説明

自動安全爪

【課題】より優れた柔軟性があり、自動交換システムにより、たった1つのグリップ部材を備えた、異なるタイプの工具を交換する。
【解決手段】工具解放位置と工具固定位置とを有し、工具1が不用意に保持機構3から落下することを防止するための安全装置4と、安全装置4を駆動するためのエネルギーを付与可能な駆動手段17と、駆動手段17にエネルギーを付与するためのエネルギー付与手段14とを備え、保持機構3に保持し、そのような工具1を保持機構3から交換するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持機構で保持する、交換可能な工具に関する。この工具は、保持機構から誤って脱落することを阻止する安全装置を備える。この安全装置は解放位置と固定位置を有する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、例えば、欧州特許第049714号公報で公知である。この公報によれば、工具は、表面から突出し、保持機構のキャビティに係合する安全部材を備える。保持機構のクランプ力が除去されると、安全部材は工具の脱落を阻止する。プッシュボタンが操作された後でのみ、安全部材が収縮し、工具を、保持機構から、その長手方向にほぼ直交する方向に取り外すことが可能である。クレームには、プッシュボタンとして実現可能な駆動部材が列挙されている。しかしながら、駆動部材は、エネルギーを、安全装置を収縮させる動きには変換できない。
【0003】
工具の交換を自動化する場合、工具を保持機構から取り外すためにマニプレータが使用される。安全装置を有する、従来技術に係る工具では、この安全装置を、保持機構から、その長手方向にほぼ直交する方向に工具を取り外すことができるように操作しなければならない。また、マニプレータは、工具をグリップして保持するだけでなく、安全装置を操作するグリップ部材を備えなければならない。
【0004】
幾つかのグリップ部材が既に公知であり、それらはオペレータが操作するのと同様に安全装置を機械的に操作する。そのようなグリップ部材の欠点は、異なるタイプの工具を取り扱う際に柔軟に対応できないというところにある。そのようなグリップ部材では、プッシュボタンで公知の位置に配置された工具を操作できるだけである。いずれのタイプの工具にも変更可能とするため、ロボットが他の工具に交換可能とするグリップ部材を変更しなければならない。
【0005】
【特許文献1】欧州特許第049714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より優れた柔軟性があり、自動交換システムにより、たった1つのグリップ部材を備えた、異なるタイプの工具を交換する交換可能な工具を提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、安全装置を駆動するための駆動手段と、前記駆動手段にエネルギーを付与するためのエネルギー付与手段とに特徴を有する交換可能な工具によって達成される。交換可能な工具に駆動手段を設けることにより、マニピュレータのグリップにより、例えば、プッシュボタンを駆動するための特別な装置は最早備える必要がない。これら駆動手段は、エネルギー付与手段によってエネルギーを付与され、そのエネルギーは、工具解放位置から工具固定位置に、又は、保持機構に工具を固定するために工具解放位置から工具固定位置へと安全装置を移動させる動作へと変換される。
【0008】
本発明に係る工具の好ましい実施形態では、前記駆動手段は、工具を取り外すために、工具固定位置から工具解放位置へと安全装置を駆動し、保持機構で工具を固定するために、工具解放位置から工具固定位置へと安全装置を駆動する電気モータを備える。そのような実施形態では、前記エネルギー付与手段は、前記電気モータに電流を供給する。この電流は、例えば、マニピュレータのグリップにより、あるいは、保持機構を介して容易に提供される。
【0009】
前記駆動手段は、前記電気モータによって駆動し、前記安全装置に連結されたねじ軸を備えるのが好ましい。このねじ軸により、電気モータの回転を直線運動に変換することができ、例えば、プッシュボタンを使用する工具で有効である。
【0010】
本発明に係る工具の他の実施形態では、前記駆動手段は、保持機構から工具を取り外すために、工具固定位置から工具解放位置へと安全装置を駆動し、保持機構に工具を固定するために、工具解放位置から工具固定位置へと安全装置を駆動する電磁石を備える。
【0011】
本発明のさらに他の実施形態では、前記駆動手段は、例えば、垂直の角度をで、駆動力を切り替えるトランスミッションを備える。工具及び保持機構の形状のため、駆動手段は、安全装置の動作に必要とされる方向と同一直線上の駆動方向に、必ずしも配置されるとは限らない。例えば、くさびを使用することにより、駆動手段の方向は他の方向に変換することができる。これにより、駆動手段は、工具を異なる場所へと配置することができる。トランスミッションの他の例は、トゥースラックギア(tooth-rack gear)トランスミッション、レバートランスミッション、及び、ギアトランスミッションである。
【0012】
前記エネルギー付与手段は、エネルギーを受け、そのエネルギーを駆動手段に伝える駆動手段に連結されたコネクタを備える。エネルギーは、例えば、ロボットのグリップから受けることができ、ロボットは、工具を把持した後にエネルギーを供給し、マニピュレータが保持機構から工具を取り外すことができるように、駆動手段によって安全装置を工具解放位置に搬送する。
【0013】
本発明に係る工具の他の好ましい実施形態では、駆動手段は、安全装置に接続された空気圧又は水圧シリンダを備える。一般に、空気圧又は水圧は、保持機構で使用でき、駆動手段によって安全装置を操作するのに使用することもできる。
【0014】
前記エネルギー付与手段は、駆動手段にエネルギーを付与するために、圧縮空気又は圧縮液体をシリンダに供給するコネクタを備える。例えば、クリップは、工具に接続することができ、安全装置を操作可能な空気配管を有する。これにより、工具にグリップを連結した後、安全装置は安全性を増大させるように操作することができる。
【0015】
本発明に係る工具のさらに他の好ましい実施形態では、エネルギー付与手段及び駆動手段は、弾性手段を備える。弾性手段は、保持機構に工具を挿入することにより、引っ張られてエネルギーを蓄えるのが好ましく、その弾性エネルギーは安全装置を駆動するために解放される。工具を保持機構に挿入したとき、工具にはマニピュレータによって既に力が付与されている。この力の一部は、エネルギーとして弾性手段に蓄えることができ、安全装置を作動させる後工程で使用することが可能である。この弾性エネルギーの解放は、例えば、グリップにより、あるいは、ピエゾ素子等の小型の電子アクチュエータに小電流を供給することにより行われる機械的な動作のような制御手段によって制御できる。
【0016】
本発明は、さらに、
交換可能な工具を提供し、
前記工具を把持し、
安全装置を工具解放位置へと移動させるためのエネルギー付与手段によってエネルギーを付与可能な駆動手段にエネルギーを付与し、
前記工具を保持機構から取り除くことにより、保持機構から工具を交換するための方法に関する。
【0017】
また、本発明は、
交換可能な工具を提供し、
保持機構に、その長手方向に対してほぼ直角に工具を挿入し、
安全装置を工具固定位置に移動させるためにエネルギー付与手段によってエネルギーを付与可能な駆動手段にエネルギーを付与することにより、工具を保治機構に挿入するための方法。
【0018】
さらに、前記エネルギー付与手段は、エネルギーを付与可能な駆動手段にエネルギーを付与するために、小電流、圧縮流体、あるいは、弾性エネルギーを提供するのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、添付図面に従って説明する。
【0020】
図1は、保持端2を備えた工具1を示す。この保持端2は、工具1を保持する保持機構3に挿入される。安全部材4が工具1から突出し、保持機構3のキャビティ5に係合するように設けられている。これにより、クランプ力が解放されても、工具1が保持機構3から落下することを阻止される。保持機構3内へと収縮するように安全部材4を駆動した後でのみ、保持機構3から工具1を取り外すことができる。
【0021】
図2は、本発明に係る第1実施形態の工具10の部分断面図を示す。この工具10も、保持機構3内に挿入可能で、キャビティ5に係合する保持端2及び安全部材4を有する。
【0022】
さらに、工具10は、スプリング11からなる駆動及び付勢手段を備え、それはプッシャー12によって圧縮可能である。スプリング11の基部はカム13によって位置決めされ、圧電素子14に連結されている。
【0023】
保持機構3(図3参照)内に工具10を挿入する際、プッシャー12は、工具10の保持端2へと移動し、そこでスプリング11を圧縮し、エネルギーを蓄える。スプリング11の弾性エネルギーは、後工程で安全部材4を駆動するために使用できるように蓄えられる。
【0024】
図4では、工具10が保持機構3から取り外されている。まず、保持機構3のクランプ力が除去され、その後、カム13が収縮してスプリング11の弾性エネルギーが消失するように、圧電素子14が通電によって駆動する。弾性エネルギーはくさび15を下方へと駆動し、安全部材4のくさび面16に係合する。ここで、スプリング11は、保持機構3から工具10を取り外すことができるように、工具10の保持端2へと安全部材を収縮させる。保持機構3から工具を取り外すと、プッシャー12がスプリング11の張力を解放するように上動可能となる。安全部材4を直接付勢するスプリング17は、保持機構3から工具10を取り外した後、くさび15を上方へと駆動するように、安全部材4を再び外方へと押圧し、圧電素子14を不活性化することにより、工具10は、図2に示すように、元の状態へと導かれる。
【0025】
また、安全部材は、位置を変える代わりに、回転させることにより、工具固定位置から工具解放位置へと移動する、回転可能な安全部材として具体化してもよい。
【0026】
図5及び6は、本発明に係る第2実施形態の工具20を示す。図5は、工具固定位置での安全部材4を示し、図6は、工具解放位置での安全部材4を示す。
【0027】
工具20には、ピストン22が配設されたシリンダ21が設けられている。このピストン22は、安全部材4に連結されている。ピストン22には、シリンダ21に連通する開口23が設けられている。
【0028】
ここで、工具20を保持機構3から取り外さなければならないとき、チューブ24を開口23(図6参照)に挿入する。チューブを挿入した後、シリンダ21に圧縮空気を供給してピストンを押圧し、安全部材4を工具固定位置から工具解放位置へと移送する。
【0029】
図7は、本発明に係る第3実施形態の工具30を示す。この工具30は、安全部材4の一部がピストン32として機能するシリンダ31を有する。工具30は、その本体36内に、保持して持ち上げることができるように連結手段37を有する。例えば、工具30を保持して持ち上げるために、ロッド33を連結手段37に螺合することができる。ロッド33には、溝35、次いでシリンダ31に連通する溝34が設けられている。また、ピストン32は、圧縮空気又は圧縮流体を供給することにより、安全部材4を工具固定位置から工具解放位置へと搬送するように動作する。
【0030】
また、シリンダ31には熱膨張可能なポリマーを収容することも可能である。溝35でポリマーを膨張させることにより、安全部材を駆動できる。例えば、熱又は電流を使用することにより、ポリマーを膨張させることが可能である。
【0031】
図8は、本発明に係る第4実施形態の工具40を示す。この工具も又安全部材4を有する。さらに、工具には、安全部材4に連結されたねじ軸42を駆動する電気モータ41が設けられている。モータ41を駆動することにより、安全部材4は、工具固定位置と工具解放位置の間を移動可能である。
【0032】
図9は、本発明に係る第5実施形態の工具50を示す。この工具50は、その保持端2に、くさび状要素52を駆動する電磁石51を有する。このくさび状要素は、安全部材4に表出する傾斜面53に係合する。
【0033】
電磁石51が駆動すると、くさび状要素が外方に押し出され、傾斜面53に係合する。このくさび伝動により、電磁石の垂直方向の動きが水平方向の動きへと変換され、安全部材4が工具固定位置から工具解放位置へと移送される。
【0034】
図示した実施形態では、安全部材は、工具の保持端の側面から突出する。また、安全部材は、本発明に係る工具の上部又は他のいかなる場所にも配置することができ、駆動させることが可能である。
【0035】
さらにまた、本発明と組み合わせて、安全部材には、手動操作するためのプッシュボタンを設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】安全装置及び保持機構を有する工具の概略図を示す。
【図2】第1の位置に於ける、本発明の第1実施形態の断面図を示す。
【図3】図2とは異なる位置での断面図を示す。
【図4】図2とは異なる位置での断面図を示す。
【図5】本発明に係る工具の第2実施形態の断面図を示す。
【図6】図5とは異なる位置での断面図を示す
【図7】本発明に係る工具の第3実施形態を示す。
【図8】本発明の第4実施形態の断面図を示す。
【図9】本発明の第5実施形態の断面図を示す。
【符号の説明】
【0037】
1…工具
2…保持端
3…保持機構
4…安全部材
5…キャビティ
10…工具
11…スプリング
12…プッシャー
13…カム
14…圧電素子
15…くさび
16…くさび面
17…スプリング
20…工具
21…シリンダ
22…ピストン
23…開口
30…工具
31…シリンダ
32…ピストン
33…ロッド
34…溝
35…溝
36…本体
37…連結手段
40…工具
41…電気モータ
50…工具
51…電磁石
52…くさび状要素
53…傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持機構に保持するための交換可能な工具であって、
工具解放位置と工具固定位置を有し、工具が保持機構から誤って落下することを阻止するための安全装置と、
前記安全装置を駆動するための、エネルギーを付与可能な駆動手段と、
前記駆動手段にエネルギーを付与するためのエネルギー付与手段と、
を備えたことを特徴とする工具。
【請求項2】
前記駆動手段は、保持機構から取り外すか、あるいは、工具解放位置から保持機構に固定する工具固定位置へと移送するために、前記安全装置を、工具固定位置から工具解放位置へと駆動するための電気モータを備えた請求項1に係る工具。
【請求項3】
前記駆動手段は、電気モータによって駆動し、前記安全装置に連結されたねじ軸を備えた請求項2に係る工具。
【請求項4】
前記駆動手段は、保持機構から取り外すために、工具固定位置から工具解放位置に安全装置を駆動するか、あるいは、保持機構に固定するために、工具解放位置から工具固定位置に安全装置を駆動するための電磁石を備えた請求項1に係る工具。
【請求項5】
前記駆動手段は、前記保持機構から取り外すために、安全装置を、工具固定位置から工具解放位置と駆動し、又は、前記保持機構に固定するために、安全装置を、工具解放位置から工具固定位置へと駆動するための膨張可能なポリマーを備えた請求項1に係る工具。
【請求項6】
前記駆動手段は、前記保持機構から取り外すために、安全装置を、工具固定位置から工具解放位置と駆動し、又は、前記保持機構に固定するために、安全装置を、工具解放位置から工具固定位置へと駆動するための機構を備えた請求項1に係る工具。
【請求項7】
前記駆動手段は、垂直を含むある角度で駆動力を切り替えるためのトランスミッションを備えた請求項2から6のいずれか1項に係る工具。
【請求項8】
前記エネルギー付与手段は、エネルギーを受け、駆動手段に伝えるために、駆動手段に接続されたコネクタを備えた請求項2から6のいずれか1項に係る工具。
【請求項9】
前記駆動手段は、前記安全装置に接続された気圧又は水圧シリンダを備えた請求項1に係る工具。
【請求項10】
前記エネルギー付与手段は、前記駆動手段にエネルギーを付与するために、圧縮空気又は加圧流体をシリンダに供給するコネクタを備えた請求項9に係る工具。
【請求項11】
前記エネルギー付与手段及び前記駆動手段は、弾性手段を備えた前記請求項のうち、いずれか1項に係る工具。
【請求項12】
前記弾性手段は、エネルギーを蓄えるために保持機構への挿入時に引っ張られ、前記弾性エネルギーは、前記安全装置を駆動するために解放される請求項11に係る工具。
【請求項13】
制御信号に基づいて弾性エネルギーの解放を制御する制御手段を備えた請求項11又は12に係る工具。
【請求項14】
前記制御手段は、引っ張られた弾性手段を解放するためにカムを移動させるピエゾ素子を備えた請求項13に係る工具。
【請求項15】
前記請求項のいずれか1項に係る交換可能な工具を提供し、
前記交換可能な工具をグリップし、
安全装置を工具解放位置に移動させるためにエネルギー付与手段によってエネルギーを付与可能な駆動手段にエネルギーを付与し、
前記交換可能な工具を、保持機構から取り外す、
保持機構から工具を交換するための方法。
【請求項16】
前記請求項13又は14に係る交換可能な工具を提供し、
前記工具を保持機構に挿入し、
安全装置を工具固定位置に移動させるためにエネルギー付与手段によってエネルギーを付与可能な駆動手段にエネルギーを付与する、
工具を保持機構に挿入するための方法。
【請求項17】
前記エネルギー付与手段は、エネルギーを付与可能な駆動手段にエネルギーを付与するために、電流、加圧流体、又は、弾性エネルギーを提供する請求項15又は16に係る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−20062(P2008−20062A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−145425(P2007−145425)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(504056462)ウィラ・ベスローテン・フェンノートシャップ (6)
【氏名又は名称原語表記】WILA B.V.
【Fターム(参考)】