説明

自動多次元血管内超音波画像セグメンテーションの方法

本発明は一般に、血管内超音波(IVUS)画像セグメンテーションの方法に関し、具体的には、血管層を特徴付けるための血管内超音波画像セグメンテーションの方法に係る。多層化された血管の層の境界を推定するための提案されている画像セグメンテーション方法は、多層化された血管の複数の画像要素を表す画像データを提供する。方法はさらに、セグメント化する画像データの領域に対応する複数の初期接触面を判別し、さらにセグメント化する領域に対応する初期接触面を並行して伝搬する。これにより方法は、画像要素の少なくとも1つの特徴を記述する確率関数に基づく高速マーチングモデルを使用して初期接触面を伝搬することにより、多層化された血管の層の境界を推定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、画像セグメンテーションに関する。具体的には、本発明は、血管内超音波画像シーケンスから血管層を特徴付けるための血管内超音波画像セグメンテーション技法に関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
過去数年間にわたって、血管内超音波(IVUS)技術は、アテローム性動脈硬化症の研究に極めて有用となっている。IVUSは、カテーテルが血管内部でプルバックされる際に断層画像を生成する医療診断画像技術である。これらの画像は内腔を示すが、さらに血管壁の重層構造も示す。IVUSは、血管壁の定量的判定、アテローム動脈硬化性病変の性質および斑の形状と大きさに関する情報を提供するため、臨床においてIVUSは、アテローム性動脈硬化症の診断および診療前分析に有益なツールとしてすぐに認められた。
【0003】
血管壁を特徴付ける機能は、1989年に非特許文献1においてGussenhovenらによって最初に実証された。また、非特許文献2におけるMintzらによる90年代中頃の研究では、血管造影法によって正常と診断された血管のうち40%が、IVUSに基づいて実際にはアテローム性動脈硬化症であったことが示された。
【0004】
IVUSを使用することによって、Colomboらにより非特許文献3において、従来のステント移植が血栓症を引き起こす不完全な併置と拡張をもたらし、治療法を変更する結果になったことも実証された。
【0005】
IVUSはさらに、アテローム性硬化症の研究において重要な役割を果たすことが期待されている。例えば非特許文献4においてNissenらによって実証されているように、IVUSは新しい進行-退行(progression-regression)療法において的確な病気の診断を達成する上で役立つ。非特許文献5においてNissenらによって教示されているように、IVUS画像処理が、内腔の投影しか示さない血管造影法に貴重な補足情報を加えることは、専門家も広く同意している。
【0006】
過去数年間にわたり、血管壁の弾性特性に関する情報を抽出するために新しい信号処理方法がIVUS信号に適用されるようになった。例えば、非特許文献6においてKorteらにより「血管内または血管内部超音波エラストグラフィー(intravascular or endovascular ultrasound elastography)」と呼ばれる新しい画像処理技法が提案された。近年、非特許文献7においてBrusseauらは、弾性アルゴリズムの実装を補助するためにIVUS画像から識別された血管壁の構造のプリセグメンテーションを使用することを提案した。これは、IVUS多次元画像セグメンテーションの適用というもう1つの重要な領域を構成している。
【0007】
IVUSの断層撮影の特性により、血管壁の3D復元が可能になる。さらに非特許文献8においてMintzらによって開示されているように、斑の容積、内膜-中膜の厚さ、血管のリモデリング、および内腔領域の狭窄などのアテローム性動脈硬化症の2Dおよび3Dの定量的測度は、IVUSデータから取り出すことができる。
【0008】
しかし、通常のIVUS取得は一般に数百もの画像を含むが、これにはデータの分析を長い、細心の注意を要する作業にするという作用があり、その作業はさらに、非自動の方法が使用されたとき観察者内および観察者間の重大なばらつきを受ける。これらの側面は、IVUSの臨床用途に重大な制約をもたらす。IVUSの使用に関連するもう1つの制約には、スペックルノイズによる低品質画像、画像処理アーティファクト、および石灰化による血管壁の一部の付影が含まれる。
【0009】
これまで、多数のセグメンテーション技法がIVUSデータ分析用に開発され、前述の欠点を克服するために導入されてきた。一般的に言えば、これらの技法の一部は、画像ピクセルの局部的特性に基づいている、つまり非特許文献9においてKlingensmithらによって発表された勾配ベースのアクティブ表面、および非特許文献10においてKovalskiらによって発表された勾配アクティブ輪郭に組み合わされたピクセル輝度によるものである。
【0010】
グラフ探索もまた、局部的なピクセル特性を使用して研究された。例えば、非特許文献11においてZhangらによって開示されたSobel-likeエッジオペレータ、および非特許文献12においてVon Birgelenらによって実証された線パターン相関に関連する勾配によるものである。
【0011】
IVUSセグメンテーション作業の他の部分は、さらに広域規模または領域的な情報を基にしていた。例えば、非特許文献13においてMojsilovicらによって開示されたテクスチャーベースの形態的処理が検討された。次いで、非特許文献14においてHaasらによって実証されているように、グレーレベル分散が、超音波スペックルおよび輪郭の幾何学的配置をモデリングする最大事後確率(MAP)推定器の最適化に使用された。
【0012】
さらに、内腔境界のみを定義し、IVUSの全潜在能力は使用しない一部の研究を文献に見出すこともできる。しかし、2001年には、Mintzらによる上記の論文において米国心臓病学会(American College of Cardiology)からの臨床専門家の統一見解では、IVUSエッジ検出方法は臨床医学者からの幅広い支持を受けていないことが報告された。
【0013】
近年、非特許文献15においてKoningらにより開示されているように、他のエッジフィルタを使用するグラフ探索が再び取り上げられた。
【0014】
非特許文献16においてWeichertらにより実証されている楕円テンプレート適合、および非特許文献17においてBovenkampらによるマルチエージェントセグメンテーションなど、その他の近年のモデルおよび方法が提案された。しかし、これらの新しいモデルはこの場合も同様に、局所的なピクセルまたはエッジの情報を使用しており、IVUSデータ(スペックルテクスチャ)の統計的な情報を利用してはいなかった。
【0015】
非特許文献18においてWagnerらにより実証されているように、IVUSの画像ピクセルは、均一散乱組織のBモード(輝度変調)画像処理でレイリー確率密度関数(PDF)に従って一般に分散されるピクセル濃淡値を備えているため、PDFの特性はIVUSセグメンテーションにとって価値あるものになりうると考えられる。この情報は、仮説上IVUS画像分析により適しており、とりわけ血管壁の層の間のコントラストが低い場合には適している。さらに、IVUS無線周波数(RF)モードは一般にBモード画像処理よりも良好な空間分解能を提供するので、画像セグメンテーションにRF画像のガウスPDFを活用できることも期待される。
【0016】
血管壁上のアテローム斑の構造は楕円形であることはまれな変則的で複雑な形状をしている場合もあるため、非特許文献19においてSethianによって開示されているように、および非特許文献20においてOsherらによって開示されているように、高速マーチング法を使用し、IVUS画像によって生成されたトポロジーの変化および輪郭の不ぞろいに対処することができる。さらに、高速マーチング法が伝搬領域の徹底的な分析を通じて境界の方向に接触面を伝搬することは、セグメンテーション結果の可変性を減少させるという効果がある。
【非特許文献1】Gussenhoven他、「Arterial wall characteristics determined by intravascular ultrasound imaging:An in vitro study」(J.Am.Coll.Cardiol.、vol.14、no.4、947〜952頁、1989年)
【非特許文献2】Mintz他、「Atherosclerosis in angiographically 'normal'coronary artery reference segments:An intravascular ultrasound study with clinical correlations」(J.Am.Coll.Cardiol.、vol.25、no.7、1479〜1485頁、1995年)
【非特許文献3】Colombo他、「Intracoronary stenting without anticoagulation accomplished with intravascular ultrasound guidance」(Circulation、vol.91、1676〜1688頁、1995年)
【非特許文献4】Nissen他、「Application of intravascular ultrasound to characterize coronary artery disease and assess the progression or regression of atherosclerosis」(Am.J.Cardiol.、vol.89、24B〜31B頁、2002年)
【非特許文献5】Nissen他、「Intravascular ultrasound:Novel pathophysiological insights and current clinical applications」(Circulation、vol.103、604〜616頁、2001年)
【非特許文献6】Korte他、「Intravascular elasticity imaging using ultrasound - Feasibility studies in phantoms」(Ultrasound Med.Biol.、vol.23、735〜746頁、1997年)
【非特許文献7】Brusseau他、「Fully automatic luminal contour segmentation in intracoronary ultrasound imaging - A statistical approach」(IEEE Trans.Med.Imag.、vol.23、554〜566頁、2004年)
【非特許文献8】Mintz他、「American college of cardiology clinical expert consensus document on standards for acquisition,measurement and reporting of intravascular ultrasound studies(IVUS)」(J.Am.Coll.Cardiol、vol.37、no.5、1478〜1492頁、2001年)
【非特許文献9】Klingensmith他、「Evaluation of three- dimensional segmentation algorithms for the identification of luminal and medial- adventitial borders in intravascular ultrasound images」(IEEE Trans.Med.Imag.、vol.19、no.10、996〜1011頁、2000年)
【非特許文献10】Kovalski他、「Three-dimensional automatic quantitative analysis of intravascular ultrasound images」(Ultrasound Med.Biol.、vol.26、no.4、527〜537頁、2000年)
【非特許文献11】Zhang他、「Tissue characterization in intravascular ultrasound images」(IEEE Trans.Med.Imag.、vol.17、no.6、889〜899頁、1998年)
【非特許文献12】Von Birgelen他、「Morphometric analysis in three-dimensional intracoronary ultrasound:An in vitro and in vivo study using a novel system for the contour detection of lumen and plaque」(Am.Heart J.、vol.132、no.2、516〜527頁、1996年)
【非特許文献13】Mojsilovic他、「Automatic segmentation of intravascular ultrasound images:A texture-based approach」(Ann.Biomed.Eng.、vol.25、no.6、1059〜1071頁、1997年)
【非特許文献14】Haas他、「Segmentation of 3D intravascular ultrasonic images based on a random field model」(Ultrasound Med.Biol.、vol.26、no.2、297〜306頁、2000年)
【非特許文献15】Koning他、「Advanced contour detection for three-dimensional intracoronary ultrasound:A validation-in vitro and in vivo」(Int.J.Cardiac Imag.、vol.18、235〜248頁、2002年)
【非特許文献16】Weichert他、「Virtual 3D IVUS model for intravascular brachytherapy planning:3D segmentation,reconstruction,and visualization of coronary artery architecture and orientation」(Med.Phys.、vol.30、no.9、2530〜2536頁、2003年)
【非特許文献17】Bovenkamp他、「Multiagent IVUS image interpretation」(SPIE Proceedings:Medical Imaging 2003:Image Processing、vol.5032、サンディエゴ、米国、2003年、619〜630頁)
【非特許文献18】Wagner他、「Statistics of speckle in ultrasound B-scans」(IEEE Trans.Son.Ultrason.、vol.30、no.3、156〜163頁、1983年)
【非特許文献19】Sethian、「Level Set Methods and Fast Marching Methods:Evolving Interfaces in Computational Geometry,Fluids Mechanics,Computer Vision and Materials Science」(2nd ed.Cambridge、UK:Cambridge University press、1999年)
【非特許文献20】Osher他、「Fronts propagating with curvature-dependent speed:Algorithms based on hamilton-jacobi formulations」(J.Comput.Phys.、vol.79、12〜49頁、1988年)
【非特許文献21】Hastie他、「The elements of statistical learning.Data mining,inference and prediction」(ニューヨーク、米国:Spinger、236〜242頁、2001年)
【非特許文献22】Dempster他、「Maximum likelihood from incomplete data via the EM algorithm」(J.Roy.Stat.Soc.B,vol.39、no.1、1〜38頁、1977年)
【非特許文献23】R.Malladi他、「Shape modeling with front propagation:A level set approach」(IEEE Trans.Pattem Anal.Machine Intell.、vol.17、no.2、158〜175頁、1995年)
【非特許文献24】Sethian、「A fast marching level set method for monotonically advancing fronts」(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、vol.93、1591〜1595頁、1996年)
【非特許文献25】Sifakis他、「Bayesian level sets for image segmentation」(J.Vis.Commun.Image R.、vol.13、44〜64頁、2002年)
【非特許文献26】Chalana他、「A methodology for evaluation of boundary detection algorithms on medical images」(IEEE Trans.Med.Imag.、vol.16、no.5、642〜652頁、1997年)
【非特許文献27】Maurice他、「Adapting the Lagrangian speckle model estimator for endovascular elastography:Theory and validation with simulated radio-frequency data」(J.Acoust.Soc.Am.、vol.116、1276〜1286頁、2004年)
【非特許文献28】Kallel他、「Speckle motion artifact under tissue rotation」(IEEE Trans.Ultrason.、Ferroelect.、Freq.Contr.、vol.41、105〜122頁、1994年)
【非特許文献29】Roy Cardinal他、「Intravascular ultrasound image segmentation:A fast marching method」(Lecture Notes in Computer Sciences、Proceedings of MICCAI 2003:Medical Image Computing & Computer Assisted Intervention、vol.2879、2003年、432〜439頁)
【非特許文献30】Boukerroui他、「Segmentation of ultrasound images- multiresolution 2D and 3D algorithm based on global and local statistics」(Pattern Recognition Letters、24:779-790、2003年)
【非特許文献31】Mignotte他、「A multiscale optimization approach for the dynamic contour-based boundary detection issue」(Computerized Medical Imaging and Graphics、25(3):265-275、2001年)
【非特許文献32】Hagenaars他、「Gamma radiation induces positive vascular remodeling after balloon angioplasty:A prospective,randomized intravascular ultrasound scan study」(Journal of Vascular Surgery、36(2):318-324、2002年)
【非特許文献33】Jain他、「Deformable template models:A review」(Signal Processing、71(2):109-129、1998年)
【非特許文献34】Zhong他、「Object tracking using deformable templates」(In Sixth International Conference on Computer Vision;410〜445頁、1998年)
【非特許文献35】Pieczynski他、「Champs de markov caches et estimation conditionnelle iterative」(Traitement du Signal、11(2):141-153、1994年)
【非特許文献36】Wagner他、「Statistics of speckle in ultrasound B-scans」(IEEE Transactions on Sonics and Ultrasonics、30(3):156-163、1983年)
【非特許文献37】Wear他、「Statistical properties of estimates of signal-to-noise ratio and number of scatterers per resolution cell」(Journal of the Acoustical Society of America、102(1):635641、1997年)
【非特許文献38】Dutt他、「Statistics of the log-compressed echo envelope」(Journal of the Acoustical Society of America、99(6):3817-3825、1996年)
【非特許文献39】Shankar、「A general statistical model for ultrasonic backscattering from tissues」(IEEE Transactions on Ultrasonics,Ferroelectrics,and Frequency Control、47(3):727-736、2000年)
【非特許文献40】Delingnon他、「Estimation of generalized mixtures and its application in image segmentation」(IEEE Transactions on Image Processing、6(10):1364-1375、1997年)
【非特許文献41】Tai他、「In vivo femoropopliteal arterial wall compliance in subjects with and without lower limb vascular disease」(Journal of Vascular Surgery、30(5):936-945、1999年)
【非特許文献42】von Birgelen他、「ECG-gated three-dimensional intravascular ultrasound,feasibility and reproducibility of the automated analysis of coronary lumen and atherosclerotic plaque dimensions in humans」(Circulation、96(9):2944-2952、1997年)
【非特許文献43】Bruining「ECG-gated versus nongated three-dimensional intracoronary ultrasound analysis:Implications for volumetric measurements」(Catheterization、and Cardiovascular Diagnosis、43:254-260、1998年)
【非特許文献44】Nadkarmi他、「Image-based retrospective cardiac gating for three-dimensional intravascular ultrasound imaging」(SPIE Proceedings:Medical Imaging:Ultrasonic Imaging and Signal Processing、volume 4687、276〜284頁、2002年)
【非特許文献45】de Winter他、「Retrospective image-based gating of intracoronary ultrasound images for improved quantitative analysis:The intelligate method」(Catheterization and Cardiovascular Diagnosis、61:84-94、2004年)
【非特許文献46】Zhu他、「Retrieval of cardiac phase from IVUS sequences」(SPIE Proceedings:Medical imaging:Ultrasonic Imaging and Signal Processing、volume 5035、135〜146頁、2003年)
【非特許文献47】Shaw他、「Determinants of coronary artery compliance in subjects with and without angiographic coronary artery disease」(Journal of the American College of Cardiology、39(10):1637-1643、2002年)
【非特許文献48】Takano他、「Mechanical and structural characteristics of vulnerable plaques:Analysis by coronary angioscopy and intravascular ultrasound」(Journal of the American College of Cardiology、38(1):99-104、2001年)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
具体的には、本発明により、多層体の層の境界を推定するための画像セグメンテーションの方法が提供され、上記方法は多層体の画像データを提供するステップを含み、画像データは複数の画像要素を表す。上記方法は、セグメント化する画像データの領域に対応する複数の初期接触面を判別するステップ、およびセグメント化する領域に対応する初期接触面を並行して伝搬し、それにより多層体の層の境界を推定するステップをさらに含む。初期接触面を伝搬するステップは、画像要素の少なくとも1つの特徴を記述する確率関数に基づく高速マーチングモデルを使用するステップを含んでいる。
【0018】
さらに、多層体の層の境界を推定するための画像セグメンテーションの方法が提供され、上記方法は多層体の画像データを提供するステップを含み、画像データは複数の画像要素を表す。上記方法は、セグメント化する画像データの領域に対応する複数の初期接触面を判別するステップ、およびその領域をセグメント化するためにその領域に対応する初期接触面を並行して伝搬し、多層体の層の境界を推定するステップをさらに含む。初期接触面を伝搬するステップは、画像要素の少なくとも1つの特徴を記述する勾配関数に基づく高速マーチングモデルを使用するステップを含んでいる。
【0019】
拍動する多層血管の層の境界を推定するための画像セグメンテーションの方法がさらに提供され、上記方法は、拍動する多層血管のIVUS画像データを提供するステップと、セグメント化するIVUS画像データの領域に対応する初期接触面を判別するステップと、IVUS画像データの壁脈動を調整可能な脈動位相ラベルで位相の個数に分割するステップと、脈動位相ラベルをIVUS画像データの2D IVUSフレームに割り当てるステップと、位相に従ってIVUS画像データを分割するステップと、セグメント化する領域ごとにIVUS画像データの確率密度関数の混合を同時に推定することにより高速マーチングモデルに従い、また各位相に従い初期接触面を伝搬するステップとを含んでいる。
【0020】
さらに、多層体の層の境界を推定するための画像セグメンテーションの方法が提供され、上記方法は多層体の画像データを提供するステップを含み、画像データは複数の画像要素を表す。上記方法は、セグメント化する画像データの領域に対応する初期接触面を決定するステップと、高速マーチングモデルに従って初期接触面を伝搬するステップをさらに含んでいる。初期接触面を伝搬するステップは、セグメント化する領域ごとに、画像要素の少なくとも1つの特徴を記述する確率関数に基づく初期接触面の伝搬のための速度関数を同時に推定するステップと、初期接触面を伝搬する時間関数をマップするステップを含んでいる。
【0021】
さらに、多層体の層の境界を推定することにより画像をセグメント化するデータ収集システムであって、複数の画像要素を表す画像データを提供する変換器を含むカテーテルと、画像データをデジタル化する変換器と通信するデジタイザ、デジタル化された画像データを受信して格納するメモリ、層ごとに画像要素の少なくとも1つの特徴を記述する確率関数を推定する計算器、メモリと通信するプロセッサ、および推定された確率関数に基づく高速マーチングモデルを使用することによりデジタル化された画像データの境界を同時に推定する計算器とを含むデータ収集ツールを含むシステムが提供される。
【0022】
本発明の前述、および他の様々な目的、利点および特徴は、添付の図のみを参照して実施例として示される、その例示的な実施形態の以下の非限定的な説明を読めば明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の非限定的で例示的な実施形態は、IVUS画像データから血管の複数の層の間の境界を並行して推定するための方法および装置に関する。上記方法および装置は、IVUS画像データから生成される初期接触面から推定される各層の接触面を伝搬することによるIVUS画像データのセグメンテーションを含んでいる。様々な層の境界を推定する技法は、例えば確率密度関数(PDF)など確率関数、または勾配関数に基づいた高速マーチング法を使用して、例えば画像のグレーレベルまたはマルチカラーレベルを推定するなど、画像の分布カラーマップを推定する。
【0024】
以下の説明は、以下のように編成される。最初に、様々な血管層に対するPDF推定技法が提示される。次に、推定されたPDF、およびグレーレベル勾配に基づくIVUS高速マーチング法について説明され、その後初期化技法が続く。最後に、試験的なBモードデータ、シミュレーションBモードおよびシミュレーションRFデータのセグメンテーション結果が報告され、説明される。
【0025】
IVUS画像は一般に、血管内側にプルバックされるカテーテルの先端で超音波変換器から提供され、複数のIVUS 2Dフレームを生成する。標準的なIVUS 2Dフレームは、図1に示されている。図示されているように、図1の2Dフレームは、カテーテルと、例えば内腔、脈管内膜および斑、中膜および周辺組織のような血管のいくつかの層を示している。図2は、内腔の境界がいかに不規則な形状をしているかを示している。
【0026】
IVUS 2Dフレームは、一般に様々なグレーの陰影で彩色された複数のピクセルからなる超音波画像である。例えばIVUSデータの場合のように、Bモード(輝度変調)またはRFモード(無線周波数)画像処理において、レイリーまたはガウスの確率密度関数(PDF)を使用してそれぞれ、均一散乱組織の超音波スペックルパターンのカラーマップ分布をモデル化することができる。複数の組織の層が存在する場合、IVUS画像データ全体のカラーマップ分布は、その機器で選択されているモードに応じて、レイリーまたはガウスのPDFの混合によりモデル化することができる。
【0027】
以下の例示的な実施形態では一般に、IVUS Bモード画像処理を検討するが、当業者であれば、RFモードが検討される場合に類似した式がガウスPDFに提供されることを容易に理解するであろう。詳細については、Hastieらによる非特許文献21を参照されたい。
【0028】
この最初の例示的な実施形態において、レイリーの確率密度関数(PDF)Px(x)は、パラメータα2を使用してグレーレベルのカラーマップ分布をモデル化する。ここでxは、例えば範囲[1,...,256]にある値をとるグレーレベルである。この特定の例において、レイリーの確率密度関数(PDF)は、以下の式1によって得られる。
【0029】
Px(x;α2)=(x/α2)exp(-x/2α2) (1)
【0030】
ここでx,α2>0であり、分散はσ22(4-π)/2である。
【0031】
IVUSデータは、パラメータΘ={(ωjj2)}j=1MとのM個のレイリーPDFの混合(血管のM個の異なる層に対応)によってモデル化される(ここで、αj2の表記は、
【数1】

を意味している、以下全て同様)。ここでωjは、MレイリーPDFの混合のj番目の成分の割合であり、
【0032】
【数2】

【0033】
となる。グローバルデータPDF混合は以下のようになる。
【0034】
【数3】

【0035】
グローバルIVUSデータのPDF混合を記述するために、混合を構成する各PDFのパラメータ(ωjj2)は推定される必要がある。IVUSデータにおいて、グレーレベル値xの出現確率、または測定データは一般に、図3に示すように画像ヒストグラムを計算することによって測定することができるが、IVUS画像の各ピクセルが属している血管層は一般に、まだセグメント化されていない画像に対して不明であるかまたは隠されている。
【0036】
Expectation-Maximizationアルゴリズム(EM)は、非特許文献22においてDempsterらによって提示されているように、不完全データの最尤推定法の反復計算技法であり、これは確率密度関数(PDF)の未知のパラメータまたは隠された情報を提供するために使用することができる。IVUSデータは最尤推定に関して不完全であるため、EMアルゴリズムは、レイリーまたはガウスのPDFの欠落または隠された混合パラメータを評価するために適用することができる。
【0037】
したがって、EMアルゴリズムは、グローバルデータPDF混合の記述に役立つ。なぜなら、p(x|Θ)の尤度を最大化する混合パラメータ
【0038】
【数4】

【0039】
は分析的には解決できないからである。組織クラス(ピクセルが属す血管層)を表し、範囲[1,...,M]内にある値をとる、隠された変数Yは、この時点で導入される必要がある。(X,Y)={(xi,yi)}j=1N(NはIVUSデータのサイズを表す)の結合分布の対数尤度は、以下のようになる。
【0040】
【数5】

【0041】
EMアルゴリズムの第1のステップは予想ステップ(Expectation Step)と呼ばれ、測定データをXとして、費用関数Q(Θ,Θ')=EY[log(P(X,Y|Θ))|X,Θ']、(X,Y)の対数尤度の期待値、結合分布、およびPDF混合パラメータの以前の推定であるΘ'={(ω'jj2')}j=1Mを計算する。
【0042】
次のステップは、パラメータΘに関してQ(Θ,Θ')を最大化することによりPDF混合パラメータの新しい推定
【0043】
【数6】

【0044】
を決定することである。このオペレーションはここで、分析的に実行することができる。
【0045】
したがって、EMアルゴリズムを介する詳細なPDFパラメータ推定手順は以下のようになる。
【0046】
・ PDF混合パラメータの以前の推定値であるΘ'を初期化する。
【0047】
・ 予想ステップ:
【0048】
費用関数を評価する:
【0049】
Q(Θ,Θ')=EY[log(P(X,Y|Θ))|X,Θ'] (4)
【0050】
【数7】

【0051】
ベイズ規則に従い、以前のパラメータ推定Θ'および式1を使用して、
【0052】
【数8】

【0053】
を計算する。
【0054】
・ 最大化ステップ:
【0055】
PDF混合パラメータの新しい推定値である
【0056】
【数9】

【0057】
を計算する。
【0058】
【数10】

【0059】
ここでλ=Nは1に等しいωjの和をとるラグランジュの方法である。
【0060】
【数11】

【0061】
・ もし、
【0062】
【数12】

【0063】
である場合、以前の推定
【0064】
【数13】

【0065】
を更新して、予想ステップおよび最大化ステップを繰り返す。
【0066】
要約すると、EMアルゴリズムは、PY|X,Θ'(y|x,Θ')での事後分布を推定することにより、測定データおよび隠されたデータの結合分布の尤度を最大化する。EMアルゴリズムの興味深い特性は、測定データXの尤度が反復ごとに増加することが保証される点にある。
【0067】
計算の効率性のため、EMアルゴリズムは一般に、測定データXからランダムに抜き出されたサブセット、つまりこの場合は全IVUSデータからのピクセルの部分に適用される。例えば、サブセットのサイズは、完全なIVUSのプルバックが一般に80 000 000ピクセル以上を含む場合に、約400 000ピクセルとすることができる。
【0068】
その他の点では、EMアルゴリズムは当業者に既知であり、したがって本発明の明細書においてこれ以上説明されない。
【0069】
血管層の推定されたグレーレベルPDFは、次に、高速マーチングフレームワークでセグメンテーションモデルを確立するために使用することができる。高速マーチング法は非特許文献19においてSethianにより、また非特許文献20においてOsherらにより開示されたレベル設定モデルから派生したものである。高速マーチング法は、接触面伝搬に従う上で役立つ。
【0070】
レベル設定モデルの手法において、初期接触面は、接触面よりも高い次元の関数φのゼロレベルとして定義される。点
【0071】
【数14】

【0072】
の値φ(x)は、その点と初期接触面との間の距離である。関数φは、速度関数Fに従って、その正の方向に移動する。関数φの展開は、初期接触面φ(x,t=0)として以下の式により与えられる。
【0073】
∂φ/∂t+F|▽φ|=0 (8)
【0074】
レベル設定モデルは、非特許文献19においてSethianにより、また非特許文献23においてR.Malladiらにより開示されているように、伝搬接触面の最終位置として画像境界を解釈することにより画像セグメンテーションに適用可能である。
【0075】
これを達成するため、速度関数Fは、画像または形状の特徴に関して定義され、伝搬接触面が画像境界と接する場合はゼロに近くなる必要がある。速度値はゼロに近似であるため、伝搬接触面は画像境界上で停止するが、ここで一般にセグメンテーションプロセスが終了する。
【0076】
高速マーチングは、レベル設定モデルの特殊な事例である。これは、単一方向速度関数のもとで展開する接触面からなる。この場合、伝搬接触面は初期接触面の内部に位置する領域を探索しないので、正の速度関数に対して伝搬接触面はセグメントの領域の内部(あるいは負の速度関数に対して外部)にある必要がある。
【0077】
高速マーチングの定式化において、伝搬接触面の展開は、点(x)における接触面の到着時刻T(x)に関して表される。関数Tは以下の式9を満たし、2つの隣接するピクセル間の到着時刻の差が接触面の速度の減少に伴って増加することを示す。
【0078】
|▽T|F=1 (9)
【0079】
接触面の伝搬は、到着時刻関数T(x)の構成を介して行われる。非特許文献24においてSethianによって開示されているように、構成アルゴリズムは、最も小さい到着時刻を有する接触面の点xを選択して、その近傍の到着時刻を計算する。これは、接触面が画像全体にわたり伝搬されるまで、または伝搬接触面が定常であると見なされる(時間勾配が十分に高い場合)まで繰り返される。
【0080】
レベル設定および高速マーチングの式は、接触面の次元とは無関係である。離散3Dグリッド上で、近傍の到着時刻は、式9の以下の省略算を解くことにより更新される。
【0081】
1/Fi,j,k2=max(Di,j,k-xT,-Di,j,k+xT,0)2
【0082】
+max(Di,j,k-yT,-Di,j,k+yT,0)2
【0083】
+max(Di,j,k-zT,-Di,j,k+zT,0)2 (10)
【0084】
x次元について、
【0085】
Di,j,k±xT=±(Ti±1,j,k-Ti,j,k)/Δ
【0086】
ここでΔは、グリッド要素サイズであり、(i,j,k)は、計算されたその到着時刻を有する点の3D位置である。類似した定義は、yおよびz次元において、Di,j,k±yTおよびDi,j,k±zTに適用される。
【0087】
前述のように、複数の輪郭(内腔、内膜、および中膜)がIVUSデータ上で識別される必要があるので、画像セグメンテーションは、非特許文献25においてSifakisらによって開示されているように、高速マーチング法の複数接触面拡張を介して同時に行われる。次に、速度関数が伝搬接触面ごとに定義され、すべての伝搬接触面から最小到着時刻値を持つ点を選択することによりTマップが構築される。
【0088】
したがって、複数の伝搬接触面による高速マーチング法は、血管の様々な層の同時セグメンテーションを可能にする。複数接触面は、血管の重層構造を直接示し、境界が重複しないようにする。
【0089】
PDFベースの高速マーチング法において、血管層に関連付けられている各接触面は、対応する解剖学的構造のPDF Pm∈Lに関して定義された速度で展開する。(LがNL展開接触面の集合1,2,...,NLである場合)接触面m∈Lの伝搬速度は、式11によって与えられる。
【0090】
【数15】

【0091】
Isは、画像Iの位置(i,j,k)におけるピクセルsのグレーレベル値であり、Pm(Is)およびPl(Is)はそれぞれ領域mおよびlにおけるピクセルIsの測定された出現確率である。出現確率は単一ピクセルよりも領域にとってより重要であるため、速度関数は特定数Nvの近傍にわたって計算されるが、これらは、例えば位置(i,j,k)周囲の26の接続されたピクセルのように、位置(i,j,k)周囲に位置するピクセルである。式11によれば、m接触面速度は通常正であり、Pmに近似の中間調分布を有する領域内の場合はより高い値をとる。
【0092】
伝搬接触面が血管層の境界に近づくにつれ、前述のように、近傍はPDFの他の成分のもとに分散され始めるが、これには一般にPl(Is)増加およびPm(Is)減少の影響があり、そのため接触面速度が減少する。式11の速度関数は、任意のタイプのPDFで使用することができ、近傍平均を提供する一般形式を有する。
【0093】
複数伝搬接触面に使用される場合、高速マーチングセグメンテーション法は、すべての隣接伝搬接触面がそれぞれの境界と接するときに終了する。したがって、伝搬接触面は、到着時刻Tマップが完全に構築されるまで展開する。
【0094】
グレーレベル勾配は広く受け入れられている画像機能であるため、上記で開示されている高速マーチングセグメンテーションのPDF実装と、高速マーチングセグメンテーションのグレーレベル勾配実装とを比較することができる。後者の場合は、速度関数は以下の式によって与えられる。
【0095】
F(i,j,k)=1/(1+|▽Gσ*I(i,j,k)|) (12)
【0096】
ここでGσは、標準偏差σのガウス平滑化フィルタである。式12の速度関数は一般に、低勾配の領域において接触面をより速く伝搬する。
【0097】
前述のように、高速マーチングセグメンテーション法では一般に、初期接触面がセグメント化する領域内に位置していることが必要になる。この要件は、初期化手順により達成することができる。この手順では、IVUSデータの縦断面に沿って抽出されたデータに関して初期化輪郭が手動でトレースされる。これはまた、以下でさらに説明される全IVUSデータセットに関する事前情報を検討することによって自動的に実行することもできる。
【0098】
一般的には、縦断面は血管の長さ方向に沿った一連のデータ全体に関する情報を提供することができるので、単一2D IVUSフレームからのデータを使用する代わりに、IVUSデータ内の縦断面に沿ってデータを選択するステップが使用される。さらに、縦断面上で手動または自動でトレースされた初期化輪郭の数は、IVUS 2Dフレームの数には依存しない。
【0099】
初期化輪郭は、血管に沿った様々な数の縦断面から描かれる。例として、360度にわたる等間隔の角度において取られた3つの縦断面が、IVUSデータボリュームを切断するために選択される。初期化輪郭は、推定される層ごとに、各IVUS 2Dフレーム上で初期接触面のセットを生成するための参照点を提供する。これは一般に、参照点をそれぞれ、各初期化輪郭点に対応するIVUS 2Dフレームの属性と見なすことにより達成される。
【0100】
図4および図5の例示的な実施形態において、参照点Aは、図4に示す縦断面の内腔境界を推定する1つの初期化輪郭Bに沿って取られる(図18のオペレーション171)。例えば、図4の参照点Aは、図5のIVUS 2Dフレーム上で転置され、IVUS 2Dフレーム上の内腔の初期接触面の生成に役立つ(図18のオペレーション172)。一般に複数の縦断面から得られた複数の参照点は、IVUS 2Dフレームで転置される(図18のオペレーション173)。この初期化ステップは一般に、推定する必要のある血管の境界層ごとに実行される。
【0101】
各IVUS 2Dフレームに対して、これらの参照点を通過する若干縮小したスプラインが計算され、初期接触面を生成するために使用される(図18のオペレーション174)。したがって、この手順を使用すると、縦断面の初期化輪郭を手動で生成するために必要な、IVUSデータボリューム情報を含む縦断面はわずかですみ、その結果、数百の画像(通常のIVUSデータでは一般的な数)にわたる複数血管層の並行セグメンテーションを初期化する(図18のオペレーション176)ために必要な初期接触面の生成(図18のオペレーション175)に必要な縦断面がわずかですむ。
【0102】
初期縦断輪郭はさらに、代替として、任意の以前の参照点から再開始することができる(図18のオペレーション177)。このようにして、ユーザは、縦断面で解釈することがより困難であったIVUSデータのセクションを、オンラインで容易に探索することができる。
【0103】
[実験的試験]
【0104】
上記で提案された図18の非限定的な例示的方法の実験的試験は、病変した浅大腿動脈からの合計8の生体内IVUSプルバック(600フレーム/IVUSデータ)で実施された。これらの実験的試験は、バルーン血管形成を受ける前に6人の異なる患者に対して実施された。BモードIVUSデータは、例えばJomed機器(In-vision gold、ヘンシングボリ、スウェーデン)などのデータ収集システムにより、20MHzの超音波振動子を使用して取得された(図19の181)。10x10mmのサイズのIVUS 2D Bモード画像は、384x384ピクセルマトリクスでデジタル化され(図19のデジタイザ182)、DICOM規格を使用してメモリに格納された(図19の183)。収集は、毎秒10画像のフレームレートで行われ、カテーテルのプルバック速度は、0.1mm厚さの2Dスライスを生成する毎秒1mmに設定された。収集パラメータは、画像品質を最大化するように臨床医によって設定された。具体的には、ゲインは46から54まで変動し、中間調ルックアップテーブルは5に設定された。画像収集は、ECGゲート型ではなかった。
【0105】
ωjおよびαj2のPDF混合パラメータ推定の堅牢性を評価するため、前述のEMアルゴリズムが、アルゴリズムの実行ごとに異なるピクセルのサブセットで、1つのIVUSカテーテルプルバックについて計算器(図19の184)で10回実行された。平均PDF混合パラメータおよび標準偏差は、検出されたレイリーPDFに対して計算された。ピクセルサブセットは、同じIVUSデータから取られたものであったので、PDF混合パラメータは概ね同一の値に収束するものと予想された。
【0106】
この堅牢性検証が完了すると、EMアルゴリズムが各セグメンテーションの開始時点で適用された。ゲインおよびその他のパラメータ設定は各IVUSデータ間で異なっており、各層のエコー発生性は患者ごとに変化しやすいので、PDF混合パラメータはIVUSデータごとに固有であるからである。検出されたPDF混合は、4つの分布(内腔、内膜、中膜、および周辺組織)からなるが、当業者であれば、EMアルゴリズムが一般的なものであり、必要に応じてより多くの異種の血管層のPDF分布を推定することができることは、容易に理解されるであろう。
【0107】
試験は、生体内血管と、血管IVUSデータの数値シミュレーションに対して実施された。生体内BモードIVUS画像は、自動検出されたグレーレベルレイリーPDF、および比較として、グレーレベル勾配を使用して、3D複数接触面高速マーチングによりセグメント化された。すべてのカテーテルプルバックは、初期輪郭の異なるセットを使用して両方の3D方法により3回セグメント化された。内腔、内膜(斑)、および中膜の境界が得られた。様々な初期化のもとで境界検出の検証を定量化するため、非特許文献26においてChalanaらにより開示されているように、様々な初期輪郭セットからもたらされた輪郭の間で、平均およびハウスドルフの2地点間距離が計算された。ハウスドルフの距離は、異なるセグメンテーション結果の間の最大距離を生成するので、最悪状況を表している。平均およびハウスドルフの距離は、2地点間の輪郭の差異を直接示す。
【0108】
IVUSカテーテルプルバック全体から検出された境界は、再現することのできる3Dの血管を表している。内腔および中膜の輪郭の再現は、単純で平滑な輪郭スタックから作成された(図11を参照)。
【0109】
セグメンテーション方法の例示的な実施形態の前述の生体内検証に加えて、セグメンテーションの精度を評価するためにIVUSデータの数値シミュレーションが実施された。シミュレートされたデータの正確な形状は通常、完全に知られているので、シミュレートされたデータの正確な形状に関して検出された境界の直接パフォーマンス計算を得ることができる。シミュレートされたBモードIVUSデータは最初に、初期化輪郭を生成する初期縦断図の3つの異なるセットも含む生体内データに関して、同じ手順を使用してセグメント化された。内腔、内膜(斑)、および中膜の境界が得られた。検出された輪郭とグラウンドトゥルースの境界位置との間の平均およびハウスドルフ2地点間距離が、初期輪郭の各セットから生じたセグメンテーションについて計算された。
【0110】
図6において説明されたシミュレーション方法により、RFおよびBモードのIVUSデータの合成が可能になるので、前述の高速マーチングセグメンテーション法はさらに、3DシミュレーションRF画像から自動的に検出されたグレーレベルのガウスPDFを使用して試験された。
【0111】
IVUSデータをシミュレートするために使用された画像形成モデル(エコー図)は、非特許文献27においてMauriceらによって詳述されている。画像システムの空間不変性などの仮定のもとに、IVUS画像は、単一の超音波散乱体の等価無線周波数画像である点広がり関数と、IVUSデータを構成するシミュレートされた組織構造の各散乱体の音響インピーダンス不整合を記述する関数との間の畳み込みオペレーションによってモデル化された。言い換えれば、点広がり関数は、超音波画像システムの本質的な特徴を表している。
【0112】
画像形成モデルの実装は、-3dBで60%の帯域幅および0.1mmのビーム幅の20MHz変換器向けに作成された。これらのシミュレーションのために、中膜は内腔の2倍音波を発生し、斑は中膜の1.5倍音波を発生し、周辺組織は中膜の2倍音波を発生するように選択された。音波発生性は、散乱体の音響インピーダンス不整合を反映する画像輝度と見なすことができる。信号対雑音比(SNR)は、20dBに設定された。
【0113】
図6は、RFおよびBモードのIVUSデータをシミュレートするために使用される画像形成モデルを示している。実際の2D生体内IVUS画像の場合、ボックスCに示されているもののように、セグメント化された輪郭または血管境界(内腔、脈管内膜の斑、中膜)は、ボックスCにおいてIVUS 2D画像を手動でトレースした輪郭から作成されている(ボックスD)。ボックスEは、ボックスDからの2Dフレーム内の音響インピーダンス変動を表す関数z(x,y)を示しており、ボックスFは、極座標の2Dフレーム内でマップされた同じ音響インピーダンス変動を表現する関数z(γ,ψ)を示している。ボックスGは、深さに伴って増加するビーム幅を持つ極点広がり関数h(γ,ψ)を示しており、要素Hは2D畳み込み演算子である。2D畳み込み演算子(要素H)を通じて極点広がり関数h(γ,ψ)(ボックスG)で関数z(γ,ψ)(ボックスF)を処理すると、シミュレートされた極無線周波数(RF)画像I(γ,ψ)(ボックスJ)が生成される。ボックスKは、非特許文献28においてKallelらによって提示されているように、I(γ,ψ)のヒルベルトの変換を使用して計算された(要素Lを参照)極Bモード画像IB(γ,ψ)を示している。ボックスMは、極Bモード画像IB(γ,ψ)から計算されたデカルトBモード画像またはシミュレーションIVUS画像IB(x,y)を示している。このシミュレーション方法は、病変した浅大腿動脈内のIVUSカテーテルプルバックの全画像データについて繰り返された。
【0114】
[結果および検討]
【0115】
前述のように、EMアルゴリズムは、PDF混合パラメータ推定の堅牢性を評価するために、1つのIVUSカテーテルプルバックに対して10回適用された。それぞれの実行において、PDFパラメータは、同じIVUSデータの異なるピクセルのサブセット(サブセットは約400 000ピクセルを含んでいた)に対して推定された。検出された各レイリーPDFの平均混合パラメータは、以下の表1に示されている。図3において、上記で提示された全データセットのIVUSプルバックのグレーレベルヒストグラムと共に、自動的に検出されたレイリーPDF混合の例も、層成分ごとに点線で示されている。
【0116】
【表1】

【0117】
表Iは、EMアルゴリズムの様々な実行の間で小さな違いが見出されたことを示している。様々な境界層の混合検出が、IVUSカテーテルプルバックの異なるピクセルサブセットに適用されたEMアルゴリズムのいくつかの実行に対して0.3%から3.7%までの範囲のωおよびa2の標準偏差を備える堅牢かつ安定したプロセスであることは明言できる。したがって、EMアルゴリズムは、異なる患者間のPDF変動性を研究するために、8つの使用可能なIVUSカテーテルプルバックに適用された。結果は、以下の表IIに示されている。
【0118】
【表2】

【0119】
所定の患者の様々な血管構造に特有の機器設定およびエコー発生性により、表IIでは、顕著なIVUSカテーテルプルバックの混合パラメータ間の一般に高い変動性に重点を置いている。これらの結果は、EMアルゴリズムが、異なる患者からの様々なレイリーPDF混合を適合させることができることを示唆している。
【0120】
次に、数値的にシミュレートされた生体内IVUS画像は、比較のために、自動的に検出されたグレーレベルPDFおよびグレーレベル勾配を使用して3D複数接触面高速マーチング法によりセグメント化することができる。実験的試験のために、すべてのIVUSカテーテルプルバックは、縦断面から生成された初期化輪郭から得られた初期接触面の様々なセットを使用して、両方の3D方法により3回セグメント化された。
【0121】
検出されたグレーレベルレイリーPDF法およびグレーレベル勾配法によりIVUS画像のシミュレートされたセグメンテーションについて得られた結果は、図7Aから図8Dに示されている。図7Aから図7Dは、図7Aに示されている第1の血管形状に関係しており、図8Aから図8Dは、図8Aに示されている第2の血管形状に関係している。
【0122】
図7Bおよび図8Bはそれぞれ、図6に概略的に示されている前述の方法から得られた、第1および第2のシミュレーション血管の例のシミュレートされたIVUS断面2D Bモード画像を示している。検出された内腔の境界、肥厚した内膜および中膜は、図7Cおよび図8Cにおいて検出されたグレーレベルPDF法により推定され、図7Dおよび図8Dにおいてグレーレベル勾配法により推定される。
【0123】
図7Aから図8Dに示されている通常のシミュレートされたIVUSセグメンテーション結果は、検出された境界が血管層境界に極めて近似していたことを示している。これらはさらに、中膜の外部境界が、勾配ベースの方法よりもPDF高速マーチング法の場合のほうが平滑であるが、表面がより粗い可能性もある内腔は十分詳細に検出されたことも明らかにしている。勾配法は、スペックルが一般に高いグレーレベル輝度差を持つので、対象物の境界でスペックルの輪郭をトレースするように見えた。
【0124】
以下の表IIIは、平均距離(AD)およびハウスドルフ距離(HD)の結果を含んでいる。これは、異なる初期化ステップから得られた検出境界とシミュレートされた形状から得られたグラウンドトゥルース値(真の境界)との間にある、推定境界と真の境界との間の最大距離(mm単位)である。この表において、FMMは高速マーチングセグメンテーション法を示している。記号*は、対応のあるt-検定でのp<0.05の統計的に有意なパフォーマンスを示すが、記号§はp<0.01の統計的有意を表す。
【0125】
【表3】

【0126】
平均およびハウスドルフ距離は、2地点間の輪郭差異を直接示すので、領域または外周部の差異の代わりに比較のメトリックとして選択された。表IIIから見て取れるように、PDFベースおよび勾配ベースの三次元(3D)高速マーチングに対して、極めて低い平均およびハウスドルフ距離値が得られ、方法がシミュレートされたBモードIVUSセグメンテーションに非常に強力であることを示している。実際、平均偏差は0.060から0.072mmの範囲におよび、最悪の2地点間距離は0.154から0.226mmの間であったが、これは非常に満足できるものである。血液と内膜の接触面が一般に、勾配情報が有意となる高輝度エコーを生成するので、勾配法(p<0.01)により内腔境界でより低いハウスドルフ距離が得られた。しかし、内膜(斑)および中膜の接触面のように、よりコントラストの低い境界では、統計的に有意な低いハウスドルフ距離(p<0.05)がPDFベースの方法により達成された。
【0127】
生体内IVUSデータについてグレーレベルレイリーPDF法およびグレーレベル勾配法により得られた結果の例は、図9Aから図10Cに示されている。内腔、内膜、および中膜の検出された境界は、第1の断面IVUS画像(図9A)および第2の異なる断面IVUS画像(図10A)で提示されている。
【0128】
内腔、内膜、および中膜の検出された境界は、図9Bおよび図10Bにおいて、グレーレベルPDFベースの高速マーチング法により推定され、図9Cおよび図10Cにおいて、グレーレベル勾配ベースの高速マーチング法により推定される。
【0129】
グレーレベルPDFおよびグレーレベル勾配高速マーチングセグメンテーション法の定量的分析は、検出された境界がすべての血管層に非常に近似していることを明らかにする。具体的には、図9Aおよび図10Cでは、図9Aにおける4時の位置の側副血管のように、コントラストが非常に低い場合であっても、生体内IVUS画像の血管境界を識別できることが示されている。さらに、図10Bおよび図10Cの検出された境界は、非円形の内腔が高速マーチング法で検出できることを実証している。
【0130】
以下の表IVは、接触面の様々な手動の初期化について、グレーレベルPDFとグレーレベル勾配高速マーチング法に対する生体内データの検出された境界間の平均距離(AD)およびハウスドルフ距離(HD)を示している。
【0131】
【表4】

【0132】
表IVにおいて、FMMは高速マーチングセグメンテーション法を表し、記号*は、対応のあるt-検定でのp<0.05の統計的に有意なパフォーマンスを示すが、記号§はp<0.01の統計的有意を意味する。
【0133】
結果は、グレーレベルPDF高速マーチングが最小のハウスドルフ距離(p<0.01)を有し、これがグレーレベル勾配の実装の場合の最大0.317mmの値と比較して、すべての境界について0.270mm未満にとどまっていることを示している。PDF高速マーチングはさらに、0.092mm以下という比較的小さい輪郭間の平均距離を有するが、グレーレベル勾配法により得られた内膜および中膜の平均距離よりも大幅に高い。しかし、これらの距離の差異は一般に小さい(ピクセルサイズよりも低い)。したがって、3D高速マーチング検出境界は、異なる初期化を行った場合小さい変動を有し、最悪の事例を表す最も近接する点までの最大距離は概ね低くとどまる。これは、例えば検出する境界が残されたカルシウム沈着に隠されたカテーテルのリングダウンアーティファクトに覆われている場合など、情報が不足している領域において、セグメンテーションのパフォーマンスが良好であることを示す傾向がある。
【0134】
図11は、患者の2つの狭窄が明確に認められるグレーレベルPDF 3D高速マーチングセグメンテーションにより得られた内腔および中膜の輪郭の3D再現を示している。図において、薄いグレーは中膜の内側部分に対応し、濃いグレーは血管内腔である。グレーレベル勾配高速マーチング法は、類似した定量的結果を提供した(データは図示せず)。
【0135】
前述のように、PDFベースの高速マーチングセグメンテーション法はさらに、Bモードデータに変えてRFデータを活用することができる。RFデータ上で、EMアルゴリズムは一般に、IVUS画像の血管壁の様々な層状構造を記述するガウスPDFの混合を探索する。
【0136】
図12Aは、全3Dデータセットから取られたシミュレーション2D RF画像を示し、図12BはRF IVUSデータに適用されたPDF方法により得られたセグメンテーション結果の例を提示している。それらの結果を図8Cの場合と比較すると、質的には同様のパフォーマンスを認めることができる。しかし、定量的には、Bモードデータと比較した場合、RF画像の解像度がより高いため、さらに優れた精度が一般に期待される。
【0137】
非特許文献29においてRoy Cardinalらによって開示されているIVUS高速マーチングセグメンテーション法の暫定版では、高速マーチング法の2Dバージョンが実装された。
【0138】
一般的に、2D IVUSアルゴリズムでは、初期接触面を修正するためにカテーテルプルバックの以前のIVUS画像からのセグメンテーションを使用する。前述の研究においてRoy Cardinalによって開示されている2Dセグメンテーションモデルは、200画像の小規模なIVUSカテーテルプルバックに適用された。IVUSの適用に応じて、高速マーチングPDF法または勾配ベースの方法を実装するために任意の次元を検討することができる。本発明の多次元方法は、一般的であり、1DからND次元まで概念的に考察する(ここでNは方法の次数)。N=4は、経時変化する3D IVUSデータを考察することに留意されたい。
【0139】
より大規模なIVUS Bモードの臨床データベースを本発明の研究に使用することができたので、高速マーチングセグメンテーションの2Dバージョンは、すべての使用可能なカテーテルプルバックに適用された。高速マーチング到着時刻(式10から)および速度関数(式11および式12から)の2D実装は、一般に単純である。2Dにおいて、8接続のピクセル(上記で提示された方法では26接続のピクセル)が、速度関数の計算において近傍を平均化するために使用された。
【0140】
以下の表Vは、2D高速マーチングセグメンテーションによる様々な初期化からの、検出された血管層の境界間の平均距離(AD)およびハウスドルフ距離(HD)を示している。3D高速マーチング法に関しては、結果は自動的に検出されたPDFおよび勾配ベースのアルゴリズムに対するものである。
【0141】
【表5】

【0142】
Turkey検定を使用する2つ一組の多重比較による分散の両方向分析は、2D(表V)および3D(表IV)高速マーチングの平均距離およびハウスドルフ距離に対して行われた。
【0143】
統計的検査法では、表Vの2D高速マーチング検出境界からの平均距離が、すべての血管層の3D高速マーチングの結果とは異なっていなかったことが示されている。2Dアルゴリズムでは、初期輪郭を修正するためにカテーテルプルバックの以前の画像からのセグメンテーションを使用し、それが境界の精度を高めたことに留意されたい。したがって、代替として、セグメンテーションのパフォーマンスは、3D高速マーチング法におけるこのタイプの修正方法を、より高い解像度のデータセットを初期化するためにマルチスケールセグメンテーション手法を使用して、同じカテーテルプルバックの低解像度セグメンテーション結果と、組み合わせることによって高めることができる。3D高速マーチング法に関しては、2DにおけるグレーレベルPDF高速マーチングは、グレーレベル勾配法よりも小さいハウスドルフ距離を示した(p<0.05)。2Dおよび3D高速マーチングの両方においてグレーレベル勾配法により良好な平均距離パフォーマンスが達成されたため、この情報は、式11のPDF速度関数に有利に追加することができる。
【0144】
ここで、本発明による方法および装置の第2の非限定的な例示的実施形態について説明する。簡潔にするため、第1の非限定的な例示的実施形態および第2の非限定的な例示的実施形態による方法および装置の間の相違点のみが、以下で説明される。
【0145】
第2の非限定的な例示的実施形態において、高速マーチング法は、計算時間の効率を高めるために変更されている。第1の例示的実施形態による高速マーチング法において、いくつかの接触面がIVUS画像データにわたって同時に伝搬する。伝搬プロセスにおいて、伝搬する接触面およびそれらの隣接領域は、極めて詳細に探索される。一般に、第1の例示的実施例で説明されているセグメンテーション方法において、すべてのピクセルは分析され、伝搬プロセスは到着時刻マップの構築を通じてすべての先行の接触面近傍を考慮に入れる。したがって、計算時間は、初期接触面が伝搬する初期セグメンテーション領域が大きくなればそれに応じて増大する。
【0146】
第1の例示的実施形態において、初期接触面の位置は、縦断面に沿って手動または自動でトレースされた初期化輪郭の縮小バージョンから計算される。初期化輪郭から計算された初期接触面の位置の例は、図13Aおよび図13Bに示されている。
【0147】
黒い領域は、探索されていない伝搬領域130を表し、伝搬領域130の両側にあるグレーのピクセルは伝搬接触面132、134に対応し、矢印136a、136b、136c、および136dは、伝搬接触面132、134の伝搬方向を表している。破線138は、達するために望ましい境界を表し、実線は、初期伝搬接触面132、134が計算された初期接触面140の例である。図13Aにおいて、伝搬領域130は、図13Bのように境界138を完全に含む十分な幅広さで設定されなかったため、接触面は境界138を検出しない。しかし、図13Aにおける伝搬は、図13Bの場合よりも迅速に完了する。
【0148】
したがって、計算負荷を減少させるため、より小さい伝搬領域130を作成するように縮小を小さくすることができる(図13A)。しかし、高速マーチング法は、単一方向速度関数のもとで接触面132、134を伝搬するため(矢印136a、136b、または136c、136d)、検出される境界138は、伝搬中に探索される伝搬領域130の内側に位置する必要がある。
【0149】
伝搬領域130の次元と計算時間との間の妥協が模索される。既知の2D高速マーチングセグメンテーション法により、この問題は一般に、初期接触面を修正するためにカテーテルプルバックの以前の2D画像からのセグメンテーション結果を使用することにより解決される。次に、初期接触面140はより正確になり、伝搬領域130はより小さい次元で設定することができる。
【0150】
第1の非限定的な例示的実施形態の3D高速マーチングセグメンテーション法において、IVUSデータの多重解像度またはマルチスケールの表現およびセグメンテーションを通じて、この2D修正の原理と類似した修正を行うことができる。IVUSデータのそのような多重解像度画像の例は、図14Aから図14Dに示されている。ここで、低解像度画像は2lで元のIVUS画像をアンダーサンプリングすることによって得られる(図20のオペレーション191)。l=3、2、1、0はそれぞれ、図14A、図14B、図14C、および図14Dに対応する解像度レベルである。例えば内腔のような高いスケール構造は一般に、低解像度画像で強調される。
【0151】
IVUSデータの低解像度表現のセグメンテーション結果は、次の解像度のレベルにマップされる(図20のオペレーション192)。非特許文献30においてBoukerrouiら、および非特許文献31においてMignotteらは、関連する概念を提案している。
【0152】
これらのセグメンテーションマップされた結果は、このより高い解像度レベルにおいて接触面伝搬を初期化するために使用される(図20のオペレーション193)。低解像度レベルにおいて、幅広い伝搬領域の高速の粗い探索が行われ、伝搬する接触面132、134を望ましい境界138にさらに近付ける(図21のオペレーション201)。次に、接触面132、134が反復して修正されるので、伝搬領域130はそれぞれの高い解像度レベルで減少させることができる(図21のオペレーション202)。次に、より大きい伝搬領域130が、すべての可能な解像度にわたって、より少ない計算で探索することができる。
【0153】
解像度レベルlにおいて、ピクセルは元の解像度画像から2l×2lブロックのピクセルを表す。図14Aから図14Dにおいて、使用されたアンダーサンプリングは、低解像度レベルでは結果として情報の損失をまねいた。この情報の損失を克服するため、マルチスケールPDFベースの速度関数(式11と同様)が開発され、使用される(図21のオペレーション203)。ここで、P(Is)は、式13に示されるように、伝搬がレベルlで行われる場合、Isに対応するピクセルの2l×2lブロックの尤度で置き換えられる。
【0154】
【数16】

【0155】
ここでblはピクセルの2l×2lブロックであり、P(Isl)はゼロ解像度の画像lにおけるピクセルslのグレーレベル値の出現確率である。
【0156】
図20および図21の多重解像度およびマルチスケールの高速マーチングセグメンテーション法は一般に、計算時間を増大することなく、検出された境界の精度を繰り返し向上させることができる。
【0157】
ここで、本発明による方法および装置の第3の非限定的な例示的実施形態について説明する。簡潔にするため、第3の非限定的な例示的実施形態および第1の非限定的な例示的実施形態の間の相違点のみが、以下で説明される。
【0158】
第3の非限定的な実施形態において、高速マーチング法は、推定されたPDF混合パラメータに従って計算される、血管壁の各成分(内腔、内膜と斑、中膜、および周辺組織)の尤度マップを使用することにより、血管壁の層(内腔、中膜の内側および外側輪郭)の初期接触面を自動的に見出すように変更されている。この手法は、前述の血管接触面の手動による初期化の代替案と見なすことができる。
【0159】
初期化手順は一般に、多重解像度またはマルチスケールグレーレベルPDF高速マーチング法により正確な壁の輪郭にさらに詳細化される、層の真の境界の大まかな推定を見出す。
【0160】
初期化手順は一般に、全カテーテルプルバックからの連続する2D IVUSフレームの小さいサブセットで開始する(図22のオペレーション211)。例えば、サブセットは、2D IVUSフレーム間に十分な相関を保持しながら、できる限り多くの情報を取得するように(例えばNinit=10)、Ninit2D IVUSフレームを含むことができる。よりよい結果を得るため、初期接触面の判別に使用可能な情報を最大化するため、選択された2D IVUSフレームは一般に石灰化の陰がなく、全般に均質の斑がある良質なものである。
【0161】
これらの良質な2D IVUSフレームを見出すため、個々のフレームヒストグラムのそれぞれとプルバックPDF混合との間で、適合の度合いが最初に計算される(図3参照)。適合の度合いは、PDF混合と、IVUS 2Dフレームの正規化ヒストグラムとの間の距離を計算するコルモゴロフ-スミルノフ検定によって測定することができる。この検定は、経験分布(IVUSヒストグラム)が、理論分布(混合)と異なるかどうかを判別するために使用する。最小化する必要のある、Ninit画像のサブセットinitとグローバルIVUSデータPDF Pjとの間のコルモゴロフ-スミルノフの距離は以下のとおりである。
【0162】
【数17】

【0163】
ここで、Isは、画像Iのピクセルsのグレーレベル値であり、kj(Is)は、サブセットのj番目の画像のグレーレベル値Isを持つピクセルの数であり、Nは画像Iのピクセルの数である。
【0164】
最小のコルモゴロフ-スミルノフ距離を有する連続フレームが一般に選択される。混合は、カテーテルプルバック全体にわたって計算されるので、これは平均的な内腔および血管壁を表す。したがって、このテストは一般に、平均的カテーテルプルバックと類似したフレームを選択し、これらのフレームは初期接触面の計算を開始するために使用される。
【0165】
初期接触面の計算は、図15に示されているように、中膜構造150に対応する概ね楕円リング形状の内部領域の検索で開始される(図22のオペレーション212)。この中膜領域150は、上記で開示されている中膜PDFに従って分布し、周辺組織領域152および斑領域154の間に取り囲まれている。中膜領域150、周辺組織領域152、および斑領域154は、初期化手順を簡略化するため、また中膜の大まかな推定しか一般に必要ないため、概して固定されたサイズになっている。周辺組織領域152、および斑領域154は、中膜領域150に関する追加情報を提供するために定義されるので、斑および周辺組織全体を表す必要はない。
【0166】
初期化手順は一般に、楕円の制約がこの層では容易に想定されると考えられているため、血管の中膜領域150の検索から開始する。このことは実際に、非特許文献32(内腔を不規則な形状にする大腿膝窩動脈の血管形成後の16人の患者のうち15人を分析)においてHagenaarsらによって報告された。
【0167】
IVUSデータの取得は、患者が血管形成術を受けるアテローム性動脈硬化症の治療の試みにおいて行われることが多いため、層の不規則性は考慮に入れる必要がある。さらに、初期内腔接触面の検索は、中膜の内側領域まで縮小される(図22のオペレーション213)が、これは一般に伝搬接触面が側副枝(ある場合)に漏れることを防いでいる。さらに、初期中膜領域150の楕円形状は一般に、中膜が石灰化の陰に隠れている場合であっても、閉じた初期接触面を生成する。
【0168】
初期IVUSフレームのサブセット内の中膜領域150を見出すため、エネルギー関数を図15のテンプレート158に関連付ける必要がある。非特許文献33においてJainらにより開示され、非特許文献34においてZhongらにより開示されている、変形可能なモデルフレームワークにおいて、テンプレートが検索された領域に適合する場合、エネルギー関数は一般に最小に定義される。変形は、画像に最小のエネルギー関数を達成するためにテンプレート158に適用される。
【0169】
中膜領域150を見出すために最小化する必要のあるエネルギー関数は、以下の式15により得られる。
【0170】
【数18】

【0171】
ここで、P(Isjl)は、領域γiのPDFに従って初期サブセットのj番目のIVUS画像のピクセルsのグレーレベル値の発現確率である。R={γpmt}は、テンプレート158の斑領域(γp)154、中膜領域(γm)150、および組織領域(γt)152である。Ninitは初期フレームサブセットのサイズである。
【0172】
一般に中膜領域150の大まかな推定しか必要とされないため、例えば変換、伸縮、および回転などの一次変換のみがテンプレート158に適用される。テンプレート158適合は、十分に大きい中膜の連動を保ちながらも計算時間を最小化するために、第2の非限定的な例示的実施形態において説明されているように、減少解像度レベルl=1で行われる。変形モデルを最小化するために、異なる既知の最小化アルゴリズムを使用することができる。
【0173】
内腔領域(図15に図示せず)は次に、定義された初期中膜境界から検索される。幾何学的形状制約のない領域が計算され、内腔尤度マップが計算され、このマップを使用して内腔領域が拡大または伝搬される(図22のオペレーション214)。内腔領域は一般に、内腔の内側にあって通常すべてのプルバックフレームの中心付近に位置しているIVUSカテーテルにおいて始まる。
【0174】
内腔領域は、例えば内腔領域γlのPDFによるNinit画像サブセット内のピクセルsの対数尤度
【0175】
【数19】

【0176】
が十分に低い場合、発現確率に従って内腔内側にある可能性が最も高いピクセルを追加することによって拡大する。領域は一般に、中膜領域150の境界を超えて拡大することは禁じられている。
【0177】
次に、中膜および内腔領域は、初期サブセットに使用されたNinit連続2D IVUSフレームに合わせて調整または適合される(図22のオペレーション215)。一次変換は、連続 2D IVUSフレームの各々に対するこれらの尤度を最大化するために、これらの中膜および内腔領域に適用することができる。このステップは通常、前述の中膜変形可能テンプレートに関して実行されるが、初期脈管内膜および斑領域154は内腔領域および中膜領域150と境を接しており、初期周辺組織領域152は中膜領域150と片側のみが接している。
【0178】
この手順は一般に、カテーテルプルバック内の連続する2D IVUSフレームの次のサブセットに繰り返される。しかし、連続する各2D IVUSフレームのプロセスは一般に、以前定義された中膜テンプレート158の結果に伴って開始する。内腔領域の拡大は一般に、以前の平均的内腔領域の縮小バージョンから始まる。したがって、全IVUS画像プルバックはそのように初期化される。
【0179】
代替として、第1の例示的実施形態において説明されているセグメンテーション高速マーチング法は、グレーレベルPDF情報のみの使用では第3の例示的実施形態に説明されているように自動初期化の生成には不十分となる場合、初期接触面の計算にグレーレベル勾配情報およびグレーレベルPDF情報の組合せを使用することができる。グレーレベル勾配情報はまた、式11の接触面速度関数に組み込むこともできる。
【0180】
非常に低品質の画像または血管壁内の透過を制限する高い超音波減衰の場合、提案されている初期境界計算手順は一部の初期輪郭または領域境界を見出すことができないこともある。これらの特定の場合では、接触面の一部の領域を修正するために最小のユーザ介入が必要になることもある。必要に応じて、この介入はさらに、正確に見出された境界を再セグメント化しなければならない状況の発生を最小限に抑えるために、セグメンテーションプロセスに含めることもできる。
【0181】
例えば内腔と脈管内膜の間の境界などのように、単一の境界が使用可能である場合、楕円プレートは、単一境界との間の領域に一般に対応する2つの領域テンプレートを提供するような方法で変更することができる。したがって、式15のエネルギー関数は通常、2つの領域に抑えられ、残りの初期化手順は通常多重境界初期化の場合と類似したものにとどまる。
【0182】
ここで、本発明による方法および装置の第4の非限定的な例示的実施形態について説明する。簡潔にするため、この第4の例示的実施形態および第1の例示的実施形態の間の相違点のみを説明する。
【0183】
この第4の非限定的な例示的実施形態において、高速マーチング法は、第1の例示的実施形態において提示されているEMローカルアルゴリズムに取って代わるように変更された。EMアルゴリズムは、近傍の情報が欠落しているローカルアルゴリズムである。この情報は、例えばPDFが通常推定することがより困難である異質の斑の場合のように、一般に必要である。さらに、収束はEMアルゴリズムでは一般に非常に遅く、式(2)の混合パラメータΘを推定できるようになるためにかなりの数の繰り返しを行うことができる。
【0184】
以前提示された第3の例示的実施形態において提示されている自動初期輪郭検出手順は、IVUS PDF情報に基づいている。EMアルゴリズムを使用できないような場合、非特許文献35においてPieczynskiによって、不完全データの混合パラメータ推定に以前提案された反復条件付き推定(ICE)アルゴリズムは一般に、EMアルゴリズムよりも通常迅速に収束する、より堅牢なアルゴリズムを示す。
【0185】
第1の例示的実施形態において提示されているPDF混合推定において、確率変数(X,Y)は完全データと呼ばれる。ここで、Yは[1,...,256]の値をとるグレーレベル(測定データ)であり、Xは、M個の異なる組織をモデル化するPDF混合に対して値[1,...,M]をとる組織ラベルである(隠された情報)。ピクセルの集合Sについて、Yの実現y=(ys)s∈SはIVUS BモードまたはRF画像であり、x=(xs)s∈Sは未知のピクセルラベルである。ラベルxsが独立していると見なされるので、EMアルゴリズムはローカルであると見なされる。ICEアルゴリズムにおいて、Xはマルコフ連鎖である。つまりPX(x)は、以下の近傍エネルギー関数に関して定義される。
【0186】
【数20】

【0187】
ここで、φはエネルギー関数であり、総和はピクセル近傍のすべてのペア<s,t>に対するものである。
【0188】
ICEアルゴリズムの第1のオペレーションは、例えばギブス抽出法の場合のように、
【0189】
【数21】

【0190】
をPDF混合パラメータΘの初期または以前の反復推定として、事後分布
【0191】
【数22】

【0192】
に従ってXのn個の実現(x1,...,xn)をシミュレートすることである(図23のオペレーション221)。事後分布は、既知のPX(X)および
【0193】
【数23】

【0194】
、さらにピクセルsの近傍Vsからベイズの定理を使用して以下のように計算される。
【0195】
【数24】

【0196】
隠されたデータのこれらのシミュレーションにより、完全データのn個の集合((x1,y),...,(xn,y))が使用可能である。
【0197】
次のオペレーション(図23のオペレーション222)は、
【0198】
【数25】

【0199】
の新しい値を計算することである。ここで、
【0200】
【数26】

【0201】
は完全データ(例えば最尤など)のパラメータ推定器である。図23のオペレーション221および222は一般に、混合パラメータ推定の収束が達成されるまで繰り返される(図23のオペレーション223)。
【0202】
レイリー混合の場合、Bモード画像の各層構造が、かなり多数のディフューザを持つ概ね均一の散乱組織であることが想定される。非特許文献36においてWagnerらによって開示されているように、レイリーPDFがその条件下で超音波信号のグレーレベル分布をモデル化するからである。同様の推論は、RF IVUS画像を記述するガウスPDFに適用される。
【0203】
罹患した患者の極めて異質の斑層の場合、レイリーまたはガウスPDFでは、ピクセルのグレーレベル分布をモデル化するには十分ではないこともある。 超音波Bモード包絡線またはRF信号のモデル化においてレイリーまたはガウス以外の分布が研究されてきた。これには、非特許文献37においてWearらによって開示されいるRician分布、非特許文献38においてDuttらによって開示されているK分布、および非特許文献39においてShankarによって開示されているNakagami分布がある。
【0204】
ICEアルゴリズムでは一般に、完全データのパラメータ推定が計算できる限り、モデル化される統計的分布の種類には制限がない。さらに、混合分布のタイプのモデルが必要な場合、非特許文献40においてDelingnonらによって開示されているように、一般化ICEアルゴリズム(GICE)を使用することができる。GICEは一般に、様々な数およびタイプの統計的分布からなる混合のパラメータ推定を提供する。
【0205】
ここで、本発明による方法および装置の第5の非限定的な例示的実施形態について説明される。簡潔にするため、この第5の例示的実施形態および第1の例示的実施形態の間の相違点のみが、以下で説明される。
【0206】
この第5の非制限的な例示的実施形態において、セグメンテーション高速マーチング法により、血管の境界層検出から得られた容積情報に加えて、4次元を定義するIVUSプルバックから取り出された動的データを処理して分析することができる。動的データは一般に、血管において発生する周期的脈動に関連する。
【0207】
心臓の動きと一体化された血管の大きさ(冠動脈IVUS)の周期的な変動については、文献において、IVUSボリュームの縦断図で一般に見ることができる、概して血管脈動によって引き起こされる鋸歯状のアーティファクトとして説明された。図16の矢印で示されるように、鋸歯状のアーティファクトはまた、心臓の動きがない場合であっても、大腿動脈のIVUSデータに存在する。例えば総大腿動脈において直径寸法は一般に、非特許文献41においてTaiらによって開示されているように、下肢末梢血管の障害を持つ患者で心臓拡張期の6.8mmから収縮期の7.2mmまで変化する。
【0208】
非特許文献42においてvon Birgelenらにより、このアーティファクトを除去するために心電図ゲーティング(ECGゲーティング)取得が提案された。これは一般に、von Birgelenらによって、また非特許文献43においてBruiningらによって開示されているように、通常は心臓拡張期の終わりになる(一般により正確で再現可能な容積測定をもたらす)心周期の正確な瞬間において、2D IVUSフレームを取得することによって達成される。
【0209】
ECGゲーティングのハードウェアは、一般に広く普及していないため、非ゲート型IVUSプルバックの周期的変化を除去するために、遡及的ゲーティングが提案された。非特許文献44においてNadkarmiらにより、半自動的に検出された内腔輪郭の変化の追跡が最初に提案された。
【0210】
非特許文献45においてde Winterらによって開示されているように、もう1つの方法では、前処理段階に計算された輪郭特徴の周期的変動を探索した。最新の遡及的ゲーティングの提案されている方法は、低反響性であるより大きい収縮期内腔が一般に画像の平均グレーレベル値を減少させると言明する非特許文献46におけるZhuらによる画像平均グレーレベル値の変動に基づいている。
【0211】
一部の測定は、周期的な血管の変動で行うことができる。斑圧迫が血管の横断面コンプライアンスに関連することは、非特許文献47においてShawらによって実証された。さらに、非特許文献48においてTakanoらによって開示されているように、収縮期と拡張期の測定の間の内腔横断面領域(CSA)の相異は、厚い繊維状の頭頂部からなるかまたは完全に繊維質の白斑よりも、通常多脂質の核を持ちコラーゲン量の不十分な薄い繊維状の頭頂部からなる黄斑のほうが、はるかに大きいものであった。
【0212】
したがって、周期的脈動は、取得がECGゲート型である場合に一般に失われる血管壁の体積変化に関する情報を含んでいる。非ゲート型取得からの血管脈動情報は保持され、心周期の別の瞬間に、3Dで血管壁を再現するために使用することができる。血管壁のこの4次元の再現により、心周期の特定の瞬間に3D画像セットで行われた測定について容積の精度と再現性を達成することができる。
【0213】
血管壁の4D再現を実行するには、各2S IVUSフレームからの検出された境界は最初に、様々な壁脈動の位相に分類される必要がある。このステップは、検出された境界から計算された測定で周期性成分を探索することによって行うことができる。
【0214】
図17は、前述の半自動PDFベースの高速マーチング法から得られたセグメンテーション結果から計算された内腔面積を示している。周期的変動は明らかであり、これらの再現可能な測定で評価することができる。しかし、この情報がIVUSプルバックのセグメンテーションに役立つよう使用されるように、境界検出プロセスに壁脈動評価を含めることも可能である。
【0215】
壁脈動評価は、初期輪郭計算手順(図24のオペレーション231)中に開始し、境界検出が終了したときに詳細化することができる。次に、壁脈動は通常、例えば収縮期、収縮期の初め、および収縮期の終わりなど、位相の個別の数に分割され(図24のオペレーション232)、各壁脈動の位相にラベルが割り当てられる(図24のオペレーション233)。プルバック2D IVUSフレームは次に、分類され、対応する脈動位相ラベルに割り当てられる(図24のオペレーション234)。
【0216】
図17に示されるように、内腔面積は、周期的脈動の情報を含んでいる。さらに、隣接フレーム間の面積変動は一般に、分類を定義するために使用される。脈動は通常定期的であるため、周期的脈動の情報は、個々のIVUS画像の初期輪郭計算における予想される脈動の変動に従って、初期サブセットテンプレート158を変形するために使用される(図22のオペレーション215)。後に続くフレームへの脈動位相ラベルの割り当てはさらに、定期情報を利用することもできる。
【0217】
初期化プロセスの終わりに、各2D IVUSフレームは壁脈動位相ラベルで識別される。しかし、セグメンテーションプロセスの終わりに、さらに正確な内腔面積が計算されるので、これらのラベルは変化することがある。したがって、初期ラベルはそれらの初期値に従って、面積差測定の変動、および周期的変動による期待値に調整可能である(図24のオペレーション235)。
【0218】
この脈動評価により、4Dデータセットは、特定の心臓位相ラベルに関連付けられているすべてのIVUS 2Dフレームからなり、血管の脈動の様々な位相に対応する3Dデータセットに分類される(図24のオペレーション236)。次に、容積(境界)測定は、これらの別個の3Dデータセットに対して行うことができる(図24のオペレーション237)。
【0219】
本発明は、その非限定的な例示的実施形態により上記で説明されているが、本発明の精神および特性を逸脱することなく添付の特許請求の範囲内で任意に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1】本発明の例示的な実施形態による層の境界を検出するためのセグメンテーション方法に使用される画像データにおいて血管の様々な層を表す2D IVUSフレーム図である。
【図2】図1に示される血管の1つの不規則な形状の層を表すもう1つの2D IVUSフレーム図である。
【図3】IVUS画像データに存在するグレーレベルおよび層ごとに検出された確率密度関数の混合を示すグラフである。
【図4】層の境界を検出する方法のオペレーションを示すIVUS画像データから生成された縦断図である。
【図5】点Aにおいて図4の縦断図と交差する2D IVUSフレーム図である。
【図6】図1に示すフレームのような複数の2D IVUSフレームから生成されたシミュレーションIVUS画像データを概略的に示す流れ図である。
【図7A】セグメント化された2D IVUSフレームに従って再現されたシミュレーション血管を示す断面図である。
【図7B】図6に示す方法によって生成され、図7Aのシミュレーション血管を示す2D IVUSフレーム図である。
【図7C】図7Bの2D IVUSフレーム図のセグメンテーション結果を、確率密度関数に基づく3D高速マーチング法によって検出された境界と共に示す2D IVUSフレーム図である。
【図7D】図7Bの2D IVUSフレーム図のセグメンテーション結果を、3D勾配高速マーチング法によって検出された境界と共に示す2D IVUSフレーム図である。
【図8A】セグメント化された2D IVUSフレームに従って再現されたシミュレーション血管を示すもう1つの断面図である。
【図8B】図6に示す方法によって生成され、図8Aのシミュレーション血管を示す2D IVUSフレーム図である。
【図8C】図8Bの2D IVUSフレーム図のセグメンテーション結果を、確率密度関数に基づく3D高速マーチング法によって検出された境界と共に示す2D IVUSフレーム図である。
【図8D】図8Bの2D IVUSフレーム図のセグメンテーション結果を、3D勾配高速マーチング法によって検出された境界と共に示す2D IVUSフレーム図である。
【図9A】図1に示すフレーム図と類似した2D IVUSフレーム図である。
【図9B】図9Aの2D IVUSフレーム図のセグメンテーション結果を、確率密度関数に基づく3D高速マーチング法によって検出された境界と共に示す2D IVUSフレーム図である。
【図9C】図9Aの2D IVUSフレーム図のセグメンテーション結果を、3D勾配高速マーチング法によって検出された境界と共に示す2D IVUSフレーム図である。
【図10A】図1に示すフレーム図と類似した2D IVUSフレーム図である。
【図10B】図10Aの2D IVUSフレーム図のセグメンテーション結果を、確率密度関数に基づく3D高速マーチング法によって検出された境界と共に示す2D IVUSフレーム図である。
【図10C】図10Aの2D IVUSフレーム図のセグメンテーション結果を、3D勾配高速マーチング法によって検出された境界と共に示す2D IVUSフレーム図である。
【図11】確率密度関数に基づく高速マーチング法に従って検出された血管層の容積再現を示す縦断図である。
【図12A】シミュレーションRF画像データ上に血管の様々な層を表す2D IVUSフレーム図である。
【図12B】図12AのRF画像データへのセグメンテーション結果を、確率密度関数に基づく3D高速マーチング法によって検出された境界と共に示す2D IVUSフレーム図である。
【図13A】高速マーチング法を使用して層の境界を検出するための伝搬領域の第1の例を示す詳細な概略図である。
【図13B】高速マーチング法を使用して層の境界を検出するための伝搬領域のもう1つの例を示す詳細な概略図である。
【図14A】通常の2D IVUSフレームに関してアンダーサンプリングされ、本発明の第2の例示的な実施形態に従って使用することができる2D IVUSフレーム図である。
【図14B】通常の2D IVUSフレームに関してアンダーサンプリングされるが、図14Aに示す2D IVUS図よりも高い解像度でアンダーサンプリングされるもう1つの2D IVUSフレーム図である。
【図14C】通常の2D IVUSフレームに関してアンダーサンプリングされるが、図13Bに示す2D IVUS図よりも高い解像度でアンダーサンプリングされるもう1つの2D IVUSフレーム図である。
【図14D】図14Aから図14Cに示す2D IVUS図よりも高い解像度の通常の2D IVUSフレーム図である。
【図15】本発明の第3の例示的な実施形態による方法において層の境界を検出するための血管のテンプレート領域を示す詳細な概略図である。
【図16】血管の脈動により通常生じる鋸歯状のアーティファクトを示すIVUS画像データの断面縦断図である。
【図17】本発明の第5の例示的な実施形態による、確率密度関数に基づく3D高速マーチング法によって検出されたセグメンテーションから得られた層領域を示すグラフである。
【図18】本発明の第1の例示的な実施形態による初期化輪郭を決定する方法を示す流れ図である。
【図19】本発明の第1の例示的な実施形態による生体内IVUSデータ取得および処理装置を示すブロック図である。
【図20】本発明の第2の例示的な実施形態による、低解像度セグメンテーション結果から生成された伝搬接触面を初期化するIVUS方法を示す流れ図である。
【図21】本発明の第2の例示的な実施形態による、低解像度での広範な伝搬領域から高解像度での縮小伝搬領域への探査方法を示す流れ図である。
【図22】本発明の第3の例示的な実施形態による、層の初期接触面を自動的に見出すテンプレート領域検索方法を示す流れ図である。
【図23】本発明の第4の例示的な実施形態による、反復条件付き推定に基づく確率密度関数混合パラメータの自動推定方法を示す流れ図である。
【図24】本発明の第5の例示的な実施形態による、高速マーチング法の境界検出セグメンテーションプロセスにおいて層の脈動評価を使用する方法を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0221】
1 IVUSデータシリーズを取得する超音波振動子
2 ピクセルマトリクスで画像をデジタル化するデジタイザ
3 IVUS 2D画像を格納するメモリ
4 EMアルゴリズムおよび高速マーチング法を実行する計算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層体における層の境界を推定する画像セグメンテーションの方法において、
前記多層体の画像データを提供するステップであって、前記画像データは複数の画像要素を表すステップと、
セグメント化する前記画像データの領域に対応する複数の初期接触面を判別するステップと、
セグメント化する前記領域に対応する前記初期接触面を並行して伝搬し、これにより前記多層体の前記層の前記境界を推定するステップであって、前記初期接触面を伝搬するステップは、前記画像要素の少なくとも1つの特徴を記述する確率関数に基づく高速マーチングモデルを使用するステップを含むステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
各初期接触面を判別するステップは、所定の関数のゼロレベルとして前記初期接触面を定義するステップを含み、
各初期接触面を伝搬するステップは、速度関数に従って所定の関数を移動するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項3】
前記多層体は、多層血管であり、
画像データを提供するステップは、IVUS画像データを使用するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項4】
前記画像要素はピクセルを含み、前記高速マーチングモデルは、前記画像データの領域ごとに前記ピクセルのカラーマップを推定する確率密度関数に基づくことを特徴とする請求項1に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項5】
前記画像要素はピクセルを含み、前記高速マーチングモデルは、前記画像データの領域ごとに前記ピクセルのカラーマップを推定する勾配関数に基づくことを特徴とする請求項1に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項6】
各初期接触面を判別するステップは、
前記IVUS画像データの縦断面の初期化輪郭を手動でトレースするステップと、
前記IVUS画像データの交差するIVUS 2Dフレームに前記初期化輪郭の参照点を転置するステップと、
前記IVUS 2Dフレームの転置された参照点から初期接触面を定義するステップと
を備えることを特徴とする請求項3に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項7】
前記初期接触面を定義するステップは、参照点を通過する接触面から縮小された輪郭をトレースするステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項8】
初期化輪郭を手動でトレースするステップは、複数の初期化輪郭をトレースするステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項9】
前記初期化輪郭の参照点を転置するステップは、複数の初期化輪郭から参照点を転置するステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項10】
前記画像要素は、各々カラーマップを有するピクセルを含み、
高速マーチング法を使用するステップは、確率密度関数の混合を使用して前記IVUS画像データのIVUS 2Dフレームでセグメント化する前記各領域のピクセルのカラーマップを推定する段階を含むことを特徴とする請求項3に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項11】
前記確率密度関数は、レイリー確率密度関数を含むことを特徴とする請求項10に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項12】
前記確率密度関数は、ガウス確率密度関数を含むことを特徴とする請求項10に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項13】
確率密度関数の混合を使用するステップは、ピクセルのグレーレベルの発現確率値を決定するステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項14】
グレーレベル確率密度関数の混合を使用するステップは、期待値最大化アルゴリズムを介して混合パラメータを繰り返し見出すステップを含み、
a)前記カラーマップの測定値および前記混合パラメータの以前の推定を所与として費用関数を計算するステップと、
b)前記混合パラメータの新しい推定を分析的に評価するために前記費用関数を最大化するステップと、
c)前記混合パラメータの以前の推定および前記混合パラメータの前記新しい推定が異なっている場合、前者を後者に初期化するステップと、
d)前記混合パラメータの以前の推定が前記混合パラメータの前記新しい推定と同じになるまで、ステップa)からc)を繰り返すステップと
を備えることを特徴とする請求項10に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項15】
前記初期接触面を伝搬するステップは、到着時刻関数アルゴリズムを構築するステップを含み、
a)前記初期接触面の速度関数を前記確率関数に関して定義するステップと、
b)最小の到着時刻を有する接触面の点を選択することにより前記接触面を伝搬するステップと、
c)前記接触面の点の近傍の到着時刻および速度関数を計算するステップと、
d)初期接触面を伝搬する前記ステップがセグメント化する前記領域を渡ってすべて伝搬するまでステップa)からc)を繰り返すステップと
を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項16】
ステップa)からc)を繰り返すステップは、初期接触面を伝搬する前記ステップが定常になるまで実行されることを特徴とする請求項15に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項17】
前記近傍は、前記最小到着時刻を有する前記接触面の点の周囲に位置する多数のピクセルを含むことを特徴とする請求項15に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項18】
IVUS画像データを提供するステップは、多層血管内でIVUS画像データ取得ツールを装備したカテーテルをプルバックするステップを含むことを特徴とする請求項3に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項19】
IVUS画像データを提供するステップは、
a)IVUSデータを取得するステップと、
b)ピクセルマトリクスで前記IVUSデータからの画像データをデジタル化するステップと、
c)前記ピクセルマトリクスを2D IVUSフレームに格納するステップと、
d)前記確率関数を形成する確率密度関数の混合パラメータの推定を計算するステップと
を備えることを特徴とする請求項3に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項20】
IVUS画像データを提供するステップは、
a)生体内2D IVUSフレームを取得するステップと、
b)前記IVUS画像データの縦断面で初期化輪郭をトレースすることによりセグメント化された輪郭を生成し、前記セグメント化された輪郭に前記初期化輪郭の参照点を転置するステップと、
c)前記セグメント化された輪郭に画像形成モデルを適用して、シミュレートされた2D IVUSフレームを生成するステップと
を備えることを特徴とする請求項3に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項21】
画像形成モデルを適用するステップは、
a)音響インピーダンス変動関数を前記セグメント化された輪郭に適用するステップと、
b)前記音響インピーダンス変動関数を極座標で表すステップと、
c)極座標の前記音響インピーダンス変動関数を2D畳み込み演算子を介して極広がり関数で処理して、極無線周波数画像を生成するステップと、
d)前記無線周波数画像を極Bモード画像で表現するステップと、
e)前記極Bモード画像をデカルト座標で表現することにより、前記シミュレートされた2D IVUSフレームを生成するステップと
を備えることを特徴とする請求項20に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項22】
多層体における層の境界を推定する画像セグメンテーションの方法であって、
a)前記多層体の画像データを提供するステップであって、前記画像データは複数の画像要素を表すステップと、
b)セグメント化する前記画像データの領域に対応する複数の初期接触面を判別するステップと、
c)前記領域をセグメント化する前記領域に対応する前記初期接触面を並行して伝搬し、前記多層体の前記層の前記境界を推定するステップであって、前記初期接触面を伝搬するステップは、前記画像要素の少なくとも1つの特徴を記述する勾配関数に基づく高速マーチングモデルを使用するステップを含むステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項23】
前記画像要素は、グレーレベルを有するピクセルを含み、前記高速マーチングモデルは、前記画像データの領域ごとに前記ピクセルのグレーレベル勾配関数に基づいていることを特徴とする請求項22に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項24】
IVUS画像データを提供するステップは、前記IVUS画像データの初期解像度をIVUS 2Dフレームのl解像度レベルでアンダーサンプリングするステップを含み、各解像度レベルは、前記IVUS画像データの前記初期解像度の2l分の1である請求項3に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項25】
高速マーチングモデルに従って前記初期接触面を伝搬するステップは、
a)残りのl解像度レベルの中で1番低い解像度レベルの画像セグメンテーション結果を取得するために、前記IVUS画像データの確率関数を推定するステップと、
b)前記セグメンテーション結果を残りのl解像度レベルの中で2番目に低い解像度レベルにマップするステップと、
c)前記第1の最低解像度レベルが前記IVUS画像データの前記初期解像度レベルになるまでステップa)を繰り返し、ステップb)を繰り返すステップと
を備えることを特徴とする請求項24に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項26】
IVUS画像データを提供するステップは、前記IVUS画像データの初期スケールからIVUS 2Dフレームのlスケールレベルを生成するステップを備え、各スケールレベルは、前記IVUS画像データの前記初期スケールの2l×2l部分の関数であることを特徴とする請求項3に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項27】
高速マーチングモデルに従って前記初期接触面を伝搬するステップは、
a)残りのlスケールレベルの中で1番高いスケールレベルの画像セグメンテーション結果を取得するために前記IVUS画像データの確率関数を推定するステップと、
b)前記セグメンテーション結果を、残りのlスケールレベルの中で2番目に高いスケールレベルにマップするステップと、
c)前記第1の最高スケールレベルが前記IVUS画像データの前記初期スケールレベルになるまでステップa)を繰り返し、ステップb)を繰り返すステップと
を備えることを特徴とする請求項35に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項28】
複数の初期接触面を判別するステップは、
a)前記IVUS画像データから連続する2D IVUSフレームのサブセットを選択するステップと、
b)中間層領域の初期接触面を生成して多層血管の中間層を推定するステップと、
c)前記中間層領域からの血管の側面層の初期接触面を探索するステップと、
d)前記側面層の尤度マップを計算し、前記マップからの側面層領域を拡大するステップと、
e)前記サブセットの各連続2D IVUSフレームで前記中間層領域および前記側面層領域を適合させるステップとを備える請求項3に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項29】
グレーレベル確率密度関数の混合を使用するステップは、パラメータ推定アルゴリズムを介して混合パラメータを繰り返し見出すステップを含み、
a)事後分布に従って隠されたデータ情報の実現をシミュレートするステップと、
b)パラメータ推定器により前記混合パラメータの推定を計算するステップと、
c)前記混合パラメータの収束までステップa)およびb)を繰り返すステップと
を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項30】
脈動する多層血管の層の境界を推定する画像セグメンテーションの方法であって、
a)脈動する多層血管のIVUS画像データを提供するステップと、
b)セグメント化する前記IVUS画像データの領域に対応する初期接触面を判別するステップと、
c)前記IVUS画像データの壁脈動を調整可能脈動位相ラベルで個別の数の位相に分割するステップと、
d)前記脈動位相ラベルを前記IVUS画像データの2D IVUSフレームに割り当てるステップと、
e)前記位相に従って前記IVUS画像データを分割するステップと、
f)セグメント化する前記領域ごとに前記IVUS画像データで確率密度関数の混合を並行して推定することにより高速マーチングモデルに従って、および前記位相の各々に従って、前記初期接触面を伝搬するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項31】
前記初期接触面を伝搬した後に前記割り当てられた脈動位相ラベルを調整するステップを備えることを特徴とする請求項30に記載のセグメンテーションの方法。
【請求項32】
多層体における層の境界を推定する画像セグメンテーションの方法であって、
a)前記多層体の画像データを提供するステップであって、前記画像データは複数の画像要素を表すステップと、
b)セグメント化する前記画像データの領域に対応する初期接触面を判別するステップと、
c)セグメント化する領域ごとに、(i)画像要素の少なくとも1つの特徴を記述する確率関数に基づく前記初期接触面の伝搬のための速度関数を同時に計算するステップと、(ii)初期接触面を伝搬する時間関数をマップするステップを備える、高速マーチングモデルに従って前記初期接触面を伝搬するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項33】
多層体における層の境界を推定することにより画像をセグメント化するためのデータ収集システムであって、
a)画像データを提供するための変換器を含むカテーテルであって、前記画像データは複数の画像要素を表すカテーテルと、
b)データ収集ツールであって、
i.前記画像データをデジタル化するための変換器と通信するデジタイザと、
ii.前記デジタル化された画像データを受信して格納するためのメモリと、
iii.前記層の各々について、前記画像要素の少なくとも1つの特徴を記述する確率関数を推定するための計算器と、
iv.前記推定された確率関数に基づく高速マーチングモデルを使用することにより前記デジタル化された画像データの前記層の前記境界を同時に推定するために前記メモリおよび前記計算器と通信するプロセッサと
を含むことを特徴とするデータ収集ツールと、を備えることを特徴とするシステム。
【請求項34】
前記画像データは、BモードIVUS画像を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項35】
前記画像データは、RF IVUS画像を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像セグメンテーションの方法。
【請求項36】
前記前記高速マーチングモデルは前記画像データのピクセルのグレーレベル分布を推定する確率関数に基づくことを特徴とする請求項1に記載の画像セグメンテーションの方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−512862(P2007−512862A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538623(P2006−538623)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【国際出願番号】PCT/CA2004/001970
【国際公開番号】WO2005/048190
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(505100506)サントル・オスピタリエ・ドゥ・リュニヴェルシテ・ドゥ・モントリオール (3)
【出願人】(506162895)ウニヴェルシテ・ドゥ・モントリオール (1)
【Fターム(参考)】