反応の最適な条件は、重合開始剤、化合物、溶媒の種類、濃度等によって異なるが、好ましくは内温0℃〜200℃、より好ましくは50℃〜170℃、特に好ましくは100℃〜150℃で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
【0087】
カゴ型構造を有する化合物が重合体である場合、その重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜500,000、より好ましくは5,000〜200,000、特に好ましくは10,000〜100,000である。カゴ型構造を有する重合体は、分子量分布を有する樹脂組成物として膜形成用組成物に含まれていてもよい。
カゴ型構造を有する化合物が低分子化合物である場合、その分子量は好ましくは150〜3,000、より好ましくは200〜2,000、特に好ましくは220〜1,000である。
【0088】
本発明に用いることができるカゴ型構造を有する化合物は、重合可能な炭素−炭素二重結合および/または炭素−炭素三重結合を有するカゴ型構造を有する化合物の重合体であることが好ましい。さらには、一般式(2)〜一般式(7)のいずれかで表される化合物(モノマー)の重合体であることがより好ましい。
【0089】
【化35】


(一般式(2)〜一般式(7)中、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基またはカルバモイル基を表す。Y〜Yは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基またはシリル基を表す。mおよびmは、それぞれ独立に、1〜16の整数を表す。nおよびnは、それぞれ独立に、0〜15の整数を表す。m、m、m、およびmは、それぞれ独立に、1〜15の整数を表す。n、n、n、およびnは、それぞれ独立に、0〜14の整数を表す。mおよびmは、それぞれ独立に、1〜20の整数を表す。nおよびnは、それぞれ独立に、0〜19の整数を表す。)
【0090】
一般式(2)〜一般式(7)中、X〜Xはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10)、アルケニル基(好ましくは、炭素数2〜10)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜10)、アリール基(好ましくは、炭素数6〜20)、シリル基(好ましくは、炭素数0〜20)、アシル基(好ましくは、炭素数2〜10)、アルコキシカルボニル(好ましくは、炭素数2〜10)、または、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜20)を表す。このうち、好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数0〜20のシリル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のカルバモイル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくは水素原子である。
一般式(2)〜一般式(7)中、Y〜Yは、それぞれ独立に、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10)、アリール基(好ましくは、炭素数6〜20)またはシリル基(好ましくは、炭素数0〜20)を表す。好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基であり、より好ましくはアルキル基(メチル基等)である。
〜X、Y〜Yは、さらに別の置換基で置換されていてもよい。
【0091】
一般式(2)、一般式(5)中、mおよびmは、それぞれ独立に1〜16の整数を表す。好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3であり、特に好ましくは2である。
一般式(2)、一般式(5)中、nおよびnは、それぞれ独立に0〜15の整数を表す。好ましくは0〜4であり、より好ましくは0又は1であり、特に好ましくは0である。
一般式(3)、一般式(6)中、m、m、mおよびmは、それぞれ独立に1〜15の整数を表す。好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3であり、特に好ましくは2である。
一般式(3)、一般式(6)中、n、n、nおよびnは、それぞれ独立に0〜14の整数を表す。好ましくは0〜4であり、より好ましくは0又は1であり、特に好ましくは0である。
一般式(4)、一般式(7)中、mおよびmは、それぞれ独立に1〜20の整数を表す。好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3であり、特に好ましくは2である。
一般式(4)、一般式(7)中、nおよびnは、それぞれ独立に0〜19の整数を表す。好ましくは0〜4であり、より好ましくは0又は1であり、特に好ましくは0である。
【0092】
本発明に用いることができるカゴ型構造を有する化合物は、好ましくは一般式(2)、一般式(3)、一般式(5)または一般式(6)で表される化合物であり、より好ましくは一般式(2)または一般式(3)で表される化合物であり、特に好ましくは一般式(3)で表される化合物である。
【0093】
カゴ型構造を有する化合物は、有機溶剤へ十分な溶解性を有することが好ましい。カゴ型構造を有する化合物の溶解度は、25℃でシクロヘキサノン又はアニソールに対して、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、特に好ましくは10重量%以上である。
【0094】
本発明に用いることができるカゴ型構造を有する化合物としては、例えば、特開平11−322929号公報、特開2003−12802号公報、特開2004−18593号公報記載のポリベンゾオキサゾール、特開2001−2899号公報に記載のキノリン樹脂、特表2003−530464号公報、特表2004−535497号公報、特表2004−504424号公報、特表2004−504455号公報、特表2005−501131号公報、特表2005−516382号公報、特表2005−514479号公報、特表2005−522528号公報、特開2000−100808号公報、米国特許第6509415号明細書に記載のポリアリール樹脂、特開平11−214382号公報、特開2001−332542号公報、特開2003−252982号公報、特開2003−292878号公報、特開2004−2787号公報、特開2004−67877号公報、特開2004−59444号公報に記載のポリアダマンタン、特開2003−252992号公報、特開2004−26850号公報に記載のポリイミド等が挙げられる。
【0095】
以下に、本発明で用いることができるカゴ型構造を有する化合物の具体例を記載するが、本発明はこれらに限定はされない。
【0096】
【化36】

【0097】
【化37】

【0098】
【化38】

【0099】
【化39】

【0100】
本発明で用いることができるカゴ型構造を有する化合物として、上記具体例における−C≡C−を、−CH=CH−に変更したものも例示できる。
【0101】
カゴ型構造を有する化合物は、例えば市販のジアマンタンを原料として、臭化アルミニウム触媒存在下または非存在下で臭素と反応させて臭素原子を所望の位置に導入、続けて臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄等のルイス酸の存在下で臭化ビニルとフリーデルクラフツ反応を行い、2,2−ジブロモエチル基を導入、続けて強塩基で脱HBr化してエチニル基に変換することで合成することができる。具体的には、Macromolecules, 1991年 24巻 5266〜5268頁、1995年 28巻 5554〜5560頁、Journal of Organic Chemistry, 39, 2995-3003 (1974)等に記載された方法に準じて合成することが出来る。
また、末端アセチレン基の水素原子をブチルリチウム等でアニオン化して、これにハロゲン化アルキルやハロゲン化シリルを反応させることによって、アルキル基やシリル基を導入することが出来る。
【0102】
本発明の膜形成用組成物において、上述のカゴ型構造を有する化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0103】
<膜形成用組成物>
本発明にかかる膜形成用組成物には、一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物が含まれる。
本発明の膜形成用組成物中における一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物の含有量は、使用目的などにより適宜選択される。なかでも、後述する有機溶媒を用いて塗布液として使用する場合、一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物の含有量は、膜形成用組成物全体に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0104】
本発明の膜形成用組成物中におけるカゴ型構造を有する化合物およびその重合体の含有量は、使用目的などに応じて適宜選択される。なかでも、膜形成用組成物全体に対して、1〜80質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。
【0105】
本発明の膜形成用組成物は、有機溶媒を含んでいてもよい。
有機溶媒としては特に限定はされないが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール,1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶媒、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒などが挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
より好ましい有機溶媒は、1−メトキシ−2−プロパノール、プロパノール、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼンであり、特に好ましくは1−メトキシ−2−プロパノール、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、t−ブチルベンゼン、アニソールである。
【0106】
本発明の膜形成用組成物が上述の有機溶媒を含む場合の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは2〜15質量%であり、特に好ましくは3〜10質量%である。ここで固形分とは、この組成物を用いて得られる膜を構成する全成分に相当し、有機溶媒は除かれる。
【0107】
本発明の膜形成用組成物には、不純物としての金属含量が充分に少ないことが好ましい。膜形成用組成物の金属濃度はICP−MS法にて高感度に測定可能であり、その場合の遷移金属以外の金属含有量は好ましくは30ppm以下、より好ましくは3ppm以下、特に好ましくは300ppb以下である。
また、遷移金属に関しては酸化を促進する触媒能が高く、プリベーク、熱硬化プロセスにおいて酸化反応によって本発明で得られた膜の誘電率を上げてしまうという観点から、含有量がより少ないほうがよく、好ましくは10ppm以下、より好ましくは1ppm以下、特に好ましくは100ppb以下である。
膜形成用組成物の金属濃度は、本発明の膜形成用組成物を用いて得た膜に対して全反射蛍光X線測定を行うことによっても評価できる。X線源としてW(タングステン)線を用いた場合、金属元素としてK、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pdが観測可能であり、それぞれ100×1010atom・cm−2以下が好ましく、50×1010atom・cm−2以下がより好ましく、10×1010atom・cm−2以下が特に好ましい。また、ハロゲンであるBrも観測可能であり、残存量は10,000×1010atom・cm−2以下が好ましく、1,000×1010atom・cm−2以下がより好ましく、400×1010atom・cm−2以下が特に好ましい。また、ハロゲンとしてClも観測可能であるが、CVD装置、エッチング装置等へダメージを与えるという観点から残存量は100×1010atom・cm−2以下が好ましく、50×1010atom・cm−2以下がより好ましく、10×1010atom・cm−2以下が特に好ましい。
【0108】
<膜形成用組成物の添加剤>
更に、本発明の膜形成用組成物には、得られる絶縁膜の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、コロイド状シリカ、界面活性剤、シランカップリング剤、密着剤などの添加剤を添加してもよい。
【0109】
本発明の膜形成用組成物は、コロイド状シリカを含んでいてもよい。例えば、高純度の無水ケイ酸を親水性有機溶媒若しくは水に分散した分散液であり、好ましくは平均粒径5〜30nm、より好ましくは10〜20nm、固形分濃度が5〜40質量%のものである。
【0110】
本発明の膜形成用組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、さらにシリコーン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げられる。本発明に用いることができる界面活性剤は、一種類でもよいし、二種類以上でもよい。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0111】
本発明の膜形成用組成物中における界面活性剤の含有量は、膜形成塗布液の全量に対して、0.01重量%以上1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上0.5重量%以下であることがさらに好ましい。
【0112】
本発明において、シリコーン系界面活性剤とは、少なくとも1原子のSi原子を含む界面活性剤である。本発明に使用するシリコーン系界面活性剤としては、いかなるシリコーン系界面活性剤でもよく、アルキレンオキシド及びジメチルシロキサンを含む構造であることが好ましい。下記化学式を含む構造であることがさらに好ましい。
【0113】
【化40】

【0114】
上記式中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、xは1〜20の整数であり、m、nはそれぞれ独立に2〜100の整数である。また、Rが複数存在する場合、それぞれ同じあっても異なっていてもよい。
【0115】
本発明に用いることができるシリコーン系界面活性剤としては、例えばBYK306、BYK307(ビックケミー社製)、SH7PA、SH21PA、SH28PA、SH30PA(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、TroysolS366(トロイケミカル社製)等を挙げることができる。
【0116】
本発明に用いることができるノニオン系界面活性剤としては、いかなるノニオン系界面活性剤でもよい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンジアルキルエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリオキシエチレン類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等を挙げることができる。
【0117】
本発明に用いることができる含フッ素系界面活性剤としては、いかなる含フッ素系界面活性剤でもよい。例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0118】
本発明に用いることができるアクリル系界面活性剤としては、いかなるアクリル系界面活性剤でもよい。例えば、(メタ)アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
【0119】
本発明の膜形成用組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノグリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。本発明に用いることができるシランカップリング剤は、一種類単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0120】
本発明の膜形成用組成物は、密着促進剤を含有してもよい。
密着促進剤としては、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレート、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、ビニルトリクロロシラン、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、チオ尿素化合物等を挙げることができる。官能性シランカップリング剤が密着促進剤として好ましい。
密着促進剤の使用量は、全固形分100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、特に0.05〜5重量部であることがより好ましい。
【0121】
本発明の膜形成用組成物には、膜の機械強度の許す範囲内で、空孔形成因子を使用して、膜を多孔質化し、低誘電率化を図ってもよい。
空孔形成剤となる添加剤としての空孔形成因子としては、特に限定はされないが、非金属化合物が好適に用いられ、膜形成用塗布液で使用される溶剤との溶解性、本発明重合体との相溶性を同時に満たすことが必要である。
また、この空孔形成剤の沸点若しくは分解温度は、好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃である。分子量としては、好ましくは200〜50,000、より好ましくは300〜10,000、特に好ましくは400〜5,000である。添加量は、膜を形成する重合体に対して、好ましくは0.5〜75質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%である。
また、空孔形成因子として、重合体の中に分解性基を含んでいてもよく、その分解温度は、好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃である。分解性基の含有率は、膜を形成する重合体に対して、好ましくは0.5〜75モル%、より好ましくは0.5〜30モル%、特に好ましくは1〜20モル%である。
【0122】
<膜形成用組成物を用いて得られる膜>
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜の製造方法は、特に制限されない。例えば、膜形成用組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により基板に塗布した後、溶剤を加熱処理で除去することにより形成することができる。基板に塗布する方法としては、スピンコーティング法、スキャン法によるものが好ましい。特に好ましくは、スピンコーティング法によるものである。スピンコーティングについては、市販の装置を使用できる。例えば、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン(株)製)、D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製造(株)製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業(株)製)等が好ましく使用できる。スピンコート条件としては、いずれの回転速度でもよいが、膜の面内均一性の観点より、300mmシリコン基板においては1,300rpm程度の回転速度が好ましい。
また、組成物溶液の吐出方法においては、回転する基板上に組成物溶液を吐出する動的吐出、静止した基板上へ組成物溶液を吐出する静的吐出のいずれでもよいが、膜の面内均一性の観点より、動的吐出が好ましい。また、組成物の消費量を抑制する観点より、予備的に組成物の主溶剤のみを基板上に吐出して液膜を形成した後、その上から組成物を吐出するという方法を用いることもできる。スピンコート時間については特に制限はないが、スループットの観点から180秒以内が好ましい。また、基板の搬送の観点より、基板エッジ部の膜を残存させないための処理(エッジリンス、バックリンス)をすることも好ましい。
熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した加熱方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。好ましくは、ホットプレート加熱、ファーネスを使用した加熱方法である。ホットプレートとしては市販の装置を好ましく使用でき、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン(株)製)、D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製造(株)製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業(株)製)等が好ましく使用できる。ファーネスとしては、αシリーズ(東京エレクトロン(株)製)等が好ましく使用できる。
【0123】
本発明の膜形成用組成物は、基板板上に塗布した後に加熱処理することによって硬化させることが特に好ましい。例えば、膜形成用組成物により形成した膜に残存する炭素三重結合の後加熱時の重合反応が利用できる。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜450℃、より好ましくは200〜420℃、特に好ましくは350℃〜400℃で、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは10分〜1.5時間、特に好ましくは30分〜1時間の範囲である。後加熱処理は数回に分けて行ってもよい。また、この後加熱は酸素による熱酸化を防ぐために窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
また、本発明では加熱処理ではなく高エネルギー線を照射することで重合体中に残存する炭素三重結合の重合反応を起こして硬化させてもよい。高エネルギー線とは、電子線、紫外線、X線などが挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
高エネルギー線として、電子線を使用した場合のエネルギーは、0〜50keVが好ましく、0〜30keVがより好ましく、0〜20keVが特に好ましい。電子線の総ドーズ量は、好ましくは0〜5μC/cm2、より好ましくは0〜2μC/cm2、特に好ましくは0〜1μC/cm2である。電子線を照射する際の基板温度は、0〜450℃が好ましく、0〜400℃がより好ましく、0〜350℃が特に好ましい。圧力は、好ましくは0〜133kPa、より好ましくは0〜60kPa、特に好ましくは0〜20kPaである。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、電子線との相互作用で発生するプラズマ、電磁波、化学種との反応を目的に酸素、炭化水素、アンモニアなどのガスを添加してもよい。本発明における電子線照射は複数回行ってもよく、この場合は電子線照射条件を毎回同じにする必要はなく、毎回異なる条件で行ってもよい。
高エネルギー線として紫外線を用いてもよい。紫外線を用いる際の照射波長領域は190〜400nmが好ましく、その出力は基板直上において0.1〜2,000mWcm−2が好ましい。紫外線照射時の基板温度は250〜450℃が好ましく、250〜400℃がより好ましく、250〜350℃が特に好ましい。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気は、Ar、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、その際の圧力は0〜133kPaが好ましい。
【0124】
本発明の膜形成用組成物より得られる膜の膜厚は、使用用途により適宜最適な厚みが選択される。なかでも、絶縁膜として使用する場合は、0.1〜10μmが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。
【0125】
本発明の膜形成用組成物より得られる膜の比誘電率は、使用する材料によって異なるが、絶縁膜として使用する場合は、通常、測定温度25℃において、4.0以下であることが好ましく、1.5〜3.5であることがより好ましく、1.8〜3.0であることがさらに好ましい。
また、本発明の膜形成用組成物より得られる膜における比誘電率の測定方法としては、測定温度25℃で、フォーディメンジョンズ社製水銀プローバ及び横河ヒューレットパッカード社製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出することが好ましい。
【0126】
本発明の膜形成用組成物より得られる膜のヤング率は、使用する材料によって異なるが、絶縁膜として使用する場合、3.0〜15.0GPaであることが好ましく、5.0〜15.0GPaであることがより好ましい。
本発明の膜形成用組成物より得られる膜におけるヤング率の測定方法としては、MTS社ナノインデンターSA2を使用して測定する。
【0127】
<用途>
本発明の膜形成用組成物、およびその組成物から得られる膜は、耐熱性が必要な様々な用途に用いることが出来る。具体的には、電子材料、繊維、プリント回路、粘着テープ、磁気記録媒体、電線、耐熱絶縁紙、塗料、注型材料、プリント配船板、成型材料半導体素子などに用いることができる。さらに得られる膜は、低密度化により、低誘電性を有しているので、後述するように層間絶縁膜として使用するのにも適している。
【0128】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、絶縁膜として好適に使用することができ、半導体用層間絶縁膜としてより好適に使用することができる。すなわち、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる絶縁膜は、電子デバイスに好適に使用できる。電子デバイスとは、半導体装置や、磁気記録ヘッドなどを含めた広範な電子機器を意味する。
例えば、半導体用層間絶縁膜として使用する際、その配線構造において、配線側面にはメタルマイグレーションを防ぐためのバリア層があってもよく、また、配線や層間絶縁膜の上面底面にはCMP(化学的機械的研磨)での剥離を防ぐキャップ層、層間密着層の他、エッチングストッパー層等があってもよく、更には層間絶縁膜の層を必要に応じて他種材料で複数層に分けてもよい。
【0129】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、銅配線あるいはその他の目的でエッチング加工をすることができる。エッチングとしてはウエットエッチング、ドライエッチングのいずれでもよいが、ドライエッチングが好ましい。ドライエッチングは、アンモニア系プラズマ、フルオロカーボン系プラズマのいずれもが適宜使用できる。これらプラズマにはArだけでなく、酸素、あるいは窒素、水素、ヘリウム等のガスを用いることができる。また、エッチング加工後に、加工に使用したフォトレジスト等を除く目的でアッシングすることもでき、さらにはアッシング時の残渣を除くため、洗浄することもできる。
【0130】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、銅配線加工後に、銅めっき部を平坦化するためCMP処理を施すことができる。CMPスラリー(薬液)としては、市販のスラリー(例えば、(株)フジミインコーポレーテッド製、ロデールニッタ(株)製、JSR(株)製、日立化成工業(株)製等)を適宜使用できる。また、CMP装置としては市販の装置(アプライドマテリアル社製、(株)荏原製作所製等)を適宜使用することができる。さらにCMP後のスラリー残渣除去のため、洗浄することができる。
【0131】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、多様の目的に使用することが出来る。例えばLSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することができる。
さらに、別の用途として本発明の膜に電子ドナー又はアクセプターをドープすることによって導電性を付与し、導電性膜として使用することもできる。
【実施例】
【0132】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により制約されるものではない。
【0133】
以下のGPC測定は、Waters2695およびShodex製GPCカラムKF−805Lを使用し、カラム温度40℃で、溶出溶媒としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流量で測定を行い、Mw、Mnは標準ポリスチレンを用いて作製した検量線を用いて計算した。
【0134】
<合成例1:化合物(a)の合成>
化合物(a)は、以下のスキームに従って合成した。
【0135】
【化41】

【0136】
窒素気流下、三口フラスコにテトラキス(4−ヨードフェニル)メタン1.79重量部、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)0.183重量部、ヨウ化銅0.99重量部、テトラヒドロフラン340重量部、ジイソプロピルアミン70重量部を加え、30分間還流した。それに、化合物(1)0.30重量部をテトラヒドロフラン10重量部に溶解させた溶液を加え、6時間還流した。冷却後、溶媒を減圧留去した。得られた固体をカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)により精製することにより、化合物(a)1.55重量部(収率:68%)を得た。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(DMSO) δ 7.51-7.58(m, 16H), 7.42(d, 8H), 2.21(d, 8H), 1.47(s, 24H))
【0137】
<合成例2:化合物(b)の合成>
化合物(b)は、以下のスキームに従って合成した。
【0138】
【化42】

【0139】
テトラキス(4−ヨードフェニル)メタンを1,4−ジヨードベンゼンに、化合物(1)を化合物(2)に変更した以外は、上述の合成例1と同様の方法を用いて、化合物(b)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。
【0140】
<合成例3:化合物(c)の合成>
化合物(c)は、以下のスキームに従って合成した。
【0141】
【化43】

【0142】
テトラキス(4−ヨードフェニル)メタンをトリブロモベンゼンに、化合物(1)を化合物(3)に変更した以外は、上述の合成例1と同様の方法を用いて、化合物(c)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。
【0143】
<合成例4:化合物(d)の合成>
化合物(d)は、以下のスキームに従って合成した。
【0144】
【化44】

【0145】
テトラキス(4−ヨードフェニル)メタンをテトラブロモベンゼンに、化合物(1)を化合物(4)に変更した以外は、上述の合成例1と同様の方法を用いて、化合物(d)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。
【0146】
<合成例5:化合物(e)の合成>
化合物(e)は、以下のスキームに従って合成した。
【0147】
【化45】

【0148】
テトラキス(4−ヨードフェニル)メタンを4−ブロモフェニルエーテルに、化合物(1)を化合物(5)に変更した以外は、上述の合成例1と同様の方法を用いて、化合物(e)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。
【0149】
<合成例6:化合物(f)の合成>
化合物(f)は、以下のスキームに従って合成した。
【0150】
【化46】

【0151】
化合物(1)を化合物(6)に変更した以外は、上述の合成例1と同様の方法を用いて、化合物(f)(収率:78%)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(MeOD) δ = 7.35(d, 8H), 7.25(d, 8H), 2.18(s, 4H), 1.56(s, 24H))
【0152】
<合成例7:化合物(g)の合成>
化合物(g)は、以下のスキームに従って合成した。
【0153】
【化47】

【0154】
テトラキス(4-ヨードフェニル)メタンを1,3−ジヨードベンゼンに、化合物(1)を化合物(7)に変更した以外は、上述の合成例1と同様の方法を用いて、化合物(g)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。
【0155】
<合成例8:化合物(h)の合成>
化合物(h)は、以下のスキームに従って合成した。
【0156】
【化48】

【0157】
化合物(1)を化合物(8)に変更した以外は、上述の合成例1と同様の方法を用いて、化合物(h)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。
【0158】
<合成例9:化合物(i)の合成>
化合物(i)は、以下のスキームに従って合成した。
【0159】
【化49】

【0160】
テトラキス(4−ヨードフェニル)メタンを1,3,5−トリス(4−ヨードフェニル)ベンゼンに、化合物(1)を化合物(9)に変更した以外は、上述の合成例1と同様の方法を用いて、化合物(i)(収率:88%)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ = 7.75(s, 3H), 7.64(d, 6H), 7.53(d, 6H), 2.11(s, 3H), 1.65(s, 18H)))
【0161】
<合成例10:化合物(j)の合成>
化合物(j)は、以下のスキームに従って合成した。
【0162】
【化50】

【0163】
上記反応スキームに従い中間体10を合成し、次に、テトラキス(4−ヨードフェニル)メタンを中間体10に、化合物(1)を化合物(10)に変更した以外は、上述の合成例1と同様の方法を用いて、化合物(j)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。
【0164】
<合成例11:化合物(k)の合成>
化合物(k)は、以下のスキームに従って合成した。
【0165】
【化51】

【0166】
窒素気流下、三つ口フラスコに化合物(11)2.0重量部、乾燥テトラヒドロフラン15重量部およびトリエチルアミン1.5重量部を反応容器に入れ、均一になるまで攪拌した。その容器を氷浴下で冷却しながら、トリメソイルクロリド0.97重量部を滴下した。滴下後、室温で1時間撹拌した。反応後、反応液に酢酸エチルを加え、1N HNO水溶液および水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去することにより、化合物(k)を得た。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。
【0167】
<合成例12:化合物(l)の合成>
化合物(l)は、以下のスキームに従って合成した。
【0168】
【化52】

【0169】
化合物(1)を化合物(12)に変更した以外は、上述の合成例1と同様の方法を用いて、化合物(i)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。
【0170】
<合成例13:化合物(m)の合成>
化合物(m)は、以下のスキームに従って合成した。
【0171】
【化53】

【0172】
化合物(1)を化合物(13)に変更した以外は、上述の合成例1と同様の方法を用いて、化合物(i)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。
【0173】
<合成例14:化合物(n)の合成>
化合物(n)は、以下のスキームに従って合成した。
【0174】
【化54】

【0175】
テトラキス(4−ヨードフェニル)メタンを上記の出発物質14に、化合物(1)を化合物(14)に変更した以外は、上述の合成例1と同様の方法を用いて、化合物(i)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。なお、出発物質14は、特表2005−501131号公報に従って合成し、ブロモ基がベンゼン環上のメタ位(メタ体)またはパラ位(パラ体)に置換した化合物の混合物であった。
【0176】
<合成例15:重合体(4)の合成>
J. Polym. Sci. PART A Polym. Chem., vol.30, 1747頁(1992年)に記載の合成法に従って、1,3,5−トリエチニルアダマンタンを合成した。
次に、1,3,5−トリエチニルアダマンタン10gとt−ブチルベンゼン56gを反応容器内に入れ、窒素気流下で攪拌しながら内温120℃に加熱し、1,3,5−トリエチニルアダマンタンを完全に溶解させた。次に、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)2.2gをジフェニルエーテル1.9gに溶解させた溶液を、反応液の内温を120℃〜130℃に保ちながら、1時間かけて反応液へ滴下した。
反応終了後、反応液を50℃まで冷却し、2−プロパノール0.4Lに添加した。析出した固体を濾過して、2−プロパノールで洗浄した。得られた重合体をTHF40mlに溶解して、メタノール0.4Lへ添加し、再沈精製した。真空乾燥後、重量平均分子量約6.0万の重合体(4)を4.2g得た。
【0177】
<合成例16:重合体(5)の合成>
1,3,5−トリビニルアダマンタン10gとt−ブチルベンゼン56gを反応容器内に入れ、窒素気流下で攪拌しながら内温120℃に加熱し、1,3,5−トリビニルアダマンタンを完全に溶解させた。次に、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)2.2gをジフェニルエーテル1.9gに溶解させた溶液を、反応液の内温を120℃〜130℃に保ちながら、1時間かけて反応液へ滴下した。
反応終了後、反応液を50℃まで冷却し、2−プロパノール0.4Lに添加した。析出した固体を濾過して、2−プロパノールで洗浄した。得られた重合体をTHF40mlに溶解して、メタノール0.4Lへ添加し、再沈精製した。真空乾燥後、重量平均分子量約5.5万の重合体(5)を4.0g得た。
【0178】
<実施例1>
一般式(1)で表される部分構造の導入による耐熱性の向上について、トリメチルシリル基との比較を行った。比較化合物として1,3,5−トリ(トリメチルシリルエチニル)ベンゼン(c’)と、上述の化合物(c)との重量減少量を、TA Instruments社のSDT Q600(N2 100 ml/min, 20℃/min)を用いて測定した。その結果、1,3,5−トリ(トリメチルシリルエチニル)ベンゼンは253℃でほぼ完全に揮発してしまったのに対して、化合物(c)は500℃でも63%程残存していた。
これらの結果より、一般式(1)で表される部分構造を導入することにより耐熱性が飛躍的に向上していることが分かった。これは、一般式(1)で表される部分構造のOH基間の水素結合により揮発温度が上昇し、さらにこの保護基が脱離して生成される炭素−炭素三重結合間の架橋反応が起こったためと考えられる。これらの結果より、保護基へのOH基導入の重要性、および保護基が脱離して架橋反応が進行していることが明らかとなった。
【0179】
<実施例2:耐熱性比較評価>
合成例1〜14で合成した他の化合物(a)〜(n)についても、同様の耐熱性評価を行った。以下、表1に示す。
【0180】
【表1】

【0181】
いずれの化合物も、上記化合物(c)と同様に、500℃における重量減少率は小さく、優れた耐熱性を示すことが確認された。また、500℃における重量減少率は、保護基がすべて消失した時の理論重量減少率よりも小さく、化合物自体の揮発は観測されなかった。これらの結果より、保護基として機能する一般式(1)で表される部分構造の脱離とともに、脱離により生成される炭素−炭素三重結合間の架橋反応が進行したと考えられる。
【0182】
<実施例3>
化合物(n)1.0gとシクロヘキサノン9.0gとを混合して、塗布液を調製した。この溶液を孔径0.1μmのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートした。得られた塗膜を、窒素気流下、ホットプレート上250℃で60秒間加熱した。その後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5μmの膜が得られた。
膜の比誘電率(測定温度:25℃、以降も同様)はフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横河ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.55であった。
耐熱性の評価は、得られた膜を空気中400℃30秒加熱し、膜厚変化を測定することにより行った。その結果、膜厚の減少率は、ゼロであった。
機械強度について、MTS社ナノインデンターSA2を使用して測定したところ、9.9Gpaであった。
【0183】
上記の結果より、本発明の一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物を含む膜形成用組成物を用いて形成された膜は、耐熱性、機械強度に優れ、かつ低い誘電率を示すことがわかった。
【0184】
<実施例4>
重合体(4)と合成例1−14で得た化合物(a)〜(n)(化合物(f)を除く)とを後述の表2に示すような割合で合計1.0gになるようにそれぞれ調製し、それをシクロヘキサノン9.0gに完全に溶解させて塗布液を調製した。
この溶液を孔径0.1μmのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートした。この塗膜を、窒素気流下、ホットプレート上250℃で60秒間加熱した。その後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5μmの膜が得られた。このとき、保護基の分解による顕著な膜べりは観測されなかった。
膜の比誘電率(測定温度:25℃、以降も同様)はフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横河ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出した。耐熱性の評価は、得られた膜を空気中400℃30秒加熱し、膜厚変化を測定することにより行った。機械強度の測定は、MTS社ナノインデンターSA2を使用した。また、IRスペクトルにより、いずれの添加剤においても保護基(一般式(1)で表される部分構造)に由来するピークが消失しているのを確認した。これらの結果を、以下の表2に示す。なお、膜材料としては重合体(4)と化合物(a)〜(n)とで構成され、膜材料中における化合物(a)〜(n)の含有量(wt%)が表2中に示される。
また、比較例として、重合体(4)のみを使用した場合、添加剤として上記1,3,5−トリ(トリメチルシリルエチニル)ベンゼン(化合物c’)、またはトリエチニルベンゼンを使用した場合、について上記同様の測定を実施した(例23〜25)。
【0185】
【表2】

【0186】
化合物(a)〜(n)を使用した場合は、使用していない場合(例23)と比較して、膜厚減少量が小さくなり、耐熱性の向上が確認された。また、機械強度も同様に向上し、低誘電性、高耐熱性、高機械強度を示す膜が得られたことが分かった。一方、例24および25においては、膜厚減少量および機械強度の向上は確認されなかった。
【0187】
<実施例5>
重合体(5)と合成例1−14で得た化合物(a)〜(n)(化合物(f)を除く)とを後述の表3に示すような割合で合計1.0gになるようにそれぞれ調製し、それをシクロヘキサノン9.0gに完全に溶解させて塗布液を調製した。
この溶液を孔径0.1μmのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートした。この塗膜を、窒素気流下、ホットプレート上で250℃で60秒間加熱した。その後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5μmの膜が得られた。このとき、保護基の分解による顕著な膜べりは観測されなかった。
膜の比誘電率(測定温度:25℃、以降も同様)はフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横河ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出した。耐熱性の評価は、得られた膜を空気中400℃30秒加熱し、膜厚変化を測定することにより行った。機械強度の測定は、MTS社ナノインデンターSA2を使用した。また、IRスペクトルにより、いずれの添加剤においても保護基(一般式(1)で表される部分構造)に由来するピークが消失しているのを確認した。これらの結果を、以下の表3に示す。
なお、膜材料としては重合体(5)と化合物(a)〜(n)とで構成され、膜材料中における化合物(a)〜(n)の含有量(wt%)が表3中に示される。
また、比較例として、重合体(5)のみを使用した場合、添加剤として上記1,3,5−トリ(トリメチルシリルエチニル)ベンゼン(化合物c’)、またはトリエチニルベンゼンを使用した場合、について上記同様の測定を実施した(例48〜50)。
【0188】
【表3】

【0189】
化合物(a)〜(n)を使用した場合は、使用していない場合(例48)と比較して、膜厚減少量が小さくなり、耐熱性の向上が確認された。また、機械強度も同様に向上し、低誘電性、高耐熱性、高機械強度を示す膜が得られたことが分かった。一方、例49および50においては、膜厚減少量および機械強度の向上は確認されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物を含む膜形成用組成物。
【化1】


(一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。RとRは、互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは、水素原子または置換基を表す。*は、結合位置を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)中、RおよびRが、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基であり、Rが水素原子である請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する化合物が、一般式(A)〜一般式(C)のいずれかで表される化合物である請求項1または2に記載の膜形成用組成物。
【化2】


(一般式(A)中、Xは、一般式(1)で表される部分構造を表す。Yは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、シクロヘキサン環、フルオレン環、アダマンタン環、ジアマンタン環、またはビアダマンタン環を表す。Lは、−CONH−、−COO−、−O−、アリーレン基、アルキレン基、または単結合を表す。Lは、−CONH−、−COO−、−O−、2価または3価の芳香族炭化水素基、アルキレン基、または単結合を表す。mは、1〜6の整数を表す。nは、1または2を表す。)
【化3】


(一般式(B)中、Xは、一般式(1)で表される部分構造を表す。Lは、−CONH−、−COO−、−O−、アリーレン基、アルキレン基、または単結合を表す。Lは、−CONH−、−COO−、−O−、2価または3価の芳香族炭化水素基、アルキレン基、または単結合を表す。nは、1または2の整数を表す。pは、0〜3の整数を表す。)
【化4】


(一般式(C)中、Xは、一般式(1)で表される部分構造を表す。LおよびLは、それぞれ独立に、−CONH−、−COO−、−O−、アリーレン基、アルキレン基または単結合を表す。Wは、−COOHを表す。q、sおよびtは、それぞれ独立に、0または1の整数を表す。ただし、sが1の時、Lは−CONH−を表し、tが1の時、Lは−CONH−を表す。)
【請求項4】
さらに、カゴ型構造を有する化合物および/または該化合物の重合体を含む請求項1〜3のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項5】
前記カゴ型構造を有する化合物が、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を少なくとも一つ有する請求項4に記載の膜形成用組成物。
【請求項6】
前記カゴ型構造が、アダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタンおよびテトラマンタンよりなる群から選択されるいずれかの構造である請求項4または5に記載の膜形成用組成物。
【請求項7】
前記カゴ型構造を有する化合物が、一般式(2)〜一般式(7)のいずれかで表される化合物である請求項4〜6のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【化5】


(一般式(2)〜一般式(7)中、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を表す。Y〜Yは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはシリル基を表す。mおよびmは、それぞれ独立に、1〜16の整数を表す。nおよびnは、それぞれ独立に、0〜15の整数を表す。m、m、m、およびmは、それぞれ独立に、1〜15の整数を表す。n、n、n、およびnは、それぞれ独立に、0〜14の整数を表す。mおよびmは、それぞれ独立に、1〜20の整数を表す。nおよびnは、それぞれ独立に、0〜19の整数を表す。)
【請求項8】
絶縁膜を形成するために用いられる請求項1〜7のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の膜形成用組成物を用いて得られる絶縁膜。
【請求項10】
請求項9に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。

【公開番号】特開2010−43176(P2010−43176A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207790(P2008−207790)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】