説明

自励発振回路

【課題】簡素な回路構成により、低消費電流化、低ノイズ化及び発振位相安定度の向上が可能な自励発振回路を実現する。
【解決手段】振動式センサの振動子を自励発振させる自励発振回路において、圧力を検出する振動子を有する振動式センサと、振動式センサからの出力を受ける差動増幅回路と、第1のエミッタフォロア回路と第2のエミッタフォロア回路とから構成され、振動式センサからの出力電圧を出力電流に変換するトランスコンダクタンスアンプとして動作する発振回路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力を検出する振動式センサの振動子を自励発振させる自励発振回路に関し、特に簡素な回路構成により、低消費電流化、低ノイズ化、発振位相安定度の向上が可能な自励発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自励発振回路に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特許第2837211号公報
【0004】
図6はこのような従来の自励発振回路の一例を示す構成ブロック図である。図6において1は入力端子、2及び3はトランス、4,5,6及び7は電圧”V”を供給する電圧源、8,9及び10は電圧”V”を供給する電圧源、11は電圧”V”を供給する電圧源、12は電圧/電流変換器、13,14,15及び16は抵抗、17,18及び19は演算増幅器、20は利得制御変換器、21は二乗演算器、22及び23はコンデンサ、24は出力端子である。
【0005】
さらに、電圧源5、抵抗13及び演算増幅器17は電流/電圧変換器100を構成し、電圧源9、抵抗14、演算増幅器18及びコンデンサ22は電流/電圧変換器101を構成している。また、電圧源11、抵抗15、演算増幅器19及びコンデンサ23は積分器102を構成している。
【0006】
入力端子1の一端及び他端はトランス2の一次側巻線の両端にそれぞれ接続され、トランス2の二次側巻線の一端及び他端は電圧/電流変換器12の2つの入力端子にそれぞれ接続される。電圧源4の一端はトランス2の二次側巻線の中点に接続され、電圧源4の他端は接地される。
【0007】
電圧/電流変換器12の出力端子は抵抗13の一端及び演算増幅器17の反転入力端子にそれぞれ接続され、演算増幅器17の出力端子は抵抗13の他端、利得制御変換器20の第3の入力端子及び二乗演算器21の一方の入力端子にそれぞれ接続される。
【0008】
電圧源5の一端は演算増幅器17の非反転入力端子に接続され、電圧源5の他端は接地される。電圧源7の一端は二乗演算器21の他方の入力端子に接続され、電圧源7の他端は接地される。
【0009】
二乗演算器21の出力端子は抵抗14の一端、演算増幅器18の反転入力端子及びコンデンサ22の一端にそれぞれ接続され、演算増幅器18の出力端子は抵抗14の他端、抵抗15の一端及びコンデンサ22の他端にそれぞれ接続される。
【0010】
電圧源9の一端は演算増幅器18の非反転入力端子に接続され、電圧源9の他端は接地される。抵抗15の他端は演算増幅器19の反転入力端子及びコンデンサ23の一端にそれぞれ接続され、演算増幅器19の出力端子は利得制御変換器20の第1の入力端子及びコンデンサ23の他端にそれぞれ接続される。
【0011】
電圧源11の一端は演算増幅器19の非反転入力端子に接続され、電圧源11の他端は接地される。電圧源8の一端は利得制御変換器20の第2の入力端子に接続され、電圧源8の他端は接地される。電圧源6の一端は利得制御変換器20の第4の入力端子に接続され、電圧源6の他端は接地される。
【0012】
利得制御変換器20の出力端子はトランス3の一次側巻線の一端に接続され、トランス3の一次側巻線の他端は電圧源10の一端に接続され、電圧源10の他端は接地される。トランス3の二次側巻線の一端及び他端は出力端子24及び抵抗16の両端にそれぞれ接続される。
【0013】
ここで、図6に示す従来例の動作を説明する。入力端子1には振動式センサに内蔵されている振動子(図示せず)からの出力電圧”V”が入力され、トランス2を介して電圧/電流変換器12に交流電圧”e”として入力される。
【0014】
そして、電圧/電流変換器12は交流電圧”e”を交流電流”I”に変換して出力する。電流/電圧変換器100はこの交流電流”I”を直流レベルが電圧”V”に固定された交流電圧”V” に変換して出力する。
【0015】
二乗演算器21はこの交流電圧”V”から演算により交流電流”I”を求めて出力する。電流/電圧変換器101はこの交流電流”I”を直流レベルが電圧”V”に固定された交流電圧”V” に変換して出力する。
【0016】
さらに、積分器102はこの交流電圧”V”の位相を交流電圧”V”の位相に合わせた利得制御信号”V”を出力する。利得制御変換器20はこの利得制御信号”V”により振幅が制御される交流電流”I”を出力する。
【0017】
そして、この交流電流”I”が振動式センサの振動子に入力され、磁界との作用により起電力である電圧”V”を発生する。この電圧”V”を入力端子1に入力することにより自励発振が継続される。
【0018】
この結果、電圧/電流変換器12、電流/電圧変換器100及び利得制御変換器20で構成される回路により振動子の自励発振が継続され、二乗演算器21、電流/電圧変換器101及び積分器102で構成される回路により振動子に入力する電流の振幅を制御するので、振動子の安定な発振を継続することが可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかし、図6に示す従来例では、回路構成が多段構成であるので回路が複雑、大規模となり、消費電力の削減が困難になるという問題点があった。
【0020】
また、回路構成が多段構成であることから伝播遅延時間の増大による発振位相の変動及びノイズの増大を招き、振動式センサの振動検出特性が悪化するという問題点があった。
【0021】
従って本発明が解決しようとする課題は、簡素な回路構成により、低消費電流化、低ノイズ化及び発振位相安定度の向上が可能な自励発振回路を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
振動式センサの振動子を自励発振させる自励発振回路において、
圧力を検出する前記振動子を有する前記振動式センサと、前記振動式センサからの出力を受ける差動増幅回路と、第1のトランジスタのベースが前記差動増幅回路の一方の出力端子に接続され、前記第1のトランジスタのエミッタが前記振動式センサの一方の入力端子及び第1の電流源に接続される第1のエミッタフォロア回路と、第2のトランジスタのベースが前記差動増幅回路の他方の出力端子に接続され、前記第2のトランジスタのエミッタが前記振動式センサの他方の入力端子及び第2の電流源に接続される第2のエミッタフォロア回路とから構成され、前記振動式センサからの出力電圧を出力電流に変換するトランスコンダクタンスアンプとして動作する発振回路とを備えたことにより、回路構成が簡素になるので、低消費電流化、低ノイズ化及び発振位相安定度の向上が可能になる。
【0023】
請求項2記載の発明は、
振動式センサの振動子を自励発振させる自励発振回路において、
圧力を検出する前記振動子を有する前記振動式センサと、前記振動式センサからの出力を受ける差動増幅回路と、第1のトランジスタのベースが前記差動増幅回路の一方の出力端子に接続され、前記第1のトランジスタのエミッタが前記振動式センサの一方の入力端子及び利得制御信号に基づき電流値が制御される第1の電流源に接続される第1のエミッタフォロア回路と、第2のトランジスタのベースが前記差動増幅回路の他方の出力端子に接続され、前記第2のトランジスタのエミッタが前記振動式センサの他方の入力端子及び前記利得制御信号に基づき電流値が制御される第2の電流源に接続される第2のエミッタフォロア回路とから構成され、前記振動式センサからの出力電圧を出力電流に変換するトランスコンダクタンスアンプとして動作する発振回路と、この発振回路からの出力を増幅する増幅器と、この増幅器からの交流信号の振幅を直流電圧に変換する検波回路と、この検波回路の出力に基づき前記利得制御信号を生成して前記発振回路に出力する誤差増幅器とを備えたことにより、回路構成が簡素になるので、低消費電流化、低ノイズ化及び発振位相安定度の向上が可能になる。
【0024】
請求項3記載の発明は、
請求項2記載の発明である自励発振回路において、
前記第1の電流源及び前記第2の電流源が、
一端に前記利得制御信号が入力される抵抗と、コレクタ及びベースに前記抵抗の他端が接続され、エミッタが負電圧源に接続される第3のトランジスタと、ベースが前記第3のトランジスタのベースに接続され、エミッタが前記負電圧源に接続され、コレクタが前記第1のトランジスタのエミッタに接続される第4のトランジスタと、ベースが前記第3のトランジスタのベースに接続され、エミッタが前記負電圧源に接続され、コレクタが前記第2のトランジスタのエミッタに接続される第5のトランジスタとから構成されることにより、回路構成が簡素になるので、低消費電流化、低ノイズ化及び発振位相安定度の向上が可能になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば次のような効果がある。
請求項1,2及び請求項3の発明によれば、発振回路の簡素な回路構成により、回路規模が大幅に削減され、さらに、発振ループ回路段数削減により、回路各部に対するループ位相遅延要求が緩和されるので、低消費電流化及び低ノイズ化が可能になる。
【0026】
また、発振ループ回路段数削減により、ループ位相遅延が短縮され、さらに、発振ループの信号は全て完全対称な差動回路により構成されるので、発振位相安定度の向上が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る自励発振回路の一実施例を示す構成ブロック図である。
【0028】
図1において25は圧力を検出する振動式センサ、26は発振回路、27は増幅器、28は誤差増幅器、29は基準電圧、30は検波回路、31は出力端子である。
【0029】
振動式センサ25の一方の出力端子は発振回路26の第1の入力端子に接続され、振動式センサ25の他方の出力端子は発振回路26の第2の入力端子に接続される。
【0030】
また、発振回路26の第1の出力端子は振動式センサ25の一方の入力端子に接続され、発振回路26の第2の出力端子は振動式センサ25の他方の入力端子に接続される。発振回路26の第3の出力端子は増幅器27の非反転入力端子に接続され、発振回路26の第4の出力端子は増幅器27の反転入力端子に接続される。
【0031】
誤差増幅器28の出力端子は発振回路26の第3の入力端子に接続される。基準電圧29の一端は誤差増幅器28の非反転入力端子に接続され、基準電圧29の他端は接地される。検波回路30の出力端子は誤差増幅器28の反転入力端子に接続される。
【0032】
増幅器27の非反転出力端子は検波回路の非反転入力端子及び出力端子の一端にそれぞれ接続され、増幅器27の反転出力端子は検波回路の反転入力端子及び出力端子の他端にそれぞれ接続される。
【0033】
ここで、図1に示す実施例の動作を図2、図3及び図4を用いて説明する。図2は振動センサの自励発振動作を説明する説明図、図3は発振回路26の構成回路図、図4は利得制御信号”V”を用いた電流源の一例を示す構成回路図である。
【0034】
振動式センサ25の発振信号が発振回路26に入力されると、発振回路26はこの発振信号を増幅して増幅器27へ出力する。
【0035】
増幅器27は発振信号をさらに増幅し、出力端子31に出力すると共に検波回路30へ入力する。検波回路30は交流信号である発振信号の振幅を直流電圧に変換する機能を有し、二乗回路及びローパスフィルタ等で構成される。
【0036】
誤差増幅器28は検波回路30からの出力信号”V”と基準電圧29の電位”VREF”を比較して利得制御信号”V”を出力する。
【0037】
そして、発振回路26は利得制御信号”V”により振動式センサ25に出力する電流の利得を制御する。
【0038】
発振回路26は図2に示すように主にトランスコンダクタンスアンプ32から構成される。振動式センサ25の発振を安定に維持するためには発振利得”Z・G”を厳密に”1”に維持する必要がある。ここで、” G”はトランスコンダクタンスアンプ32の伝達コンダクタンスである。
【0039】
振動式センサ25から出力される発振信号の振幅を増幅器27及び検波回路30により直流電圧”V”として検出し、誤差増幅器28によって発振振幅の基準電圧”VREF”と比較する。
【0040】
そして、誤差増幅器28の出力である利得制御信号”V”を発振回路26にフィードバックする。発振回路26は伝達コンダクタンス” G”を利得制御信号”V”によって変化させることが可能なので、このフィードバックループを形成し、”Z・G=1”の関係を維持することにより振動式センサ25の発振振幅の安定化を図っている。
【0041】
ここで、発振回路26の動作を図3を用いて説明する。図3において33は第1の入力端子、34は第2の入力端子、35は第1の出力端子、36は第2の出力端子、37は非反転出力端子、38は反転出力端子、39,40,41及び42はトランジスタ、43及び44は抵抗、45,46及び47は電流源、48は正電圧源、49は負電圧源である。
【0042】
第1の入力端子33はトランジスタ40のベースに接続され、第2の入力端子34はトランジスタ41のベースに接続される。トランジスタ40のエミッタはトランジスタ41のエミッタ及び電流源46の一端にそれぞれ接続される。
【0043】
抵抗43の一端は反転出力端子38、トランジスタ40のコレクタ及びトランジスタ42のベースにそれぞれ接続され、抵抗44の一端は非反転出力端子37、トランジスタ41のコレクタ及びトランジスタ39のベースにそれぞれ接続される。
【0044】
正電圧源48はトランジスタ39のコレクタ、トランジスタ42のコレクタ、抵抗43の他端及び抵抗44の他端にそれぞれ接続される。
【0045】
トランジスタ39のエミッタは第1の出力端子35及び電流源45の一端にそれぞれ接続され、トランジスタ42のエミッタは第2の出力端子36及び電流源47の一端にそれぞれ接続される。
【0046】
負電圧源49は電流源45の他端、電流源46の他端及び電流源47の他端にそれぞれ接続される。
【0047】
また、トランジスタ40、トランジスタ41、抵抗43、抵抗44及び電流源46は差動増幅回路103を構成している。トランジスタ39及び電流源45はエミッタフォロア回路104を構成し、トランジスタ42及び電流源47はエミッタフォロア回路105を構成している。
【0048】
トランジスタ40及びトランジスタ41は差動トランジスタペアであり、抵抗43及び抵抗44を負荷とする電圧増幅段を形成している。また、バイアス電流”I”は電流源46により供給される。
【0049】
トランジスタ40のコレクタ電圧”Vo2”及びトランジスタ41のコレクタ電圧”Vo1”は差動電圧増幅出力として出力され、図1中の増幅器27に入力される。また、第1の入力端子33及び第2の入力端子34は差動入力端子”Vi1”及び”Vi2”であり、振動式センサ25の出力が接続される。
【0050】
差動入力” Vi1”及び”Vi2”に対する差動電圧増幅出力”Vo1”及び”Vo2”の電圧利得”A”は式(1)によって表される。式(1)で”R”は抵抗43及び抵抗44の抵抗値、”V”は熱電圧である。
【0051】
【数1】

【0052】
式(1)より電圧利得”A”はバイアス電流”I”に比例して変化することが分かるが、電圧利得”A”は発振振幅制御ループに用いられる信号の検出利得を決定するので、常に一定でなければならない。
【0053】
従って、バイアス電流”I”として熱電圧”V”に比例した基準電流を用いることにより、電圧利得”A”を動作状態にかかわらず常に一定にする。すなわち、”I=kV”とすれば電圧利得”A”は式(2)のように表される。ここで、”k”は比例定数である。
【0054】
=kR (2)
【0055】
トランジスタ39はエミッタフォロアであり、バイアス電流”I”は電流源45により供給される。同様に、トランジスタ42はエミッタフォロアであり、バイアス電流”I’”は電流源47により供給される。
【0056】
トランジスタ39及びトランジスタ42のエミッタフォロア出力である第1の出力端子35及び第2の出力端子36は差動出力端子”Vs1”及び”Vs2”であり、振動式センサ25の入力に接続される。
【0057】
エミッタフォロア出力”Vs1”及び”Vs2”は電圧源出力とみなせるが、その出力インピーダンス”r”はバイアス電流”I”とバイアス電流”I’”が等しいと仮定するとエミッタフォロアの動作特性より式(3)となる。ここで、”β”はトランジスタ39及びトランジスタ42の電流増幅率とする。
【0058】
【数2】

【0059】
この出力インピーダンス”r”と振動式センサ25の入力インピーダンス”Z”によって、振動式センサ25に流れる電流”I”が決定される。
【0060】
エミッタフォロア入力差電圧”Vo1−Vo2”に対して出力電流”I”は式(4)の関係となる。ここで、”g”は伝達コンダクタンスである。
【0061】
【数3】

【0062】
すなわち、トランジスタ39及びトランジスタ42のエミッタフォロアは伝達コンダクタンス”g”を有する電圧電流変換器として動作する。
【0063】
さらに、式(3)及び式(4)に示されるように、バイアス電流”I”を変化することにより、エミッタフォロアの出力インピーダンス”r”が変化し、結果として伝達コンダクタンス”g”を任意に設定することが可能となる。
【0064】
式(1)、式(2)及び式(4)より、差動入力” Vi1”及び”Vi2”に対する出力電流”I”の伝達コンダクタンス”G”は式(5)のように表される。
【0065】
【数4】

【0066】
式(5)より、電圧利得”A”を一定に保ちながら、伝達コンダクタンス”G”をバイアス電流”I”によって設定可能であることが示される。
【0067】
ここで、図4を用いて伝達コンダクタンス”G”を利得制御信号”V”によって変化可能とする回路を説明する。図4は、利得制御信号”V”に基づいてバイアス電流”I”を供給する回路の一例である。
【0068】
図4において50は電圧入力端子、51は抵抗、52,53及び54はトランジスタ、55は第1のバイアス電流端子、56は第2のバイアス電流端子、57は負電圧源である。
【0069】
電圧入力端子50は抵抗51の一端に接続され、抵抗51の他端はトランジスタ52のコレクタ、トランジスタ52のベース、トランジスタ53のベース及びトランジスタ54のベースにそれぞれ接続される。
【0070】
また、バイアス電流端子55はトランジスタ53のコレクタに接続され、バイアス電流端子56はトランジスタ54のコレクタに接続される。負電圧源57はトランジスタ52のエミッタ、トランジスタ53のエミッタ及びトランジスタ54のエミッタにそれぞれ接続される。
【0071】
図4の回路はカレントミラー回路を構成しているので、トランジスタ52のコレクタ電流と同じ電流値の電流が第1のバイアス電流端子55及び第2のバイアス電流端子56にそれぞれ現れる。
【0072】
トランジスタ52のコレクタ電流は電圧入力端子50に入力される利得制御信号”V”によって変化するので、第1のバイアス電流端子55の電流”I”及び第2のバイアス電流端子56の電流”I’”も利得制御信号”V”によって変化することになる。
【0073】
この結果、発振回路の簡素な回路構成により、回路規模の大幅な削減及び発振ループの位相遅延要求が緩和されるので、低消費電流化及び低ノイズ化が可能になる。
【0074】
また、発振ループの回路段数の削減により、ループ位相遅延が短縮され、さらに、発振ループの信号は全て完全対称な差動回路により構成されるので、発振位相安定度の向上が可能になる。
【0075】
また、信号増幅利得と発振維持条件を独立して設定できるので、設計条件及び動作条件設定に高い自由度を有することが可能になる。
【0076】
なお、図1に示す実施例では、振動式センサを励振入力及び信号出力を有する4端子素子としたが、振動式センサを励振入力及び信号出力に分割されない2端子素子としてもよい。
【0077】
この場合、発振回路との接続は図5のようになる。図5は振動式センサが2端子素子の場合の構成ブロック図である。図5において58は2端子素子の振動式センサである。
【0078】
発振回路26の第1の出力端子”Vs1”は第1の入力端子”Vi1”及び振動式センサ58の一端に接続され、発振回路26の第2の出力端子”Vs2”は第2の入力端子”Vi2”及び振動式センサ58の他端に接続される。
【0079】
発振回路26の第1の出力端子”Vs1”及び第2の出力端子”Vs2”から振動式センサ58の端子間に電流が流れ、振動式センサ58の端子に現れる電圧を発振回路26の第1の入力端子”Vi1”及び第2の入力端子”Vi2”にそれぞれ入力する。
【0080】
その後の処理は図1の場合と同様に発振回路26の第3及び第4の出力端子より振動式センサ58の端子に現れる電圧を増幅出力し、フィードバックループ回路を経由して利得制御信号”V”を発振回路26にフィードバックする。
【0081】
この結果、図1の場合と同様に、発振回路の簡素な回路構成により、回路規模の大幅な削減及び発振ループの位相遅延要求が緩和されるので、低消費電流化及び低ノイズ化が可能になる。
【0082】
また、発振ループの回路段数の削減により、ループ位相遅延が短縮され、さらに、発振ループの信号は全て完全対称な差動回路により構成されるので、発振位相安定度の向上が可能になる。
【0083】
また、信号増幅利得と発振維持条件を独立して設定できるので、設計条件及び動作条件設定に高い自由度を有することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る自励発振回路の一実施例を示す構成ブロック図である。
【図2】振動センサの自励発振動作を説明する説明図である。
【図3】発振回路の構成回路図である。
【図4】利得制御信号を用いた電流源の一例を示す構成回路図である。
【図5】振動式センサが2端子素子の場合の構成ブロック図である。
【図6】従来の自励発振回路の一例を示す構成ブロック図である。
【符号の説明】
【0085】
1,33,34 入力端子
2,3 トランス
4,5,6,7,8,9,10,11 電圧源
12 電圧/電流変換器
13,14,15,16,43,44,51 抵抗
17,18,19 演算増幅器
20 利得制御変換器
21 二乗演算器
22,23 コンデンサ
24,31,35,36 出力端子
37 非反転出力端子
38 反転出力端子
25,58 振動式センサ
26 発振回路
27 増幅器
28 誤差増幅器
29 基準電圧
30 検波回路
32 トランスコンダクタンスアンプ
39,40,41,42,52,53,54 トランジスタ
45,46,47 電流源
48 正電圧源
49,57 負電圧源
50 電圧入力端子
55,56 バイアス電流端子
100,101 電流/電圧変換器
102 積分器
103 差動増幅回路
104,105 エミッタフォロア回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動式センサの振動子を自励発振させる自励発振回路において、
圧力を検出する前記振動子を有する前記振動式センサと、
前記振動式センサからの出力を受ける差動増幅回路と、第1のトランジスタのベースが前記差動増幅回路の一方の出力端子に接続され、前記第1のトランジスタのエミッタが前記振動式センサの一方の入力端子及び第1の電流源に接続される第1のエミッタフォロア回路と、第2のトランジスタのベースが前記差動増幅回路の他方の出力端子に接続され、前記第2のトランジスタのエミッタが前記振動式センサの他方の入力端子及び第2の電流源に接続される第2のエミッタフォロア回路とから構成され、前記振動式センサからの出力電圧を出力電流に変換するトランスコンダクタンスアンプとして動作する発振回路と
を備えたことを特徴とする自励発振回路。
【請求項2】
振動式センサの振動子を自励発振させる自励発振回路において、
圧力を検出する前記振動子を有する前記振動式センサと、
前記振動式センサからの出力を受ける差動増幅回路と、
第1のトランジスタのベースが前記差動増幅回路の一方の出力端子に接続され、前記第1のトランジスタのエミッタが前記振動式センサの一方の入力端子及び利得制御信号に基づき電流値が制御される第1の電流源に接続される第1のエミッタフォロア回路と、第2のトランジスタのベースが前記差動増幅回路の他方の出力端子に接続され、前記第2のトランジスタのエミッタが前記振動式センサの他方の入力端子及び前記利得制御信号に基づき電流値が制御される第2の電流源に接続される第2のエミッタフォロア回路とから構成され、前記振動式センサからの出力電圧を出力電流に変換するトランスコンダクタンスアンプとして動作する発振回路と、
この発振回路からの出力を増幅する増幅器と、
この増幅器からの交流信号の振幅を直流電圧に変換する検波回路と、
この検波回路の出力に基づき前記利得制御信号を生成して前記発振回路に出力する誤差増幅器と
を備えたことを特徴とする自励発振回路。
【請求項3】
前記第1の電流源及び前記第2の電流源が、
一端に前記利得制御信号が入力される抵抗と、
コレクタ及びベースに前記抵抗の他端が接続され、エミッタが負電圧源に接続される第3のトランジスタと、
ベースが前記第3のトランジスタのベースに接続され、エミッタが前記負電圧源に接続され、コレクタが前記第1のトランジスタのエミッタに接続される第4のトランジスタと、
ベースが前記第3のトランジスタのベースに接続され、エミッタが前記負電圧源に接続され、コレクタが前記第2のトランジスタのエミッタに接続される第5のトランジスタとから構成されることを特徴とする
請求項2記載の自励発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−158557(P2007−158557A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348667(P2005−348667)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】