説明

自動二輪車

【課題】製造の容易なヘッドパイプを有する自動二輪車を提供する。
【解決手段】自動二輪車には、ステアリングシャフトが内側に挿通される管部20Aを有するヘッドパイプ20と、当該管部20Aから後方に伸びるように設けられるメインフレーム部21R,21Lとが設けられている。ヘッドパイプ20は、管部20Aと一体的に形成され、メインフレーム部21R,21Lの側面21fに溶接される左右の側壁部20a,20aを備えている。左右の側壁部20a,20aは、管部20Aの延伸方向に沿って設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車のフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車の車体フレームは、その前端にステアリングシャフトが内側に挿通されるヘッドパイプを有している。ヘッドパイプには、当該ヘッドパイプから後方に伸びるように配置され、燃料タンクを支持したり、エンジンを懸架するメインフレーム部が接続されている。ヘッドパイプとメインフレーム部との溶接に十分な強度を確保するために、ヘッドパイプのメインフレーム部に溶接される部分は、メインフレーム部の側面に沿うように設けられることが望ましい。特許文献1に開示される自動二輪車の車体フレームでは、ヘッドパイプのステアリングシャフトが挿通される部分(以下、管部)の外周面に、メインフレーム部の先端が差し込まれる穴が形成され、穴の縁とメインフレーム部の側面とが溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4132431号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されるヘッドパイプの製造では、左右方向から材料に圧力を加える鍛造によって円柱状の部材が形成された後に、当該円柱状の部材に貫通穴を形成する切削作業が行われ、それによって管部が形成されていた。そして、その後に、管部の外周面に、メインフレーム部を差し込むための穴を形成する切削作業が行われていた。このように、特許文献1のヘッドパイプの製造では、メインフレーム部の側面に溶接される部分、すなわち穴の縁を形成するために多くの工程が必要とされ、製造が煩雑であった。また、円柱状の部材に貫通穴を形成する切削において、削り取る部分が多くなり、生産効率が良くなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、製造を容易化するとともに、生産効率の向上を図ることのできるヘッドパイプを有する自動二輪車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る自動二輪車は、ステアリングシャフトと、前記ステアリングシャフトの長さ方向に伸び、当該ステアリングシャフトが内側に挿通される管部を有するヘッドパイプと、前記管部から車体の後方に伸びるように配置されるメインフレーム部と、を備える。前記ヘッドパイプは、前記管部と一体的に形成され、前記メインフレーム部の側面に溶接される左右の側壁部を備え、前記左右の側壁部は、前記管部の延伸方向に沿って設けられている。
【0007】
本発明によれば、側壁部が管部の延伸方向に沿って設けられているので、管部の延伸方向に金型を抜く鋳造や、管部の延伸方向から材料に圧力を加える鍛造、管部の延伸方向への押出加工などによって、管部と側壁部とを一体的に形成することができる。その結果、ヘッドパイプの製造に要する工程を低減できる。また、左右方向から圧力を加える鍛造によってヘッドパイプを作る場合に比べて、製造工程において切削を要する部分を少なくできるため、生産効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車の側面図である。
【図2】上記自動二輪車が有する車体フレームの斜視図である。
【図3】上記車体フレームの前部の分解斜視図である。
【図4】上記車体フレームの前部の側面図である。
【図5】上記車体フレームの前端に設けられたヘッドパイプと補強部材の平面図である。
【図6】図4に示すVI−VI線での断面図である。
【図7】図4に示すVII−VII線での断面図である。
【図8】図4に示すVIII−VIII線での断面図である。
【図9】上記ヘッドパイプの斜視図である。
【図10】上記補強部材の斜視図である。
【図11】上記ヘッドパイプの製造において利用されるダイスの例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態の例である自動二輪車1の側面図である。図2は、自動二輪車1が有する車体フレーム2の斜視図である。図3は、車体フレーム2の前部の分解斜視図である。図4は、車体フレーム2の前部の側面図である。図5は、車体フレーム2の前端に設けられたヘッドパイプ20と補強部材24の平面図である。図6は、図4に示すVI−VI線での断面図であり、図7は、図4に示すVII−VII線での断面図であり、図8は、図4に示すVIII−VIII線での断面図である。図9は、ヘッドパイプ20の斜視図である。図10は、補強部材24の斜視図である。
【0010】
図1又は図2に示すように、自動二輪車1は、車体フレーム2と、フロントサスペンション3と、エンジン4とを有している。車体フレーム2は、当該車体フレーム2の前端に位置するヘッドパイプ20と、当該ヘッドパイプ20から車体の後方且つ斜め下方に伸びる左右のメインフレーム部21R,21Lとを有している。自動二輪車1は、例えば、不整地等を走行する、所謂オフロードタイプの自動二輪車である。
【0011】
フロントサスペンション3は、斜め上下方向に伸びる左右の緩衝器31を有している。緩衝器31は、その下端で前輪9を支持している。左右の緩衝器31の上部には、当該緩衝器31を保持するブラケット32が掛け渡されている(図4参照)。また、左右の緩衝器31の上部の間には、ステアリングシャフト5が配置されている。ステアリングシャフト5は、ヘッドパイプ20の内側に挿通され(図8参照)、回転可能に支持されている。ステアリングシャフト5の上方に配置されたハンドル7は、フロントサスペンション3に設けられたブラケット32に固定されている。そして、前輪9と、フロントサスペンション3と、ハンドル7は、ステアリングシャフト5を中心にして一体的に回転するよう設けられている。
【0012】
左右のメインフレーム部21R,21Lは、その前部に、前パイプ部21Aを有している(図2参照)。前パイプ部21Aの下方には、エンジン4が配置され、エンジン4は前パイプ部21Aによって懸架されている。エンジン4の後方に後輪8が配置され、エンジン4が出力するトルクは、チェーン11を介して後輪8に伝達される。また、エンジン4の後方には、前後方向に伸びるようにリアアーム12が配置されており、後輪8の車軸はこのリアアーム12の後端で支持されている。図2に示すように、左右のメインフレーム部21R,21Lは、その後部に、後フレーム部21Bを有している。後フレーム部21Bは、エンジン4の後方の位置にピボット支持部21aを有している。リアアーム12の前端は、ピボット支持部21aによって支持されるピボット軸(不図示)によって支持されており、リアアーム12と後輪8は、ピボット軸を中心にして上下動可能となっている。
【0013】
図1に示すように、エンジン4の上方には、燃料タンク13が配置されている。この例では、燃料タンク13は左右の前パイプ部21Aの間に位置し、当該前パイプ部21Aによって支持されている。燃料タンク13の後方には、搭乗者が跨って座ることのできるシート14が配置されている。シート14の下方には、前端が前パイプ部21Aに接続されたシートレール29が配置されており、シート14はこのシートレール29によって支持されている。
【0014】
車体フレーム2について詳説する。図2又は図3に示すように、車体フレーム2は、上述したヘッドパイプ20及びメインフレーム部21R,21Lに加えて、ダウンフレーム部22と、ベアリング保持部材23と、左右の下フレーム部27R,27Lを有している。
【0015】
メインフレーム部21R,21Lの前端は、すなわち前パイプ部21Aの前端は、ヘッドパイプ20に溶接され、前パイプ部21Aは、ヘッドパイプ20から後方且つ斜め下方に延伸している。本実施形態では、ヘッドパイプ20はステアリングシャフト5が内側に挿通される筒状の管部20Aを有し、前パイプ部21Aは管部20Aから後方に伸びるように配置されている。
【0016】
図2に示すように、前パイプ部21Aは、後方に行くに従って、それらの間隔が広くなるように配置されている。前パイプ部21Aの後端には、クロス部21cが掛け渡されている。また、前パイプ部21Aの後端には、当該後端から斜め上方に突出するようにブラケット21d,21dが取り付けられている。このブラケット21d、21dには、上述したシートレール29の前端が取り付けられる。さらに、前パイプ部21Aの後端には、当該後端から斜め下方に突出するようにブラケット21eが取り付けられており、エンジン4の上部はこのブラケット21eに取り付けられている。後フレーム部21Bは、前パイプ部21Aからエンジン4の後において下方に伸びるように配置されている。後フレーム部21Bの下端には、クロス部21bが掛け渡されている。なお、前パイプ部21Aと後フレーム部21Bは、別体に構成された部材であり、後フレーム部21Bの上端が前パイプ部21Aの後端に溶接されている。
【0017】
図3に示すように、前パイプ部21Aの前端には、上方からベアリング保持部材23が溶接されている。ベアリング保持部材23は、ステアリングシャフト5を回転可能に支持するベアリング51を保持する部材であり(図8参照)、ベアリング51が内側に圧入される環状のベアリング保持部23aと、ベアリング保持部23aから後方に伸び前パイプ部21Aに上方から溶接される後溶接部23bとを有している。この例では、後溶接部23bの縁23dは前パイプ部21Aの外周面に溶接されている。
【0018】
図3に示すように、ダウンフレーム部22は、ヘッドパイプ20の下端から後方かつ斜め下方に伸びるように配置されている。この例では、ダウンフレーム部22は、その前端にベアリング保持部22aを有している。図8に示すように、このベアリング保持部22aも環状に形成され、その内側にステアリングシャフト5を回転可能に支持するベアリング52が圧入されている。ベアリング保持部22aは、ヘッドパイプ20の管部20Aの下縁に溶接されている。ダウンフレーム部22は、ベアリング保持部22aから後方且つ斜め下方に延伸している。
【0019】
図2に示すように、ダウンフレーム部22の後部は2つに分かれて伸びており、ダウンフレーム部22は、その後部に左右の延伸部22f,22fを有している。延伸部22f,22fには後方に突き出るようにブラケット22bが取り付けられている。このブラケット22bにエンジン4の前部が取り付けられており、ダウンフレーム部22はエンジン4を支持している。
【0020】
左右の下フレーム部27R,27Lは、左右の延伸部22f,22fから下方に僅かに伸びた後、後方に曲げられている。そして、下フレーム部27R,27Lは、エンジン4の下方において後方に伸び、その後端は、後フレーム部21Bの下端に溶接されている。左右の下フレーム部27R,27Lには、上方に突出し、エンジン4に取り付けられるブラケット27aが設けられており、下フレーム部27R,27Lはエンジン4を下方から支持している。
【0021】
図3又は図9に示すように、ヘッドパイプ20は、ステアリングシャフト5が内側に挿通される管部20Aと、当該管部20Aから後方に伸びる壁状に形成された左右一対の溶接壁部20B,20Bとを有している。各溶接壁部20Bは、メインフレーム部21R,21Lを構成する前パイプ部21Aの側面21fに溶接される側壁部20aと、前パイプ部21Aの下方に位置し当該前パイプ部21Aに溶接される下壁部20bとを有している。管部20Aと、側壁部20aと、下壁部20bは一体的に形成されている。
【0022】
管部20Aは、ステアリングシャフト5の長さ方向(図9においてDの示す方向、以下、管延伸方向とする)に伸びる管状を呈している。この例では、図6又は図7に示すように、管部20Aは、ステアリングシャフト5の前に位置し、略円弧状の断面を有する前壁部20cと、ステアリングシャフト5の後に位置する平たい壁状の後壁部20dとによって構成され、前壁部20cと後壁部20dの内側には、ステアリングシャフト5が挿通される空間S1が設けられている(図5参照)。前壁部20cと後壁部20dは、管延伸方向に沿って立つように設けられている。すなわち、前壁部20cと後壁部20dは、管延伸方向に伸びるように設けられている。
【0023】
ベアリング保持部22aは、管部20Aの下縁に対応した形状を有している。ダウンフレーム部22は、ヘッドパイプ20とは別体に構成された部材であり、ベアリング保持部22aは、管部20Aの下縁に溶接されている。同様に、ベアリング保持部23aは、管部20Aの上縁に対応した形状を有している。ベアリング保持部材23も、ヘッドパイプ20とは別体に構成された部材であり、管部20Aの上縁に溶接されている。なお、図8又は図9に示すように、ベアリング保持部22aの上縁には、環状をなし、管部20Aの内側に嵌る凸部22cが形成されている。管部20Aの内周面には、管延伸方向に伸びる凸部20eが形成されている。凸部20eの下端は切削されており、当該切削された部分にベアリング保持部22aの凸部22cの先端が当っている(図8参照)。また、ベアリング保持部23aの下縁には、環状をなし、管部20Aの内側に嵌る凸部23cが形成されている。一方、管部20Aの凸部20eの上端も切削されており、ベアリング保持部23aの凸部23cは、凸部20eの上端の切削された部分に当っている(図8参照)。
【0024】
図9に示すように、側壁部20aは、管部20Aの上部から後方に突出するように形成されている。図5又は図6に示すように、左右の側壁部20aは、互いに向き合うように設けられ、左右の側壁部20aの間に、左右の前パイプ部21Aの前端が配置されている。そして、右の側壁部20aは、右の前パイプ部21Aの側面21f(右側の側面)に溶接され、左の側壁部20aは、左の前パイプ部21Aの側面21f(左側の側面)に溶接される。
【0025】
上述したように、前パイプ部21Aは、上下方向に長い楕円形の断面を有する管状の部材であり、その側面21fの幅は上下方向に広くなっている。側壁部20aの後縁20gは、前パイプ部21Aの側面21fに沿うように当該側面21fに合わせて湾曲し(図4参照)、当該側面21fに溶接されている。
【0026】
図5に示すように、下壁部20bは、管部20Aの下部から後方に伸びるように形成されている。下壁部20bは、側壁部20aと同一平面上に位置するように形成されており、側壁部20aとともに平たい板状の溶接壁部20Bを構成している。下壁部20bは、前パイプ部21Aの下方において、側壁部20aの後縁20gを越えて後方に伸びている。前パイプ部21Aは、当該前パイプ部21Aの前端から、下壁部20bの上縁20hの上を通過して斜め後方に伸び、下壁部20b上に配置されている。そして、下壁部20bの上縁20hは、前パイプ部21Aの下縁に沿っており、当該前パイプ部21Aの下縁に溶接されている。
【0027】
上述したように、ベアリング保持部材23の後溶接部23bの縁23dは、前パイプ部21Aの前部の上に配置され、当該前パイプ部21Aの外面に溶接されている。また、側壁部24aの後縁20gは前パイプ部21Aの側面21fに溶接されている。そして、下壁部20bの上縁20hは前パイプ部21Aの下縁に溶接されている。これによって、ヘッドパイプ20と、ベアリング保持部材23の溶接位置は、前パイプ部21Aの前部の外面を囲むように設けられている。
【0028】
また、図3又は図4に示すように、下壁部20bはダウンフレーム部22上で立つように設けられ、下壁部20bの下縁20iは、ダウンフレーム部22に沿って後方に伸び、ダウンフレーム部22に溶接されている。この例では、左右の下壁部20bの間隔はダウンフレーム部22の幅に対応しており、下壁部20bの下縁20iは、ダウンフレーム部22の縁に溶接されている。なお、図3に示すように、ダウンフレーム部22には、左右の下壁部20bの内側において当該下壁部20bに沿って伸びる凸部22dが形成されている。これによって下壁部20bとダウンフレーム部22との位置精度の向上が図られている。
【0029】
側壁部20aと、下壁部20bは、管延伸方向に沿って立つように設けられている。すなわち各壁部は、管延伸方向に伸びるように形成されている。そして、側壁部20aと下壁部20bとが構成する左右の溶接壁部20Bの間には、後方に開くとともに、管延伸方向の上方及び下方に開いた空間S2が設けられ、この空間S2に前パイプ部21Aの前端が配置されている(図5参照)。
【0030】
また、管部20Aと溶接壁部20Bは、管延伸方向に沿って伸びる母線の移動によって構成される外面を有している。すなわち、管部20Aと溶接壁部20Bは、管延伸方向と平行な直線(例えば、図9に示す直線L1)が、それらの外形に沿って移動する時に当該直線が描く面を、当該管部20Aと溶接壁部20Bの外面として有している。
【0031】
このような形状を有する管部20Aと溶接壁部20Bは、管延伸方向の押出加工によって一体的に形成された部材である。すなわち、管部20Aと溶接壁部20Bの断面形状(管延伸方向に直交する切断面で得られる断面の形状(図7参照))に対応する形状を有するダイスの穴に、材料を通過させることによって得られた部材である。図11は、押出加工において利用されるダイスの概略を示す断面図である。同図に示すダイス100の穴100aは、図7に示す管部20Aと溶接壁部20Bの断面形状と同様の形状を有しており、管部20A及び溶接壁部20Bを有するヘッドパイプ20は、このようなダイス100の穴100aを通過させる押出加工によって形成される。なお、ダイス100の穴100aに材料を通過させると、図9に示すように、溶接壁部20Bの上方に、下壁部20bと同じ断面形状を有する板状の余剰部91を有するとともに、管部20Aの下方にも管部20Aと同じ断面形状を有する余剰部92を有する押出成形品が得られる。この様な余剰部91,92、及び管部20Aの内周面に形成された上述した凸部20eの端部を、押出成形品から切削することによって、ヘッドパイプ20が得られる。
【0032】
図3に示すように、車体フレーム2は、ヘッドパイプ20とは別体に構成された補強部材24と、補強ステー25と、ステー支持部材26とを有している。補強部材24は、その平面視において四角い枠状を呈する部材であり、左右の側壁部24a,24aと前壁部24bと後壁部24cとを有している(図4又は図5参照)。
【0033】
図3又は図4に示すように、補強部材24はダウンフレーム部22上に配置され、側壁部24aの下縁24dは、ダウンフレーム部22に沿って後方に伸びている。左右の側壁部24aの間隔はダウンフレーム部22の幅に対応しており、側壁部24aの下縁24dは、ダウンフレーム部22の縁に溶接されている。なお、図3に示すように、ダウンフレーム部22には、左右の側壁部24aの内側において当該側壁部24aに沿って伸びる凸部22eが形成されている。これによって、側壁部24aとダウンフレーム部22との位置精度の向上が図られている。
【0034】
図5又は図7に示すように、補強部材24は、ヘッドパイプ20の後に配置され、当該ヘッドパイプ20に溶接されている。詳細には、側壁部24a,24aの間隔は下壁部20b,20bの間隔と概ね等しくなっている。側壁部24a,24aは下壁部20b,20bの後に位置し、下壁部20bの後縁20jと側壁部24aの前縁24jとが溶接されている。なお、左右の側壁部24aの前縁24jに掛け渡される前壁部24bには、左右の下壁部20bの内側に配置されるとともに、下壁部20bに沿って上下方向に伸びる凸部24eが形成されている。これによって、ヘッドパイプ20と補強部材24の位置精度の向上が図られている。
【0035】
補強部材24は、メインフレーム部21R,21Lを構成する前パイプ部21A,21Aの間に配置され、前パイプ部21A,21Aのそれぞれに溶接されている。この例では、図4、図5又は図10に示すように、側壁部24aは、その側面視において略V字状を呈しており、その前部に、左右の前パイプ部21A,21Aの間において上方に伸びる側壁上部24fを有している。そして、左右の側壁上部24fは、左右の前パイプ部21Aの内側の側面(側面21fとは反対側の側面)に沿って配置され、当該側面に溶接されている。例えば、側壁上部24fの後縁24gが前パイプ部21Aの側面に溶接される(図10参照)。なお、この例では、前パイプ部21Aは斜めに配置されており、側壁上部24fも、前パイプ部21Aの側面に沿って斜めに配置されている(図5参照)。詳細には、側壁上部24fは、その前縁より後縁24gが車幅方向の外方に位置するように、斜めに配置されている。
【0036】
また、補強部材24は、前パイプ部21A,21Aを下方から支持するように形成されている。この例では、図5又は図10に示すように、側壁部24aは、その側面に、側方に張り出すように形成された台座部24hを有している。台座部24h上に前パイプ部21Aが載せられることによって、補強部材24は前パイプ部21Aを下方から支持している。そして、前パイプ部21Aの下縁と台座部24hとが溶接されている。なお、この台座部24hは、ヘッドパイプ20に設けられた下壁部20bの上縁20hと概ね面一となるように形成されている。
【0037】
側壁部24a、前壁部24b、及び後壁部24cは、管部20Aの延伸方向である管延伸方向に沿って配置されている。すなわち、各壁部は、管延伸方向と平行となっている。特に、この例では、補強部材24は、ヘッドパイプ20と同様に、管延伸方向に沿って伸びる母線の移動によって構成される外面を有している。すなわち、補強部材24は、管延伸方向と平行な直線が補強部材24の外形に沿って移動する時に当該直線が描く面を、当該補強部材24の外面として有している。
【0038】
補強部材24は、管延伸方向の押出加工によって一体的に形成された部材である。すなわち、補強部材24の断面形状(管延伸方向に直交する切断面で得られる断面の形状)に対応する形状を有するダイスの穴に、材料を通過させることによって形成された部材である。そのため、補強部材24の前縁24jは、管延伸方向に伸びている。また、ヘッドパイプ20は、管延伸方向の押出加工によって形成された部材であるため、下壁部20bの後縁20jも管延伸方向に伸びている。そのため、補強部材24の前縁24jと下壁部20bの後縁20jとは互いに密接し、これによってヘッドパイプ20と補強部材24との溶接強度の向上が図られている。なお、上述したように、側壁部24aの側面には前パイプ部21Aが載せられる台座部24hが形成されている。台座部24hは、例えば、ダイスの穴を通過した押出成形品の外面、すなわち側壁部24aの側面を部分的に切削することによって形成される。
【0039】
図3に示すように、補強部材24には、当該補強部材24の上方からステー支持部材26が取り付けられている。詳細には、ステー支持部材26は、ダウンフレーム部22と上下方向に向き合うように配置される上壁部26bと、上壁部26bの縁から垂下して、左右の側壁部24aの内側に配置される左右の側壁部26aとを有している。左右の側壁部26aの側面に、側壁部24aの上縁24iが溶接されている(図10参照)。
【0040】
ステー支持部材26は、上壁部26bによって補強ステー25を支持している。詳細には、補強ステー25は略U字状を呈する部材であり、上壁部26b上に補強ステー25の頂部25aが溶接されている。補強ステー25は頂部25aから左右の前パイプ部21Aに向かって伸び、その端部は前パイプ部21Aの下縁に溶接されている。この様にして、補強ステー25は、前パイプ部21Aを下方から支持している。
【0041】
以上説明したように、自動二輪車1では、ヘッドパイプ20は、管部20Aと一体的に形成され、前パイプ部21Aの側面21fに溶接される左右の側壁部20a,20aを備えている。左右の側壁部20a,20aは、管延伸方向に沿って設けられている。その結果、管延伸方向に金型を抜く鋳造や、管延伸方向から材料に圧力を加える鍛造、管延伸方向への押出加工などによって、管部20Aと側壁部20a,20aとを一体的に形成することができる。その結果、ヘッドパイプの製造に要する工程を低減できる。
【0042】
また、自動二輪車1では、管部20Aと左右の側壁部20a,20aは、管延伸方向の押出加工によって形成されている。これによって、強度において優れたヘッドパイプが実現される。
【0043】
また、自動二輪車1では、ヘッドパイプ20は、前パイプ部21Aの下方に配置され、当該前パイプ部21Aの下部に溶接される下壁部20bを有している。これによって、ヘッドパイプ20と前パイプ部21Aとの溶接の強度を向上できる。
【0044】
また、自動二輪車1では、下壁部20bは、管延伸方向に沿って設けられている。これによって、管延伸方向に金型を抜く鋳造や、管延伸方向から材料に圧力をくわえる鍛造、管延伸方向への押出加工等によって、管部20Aと側壁部20a,20aと下壁部20bとを一体的に形成することができる。
【0045】
また、自動二輪車1では、管部20Aと、左右の側壁部20a,20aと、下壁部20bは、管延伸方向への押出加工によって一体的に形成されている。これによって、強度において優れたヘッドパイプが実現される。
【0046】
また、自動二輪車1では、左右の側壁部20a,20aの間に配置される左右の前パイプ部21Aを有している。そして、左右の前パイプ部21Aの間には、左右の前パイプ部21Aの内側の側面に溶接される補強部材24が設けられている。これによって、車体フレーム2の剛性を向上できる。
【0047】
また、自動二輪車1では、補強部材24は、前パイプ部21Aが載せられる台座部24hを有している。これによって、補強部材24と前パイプ部21Aとの相対的な位置の精度を向上できる。
【0048】
また、自動二輪車1では、補強部材24はヘッドパイプ20に溶接されている。これによって、車体フレーム2の剛性を向上できる。
【0049】
なお、本発明は以上説明した自動二輪車1に限られず、種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、以上の説明では、側壁部20a,20aは、管部20Aから後方に突出するように形成されていた。しかしながら、側壁部20aはこれに限られない。例えば、肉厚の管部の外周面に、管延伸方向に伸びる溝が形成され、当該溝を構成する壁が、本発明における側壁部として、メインフレーム部21R,21Lに溶接されてもよい。
【0051】
また、自動二輪車1では、燃料タンク13やエンジン4を懸架するメインフレーム部として左右のメインフレーム部21R,21Lが設けられていた。しかしながら、本発明は1つのメインフレーム部のみを有する自動二輪車に適用されてもよい。
【0052】
また、自動二輪車1では、補強部材24とヘッドパイプ20は別体に構成され、溶接によって結合されていた。しかしながら、補強部材24とヘッドパイプ20は、例えば管延伸方向の押出加工によって一体的に形成されてもよい。
【0053】
また、自動二輪車1では、ベアリング51,52を保持するベアリング保持部22a,23aは、ヘッドパイプ20とは別体に構成されたダウンフレーム部22とベアリング保持部材23とに設けられていた。しかしながら、ベアリング51,52を保持する部分は、ヘッドパイプ20と一体的に形成されてもよい。例えば、管延伸方向への押出加工によって、ステアリングシャフト5が挿通される管部を形成した後に、管部の端部の内周面を切削して、当該内周面にベアリング51,52を保持する部分を形成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 自動二輪車、2 車体フレーム、3 フロントサスペンション、4 エンジン、5 ステアリングシャフト、7 ハンドル、8 後輪、9 前輪、20 ヘッドパイプ、20A 管部、20B 溶接壁部、20a 側壁部、20b 下壁部、20c 前壁部、20d 後壁部、20g 後縁、20h 上縁、20i 下縁、20j 後縁、21A 前パイプ部、21B 後フレーム部、21R,21L メインフレーム部、21f 側面、22 ダウンフレーム部、22a ベアリング保持部、23 ベアリング保持部材、23a ベアリング保持部、24 補強部材、24a 側壁部、24b 前壁部、24c 後壁部、24h 台座部、25 補強ステー、26 ステー支持部材、31 緩衝器、51 ベアリング、52 ベアリング、100 ダイス、100a 穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトの長さ方向に伸び、当該ステアリングシャフトが内側に挿通される管部を有するヘッドパイプと、
前記管部から車体の後方に伸びるように配置されるメインフレーム部と、を備え、
前記ヘッドパイプは、前記管部と一体的に形成され、前記メインフレーム部の側面に溶接される左右の側壁部を備え、
前記左右の側壁部は、前記管部の延伸方向に沿って設けられている、
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
請求項1に記載の自動二輪車において、
前記管部と前記左右の側壁部は、前記管部の延伸方向への押出加工によって形成されている、
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項3】
請求項1に記載の自動二輪車において、
前記ヘッドパイプは、前記メインフレーム部の下方に配置され、当該メインフレーム部の下部に溶接される下壁部をさらに有する、
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項4】
請求項3に記載の自動二輪車において、
前記下壁部は、前記管部の延伸方向に沿って設けられている、
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項5】
請求項4に記載の自動二輪車において、
前記管部と、前記左右の側壁部と、前記下壁部は、前記管部の延伸方向への押出加工によって一体的に形成されている、
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項6】
請求項1に記載の自動二輪車において、
前記メインフレーム部は、前記左右の側壁部の間に配置される左右のメインフレーム部を有し、
前記左右のメインフレーム部の間に配置され、当該左右のメインフレーム部の内側の側面に溶接される補強部材をさらに備える、
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項7】
請求項6に記載の自動二輪車において、
前記補強部材は、前記メインフレーム部が載せられる台座部を有する、
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項8】
請求項6に記載の自動二輪車において、
前記補強部材は前記ヘッドパイプに溶接されている、
ことを特徴とする自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−173595(P2010−173595A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21322(P2009−21322)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】