説明

自動変速機のパーキングロック装置

【課題】この発明は、パーキングロック装置のパーキングポールをロック解除位置に確実に保持することができ、車両の走行時にパーキングポールがパーキングギアに接触することを回避し、異音の発生を防止することを目的とする。
【解決手段】この発明は、シフトレバーがパーキング位置にある場合に、パーキングウェッジでパーキングポールをロック位置に揺動させ、シフトレバーがパーキング以外の位置にある場合は、パーキングポールをロック解除位置に保持する自動変速機のパーキングロック装置において、パーキングポールに係合部を備え、パーキングウェッジまたはパーキングロッドにパーキングポールの係合部と係合する係合部を備え、パーキングポールがロック解除位置に移動した場合、パーキングポールの係合部がパーキングウェッジまたはパーキングロッドの係合部に係合してパーキングポールをロック解除位置に保持することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動変速機のパーキングロック装置に係り、特に、自動変速機においてシフトレバーがパーキング位置にある時に駆動軸をロックしておくためのパーキングポールが車両走行時の振動に起因して揺動することを抑制し、パーキングギアとの接触による異音の発生を防止した自動変速機のパーキングロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動変速機においては、シフトレバーをパーキング位置に操作した場合に、変速機ケースに駆動軸をロックして車輪の回転を阻止するパーキングロック装置を備えている。自動変速機のパーキングロック装置は、図6に示すように構成される。図6において、201は自動変速機、202は変速機ケース、203は駆動軸、204はパーキングロック装置である。自動変速機201のパーキングロック装置204は、変速機ケース202に軸支した駆動軸203にパーキングギア205を一体的に設け、パーキングギア205に対してロック位置とロック解除位置とに揺動可能にパーキングポール206を揺動軸207により変速機ケース202に保持している。
パーキングポール206は、パーキングギア205のギア歯208間の歯ミゾ209に対して、揺動によりロック歯210を係脱自在として配置している。パーキングポール206は、パーキングポール206をロック位置およびロック解除位置に揺動するポール側当接部211を備え、リターンスプリング212によりポール側当接部211をサポータ213に近づける方向(ロック解除位置の方向)に付勢されている。
パーキングロック装置204は、シフトレバーの操作により回転されるマニュアルシャフト214にアシストプレート215を取り付け、レバー軸216により変速機ケース202にパーキングレバー217を揺動可能に保持している。パーキングレバー217は、アシストプレート215の逃げ溝218とパーキング溝219とからなる略L字形状の長溝にレバーピン220を係合しており、アシストプレート215によりパーキングポール206をロック位置とロック解除位置とに移動させるように揺動される。
パーキングレバー217の他端側には、パーキングロッド221の一端側を連絡している。パーキングロッド221は、中間部をポール側当接部211とサポータ213との間を通して、他端側を揺動軸207の方向へ延設している。パーキングロッド221には、ポール側当接部211とサポータ213との間に位置するように、パーキングウェッジ222を軸方向移動可能に保持している。パーキングウェッジ222は、ポール側当接部211とサポータ213とに当接するウェッジ側ロック用当接部223と傾斜部224とウェッジ側ロック解除用当接部225とを備えている。パーキングウェッジ222は、ポール側ロック用当接部211とサポータ213との間に押し込まれる方向にウェッジスプリング226により付勢されている。
パーキングロック装置204は、常時はリターンスプリング212によりパーキングポール206をロック解除位置方向に付勢する一方、パーキングポール206をシフトレバーとマニュアルシャフト214〜パーキングウェッジ222を介して機械的に連係させて、シフトレバーがパーキング位置にある場合は、サポータ213に乗り上げたパーキングウェッジ222のウェッジ側ロック用当接部223によりパーキングポール206のポール側当接部211を持ち上げ、リターンスプリング212に抗してパーキングポール206をロック位置に揺動させ、パーキングポール206のロック歯210をパーキングギア205の歯ミゾ209に係合させて駆動軸203をロックする。
このような自動変速機のパーキングロック装置にあっては、例えばリターンスプリングがへたった場合に、悪路走行を行っている際に生じる大きな振動によりパーキングポールが揺れてパーキングギアに接触して、はじかれる際に異音を発生することがある。特に、パーキングポールは、通常、変速機ケースに揺動自在として保持されることが多いが、パーキングポールをパーキングギアの上方に配置した場合には、パーキングポールがその自重によってもパーキングギアに対して接触してしまう可能性が大きいものとなる。
【0003】
これに対して、従来の自動変速機のパーキングロック装置には、ライン圧を受けたときにパーキングポールをロック解除位置方向に作動させる油圧アクチュエータを設け、シフトレバーを走行位置(ドライブ位置)に操作したときにライン圧を油圧アクチュエータに導く切換弁を設け、車両の走行中にロック解除位置に移動したパーキングポールを油圧アクチュエータでロック解除位置に保持するものがある。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平4−14293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載される自動変速機のパーキングロック装置装置は、機械的にパーキングポールをロック解除位置に保持するものでなく、油圧によってパーキングポールをロック解除位置に保持するものである。このため、この自動変速機のパーキングロック装置装置は、油圧の変動や油路の詰まり、切換弁の不動などを生じた場合にパーキングポールをロック解除位置に保持することができなくなり、車両走行時の振動に起因してパーキングポールが揺動し、パーキングギアに接触して異音を発生する問題がある。
【0006】
この発明は、自動変速機のパーキングロック装置において、パーキングポールをロック解除位置に確実に保持することができ、車両の走行時にパーキングポールがパーキングギアに接触することを回避し、異音の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、自動変速機の駆動軸にパーキングギアを一体的に取り付け、前記パーキングギアと噛み合うロック位置および前記パーキングギアとの噛み合いが解除されたロック解除位置に揺動可能なパーキングポールを前記自動変速機の変速機ケースに取り付け、前記パーキングポールをリターンスプリングによってロック解除位置に付勢し、シフトレバーの操作によってパーキングロッドを介して移動され、前記パーキングポールを揺動させるパーキングウェッジを前記パーキングポールに接触させ、前記シフトレバーがパーキング位置にある場合に、前記パーキングウェッジで前記パーキングポールをリターンスプリングに抗してロック位置に揺動させ、前記シフトレバーがパーキング以外の位置にある場合は、前記リターンスプリングで前記パーキングポールをロック解除位置に保持する自動変速機のパーキングロック装置において、前記パーキングポールに係合部を備え、前記パーキングウェッジまたは前記パーキングロッドに前記パーキングポールの係合部と係合する係合部を備え、前記パーキングポールがロック解除位置に移動した場合、前記パーキングポールの係合部が前記パーキングウェッジまたは前記パーキングロッドの係合部に係合して前記パーキングポールをロック解除位置に保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の自動変速機のパーキングロック装置は、シフトレバーがパーキング位置以外の位置にあるとき、つまり、パーキングポールがパーキングギアに噛み合わないロック解除位置に移動しているとき、パーキングポールの係合部にパーキングウェッジまたはパーキングロッドの係合部を係合してパーキングポールをロック解除位置に保持するため、車両走行時の振動に起因するパーキングポールの揺動を確実に抑制することができる。
これにより、この発明の自動変速機のパーキングロック装置は、パーキングポールとパーキングギアとの接触が無くなり、パーキングギアによってパーキングポールがはじかれる異音を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】パーキングポールがロック解除位置に移動した状態を示す断面図である。(実施例1)
【図2】パーキングポールがロック位置に移動した状態を示す断面図である。(実施例1)
【図3】自動変速機のパーキングロック装置の全体構成を示す斜視図である。(実施例1)
【図4】パーキングポールがロック解除位置に移動した状態を示す断面図である。(変形例)
【図5】パーキングポールがロック解除位置に移動した状態を示す断面図である。(実施例2)
【図6】パーキングペールがロック解除位置に移動した状態を示す断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、ロック解除位置に移動しているパーキングポールにパーキングウェッジまたはパーキングロッドを係合してパーキングポールをロック解除位置に保持することで、車両走行時の振動に起因するパーキングポールの揺動を抑制し、パーキングギアによってパーキングポールがはじかれる異音を防止するものである。
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1〜図3は、この発明の実施例1を示すものである。図1・図2において、1は自動変速機、2は変速機ケース、3は駆動軸、4はパーキングロック装置である。自動変速機1のパーキングロック装置4は、変速機ケース2に軸支した駆動軸3にパーキングギア5を一体的に設け、パーキングギア5と噛み合うロック位置および噛み合いが解除されたロック解錠位置とに揺動可能にパーキングポール6を揺動軸7により変速機ケース2に保持している。
パーキングギア5は、外周にギア歯8を備え、ギア歯8間に歯ミゾ9を有している。パーキングポール6は、一端側の揺動軸7から離間してギア歯8・歯ミゾ9と対向する側にロック歯10を設け、揺動により歯ミゾ9に対してロック歯10を係脱自在として配置している。また、パーキングポール6は、一端側の揺動軸7から離間してギア歯8・歯ミゾ9と背反する側であって、パーキングポール6の揺動中心Mである揺動軸7に近い側の位置に配置される第1ポール側係合部11を備え、この第1ポール側係合部11よりも揺動中心Mである揺動軸7から遠い側の他端側の位置に配置される第2ポール側係合部12を備えている。
第1ポール側係合部11は、アーム形状に形成されている。第2ポール側係合部12は、突曲面形状に形成されている。この第2ポール側係合部12は、後述するパーキングウェッジ29のウェッジ側ロック用当接部33あるいはウェッジ側ロック解除用当接部である第2ウェッジ側係合部31に当接することで、パーキングポール6をロック位置あるいはロック解除位置に揺動するポール側当接部として機能する。
パーキングポール6の第2ポール側係合部12(ポール側当接部)と対向する側には、サポータ13を変速機ケース2に設けている。パーキングポール6は、リターンスプリング14により第2ポール側係合部12をサポータ13に近づける方向(ロック解除位置の方向)に付勢されている。
前記自動変速機1は、図3に示すように、レンジを切り換えるシフトレバー15をセレクトケーブル16によりセレクトレバー17に連絡している。セレクトレバー17は、変速機ケース2に回転可能に支持したマニュアルシャフト18の一端に取り付けられている。マニュアルシャフト18の中間には、マニュアルプレート19を取り付けている。マニュアルプレート19は、外周縁にセレクト段部20を形成している。マニュアルプレート19は、変速機ケース2に取り付けたセレクトスプリング21をセレクト段部20に弾性係合されることで、マニュアルシャフト18の回転位置を各シフト位置に位置決めする。自動変速機1は、シフトレバー15の操作によりマニュアルシャフト18を回転させ、マニュアルプレート19のセレクト段部20およびセレクトスプリング21でマニュアルシャフト18の回転位置を位置決めし、シフトレバー15の選択したシフト位置に応じて油圧回路によりレンジを切り換える。
【0012】
前記パーキングロック装置4は、図1・図2に示すように、前記マニュアルシャフト18の他端にアシストプレート22を取り付け、マニュアルシャフト18と平行なレバー軸23により変速機ケース2にパーキングレバー24を揺動可能に保持している。アシストプレート22には、パーキング位置以外の逃げ溝25とパーキング位置用のパーキング溝26とからなる略L字形状の長溝が形成されている。パーキングレバー24は、中間をレバー軸23に支持され、一端側に設けたレバーピン27をアシストプレート24の逃げ溝25あるいはパーキング溝26に係合している。
パーキングレバー24は、シフトレバー15をパーキング位置に操作すると、回転するアシストプレート22のパーキング溝26に係合したレバーピン27により、パーキングポール6をロック位置に移動させるように揺動される。一方、パーキングレバー24は、シフトレバー15をパーキング位置以外の位置に操作すると、回転するアシストプレート22の逃げ溝25に係合したレバーピン27により、パーキングポール6をロック解除位置に移動させるように揺動される。
パーキングレバー24は、他端側にパーキングロッド28の一端側を連絡している。パーキングロッド28は、中間部を前記第2ポール側係合部12とサポータ13との間を通して、他端側をパーキングポール6の揺動軸7方向へ延設している。パーキングロッド28には、第2ポール側係合部12とサポータ13との間に位置するように、略円筒形状のパーキングウェッジ29を軸方向移動可能に保持している。パーキングウェッジ29は、軸方向の一端側に前記第1ポール側係合部11が内周に係合する円錐筒状の第1ウェッジ側係合部30を備え、軸方向の他端側に前記第2ポール側係合部12が外周に当接する円筒状の第2ウェッジ側係合部31を備えている。他端側の第2ウェッジ側係合部31は、一端側の第1ウェッジ側係合部30の最小径部よりも小径に形成されている。
パーキングウェッジ29は、他端側の第2ウェッジ側係合部31に連続して一端側に向かい急激に径大となる傾斜部32を備え、傾斜部32に連続して一端側に向かい緩やかに径大となるウェッジ側ロック用当接部33を備えている。第2ウェッジ側係合部31よりも大径に形成されたウェッジ側ロック用当接部33の一端側には、第1ウェッジ側係合部30の他端側の最小径部が連続されている。第1ウェッジ側係合部30は、第1ポール側係合部11に向かい拡径するように円錐筒状に形成されている。パーキングウェッジ29は、第2ポール側当接部12とサポータ13との間に押し込まれる方向にウェッジスプリング34により付勢されている。
パーキングウェッジ29は、ウェッジ側ロック用当接部33をポール側当接部である第2ポール側係合部12と当接することでパーキングポール6をロック位置に揺動し(図2)、ウェッジ側ロック解除用当接部である第2ウェッジ側係合部31をポール側当接部である第2ポール側係合部12と当接することでパーキングポール6をロック解除位置に揺動する(図1)。
パーキングロック装置4は、パーキングポール6がロック解除位置に移動した場合、第1ポール側係合部11が円錐筒状の第1ウェッジ側係合部30の内周に係合するとともに、第2ポール側係合部12が円筒状の第2ウェッジ側係合部31の外周に当接して、パーキングポール6をロック解除位置に保持する。
【0013】
次に作用を説明する。
パーキングロック装置4は、シフトレバー15をパーキング位置に操作すると、図2に示すように、セレクトケーブル16およびセレクトレバー17を介してマニュアルシャフト18が矢印A方向に回転し、アシストプレート22のパーキング溝26にレバーピン27が移動してパーキングレバー24を矢印A方向に回転し、パーキングロッド28を矢印B方向に移動させる。
パーキングウェッジ29は、パーキングロッド28の矢印B方向への移動によって、第2ポール側当接部12とサポータ13との間に、第2ウェッジ側係合部31から傾斜部32を経てウェッジ側ロック用当接部33が位置するように移動する。パーキングウェッジ29は、大径のウェッジ側ロック用当接部33がサポート13に乗り上げるように位置することで、ウェッジ側ロック用当接部33により第2ポール側当接部12を矢印C方向に押し上げ、リターンスプリング14に抗してパーキングポール6をロック位置に揺動させ、パーキングポール6のロック歯10をパーキングギア5のギア歯8間の歯ミゾ9に係合させて駆動軸3をロックする。
一方、パーキングロック装置4は、シフトレバー15をパーキング位置以外の位置に操作すると、図1に示すように、セレクトケーブル16およびセレクトレバー17を介してマニュアルシャフト18が矢印D方向に回転し、アシストプレート22の逃げ溝25にレバーピン27が移動してキングレバー24を矢印D方向に回転し、パーキングロッド28を矢印E方向に移動させる。
パーキングウェッジ29は、パーキングロッド28の矢印E方向への移動によって、第2ポール側当接部12とサポータ13との間に、ウェッジ側ロック用当接部33から傾斜部32を経て第2ウェッジ側係合部31が位置するように移動する。パーキングウェッジ29は、小径の第2ウェッジ側係合部31がサポート13に位置することで、第2ウェッジ側係合部31により第2ポール側当接部12を矢印F方向に下げ、リターンスプリング14によりパーキングポール6をロック解除位置に揺動させ、パーキングポール6のロック歯10をパーキングギア5のギア歯8間の歯ミゾ9から抜いて駆動軸3のロックを解除する。
このとき、パーキングロック装置4は、パーキングポール6がロック解除位置に移動したことで、第1ポール側係合部11が円錐筒状の第1ウェッジ側係合部30の内周に係合するとともに、第2ポール側係合部12が円筒状の第2ウェッジ側係合部31の外周に当接して、パーキングポール6をロック解除位置に保持する。
【0014】
このように、自動変速機1のパーキングロック装置4は、シフトレバー15をパーキング位置以外の位置に操作して、パーキングポール6がパーキングギア5に噛み合わないロック解除位置に移動した場合、パーキングポール6の第1ポール側係合部11がパーキングウェッジ6の第1ウェッジ側係合部30の内周に引っ掛かるように係合し、第2ポール側係合部12が第2ウェッジ側係合部31の外周に当接するため、パーキングポール6の第1ポール側係合部11と第2ポール側係合部12の2点によってパーキングウェッジ29の第1ウェッジ側係合部30と第2ウェッジ側係合部31に確実に係合してパーキングポール6をロック解除位置に保持することができ、車両走行時の振動に起因するパーキングポール6のガタツキを抑制することができる。
これにより、この自動変速機1のパーキングロック装置4は、第1ポール側係合部11と第2ポール側係合部12による第1ウェッジ側係合部30と第2ウェッジ側係合部31ヘの係合と当接により、車両の振動でパーキングポール6がパーキングウェッジ29から容易に外れることがなくなり、パーキングポール6とパーキングギア5との接触が無くなり、パーキングポール6がパーキングギア5との接触によって生じる異音の発生を確実に防止することができる。
なお、この実施例のパーキングロック装置4は、パーキングポール6の第1ポール側係合部11が内周に係合するパーキングウェッジ29の第1ウェッジ側係合部30を円錐筒状に形成したが、図4に示すように、円筒状に形成することもできる。円筒状に形成された第1ウェッジ側係合部30は、パーキングポール6の第1ポール側係合部11と第2ポール側係合部12との間の窪部35に当接する角部36を備えている。
このパーキングロック装置4は、パーキングポール6がロック解除位置に移動した場合に、パーキングポール6の窪部35に第1ウェッジ側係合部30の角部36を当接させることで、パーキングポール6の第1ポール側係合部11と第2ポール側係合部12と窪部35の3点によってパーキングウェッジ29の第1ウェッジ側係合部30と第2ウェッジ側係合部31と角部36に係合して、パーキングポール6をロック解除位置により確実に保持することができ、パーキングポール6のガタツキを抑制することができる。
【実施例2】
【0015】
図5は、この発明の実施例2を示すものである。図5において、101は自動変速機、102は変速機ケース、103は駆動軸、104はパーキングロック装置である。自動変速機101のパーキングロック装置104は、変速機ケース102に軸支した駆動軸103にパーキングギア105を一体的に設け、パーキングギア105と噛み合うロック位置および噛み合いが解除されたロック解錠位置とに揺動可能にパーキングポール106を揺動軸107により変速機ケース102に保持している。
パーキングギア105は、外周にギア歯108を備え、ギア歯108間に歯ミゾ109を有している。パーキングポール106は、一端側の揺動軸107から離間してギア歯108・歯ミゾ109と対向する側にロック歯110を設け、揺動により歯ミゾ109に対してロック歯110を係脱自在として配置している。また、パーキングポール106は、ポール側係合部111を備えている。ポール側係合部111は、一端側の揺動軸107から離間してギア歯108・歯ミゾ109と背反する側であって、パーキングポール106の揺動中心Mである揺動軸107から遠い側の他端側の位置に配置される。ポール側係合部111は、磁力により吸着される材質で突曲面形状に形成されている。このポール側係合部111は、後述するパーキングウェッジ125のウェッジ側ロック用当接部126あるいはウェッジ側ロック解除用当接部128に当接することで、パーキングポール106をロック位置あるいはロック解除位置に揺動するポール側当接部として機能する。
パーキングポール106のポール側係合部111(ポール側当接部)と対向する側には、サポータ112を変速機ケース102に設けている。パーキングポール106は、リターンスプリング113によりポール側係合部111をサポータ112に近づける方向(ロック解除位置の方向)に付勢されている。
前記自動変速機101は、シフトレバーの操作によりセレクトケーブルおよびセレクトレバーを介してマニュアルシャフト114を回転させ(図3参照)、マニュアルシャフト114の中間に取り付けたマニュアルプレート115のセレクト段部116およびセレクト段部116に弾性係合するセレクトスプリング117でマニュアルシャフト114の回転位置を位置決めし、シフトレバーの選択したシフト位置に応じて油圧回路によりレンジを切り換える。
【0016】
前記パーキングロック装置104は、前記マニュアルシャフト114の他端にアシストプレート118を取り付け、マニュアルシャフト114と平行なレバー軸119により変速機ケース102にパーキングレバー120を揺動可能に保持している。アシストプレート118には、パーキング位置以外の逃げ溝121とパーキング位置用のパーキング溝122とからなる略L字形状の長溝が形成されている。パーキングレバー120は、中間をレバー軸119に支持され、一端側に設けたレバーピン123をアシストプレート118の逃げ溝121あるいはパーキング溝122に係合している。
パーキングレバー120は、シフトレバーをパーキング位置に操作すると、回転するアシストプレート118のパーキング溝122に係合したレバーピン123により、パーキングポール106をロック位置に移動させるように揺動される。一方、パーキングレバー120は、シフトレバーをパーキング位置以外の位置に操作すると、回転するアシストプレート118の逃げ溝121に係合したレバーピン123により、パーキングポール106をロック解除位置に移動させるように揺動される。
パーキングレバー120は、他端側にパーキングロッド124の一端側を連絡している。パーキングロッド124は、中間部を前記ポール側係合部111とサポータ112との間を通して、他端側をパーキングポール106の揺動107方向へ延設している。パーキングロッド124には、ポール側係合部111とサポータ112との間に位置するように、略円筒形状のパーキングウェッジ125を軸方向移動可能に保持している。パーキングウェッジ125は、軸方向の一端側に緩やかな円錐筒状のウェッジ側ロック用当接部126を備え、軸方向の中間に急な円錐形状の傾斜部127を備え、軸方向の他端側に円筒状のウェッジ側ロック解除用当接部128を備えている。
つまり、パーキングウェッジ125は、他端側のウェッジ側ロック解除用当接部128に連続して一端側に向かい急激に径大となる傾斜部127を備え、傾斜部127に連続して一端側に向かい緩やかに径大となるウェッジ側ロック用当接部126を備えている。他端側のウェッジ側ロック解除用当接部128は、一端側のウェッジ側ロック用当接部126の最小径部よりも小径に形成されている。パーキングウェッジ125は、ポール側係合部111とサポータ112との間に押し込まれる方向にウェッジスプリング129により付勢されている。
パーキングウェッジ125は、ウェッジ側ロック用当接部126をポール側当接部であるポール側係合部111と当接することでパーキングポール106をロック位置に揺動し、ウェッジ側ロック解除用当接部128をポール側係合部111と当接することでパーキングポール106をロック解除位置に揺動する。(図5参照)
パーキングウェッジ125を軸方向移動可能に保持しているパーキングロッド124は、パーキングウェッジ125のウェッジ側ロック解除用当接部128と対向する側に、パーキングポール106のポール側係合部111を吸着可能な磁力を有する材質からなるロッド側係合部130を備えている。ロッド側係合部130には、ウェッジスプリング129によりパーキングウェッジ125のウェッジ側ロック解除用当接部128が押圧されている。
パーキングロック装置104は、パーキングポール106がパーキングギア105に噛み合わない位置に移動(ロック解除位置)した場合、ポール側係合部111がロッド側係合部130の磁力により吸着されてパーキングポール106をパーキングギア105に噛み合わない位置に保持する。
【0017】
次に作用を説明する。
パーキングロック装置104は、シフトレバーをパーキング位置に操作すると、セレクトケーブルおよびセレクトレバーを介してマニュアルシャフト114が矢印A方向に回転し、アシストプレート118のパーキング溝122にレバーピン123が移動してパーキングレバー120を矢印A方向に回転し、パーキングロッド124を矢印B方向に移動させる。(図5参照)
パーキングウェッジ125は、パーキングロッド124の矢印B方向への移動によって、ポール側係合部111とサポータ112との間に、ウェッジ側ロック解除用当接部128から傾斜部127を経てウェッジ側ロック用当接部126が位置するように移動する。パーキングウェッジ125は、大径のウェッジ側ロック用当接部126がサポート112に乗り上げるように位置することで、ウェッジ側ロック用当接部126によりポール側係合部111を矢印C方向に押し上げ、リターンスプリング113に抗してパーキングポール106をロック位置に揺動させ、パーキングポール106のロック歯110をパーキングギア105のギア歯108間の歯ミゾ109に係合させて駆動軸103をロックする。
一方、パーキングロック装置104は、図5に示すように、シフトレバーをパーキング位置以外の位置に操作すると、セレクトケーブルおよびセレクトレバーを介してマニュアルシャフト114が矢印D方向に回転し、マニュアルシャフト114の逃げ溝121にレバーピン123が移動してパーキングレバー120を矢印D方向に回転し、パーキングロッド124を矢印E方向に移動させる。
パーキングウェッジ125は、パーキングロッド124の矢印E方向への移動によって、ポール側係合部111とサポータ112との間に、ウェッジ側ロック用当接部126から傾斜部127を経てウェッジ側ロック解除用当接部128が位置するように移動する。パーキングウェッジ125は、小径のウェッジ側ロック解除用当接部128がサポート112に位置することで、ウェッジ側ロック解除用当接部128によりポール側係合部111を矢印F方向に下げ、リターンスプリング113によりパーキングポール106をロック解除位置に揺動させ、パーキングポール106のロック歯110をパーキングギア105のギア歯108間の歯ミゾ109から抜いて駆動軸103のロックを解除する。
このとき、パーキングロック装置104は、パーキングポール106がパーキングギア105に噛み合わない位置(ロック解除位置)に移動したことで、ウェッジ側ロック解除用当接部128に当接するポール側係合部111が、ウェッジ側ロック解除用当接部126に隣接するロッド側係合部130の磁力により吸着されてパーキングポール106をパーキングギア105に噛み合わない位置に保持する。
【0018】
このように、自動変速機101のパーキングロック装置104は、パーキングポール106がパーキングギア105に噛み合わない位置に移動した場合、パーキングポール106のポール側係合部111がロッド側係合部130の磁力によって吸着され、パーキングポール106がパーキングロッド124から離反してパーキングギア105に近付かないようにすることができる。
これにより、この自動変速機101のパーキングロック装置104は、パーキングポール106を磁力によって確実にパーキングロッド124に保持することができ、パーキングポール106によるはじかれ異音を防止することができる。なお、この実施例においては、パーキングポール106のポール側係合部111を磁力により吸着される材質とし、パーキングロッド124のロッド側係合部130を磁力を有する材質としたが、パーキングポール106のポール側係合部111を磁力を有する材質とし、パーキングロッド124のロッド側係合部130を磁力により吸着される材質とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明は、車両の走行時にパーキングロック装置のパーキングポールがパーキングギアに接触することを回避し、異音の発生を防止することができるものであり、自動変速機以外で、パーキングロック機構を必要とする、ハイブリッド用変速機や電気自動車用減速機について適用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 自動変速機
2 変速機ケース
3 駆動軸
4 パーキングロック装置
5 パーキングギア
6 パーキングポール
8 ギア歯
9 歯ミゾ
10 ロック歯
11 第1ポール側係合部
12 第2ポール側係合部
13 サポータ
14 リターンスプリング
15 シフトレバー
18 マニュアルシャフト
22 アシストプレート
24 パーキングレバー
25 逃げ溝
26 パーキング溝
27 レバーピン
28 パーキングロッド
29 パーキングウェッジ
30 第1ウェッジ側係合部
31 第2ウェッジ側係合部
32 傾斜部
33 ウェッジ側ロック用当接部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機の駆動軸にパーキングギアを一体的に取り付け、
前記パーキングギアと噛み合うロック位置および前記パーキングギアとの噛み合いが解除されたロック解除位置に揺動可能なパーキングポールを前記自動変速機の変速機ケースに取り付け、
前記パーキングポールをリターンスプリングによってロック解除位置に付勢し、
シフトレバーの操作によってパーキングロッドを介して移動され、前記パーキングポールを揺動させるパーキングウェッジを前記パーキングポールに接触させ、
前記シフトレバーがパーキング位置にある場合に、前記パーキングウェッジで前記パーキングポールをリターンスプリングに抗してロック位置に揺動させ、
前記シフトレバーがパーキング以外の位置にある場合は、前記リターンスプリングで前記パーキングポールをロック解除位置に保持する自動変速機のパーキングロック装置において、
前記パーキングポールに係合部を備え、
前記パーキングウェッジまたは前記パーキングロッドに前記パーキングポールの係合部と係合する係合部を備え、
前記パーキングポールがロック解除位置に移動した場合、前記パーキングポールの係合部が前記パーキングウェッジまたは前記パーキングロッドの係合部に係合して前記パーキングポールをロック解除位置に保持することを特徴とする自動変速機のパーキングロック装置。
【請求項2】
前記パーキングポールは、前記パーキングポールの揺動中心に近い側の位置に配置される第1ポール側係合部とこの第1ポール側係合部よりも前記揺動中心から遠い側の位置に配置される第2ポール側係合部とを備え、
前記パーキングウェッジは、前記第1ポール側係合部が内周に係合する円錐筒状の第1ウェッジ側係合部と前記第2ポール側係合部が外周に当接する円筒状の第2ウェッジ側係合部とを備え、
前記パーキングポールがロック解除位置に移動した場合、前記第1ポール側係合部が円錐筒状の前記第1ウェッジ側係合部の内周に係合するとともに、前記第2ポール側係合部が円筒状の前記第2ウェッジ側係合部の外周に当接して前記パーキングポールをロック解除位置に保持することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機のパーキングロック装置。
【請求項3】
前記パーキングポールは、磁力により吸着される材質のポール側係合部を備え、
前記パーキングロッドは、前記ポール側係合部を吸着可能な磁力を有するロッド側係合部を備え、
前記パーキングポールが前記パーキングギアに噛み合わない位置に移動した場合、前記ポール側係合部が前記ロッド側係合部の磁力により吸着されて前記パーキングポールを前記パーキングギアに噛み合わない位置に保持することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機のパーキングロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−84187(P2011−84187A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239252(P2009−239252)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】