説明

自動取引装置

【課題】
生体認証を用いたセキュリティ確保を実現するとともに、顧客が希望する種々の取引を簡便な構成で実現する自動取引装置を提供することにある。
【解決手段】
ATM1の利用者の生体情報と、その生体情報に対応する取引情報を対応して予めホストコンピュータ10に記憶しておく。カード処理部4が、取引に使用されるカードの情報を読み取る。生体情報読取部9は、生体情報読取部9にセットされた利用者の生体情報を読み取る。表示部3は、その生体情報読取部9によって読み取られた生体情報に対応する取引に関する情報を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行等の金融機関で種々の取引が可能な現金自動取引装置に関し、特に、生体認証が可能な自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関におけるカード偽造対策や本人認証の精度向上などのセキュリティ確保のために、生体情報を用いて本人確認を行う生体認証処理が採用され始めている。生体情報を用いて本人認証を行い、種々の取引を行う自動取引装置に関する背景技術として、特許文献1には、現金自動取引装置が行う処理を通常時と非常時とに分類し、通常時は第1の照合用データを用いて第1照合部が照合を行い、非常時は第2の照合用データを用いて第2照合部が照合を行う。また、通常時は、通常支払用紙幣ボックスから紙幣の支払を行い、非常時は、非常支払用紙幣ボックスから紙幣の支払を行う技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−107668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、通常時の処理と非常時の処理をそれぞれ実行するために、通常時の処理を行う第1照合部と非常時の処理を行う第2照合部が必要となる。また、通常時の処理と非常時の処理とにおける支払紙幣を区別するために、通常時の紙幣の支払を行う通常支払用紙幣ボックスと、非常時の紙幣の支払を行う非常支払用紙幣ボックスとが必要となり、装置が大型化する。
【0005】
本発明の目的は、生体認証を用いたセキュリティ確保を実現するとともに、顧客が希望する種々の取引を簡便な構成で実現する自動取引装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、カード処理部が取引に使用されるカードの情報を読み取り、生体情報読取部が利用者の生体情報を読み取り、表示部は、その生体情報読取部によって読み取られた生体情報に対応する取引情報を表示する構成を採用した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自動取引装置において、生体認証を用いてセキュリティを確保するとともに、簡便な構成で利用者の希望に沿った種々の取引を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
図1は、ホストコンピュータ10と通信網を介して接続された現金自動取引装置(以下、ATMという。)1を含むシステムのシステム構成図及び各装置の内部構成図を示す。
【0010】
ATM1は、生体認証や現金の入出金取引等を行い、制御部2、表示部3、カード処理部4、通帳処理部5、紙幣入出金部6、回線接続部7、硬貨入出金部8、生体情報読取部9、入力部15、明細票処理部16を備える。
【0011】
表示部3は、ATM1が処理する取引に関する操作案内(ガイダンス)やアナウンス情報などを画面に表示するディスプレイであり、入力部15は、利用者の操作や指で押下された入力を検知するタッチパネルである。なお、表示部3と入力部15は、入力部と表示部とを兼ねたタッチパネル付きディスプレイとして構成されていても良い。この場合、タッチパネルは、ディスプレイに表示される表示画面に含まれる色々な項目への押下も検知する。
【0012】
カード処理部4は、取引に使用されるICカードもしくはキャッシュカード等のカード類の挿入、排出を行う。またカード処理部4は、カードに付加されたICチップに記憶された情報を読み取るICリーダ、カードの磁気ストライプ(MS:Magnetic Stripe)に記憶された情報を読み取ったりMSに情報を書き込んだりする磁気ヘッド、およびカードのエンボス部分のイメージ読み取りを行うイメージリーダ等を含む。明細票処理部16は、取引した内容を明細票に印字して排出する。なお、カード処理部4と明細票処理部16とは、カード及び明細票を同時に利用者に渡せるように、同じユニット上に設けられるのが望ましい。
【0013】
生体情報読取部9は、顧客の生体部位の生体情報を読み取る生体情報リーダである。例えば、生体情報が指紋の場合は指紋リーダ、生体情報が指静脈や手のひら静脈の場合は、指静脈リーダや手のひら静脈リーダ、生体情報が音声の場合は音声認識装置、生体情報が虹彩の場合は虹彩リーダなどである。なお、生体情報読取部9が読み取った情報をもとに制御部2が生体認証(本人認証)を行う構成でもよいし、生体情報読取部9が、生体情報読み取りと生体認証処理を両方行う構成でもよい。
【0014】
通帳処理部5は、種々の取引時に使用される通帳の挿入、排出やその通帳への印字部による印字動作や、通帳に貼付されたMSに記憶された情報を磁気ヘッドにて読み取るなどの処理を実行する。紙幣入出金部6及び硬貨入出金部8は、紙幣又は硬貨などの媒体の入金又は/及び出金機能、媒体の鑑別や媒体の搬送、収納を実行する。そして、制御部2は、これら各部の処理を制御する。回線接続部7は、ホストコンピュータ10の回線接続部11に接続される。
【0015】
なお、カード処理部4は、上述のように、ICチップを有するICカードやMSを有する磁気カードを処理する構成であるが、ICカードの代わりに、ICチップに相当する記憶媒体を有する媒体(携帯電話などの携帯端末)を使用する場合は、それらの媒体に記録された情報を読み取る処理部であっても良い。
【0016】
一方、ATM1と接続されするホストコンピュータ10は、ATM1の回線接続部7と接続してATM1とのデータの送信又は受信を行う回線接続部11と、利用者情報、生体情報ファイル、それに対応付けられた口座情報(取引項目情報)などを記憶するハードディスクなどの記憶装置13、及びホストコンピュータ10を制御するホストコンピュータ制御部12(単に制御部ともいう)とを備える。なお、ホストコンピュータ10は単にホスト、上位装置ともいい、さらに、サーバによって後述の各種機能を制御しても良い。
【0017】
図1に図示するように、記憶装置13は、異なる情報毎に複数のファイルに分けて管理することが望ましいが、一つのファイルとして管理する方法であっても良い。そしてそのファイルに対して、情報の更新や照会などの様々な処理が実行される。なお、制御部12が各ファイルの処理等を実行しても良い。
【0018】
記憶装置13は、磁気ディスクや光ディスクなどによって構成してもよく、その内部のファイルの詳細について後述する図2を用いて説明する。
【0019】
図2は、利用者が所有するICカードのICチップに記憶される顧客情報の具体例を示す図である。顧客情報には、「顧客基本情報」と、顧客情報の詳細情報である「詳細情報」に分けられる。顧客基本情報には、利用者が口座を開設したときの店番1000、利用者単位にユニークに付けられた識別可能な顧客番号1001、顧客の名前1002、顧客の生年月日1003および顧客の住所1004を有する。
【0020】
「顧客基本情報」の詳細情報である「口座情報」は、一枚のカード内に複数存在し、それぞれ利用者の保有している口座の口座番号1005、預金残高1006、暗証番号1007および生体情報1008を有する。そして、生体情報1008には、その口座に対応する生体部位(例えば人差し指)と、その生体部位の生体情報のイメージデータ(例えば、人差し指の指静脈情報のイメージデータ)が含まれる。記憶装置13は、このように「顧客基本情報」を基にツリー構造として口座情報1、2、3、…、nをその下位に持つ構造で顧客情報を記憶することが望ましい。
【0021】
なお、本実施形態では、顧客情報は、顧客が保有するICカードのICチップに記憶されているが、ホストコンピュータ10の記憶装置13に記憶されても良い。顧客情報をICカードのICチップに記憶する場合は、顧客が希望する取引口座を特定するのに、ホストコンピュータ10と通信する必要がなく、処理を迅速に行うことができるという利点がある。一方、顧客情報をホストコンピュータ10の記憶装置13に記憶する場合は、ICチップの記憶容量よりも大きなデータを記憶することができ、データ量に制限されないという利点がある。
【0022】
図3は、ATM1における取引開始から口座の選択までの流れを説明するフローチャートである。なお、本実施形態では、生体情報として指静脈情報を用いることとし、指静脈認証による口座選択を例に説明する。
【0023】
ATM1は、カード処理部4にカードが挿入されたことを検知すると(ステップ100)、ディスプレイ3は、暗証番号入力画面を表示し、暗証番号の入力を受け付ける(ステップ101)。暗証番号が一致して本人であると確認されると、ディスプレイ3は、後述する図4に示す生体認証画面を表示する(ステップ102)。この生体認証画面は、顧客が取引を希望する口座に対応する指を、顧客に選択させる画面である。ATM1は、生体情報読取部9に指がセットされた(指がかざされた)ことを検知すると、生体情報読取部9は、セットされた指の指静脈情報を読み取る(ステップ103)。ATM1は、利用者がかざした指の生体情報を読み取り、そのデータを編集し、ホストコンピュータ10に送信する(ステップ104)。
【0024】
ホストコンピュータ10は、ATM1から受信した利用者の生体情報と、あらかじめ登録されているファイル部14の中の、その利用者に対応する生体情報とを照合する(ステップ105)。ホストコンピュータ10は、ATM1から送信された利用者の生体情報が、予め登録されたその利用者の生体情報と一致していると判断した場合は、その利用者の生体情報に関連付けられた口座を選択して、その口座情報をATM1に送信する(ステップ106)。
【0025】
ATM1は、ホストコンピュータ10から送信された口座画面に関する取引画面を表示する(ステップ107)。
【0026】
なお、ステップ105において、利用者の生体情報が登録された生体情報と不一致であると判断した場合は、ホストコンピュータ10はATM1に利用取消メッセージを送信し(ステップ108)、ATM1は、取り扱いを中止する(ステップ109)。
【0027】
図4は、ディスプレイ3に表示される、利用者による生体認証時の取引画面である。図4(a)は、図3のステップ102において表示される生体認証画面であり、画面上に利用者の口座名とそれに対応付けられた情報が表示されている。利用者は、画面上の情報に基づいて、希望する口座に対応する指を、生体情報読取部9にかざす(または、希望する口座を選択した後に、その口座に対応する指を生体情報読取部9にかざす)。そして、生体情報読取部9は、かざされた指を読み取る(図3のステップ103)。例えば、人差し指を生体認証読取部9にかざすと、生体情報読取部9は人差し指の生体情報を読み取り、ATM1はその情報をホストコンピュータ10に送信する(図3のステップ104)。ホストコンピュータ10は、送信された人差し指の生体情報が、事前に登録された利用者本人の人差し指の生体情報と一致する場合は、その生体情報に対応する「口座1」の口座情報をATM1に送信し、ATM1のディスプレイ3は、図4(b)に示す画面を表示する。
【0028】
また、図4(a)において、生体情報(または生体部位)と取引口座が対応付けられて表示されているが、生体情報と取引種別(入金、出金、振込など)が対応付けて表示しても良い。この場合、生体情報読取部9にかざされた生体部位によって顧客が希望する取引が行われるので、ATM1で取引を行う際に生体認証が必要な場合において、顧客が取引を選択するステップを省略することができる。
【0029】
また、図4(a)において、生体情報と取引口座が対応付けられているのは、口座ごとに資金を管理したり、口座ごとに扱う通貨が異なったりする場合が考えられるからである。この場合は、生体情報読取部9にかざされた生体部位によって顧客が希望する取引口座が特定されるので、ATM1で取引を行う際に生体認証が必要な場合に、顧客が取引口座を選択するステップを省略することができる。
【0030】
以下に、本発明によって実現される他の実施形態について述べる。
【0031】
利用者の生体情報と対応づけられた取引情報を、ICカード内に格納する。利用者は、あらかじめ異なる生体関連情報をカード内に格納し、それぞれの生体情報と利用者が希望する取引情報とをカード内で対応付ける。利用者は、生体認証時に、希望取引とそれに関連付けられた生体情報を取引画面上で確認し、希望取引に関連付けた生体情報を照合する。
【0032】
ATM1は、利用者の生体情報を読取り、その情報とカード内に格納された生体情報とを照合する。ATM1は、利用者の生体情報がカード内の生体情報と一致していると判断すれば、それと対応づけられた希望取引の取引画面に遷移させる。例えば、指静脈認証において、利用者が右手の3本の指をそれぞれ生体情報として登録する。それぞれ3本の指に対して「引出し」「預入」「振込み」といった取引を対応付ける。
【0033】
利用者は、生体認証時に希望取引選択と対応付けられた指を画面で確認後、希望する取引の指をかざして希望取引の画面に遷移させる。これによって、希望する取引を選択する手間が省ける。
【0034】
別の例として、指静脈認証において、利用者が右手の5本の指をそれぞれ生体情報として登録する。それぞれ5本の指に対して「口座1」「口座2」「口座3」「口座4」「その他の口座」の取引口座を対応付ける。利用者は、生体認証時に希望口座と関連付けられた指を画面で確認後、希望口座の指をかざして希望口座画面に遷移させる。これによって、希望する口座を選択する手間が省ける。
【0035】
一方、利用者はあらかじめ異なる生体関連情報をホストコンピュータに登録し、それぞれの生体情報と利用者が希望する取引情報とを対応付ける場合もある。この説明に関して、以下に述べる。
【0036】
利用者は、生体認証時に、希望取引とそれに関連付けられた生体情報を取引画面上で確認し、生体情報を照合する。生体認証機構を備えたATMは、利用者の取引中に生体情報を読取り、その情報をホストコンピュータへ送信する。ホストコンピュータは、利用者の生体情報がホストコンピュータ内の生体情報と一致すると判定する。そしてそれらが一致すれば、対応づけられた取引画面に遷移するよう現金自動取引装置にメッセージを送信する。これによって、希望する取引を選択する手間が省ける。従って、生体認証時と同時に取引が自動的に選択されるので、取引時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態である現金自動取引装置1とホストコンピュータ10の内部ブロック図を示す。
【図2】記憶装置13に記憶される顧客情報の具体例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態であるATM1の処理を示すフローチャートである。
【図4】ディスプレイ3に表示される『生体認証』画面例と『取引:口座1』画面例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1:現金自動取引装置、2:制御部、3:表示部、4:カード処理部、5:通帳処理部、6:紙幣入出金部、7:回線接続部、8:硬貨入出金部、9:生体情報読取部、10:ホストコンピュータ、11:回線接続部、12:ホストコンピュータ制御部、13:記憶装置、15:入力部、16:明細票機構部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が取引を行う自動取引装置において、
前記取引に使用されるカードの情報を読み取るカード処理部と、
前記カード処理部によって読み取られたカードに対応する利用者の生体情報を読み取る生体情報読取部と、
該生体情報読取部によって読み取られた生体情報に対応する取引情報を表示する表示部とを備えることを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記生体情報読取部が読み取る生体情報に対応する生体部位を選択させる選択画面を表示し、
前記選択画面に従って、前記生体情報に対応する生体部位を選択入力する入力部を備えることを特徴とする請求項1記載の自動取引装置。
【請求項3】
前記生体情報読取部によって読み取られた生体情報に対応する取引情報は、該生体情報に対応付けられた取引口座に関する情報であることを特徴とする請求項1または2記載の自動取引装置。
【請求項4】
前記カードはICカードであり、
該ICカードは、利用者の生体情報と取引情報とを対応付けて記憶することを特徴とする請求項1から3いずれかの項に記載の自動取引装置。
【請求項5】
カードを利用して取引を行う自動取引システムにおいて、
前記取引に使用されるカードの情報を読み取るカード処理部と、前記カード処理部によって読み取られたカードに対応する利用者の生体情報を読み取る生体情報読取部と、該生体情報読取部によって読み取られた生体情報に対応する取引情報を表示する表示部とを含む自動取引装置と、
利用者の生体情報と該生体情報に対応する取引口座とを記憶する記憶装置と、前記自動取引装置から送信された利用者の生体情報と前記記憶装置に記憶された該利用者の生体情報とを照合する制御部とを含むホストコンピュータと、
を備えることを特徴とする自動取引システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−188272(P2007−188272A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5481(P2006−5481)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】