自動合焦装置および焦点調節方法
【課題】被写体が低照度や低コントラストの場合でもAF合焦性能を向上させることができる自動合焦装置を提供する。
【解決手段】電子カメラは、フォーカスレンズ104を含む撮影光学系および撮像素子108を介して得られた画像出力信号に基づき、この画像の測距領域で被写体のコントラストを示すAF評価値が最大になるようにフォーカスレンズ104の位置を調節する。電子カメラは、撮像素子108によって撮影される画像に複数のエッジ判別領域を設定し、設定された判別領域ごとに、複数のフォーカスレンズの位置で撮像素子108によって撮影された画像のコントラスト値を取得してメモリに記憶する。電子カメラは、記憶されたコントラスト値に基づき、エッジ判別領域をAF評価値算出領域にするか否かを判断し、AF評価値算出領域で取得されたコントラスト値に基づき、AF評価値を算出する。
【解決手段】電子カメラは、フォーカスレンズ104を含む撮影光学系および撮像素子108を介して得られた画像出力信号に基づき、この画像の測距領域で被写体のコントラストを示すAF評価値が最大になるようにフォーカスレンズ104の位置を調節する。電子カメラは、撮像素子108によって撮影される画像に複数のエッジ判別領域を設定し、設定された判別領域ごとに、複数のフォーカスレンズの位置で撮像素子108によって撮影された画像のコントラスト値を取得してメモリに記憶する。電子カメラは、記憶されたコントラスト値に基づき、エッジ判別領域をAF評価値算出領域にするか否かを判断し、AF評価値算出領域で取得されたコントラスト値に基づき、AF評価値を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子スチルカメラ等に利用されるオートフォーカスを行う自動合焦装置および焦点調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子カメラでは、CCDで撮像した被写体像のコントラスト値の積分値(以下、AF評価値)が最も高くなるフォーカス位置にフォーカスレンズを駆動させることによって焦点調節を行う、コントラスト検出方式の焦点調節装置が採用されることが多い。
【0003】
コントラスト検出方式では、被写体が低照度時に、AF評価値が小さくなり、さらに撮像信号に含まれるノイズ成分の割合が大きくなるためにAF合焦性能が低下する、という問題がある。
【0004】
この問題に対し、特許文献1では、レンズの走査領域内の画像データのノイズが少ない方からの探索により所定閾値を越えた最初の位置をエッジ位置として検出し、エッジ位置でのコントラスト値から焦点調節を行う方法が提案されている。この方法によって、ノイズの影響を軽減し、低照度時のAF合焦性能を向上させることができる。
【0005】
また、特許文献2では、各画素について周辺画素とのコントラスト値の高低関係よりノイズ領域を判別し、ノイズ領域以外の領域に測距領域を限定してAF評価値を算出する方法が提案されている。この方法によって、ノイズの影響を軽減し、低照度時のAF合焦性能を向上させることができる。
【特許文献1】特開平07−190718号公報
【特許文献2】特開2004−029105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の自動合焦装置では、以下に掲げる問題があった。すなわち、特許文献1では、ノイズによる偽のコントラスト値の方が被写体のコントラスト値よりも大きくなる場合、ノイズによる偽のコントラスト値からエッジ位置を判断して焦点調節を行ってしまい、被写体に合焦させることができなかった。
【0007】
また、特許文献2では、ノイズが固まりで存在するような状況において、ノイズによって形成された領域が合焦判定のために選ばれてしまい、ノイズの影響を避けることはできなかった。
【0008】
低照度時のような、つまり被写体の位置でコントラスト値が小さくかつノイズが多いような状況下では、特許文献1,2で示された、1画像内の輝度信号からノイズの影響を緩和させる方法には限界があった。
【0009】
そこで、本発明は、被写体が低照度や低コントラストの場合でもAF合焦性能を向上させることができる自動合焦装置および焦点調節方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の技術的特徴としては、フォーカスレンズを含む撮影光学系を介して撮像素子にて得られた画像に基づき、前記画像の測距領域での被写体の合焦状態を示す焦点評価値が最大になるように前記フォーカスレンズの位置を制御する焦点調節方法であって、前記撮像素子によって撮影される画像に複数の判別領域を設定するステップと、前記設定された判別領域ごとに、複数の前記フォーカスレンズの位置で前記画像のコントラスト値を取得するステップと、前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記コントラスト値に基づき、前記判別領域を前記測距領域にするか否かを判断するステップとを有することを特徴とする。
【0011】
また、その他の技術的特徴としては、フォーカスレンズを含む撮影光学系を介して撮像素子にて得られた画像に基づき、前記画像の測距領域での被写体の合焦状態を示す焦点評価値が最大になるように前記フォーカスレンズの位置を制御する焦点調節方法であって、前記撮像素子によって撮影される画像に複数の判別領域を設定するステップと、前記設定された判別領域ごとに、複数の前記フォーカスレンズの位置で前記画像の輝度値を取得するステップと、前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記輝度値に基づき、前記判別領域を前記測距領域にするか否かを判断するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被写体が低照度や低コントラストの場合でもノイズの影響を軽減し、AF合焦能力を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の自動合焦装置および焦点調節方法の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態の自動合焦装置は電子スチルカメラ(単に、電子カメラという)に適用される。
【0014】
図1は実施の形態における電子カメラの構成を示すブロック図である。電子カメラは、ズーム機構を含む撮影レンズ101、光量を制御する絞り及びシャッタ102、および後述する撮像素子上に焦点を合わせるためのフォーカスレンズ104からなる撮影光学系を有する。
【0015】
また、電子カメラは、AE処理部103、AF処理部105、ストロボ106、EF処理部107、および被写体からの反射光を電気信号に変換して画像出力信号を出力する撮像素子108を有する。また、電子カメラは、撮像素子108の出力ノイズを除去するCDS回路やA/D変換前に行う非線形増幅回路を含むA/D変換部109、画像処理部110、WB処理部111、フォーマット変換部112および高速な内蔵メモリ113を有する。内蔵メモリ113として、例えば、ランダムアクセスメモリ(DRAM)が用いられる。
【0016】
また、電子カメラは、メモリカードなどの記録媒体とそのインターフェースからなる画像記録部114、撮影シーケンスなどのシステムを制御するシステム制御部115、および画像表示用メモリ(以下、VRAMという) 116を有する。また、電子カメラは、画像表示、操作補助のための表示やカメラ状態の表示の他、撮影時に撮影画面と測距領域を表示する操作表示部117、カメラを外部から操作するための操作部118、および撮影のモードを設定する撮影モードSW119を有する。
【0017】
また、電子カメラは、システムに電源を投入するためのメインスイッチ120、AFやAE等の撮影スタンバイ動作を行うためのスイッチ(以下、SW1という) 121、およびSW1の操作後、撮影を行う撮影スイッチ(以下、SW2という) 122を有する。
【0018】
内蔵メモリ(DRAM)113は、一時的に画像を記憶する高速バッファ、あるいは画像の圧縮・伸張に際して作業用メモリなどに使用される。操作部118には、例えば、撮像装置の撮影機能や画像再生時の設定などの各種設定を行うメニュースイッチ、撮影レンズのズーム動作を指示するズームレバー、撮影モードと再生モードを切り換える動作モード切換えスイッチなどが含まれる。
【0019】
上記構成を有する電子カメラの合焦動作(AF動作)について説明する。図2および図3は電子カメラのAF動作手順を示すフローチャートである。この動作に関する制御プログラムはシステム制御部115内のROMに格納されており、システム制御部115内のCPUによって実行される。
【0020】
システム制御部115は、AF動作を開始すると、まず、被写体のエッジ位置を判別するための領域であるエッジ判別領域を設定する(ステップS1)。このステップS1の処理では、画像内にM = m_h×m_v 個(m_h = 1,2,… 、m_v = 1,2,…)からなる複数のエッジ判別領域が設定される。
【0021】
図4はエッジ判別領域の設定を示す図である。図4では、例として画面中央にM=5×5個のエッジ判別領域が設定されている。後に、これらの各領域が被写体のエッジ位置を含む領域(以下、エッジ領域という)であるか否かの判別を行う。ここで、エッジ判別領域の位置、大きさおよび数は、ユーザが任意に設定したものでもよい。
【0022】
システム制御部115は、AFスキャン開始位置にフォーカスレンズ104を駆動する(ステップS2)。システム制御部115は、ステップS1で設定したエッジ判別領域内のコントラスト値C[n][m](但し、n=0,1,2,…,N−1、m=0,1,2,…,M−1)および輝度信号を求め、メモリ(例えば、DRAM113)に記憶する(ステップS3)。
【0023】
ここで、C[n][m]は、AFスキャン開始位置からn番目のフォーカスレンズの位置でのm番目のエッジ判別領域のコントラスト値を表す。また、AFスキャン開始から終了までスキャン点数をN点とする。なお、コントラスト値および輝度信号(輝度値)の求め方としては、フォーカスレンズを移動しながら求める方法でもよい。
【0024】
ステップS2で記憶されたコントラスト値C[n][m]は、ステップS6でのAF評価値算出領域の決定、およびステップS8、S9でのAF評価値の算出に使用される。また、輝度信号はステップS6で使用される。
【0025】
システム制御部115は、あらかじめ設定された一定のスキャン間隔分、フォーカスレンズ104を駆動させる(ステップS4)。そして、システム制御部115は、スキャン終了位置までフォーカスレンズ104を駆動したか否かを確認する(ステップS5)。
【0026】
スキャン終了位置まで駆動していない場合、システム制御部115は、再びステップS3の処理に戻る。一方、スキャン終了位置まで駆動した場合、システム制御部115は、各フォーカスレンズの位置における各エッジ判別領域内のコントラスト値C[n][m]に基づき、各エッジ判別領域がエッジ領域であるか否かの判別を行う。そして、システム制御部115は、エッジ領域であると判別されたエッジ判別領域のみを、AF評価値を算出する測距領域としての対象領域(以下、AF評価値算出領域という)に決定する(ステップS6)。なお、このAF評価値算出領域の決定の仕方の詳細については後述する。
【0027】
システム制御部115は、AF評価値算出領域に決定されたエッジ判別領域があるか否かを判断する(ステップS7)。このエッジ判別領域がある場合、システム制御部115は、AF評価値算出領域ごとに、各フォーカスレンズの位置におけるコントラスト値の積分値をAF評価値として算出する(ステップS8)。この際、フォーカスレンズを再駆動させることなく、ステップS3で取得したコントラスト値を利用することによって、AF評価値が算出される。
【0028】
ここで、Area_NumはAF評価値算出領域として選ばれたエッジ判別領域の数を表す変数である。また、Area_No[i](i=0,1,2,…)はi番目のAF評価値算出領域に対応するエッジ判別領域の番号を表すデータ配列である。
【0029】
また、n番目のフォーカスレンズの位置における各AF評価値算出領域でのコントラスト値は、C[n][Area_No[0]],…,C[n][Area_No[Area_Num−1]と表される。よって、n番目のフォーカスレンズの位置でのAF評価値は、これらのコントラスト値の総和をAF評価値算出領域数Area_Numによって正規化した値として、数式(1)に従って算出される。
【0030】
【数1】
【0031】
一方、ステップS7でエッジ判別領域がない場合、システム制御部115は、中央に位置する所定の領域においてAF評価値の算出を行う(ステップS9)。図5はエッジ判別領域からAF評価値算出領域の決定の仕方を示す図である。例として、5×5個のエッジ判別領域の内、中央に位置する3×3個のエッジ判別領域(図5の斜線領域)からAF評価値を算出する場合を示す。
【0032】
ここで、この中央の領域のエッジ判別領域数をCenter_Numで表す。また、中央の領域に対応するエッジ判別領域の番号を表すデータ配列をCenter_Noで表す。n番目のフォーカスレンズの位置でのAF評価値は、数式(2)に従って算出される。
【0033】
【数2】
【0034】
ステップS8、S9の処理後、システム制御部115は、ステップS8またはS9で求めたAF評価値に基づき、合焦判定を行う(ステップS10)。なお、合焦判定の詳細については後述する。
【0035】
合焦判定の結果、システム制御部115は合焦可能であるか否かを判定する(ステップS11)。合焦可能であると判定された場合、システム制御部115は、AF評価値に基づいてピーク位置を演算する(ステップS12)。システム制御部115は、ステップS12で演算したピーク位置にフォーカスレンズ104を駆動する(ステップS13)。そして、システム制御部115は、合焦表示を行い(ステップS14)、本AF動作を終了する。
【0036】
一方、ステップS11で合焦可能であると判定されなかった場合、システム制御部115は、あらかじめ設定された定点と呼ばれる被写体の存在確率が高い位置にフォーカスレンズ104を駆動する(ステップS15)。そして、システム制御部115は、非合焦表示を行い(ステップS16)、本AF動作を終了する。
【0037】
図6および図7はステップS6におけるAF評価値算出領域決定の動作手順を示すフローチャートである。システム制御部115は、まず、各エッジ判別領域がエッジ領域であるか否かを判別するための評価値(以下、エッジ判別評価値という)Sum[m](m=0,1,2,…,M−1)を算出する(ステップS31)。ここで、エッジ判別評価値は、ステップS3で求めた各フォーカスレンズ位置でのコントラスト値をエッジ判別領域ごとに加算し、総和をとった値(総和値)として算出される。例えば、m番目のエッジ判別領域でのエッジ判別評価値は、数式(3)に従って算出される。
【0038】
【数3】
【0039】
システム制御部115は、全てのエッジ判別領域についてエッジ判別評価値の算出を行ったか否かを判断する(ステップS32)。まだエッジ判別評価値の算出を行っていないエッジ判別領域がある場合、システム制御部115はステップS31に戻って同様の処理を繰り返す。
【0040】
一方、全てのエッジ判別領域でエッジ判別評価値の算出を行った場合、システム制御部115は、ステップS35で各エッジ判別領域がエッジ領域であるか否かを判別する際の閾値を、ステップS3で求めた輝度信号の大きさに基づいて設定する(ステップS33)。なお、この閾値(所定値)は、輝度信号の大きさの代わりに、ステップS3で求めたコントラスト値の大きさに基づいて設定されてもよいし、あらかじめ決められた固定値に設定されてもよい。
【0041】
システム制御部115は、エッジ判別領域の番号を示す変数i、およびエッジ領域として判別したエッジ判別領域数を示す変数Edge_Numを値0に初期化する。さらに、システム制御部115は、エッジ領域として判別したエッジ判別領域の番号を示すデータ配列Edge_Noを値0に初期化する(ステップS34)。
【0042】
システム制御部115は、エッジ判別評価値Sum[i]とステップS33で設定した閾値を比較する(ステップS35)。エッジ判別評価値Sum[i]が閾値未満である場合、システム制御部115は、ステップS37の処理に進む。
【0043】
一方、エッジ判別評価値Sum[i]が閾値以上である場合、システム制御部115は、i番目のエッジ判別領域をエッジ領域として判別する。そして、システム制御部115は、変数iを変数Edge_Num番目のエッジ領域に対応するエッジ判別領域番号としてデータ配列Edge_No[Edge_Num]に追加する(ステップS36)。さらに、システム制御部115は、変数Edge_Numを値1インクリメントする。
【0044】
システム制御部115は、変数iをインクリメントする(ステップS37)。システム制御部115は、全てのエッジ判別領域でエッジ領域であるか否かの判別を行ったか否かを判断する(ステップS38)。
【0045】
まだエッジ領域であるか否かの判別を行っていないエッジ判別領域がある場合、システム制御部115は、ステップS35に戻り、同様の処理を繰り返す。一方、ステップS38で全てのエッジ判別領域で判別を行ったと判断した場合、システム制御部115は、初期化処理を行う(ステップS39)。この初期化処理では、エッジ判別領域の番号を示す変数i、AF評価値算出領域数を示す変数Area_Num、およびAF評価値算出領域として決定したエッジ判別領域の番号を示すデータ配列Area_Noがそれぞれ値0で初期化される。
【0046】
つぎに、隣接した領域にあるエッジ領域同士を連結していくことによって構成されるエッジ領域のグループを考える。ここで、隣接した領域とは、対象とするエッジ領域に対して上下左右の4方向に位置する領域、または斜め方向も加えた8方向に位置する領域を指す。本実施形態では、8方向に位置する領域を指す場合を示す。
【0047】
システム制御部115は、i番目のエッジ領域(Edge_No[i]番目のエッジ判別領域)を含むグループ内の構成領域数があらかじめ設定された所定数を越えているか否かを判断する(ステップS40)。
【0048】
所定数を越えていない場合、システム制御部115は、エッジ領域ではないと判断し、ステップS42の処理に進む。一方、所定数を越えている場合、システム制御部115は、エッジ領域であると判別し、i番目のエッジ領域をAF評価値算出領域として決定し、変数Area_Numおよびデータ配列Area_Noをそれぞれ更新する(ステップS41)。
【0049】
図8は隣接するエッジ領域を含むグループを示す図である。図には、2つのエッジ領域グループGr1、Gr2が示されている。エッジ領域グループGr1では、11個のエッジ領域が隣接することによってグループが構成されている。一方、エッジ領域グループGr2では、隣接した領域にエッジ領域が存在せずに1個のエッジ領域が孤立している。従って、グループを構成する領域数は値1である。
【0050】
グループの構成領域数があらかじめ設定された所定数を越えているか否かを判断する際の所定数を値1に設定した場合、エッジ領域グループGr2はエッジ領域ではないと判断される。この判別方法により、エッジ領域として誤判別した可能性のあるエッジ領域を除き、エッジ領域としての信頼性の高い領域のみを決定することができる。
【0051】
システム制御部115は、変数iを値1増加(インクリメント)させる(ステップS42)。システム制御部115は、まだ参照すべきエッジ領域があるか否かを判断する(ステップS43)。まだ参照すべきエッジ領域がある場合、システム制御部115は、ステップS40に戻り、同様の処理を繰り返す。一方、参照すべきエッジ領域がない場合、システム制御部115は本AF評価値算出領域決定の動作を終了する。
【0052】
このように、AF評価値算出領域を決定する際、まず各エッジ判別領域がエッジ領域であるか否かを判別し、さらに、所定数以上のエッジ領域同士が隣接しているエッジ領域のグループに含まれるエッジ領域を選ぶことが行われる。これにより、ノイズの影響を軽減してAF評価値算出領域を決定することができる。
【0053】
ここで、このエッジ領域判別方法は、フォーカス位置におけるコントラスト値の変化の傾向が図9のようにみられることに基づいている。図9はフォーカス位置におけるコントラスト値の変化を示すグラフである。被写体エッジ位置では合焦(フォーカス)位置を中心としてコントラスト値が大きくなる(図9の実線a)。一方、ノイズ位置ではフォーカス位置とは無関係にランダムにコントラスト値が変化する(図9の点線b)。
【0054】
つぎに、合焦判定について説明する。図10はフォーカスレンズ位置に対する焦点評価値の変化を示すグラフである。グラフの横軸にフォーカスレンズ位置、その縦軸に焦点評価値をとると、焦点評価値は、遠近競合などの特殊な場合を除き、図10に示すような山状になる。
【0055】
そこで、本実施形態では、合焦状態を示す焦点評価値が山状になっているか否かを、焦点評価値の最大値と最小値の差、一定値(SlopeThr)以上の傾きで傾斜している部分の長さ、および傾斜している部分の勾配から判断する。これにより、合焦判定を行うことができる。
【0056】
合焦判定における判定結果は、「○」、「×」で出力される。ここで、「○」は、焦点評価値のピーク位置から被写体の焦点調節が可能であることを表す。「×」は、被写体のコントラストが不十分である、もしくはスキャンした距離範囲外の距離に被写体が位置することを表す。
【0057】
図10では、山の頂上(A点)から傾斜が続いていると認められる点をD点、E点とし、D点とE点の幅を山の幅Lとする。また、A点とD点の焦点評価値の差SL1と、A点とE点の焦点評価値の差SL2との和SL1+SL2をSL(=SL1+SL2)とする。
【0058】
図11はステップS10における合焦判定処理手順を示すフローチャートである。システム制御部115は、焦点評価値の最大値maxと最小値min、および最大値を与えるスキャンポイント(点)ioを求める(ステップS61)。
【0059】
システム制御部115は、焦点評価値の山の幅を表す変数L、および山の勾配を表す変数SLをともに値0(零)に初期化する(ステップS62)。システム制御部115は、最大値を与えるスキャンポイントioがスキャンを行った所定範囲における遠側端の位置であるか否かを調べる(ステップS63)。
【0060】
遠側端位置でない場合、システム制御部115は、無限遠方向への単調減少を調べる(ステップS64)。この後、システム制御部115はステップS65の処理に進む。一方、遠側端位置であった場合、システム制御部115は、ステップS64の処理をスキップし、ステップS65の処理に進む。
【0061】
図12はステップS64における無限遠方向への単調減少を調べる処理手順を示すフローチャートである。システム制御部115は、まず、カウンタ変数iをスキャンポイントioに初期化する(ステップS81)。システム制御部115は、カウンタ変数iにおける焦点評価値の値d[i]と、このカウンタ変数iより1スキャンポイント分無限遠寄りのカウンタ変数i−1における焦点評価値の値d[i−1]との差を所定値SlopeThrと比較する(ステップS82)。
【0062】
d[i]−d[i−1]≧SlopeThrである場合、システム制御部115は、無限遠方向への単調減少が生じていると判断する。そして、システム制御部115は、焦点評価値が一定値以上の傾きで傾斜している部分の長さ(山の幅)を表す変数L、単調減少区間における減少量を表す変数SLを数式(4)に従って更新する(ステップS83)。
【0063】
L = L+1
SL= SL+(d[i]−d[i−1]) …… (4)
一方、d[i]−d[i−1]≧SlopeThrでない場合、システム制御部115は、無限遠方向への単調減少が生じていないと判断し、無限遠方向への単調減少をチェックする処理を終了する。この後、システム制御部115は元のステップS65の処理に復帰する。
【0064】
無限遠方向への単調減少をチェックする処理を継続する場合、システム制御部115は、カウンタ変数iをi=i−1として減じる(ステップS84)。すなわち、システム制御部115は、焦点評価値を検出する点を1スキャンポイント分無限遠側に移す。
【0065】
システム制御部115は、カウンタ変数iがスキャンを行った所定範囲における遠側端位置の値(=0)になったか否かを判別する(ステップS85)。カウンタ変数iの値が「0」である場合、つまり、単調減少を検出する開始点がスキャンを行った所定範囲における遠側端位置に達した場合、システム制御部115は、無限遠方向への単調減少をチェックする処理を終了する。この後、システム制御部115は元のステップS65の処理に復帰する。このようにして、i=ioから無限遠方向への単調減少をチェックする処理が行われる。
【0066】
つづいて、システム制御部115は、最大値を与えるスキャンポイントioがスキャンを行った所定範囲における至近端の位置であるか否かを調べる(ステップS65)。至近端位置でない場合、システム制御部115は至近端方向への単調減少を調べる(ステップS66)。この後、システム制御部115はステップS67の処理に進む。一方、至近端位置であった場合、システム制御部115は、ステップS66の処理をスキップし、ステップS67の処理に進む。
【0067】
図13はステップS66における至近端方向への単調減少を調べる処理手順を示すフローチャートである。システム制御部115は、まず、カウンタ変数iをスキャンポイントioに初期化する(ステップS91)。システム制御部115は、カウンタ変数iにおける焦点評価値の値d[i]と、このカウンタ変数iより1スキャンポイント分至近端寄りのカウンタ変数i+1における焦点評価値の値d[i+1]との差を所定値SlopeThrと比較する(ステップS92)。
【0068】
d[i]−d[i+1]≧SlopeThrである場合、システム制御部115は、至近端方向への単調減少が生じていると判断する。そして、システム制御部115は、焦点評価値が一定値以上の傾きで傾斜している部分の長さ(山の幅)を表す変数L、単調減少区間における減少量を表す変数SLを数式(5)に従って更新する(ステップS93)。
【0069】
L = L+1
SL= SL+(d[i]−d[i+1]) …… (5)
一方、d[i]−d[i+1]≧SlopeThrでない場合、システム制御部115は、至近端方向への単調減少が生じていないと判断し、至近端方向への単調減少をチェックする処理を終了する。この後、システム制御部115は元のステップS67の処理に復帰する。
【0070】
至近端方向への単調減少をチェックする処理を継続する場合、システム制御部115は、カウンタ変数iをi=i+1として増加させる(ステップS94)。すなわち、システム制御部115は、焦点評価値を検出する点を1スキャンポイント分至近端側に移す。
【0071】
システム制御部115は、カウンタ変数iがスキャンを行った所定範囲における至近端位置の値(=N)になったか否かを判別する(ステップS95)。カウンタ変数iの値が「N」である場合、つまり、単調減少を検出する開始点がスキャンを行った所定範囲における至近端位置に達した場合、システム制御部115は、至近端方向への単調減少をチェックする処理を終了する。この後、システム制御部115は元のステップS67の処理に復帰する。このようにして、i=ioから至近端方向への単調減少をチェックする処理が行われる。
【0072】
無限遠方向および至近端方向への単調減少をチェックする処理が終了すると、システム制御部115は、得られた焦点評価値が山状になっているか否か、つまり諸係数をそれぞれのしきい値と比較し、「○」、「×」の判定を行う。
【0073】
システム制御部115は、つぎのような判別を行う(ステップS67)。焦点評価値の最大値を与えるスキャンポイントioがスキャンを行った所定範囲における至近端であり、かつ焦点評価値の差が所定値SlopeThr以上であるか否かが判別される。この焦点評価値の差は、至近端スキャンポイントnにおける焦点評価値の値d[n]と、nより1スキャンポイント分無限遠寄りのスキャンポイントn−1における焦点評価値の値d[n−1]との差である。この判別がYESである場合、システム制御部115はステップS71の処理に進む。一方、この判別がNOである場合、システム制御部115はステップS68の処理に進む。
【0074】
システム制御部115は、さらに、つぎのような判別を行う(ステップS68)。焦点評価値の最大値を与えるスキャンポイントioがスキャンを行った所定範囲における遠側端であり、かつ焦点評価値の差が所定値SlopeThr以上であるか否かが判別される。この焦点評価値の差は、遠側端スキャンポイント0における焦点評価値の値d[0]と、0より1スキャンポイント分至近端寄りのスキャンポイント1における焦点評価値の値d[1]の差である。この判別がYESである場合、システム制御部115はステップS71の処理に進む。一方、この判別がNOである場合、システム制御部115はステップS69の処理に進む。
【0075】
システム制御部115は、さらに、つぎのような判別を行う(ステップS69)。すなわち、一定値以上の傾きで傾斜している部分の長さLが所定値Lo以上であり、かつ傾斜している部分の傾斜の平均値SL/Lが所定値SLo/Lo以上であり、かつ焦点評価値の最大値と最小値の差が所定値以上であるかが判別される。この判別がNOである場合、システム制御部115はステップS71の処理に進む。一方、この判別がYESである場合、システム制御部115はステップS70の処理に進む。
【0076】
システム制御部115は、得られた焦点評価値が山状となっており、被写体の焦点調節が可能であるので、判定結果を「○」としている(ステップS70)。一方、システム制御部115は、得られた焦点評価値が山状となっておらず、被写体の焦点調節が不可能であるので、判定結果を「×」としている(ステップS71)。こうして、合焦可能か否かの判定が行われる。
【0077】
以上示したように、本実施形態の自動合焦装置によれば、低照度時でもノイズ位置と被写体のエッジ位置を判別し、被写体のエッジ位置を含む領域に限定してAF評価値を算出することができる。従って、ノイズの影響を緩和し、AF合焦性能を向上させることができる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、特許請求の範囲で示した機能、または本実施形態の構成が持つ機能が達成できる構成であればどのようなものであっても適用可能である。
【0079】
例えば、上記実施形態では、撮像素子によって撮像される画像のコントラスト値に基づいて焦点評価値を算出していたが、コントラスト値の代わりに、輝度値(輝度信号)に基づいて焦点評価値を算出するようにしてもよく、本発明は同様に適用可能である。
【0080】
また、上記実施形態では、撮像素子としてCCD素子が用いられたがCMOS素子が用いられてもよいことは勿論である。
【0081】
また、上記実施形態では、コンパクトタイプのデジタルカメラを例に説明したが、本発明は、デジタルビデオカメラ、デジタルSLR(一眼レフカメラ)等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施の形態における電子カメラの構成を示すブロック図である。
【図2】電子カメラのAF動作手順を示すフローチャートである。
【図3】図2につづく電子カメラのAF動作手順を示すフローチャートである。
【図4】エッジ判別領域の設定を示す図である。
【図5】エッジ判別領域からAF評価値算出領域の決定の仕方を示す図である。
【図6】ステップS6におけるAF評価値算出領域決定の動作手順を示すフローチャートである。
【図7】図6につづくステップS6におけるAF評価値算出領域決定の動作手順を示すフローチャートである。
【図8】隣接するエッジ領域を含むグループを示す図である。
【図9】フォーカス位置におけるコントラスト値の変化を示すグラフである。
【図10】フォーカスレンズ位置に対する焦点評価値の変化を示すグラフである。
【図11】ステップS10における合焦判定処理手順を示すフローチャートである。
【図12】ステップS64における無限遠方向への単調減少を調べる処理手順を示すフローチャートである。
【図13】ステップS66における至近端方向への単調減少を調べる処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
104 フォーカスレンズ
108 撮像素子
115 システム制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子スチルカメラ等に利用されるオートフォーカスを行う自動合焦装置および焦点調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子カメラでは、CCDで撮像した被写体像のコントラスト値の積分値(以下、AF評価値)が最も高くなるフォーカス位置にフォーカスレンズを駆動させることによって焦点調節を行う、コントラスト検出方式の焦点調節装置が採用されることが多い。
【0003】
コントラスト検出方式では、被写体が低照度時に、AF評価値が小さくなり、さらに撮像信号に含まれるノイズ成分の割合が大きくなるためにAF合焦性能が低下する、という問題がある。
【0004】
この問題に対し、特許文献1では、レンズの走査領域内の画像データのノイズが少ない方からの探索により所定閾値を越えた最初の位置をエッジ位置として検出し、エッジ位置でのコントラスト値から焦点調節を行う方法が提案されている。この方法によって、ノイズの影響を軽減し、低照度時のAF合焦性能を向上させることができる。
【0005】
また、特許文献2では、各画素について周辺画素とのコントラスト値の高低関係よりノイズ領域を判別し、ノイズ領域以外の領域に測距領域を限定してAF評価値を算出する方法が提案されている。この方法によって、ノイズの影響を軽減し、低照度時のAF合焦性能を向上させることができる。
【特許文献1】特開平07−190718号公報
【特許文献2】特開2004−029105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の自動合焦装置では、以下に掲げる問題があった。すなわち、特許文献1では、ノイズによる偽のコントラスト値の方が被写体のコントラスト値よりも大きくなる場合、ノイズによる偽のコントラスト値からエッジ位置を判断して焦点調節を行ってしまい、被写体に合焦させることができなかった。
【0007】
また、特許文献2では、ノイズが固まりで存在するような状況において、ノイズによって形成された領域が合焦判定のために選ばれてしまい、ノイズの影響を避けることはできなかった。
【0008】
低照度時のような、つまり被写体の位置でコントラスト値が小さくかつノイズが多いような状況下では、特許文献1,2で示された、1画像内の輝度信号からノイズの影響を緩和させる方法には限界があった。
【0009】
そこで、本発明は、被写体が低照度や低コントラストの場合でもAF合焦性能を向上させることができる自動合焦装置および焦点調節方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の技術的特徴としては、フォーカスレンズを含む撮影光学系を介して撮像素子にて得られた画像に基づき、前記画像の測距領域での被写体の合焦状態を示す焦点評価値が最大になるように前記フォーカスレンズの位置を制御する焦点調節方法であって、前記撮像素子によって撮影される画像に複数の判別領域を設定するステップと、前記設定された判別領域ごとに、複数の前記フォーカスレンズの位置で前記画像のコントラスト値を取得するステップと、前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記コントラスト値に基づき、前記判別領域を前記測距領域にするか否かを判断するステップとを有することを特徴とする。
【0011】
また、その他の技術的特徴としては、フォーカスレンズを含む撮影光学系を介して撮像素子にて得られた画像に基づき、前記画像の測距領域での被写体の合焦状態を示す焦点評価値が最大になるように前記フォーカスレンズの位置を制御する焦点調節方法であって、前記撮像素子によって撮影される画像に複数の判別領域を設定するステップと、前記設定された判別領域ごとに、複数の前記フォーカスレンズの位置で前記画像の輝度値を取得するステップと、前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記輝度値に基づき、前記判別領域を前記測距領域にするか否かを判断するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被写体が低照度や低コントラストの場合でもノイズの影響を軽減し、AF合焦能力を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の自動合焦装置および焦点調節方法の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態の自動合焦装置は電子スチルカメラ(単に、電子カメラという)に適用される。
【0014】
図1は実施の形態における電子カメラの構成を示すブロック図である。電子カメラは、ズーム機構を含む撮影レンズ101、光量を制御する絞り及びシャッタ102、および後述する撮像素子上に焦点を合わせるためのフォーカスレンズ104からなる撮影光学系を有する。
【0015】
また、電子カメラは、AE処理部103、AF処理部105、ストロボ106、EF処理部107、および被写体からの反射光を電気信号に変換して画像出力信号を出力する撮像素子108を有する。また、電子カメラは、撮像素子108の出力ノイズを除去するCDS回路やA/D変換前に行う非線形増幅回路を含むA/D変換部109、画像処理部110、WB処理部111、フォーマット変換部112および高速な内蔵メモリ113を有する。内蔵メモリ113として、例えば、ランダムアクセスメモリ(DRAM)が用いられる。
【0016】
また、電子カメラは、メモリカードなどの記録媒体とそのインターフェースからなる画像記録部114、撮影シーケンスなどのシステムを制御するシステム制御部115、および画像表示用メモリ(以下、VRAMという) 116を有する。また、電子カメラは、画像表示、操作補助のための表示やカメラ状態の表示の他、撮影時に撮影画面と測距領域を表示する操作表示部117、カメラを外部から操作するための操作部118、および撮影のモードを設定する撮影モードSW119を有する。
【0017】
また、電子カメラは、システムに電源を投入するためのメインスイッチ120、AFやAE等の撮影スタンバイ動作を行うためのスイッチ(以下、SW1という) 121、およびSW1の操作後、撮影を行う撮影スイッチ(以下、SW2という) 122を有する。
【0018】
内蔵メモリ(DRAM)113は、一時的に画像を記憶する高速バッファ、あるいは画像の圧縮・伸張に際して作業用メモリなどに使用される。操作部118には、例えば、撮像装置の撮影機能や画像再生時の設定などの各種設定を行うメニュースイッチ、撮影レンズのズーム動作を指示するズームレバー、撮影モードと再生モードを切り換える動作モード切換えスイッチなどが含まれる。
【0019】
上記構成を有する電子カメラの合焦動作(AF動作)について説明する。図2および図3は電子カメラのAF動作手順を示すフローチャートである。この動作に関する制御プログラムはシステム制御部115内のROMに格納されており、システム制御部115内のCPUによって実行される。
【0020】
システム制御部115は、AF動作を開始すると、まず、被写体のエッジ位置を判別するための領域であるエッジ判別領域を設定する(ステップS1)。このステップS1の処理では、画像内にM = m_h×m_v 個(m_h = 1,2,… 、m_v = 1,2,…)からなる複数のエッジ判別領域が設定される。
【0021】
図4はエッジ判別領域の設定を示す図である。図4では、例として画面中央にM=5×5個のエッジ判別領域が設定されている。後に、これらの各領域が被写体のエッジ位置を含む領域(以下、エッジ領域という)であるか否かの判別を行う。ここで、エッジ判別領域の位置、大きさおよび数は、ユーザが任意に設定したものでもよい。
【0022】
システム制御部115は、AFスキャン開始位置にフォーカスレンズ104を駆動する(ステップS2)。システム制御部115は、ステップS1で設定したエッジ判別領域内のコントラスト値C[n][m](但し、n=0,1,2,…,N−1、m=0,1,2,…,M−1)および輝度信号を求め、メモリ(例えば、DRAM113)に記憶する(ステップS3)。
【0023】
ここで、C[n][m]は、AFスキャン開始位置からn番目のフォーカスレンズの位置でのm番目のエッジ判別領域のコントラスト値を表す。また、AFスキャン開始から終了までスキャン点数をN点とする。なお、コントラスト値および輝度信号(輝度値)の求め方としては、フォーカスレンズを移動しながら求める方法でもよい。
【0024】
ステップS2で記憶されたコントラスト値C[n][m]は、ステップS6でのAF評価値算出領域の決定、およびステップS8、S9でのAF評価値の算出に使用される。また、輝度信号はステップS6で使用される。
【0025】
システム制御部115は、あらかじめ設定された一定のスキャン間隔分、フォーカスレンズ104を駆動させる(ステップS4)。そして、システム制御部115は、スキャン終了位置までフォーカスレンズ104を駆動したか否かを確認する(ステップS5)。
【0026】
スキャン終了位置まで駆動していない場合、システム制御部115は、再びステップS3の処理に戻る。一方、スキャン終了位置まで駆動した場合、システム制御部115は、各フォーカスレンズの位置における各エッジ判別領域内のコントラスト値C[n][m]に基づき、各エッジ判別領域がエッジ領域であるか否かの判別を行う。そして、システム制御部115は、エッジ領域であると判別されたエッジ判別領域のみを、AF評価値を算出する測距領域としての対象領域(以下、AF評価値算出領域という)に決定する(ステップS6)。なお、このAF評価値算出領域の決定の仕方の詳細については後述する。
【0027】
システム制御部115は、AF評価値算出領域に決定されたエッジ判別領域があるか否かを判断する(ステップS7)。このエッジ判別領域がある場合、システム制御部115は、AF評価値算出領域ごとに、各フォーカスレンズの位置におけるコントラスト値の積分値をAF評価値として算出する(ステップS8)。この際、フォーカスレンズを再駆動させることなく、ステップS3で取得したコントラスト値を利用することによって、AF評価値が算出される。
【0028】
ここで、Area_NumはAF評価値算出領域として選ばれたエッジ判別領域の数を表す変数である。また、Area_No[i](i=0,1,2,…)はi番目のAF評価値算出領域に対応するエッジ判別領域の番号を表すデータ配列である。
【0029】
また、n番目のフォーカスレンズの位置における各AF評価値算出領域でのコントラスト値は、C[n][Area_No[0]],…,C[n][Area_No[Area_Num−1]と表される。よって、n番目のフォーカスレンズの位置でのAF評価値は、これらのコントラスト値の総和をAF評価値算出領域数Area_Numによって正規化した値として、数式(1)に従って算出される。
【0030】
【数1】
【0031】
一方、ステップS7でエッジ判別領域がない場合、システム制御部115は、中央に位置する所定の領域においてAF評価値の算出を行う(ステップS9)。図5はエッジ判別領域からAF評価値算出領域の決定の仕方を示す図である。例として、5×5個のエッジ判別領域の内、中央に位置する3×3個のエッジ判別領域(図5の斜線領域)からAF評価値を算出する場合を示す。
【0032】
ここで、この中央の領域のエッジ判別領域数をCenter_Numで表す。また、中央の領域に対応するエッジ判別領域の番号を表すデータ配列をCenter_Noで表す。n番目のフォーカスレンズの位置でのAF評価値は、数式(2)に従って算出される。
【0033】
【数2】
【0034】
ステップS8、S9の処理後、システム制御部115は、ステップS8またはS9で求めたAF評価値に基づき、合焦判定を行う(ステップS10)。なお、合焦判定の詳細については後述する。
【0035】
合焦判定の結果、システム制御部115は合焦可能であるか否かを判定する(ステップS11)。合焦可能であると判定された場合、システム制御部115は、AF評価値に基づいてピーク位置を演算する(ステップS12)。システム制御部115は、ステップS12で演算したピーク位置にフォーカスレンズ104を駆動する(ステップS13)。そして、システム制御部115は、合焦表示を行い(ステップS14)、本AF動作を終了する。
【0036】
一方、ステップS11で合焦可能であると判定されなかった場合、システム制御部115は、あらかじめ設定された定点と呼ばれる被写体の存在確率が高い位置にフォーカスレンズ104を駆動する(ステップS15)。そして、システム制御部115は、非合焦表示を行い(ステップS16)、本AF動作を終了する。
【0037】
図6および図7はステップS6におけるAF評価値算出領域決定の動作手順を示すフローチャートである。システム制御部115は、まず、各エッジ判別領域がエッジ領域であるか否かを判別するための評価値(以下、エッジ判別評価値という)Sum[m](m=0,1,2,…,M−1)を算出する(ステップS31)。ここで、エッジ判別評価値は、ステップS3で求めた各フォーカスレンズ位置でのコントラスト値をエッジ判別領域ごとに加算し、総和をとった値(総和値)として算出される。例えば、m番目のエッジ判別領域でのエッジ判別評価値は、数式(3)に従って算出される。
【0038】
【数3】
【0039】
システム制御部115は、全てのエッジ判別領域についてエッジ判別評価値の算出を行ったか否かを判断する(ステップS32)。まだエッジ判別評価値の算出を行っていないエッジ判別領域がある場合、システム制御部115はステップS31に戻って同様の処理を繰り返す。
【0040】
一方、全てのエッジ判別領域でエッジ判別評価値の算出を行った場合、システム制御部115は、ステップS35で各エッジ判別領域がエッジ領域であるか否かを判別する際の閾値を、ステップS3で求めた輝度信号の大きさに基づいて設定する(ステップS33)。なお、この閾値(所定値)は、輝度信号の大きさの代わりに、ステップS3で求めたコントラスト値の大きさに基づいて設定されてもよいし、あらかじめ決められた固定値に設定されてもよい。
【0041】
システム制御部115は、エッジ判別領域の番号を示す変数i、およびエッジ領域として判別したエッジ判別領域数を示す変数Edge_Numを値0に初期化する。さらに、システム制御部115は、エッジ領域として判別したエッジ判別領域の番号を示すデータ配列Edge_Noを値0に初期化する(ステップS34)。
【0042】
システム制御部115は、エッジ判別評価値Sum[i]とステップS33で設定した閾値を比較する(ステップS35)。エッジ判別評価値Sum[i]が閾値未満である場合、システム制御部115は、ステップS37の処理に進む。
【0043】
一方、エッジ判別評価値Sum[i]が閾値以上である場合、システム制御部115は、i番目のエッジ判別領域をエッジ領域として判別する。そして、システム制御部115は、変数iを変数Edge_Num番目のエッジ領域に対応するエッジ判別領域番号としてデータ配列Edge_No[Edge_Num]に追加する(ステップS36)。さらに、システム制御部115は、変数Edge_Numを値1インクリメントする。
【0044】
システム制御部115は、変数iをインクリメントする(ステップS37)。システム制御部115は、全てのエッジ判別領域でエッジ領域であるか否かの判別を行ったか否かを判断する(ステップS38)。
【0045】
まだエッジ領域であるか否かの判別を行っていないエッジ判別領域がある場合、システム制御部115は、ステップS35に戻り、同様の処理を繰り返す。一方、ステップS38で全てのエッジ判別領域で判別を行ったと判断した場合、システム制御部115は、初期化処理を行う(ステップS39)。この初期化処理では、エッジ判別領域の番号を示す変数i、AF評価値算出領域数を示す変数Area_Num、およびAF評価値算出領域として決定したエッジ判別領域の番号を示すデータ配列Area_Noがそれぞれ値0で初期化される。
【0046】
つぎに、隣接した領域にあるエッジ領域同士を連結していくことによって構成されるエッジ領域のグループを考える。ここで、隣接した領域とは、対象とするエッジ領域に対して上下左右の4方向に位置する領域、または斜め方向も加えた8方向に位置する領域を指す。本実施形態では、8方向に位置する領域を指す場合を示す。
【0047】
システム制御部115は、i番目のエッジ領域(Edge_No[i]番目のエッジ判別領域)を含むグループ内の構成領域数があらかじめ設定された所定数を越えているか否かを判断する(ステップS40)。
【0048】
所定数を越えていない場合、システム制御部115は、エッジ領域ではないと判断し、ステップS42の処理に進む。一方、所定数を越えている場合、システム制御部115は、エッジ領域であると判別し、i番目のエッジ領域をAF評価値算出領域として決定し、変数Area_Numおよびデータ配列Area_Noをそれぞれ更新する(ステップS41)。
【0049】
図8は隣接するエッジ領域を含むグループを示す図である。図には、2つのエッジ領域グループGr1、Gr2が示されている。エッジ領域グループGr1では、11個のエッジ領域が隣接することによってグループが構成されている。一方、エッジ領域グループGr2では、隣接した領域にエッジ領域が存在せずに1個のエッジ領域が孤立している。従って、グループを構成する領域数は値1である。
【0050】
グループの構成領域数があらかじめ設定された所定数を越えているか否かを判断する際の所定数を値1に設定した場合、エッジ領域グループGr2はエッジ領域ではないと判断される。この判別方法により、エッジ領域として誤判別した可能性のあるエッジ領域を除き、エッジ領域としての信頼性の高い領域のみを決定することができる。
【0051】
システム制御部115は、変数iを値1増加(インクリメント)させる(ステップS42)。システム制御部115は、まだ参照すべきエッジ領域があるか否かを判断する(ステップS43)。まだ参照すべきエッジ領域がある場合、システム制御部115は、ステップS40に戻り、同様の処理を繰り返す。一方、参照すべきエッジ領域がない場合、システム制御部115は本AF評価値算出領域決定の動作を終了する。
【0052】
このように、AF評価値算出領域を決定する際、まず各エッジ判別領域がエッジ領域であるか否かを判別し、さらに、所定数以上のエッジ領域同士が隣接しているエッジ領域のグループに含まれるエッジ領域を選ぶことが行われる。これにより、ノイズの影響を軽減してAF評価値算出領域を決定することができる。
【0053】
ここで、このエッジ領域判別方法は、フォーカス位置におけるコントラスト値の変化の傾向が図9のようにみられることに基づいている。図9はフォーカス位置におけるコントラスト値の変化を示すグラフである。被写体エッジ位置では合焦(フォーカス)位置を中心としてコントラスト値が大きくなる(図9の実線a)。一方、ノイズ位置ではフォーカス位置とは無関係にランダムにコントラスト値が変化する(図9の点線b)。
【0054】
つぎに、合焦判定について説明する。図10はフォーカスレンズ位置に対する焦点評価値の変化を示すグラフである。グラフの横軸にフォーカスレンズ位置、その縦軸に焦点評価値をとると、焦点評価値は、遠近競合などの特殊な場合を除き、図10に示すような山状になる。
【0055】
そこで、本実施形態では、合焦状態を示す焦点評価値が山状になっているか否かを、焦点評価値の最大値と最小値の差、一定値(SlopeThr)以上の傾きで傾斜している部分の長さ、および傾斜している部分の勾配から判断する。これにより、合焦判定を行うことができる。
【0056】
合焦判定における判定結果は、「○」、「×」で出力される。ここで、「○」は、焦点評価値のピーク位置から被写体の焦点調節が可能であることを表す。「×」は、被写体のコントラストが不十分である、もしくはスキャンした距離範囲外の距離に被写体が位置することを表す。
【0057】
図10では、山の頂上(A点)から傾斜が続いていると認められる点をD点、E点とし、D点とE点の幅を山の幅Lとする。また、A点とD点の焦点評価値の差SL1と、A点とE点の焦点評価値の差SL2との和SL1+SL2をSL(=SL1+SL2)とする。
【0058】
図11はステップS10における合焦判定処理手順を示すフローチャートである。システム制御部115は、焦点評価値の最大値maxと最小値min、および最大値を与えるスキャンポイント(点)ioを求める(ステップS61)。
【0059】
システム制御部115は、焦点評価値の山の幅を表す変数L、および山の勾配を表す変数SLをともに値0(零)に初期化する(ステップS62)。システム制御部115は、最大値を与えるスキャンポイントioがスキャンを行った所定範囲における遠側端の位置であるか否かを調べる(ステップS63)。
【0060】
遠側端位置でない場合、システム制御部115は、無限遠方向への単調減少を調べる(ステップS64)。この後、システム制御部115はステップS65の処理に進む。一方、遠側端位置であった場合、システム制御部115は、ステップS64の処理をスキップし、ステップS65の処理に進む。
【0061】
図12はステップS64における無限遠方向への単調減少を調べる処理手順を示すフローチャートである。システム制御部115は、まず、カウンタ変数iをスキャンポイントioに初期化する(ステップS81)。システム制御部115は、カウンタ変数iにおける焦点評価値の値d[i]と、このカウンタ変数iより1スキャンポイント分無限遠寄りのカウンタ変数i−1における焦点評価値の値d[i−1]との差を所定値SlopeThrと比較する(ステップS82)。
【0062】
d[i]−d[i−1]≧SlopeThrである場合、システム制御部115は、無限遠方向への単調減少が生じていると判断する。そして、システム制御部115は、焦点評価値が一定値以上の傾きで傾斜している部分の長さ(山の幅)を表す変数L、単調減少区間における減少量を表す変数SLを数式(4)に従って更新する(ステップS83)。
【0063】
L = L+1
SL= SL+(d[i]−d[i−1]) …… (4)
一方、d[i]−d[i−1]≧SlopeThrでない場合、システム制御部115は、無限遠方向への単調減少が生じていないと判断し、無限遠方向への単調減少をチェックする処理を終了する。この後、システム制御部115は元のステップS65の処理に復帰する。
【0064】
無限遠方向への単調減少をチェックする処理を継続する場合、システム制御部115は、カウンタ変数iをi=i−1として減じる(ステップS84)。すなわち、システム制御部115は、焦点評価値を検出する点を1スキャンポイント分無限遠側に移す。
【0065】
システム制御部115は、カウンタ変数iがスキャンを行った所定範囲における遠側端位置の値(=0)になったか否かを判別する(ステップS85)。カウンタ変数iの値が「0」である場合、つまり、単調減少を検出する開始点がスキャンを行った所定範囲における遠側端位置に達した場合、システム制御部115は、無限遠方向への単調減少をチェックする処理を終了する。この後、システム制御部115は元のステップS65の処理に復帰する。このようにして、i=ioから無限遠方向への単調減少をチェックする処理が行われる。
【0066】
つづいて、システム制御部115は、最大値を与えるスキャンポイントioがスキャンを行った所定範囲における至近端の位置であるか否かを調べる(ステップS65)。至近端位置でない場合、システム制御部115は至近端方向への単調減少を調べる(ステップS66)。この後、システム制御部115はステップS67の処理に進む。一方、至近端位置であった場合、システム制御部115は、ステップS66の処理をスキップし、ステップS67の処理に進む。
【0067】
図13はステップS66における至近端方向への単調減少を調べる処理手順を示すフローチャートである。システム制御部115は、まず、カウンタ変数iをスキャンポイントioに初期化する(ステップS91)。システム制御部115は、カウンタ変数iにおける焦点評価値の値d[i]と、このカウンタ変数iより1スキャンポイント分至近端寄りのカウンタ変数i+1における焦点評価値の値d[i+1]との差を所定値SlopeThrと比較する(ステップS92)。
【0068】
d[i]−d[i+1]≧SlopeThrである場合、システム制御部115は、至近端方向への単調減少が生じていると判断する。そして、システム制御部115は、焦点評価値が一定値以上の傾きで傾斜している部分の長さ(山の幅)を表す変数L、単調減少区間における減少量を表す変数SLを数式(5)に従って更新する(ステップS93)。
【0069】
L = L+1
SL= SL+(d[i]−d[i+1]) …… (5)
一方、d[i]−d[i+1]≧SlopeThrでない場合、システム制御部115は、至近端方向への単調減少が生じていないと判断し、至近端方向への単調減少をチェックする処理を終了する。この後、システム制御部115は元のステップS67の処理に復帰する。
【0070】
至近端方向への単調減少をチェックする処理を継続する場合、システム制御部115は、カウンタ変数iをi=i+1として増加させる(ステップS94)。すなわち、システム制御部115は、焦点評価値を検出する点を1スキャンポイント分至近端側に移す。
【0071】
システム制御部115は、カウンタ変数iがスキャンを行った所定範囲における至近端位置の値(=N)になったか否かを判別する(ステップS95)。カウンタ変数iの値が「N」である場合、つまり、単調減少を検出する開始点がスキャンを行った所定範囲における至近端位置に達した場合、システム制御部115は、至近端方向への単調減少をチェックする処理を終了する。この後、システム制御部115は元のステップS67の処理に復帰する。このようにして、i=ioから至近端方向への単調減少をチェックする処理が行われる。
【0072】
無限遠方向および至近端方向への単調減少をチェックする処理が終了すると、システム制御部115は、得られた焦点評価値が山状になっているか否か、つまり諸係数をそれぞれのしきい値と比較し、「○」、「×」の判定を行う。
【0073】
システム制御部115は、つぎのような判別を行う(ステップS67)。焦点評価値の最大値を与えるスキャンポイントioがスキャンを行った所定範囲における至近端であり、かつ焦点評価値の差が所定値SlopeThr以上であるか否かが判別される。この焦点評価値の差は、至近端スキャンポイントnにおける焦点評価値の値d[n]と、nより1スキャンポイント分無限遠寄りのスキャンポイントn−1における焦点評価値の値d[n−1]との差である。この判別がYESである場合、システム制御部115はステップS71の処理に進む。一方、この判別がNOである場合、システム制御部115はステップS68の処理に進む。
【0074】
システム制御部115は、さらに、つぎのような判別を行う(ステップS68)。焦点評価値の最大値を与えるスキャンポイントioがスキャンを行った所定範囲における遠側端であり、かつ焦点評価値の差が所定値SlopeThr以上であるか否かが判別される。この焦点評価値の差は、遠側端スキャンポイント0における焦点評価値の値d[0]と、0より1スキャンポイント分至近端寄りのスキャンポイント1における焦点評価値の値d[1]の差である。この判別がYESである場合、システム制御部115はステップS71の処理に進む。一方、この判別がNOである場合、システム制御部115はステップS69の処理に進む。
【0075】
システム制御部115は、さらに、つぎのような判別を行う(ステップS69)。すなわち、一定値以上の傾きで傾斜している部分の長さLが所定値Lo以上であり、かつ傾斜している部分の傾斜の平均値SL/Lが所定値SLo/Lo以上であり、かつ焦点評価値の最大値と最小値の差が所定値以上であるかが判別される。この判別がNOである場合、システム制御部115はステップS71の処理に進む。一方、この判別がYESである場合、システム制御部115はステップS70の処理に進む。
【0076】
システム制御部115は、得られた焦点評価値が山状となっており、被写体の焦点調節が可能であるので、判定結果を「○」としている(ステップS70)。一方、システム制御部115は、得られた焦点評価値が山状となっておらず、被写体の焦点調節が不可能であるので、判定結果を「×」としている(ステップS71)。こうして、合焦可能か否かの判定が行われる。
【0077】
以上示したように、本実施形態の自動合焦装置によれば、低照度時でもノイズ位置と被写体のエッジ位置を判別し、被写体のエッジ位置を含む領域に限定してAF評価値を算出することができる。従って、ノイズの影響を緩和し、AF合焦性能を向上させることができる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、特許請求の範囲で示した機能、または本実施形態の構成が持つ機能が達成できる構成であればどのようなものであっても適用可能である。
【0079】
例えば、上記実施形態では、撮像素子によって撮像される画像のコントラスト値に基づいて焦点評価値を算出していたが、コントラスト値の代わりに、輝度値(輝度信号)に基づいて焦点評価値を算出するようにしてもよく、本発明は同様に適用可能である。
【0080】
また、上記実施形態では、撮像素子としてCCD素子が用いられたがCMOS素子が用いられてもよいことは勿論である。
【0081】
また、上記実施形態では、コンパクトタイプのデジタルカメラを例に説明したが、本発明は、デジタルビデオカメラ、デジタルSLR(一眼レフカメラ)等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施の形態における電子カメラの構成を示すブロック図である。
【図2】電子カメラのAF動作手順を示すフローチャートである。
【図3】図2につづく電子カメラのAF動作手順を示すフローチャートである。
【図4】エッジ判別領域の設定を示す図である。
【図5】エッジ判別領域からAF評価値算出領域の決定の仕方を示す図である。
【図6】ステップS6におけるAF評価値算出領域決定の動作手順を示すフローチャートである。
【図7】図6につづくステップS6におけるAF評価値算出領域決定の動作手順を示すフローチャートである。
【図8】隣接するエッジ領域を含むグループを示す図である。
【図9】フォーカス位置におけるコントラスト値の変化を示すグラフである。
【図10】フォーカスレンズ位置に対する焦点評価値の変化を示すグラフである。
【図11】ステップS10における合焦判定処理手順を示すフローチャートである。
【図12】ステップS64における無限遠方向への単調減少を調べる処理手順を示すフローチャートである。
【図13】ステップS66における至近端方向への単調減少を調べる処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
104 フォーカスレンズ
108 撮像素子
115 システム制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカスレンズを含む撮影光学系を介して撮像素子にて得られた画像に基づき、前記画像の測距領域での被写体の合焦状態を示す焦点評価値が最大になるように前記フォーカスレンズの位置を制御する焦点調節手段と、
前記撮像素子によって撮影される画像に複数の判別領域を設定する設定手段と、
前記設定された判別領域ごとに、複数のフォーカスレンズの位置で得られたそれぞれの前記画像のコントラスト値を取得する取得手段と、
前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記コントラスト値に基づき、前記判別領域を前記測距領域にするか否かを判断する判断手段とを有し、
前記焦点調節手段は、前記判断手段により前記測距領域にすると判断された前記判別領域で取得された焦点評価値に基づき、前記フォーカスレンズの位置を制御することを特徴とする自動合焦装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記設定された判別領域ごとに、前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記コントラスト値を加算して総和値を算出し、前記算出された総和値が所定値以上である前記判別領域を前記測距領域にすると判断することを特徴とする請求項1記載の自動合焦装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記コントラスト値を用いて、前記総和値と比較される前記所定値を決定することを特徴とする請求項2記載の自動合焦装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記算出された総和値が前記所定値以上である前記判別領域のうち、隣接した判別領域によって構成されるグループ内の判別領域の数が所定数以上である場合、当該グループ内の判別領域を前記測距領域にすると判断することを特徴とする請求項2記載の自動合焦装置。
【請求項5】
前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された複数のコントラスト値を記憶する記憶手段を備え、
前記焦点調節手段は、前記記憶されたコントラスト値を用いて前記焦点評価値を算出することを特徴とする請求項1記載の自動合焦装置。
【請求項6】
前記焦点調節手段は、前記判断手段によって前記測距領域にすると判断された領域数を用いて、前記焦点評価値を正規化することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の自動合焦装置。
【請求項7】
フォーカスレンズを含む撮影光学系を介して撮像素子にて得られた画像に基づき、前記画像の測距領域での被写体の合焦状態を示す焦点評価値が最大になるように前記フォーカスレンズの位置を制御する焦点調節手段と、
前記撮像素子によって撮影される画像に複数の判別領域を設定する設定手段と、
前記設定された判別領域ごとに、複数のフォーカスレンズの位置で得られたそれぞれの前記画像の輝度値を取得する取得手段と、
前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記輝度値に基づき、前記測距領域にするか否かを判断する判断手段とを有し、
前記焦点調節手段は、前記判断手段により前記測距領域にすると判断された判別領域で取得された焦点評価値に基づき、前記フォーカスレンズの位置を制御することを特徴とする自動合焦装置。
【請求項8】
フォーカスレンズを含む撮影光学系を介して撮像素子にて得られた画像に基づき、前記画像の測距領域での被写体の合焦状態を示す焦点評価値が最大になるように前記フォーカスレンズの位置を制御する焦点調節方法であって、
前記撮像素子によって撮影される画像に複数の判別領域を設定するステップと、
前記設定された判別領域ごとに、複数の前記フォーカスレンズの位置で前記画像のコントラスト値を取得するステップと、
前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記コントラスト値に基づき、前記判別領域を前記測距領域にするか否かを判断するステップと、を有することを特徴とする焦点調節方法。
【請求項9】
フォーカスレンズを含む撮影光学系を介して撮像素子にて得られた画像に基づき、前記画像の測距領域での被写体の合焦状態を示す焦点評価値が最大になるように前記フォーカスレンズの位置を制御する焦点調節方法であって、
前記撮像素子によって撮影される画像に複数の判別領域を設定するステップと、
前記設定された判別領域ごとに、複数の前記フォーカスレンズの位置で前記画像の輝度値を取得するステップと、
前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記輝度値に基づき、前記判別領域を前記測距領域にするか否かを判断するステップと、を有することを特徴とする焦点調節方法。
【請求項1】
フォーカスレンズを含む撮影光学系を介して撮像素子にて得られた画像に基づき、前記画像の測距領域での被写体の合焦状態を示す焦点評価値が最大になるように前記フォーカスレンズの位置を制御する焦点調節手段と、
前記撮像素子によって撮影される画像に複数の判別領域を設定する設定手段と、
前記設定された判別領域ごとに、複数のフォーカスレンズの位置で得られたそれぞれの前記画像のコントラスト値を取得する取得手段と、
前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記コントラスト値に基づき、前記判別領域を前記測距領域にするか否かを判断する判断手段とを有し、
前記焦点調節手段は、前記判断手段により前記測距領域にすると判断された前記判別領域で取得された焦点評価値に基づき、前記フォーカスレンズの位置を制御することを特徴とする自動合焦装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記設定された判別領域ごとに、前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記コントラスト値を加算して総和値を算出し、前記算出された総和値が所定値以上である前記判別領域を前記測距領域にすると判断することを特徴とする請求項1記載の自動合焦装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記コントラスト値を用いて、前記総和値と比較される前記所定値を決定することを特徴とする請求項2記載の自動合焦装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記算出された総和値が前記所定値以上である前記判別領域のうち、隣接した判別領域によって構成されるグループ内の判別領域の数が所定数以上である場合、当該グループ内の判別領域を前記測距領域にすると判断することを特徴とする請求項2記載の自動合焦装置。
【請求項5】
前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された複数のコントラスト値を記憶する記憶手段を備え、
前記焦点調節手段は、前記記憶されたコントラスト値を用いて前記焦点評価値を算出することを特徴とする請求項1記載の自動合焦装置。
【請求項6】
前記焦点調節手段は、前記判断手段によって前記測距領域にすると判断された領域数を用いて、前記焦点評価値を正規化することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の自動合焦装置。
【請求項7】
フォーカスレンズを含む撮影光学系を介して撮像素子にて得られた画像に基づき、前記画像の測距領域での被写体の合焦状態を示す焦点評価値が最大になるように前記フォーカスレンズの位置を制御する焦点調節手段と、
前記撮像素子によって撮影される画像に複数の判別領域を設定する設定手段と、
前記設定された判別領域ごとに、複数のフォーカスレンズの位置で得られたそれぞれの前記画像の輝度値を取得する取得手段と、
前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記輝度値に基づき、前記測距領域にするか否かを判断する判断手段とを有し、
前記焦点調節手段は、前記判断手段により前記測距領域にすると判断された判別領域で取得された焦点評価値に基づき、前記フォーカスレンズの位置を制御することを特徴とする自動合焦装置。
【請求項8】
フォーカスレンズを含む撮影光学系を介して撮像素子にて得られた画像に基づき、前記画像の測距領域での被写体の合焦状態を示す焦点評価値が最大になるように前記フォーカスレンズの位置を制御する焦点調節方法であって、
前記撮像素子によって撮影される画像に複数の判別領域を設定するステップと、
前記設定された判別領域ごとに、複数の前記フォーカスレンズの位置で前記画像のコントラスト値を取得するステップと、
前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記コントラスト値に基づき、前記判別領域を前記測距領域にするか否かを判断するステップと、を有することを特徴とする焦点調節方法。
【請求項9】
フォーカスレンズを含む撮影光学系を介して撮像素子にて得られた画像に基づき、前記画像の測距領域での被写体の合焦状態を示す焦点評価値が最大になるように前記フォーカスレンズの位置を制御する焦点調節方法であって、
前記撮像素子によって撮影される画像に複数の判別領域を設定するステップと、
前記設定された判別領域ごとに、複数の前記フォーカスレンズの位置で前記画像の輝度値を取得するステップと、
前記複数のフォーカスレンズの位置で取得された前記輝度値に基づき、前記判別領域を前記測距領域にするか否かを判断するステップと、を有することを特徴とする焦点調節方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−78810(P2010−78810A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245986(P2008−245986)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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