説明

自動ドア用安全装置

【課題】距離画像センサユニットを用いて鉛直方向での面検知を行い、所定の検知エリアでの支障物を精度良く検知してドア部の接触部分での支障物の挟み込みを確実に防止することのできる自動ドア用安全装置を提供する。
【解決手段】プラットホーム用可動安全柵11の戸袋12の下方に自動ドア用安全装置10の鉛直方向距離画像センサユニット22を配置する。自動ドア用安全装置10は、ドア部13付近で略鉛直方向にレーザー光23aを照射し、ドア部13に平行な検知エリア16(17)で面検知を行い、扇形エリア内に支障物があるときこの支障物までの距離情報を含む距離画像を生成する少なくとも1つの鉛直方向距離画像センサユニット22と、距離画像センサユニット22により生成された距離画像に基づいて、扇形エリア内の前記支障物の存在の有無を判定する判定手段27を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動ドア用安全装置に関し、特に、自動ドア装置に備え付けられる距離画像センサを利用して鉛直方向の面検知を行ってドア部による挟み込みを検知する自動ドア用安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の人が訪れる商業施設やホール等の出入口の多くには、自動ドア装置が設置されており、ドア部の付近に存在する人をセンサで捉えて、ドア部を自動で開閉している。自動ドア装置は、これ以外にも駅のプラットホーム等に乗客が線路に転落することを防止するためのプラットホーム用可動安全柵のようなものがある。このようなプラットホーム用可動安全柵は、通常車両の乗降扉の位置に対応する部分がドア部となっており、それ以外の場所は壁部となっている。列車が入線して所定の停止位置で停車した後、列車の乗降ドアの開閉に合わせてプラットホーム用可動安全柵のドア部も自動で開閉することにより、通路が形成され、乗客が乗降することができる。特に、このようなプラットホーム用可動安全柵には、乗客が駆け込み乗車をしたときや、通勤時間帯等でプラットホームに多数の乗客がいて混雑している時等に、プラットホーム用可動安全柵の閉まりかけたドア部に乗客や荷物等が挟まれないように防止することが必要となる。このため、プラットホーム用可動安全柵には、ドア部付近に存在する人や荷物等をセンサで検知して、人や荷物等がドア部に挟み込みこまれないように防止する自動ドア用安全装置が一般的に設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される人体検知センサでは、距離画像センサ部が、発光源から変調光を発し、支障物である人から反射する光を複数個の感光部が配列される光検出素子で受光する。距離画像センサ部は、発光源から変調光を発せられてから光検出素子が変調光を受けるまでの時間を距離に換算することで距離画像を生成する。そして、距離画像センサ部がその距離画像に基づいて、所定エリア内に存在する人を検知している。
【0004】
また、特許文献2に開示される自動ドア用人体検出装置でも、距離検出手段が受光用フォトセンサアレイにより検知エリア内に存在する人から発せられる反射光を受光し、この受光した反射光の強度を距離に換算している。そして、距離検出手段が、その距離に基づいて、検知エリア内に存在する人を検知している。特に、この自動ドア用人体検出装置では、検知エリアの不感エリアを無くすために、自動ドアの出入口近傍の床面の上方空間が検知エリアとなるように構成されている。
【0005】
また、特許文献3に開示される可動ホーム柵装置では、特に支障物検知手段を多数設置する必要がないように、支障物検知手段が多面鏡によりレーザー光を扉と列車との渡り通路部分を横断するようにプラットホームに対して水平に照射し、渡り通路に沿う方向または渡り通路に対して斜め方向に走査して、支障物を検出している。
【特許文献1】特開2006−046961号公報
【特許文献2】特開平10−197634号公報
【特許文献3】特開2002−220046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に開示される人体検知センサや特許文献2に開示される自動ドア用人体検出装置では、一般的な透過型の光電センサを使用して、各光電センサから光線を出力して支障物を検知するものである。このため、検知エリア内であっても、死角となる部分が多く生じる場合があり、支障物を精度良く検知することができない場合があった。また、特許文献3に開示される可動ホーム柵装置のようにレーザー光により支障物を検知するものではあるが、レーザー光をプラットホームの床面に対して水平方向に照射して渡り通路を走査するものである。このため、乗客は列車に乗り込んでいたり、またはドアの手前に立っていたりして、乗客自身はドア部に挟み込まれていない場合であっても、その乗客が所持している荷物が列車とドア部との間に取り残されていると、これを検知することができない場合があった。つまり、レーザー光を用いて面状に支障物を検知するものであっても、死角部分を完全になくすことはできなかった。
【0007】
このため、上述したような距離画像センサ部をプラットホーム用可動安全柵のみならず、その上方付近にも設置することで、死角となる部分を少なくして支障物を検知する精度を高めることも考えられる。しかしながら、この方法は、距離画像センサ部をプラットホーム用可動安全柵と別に設置する工事の手間や設置費用が多くかかるため、実用的ではなかった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記の課題に鑑み、距離画像センサユニットを用いて鉛直方向での面検知を行い、所定の検知エリアでの支障物を精度良く検知してドア部の接触部分での支障物の挟み込みを確実に防止することのできる自動ドア用安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る自動ドア用安全装置は、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
【0010】
第1の自動ドア用安全装置(請求項1に対応)は、自動ドア装置に設けられる自動ドア用安全装置であって、自動ドア装置のドア部付近で略鉛直方向にレーザー光を照射し、ドア部に平行な扇形エリアで面検知を行い、扇形エリア内に支障物があるときこの支障物までの距離情報を含む距離画像を生成する少なくとも1つの鉛直方向距離画像センサユニットと、距離画像センサユニットにより生成された距離画像に基づいて、扇形エリア内の前記支障物の存在の有無を判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
上記の自動ドア用安全装置では、鉛直方向距離画像センサが、支障物にレーザー光を照射し、自動ドア装置のドア部が動き得る付近の所定エリアを通路に対して略鉛直方向にレーザー光を走査することにより、扇形の面検知を行って距離画像を生成する。判定手段は、その距離画像に基づいて、その所定エリア内の支障物の存在の有無を判定する。これにより、ドア部に挟み込まれる支障物を検知する際に死角となる部分が少なくなり、支障物の存在の有無を精度良く判定し、ドア部への支障物の挟み込みを防止することが可能となる。
【0012】
第2の自動ドア用安全装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、自動ドア装置の通路床面に対して略水平方向にレーザー光を照射しかつ走査することにより、支障物までの距離情報を含む距離画像を生成する水平方向距離画像センサユニットと、鉛直方向と水平方向の間の斜め方向にレーザー光を照射しかつ走査することにより、支障物までの距離情報を含む距離画像を生成する斜め方向距離画像センサユニットとを備え、判定手段は、鉛直方向距離画像センサユニット、水平方向距離画像センサユニット、および斜め方向距離画像センサユニットのそれぞれにより生成された複数の距離画像に基づいて支障物の存在の有無を判定することを特徴とする。
【0013】
上記の自動ドア用安全装置では、水平方向距離画像センサおよび斜め方向距離画像センサをさらに設け、水平方向距離画像センサおよび斜め方向距離画像センサが上述した所定エリアを水平方向および斜め方向に走査することにより、距離画像を生成する。判定手段は、その複数の距離画像に基づいて、その所定エリア内の支障物の存在の有無を判定する。つまり、鉛直方向距離画像センサと同様の構成を有する距離画像センサを設け、複数方向を走査する。これにより、簡易な構成でありながら、鉛直方向距離画像センサのみを設け、支障物の存在の有無を判定するときよりも死角となる部分がさらに少なくなり、支障物の存在の有無を精度良く判定し、ドア部への支障物の挟み込みを防止することが可能となる。
【0014】
第3の自動ドア用安全装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、鉛直方向距離画像センサユニットの扇形の検知面を鉛直方向と水平方向との範囲内で回転させる回転駆動手段をさらに備え、判定手段は、回転駆動手段によって回転駆動される鉛直方向距離画像センサユニットにより複数の位置で生成された複数の距離画像に基づいて支障物の存在の有無を判定することを特徴とする。
【0015】
上記の自動ドア用安全装置では、回転駆動手段をさらに設け、鉛直方向距離画像センサを鉛直方向と水平方向との範囲内で回転駆動させる。判定部は、回転駆動手段により回転駆動される鉛直方向距離画像センサの各位置で生成された複数の距離画像に基づいて、その所定エリア内の支障物の存在の有無を判定する。これにより、自動ドア装置に鉛直方向距離画像センサを設けるだけで、複数の距離画像センサを設けたときと同様に、死角となる部分が少なくなり、支障物の存在の有無を精度良く判定し、ドア部への支障物の挟み込みを防止することが可能となる。
【0016】
第4の自動ドア用安全装置(請求項4に対応)は、上記の構成において、回転駆動手段は、パルスモータを用いるものであることを特徴とする。
【0017】
第5の自動ドア用安全装置(請求項5に対応)は、上記の構成において、自動ドア装置は、プラットホーム用可動安全柵であることを特徴とする。
【0018】
第6の自動ドア用安全装置(請求項6に対応)は、上記の構成において、自動ドア装置は通路の両側に配置された2つのドア部を備え、扇形エリアは2つのドア部の接触部付近を含むことを特徴とする。
【0019】
第7の自動ドア用安全装置(請求項7に対応)は、上記の構成において、2つのドア部のそれぞれを収納する2つのドア筐体部の各々に鉛直方向距離画像センサユニットを設け、2つの鉛直方向距離画像センサユニットで作られる扇形エリアの重複エリアで支障物の有無を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鉛直方向距離画像センサが、支障物にレーザー光を照射し、自動ドア装置のドア部が可動する付近の所定エリアを通路に対して鉛直方向に走査することにより、距離画像を生成する。判定手段は、その距離画像に基づいて、その所定エリア内の支障物の存在の有無を判定する。この構成によって、ドア部に挟み込まれる支障物を検知する際に死角となる部分が少なくなり、支障物の存在の有無を精度良く判定し、ドア部への支障物の挟み込みを防止することができる。距離画像センサを自動ドア装置の上方付近に設けなくても、死角となる部分を従来よりも少なくすることができるので、距離画像センサを設置する費用を抑えると共に、設置工事の簡易化を図ることができる。
【0021】
また、水平方向距離画像センサおよび斜め方向距離画像センサをさらに設け、水平方向距離画像センサおよび斜め方向距離画像センサが上述した所定エリアを水平方向および斜め方向に走査することにより、複数の距離画像を生成する。判定手段は、その複数の距離画像に基づいて、その所定エリア内の支障物の存在の有無を判定する。この構成によって、鉛直方向距離画像センサと同様の構成を有する距離画像センサを設けるという簡易な構成でありながら、死角となる部分がさらに少なくなり、ドア部への支障物の挟み込みを防止することができる。
【0022】
さらに、駆動制御部を設けて、鉛直方向距離画像センサを鉛直方向と水平方向との範囲内で回転駆動させる。この構成によって、複数の距離画像センサを用いなくても、複数の距離画像センサを用いたときと同様に、ドア部への支障物の挟み込みを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0024】
まず、図1を参照して、本発明に係る自動ドア用安全装置の代表的な実施形態として、本発明に係る自動ドア用安全装置を設けたプラットホーム用可動安全柵の構成を説明する。同図は、本発明に係る自動ドア用安全装置を設けたプラットホーム用可動安全柵の構成を示す斜視図であり、電車等が入線する線路側から見た図である。
【0025】
図1に示す本発明に係る自動ドア用安全装置10を設けたプラットホーム用可動安全柵11は、戸袋12、ドア部13、およびドア駆動制御部14を備えて構成される。一対の戸袋12はそれぞれドア部13を収納するドア筐体部である。当該戸袋12の構造部分は、プラットホーム15の床面に固定されている。ドア部13は、一対の戸袋12に収納され、かつドア駆動制御部14の制御に基づく進退動作により開閉自在に動作する。一対の戸袋12は、所要の間隔をあけて配置されている。当該間隔は乗降通路を形成する。ドア部13が閉じるときには乗降通路を閉じ、開くときには乗降通路が形成される。
【0026】
図1中に示す矢印Aは、列車(電車等)の進行路の方向を示している。プラットホーム用可動安全柵11は、通常、プラットホーム15の通路上に、進行路に沿って複数台一列に並べて設けられる。ドア駆動制御部14は、列車が入線すると、駅構内に設けられている制御装置等から制御信号を受信する。すると、ドア駆動制御部14は、2枚のドア部13をプラットホーム15に入線する列車のドア部の位置に合わせて可動させて、壁部を兼ねる戸袋12に収納させることにより、乗降口が形成される。
【0027】
そして、本実施形態に係る自動ドア用安全装置10は、このプラットホーム用可動安全柵11における例えば一対の戸袋12のそれぞれに設けられる。本実施形態では、列車とプラットホーム用可動安全柵11との間に存在する可能性のある支障物の有無を判定するため、自動ドア用安全装置10を、戸袋12の上述した列車の進行路Aの側となる壁面の例えば下部に設けている。具体的に、図示するように自動ドア用安全装置10は、各プラットホーム用可動安全柵11に形成される乗降口付近の両側の下側部分に設けられる。
【0028】
自動ドア用安全装置10は、後述する距離画像センサを利用して構成され、ドア部13によって挟み込む支障物が存在する可能性のある検知エリアに対してレーザー光を照射する。自動ドア用安全装置10では、ドア部13が動く付近の所定エリアに対してレーザー光を略鉛直方向に照射しかつ所要の角度で走査することにより、点線で示すような扇形状の検知エリア16,17を形成する。検知エリア16,17は、ドア部13の面に略平行な扇形の面状の検知エリアである。自動ドア用安全装置10は、この検知エリア16,17内の支障物の存在の有無を判定して、支障物である人や物が2つのドア部13によって挟み込まれるのを防止する。この検知エリア16,17は、任意の範囲であって良く、プラットホーム用可動安全柵11の形状や支障物の大きさ等に合わせて適宜決定すれば良い。
【0029】
またプラットホーム用可動安全柵11は、2枚のドア部13によって1つの乗降口を形成するものであるが、例えば1枚のドアにより乗降口を形成するものであれば、自動ドア用安全装置10を乗降口付近の片側のみに設けるだけでも良い。さらに、自動ドア用安全装置10をプラットホーム用可動安全柵11に設ける位置についても、上述した位置に限るものではなく、図示するような検知エリアを形成することができれば、プラットホーム用可動安全柵11の任意の位置に自動ドア用安全装置10を設けることができる。例えば、戸袋12の列車の進行路側の壁面のみならず、列車の進行路A側と反対側の壁面にも、自動ドア用安全装置10を設けても良い。
【0030】
続いて、図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る自動ドア用安全装置の構成を説明する。同図は、本発明の第1実施形態に係る自動ドア用安全装置の構成を示すブロック図である。
【0031】
図2に示す自動ドア用安全装置10は、制御部21、鉛直方向距離画像センサユニット22および判定部27を備えて構成される。制御部21は、装置内に設けられる各構成要素との間で制御信号を送受し、装置全体を統括して制御するものである。
【0032】
鉛直方向距離画像センサユニット22は、レーザー発光部23、検出部24、A/D変換部25、および距離画像生成処理部26を備えて構成される。レーザー発光部23は、略鉛直方向にレーザー光23aを照射しかつ走査を行い、検知エリア16,17を形成する。レーザー光23aを所要の角度で走査させ、扇状の検知エリア16,17を形成するため、レーザー発光部23には、レーザー光を振るための駆動部(図示せず)が設けられている。検出部24は、検知エリア16,17に支障物が存在するとき、当該支障物から与えられる光情報を受光素子で検出し、その光情報を電気信号に変換する。レーザー発光部23と検出部24によって距離画像センサが形成される。距離画像センサユニット22は、レーザー光23aを略鉛直方向に照射して検知エリア16,17を作るので、上記のように「鉛直方向距離画像センサユニット22」と規定される。A/D変換部25は、検出部24から出力される電気信号をアナログ信号からディジタル信号に変換する。距離画像生成処理部26は、A/D変換部25の出力信号に基づき、検知エリア16,17内で支障物が存在し、当該支障物でレーザー光23aが遮られているとき、支障物までの距離、支障物の大きさ等に換算し各画素に距離情報を付加した距離画像を生成する。
【0033】
判定部27は、距離画像生成処理部26で生成された距離画像に係る信号に基づいて、支障物の存在の有無を判定し、このドア部13の開閉を制御するドア開閉制御信号をドア駆動制御部14に対して出力する。判定部27から出力されるドア開閉制御信号は、例えば支障物が検知エリアに存在していると判定された場合であれば、閉まりかけたドア部13を開扉させる信号である。またドア部13の幅が広い場合には、支障物の大きさ等に合わせて、閉まりかけたドア部13を小さく開扉させることができるように、開扉させる幅をドア開閉制御信号に付加しても良い。
【0034】
本実施形態では、自動ドア用安全装置10における鉛直方向距離画像センサユニット22の数は1つであるが、複数の鉛直方向距離画像センサユニット22により画像を生成して、複数の画像に基づいて判定部27で判定することもできる。また、鉛直方向距離画像センサユニット22が検知エリア16,17を照射・走査したり、距離画像に係る情報を生成したりする時間間隔は、支障物の大きさや形状等に合わせて任意に設定することができる。なお、鉛直方向距離画像センサユニット22は、支障物が人や荷物等であるかを正確に特定することができなくても、支障物の大きさや形状等からドア部への挟み込みを防止する必要のある支障物であることを特定することができる程度の精度を有するものであれば良い。
【0035】
図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る自動ドア用安全装置による形成される検知エリア16を説明する。同図は、本発明の第1実施形態に係る自動ドア用安全装置10による形成される検知エリア16を示す模式図である。
【0036】
図3に示すように、プラットホーム用可動安全柵11の戸袋12の下方で、自動ドア用安全装置10内の鉛直方向距離画像センサユニット22が設けられる。そして、鉛直方向距離画像センサユニット22は、ドア部13が可動する付近のドア部13に平行なエリアをプラットホーム用可動安全柵11が設置されるプラットホーム15の通路に対して略鉛直方向に走査することにより、点線で示す検知エリア16に存在する支障物を距離画像として捉える。判定部27は、この距離画像に基づいて、停車中の列車31とプラットホーム用可動安全柵11との間に取り残された人32が存在していることを判定すると、ドア駆動制御部14に対してドア部13を開扉するドア開閉制御信号を出力する。
【0037】
続いて、図4を参照して、本発明の第2実施形態に係る自動ドア用安全装置の構成を説明する。同図は、本発明の第2実施形態に係る自動ドア用安全装置の構成を示すブロック図である。
【0038】
図4に示す自動ドア用安全装置40は、図2に示した自動ドア用安全装置10と同じ構成要部を備え、さらに水平方向画像センサユニット41および斜め方向距離画像センサユニット42を備えて構成される。以降、既に説明した構成要部の説明は省略する。水平方向画像センサユニット41および斜め方向画像センサユニット42は、鉛直方向距離画像センサユニット22と同じ構成要素を備えており、鉛直方向距離画像センサユニット22と同じ原理で距離画像を生成するものである。水平方向画像センサユニット41はドア部13が可動する付近の所定エリアをプラットホーム13の通路に対して略水平方向に、また斜め方向画像センサユニット42はドア部13が可動する付近の所定エリアを通路床面に対して垂直方向と水平方向との間の斜め方向に、それぞれ走査することにより列車31とプラットホーム用可動安全柵11との間に存在する支障物を距離画像として捉える。
【0039】
判定部27は、鉛直方向距離画像センサユニット22、水平方向画像センサユニット41および斜め方向距離画像センサユニット42からそれぞれ出力される複数の距離画像に基づいて、それぞれの検知エリアにおける支障物の存在の有無を判定する。また、判定部27は、支障物が検知エリアに存在していると判定した場合には、このドア部13の開閉を制御するドア開閉制御信号をドア駆動制御部14に対して出力する。
【0040】
上記の判定部27における支障物の判定処理方法は、一例として、判定部27が鉛直方向距離画像センサユニット22、水平方向画像センサユニット41および斜め方向距離画像センサユニット42が捉えた複数の距離画像に基づいて、1つでも支障物が存在していると判定した場合にはドア開閉制御信号を出力する。また、これに以外にも、判定部27が斜め方向距離画像センサユニット42から出力された距離画像によって支障物が検知エリアに存在していると判定し、さらに、鉛直方向距離画像センサユニット22または水平方向画像センサユニット41から出力された2つの距離画像のどちら一方の距離画像によって支障物が検知エリアに存在していると判定された場合に、ドア開閉制御信号を出力するようにしても良い。
【0041】
なお、本実施形態では、鉛直方向距離画像センサユニット22、水平方向画像センサユニット41および斜め方向距離画像センサユニット42の数はそれぞれ1つであるが、鉛直方向距離画像センサユニット22、水平方向画像センサユニット41および斜め方向距離画像センサユニット42をそれぞれ複数設け、各距離画像センサユニットは複数の画像を生成して、判定部27はそれらの複数の画像に基づいて支障物の有無を判定することもできる。また、鉛直方向距離画像センサユニット22、水平方向画像センサユニット41および斜め方向距離画像センサユニット42を別々の筐体で構成しているが、鉛直方向距離画像センサユニット22、水平方向画像センサユニット41および斜め方向距離画像センサユニット42を一体の筐体で構成しても良い。
【0042】
図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る自動ドア用安全装置により形成される検知エリアを説明する。同図は、本発明の第2実施形態に係る自動ドア用安全装置により形成される検知エリアを示す模式図である。
【0043】
第1実施形態と同様に、プラットホーム用可動安全柵11の戸袋12の下方に、自動ドア用安全装置40の鉛直方向距離画像センサユニット22が設けられる。さらに、鉛直方向距離画像センサユニット22の上方付近に水平方向画像センサユニット41が設けられ、その水平方向距離画像センサユニット41の上方付近に、斜め方向距離画像センサユニット42が設けられる。これらの3つの距離画像センサユニット22,41,42は、ドア部13が動き得る付近の所定エリアに関して、プラットホーム用可動安全柵11が設置されたプラットホーム13の通路床面に対して、略鉛直方向、略水平方向、および斜め方向を走査することにより、図中に点線で示すような検知エリア16,33,34を形成する。そして、自動ドア用安全装置40は、この検知エリア16,33,34内に存在する可能性のある支障物を距離画像として捉えることができる。判定部27は、鉛直方向距離画像センサユニット22、水平方向画像センサユニット41および斜め方向距離画像センサユニット42からそれぞれ出力される複数の距離画像に基づいて、支障物の存在の有無を判定する。なお、斜め方向距離画像センサユニット42が走査する斜め方向の走査面と、プラットホーム13の通路床面との間の角度は、検知しようとする支障物に合わせて任意の角度であって良い。
【0044】
また図6を参照して、第2実施形態の変形例に係る自動ドア用安全装置40により形成される検知エリアを説明する。同図は、本発明の第2実施形態の変形例に係る自動ドア用安全装置により形成される検知エリアを示す模式図である。
【0045】
図6に示す自動ドア用安全装置40の斜め方向距離画像センサユニット42は、ドア部13が動き得る付近の所定エリアを、下方から上方に向かって斜め方向に走査して、図中に点線で示すような検知エリア35に存在する支障物を距離画像として捉える。このように、斜め方向距離画像センサユニット42を鉛直方向距離画像センサユニット22のすぐ上方付近に設け、所定エリアを下方から上方に向かって斜め方向に走査することによっても、所定エリアを上方から下方に向かって斜め方向に走査したときとほぼ同じ判定精度を得ることができる。
【0046】
続いて、図7を参照して、本発明の第3実施形態に係る自動ドア用安全装置の構成を説明する。同図は、本発明の第3実施形態に係る自動ドア用安全装置の構成を示すブロック図である。
【0047】
図7に示す自動ドア用安全装置50は、図2に示した自動ドア用安全装置10と同じ構成要部を備え、さらに回転駆動制御部51を備えて構成される。回転駆動制御部51は、鉛直方向距離画像センサユニット22がプラットホーム15の通路床面に対して略鉛直方向と略水平方向との間の複数の位置で斜め方向に走査することができるように、鉛直方向距離画像センサユニット22を所定の時間間隔で所定の角度ずつ回転駆動させる。この回転駆動制御部51は、例えばパルスモータを用いて鉛直方向距離画像センサユニット22を回転駆動させ、特に精度良く位置決めを行えることが好ましい。
【0048】
また、図8を参照して、本発明の第3実施形態に係る自動ドア用安全装置50により形成される検知エリアを説明する。同図は、本発明の第3実施形態に係る自動ドア用安全装置50により形成される検知エリアを示す模式図である。
【0049】
第1実施形態と同様に、プラットホーム用可動安全柵11の戸袋12の下方に、自動ドア用安全装置50の鉛直方向距離画像センサユニット22が設けられる。図示するように回転駆動制御部51が鉛直方向距離画像センサユニット22を所定の時間間隔で所定の角度ずつ回転駆動させる。これにより、鉛直方向距離画像センサユニット22は、自動ドア用安全装置10のドア部13が可動する付近の所定エリアを、プラットホーム用可動安全柵11が設けられるプラットホーム13の通路床面に対して略鉛直方向と略水平方向との間の複数の位置で斜め方向に走査して、図中に点線で示すような検知エリア16a〜16eに存在する人32を距離画像として捉える。
【0050】
まず、鉛直方向距離画像センサユニット22は、検知エリア16aから検知エリア16b,16c,16d,16eを形成するように順番に走査することにより、新たな距離画像を順次生成していく。この後、回転駆動制御部51が鉛直方向距離画像センサユニット22を逆方向に回転駆動させて、鉛直方向距離画像センサユニット22は検知エリア16eから16d,16c,16b,16aを形成するように順番に走査することにより、同様に新たな距離画像を生成していく。このように、回転駆動制御部51は、鉛直方向距離画像センサユニット22を繰り返し回転駆動させ続ける。なお、回転駆動制御部51が鉛直方向距離画像センサユニット22を回転駆動する範囲、時間間隔、角度等は支障物の大きさや形状等に合わせて、任意に決定することができる。また、支障物の判定精度を高めるために、回転駆動制御部51は、検知エリアによって鉛直方向距離画像センサユニット22を時間間隔、角度等を異ならせて回転駆動させても良い。
【0051】
判定部27は、鉛直方向距離画像センサユニット22から出力される距離画像を新たに出力される距離画像に更新しながら、その距離画像に基づいて支障物の存在の有無を判定する。そして、判定部27は、例えば1回でも支障物が検知エリア内に存在していると判定した場合に、ドア開閉制御信号をドア駆動制御部14に対して出力する。また、支障物の存在の有無を判定し、所定の回数連続して支障物が検知エリア内に存在していると判定した場合に、ドア開閉制御信号をドア駆動制御部14に対して出力するようにしても良い。
【0052】
以上の実施形態では、プラットホーム用可動安全柵11に設けられる自動ドア用安全装置として説明したが、これに限定されない。例えば、多数の人で賑わう商業店舗や公共施設等の出入口の自動ドア装置に設置したり、多数の来場客が訪れるホールやレジャー施設等の入出場ゲートに設置したりすることもできる。また、実施形態で説明した距離画像センサユニットにおける走査原理、距離画像生成方法や、自動ドア装置に自動ドア用安全装置を設ける位置、個数等については、本発明が理解・実施できる程度に公知である支障物の検知方式、支障物の大きさや自動ドア装置の形状等に基づいて概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、駅のプラットホーム等の車両の乗り場に安全のために設置されるプラットホーム用可動安全柵等の各種の自動ドア装置の自動ドア用安全装置として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る自動ドア用安全装置の代表的な実施形態を示す模式的な外観斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る自動ドア用安全装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る自動ドア用安全装置により形成される検知エリアを示す模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る自動ドア用安全装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る自動ドア用安全装置により形成される検知エリアを示す模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態の変形例に係る自動ドア用安全装置による検知エリアを示す模式図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る自動ドア用安全装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る自動ドア用安全装置により形成される検知エリアを示す模式図である。
【符号の説明】
【0055】
10,40,50 自動ドア用安全装置
11 プラットホーム用可動安全柵
12 戸袋
13 ドア部
14 ドア駆動制御部
15 プラットホーム
16,17 検知エリア
21 制御部
22 鉛直方向距離画像センサユニット
23 レーザー発光部
24 検知部
25 A/D変換部
26 距離画像生成処理部
27 判定部
41 水平方向距離画像センサユニット
42 斜め方向距離画像センサユニット
51 回転駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動ドア装置に設けられる自動ドア用安全装置であって、
前記自動ドア装置のドア部付近で略鉛直方向にレーザー光を照射し、前記ドア部に平行な扇形エリアで面検知を行い、前記扇形エリア内に支障物があるときこの支障物までの距離情報を含む距離画像を生成する少なくとも1つの鉛直方向距離画像センサユニットと、
前記距離画像センサユニットにより生成された前記距離画像に基づいて、前記扇形エリア内の前記支障物の存在の有無を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする自動ドア用安全装置。
【請求項2】
前記自動ドア装置の通路床面に対して略水平方向にレーザー光を照射しかつ走査することにより、支障物までの距離情報を含む距離画像を生成する水平方向距離画像センサユニットと、
鉛直方向と水平方向の間の斜め方向にレーザー光を照射しかつ走査することにより、支障物までの距離情報を含む距離画像を生成する斜め方向距離画像センサユニットと、
をさらに備え、
前記判定手段は、前記鉛直方向距離画像センサユニット、前記水平方向距離画像センサユニット、および前記斜め方向距離画像センサユニットのそれぞれにより生成された複数の距離画像に基づいて支障物の存在の有無を判定することを特徴とする請求項1記載の自動ドア用安全装置。
【請求項3】
前記鉛直方向距離画像センサユニットの扇形の検知面を前記鉛直方向と前記水平方向との範囲内で回転させる回転駆動手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記回転駆動手段によって回転駆動される前記鉛直方向距離画像センサユニットにより複数の位置で生成された複数の距離画像に基づいて支障物の存在の有無を判定することを特徴とする請求項1記載の自動ドア用安全装置。
【請求項4】
前記回転駆動手段はパルスモータであることを特徴とする請求項3記載の自動ドア用安全装置。
【請求項5】
前記自動ドア装置はプラットホーム用可動安全柵であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動ドア用安全装置。
【請求項6】
前記自動ドア装置は通路の両側に配置された2つの前記ドア部を備え、前記扇形エリアは2つの前記ドア部の接触部付近を含むことを特徴とする請求項5記載の自動ドア用安全装置。
【請求項7】
2つの前記ドア部のそれぞれを収納する2つのドア筐体部の各々に前記鉛直方向距離画像センサユニットを設け、2つの前記鉛直方向距離画像センサユニットで作られる前記扇形エリアの重複エリアで前記支障物の有無を検知することを特徴とする請求項6記載の自動ドア用安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−294053(P2009−294053A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147335(P2008−147335)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】