説明

自動搬送車駆動システム

【課題】電気二重層キャパシタの漏れ電流を抑制しながら、自動搬送車の停止時間内に確実に満充電にする。
【解決手段】充電ステーション2A,2Bに自動搬送車1が停止し、そのモータ駆動用電源である電気二重層キャパシタ11に接続された受電端子10Bに、充電用電源3の充電端子10Aを接続した状態で、キャパシタ11の出力電圧を測定する電圧計5、電圧計5により測定した前記出力電圧及びキャパシタ11の満充電時の出力電圧から、キャパシタ11の出力電圧降下量を演算し、該出力電圧降下量及びキャパシタ11の静電容量並びに所定充電時間から充電電流を演算するとともに、充電用電源3への指令値を演算する演算部7を有する制御装置4を備えた。キャパシタ11への充電電流値を、キャパシタ11の特性のばらつき並びに自動搬送車1の使用状況の差異及び変更等に対応する適正な電流値に自動的に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場内で荷物の運搬用に使用される無人の自動搬送車を駆動する駆動システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場内の所定経路に沿って荷物を運搬する無人の自動搬送車のモータ駆動用電源としては、自動搬送車の長時間走行を可能にするために、絶対エネルギー量が大きく大容量の鉛電池等の二次電池が使用されるのが一般的である。
このような鉛電池等の二次電池を用いた自動搬送車駆動システムは、8〜10時間程度の自動搬送車の走行を可能にするものではあるが、大容量である二次電池の重量が大きいため自動搬送車全体の重量が増大してしまうとともに、その充電時間が非常に長くなるため、充電のために自動搬送車を長時間にわたって停止させる必要がある。
【0003】
これに対して、自動搬送車側にモータ駆動用電源としての電気二重層キャパシタ及び該キャパシタに接続された受電用接続端子を備えるとともに、工場内の適宜位置に設置した充電ステーション側に充電用電源及び充電端子を備え、荷物の積み降ろし等の際の自動搬送車の停止時に地上ステーション側の充電端子と自動搬送車側の受電用接続端子とを接触結合させることにより、短時間で充電を行うことができるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1のような自動搬送車駆動システムは、モータ駆動用電源として、非常に大きな静電容量を有し急速充放電特性に優れた電気二重層キャパシタを使用しているため、軽量化することができるとともに、荷物の積み降ろし等の作業時における自動搬送車の停止時間を利用して短時間で充電を完了することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平7−163016号公報(図1、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような電気二重層キャパシタを使用した自動搬送車駆動システムは、所定の荷物を運搬し、この荷物の積み降ろし等の所定作業を行う時間である所定停止時間内に充電を行うことを想定しているため、予め定めた一定の電流で充電を行っている。
したがって、特許文献1の自動搬送車駆動システムは、上述の特徴を有するものであるが、電気二重層キャパシタの特性のばらつき並びに自動搬送車の使用状況の差異及び変更等にフレキシブルに対応させて、荷物の積み降ろし等の際の自動搬送車の停止時間内に、キャパシタの漏れ電流を抑制しながら、電気二重層キャパシタを確実に満充電にすることができないものである。
【0006】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、電気二重層キャパシタへの充電電流値を、電気二重層キャパシタの特性のばらつき並びに自動搬送車の使用状況の差異及び変更等に対応する適正な電流値に自動的に変更することにより、電気二重層キャパシタのエネルギーロス(漏れ電流)を抑制しながら、自動搬送車の停止時間内に確実に満充電にすることができる自動搬送車駆動システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自動搬送車駆動システムは、前記課題解決のために、工場内の所定経路に沿って荷物を運搬する無人の自動搬送車側にモータ駆動用電源としての電気二重層キャパシタ及び該キャパシタに接続された受電端子を備えるとともに、工場内の所定位置に設置した充電ステーション側に充電用電源及び前記受電端子と接触結合する充電端子を備えてなる自動搬送車駆動システムであって、前記充電ステーションに前記自動搬送車が停止し、前記充電端子を前記受電端子に接触結合させた際に前記電気二重層キャパシタの出力電圧を測定する電圧計と、該電圧計により測定した前記出力電圧及び前記電気二重層キャパシタの満充電時の出力電圧から、前記電気二重層キャパシタの出力電圧降下量を演算し、該出力電圧降下量及び前記電気二重層キャパシタの静電容量並びに所定充電時間から充電電流を演算するとともに、前記充電用電源への指令値を演算する演算部を有する制御装置とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る自動搬送車駆動システムによれば、工場内の所定経路に沿って荷物を運搬する無人の自動搬送車側にモータ駆動用電源としての電気二重層キャパシタ及び該キャパシタに接続された受電端子を備えるとともに、工場内の所定位置に設置した充電ステーション側に充電用電源及び前記受電端子と接触結合する充電端子を備えてなる自動搬送車駆動システムであって、前記充電ステーションに前記自動搬送車が停止し、前記充電端子を前記受電端子に接触結合させた際に前記電気二重層キャパシタの出力電圧を測定する電圧計と、該電圧計により測定した前記出力電圧及び前記電気二重層キャパシタの満充電時の出力電圧から、前記電気二重層キャパシタの出力電圧降下量を演算し、該出力電圧降下量及び前記電気二重層キャパシタの静電容量並びに所定充電時間から充電電流を演算するとともに、前記充電用電源への指令値を演算する演算部を有する制御装置とを備えたので、電気二重層キャパシタの出力電圧を電圧計により実測して電圧降下量を求め、この電圧降下量及び電気二重層キャパシタの静電容量並びに所定充電時間から充電電流を演算し、この充電電流となるように充電用電源を制御するため、電気二重層キャパシタの特性のばらつき並びに自動搬送車の使用状況の差異及び変更等があっても、電気二重層キャパシタへの充電電流値を適正な電流値に自動的に変更することができる。
よって、電気二重層キャパシタの特性のばらつき並びに自動搬送車の使用状況の差異及び変更等にフレキシブルに対応しながら、適正な充電電流値に自動的に変更して電気二重層キャパシタのエネルギーロス(漏れ電流)を抑制しながら、自動搬送車の停止時間内に確実に満充電にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。
図1は本発明の実施の形態に係る自動搬送車駆動システムの全体構成の一例を示す概略平面図、図2は充電ステーションに停止した自動搬送車に対して充電を行っている状態を示すブロック図、図3は自動搬送車の速度パターンの一例を示す図である。
【0010】
図1に示す自動搬送車駆動システムは、例えば磁気ガイドテープにより形成された工場内の所定経路Rに沿って、前記ガイドテープの位置を検出しながら自走して荷物を運搬する無人の自動搬送車1,…、所定経路Rの途中に設けられた、充電端子10A及び充電用電源3等からなる充電ステーション2A,2B、充電ステーション2A,2Bの位置に設置された、荷物の積み降ろしを行う図示しない積込テーブルリフタ又は降しテーブルリフタ、並びに、各機器の動作を制御するとともに後述する演算部で求めた充電電流になるように定電流電源である充電用電源3を制御する制御装置4等により構成される。
【0011】
充電ステーション2A,2Bの設置位置には積込テーブルリフタ又は降しテーブルリフタがあり、これらの位置に自動搬送車1が来ると、自動搬送車1は停止して位置決めされ、積込テーブルリフタ又は降しテーブルリフタにより荷物の積み降ろし作業が行われる。
そして、このような作業が行われる時間に相当する自動搬送車1の自動搬送車1の停止時間を利用して、充電用電源3により自動搬送車1のモータ駆動用電源への充電が行われる。
【0012】
図2に示すように、自動搬送車1は、その基体に、モータ駆動用電源としての電気二重層キャパシタ11、電気二重層キャパシタ11に接続された、前記充電端子10Aと接触結合する受電端子10B、電気二重層キャパシタ11に直列に接続されたコンバータ12、ドライバ14及びモータ15、ドライバ14を制御するコントローラ13、モータ15に連結された駆動輪16,16、並びに、従動輪17,17等を備えている。
なお、モータ15は減速機及びブレーキを備えており、コンバータ12は、モータ15がDCモータである場合はDC−DCコンバータであり、モータ15がACモータである場合はDC−ACコンバータである。
【0013】
また、充電用電源3と接続される充電端子10Aは、自動搬送車1側の受電端子10Bと接触結合を行うことができるとともに、この結合を解除することができるように、制御装置4により制御されるシリンダ9により、受電端子10Bに近づく方向及び離れる方向へ移動することができる。
なお、接触結合する充電端子10A及び受電端子10Bは、電気的に接続される一対のコネクタであってもよい。
【0014】
自動搬送車1が充電ステーション2A又は2Bに停止して、図2のように充電端子10Aが受電端子10Bと接触結合した状態で、電圧計5が電気二重層キャパシタ11の出力電圧Voを測定し、この測定値がA/D変換器6によりA/D変換され、この値を基に、演算部7により後述するように充電用電源3への指令値が演算され、この指令値がD/A変換器8によりD/A変換されて充電用電源3へ外部指令電圧が与えられる。
よって、このように外部指令電圧により制御された充電電流が、充電用電源3から充電端子10A及び受電端子10Bを経由して電気二重層キャパシタ11へ供給される。
【0015】
図3に示す速度パターンで自動搬送車1が動作しているとすると、自動搬送車1は63秒間で50m走行し、充電ステーション2A又は2Bで15秒間停止する。
したがって、シリンダ9による充電端子10A及び受電端子10Bの接触結合及び該係合の解除にかかる時間並びに電圧計5による電気二重層キャパシタ11の出力電圧Voの測定時間及び演算部7による演算時間等を考慮して、充電時間Tを、前記15秒の停止時間よりも短い、例えば13秒に設定することができる。なお、このような充電時間Tの設定は、制御装置4により自動搬送車1の動作パターンがわかるため、自動搬送車1の停止時間から所定時間(例えば2秒)を減算した値を自動的に定めることができる。
【0016】
ここで、電気二重層キャパシタ11の満充電における出力電圧Vfが54Vであり、電圧計5により測定した電気二重層キャパシタ11の出力電圧Voが46Vであったとすると、電気二重層キャパシタ11の出力電圧降下量Vd=Vf−Vo=54−46=8Vとなる。
また、電気二重層キャパシタ11の静電容量Cが60Fであるとすると、上述のとおり充電時間Tを13秒に設定しているので、この時間で満充電とするための充電電流Iは、I=C・Vd/T=60・8/13≒37.0Aとなる。
定電流電源である充電用電源3において、外部指令電圧により充電電流を0〜50Aとすることができ、使用する外部指令電圧が0〜10Vであるとすると、制御装置4から充電用電源3への指令電圧VcをVc=(37/50)・10=7.4Vとすれば、37Aの充電電流により、電気二重層キャパシタ11を13秒間で満充電にすることができる。
【0017】
以上のような構成の自動搬送車駆動システムによれば、充電ステーション2A又は2Bにおいて、電気二重層キャパシタ11の出力電圧Voを電圧計5により実測して電圧降下量Vdを求め、この電圧降下量Vd及び電気二重層キャパシタ11の静電容量C並びに所定充電時間Tから制御装置4の演算部7により充電電流Iを演算し、この充電電流Iとなるように充電用電源3を制御する構成であるため、電気二重層キャパシタ11の特性のばらつき並びに自動搬送車1の使用状況の差異及び変更等があっても、電気二重層キャパシタ11への充電電流値を適正な電流値Iに自動的に変更することができる。
よって、電気二重層キャパシタ11の特性のばらつき並びに自動搬送車1の使用状況の差異及び変更等にフレキシブルに対応しながら、適正な充電電流値Iに自動的に変更して電気二重層キャパシタ11のエネルギーロス(漏れ電流)を抑制しながら、自動搬送車1の停止時間内に確実に満充電にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動搬送車駆動システムの全体構成の一例を示す概略平面図である。
【図2】充電ステーションに停止した自動搬送車に対して充電を行っている状態を示すブロック図である。
【図3】自動搬送車の速度パターンの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
R 所定経路
1 自動搬送車
2A,2B 充電ステーション
3 充電用電源
4 制御装置
5 電圧計
7 演算部
10A 充電端子
10B 受電端子
11 電気二重層キャパシタ(モータ駆動用電源)
15 モータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場内の所定経路に沿って荷物を運搬する無人の自動搬送車側にモータ駆動用電源としての電気二重層キャパシタ及び該キャパシタに接続された受電端子を備えるとともに、工場内の所定位置に設置した充電ステーション側に充電用電源及び前記受電端子と接触結合する充電端子を備えてなる自動搬送車駆動システムであって、
前記充電ステーションに前記自動搬送車が停止し、前記充電端子を前記受電端子に接触結合させた際に前記電気二重層キャパシタの出力電圧を測定する電圧計と、
該電圧計により測定した前記出力電圧及び前記電気二重層キャパシタの満充電時の出力電圧から、前記電気二重層キャパシタの出力電圧降下量を演算し、該出力電圧降下量及び前記電気二重層キャパシタの静電容量並びに所定充電時間から充電電流を演算するとともに、前記充電用電源への指令値を演算する演算部を有する制御装置と、
を備えたことを特徴とする自動搬送車駆動システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−110113(P2010−110113A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279850(P2008−279850)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】