説明

自動取引装置

【課題】出金取引が可能な自動取引装置において、出金取引時に、通常時においても紙幣入出金部および硬貨入出金部の両シャッタは、それを開けるには顧客のシャッタ開閉スイッチの操作が必要であり、極めてわずらわしいという問題がある。
【解決手段】出金口のシャッタが出金時に自動で開放すると共にそのシャッタの開放を阻止もしくは中止できるようにし、開放が阻止もしくは中止されたシャッタを開放するには再度の個人認証の入力が必要であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行等の金融機関において使用される自動取引装置に関し、特に、防犯に優れた自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動取引装置において、支払取引を行う場合、本人確認が正常に行われた後、顧客が出金額入力すると紙幣入出金部及び硬貨入出金部では紙幣および硬貨の出金準備が開始され、顧客が入力した金額の紙幣および硬貨の準備が完了すると、紙幣入出金部および硬貨入出金部のシャッタが自動で開き、顧客は紙幣および硬貨を受け取ることができる。
しかし、紙幣および硬貨の準備が完了すると、紙幣入出金部および硬貨入出金部のシャッタが自動で開くために、顧客が他者によるめくらまし行為等により目を離した隙に紙幣入出金部や硬貨入出金部内の紙幣および硬貨が横取りされてしまうということがある。
【0003】
そこで、これを防ぐ従来技術として、紙幣入出金部および硬貨入出金部のシャッタの開動作を可能にするシャッタ開閉スイッチを設け、そのシャッタ開閉スイッチを顧客が押下することによってシャッタを開けることができるようにした技術がある(例えば、特許文献1参照)。
また、シャッタを開ける際に、個人認証として暗証番号入力または生体認証(バイオメトリック)情報を取得して本人確認が正常に行われたらシャッタを開ける技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−65810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術においては、通常時においても紙幣入出金部および硬貨入出金部のシャッタは、それを開けるには顧客のシャッタ開閉スイッチの操作が必要であり、わずらわしく、操作に時間がかかり、他の顧客の待ち時間が長くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、出金口のシャッタが出金時に自動で開放すると共にそのシャッタの開放を阻止もしくは中止できるようにし、開放が阻止もしくは中止されたシャッタを開放するには再度の個人認証の入力が必要であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このようにした本発明は、異常時にシャッタの開放が阻止もしくは中止され、閉じられたシャッタは再度の個人認証の入力を行わなければ開かないことにより、めくらまし行為のような不測な事故を防ぐことができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明による実施例を説明する。
【実施例】
【0008】
第1実施例
図1は本発明で使用される自動取引装置を示す外観説明図、図2は自動取引装置の構成を示すブロック図である。
図において、自動取引装置1には、カード処理部2、通帳処理部4、明細票処理部6、紙幣入出金部8、硬貨入出金部9、音声案内部12を有する。
【0009】
カード処理部2は、顧客の所有するキャッシュカード3が挿入された場合に、キャッシュカード3に記憶されている顧客の口座番号や氏名等の顧客情報、金融機関のコードを読み出す機能を有する。カード処理部2の前面側にはカード挿入排出口2aが設けられており、ここでキャッシュカード3の挿入および排出が行われる。カード挿入排出口2aには、排出されたキャッシュカード3が顧客により抜き取られたことを検出する検出センサが設けられている。
【0010】
通帳処理部4は、通帳挿入排出口4aから挿入される顧客の通帳5に取引内容を印字するもので、通帳に記載された情報を読み取る機能や情報の更新を行う機能さらには印字頁行の検出や改頁を行う機能を有する。ここで処理された通帳5は通帳挿入排出口4aに排出される。通帳挿入排出口4aに排出された通帳5が顧客により抜き取られたことを検出する検出センサが設けられている。明細票処理部6は、取引明細の印字を行って顧客に対して取引明細票の発行処理を行うものである。
【0011】
紙幣入出金部8は、入金取引時に顧客から入金される紙幣を真偽鑑別し、計数し、搬送して図示しない金庫に金種別に収納すると共に出金取引時に顧客に支払われる紙幣を金庫から繰り出すものである。紙幣入出金部8と紙幣入出金口8aとは図示しない紙幣搬送路によって接続されている。紙幣入出金口8aは、顧客が紙幣を投入し、または顧客に支払われる紙幣が送り込まれる部分であり、紙幣入出金部8aの上部には開閉可能なシャッタ8bが設けられており、紙幣入出金口8aの内部には、図示しないが、紙幣が顧客により抜き取られたことを検出する検出センサが設けられている。
【0012】
硬貨入出金部9は、入金取引時に顧客から入金される硬貨を真偽鑑別、計数し、搬送して図示しない金庫に金種別に収納すると共に出金取引時に顧客に支払われる硬貨を金庫から繰り出すものである。硬貨入出金部9と硬貨入出金口9aとは図示しない硬貨搬送路によって接続されている。硬貨入出金口9aは、顧客が硬貨を投入し、または顧客に支払われる硬貨が送り込まれる部分であり、紙幣入出金部8aの上部には開閉可能なシャッタ8bが設けられており、硬貨入出金口9aの内部には、図示しないが、硬貨が顧客により抜き取られたことを検出する検出センサが設けられている。
【0013】
音声案内部12は、音声によって操作案内を行うもので、自動取引装置1に設けられたスピーカ12aから音声を出力する。
主制御部18は、自動取引装置1の各部を制御するもので、マイクロコンピュータ等で構成され、内部にはタイマ14が設けられている。タイマ14は、通帳5やキャッシュカード3あるいは紙幣が排出された際に、抜き取り監視時間を計測するものである。抜き取り監視時間とは、媒体(通帳、キャッシュカードおよび貨幣)を排出した後に所定の監視時間が経過しても媒体の抜き取りが検出されない場合、この媒体を装置内に取り込むという時間である。
【0014】
記憶部15は、各種の制御を行うためのプログラムが記憶されたRAMやROMおよびフレキシブルディスク等で構成されている。インタフェース部16は、上位装置であるホストコンピュータ20との接続口である。電源部19は自動取引装置1内の各部に電源を供給する。ホストコンピュータ20は、インタフェース部16と通信回路10により接続され、顧客ごとの口座番号や預貯金残高情報等を記憶している記憶装置21を有する。
【0015】
自動取引装置1の前部には接客部11が設けられている。接客部11は、顧客に対する操作誘導等を表示する表示部と、取引科目や金額等を入力するためのタッチパネル部とで構成される。表示部には取引科目である「入金」や「引出し」および「振込」等が表示され、タッチパネル部には金額や暗証番号を入力するテンキーが表示され、顧客は所望の表示部分に指を触れることで入力を行う。
【0016】
さらに、この表示部には、上記の他にさらに、図3に示すような「シャッタ閉じる」のタッチボタン22が案内表示23および紙幣出金口8aおよび硬貨出金口9aの誘導表示24と共に表示される。この誘導表示は例えば点滅表示や点灯表示であるが、必ずしも表示しなくてもよい。
また、自動取引装置1の前部には接近検知器17が設けられており、これで、顧客の自動取引装置1への接近を検知する。
【0017】
上述した構成の実施例の作用を出金取引について図6のフローチャートを用いて説明する。
なお、以下に説明する各部の動作は、図示しない記憶部に格納されたプログラム(ソフトウェア)に基づいて主制御部18により制御される。
S1.出金取引が選択されると、キャッシュカード3または通帳5の挿入を促し、キャッシュカード3(または通帳5であるが、一般にはキャッシュカード3であるので、キャッシュカード3で説明する。)が挿入されると、装置内部に取り込み、顧客情報を読み出す。
【0018】
S2.取引可能なキャッシュカード3と判定されると、個人認証としての暗証番号の入力を促し、暗証番号情報を一時記憶すると共に読み取った顧客情報をホストコンピュータ20に送信する。
S3.暗証番号の照合により、取引可能であると判断されると、出金金額の入力を促す。S4.入力した金額が残高額等の支払限度額以内であれば、金種別金庫から現金を繰り
出し、紙幣出金口8aおよび硬貨出金口9aまで搬送する。
【0019】
S5.取引媒体であるキャッシュカード3を返却する。
S6.顧客がキャッシュカード3を抜き取ったことを検知すると、表示部に図3に示すようなタッチボタン22、案内表示23等の画面表示を行い、顧客の押下操作によりシャッタを閉じることができることを報知する。
S7.紙幣出金口8aおよび硬貨出金口9aのシャッタ8bおよび9bが開いて現金の
取り出しを可能にする。
【0020】
S8.貨幣の抜き取りが行われるかまたはタイムアウト(T.O)になると、シャッタ8bおよび9bは閉じて終了する。
S9.顧客が「シャッタ閉じる」のタッチボタン22を押すか否かを監視する。つまり、顧客が背後に人の気配や異常を感じたりした場合には顧客は直ちにタッチボタン22を押して紙幣出金口8aおよび硬貨出金口9aのシャッタ8bおよび9bを閉止することができる。
【0021】
S10.「シャッタ閉じる」のタッチボタン22が押されると、紙幣出金口8aおよび硬貨出金口9aのシャッタ8bおよび9bを閉止する。なお、紙幣出金口8aおよび硬貨出金口9aに手が挿入されているときでも、この場合は、シャッタ8bおよび9bを閉じる動作を止めない。
S11.紙幣出金口8aおよび硬貨出金口9aのシャッタ8bおよび9bは閉じているので、貨幣の受け取りはできない。そこで、顧客には図4に示すような、「暗証番号」の再度の入力を要求する画面を表示する。
【0022】
S12.再度の暗証番号の入力が行われる。
S13.S2で入力し、一時記憶している暗証番号と照合する。
S14.一時記憶している暗証番号と一致する場合は、図5に示すような「紙幣を受け取る」のタッチボタン22および案内表示23を表示し、同時に紙幣出金口8aを誘導表示24し、顧客がそのタッチボタン22を押すと、シャッタ8bが開く。
【0023】
S15.顧客が貨幣を取り出す。残留貨幣がなく、顧客の手の挿入がないことを検知してシャッタ8bを閉じる。
S16.装置1はホストコンピュータ20に取引処理終了を通知する。ホストコンピュータ20は顧客取引履歴を格納する。
S17.暗証番号が不一致のときには、再度の入力照合を行い、それでも不一致のときには、取引中止とし、顧客に報知する。
【0024】
S18.紙幣出金口8aおよび硬貨出金口9aの貨幣は、通常の出金貨幣とは区別して取り忘れ保管庫のような個別の保管庫に搬送して保管する。
なお、上記実施例の説明において、個人認証として暗証番号を用いることとして説明したが、指紋や静脈等の生体認証でも同様である。
以上の如く、「シャッタ閉じる」ボタンを表示することができるようにしたことにより、顧客が緊急時にそれを押すことにより、直ちに出金口のシャッタを閉じることができ、めくらまし行為のような不測な事故を防ぐことができる。また、紙幣と硬貨の両方を出金する場合においては、シャッタ閉じの動作は同時とし、シャッタ開は一方から順に開くように制御すればよい。
【0025】
第2実施例
図7は第2の実施例を示す説明図である。
なお、上述した第1の実施例と構成は同様であるので詳細な説明は省略し、異なる部分の説明だけを行う。
25は第3者近接察知用センサである。
【0026】
また、表示部には上記第3者近接察知用センサが第3者を検知(所定時間、例えば2秒程度連続して感知した場合)して作動した場合には、「事故防止のためにシャッタを閉じました。再度の暗証番号の入力をお願い致します。」等の文言の表示ができるようにしてある。
上述した構成の実施例の作用を出金取引について図8のフローチャートを用いて説明する。
【0027】
なお、以下に説明する各部の動作は、図示しない記憶部に格納されたプログラム(ソフトウェア)に基づいて主制御部18により制御される。
SS1.出金取引が選択されると、キャッシュカード3または通帳の5挿入を促し、キャッシュカード3(または通帳5であるが、一般にはキャッシュカード3であるので、キャッシュカード3で説明する。)が挿入されると、装置内部に取り込み、顧客情報を読み出す。
【0028】
SS2.取引可能なキャッシュカード3と判定されると、個人認証としての暗証番号の入力を促し、暗証番号情報を一時記憶すると共に読み取った顧客情報をホストコンピュータ20に送信する。
SS3.暗証番号の照合により、取引可能であると判断されると、出金金額の入力を促
す。
【0029】
SS4.金額が残高額等の支払限度額以内であれば、金種別金庫から現金を繰り出し、
紙幣出金口8aおよび硬貨出金口9aまで搬送する。
SS5.取引媒体であるキャッシュカード3を返却する。
SS6.紙幣出金口8aおよび硬貨出金口9aのシャッタ8bおよび9bが開いて現金
の取り出し可能にする。
【0030】
SS7.顧客が貨幣を取り出す。残留貨幣がなく、顧客の手の挿入がないことを検知してシャッタ8bおよび9bを閉じる。
SS8.装置1はホストコンピュータ20に取引処理終了を通知する。ホストコンピュータ20は顧客取引履歴を格納する。
SS9.上記のどのステップ間において、第3者近接察知用センサ25が第3者(例えば不審者)の近接(上記所定時間の感知)を検知すると、紙幣出金口8aおよび硬貨出金口9aのシャッタ8bおよび9bは開かず(阻止)、また、開いている場合には直ちに閉じる(中止)。なお、紙幣出金口8aおよび硬貨出金口9aに手が挿入されているときには、シャッタ8bおよび9bを閉じる動作を止めない。このとき、表示部に、「事故防止のためにシャッタを閉じました。再度の暗証番号の入力をお願い致します。」等の文言を表示する。
【0031】
SS10.紙幣出金口8aおよび硬貨出金口9aのシャッタ8bおよび9bは閉じているので、貨幣の受け取りはできない。そこで、顧客には図4に示すような、「暗証番号」の再度の入力を要求する画面を表示する。
SS11.再度の暗証番号の入力が行われる。
SS12.SS2で入力し、一時記憶している暗証番号と照合する。
【0032】
SS13.一時記憶している暗証番号と一致する場合は、図5に示すような「紙幣を受け取る」のタッチボタン22を表示し、同時に出金口を誘導表示し、顧客がそのタッチボタン22を押すと、シャッタ8bおよび9bが開く。
SS14.暗証番号が不一致のときには、再度の入力照合を行い、それでも不一致のときには、取引中止とし、顧客に報知する。
【0033】
SS15.出金口の貨幣は、通常の出金貨幣とは区別して取り忘れ保管庫のような個別の保管庫に搬送して保管する。
SS16.取引媒体であるキャッシュカード3を返却する。
なお、上記実施例の説明において、個人認証として暗証番号を用いることとして説明したが、指紋や静脈等の生体認証でも同様である。
【0034】
以上の如く、第3者近接察知用センサを設けたことにより、そのセンサがいかなる取引動作中に作動しても紙幣出金口および硬貨出金口のシャッタは閉じるために、めくらまし行為のような不測な事故を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】自動取引装置を示す外観説明図
【図2】自動取引装置の構成を示すブロック図
【図3】表示画面例を示す説明図
【図4】表示画面例を示す説明図
【図5】表示画面例を示す説明図
【図6】第1実施例の出金取引のフローチャート
【図7】第2実施例の説明図
【図8】第2実施例の出金取引のフローチャート
【符号の説明】
【0036】
1 自動取引装置
2 カード処理部
2a カード挿入排出口
3 キャッシュカード
4 通帳処理部
4a 通帳挿入排出口
5 通帳
6 明細票処理部
8 紙幣入出金部
8a 紙幣入出金口
9 硬貨入出金部
9a 硬貨入出金口
10 通信回路
11 表示部
12 音声案内部
12a スピーカ
14 タイマ
15 記憶部
16 インタフェース部
17 接近検知器
18 主制御部
19 電源部
20 ホストコンピュータ
21 記憶装置
22 タッチボタン
23 案内表示
24 誘導表示
25 第3者近接察知用センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出金口のシャッタが出金時に自動で開放するようにした出金取引が可能な自動取引装置において、
シャッタの開放を阻止もしくは中止できるようにし、その開放が阻止もしくは中止されたシャッタを開放するには再度の個人認証の入力が必要であることを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
請求項1において、表示画面にシャッタ閉止用のタッチボタンを表示し、そのタッチボタンを押すことにより開放しているシャッタが直ちに閉止することを特徴とする自動取引装置。
【請求項3】
請求項1において、第3者近接察知センサを設け、その作動によってシャッタの開放を阻止もしくは中止するようにしたことを特徴とする自動取引装置。
【請求項4】
請求項1において、再度入力した個人認証が不一致の場合、出金口内の貨幣は、通常の出金貨幣と区別して装置内に保管することを特徴とする自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−59357(P2008−59357A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236522(P2006−236522)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】