説明

自動変速機用コントロールスイッチ

【課題】部品点数を増やすことなく外観から可動体の回動位置を知ることができるようにする。
【解決手段】シフトレバーの操作によってマニュアルシャフトが回動する際に、可動体10とともに軸部12が回動し、さらに軸部12が具備する指示片13も回動するため、ハウジング1表面に設けられた指示部6と指示片13との相対的な位置関係が可動体10の回動位置に応じて変化することになり、ハウジング1に設けられた指示部6と軸部12が具備する指示片13によって部品点数を増やすことなく外観から可動体10の回動位置を知ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における自動変速機のシフトレバーの切換操作で、パーキング、リバース、ニュートラル、ドライブ、2速、1速というようなシフトポジションを示すポジション信号を発生する自動変速機用コントロールスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より自動変速機(オートマティック・トランスミッション)を備えた自動車では、シフトレバーの切換操作でパーキング、リバース、ニュートラル、ドライブ、2速、1速というような自動変速機のシフトポジションを示すポジション信号を発生する自動変速機用コントロールスイッチが用いられ、それぞれのポジション信号に応じて制御系のマイクロコンピュータに操作指令を与えるようになっている。
【0003】
この種の自動変速機用コントロールスイッチの一例として、図4並びに図5に示すようにアルミダイカスト製のケース31aと合成樹脂製のカバー31bとから成るハウジング31と、このハウジング31の内部に回動自在に収められる可動体40とを備え、ハウジング31が自動変速機に取り付けられるとともに、シフトレバーの操作に応じて回動するシフト切り換え用のマニュアルシャフト60に可動体40が固定されるものがある(例えば、特許文献1参照)。つまり、可動体40はシフトレバーの回動に応じてマニュアルシャフト60と一体的に回動するのである。
【0004】
可動体40はマニュアルシャフト60に固定される軸部41と、軸部41から突設されてケース31aの凹部32で形成される空間内を回動する主体42とを有し、締め付け用ナット50を用いて軸部41がマニュアルシャフト60に締め付け固定される。なお、軸部41には、締め付け用ナット50の回り止めとして座金51が装着されている。そして、ハウジング31には軸部41を回動自在に枢支する軸受孔33が設けてある。また、詳細な構造は説明しないが、主体42のカバー31bに対向する側の面にはコイルばね44で付勢された可動接点43が複数個設けてあり、カバー31bに植設された複数の帯状の固定接点34に接離自在に弾接させてある。
【0005】
複数の固定接点34は可動体40の回動中心に対して円弧状に設けてあって、パーキング、リバース等の各シフトポジションに対応する固定接点34と、共通の固定接点34とを備えている。つまり、この自動変速機用コントロールスイッチでは、シフトレバーの回動操作に応じて可動体40が一体的に回動して、可動接点43が固定接点34と接触,開離することで切換出力としてポジション信号を得ている。
【0006】
ところで、上記従来例のようにマニュアルシャフト60に対して締め付け用ナット50を用いて軸部41を締め付け固定する構造に代わって、可動体40の軸部41にマニュアルシャフト60を圧入固定する構造が一般に採用されるようになっている。この種の従来例として、図6及び図7に示すように可動体40の軸部41に貫設された挿通孔41aにばね体20を収納し、ばね体20に設けられた一対の保持部21の間の空間にマニュアルシャフト60の先端部を圧入することで各保持部21が先端部に圧接して弾性的に保持するようにしたものがある。かかる従来例によれば、先の従来例のようにナット50を締め付ける必要がないことから製造工程の簡素化が図れるとともにナット50の締め付け不足やゆるみ等による不具合の発生を防ぐことができる。
【特許文献1】特開平11−45636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、完成品の状態では可動体40がハウジング31内に隠れてしまうため、外観から可動体40の回動位置を知ることはできない。一方、自動車の製造工程において、可動体40の軸部41にマニュアルシャフト60を固定し、さらに自動変速機用コントロールスイッチを自動変速機に取り付ける際、後の工程における利便性を考慮して可動体40を特定のシフトポジションの回動位置(例えば、ニュートラルの位置)に合わせておくことが望ましい。そのために図4及び図5に示した従来例(以下、「従来例1」と呼ぶ)においては、可動体40の回動位置を指し示すための指示片51aが座金51に一体に設けられており、この指示片51aによって外観から可動体40の回動位置を知ることができるようになっていた。
【0008】
しかしながら、図6及び図7に示した従来例(以下、「従来例2」と呼ぶ)においては、座金51のようにハウジング31の表面に露出する部材がないため、外観から可動体40の回動位置を知るための部材を追加しなければならない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、部品点数を増やすことなく外観から可動体の回動位置を知ることができる自動変速機用コントロールスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、自動変速機のシフトレバーの切換操作に応じてハウジング内を回動する可動体を備え、該可動体に可動接点を設けるとともに可動体の回動位置に応じて可動接点と接触・開離する複数の固定接点をハウジング内に設け、接触又は開離する可動接点と固定接点の組み合わせに対応した自動変速機のシフトポジションを示すポジション信号を出力する自動変速機用コントロールスイッチにおいて、一面が開口する扁平形状に形成され内底面に複数の前記固定接点が配設されたカバー、扁平形状に形成されて開口面を塞ぐように前記カバーと結合されるケースからなる前記ハウジングと、カバー内底面と対向する面に前記可動接点が設けられ、厚み方向においてハウジングに貫設された軸受孔に挿通されて回動自在に枢支される軸部を具備し、前記軸受孔の軸方向に沿って軸部を貫通しシフトレバーの操作によって回動するシャフトの先端部が挿通される挿通孔を有する前記可動体と、前記軸部のハウジングに貫設された軸受孔から突出する面において挿通孔の周囲を囲むように配設された一乃至複数の指示片と、ハウジング表面における軸受孔の周囲に設けられ指示片との相対的な位置関係によりハウジングに対する可動体の回動位置を指し示す一乃至複数の指示部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記指示片及び指示部が複数であって、軸受孔の周囲に放射状に形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記指示片及び指示部をハウジングと異なる色に着色したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、シフトレバーの操作によってシャフトが回動する際に可動体とともに可動体の軸部に設けられた指示片も回動するため、ハウジング表面に設けられた指示部と指示片との相対的な位置関係が可動体の回動位置に応じて変化することになり、ハウジングに設けられた指示部と可動体の軸部に設けられた指示片によって部品点数を増やすことなく外観から可動体の回動位置を知ることができるという効果がある。
【0014】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、前記指示部及び指示片を複数個軸受孔の周囲に放射状に形成したので、指示部及び指示片の視認性を向上することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、請求項1、2の発明の効果に加えて、指示片及び指示部の視認性を向上することができ、自動変速機への取付作業の効率化、作業ミスの防止が図れるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図1及び図2を参照して詳細に説明する。但し、基本的な構成は従来例と共通であるので、共通する部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0017】
本実施形態は、アルミダイカスト製のケース2と合成樹脂製のカバー3とをリベット(図示せず)で結合して組立てられる略扇形のハウジング1と、該ハウジング1の内部に回動自在に収められる可動体10とを備えている。
【0018】
可動体10は亜鉛ダイカスト製で一端に円筒形の軸部12を有する主体11を備え、主体11のカバー3と対向する面(図2における下面)に設けられた凹所(図示せず)内にコイルばね14によりカバー3側へ弾性付勢された3個の可動接点15が収納される。軸部12の構造は、軸部12内において軸方向略中央から一端側(図1(c)における左側)には軸方向に沿った平坦な面を有する一対の弦部12aが互いに平行する形で設けられており、その結果、弦部12aが設けられている部位ではマニュアルシャフトが挿通される挿通孔12bが狭くなっている。また挿通孔12bにはマニュアルシャフトを弾性的に保持するためのばね体20が収納されてある。このばね体20は弾性を有する板材を加工して形成されるものであって、幅細の半円環状に形成された主部22と、主部22の両端より主部22の幅方向に沿って立ち上がる一対の保持部21とを備えている。ばね体20は、軸部12の挿通孔12bの一端側(図1(c)における右側)から挿入され、一対の保持部21をそれぞれ弦部12aの対向面に当接させるようにして軸部12の挿通孔12b内に収納される。また、軸部12の一方の端面(図2における上面)には、挿通孔12bの周囲を囲むように4個の略直方体形状の指示片13が等間隔に突設されている。
【0019】
カバー3は一面が開口する扁平な略扇形に形成され、扇の要に相当する部分には可動体10の軸部12の一端側が挿通されて回動自在に枢支する軸受孔4が厚み方向に貫設されている。また、カバー3の内底面には一端部にそれぞれ固定接点15a(図1(c)参照)が設けられた帯板状の導電体(図示せず)がインサート成形されている。各固定接点15aは軸受孔4を中心にした同心円弧状に配設されており、ハウジング1内で可動体10が具備する可動接点15と対向させてある。また周壁で囲まれ筒状に形成されたコネクタ部16がカバー3と一体に形成されており、コネクタ部16の内底面には、複数の導電体の先端が複数列に突出されてコネクタ端子が形成してある。すなわち、ハウジング1に対する可動体10の回動位置に応じて可動体10に保持されている可動接点15が各固定接点15aと選択的に接触・開離し、自動変速機のシフトポジションに対応したポジション信号がコネクタ部16に接続された相手側コネクタを介して取り出されるのである。
【0020】
ケース2はアルミダイカスト製で扁平な略扇形に形成され、カバー3と同様に扇の要に相当する部分には可動体10の軸部12の他端側が挿通されて回動自在に枢支する軸受孔5が厚み方向に貫設されている。また、ケース2の表面(図2における上面)における軸受孔5の周囲には4個の略直方体形状の指示部6が等間隔に突設されている。尚、ケース2には車体(あるいは自動変速機)への取付用の取付ネジが挿通されるネジ挿通孔1aが設けてある。
【0021】
上述のように構成される本実施形態は、以下のようにして組立てられる。カバー3の軸受孔4内に環状のオイルシール17を収納するとともにカバー3の開口面に外形が略扇形の防水パッキン18を配置し、コイルばね14、可動接点15、ばね体20を取付けた可動体10を収納する。次に、軸受孔5内に環状のオイルシール19を収納したケース2をカバー3に被着し、可動体10の軸部12の他端側をオイルシール19を通して軸受孔5に挿通させた状態でリベットによりケース2とカバー3を結合してハウジング1を組立てて本実施形態が完成する。そして、カバー3の側から軸部12の挿通孔12bにマニュアルシャフトを貫通させれば、断面形状が略長円形状に形成されたマニュアルシャフトの先端部がばね体20の一対の保持部21の間に圧入され、ばね体20のばね力により保持部21が圧接することでマニュアルシャフトの先端部を軸部12に対して弾性的に保持させることができる。
【0022】
ところで、軸部12に設けられた指示片13は軸受孔5を通してハウジング1(ケース2)の表面に露出しており、マニュアルシャフトに連結された可動体10がハウジング1に対して可動すると軸部12も一体に回動し、ハウジング1の表面に露出した指示片13がハウジング1の表面に沿って軸受孔5の周方向に移動(回動)することになる。一方、ハウジング1(ケース2)表面における軸受孔5の周囲には指示部6が設けられているため、図1(a)に示すようにマニュアルシャフトの軸方向からハウジング1を見た時に指示部6と指示片13が同一直線上に位置すれば、ハウジング1に対する可動体10の回動位置、すなわち、可動体10が特定のポジション信号(例えば、ニュートラルに対応するポジション信号)を出力する状態にあることが容易に判別できる。
【0023】
上述のように本実施形態では、シフトレバーの操作によってマニュアルシャフトが回動する際に可動体10とともに軸部12が回動し、さらに軸部12が具備する指示片13も回動するため、ハウジング1表面に設けられた指示部6と指示片13との相対的な位置関係が可動体10の回動位置に応じて変化することになり、ハウジング1に設けられた指示部6と軸部12が具備する指示片13によって部品点数を増やすことなく外観から可動体10の回動位置を知ることができる。また、指示部6及び指示片13をハウジング1(ケース2)と異なる色に着色すれば、指示部6及び指示片13の視認性を向上することができ、自動変速機への取付作業の効率化、作業ミスの防止が図れるという利点がある。尚、本実施形態では指示部6及び指示片13を略直方体形状に形成してあるが、これに限定される必要はなく、本発明の効果を奏するものであれば他の形状でも構わない。また本実施形態では指示部6及び指示片13の個数はそれぞれ4個ずつであるが、本発明の効果を奏するものであれば、個数はこれに限定されるものではない。尚、複数の指示部6及び指示片13を、マニュアルシャフトの軸方向からハウジング1を見た時に放射状となるように形成すると、視認性が向上して望ましい。
【0024】
ところで、指示部6及び指示片13はその寸法によって視認性が異なるので、指示部6及び指示片13の寸法を変化させて視認性の確認を行った。その結果を図3に示す。指示部6及び指示片13の寸法、すなわち指示部6及び指示片13の幅(図3(a)上図における左右方向)と高さ(図3(a)下図における上下方向)を変化させたところ、図3(b)に示すように、指示部6及び指示片13の幅と高さは、それぞれ2mm以上、4mm以上であれば視認性が良好であり、発明の実施上望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は右断面図、(d)は上側面図である。
【図2】同上の分解斜視図である。
【図3】同上の指示片及び指示部の寸法に関する説明図で、(a)は指示片及び指示部の概略図で、(b)は指示片及び指示部の寸法に対応する視認性の良否を示す表である。
【図4】従来例1を示し、(a)は正面図、(b)は右断面図、(c)は可動体の右側面図、(d)は座金の正面図、(e)は座金の下面図である。
【図5】同上の要部を示し、(a)は正面図、(b)は右断面図、(c)は下断面図である。
【図6】従来例2を示し、(a)は正面図、(b)は右断面図、(c)は可動体の右側面図、(d)はばね体の正面図である。
【図7】同上の要部を示し、(a)は正面図、(b)は右断面図、(c)は下断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ハウジング
2 ケース
3 カバー
4 軸受孔
5 軸受孔
6 指示部
10 可動体
12 軸部
12b 挿通孔
13 指示片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機のシフトレバーの切換操作に応じてハウジング内を回動する可動体を備え、該可動体に可動接点を設けるとともに可動体の回動位置に応じて可動接点と接触・開離する複数の固定接点をハウジング内に設け、接触又は開離する可動接点と固定接点の組み合わせに対応した自動変速機のシフトポジションを示すポジション信号を出力する自動変速機用コントロールスイッチにおいて、
一面が開口する扁平形状に形成され内底面に複数の前記固定接点が配設されたカバー、扁平形状に形成されて開口面を塞ぐように前記カバーと結合されるケースからなる前記ハウジングと、
カバー内底面と対向する面に前記可動接点が設けられ、厚み方向においてハウジングに貫設された軸受孔に挿通されて回動自在に枢支される軸部を具備し、前記軸受孔の軸方向に沿って軸部を貫通しシフトレバーの操作によって回動するシャフトの先端部が挿通される挿通孔を有する前記可動体と、
前記軸部のハウジングに貫設された軸受孔から突出する面において挿通孔の周囲を囲むように配設された一乃至複数の指示片と、
ハウジング表面における前記軸受孔の周囲に設けられ指示片との相対的な位置関係によりハウジングに対する可動体の回動位置を指し示す一乃至複数の指示部とを備えたことを特徴とする自動変速機用コントロールスイッチ。
【請求項2】
前記指示片及び指示部が複数であって、軸受孔の周囲に放射状に形成されたことを特徴とする請求項1記載の自動変速機用コントロールスイッチ。
【請求項3】
前記指示片及び指示部をハウジングと異なる色に着色したことを特徴とする請求項1又は2記載の自動変速機用コントロールスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−155068(P2007−155068A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353993(P2005−353993)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】