自動分析装置
【課題】 恒温槽を確実に開閉可能とし、複数のサンプルを効率よく自動分析可能とする。
【解決手段】 サンプルを収容するサンプル容器と、複数の前記サンプル容器を配置するサンプルディスクと、前記サンプルディスクにおける前記サンプル容器を特定温度に保つための開口部を有する恒温槽と、前記恒温槽の開口部を閉じるための複数の蓋とを備えた自動分析装置において、前記複数の蓋9を、そのうちの少なくとも一つ(可動蓋部14)が残りの蓋(固定部13)とは独立して開閉可能となるように互いに接続して構成する。
【解決手段】 サンプルを収容するサンプル容器と、複数の前記サンプル容器を配置するサンプルディスクと、前記サンプルディスクにおける前記サンプル容器を特定温度に保つための開口部を有する恒温槽と、前記恒温槽の開口部を閉じるための複数の蓋とを備えた自動分析装置において、前記複数の蓋9を、そのうちの少なくとも一つ(可動蓋部14)が残りの蓋(固定部13)とは独立して開閉可能となるように互いに接続して構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルを自動的に分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動分析装置は、図14に示すように、サンプルを収容した複数の試験管が配置されるサンプラ100と、これらサンプラ100に隣接して配設された第1の試薬庫101及び第2の試薬庫102と、これらサンプラ100、第1の試薬庫101及び第2の試薬庫102内からサンプル或いは試薬を吸引し反応管に分注するアーム103とを備えている。さらに、サンプラ100を密閉するサンプラカバー104、第1の試薬庫101を密閉する第1の試薬庫用カバー105及び第2の試薬庫102を密閉する第2の試薬庫用カバー106を備えている。
【0003】
通常、サンプラ100内のサンプル及び試薬は、蒸発防止や安全性確保のために、サンプル及び試薬の特性に合わせ所定の温度で一定となるように冷却されたり、温められたりして用いられている。このため、サンプルに関していえば、サンプラ100内を所定の温度で一定となるようにサンプラ100及びサンプラカバー104が断熱機能を有するように作られている。
【0004】
また、このサンプラ100の内部には、図15に示すように、サンプルを収容した複数の試験管を二重同心円状に保持するサンプルディスク107が設けられている。そして、サンプルの区別をするために各試験管に対応して番号が付されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した生化学自動分析装置においては、試料及び試薬を交換する際、サンプラカバー104を取り外し、サンプラ100の上面をすべて開放した状態で行っていた。このため、試料及び試薬を交換する際、サンプラ100内の温度が大幅に変化してしまうといった不都合が生じてしまう。このような場合、サンプラ100内を再び所望な温度に設定し直す必要があり、作業効率が悪いといった問題がある。また、上述した生化学自動分析装置において、サンプラカバー104は、自重でサンプラ100内部を密閉するような構造となっており、サンプラ100内部を確実に密閉することが困難であり、断熱効果が十分でないといった問題もある。
【0006】
加えて、上述した生化学自動分析装置では、サンプラ100を解放する際に、サンプルカバー104を装置自体から完全に取り外す必要があった。このため、サンプラカバー104の取り外しの際、当該サンプラカバ−104をサンプリングアーム103等になどにぶつけてしまう可能性があった。さらに、取り外したサンプラカバー104の置き場がないため、周囲の空きスペースや周辺のテーブルなどに仮置きするしかなく、これも不注意による事故を誘発する可能性があった。
【0007】
そこで、本発明は、例えばサンプラのような恒温槽や試薬を保冷する恒温槽を確実に開閉することができ、複数のサンプルを効率よく自動分析することができる自動分析装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の視点は、試料を収容した複数の試験管を配置するディスクと、前記試験管を特定温度に保つための第1恒温槽と、開口部を有し、試薬を保冷するための第2恒温槽と、固定蓋部及びこの固定蓋部に対して開閉可能に配置された可動蓋部を有し、前記第2恒温槽の開口部を閉じるためのカバーと、前記試料と前記試薬を反応させるための反応管と、前記試験管内の試料を前記反応管に分注するサンプリングアームと、前記試薬を前記反応管に分注する分注アームと、前記反応管で試薬と混ぜられた試料の成分分析を行う分析手段と、を備えることを特徴とする自動分析装置である。
【0010】
本発明の第2の視点は、試薬を収容する容器と、前記容器に収容された試薬を特定温度に保つための恒温槽と、前記恒温槽の上部を閉じるための蓋と、前記試料を分注するための分注アームとを備えた自動分析装置において、前記蓋は、前記分注アームが挿入可能に形成された開口部を有する固定蓋部と、この固定蓋部に対して開閉可能に配置された可動蓋部とを備えること、を特徴とする自動分析装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る自動分析装置によれば、恒温槽を確実の開閉可能とすることができ、複数のサンプルを効率よく自動分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る自動分析装置の好適な実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
本実施の形態では、図1に示すように、血清や尿等の試料の成分分析を自動的に行う生化学自動分析装置1を例示して説明する。なお、本発明は、ここで例示する生化学自動分析装置1に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種装置に適用されることは勿論である。
【0014】
この生化学自動分析装置1は、試料が収容された複数の試験管が配設される恒温槽2と、この恒温槽2に隣接して配設される第1の試薬庫3及び第2の試薬庫4と、第1の試薬庫3の外周に配設された反応部5と、第1の試薬庫3内の試薬を分注する第1の分注アーム6と、第2の試薬庫4内の試薬を分注する第2の分注アーム7と、恒温槽2内の試料を分注するサンプリングアーム8とを備えている。また、この生化学自動分析装置1は、恒温槽2を略々密閉するように配設されたサンプラカバー9を備えている。
【0015】
この生化学自動分析装置1において、恒温槽2は、内部を所定の温度に維持する温度調節機能を有しており、内部を所望の温度に維持することができる。また、この恒温槽2内には、図2に示すような複数の試験管を配設するサンプルディスク10が回転自在に配設されている。このサンプルディスク10には、試験管の外周形状に対応した開口形状を有する複数の保持部11が円周に沿って形成されている。特に、これら保持部11は、外周及び内周にそれぞれ同心円状に配列するとともに、外周側と内周側とが重ならないように、いわゆる千鳥状に配列している。また、これら保持部11は、この千鳥状に順に番号付けされている。すなわち、外周側の所定の保持部11aを「1」としたときに、この「1」の保持部11aに隣接する内周側の保持部11bを「2」とし、この「2」の保持部11bに隣接する外周側の保持部11cを「3」とするように、順に番号付けしている。
【0016】
また、サンプルディスク10の側面には、各保持部11に達する切欠き12が形成されている。このため、各保持部11は、サンプルディスク10の側面方向から切欠き12を介して目視可能とされる。
【0017】
一方、このサンプルディスク10が収納される恒温槽2は、図3に示すようなサンプラカバー9により略々密閉することができる。このサンプラカバー9は、恒温槽2に対して固定して装着される固定部13と、この固定部13に対して開閉可能に配設された可動蓋部14とから構成される。すなわち、このサンプラカバー9において、固定部13と可動蓋部14とは、ヒンジ15を介して接続されている。
【0018】
また、このサンプラカバー9の固定部13には、その外周面に、恒温槽2に固定するためのラッチ16が配設されている。このラッチ16は、固定部13の複数箇所に形成されていてもよく、複数箇所に形成されることによってより確実に固定することができる。さらに、このサンプラカバー9には、固定部13の上面に、手持ち部17が配設されるとともにサンプリングアーム8が進入可能なように開口部18が形成されている。さらにまた、このサンプラカバー9の固定部13には、ラッチ16の反対側に、恒温槽2に取り付けるための係合部19が形成されている。
【0019】
このように構成されたサンプラカバー9は、少なくとも内周側が断熱性材料や密着性の良い弾性材料から形成される。これにより、サンプラカバー9が恒温槽2に取り付けられた状態で、恒温槽2の内部を密閉することができ、所望の温度に維持することができる。すなわち、サンプラカバー9の少なくとも内周側を断熱性材料や密着性の良い弾性材料から形成することによって、サンプラカバー9は、恒温槽2内部の雰囲気を外部に逃がすようなことが防止できるとともに外部の雰囲気を内部に進入させるようなことを防止することができる。
【0020】
このようなサンプラカバー9を恒温槽2に取り付ける際には、図4に模式的に示すように、先ず、恒温槽2の側面に配設された係合爪20にラッチ16を係合させる。
【0021】
次に、恒温槽2の外周面に配設される係合爪21を固定部13の係合部19に係合させる。これにより、固定部13は、恒温槽2を確実に密閉するように取り付けられることとなる。
【0022】
また、このサンプラカバー9において、可動蓋部14は、固定部13に対して所定の位置で停止可能とされることが好ましい。言い換えると、可動蓋部14は、フリーストップヒンジ等のロック機構を有するヒンジ15を介して固定部13に接続されることが好ましい。このようなロック機構を有するヒンジ15を介することによって、可動蓋部14は、固定部13に対して所定の角度で位置を維持することができ、自重で恒温槽2を閉塞する方向に移動するようなことが防止されることになる。
【0023】
ところで、このようなサンプラカバー9は、係合爪21を外した後、ラッチ16を係合爪20から外すことによって、恒温槽2から容易に取り外すことができる。具体的には、先ず、係合爪21を外した後、固定部13を、図5中矢印aで示す方向に回動させ、その後、サンプラカバー9全体を、図5中矢印bで示す方向に移動させる。このように、上述したサンプラカバー9は、恒温槽2に対して非常に容易に取り外しが可能である。
【0024】
以上のように構成された生化学自動分析装置1は、恒温槽2がサンプラカバー9により密閉されており、恒温槽2内部が所定の温度に維持されている。そして、サンプラカバー9に形成された開口部18からは、恒温槽内のサンプルディスク10に保持された試験管が臨むこととなる。このため、サンプリングアーム8がこの開口部18内に挿入され、開口部18から臨む試験管内の試料をサンプリングすることができる。
【0025】
また、このサンプルディスク10は、開口部18から順次試験管を臨ませる必要があるため、恒温槽2内で所定の速度で回転駆動されている。このとき、サンプルディスク10は、上述したように、千鳥状に保持部11が形成されており、これら保持部11に保持された複数の試験管を有している。
【0026】
このサンプルディスク10では、試験管が千鳥状に保持され、かつ各保持部11に切り欠き12が形成されているため、バーコードが添付された試験管を用いる場合、サンプルディスク10の側面側に配置されたバーコードリーダによってサンプルディスク10が1周する間に、保持部11に付した番号順にすべての試験管のバーコードを読み取ることができる。
【0027】
さらに、この生化学自動分析装置1では、サンプルディスク10に保持された試験管を交換する場合、サンプラカバー9の可動蓋部14を動かして恒温槽2の内部を解放する。すなわち、この生化学自動分析装置1では、サンプラカバー9を半開きにした状態で試験管を交換することができるため、恒温槽2内の雰囲気の変化を極力小とすることができる。このため、この生化学自動分析装置1によれば、恒温槽2内の温度変化を小とすることができ、サンプラカバー9を閉めてから測定可能になるまでの時間を短縮でき、恒温槽内部を条件温度に維持するための消費電力を抑えることが可能となる。
【0028】
また、この生化学自動分析装置1では、試験管を交換或いは補充する場合、サンプラカバー9をサンプルディスク10に取り付けた状態で作業が行えるため、サンプラカバー9を外してサンプリングアーム8等の他部品にぶつけたり、試料・試薬の上に落としたりするといった危険も防止できる。また、作業中に取り外したサンプラカバー9の置き場に困ったり、仮置きしたサンプラカバー9を不注意で破損したりする危険も防止できる。
【0029】
さらに、必要に応じてサンプラカバーの固定部13を、上述したように取り外すことで、サンプラカバー9を恒温槽2から取り去ることもできる。このため、恒温槽2やサンプルディスク10をメンテナンスするような場合、操作性に優れたものとなっている。
【0030】
また、この生化学自動分析装置1において、サンプラカバー9は、上述したように、ロック機構を有するヒンジ15を介して固定部13及び可動蓋部14を接続しているため、可動蓋部14を所望の位置で停止させることができる。このため、可動蓋部14を手動で回動させて恒温槽2内を解放した場合、この可動蓋部14が自重で恒温槽2を閉塞する方向に回動してしまうようなことが防止される。この生化学自動分析装置1は、例えば操作者が作業中に手を挟まれる危険を防止することができる等、恒温槽2の開閉動作に際して優れた安全性を有することとなり、また、可動蓋部14がサンプリングアーム8等を損傷してしまうような事故を防止できる。
【0031】
また、生化学自動分析装置においては、必要に応じて保持部(サンプルディスク)に保持されている試験管を各保持部に付与された番号順(測定順)に交換、補充する場合があるが、当該生化学自動分析装置1は、上述したように千鳥状に配設された保持部11に対して、サンプルディスク10が千鳥状に順次番号付けされている。このため、可動蓋部14を回動させて恒温槽2を半開き状態とし、サンプルディスク10の略半分を外方へ露出させたとき、図6(a)に示すように、連続した番号が付与された保持部11が露出することとなる。具体的に、「1」から「24」まで順に番号付けされたサンプルディスク10では、「1」〜「12」の保持部11が露出することとなる。また、このサンプルディスク10を略半回転させることによって、図6(b)に示すように、「13」〜「24」の保持部11が露出することとなる。なお、この図6において、サンプルディスク10上の斜線部は、固定部13に覆われて外方に露出されていない領域を示している。
【0032】
これに対して、図7に示すような従来のサンプルディスク50では、外周側に配列された保持部51に順次番号付けされ、その後の番号が内周側に配列する保持部52に引き継がれて順次番号付けされている。具体的に、この従来のサンプルディスク50を使用した場合、図8(a)に示す状態で「1」〜「6」を露出させ、その後、サンプルディスク5を略半回転させ図8(b)に示す状態で「7」〜「12」を露出させる。次に、サンプルディスク50を再び略半回転させ図8(c)に示す状態で「13」〜「18」を露出させ、その後、サンプルディスク50を更に再び略半回転させ図8R>8(d)に示すように「19」〜「24」を露出させる。
【0033】
このように、従来のサンプルディスク50を使用した場合、「1」〜「24」の保持部51を番号順に露出させようとすると、サンプルディスク50を略2回転させる必要がある。したがって、このようなサンプルディスク50を使用した場合には、保持部51に付与された番号順に、試験管を交換する際に非常に煩わしい作業となってしまい、交換ミスを発生し易い。
【0034】
これに対して、生化学自動分析装置1では、図6(a)(b)に示したようにサンプルディスク10を略1回転させるだけで、保持部11に保持されている全ての試験管を付与した番号順(或いは測定順)に順次連続して交換することができる。このように、上述した生化学自動分析装置1は、従来のサンプルディスク50を使用した場合と比較して、交換すべき試験管の位置を容易に認識することができるので、交換ミスの発生を防ぐことができ、大幅に作業効率が向上したものとなる。
【0035】
ところで、本発明に係る生化学自動分析装置は、上述したようなサンプラカバー9を有するような構成に限定されるものではない。すなわち、他の実施の形態として示す生化学自動分析装置は、図9及び図10に示すように、恒温槽2に対して嵌合させるようなサンプラカバー25を有するような構成であっても良い。
【0036】
このサンプラカバー25は、恒温槽2の外径と略々同寸法の内径を有し、固定部26に対して可動蓋部27が回動自在に配設されてなる。また、このサンプラカバー25の側面には、恒温槽2の係合爪21と係合する係合凸部28が形成されている。
【0037】
このように構成されたサンプラカバー25は、恒温槽2に填め込められるとともに係合爪21が係合凸部28と係合することによって、当該恒温槽2に固定される。このとき、サンプラカバー25は、固定部26が所定の深さで恒温槽2に嵌合しているため、特に、可動蓋部27に対する固定手段が無くとも、恒温槽2を確実に密閉することができる。言い換えると、このサンプラカバー25は、係合爪21を外し、上方に持ち上げるだけで恒温槽2から容易に取り外すことができる。
【0038】
このようなサンプラカバー25においても、可動蓋部27を回動させて恒温槽2内部を外方に臨ませることができる。このため、このサンプラカバー25を使用した場合も、恒温槽2内部の雰囲気の変化を極力抑えることができる。また、サンプラカバー25全体を取り外すことなく、試験管の交換や補充を行えるため、作業性に優れたものとなる。
【0039】
また、本発明に係る生化学自動分析装置1では、図11に示すようなサンプラカバー30を有するような構成であっても良い。このサンプラカバー30は、内周面に、棒状に突出してなる係合突起31が複数配設されている。また、このサンプラカバー30は、恒温槽2の外径よりと略々同寸法の内径を有し、固定部32に対して回動自在に可動蓋部33が配設されている。このサンプラカバー30を使用する場合、恒温槽2の外周面に係合突起31と係合する係合溝34が複数形成されている必要がある。
【0040】
このように構成されたサンプラカバー30は、その係合突起31と恒温槽2の係合溝34とを正確に位置決めした後、恒温槽2に対して図11中矢印aで示す方向に移動させて填め込む。その後、サンプラカバー30は、図11中矢印bで示す方向に回転されて、恒温槽2に対して確実に固定される。
【0041】
このサンプラカバー30は、係合突起31と係合溝34とが係合することにより恒温槽2に確実に取り付けられているため、特に他の固定手段を必要としない。このため、サンプラカバー30は、比較的簡易な構造となり、操作性が向上したものとなる。
【0042】
このようなサンプラカバー30においても、可動蓋部33を回動させて恒温槽2内部を外方に臨ませることができる。このため、このサンプラカバー30を使用した場合も、恒温槽2内部の雰囲気の変化を極力抑えることができる。また、サンプラカバー30全体を取り外すことなく、試験管の交換や補充を行えるため、作業性に優れたものとなる。
【0043】
さらに、本発明に係る生化学自動分析装置1では、図12に示すようなサンプラカバー40を有するような構成であっても良い。このサンプラカバー40は、固定部41における恒温槽2と接する部分41aが磁性材料から構成されており、この固定部41に回動自在に可動蓋部42が接続されたような構成である。このサンプラカバー40を使用する場合、恒温槽2における固定部41と接する部分43も磁性材料から構成されることが好ましい。
【0044】
このように構成された生化学自動分析装置1では、固定部41と恒温槽2とが磁力により密着し、サンプラカバー40が恒温槽に取り付けられることとなる。この場合、サンプラカバー40を恒温槽2上に載置するだけで、固定部41を確実に固定することができ、サンプラカバー40の簡略化を達成することができる。
【0045】
このようなサンプラカバー40においても、可動蓋部42を回動させて恒温槽2内部を外方に臨ませることができる。このため、このサンプラカバー40を使用した場合も、恒温槽2内部の雰囲気の変化を極力抑えることができる。また、サンプラカバー40全体を取り外すことなく、試験管の交換や補充を行えるため、作業性に優れたものとなる。
【0046】
また、さらに本発明に係る生化学自動分析装置1では、図13に示すようなサンプラカバー60を有するような構成であってもよい。このサンプラカバー60は、恒温槽2に対して固定して装着される固定部61と、この固定部61に対して開閉自在に配設された可動蓋部62とから構成される。
【0047】
固定部61の外周には、恒温槽2に固定するためのラッチ63が配設されている。ラッチ63は、固定部61の外周に複数箇所あってもよい。恒温槽2の側面に配設された係合部20に、ラッチ63を係合させることにより、固定部61は恒温槽2に対して固定されることとなる。
【0048】
可動蓋部62を開く場合は、この係合部の固定と、固定部61の自重で固定部61の浮き上がりを押さえる。可動蓋部62を閉じたときは、恒温槽2の外周面に配設される係合爪21が、可動蓋部62の先端部の係合部64に係合する。これにより、固定部61、可動蓋部62共に、恒温槽2を確実に密閉するように取り付けられる。
【0049】
このようなサンプラカバー60においても、可動蓋部62を動かして恒温槽2内部を外部に臨ませることができる。このため、このサンプラカバー60を使用した場合でも、恒温槽2内部の雰囲気の変化を極力抑えることができる。また、サンプラカバー60全体を取り外すことなく、試験管の交換や補充を行えるため、作業性に優れたものとなる。
【0050】
ところで、本発明において、サンプラカバーの固定部と恒温槽との固定手段は、上述したようなものに限定されず、ネジやマジックテープ(登録商標)、フック等の固定手段を使用したものであっても良い。また、これら固定手段は、必要に応じて固定手段を解除可能なものとすることによって、サンプラカバーを全て取り外すこともできる。例えば、固定手段としてプッシュボタンを押してフックを解除する手法を採用すれば、工具を使わず容易にサンプラカバー全体の取り外しができる。
【0051】
また、本発明の自動分析装置は、可動蓋部の開閉状態を判断するセンサをサンプラカバー側或いは恒温槽側に備えることが好ましい。この場合、可動蓋部が開いており、恒温槽が外方に露出しているときは、センサが可動蓋部の開きを感知し、生化学自動分析装置1の測定動作が停止するように制御される。
【0052】
すなわち、サンプルディスクやアーム、試験庫の動きが停止するように制御される。また、恒温槽内に保持された試験管上に付されたバーコードの読み取り中に交換等のため可動蓋部を開けた場合、センサが可動蓋部の開きを感知してバーコードの読み取りを停止するように制御される。そして、可動蓋部が閉じられたことをセンサが感知した後、バーコードの読み取りを停止した時点から引き続き読み取りを行うか、或いは始めから読み直しを行う。これにより、自動分析装置は、誤動作を確実に防止することができ、信頼性の向上したものとなる。
【0053】
最後に、上述の実施の形態は、本発明のほんの一例である。このため、本発明は、上述の実施の形態に限定されることはない。例えば、上述の実施の形態の説明では、サンプルの恒温槽に限って述べてきたが、試薬を保冷する恒温槽に関しても同様に扱うことができる。この他、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、例えば設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る自動分析装置では、恒温槽を確実の開閉可能とすることができ、複数のサンプルを効率よく自動分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る自動分析装置を適用した実施の形態となる生化学自動分析装置の構成を示す概略斜視図である。
【図2】サンプルディスクの平面図である。
【図3】サンプラカバーの斜視図である。
【図4】サンプラカバーを恒温槽に装着する状態を模式的に示す分解斜視図である。
【図5】サンプラカバーを恒温槽に装着した状態を模式的に示す側面図である。
【図6】可動蓋部を開いた状態で臨むサンプルディスクを模式的に示す平面図であり、(a)は「1」〜「12」の保持部が臨む状態を模式的に示す平面図であり、(b)は(a)の状態からサンプルディスクを略半回転させた状態を模式的に示す平面図である。
【図7】従来の生化学自動分析装置に使用されるサンプルディスクの平面図である。
【図8】図7に示したサンプルディスクを使用し、可動蓋部を開いた状態で臨む当該サンプルディスクを模式的に示す平面図である。
【図9】他の実施の形態として示す生化学自動分析装置に使用されるサンプラカバーを模式的に示す分解斜視図である。
【図10】図9に示したサンプラカバーを恒温槽に装着した状態を示す側面図である。
【図11】更に他の実施の形態として示す生化学自動分析装置に使用されるサンプラカバーを模式的に示す分解斜視図である。
【図12】更に他の実施の形態として示す生化学自動分析装置に使用されるサンプラカバーを模式的に示す分解斜視図である。
【図13】さらに、他の実施の形態として示す自動分析装置に使用されるサンプラカバーを模式的に示す分解斜視図である。
【図14】従来の生化学自動分析装置の分解斜視図である。
【図15】従来の生化学自動分析装置に使用されるサンプルディスクの一例をしめす平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1…生化学自動分析装置、2…恒温槽、3…第1の試薬庫、4…第2の試薬庫、5…反応部、9…サンプラカバー、10…サンプルディスク、11…保持部、12…切欠き、13…固定部、14…可動蓋部
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルを自動的に分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動分析装置は、図14に示すように、サンプルを収容した複数の試験管が配置されるサンプラ100と、これらサンプラ100に隣接して配設された第1の試薬庫101及び第2の試薬庫102と、これらサンプラ100、第1の試薬庫101及び第2の試薬庫102内からサンプル或いは試薬を吸引し反応管に分注するアーム103とを備えている。さらに、サンプラ100を密閉するサンプラカバー104、第1の試薬庫101を密閉する第1の試薬庫用カバー105及び第2の試薬庫102を密閉する第2の試薬庫用カバー106を備えている。
【0003】
通常、サンプラ100内のサンプル及び試薬は、蒸発防止や安全性確保のために、サンプル及び試薬の特性に合わせ所定の温度で一定となるように冷却されたり、温められたりして用いられている。このため、サンプルに関していえば、サンプラ100内を所定の温度で一定となるようにサンプラ100及びサンプラカバー104が断熱機能を有するように作られている。
【0004】
また、このサンプラ100の内部には、図15に示すように、サンプルを収容した複数の試験管を二重同心円状に保持するサンプルディスク107が設けられている。そして、サンプルの区別をするために各試験管に対応して番号が付されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した生化学自動分析装置においては、試料及び試薬を交換する際、サンプラカバー104を取り外し、サンプラ100の上面をすべて開放した状態で行っていた。このため、試料及び試薬を交換する際、サンプラ100内の温度が大幅に変化してしまうといった不都合が生じてしまう。このような場合、サンプラ100内を再び所望な温度に設定し直す必要があり、作業効率が悪いといった問題がある。また、上述した生化学自動分析装置において、サンプラカバー104は、自重でサンプラ100内部を密閉するような構造となっており、サンプラ100内部を確実に密閉することが困難であり、断熱効果が十分でないといった問題もある。
【0006】
加えて、上述した生化学自動分析装置では、サンプラ100を解放する際に、サンプルカバー104を装置自体から完全に取り外す必要があった。このため、サンプラカバー104の取り外しの際、当該サンプラカバ−104をサンプリングアーム103等になどにぶつけてしまう可能性があった。さらに、取り外したサンプラカバー104の置き場がないため、周囲の空きスペースや周辺のテーブルなどに仮置きするしかなく、これも不注意による事故を誘発する可能性があった。
【0007】
そこで、本発明は、例えばサンプラのような恒温槽や試薬を保冷する恒温槽を確実に開閉することができ、複数のサンプルを効率よく自動分析することができる自動分析装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の視点は、試料を収容した複数の試験管を配置するディスクと、前記試験管を特定温度に保つための第1恒温槽と、開口部を有し、試薬を保冷するための第2恒温槽と、固定蓋部及びこの固定蓋部に対して開閉可能に配置された可動蓋部を有し、前記第2恒温槽の開口部を閉じるためのカバーと、前記試料と前記試薬を反応させるための反応管と、前記試験管内の試料を前記反応管に分注するサンプリングアームと、前記試薬を前記反応管に分注する分注アームと、前記反応管で試薬と混ぜられた試料の成分分析を行う分析手段と、を備えることを特徴とする自動分析装置である。
【0010】
本発明の第2の視点は、試薬を収容する容器と、前記容器に収容された試薬を特定温度に保つための恒温槽と、前記恒温槽の上部を閉じるための蓋と、前記試料を分注するための分注アームとを備えた自動分析装置において、前記蓋は、前記分注アームが挿入可能に形成された開口部を有する固定蓋部と、この固定蓋部に対して開閉可能に配置された可動蓋部とを備えること、を特徴とする自動分析装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る自動分析装置によれば、恒温槽を確実の開閉可能とすることができ、複数のサンプルを効率よく自動分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る自動分析装置の好適な実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
本実施の形態では、図1に示すように、血清や尿等の試料の成分分析を自動的に行う生化学自動分析装置1を例示して説明する。なお、本発明は、ここで例示する生化学自動分析装置1に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種装置に適用されることは勿論である。
【0014】
この生化学自動分析装置1は、試料が収容された複数の試験管が配設される恒温槽2と、この恒温槽2に隣接して配設される第1の試薬庫3及び第2の試薬庫4と、第1の試薬庫3の外周に配設された反応部5と、第1の試薬庫3内の試薬を分注する第1の分注アーム6と、第2の試薬庫4内の試薬を分注する第2の分注アーム7と、恒温槽2内の試料を分注するサンプリングアーム8とを備えている。また、この生化学自動分析装置1は、恒温槽2を略々密閉するように配設されたサンプラカバー9を備えている。
【0015】
この生化学自動分析装置1において、恒温槽2は、内部を所定の温度に維持する温度調節機能を有しており、内部を所望の温度に維持することができる。また、この恒温槽2内には、図2に示すような複数の試験管を配設するサンプルディスク10が回転自在に配設されている。このサンプルディスク10には、試験管の外周形状に対応した開口形状を有する複数の保持部11が円周に沿って形成されている。特に、これら保持部11は、外周及び内周にそれぞれ同心円状に配列するとともに、外周側と内周側とが重ならないように、いわゆる千鳥状に配列している。また、これら保持部11は、この千鳥状に順に番号付けされている。すなわち、外周側の所定の保持部11aを「1」としたときに、この「1」の保持部11aに隣接する内周側の保持部11bを「2」とし、この「2」の保持部11bに隣接する外周側の保持部11cを「3」とするように、順に番号付けしている。
【0016】
また、サンプルディスク10の側面には、各保持部11に達する切欠き12が形成されている。このため、各保持部11は、サンプルディスク10の側面方向から切欠き12を介して目視可能とされる。
【0017】
一方、このサンプルディスク10が収納される恒温槽2は、図3に示すようなサンプラカバー9により略々密閉することができる。このサンプラカバー9は、恒温槽2に対して固定して装着される固定部13と、この固定部13に対して開閉可能に配設された可動蓋部14とから構成される。すなわち、このサンプラカバー9において、固定部13と可動蓋部14とは、ヒンジ15を介して接続されている。
【0018】
また、このサンプラカバー9の固定部13には、その外周面に、恒温槽2に固定するためのラッチ16が配設されている。このラッチ16は、固定部13の複数箇所に形成されていてもよく、複数箇所に形成されることによってより確実に固定することができる。さらに、このサンプラカバー9には、固定部13の上面に、手持ち部17が配設されるとともにサンプリングアーム8が進入可能なように開口部18が形成されている。さらにまた、このサンプラカバー9の固定部13には、ラッチ16の反対側に、恒温槽2に取り付けるための係合部19が形成されている。
【0019】
このように構成されたサンプラカバー9は、少なくとも内周側が断熱性材料や密着性の良い弾性材料から形成される。これにより、サンプラカバー9が恒温槽2に取り付けられた状態で、恒温槽2の内部を密閉することができ、所望の温度に維持することができる。すなわち、サンプラカバー9の少なくとも内周側を断熱性材料や密着性の良い弾性材料から形成することによって、サンプラカバー9は、恒温槽2内部の雰囲気を外部に逃がすようなことが防止できるとともに外部の雰囲気を内部に進入させるようなことを防止することができる。
【0020】
このようなサンプラカバー9を恒温槽2に取り付ける際には、図4に模式的に示すように、先ず、恒温槽2の側面に配設された係合爪20にラッチ16を係合させる。
【0021】
次に、恒温槽2の外周面に配設される係合爪21を固定部13の係合部19に係合させる。これにより、固定部13は、恒温槽2を確実に密閉するように取り付けられることとなる。
【0022】
また、このサンプラカバー9において、可動蓋部14は、固定部13に対して所定の位置で停止可能とされることが好ましい。言い換えると、可動蓋部14は、フリーストップヒンジ等のロック機構を有するヒンジ15を介して固定部13に接続されることが好ましい。このようなロック機構を有するヒンジ15を介することによって、可動蓋部14は、固定部13に対して所定の角度で位置を維持することができ、自重で恒温槽2を閉塞する方向に移動するようなことが防止されることになる。
【0023】
ところで、このようなサンプラカバー9は、係合爪21を外した後、ラッチ16を係合爪20から外すことによって、恒温槽2から容易に取り外すことができる。具体的には、先ず、係合爪21を外した後、固定部13を、図5中矢印aで示す方向に回動させ、その後、サンプラカバー9全体を、図5中矢印bで示す方向に移動させる。このように、上述したサンプラカバー9は、恒温槽2に対して非常に容易に取り外しが可能である。
【0024】
以上のように構成された生化学自動分析装置1は、恒温槽2がサンプラカバー9により密閉されており、恒温槽2内部が所定の温度に維持されている。そして、サンプラカバー9に形成された開口部18からは、恒温槽内のサンプルディスク10に保持された試験管が臨むこととなる。このため、サンプリングアーム8がこの開口部18内に挿入され、開口部18から臨む試験管内の試料をサンプリングすることができる。
【0025】
また、このサンプルディスク10は、開口部18から順次試験管を臨ませる必要があるため、恒温槽2内で所定の速度で回転駆動されている。このとき、サンプルディスク10は、上述したように、千鳥状に保持部11が形成されており、これら保持部11に保持された複数の試験管を有している。
【0026】
このサンプルディスク10では、試験管が千鳥状に保持され、かつ各保持部11に切り欠き12が形成されているため、バーコードが添付された試験管を用いる場合、サンプルディスク10の側面側に配置されたバーコードリーダによってサンプルディスク10が1周する間に、保持部11に付した番号順にすべての試験管のバーコードを読み取ることができる。
【0027】
さらに、この生化学自動分析装置1では、サンプルディスク10に保持された試験管を交換する場合、サンプラカバー9の可動蓋部14を動かして恒温槽2の内部を解放する。すなわち、この生化学自動分析装置1では、サンプラカバー9を半開きにした状態で試験管を交換することができるため、恒温槽2内の雰囲気の変化を極力小とすることができる。このため、この生化学自動分析装置1によれば、恒温槽2内の温度変化を小とすることができ、サンプラカバー9を閉めてから測定可能になるまでの時間を短縮でき、恒温槽内部を条件温度に維持するための消費電力を抑えることが可能となる。
【0028】
また、この生化学自動分析装置1では、試験管を交換或いは補充する場合、サンプラカバー9をサンプルディスク10に取り付けた状態で作業が行えるため、サンプラカバー9を外してサンプリングアーム8等の他部品にぶつけたり、試料・試薬の上に落としたりするといった危険も防止できる。また、作業中に取り外したサンプラカバー9の置き場に困ったり、仮置きしたサンプラカバー9を不注意で破損したりする危険も防止できる。
【0029】
さらに、必要に応じてサンプラカバーの固定部13を、上述したように取り外すことで、サンプラカバー9を恒温槽2から取り去ることもできる。このため、恒温槽2やサンプルディスク10をメンテナンスするような場合、操作性に優れたものとなっている。
【0030】
また、この生化学自動分析装置1において、サンプラカバー9は、上述したように、ロック機構を有するヒンジ15を介して固定部13及び可動蓋部14を接続しているため、可動蓋部14を所望の位置で停止させることができる。このため、可動蓋部14を手動で回動させて恒温槽2内を解放した場合、この可動蓋部14が自重で恒温槽2を閉塞する方向に回動してしまうようなことが防止される。この生化学自動分析装置1は、例えば操作者が作業中に手を挟まれる危険を防止することができる等、恒温槽2の開閉動作に際して優れた安全性を有することとなり、また、可動蓋部14がサンプリングアーム8等を損傷してしまうような事故を防止できる。
【0031】
また、生化学自動分析装置においては、必要に応じて保持部(サンプルディスク)に保持されている試験管を各保持部に付与された番号順(測定順)に交換、補充する場合があるが、当該生化学自動分析装置1は、上述したように千鳥状に配設された保持部11に対して、サンプルディスク10が千鳥状に順次番号付けされている。このため、可動蓋部14を回動させて恒温槽2を半開き状態とし、サンプルディスク10の略半分を外方へ露出させたとき、図6(a)に示すように、連続した番号が付与された保持部11が露出することとなる。具体的に、「1」から「24」まで順に番号付けされたサンプルディスク10では、「1」〜「12」の保持部11が露出することとなる。また、このサンプルディスク10を略半回転させることによって、図6(b)に示すように、「13」〜「24」の保持部11が露出することとなる。なお、この図6において、サンプルディスク10上の斜線部は、固定部13に覆われて外方に露出されていない領域を示している。
【0032】
これに対して、図7に示すような従来のサンプルディスク50では、外周側に配列された保持部51に順次番号付けされ、その後の番号が内周側に配列する保持部52に引き継がれて順次番号付けされている。具体的に、この従来のサンプルディスク50を使用した場合、図8(a)に示す状態で「1」〜「6」を露出させ、その後、サンプルディスク5を略半回転させ図8(b)に示す状態で「7」〜「12」を露出させる。次に、サンプルディスク50を再び略半回転させ図8(c)に示す状態で「13」〜「18」を露出させ、その後、サンプルディスク50を更に再び略半回転させ図8R>8(d)に示すように「19」〜「24」を露出させる。
【0033】
このように、従来のサンプルディスク50を使用した場合、「1」〜「24」の保持部51を番号順に露出させようとすると、サンプルディスク50を略2回転させる必要がある。したがって、このようなサンプルディスク50を使用した場合には、保持部51に付与された番号順に、試験管を交換する際に非常に煩わしい作業となってしまい、交換ミスを発生し易い。
【0034】
これに対して、生化学自動分析装置1では、図6(a)(b)に示したようにサンプルディスク10を略1回転させるだけで、保持部11に保持されている全ての試験管を付与した番号順(或いは測定順)に順次連続して交換することができる。このように、上述した生化学自動分析装置1は、従来のサンプルディスク50を使用した場合と比較して、交換すべき試験管の位置を容易に認識することができるので、交換ミスの発生を防ぐことができ、大幅に作業効率が向上したものとなる。
【0035】
ところで、本発明に係る生化学自動分析装置は、上述したようなサンプラカバー9を有するような構成に限定されるものではない。すなわち、他の実施の形態として示す生化学自動分析装置は、図9及び図10に示すように、恒温槽2に対して嵌合させるようなサンプラカバー25を有するような構成であっても良い。
【0036】
このサンプラカバー25は、恒温槽2の外径と略々同寸法の内径を有し、固定部26に対して可動蓋部27が回動自在に配設されてなる。また、このサンプラカバー25の側面には、恒温槽2の係合爪21と係合する係合凸部28が形成されている。
【0037】
このように構成されたサンプラカバー25は、恒温槽2に填め込められるとともに係合爪21が係合凸部28と係合することによって、当該恒温槽2に固定される。このとき、サンプラカバー25は、固定部26が所定の深さで恒温槽2に嵌合しているため、特に、可動蓋部27に対する固定手段が無くとも、恒温槽2を確実に密閉することができる。言い換えると、このサンプラカバー25は、係合爪21を外し、上方に持ち上げるだけで恒温槽2から容易に取り外すことができる。
【0038】
このようなサンプラカバー25においても、可動蓋部27を回動させて恒温槽2内部を外方に臨ませることができる。このため、このサンプラカバー25を使用した場合も、恒温槽2内部の雰囲気の変化を極力抑えることができる。また、サンプラカバー25全体を取り外すことなく、試験管の交換や補充を行えるため、作業性に優れたものとなる。
【0039】
また、本発明に係る生化学自動分析装置1では、図11に示すようなサンプラカバー30を有するような構成であっても良い。このサンプラカバー30は、内周面に、棒状に突出してなる係合突起31が複数配設されている。また、このサンプラカバー30は、恒温槽2の外径よりと略々同寸法の内径を有し、固定部32に対して回動自在に可動蓋部33が配設されている。このサンプラカバー30を使用する場合、恒温槽2の外周面に係合突起31と係合する係合溝34が複数形成されている必要がある。
【0040】
このように構成されたサンプラカバー30は、その係合突起31と恒温槽2の係合溝34とを正確に位置決めした後、恒温槽2に対して図11中矢印aで示す方向に移動させて填め込む。その後、サンプラカバー30は、図11中矢印bで示す方向に回転されて、恒温槽2に対して確実に固定される。
【0041】
このサンプラカバー30は、係合突起31と係合溝34とが係合することにより恒温槽2に確実に取り付けられているため、特に他の固定手段を必要としない。このため、サンプラカバー30は、比較的簡易な構造となり、操作性が向上したものとなる。
【0042】
このようなサンプラカバー30においても、可動蓋部33を回動させて恒温槽2内部を外方に臨ませることができる。このため、このサンプラカバー30を使用した場合も、恒温槽2内部の雰囲気の変化を極力抑えることができる。また、サンプラカバー30全体を取り外すことなく、試験管の交換や補充を行えるため、作業性に優れたものとなる。
【0043】
さらに、本発明に係る生化学自動分析装置1では、図12に示すようなサンプラカバー40を有するような構成であっても良い。このサンプラカバー40は、固定部41における恒温槽2と接する部分41aが磁性材料から構成されており、この固定部41に回動自在に可動蓋部42が接続されたような構成である。このサンプラカバー40を使用する場合、恒温槽2における固定部41と接する部分43も磁性材料から構成されることが好ましい。
【0044】
このように構成された生化学自動分析装置1では、固定部41と恒温槽2とが磁力により密着し、サンプラカバー40が恒温槽に取り付けられることとなる。この場合、サンプラカバー40を恒温槽2上に載置するだけで、固定部41を確実に固定することができ、サンプラカバー40の簡略化を達成することができる。
【0045】
このようなサンプラカバー40においても、可動蓋部42を回動させて恒温槽2内部を外方に臨ませることができる。このため、このサンプラカバー40を使用した場合も、恒温槽2内部の雰囲気の変化を極力抑えることができる。また、サンプラカバー40全体を取り外すことなく、試験管の交換や補充を行えるため、作業性に優れたものとなる。
【0046】
また、さらに本発明に係る生化学自動分析装置1では、図13に示すようなサンプラカバー60を有するような構成であってもよい。このサンプラカバー60は、恒温槽2に対して固定して装着される固定部61と、この固定部61に対して開閉自在に配設された可動蓋部62とから構成される。
【0047】
固定部61の外周には、恒温槽2に固定するためのラッチ63が配設されている。ラッチ63は、固定部61の外周に複数箇所あってもよい。恒温槽2の側面に配設された係合部20に、ラッチ63を係合させることにより、固定部61は恒温槽2に対して固定されることとなる。
【0048】
可動蓋部62を開く場合は、この係合部の固定と、固定部61の自重で固定部61の浮き上がりを押さえる。可動蓋部62を閉じたときは、恒温槽2の外周面に配設される係合爪21が、可動蓋部62の先端部の係合部64に係合する。これにより、固定部61、可動蓋部62共に、恒温槽2を確実に密閉するように取り付けられる。
【0049】
このようなサンプラカバー60においても、可動蓋部62を動かして恒温槽2内部を外部に臨ませることができる。このため、このサンプラカバー60を使用した場合でも、恒温槽2内部の雰囲気の変化を極力抑えることができる。また、サンプラカバー60全体を取り外すことなく、試験管の交換や補充を行えるため、作業性に優れたものとなる。
【0050】
ところで、本発明において、サンプラカバーの固定部と恒温槽との固定手段は、上述したようなものに限定されず、ネジやマジックテープ(登録商標)、フック等の固定手段を使用したものであっても良い。また、これら固定手段は、必要に応じて固定手段を解除可能なものとすることによって、サンプラカバーを全て取り外すこともできる。例えば、固定手段としてプッシュボタンを押してフックを解除する手法を採用すれば、工具を使わず容易にサンプラカバー全体の取り外しができる。
【0051】
また、本発明の自動分析装置は、可動蓋部の開閉状態を判断するセンサをサンプラカバー側或いは恒温槽側に備えることが好ましい。この場合、可動蓋部が開いており、恒温槽が外方に露出しているときは、センサが可動蓋部の開きを感知し、生化学自動分析装置1の測定動作が停止するように制御される。
【0052】
すなわち、サンプルディスクやアーム、試験庫の動きが停止するように制御される。また、恒温槽内に保持された試験管上に付されたバーコードの読み取り中に交換等のため可動蓋部を開けた場合、センサが可動蓋部の開きを感知してバーコードの読み取りを停止するように制御される。そして、可動蓋部が閉じられたことをセンサが感知した後、バーコードの読み取りを停止した時点から引き続き読み取りを行うか、或いは始めから読み直しを行う。これにより、自動分析装置は、誤動作を確実に防止することができ、信頼性の向上したものとなる。
【0053】
最後に、上述の実施の形態は、本発明のほんの一例である。このため、本発明は、上述の実施の形態に限定されることはない。例えば、上述の実施の形態の説明では、サンプルの恒温槽に限って述べてきたが、試薬を保冷する恒温槽に関しても同様に扱うことができる。この他、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、例えば設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る自動分析装置では、恒温槽を確実の開閉可能とすることができ、複数のサンプルを効率よく自動分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る自動分析装置を適用した実施の形態となる生化学自動分析装置の構成を示す概略斜視図である。
【図2】サンプルディスクの平面図である。
【図3】サンプラカバーの斜視図である。
【図4】サンプラカバーを恒温槽に装着する状態を模式的に示す分解斜視図である。
【図5】サンプラカバーを恒温槽に装着した状態を模式的に示す側面図である。
【図6】可動蓋部を開いた状態で臨むサンプルディスクを模式的に示す平面図であり、(a)は「1」〜「12」の保持部が臨む状態を模式的に示す平面図であり、(b)は(a)の状態からサンプルディスクを略半回転させた状態を模式的に示す平面図である。
【図7】従来の生化学自動分析装置に使用されるサンプルディスクの平面図である。
【図8】図7に示したサンプルディスクを使用し、可動蓋部を開いた状態で臨む当該サンプルディスクを模式的に示す平面図である。
【図9】他の実施の形態として示す生化学自動分析装置に使用されるサンプラカバーを模式的に示す分解斜視図である。
【図10】図9に示したサンプラカバーを恒温槽に装着した状態を示す側面図である。
【図11】更に他の実施の形態として示す生化学自動分析装置に使用されるサンプラカバーを模式的に示す分解斜視図である。
【図12】更に他の実施の形態として示す生化学自動分析装置に使用されるサンプラカバーを模式的に示す分解斜視図である。
【図13】さらに、他の実施の形態として示す自動分析装置に使用されるサンプラカバーを模式的に示す分解斜視図である。
【図14】従来の生化学自動分析装置の分解斜視図である。
【図15】従来の生化学自動分析装置に使用されるサンプルディスクの一例をしめす平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1…生化学自動分析装置、2…恒温槽、3…第1の試薬庫、4…第2の試薬庫、5…反応部、9…サンプラカバー、10…サンプルディスク、11…保持部、12…切欠き、13…固定部、14…可動蓋部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容した複数の試験管を配置するディスクと、
前記試験管を特定温度に保つための第1恒温槽と、
開口部を有し、試薬を保冷するための第2恒温槽と、
固定蓋部及びこの固定蓋部に対して開閉可能に配置された可動蓋部を有し、前記第2恒温槽の開口部を閉じるためのカバーと、
前記試料と前記試薬を反応させるための反応管と、
前記試験管内の試料を前記反応管に分注するサンプリングアームと、
前記試薬を前記反応管に分注する分注アームと、
前記反応管で試薬と混ぜられた試料の成分分析を行う分析手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記可動蓋部は、前記固定蓋部に対して半開き可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記固定蓋部の上面には、分注アームが挿入可能な開口部が形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記蓋は、その上面に手持ち部が配設されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項5】
試薬を収容する容器と、
前記容器に収容された試薬を特定温度に保つための恒温槽と、
前記恒温槽の上部を閉じるための蓋と、
前記試料を分注するための分注アームとを備えた自動分析装置において、
前記蓋は、前記分注アームが挿入可能に形成された開口部を有する固定蓋部と、
この固定蓋部に対して開閉可能に配置された可動蓋部とを備えること、
を特徴とする自動分析装置。
【請求項1】
試料を収容した複数の試験管を配置するディスクと、
前記試験管を特定温度に保つための第1恒温槽と、
開口部を有し、試薬を保冷するための第2恒温槽と、
固定蓋部及びこの固定蓋部に対して開閉可能に配置された可動蓋部を有し、前記第2恒温槽の開口部を閉じるためのカバーと、
前記試料と前記試薬を反応させるための反応管と、
前記試験管内の試料を前記反応管に分注するサンプリングアームと、
前記試薬を前記反応管に分注する分注アームと、
前記反応管で試薬と混ぜられた試料の成分分析を行う分析手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記可動蓋部は、前記固定蓋部に対して半開き可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記固定蓋部の上面には、分注アームが挿入可能な開口部が形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記蓋は、その上面に手持ち部が配設されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の自動分析装置。
【請求項5】
試薬を収容する容器と、
前記容器に収容された試薬を特定温度に保つための恒温槽と、
前記恒温槽の上部を閉じるための蓋と、
前記試料を分注するための分注アームとを備えた自動分析装置において、
前記蓋は、前記分注アームが挿入可能に形成された開口部を有する固定蓋部と、
この固定蓋部に対して開閉可能に配置された可動蓋部とを備えること、
を特徴とする自動分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−91030(P2006−91030A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371786(P2005−371786)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【分割の表示】特願平11−6927の分割
【原出願日】平成11年1月13日(1999.1.13)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【分割の表示】特願平11−6927の分割
【原出願日】平成11年1月13日(1999.1.13)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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