説明

自動車のピラートリム

【課題】製造コストを抑えつつ、ピラートリムに衝撃吸収用リブを設けるとともにピラートリムの見栄えを向上する。
【解決手段】
リヤピラートリム7は、取付口11を有する板状のピラートリム本体9と、取付口11に着脱自在に取り付けられ、アンカーボルト22及びアンカーボルト22近傍を車室側から被う板状のサブトリム13とを備えている。サブトリム13裏面には、ピラートリム本体9に取付口11周縁部で係合する複数の係合片部37,39,41,45,47,49と、アンカーボルト22に先端部が近接するようにその対向位置に配置される衝撃吸収用の第1及び第2リブ57a,57bとがアンカーボルト22の締結方向に略沿うようにそれぞれ一体に立設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルトを挿通する挿通孔を有する自動車のピラートリムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、挿通孔を有するアンカーを車室内に露出するようにアンカーボルトによってピラーパネルに取り付け、上記アンカーの挿通孔に挿通したシートベルトの一端にベルト巻装装置が取り付けられるとともに、他端に固定具が取り付けられている。また、板状のアンカープレートをピラーパネルの車外側に溶着し、乗員の頭部がアンカーボルトに衝突した時にアンカープレートが屈曲変形することにより衝撃を吸収するようにしている。
【0003】
一方、特許文献2のように、側突時における乗員のヘッドインパクト対策用として、衝撃吸収用リブを有する格子部材を板状のピラートリム本体とは別体に成形して、該ピラートリム本体に取り付けたピラートリムが知られている。
【特許文献1】特開2005−59796号公報
【特許文献2】特開平10−53075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1及び特許文献2では、アンカープレートや格子部材をピラートリム本体とは別に製作するので、そのための製作装置が別途必要となり、製造コストが高くなる。また、アンカープレートをピラーパネルに溶着したり格子部材を別途製作してピラートリム本体へ取り付けるのに手間がかかる。
【0005】
そこで、上記アンカープレートや格子部材のような衝撃吸収部材を別途取り付けるのではなく、ピラートリム自体に衝撃吸収機能を持たせることが考えられる。例えば、上記特許文献2のような衝撃吸収用リブをピラートリム本体と一体に成形することが考えられるが、この場合、ピラートリム本体の形状によっては、車室側からかかる衝撃(ヘッドインパクト)の方向に対応する衝撃吸収用リブの突出方向とピラートリム本体の成形型の型閉じ・型開き方向とが平行にならず、ピラートリムを脱型するためにスライド型が必要になる等、成形型の型構造が複雑になり、製造コストが高くなる。
【0006】
また、上記特許文献1のようにアンカーを車室内に露出させるのではなく、見栄え上の観点等からアンカーをピラートリムで被って見えないようにすることがある。この場合、ピラートリムに挿通孔を形成し、一端にベルト巻装装置が取り付られるとともに、他端に固定具が取り付けられた状態のシートベルトを上記挿通孔に挿通させようとすると、該挿通孔は、上記固定具を挿通できる程度に大きく形成する必要がある。しかし、挿通孔を大きく形成すると、ピラートリムの見栄えが悪くなる。そこで、挿通孔を小さく形成するために、固定具が取り付けられる前のシートベルトを挿通孔に挿通させることが考えられる。しかしながら、通常、シートベルトへの固定具の取付けはピラートリム製造業者とは別のシートベルト製造業者によって行われるので、ピラートリム製造業者からシートベルト製造業者へ嵩の高い大きなピラートリムを輸送するための輸送コストが必要となり、このコストはピラートリムの製造コストとして加算され、その結果、ピラートリムが高価なものとなる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ピラートリムの製造コストの上昇を抑えつつ、ピラートリムに衝撃吸収用リブを設けるとともにピラートリムの見栄え向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、シートベルトを挿通する挿通孔が形成されたサブトリムをピラートリム本体に着脱自在に取り付けるとともに、該サブトリムに衝撃吸収用リブを立設したことを特徴とする。
【0009】
具体的には、本発明は、第1挿通孔を有するアンカーがアンカーボルトによってピラーパネルの車室側に取り付けられ、上記アンカーの第1挿通孔に挿通したシートベルトの一端にベルト巻装装置が取り付けられるとともに他端に固定具が取り付けられ、上記固定具が車体又は座席に取り付けられる自動車において、上記アンカー、アンカーボルト及びピラーパネルを車室側から被う樹脂製ピラートリムを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、本発明は、取付口を有する板状のピラートリム本体と、上記取付口に着脱自在に取り付けられ、上記アンカーボルト及び該アンカーボルト近傍を車室側から被う板状のサブトリムとを備え、上記サブトリムには、上記シートベルトを挿通する第2挿通孔が形成され、上記サブトリム裏面には、上記ピラートリム本体に上記取付口周縁部で係合する複数の係合片部と、上記アンカーボルトに先端部が近接するようにその対向位置に配置される複数の衝撃吸収用リブとがアンカーボルトの締結方向に略沿うようにそれぞれ一体に立設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シートベルトを挿通する第2挿通孔の周囲がピラートリム本体とは別体のサブトリムで構成されているので、第2挿通孔が小さくて固定具取付状態のシートベルトを挿通できない場合でも、嵩の低い小さなサブトリムだけをシートベルト製造業者へ輸送してシートベルトを固定具取付前に第2挿通孔に挿通させればよいので、嵩の高い大きなピラートリムを輸送する場合に比べて輸送コストを低減できる。したがって、その分ピラートリムの製造コストを抑えつつ、上記第2挿通孔を上記シートベルトの固定具よりも小さくでき、つまり、第2挿通孔はシートベルトを挿通できる開孔であればよいため、ピラートリムの見栄えを向上できる。
【0012】
また、衝撃吸収用リブが立設されたサブトリムがピラートリム本体と別体に形成されているとともに、上記衝撃吸収用リブの立設方向と略等しい方向にサブトリムの係合片部が立設されているので、サブトリムの成形の際、該サブトリムを成形型から容易に脱型できる。これにより成形型の型構造が簡素となり、製造コストを削減できる。
【0013】
また、衝撃吸収用リブの先端部が、アンカーボルトに近接するようにその対向位置に配置され、かつアンカーボルトの締結方向に略沿うように立設されているので、乗員の頭部がアンカーボルトに対応するサブトリムに衝突した時の衝撃を効果的に吸収できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るリヤピラートリム7(以下ピラートリム7という)を備えた自動車1の右側の後部座席3を示す斜視図であり、図2はピラートリム7を車室側から見た斜視図であり、図3はピラートリム7を車外側から見た裏面斜視図であり、図4は、ピラートリム7を車体(リヤピラーパネル5)に取り付けた状態の図3のA−A線相当断面図である。
【0016】
図1及び図4に示すように、上記後部座席3の右側上方の車体側面には、上下方向に延びるリヤピラーパネル5(以下ピラーパネル5という)が配設され、上記後部座席3の左側下部にはバックル15が設けられている。
【0017】
上記ピラーパネル5は、図4に示すように、金属製の上側ピラーパネル16の下端と金属製の下側ピラーパネル17の上端とが重合した重合部5aを有し、該重合部5aは互いに溶着されて構成されている。ピラートリム7は、図3に示すように、車室側に張り出すように湾曲した断面略への字状の板状ピラートリム本体9を備えている。該ピラートリム本体9は車体側面に略沿って延びる正面部9aを有し、該正面部9aの下端寄りには、略楕円形状の取付口11が車室側から見て左上方から右下方へ傾斜して形成されている。上記取付口11には、略楕円形状に形成された板状のサブトリム13が着脱自在に取り付けられている。このことが本発明の大きな特徴の1つとなっている。また、上記ピラートリム本体9の裏面には、左右両側縁に沿った方向や該方向に直交する方向に延びるリブ9bが複数突設されている。
【0018】
上記ピラーパネル5における上記重合部5aの車室側には、図4に示すように、樹脂製アンカー21とアンカーボルト22とが、上記サブトリム13に対応するように配置されている。具体的には、ピラーパネル5の重合部5aにはボルト挿通孔5bが形成され、ピラーパネル5の車室側には、該ボルト挿通孔5bに対応するように金属製ウェルドナット23が溶着されている。上記アンカー21の一端側には円形のボルト挿通孔18が形成されている一方、他端側にはスリット状の第1挿通孔19が形成されている。そして、上記ボルト挿通孔18にワッシャ24の筒部24aを挿入した状態でアンカーボルト22のねじ部22aを該筒部24a内に挿入し、該ねじ部22aを上記ウェルドナット23にねじ込んで該ねじ部22a先端をピラーパネル5のボルト挿通孔5bの車外側に突出させる。これにより、上記アンカー21は、ワッシャ24の筒部24aの回りを振り子のように回動できるようになっている。
【0019】
上記アンカー21の第1挿通孔19には、シートベルト25が挿通されている。図2に示すように、該シートベルト25の一端には、ベルト巻装装置27が取り付けられている一方、該シートベルト25の他端には、固定具29が取り付けられている。該固定具29は、図1に示すように、上記後部座席3の右側下部に取り付けられている。また、上記シートベルト25には、上記バックル15に差し込まれるタングプレート31が、該シートベルト25における位置を調整可能に設けられている。
【0020】
また、上記ピラートリム本体9裏面の取付口11周縁部には、図4に示すように、先端が取付口11内側方向に屈曲した断面略L字状の環状突出部12が全周に亘って一体に突設されている。
【0021】
図5は、サブトリム13の裏面を示す斜視図であり、図6は、ピラートリム7をピラーパネル5に取り付けた状態の図5のB−B線相当断面図である。なお、図6では、ピラーパネル5の図示を省略している。上記サブトリム13は、略楕円形板状のサブトリム本体13aを有し、該サブトリム本体13aをピラートリム本体9に取り付けた状態での下側寄りには、該サブトリム本体13aの長手方向に沿って細長く延びる第2挿通孔33が形成されている。上記サブトリム本体13aの上記第2挿通孔33の上側周縁部35aは、車外側に略直角に屈曲しているとともに、上記第2挿通孔33の下側周縁部35bは、車外側斜め上方に上記上側周縁部35aより長く突出するように屈曲して上記シートベルト25を案内している。また、上記サブトリム本体13a裏面周縁部には、ほぼ全周に亘って、周リブ53が突設されている。
【0022】
上記サブトリム本体13a裏面の長手方向に沿った図5の左側周縁部には、係合片部39,41が互いに離間して配置され、該裏面の長手方向両端には、係合片部37,45が配置されている。これら係合片部37,39,41,45は、上記ピラートリム本体9に上記取付口11周縁部で係合しているとともに、上記アンカーボルト22の締結方向に略沿うように一体に立設されている。また、上記係合片部37,39,41,45は、それぞれ、互いに平行に突出する略三角形状の2枚の板状側壁部37a、39a、41a,45aと、該両側壁部37a、39a、41a,45a間を連結する板状連結部37b、39b、41b,45bとからなる。上記各連結部37b、39b、41b,45bには、コの字状のスリット37d、39d、41d,45dが形成され、該スリット37d、39d、41d,45dにより囲まれる領域で可撓性爪部37c、39c、41c,45cが上記サブトリム本体13aの外側方向に出退可能に形成されている。
【0023】
そして、上記側壁部37a、39a、41a,45a及び上記連結部37b、39b、41b,45bは、上記アンカーボルト22の締結方向に略沿うように立設されている。
【0024】
また、上記サブトリム本体13a裏面の長手方向に沿った図5の右側周縁部には、板状の係合片部47,49が互いに離間して配置されており、これら係合片部47,49は、上記アンカーボルト22の締結方向に略沿うように立設され、該係合片部47,49の先端は、図4にも示すように車外側に向かって斜め下向きに突出している。上記係合片部47,49は、上記ピラートリム本体9の裏側に差し込まれることにより該ピラートリム本体9に上記取付口11周縁部で係合するようになっている。上記周リブ53は、上記係合片部47,49に対応する箇所で途切れており、途切れた端部は上記係合片部47,49の両側縁の基端に支持リブ55によって連結されるとともに、係合片部47,49の基端は、上記第2挿通孔33の下側周縁部35b(図5においてサブトリム本体13aの長手方向に延びる第2挿通孔33の右側縁部)に板状リブ51によって連結され、これら板状リブ51が上記係合片部47,49を補強している。詳しくは、上記支持リブ55は、サブトリム本体13aの周縁部から該サブトリム本体13aの内方に略コ字状に凹陥して形成され、上記係合片部47,49の基部は、該支持リブ55のサブトリム本体13aの長手方向に沿う部分の中間部に突設されている。そして、上記係合片部47,49に対応するサブトリム本体13aの周縁部13bは、内方に凹むことなく該サブトリム本体13aの周縁部に連続して形成されている(図4及び図5参照)。このように上記係合片部47,49が形成されることにより、該係合片部47,49と上記周縁部13bとの間に、サブトリム本体13aの外方に開放する空間部14が形成されている(図4参照)。
【0025】
さらに、上記サブトリム本体13a裏面における上記アンカーボルト22の対向位置には、該サブトリム本体13aの上側周縁部(図5の左側周縁部)に沿った略矩形板状の衝撃吸収用第1リブ57aと、該第1リブ57aに直交する2枚の略矩形板状の衝撃吸収用第2リブ57bとが、先端部が上記アンカーボルト22の頭部22bに近接するように配置されて該アンカーボルト22の締結方向に略沿って一体に立設されている。このことも本発明の大きな特徴の1つとなっている。上記第1リブ57aのサブトリム13の長手方向端部には、当該長手方向中間部よりも高く突出する突出部57cが形成されている。上記第2リブ57bのサブトリム13の幅方向内側端部には、幅方向外側よりも高く突出する突出部57dが形成されている。そして、上記第1リブ57a及び第2リブ57bの突出端部における上記突出部57c,57dによって囲まれた低い部分に、上記アンカーボルト22の頭部22bが接近して対応している。これにより、衝撃が突出部57c,57dに対応するサブトリム13に作用したとき、該突出部57c,57dがアンカーボルト22の頭部22bに当接しやすくなり、第1リブ57a及び第2リブ57bによる衝撃吸収範囲が拡大されるようになる。
【0026】
ここで、上記サブトリム13の成形方法について成形型の図面を省略して述べる。成形型は、上記サブトリム本体13aの表側を成形する可動型と、該サブトリム本体13aの裏側及び上記各係合片部37,39,41,45,47,49を成形する固定型とを備え、上記固定型には、上記係合片部37,39,41,45の爪部37c、39c、41c,45c及びスリット37d、39d、41d,45d、並びに上記係合片部47,49の空間部14を形成するためのスライドコアが設けられている。上記可動型及び固定型を型閉じして、両成形型によって形成されるキャビティに溶融樹脂材を射出充填する。該樹脂材が固化した後、可動型を型開き方向に移動させる。しかる後、スライドコアを後退させるとともに成形品であるサブトリム13を固定型から外れるように押し出してサブトリム13を脱型する。このとき、上記係合片部37,39,41,45の側壁部37a、39a、41a,45a、連結部37b、39b、41b,45b及び板状リブ51が略同一方向に立設されているため、サブトリム13を固定型から容易に脱型することができる。
【0027】
上記のように構成されたサブトリム13は、上記アンカーボルト22、該アンカーボルト22近傍及びピラーパネル5を車室側から被うように、上記ピラートリム本体9に取り付けられている。上記ピラートリム本体9の環状突出部12には、上記係合片部37,39,41,45,47,49が係合し、環状突出部12における6箇所の係合箇所が被係合部12aとなっている。
【0028】
上記のように構成されたピラートリム7をピラーパネル5に取り付けるには、まず、ピラートリム製造業者からサブトリム13をシートベルト製造業者に輸送する。そして、シートベルト製造業者が、一端にベルト巻装装置27が取り付けられているが、他端に固定具29、中間部にアンカー21及びタングプレート31が取り付けられていない状態のシートベルト25を上記アンカー21の第1挿通孔19に上記他端側から挿通する。続いて、シートベルト25の上記一端をサブトリム13の裏面側からサブトリム13の第2挿通孔33に挿通した後、タングプレート31に挿通し(取り付け)、しかる後上記他端に上記固定具29を取り付ける。そして、この状態のシートベルト25一式をシートベルト製造業者からピラートリム製造業者に輸送し、ピラートリム製造業者から、この輸送されてきたシートベルト25一式と、自己で製造したピラートリム本体9とを自動車メーカーに輸送する。一方、ピラートリム本体9は、ピラートリム製造業者が自動車メーカーに送る。そして、自動車メーカーの組立ラインにおいて、ベルト巻装装置27が上記アンカー21の車外側に位置するとともにタングプレート31及び固定具29が車室側に位置するように、該アンカー21をアンカーボルト22によってピラーパネル5に取り付ける。詳しくは、アンカー21のボルト挿通孔18にワッシャ24の筒部24aを挿入し、この状態でアンカーボルト22のねじ部22aを上記筒部24a内に挿入し、該ねじ部22aをウェルドナット23にねじ込んで該ねじ部22a先端をピラーパネル5のボルト挿通孔5aの車内側に突出させる。そして、ピラートリム本体9の取付口11に、ピラートリム本体9の裏側から表側へサブトリム13をシートベルト25上を移動させながら挿入通過させて該サブトリム13をピラートリム本体9の表側に位置付けした後、ピラートリム本体9をピラーパネル5に取り付ける。その後、上記サブトリム13の上記係合片部47,49をピラートリム本体9の上記取付口11に車内側から差し込んで、当該係合片部47,49が上記取付口11の環状突出部12に係合した状態で、サブトリム13全体をピラートリム本体9の取付口11に車室側から押し込む。これにより、上記係合片部37,39,41,45の爪部37c、39c、41c,45cが、上記環状突出部12に当接して弾性変形した後、元に復帰することにより、上記ピラートリム本体9に上記取付口11周縁部(被係合部12a)で係合する。このとき、上記第1及び第2リブ57a,57bの先端部がアンカーボルト22の頭部22bに近接するようにその対向位置に配置され、かつアンカーボルト22の締結方向に略沿うように立設された状態となっている。したがって、シートベルト25を装着した運転中の側突時等に乗員の頭部がアンカーボルト22に対応するサブトリム13に衝突した際、第1及び第2リブ57a,57bが変形して衝撃を効果的に吸収できる。
【0029】
したがって、本実施形態によれば、シートベルト25を挿通する第2挿通孔33の周囲がピラートリム本体9とは別体のサブトリム13で構成されているので、第2挿通孔33が小さくて固定具29及びタングプレート31を取り付けた状態のシートベルト25を挿通できない場合でも、嵩の低い小さなサブトリム13だけをシートベルト製造業者へ輸送してシートベルト25を固定具29及びタングプレート31の取付前に第2挿通孔33に挿通させればよく、嵩の高い大きなピラートリム7をシートベルト製造業者に輸送する場合に比べて輸送コストを低減できる。したがって、輸送コストを抑えつつ、上記第2挿通孔33を上記シートベルト25の固定具及びタングプレート31よりも小さくでき、つまり、第2挿通孔33はシートベルト25を挿通できる開孔であればよいため、上記ピラートリム7の見栄えを向上できる。
【0030】
また、衝撃吸収用の第1及び第2リブ57a,57bが立設されたサブトリム13がピラートリム本体9と別体に形成されているため、ピラートリム本体9とサブトリム13とは、それぞれ別の成形型で容易に成形できるとともに、サブトリム13には上記第1及び第2リブ57a,57bの立設方向と略等しい方向に係合片部37,39,41,45,47,49が立設されているので、サブトリム13を簡素な型構造の成形型で容易に成形でき、製造コストを削減できる。
【0031】
なお、本発明は、センターピラー部(Bピラー部)にも適用できる。
【0032】
また、上記実施形態では、シートベルト25のタングプレート31を、後部座席3に取り付けられたバックル15に着脱自在に取り付けるようにしたが、該バックル15は車体に取り付けるようにしてもよい。また、固定具29を、後部座席3ではなく、車体に取り付けるようにしてもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、サブトリム本体13a裏面に6つの係合片部37〜49が立設されていたが、係合片部の数は6つに限られず、複数であればよい。また、係合片部の形状も、上記係合片部37〜49の形状に限られず、アンカーボルト22の締結方向に略沿うように立設されたものであればよい。
【0034】
また、上記実施形態では、3つの第1及び第2リブ57a,57bが衝撃吸収用に立設されていたが、衝撃吸収用リブの数は3つに限られず、複数であればよい。また、衝撃吸収用リブの形状も、上記第1及び第2リブ57a,57bの形状に限られず、例えば格子状、蜂の巣状等の他形状でアンカーボルト22の締結方向に略沿うように立設されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、シートベルトを挿通する挿通孔を有する自動車のピラートリムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係るリヤピラートリムを備えた自動車の右側の後部座席を示す斜視図である。
【図2】シートベルトを挿入したリヤピラートリムを車室側から見た斜視図である。
【図3】リヤピラートリムを車外側から見た裏面斜視図である。
【図4】リヤピラートリムをリヤピラーパネルに取り付けた状態の図3のA−A線相当断面図である。
【図5】サブトリムの裏面を示す斜視図である。
【図6】リヤピラートリムをリヤピラーパネルに取り付けた状態の図5のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 自動車
3 後部座席
5 リヤピラーパネル(ピラーパネル)
7 リヤピラートリム(ピラートリム)
9 ピラートリム本体
11 取付口
13 サブトリム
19 第1挿通孔
21 アンカー
22 アンカーボルト
25 シートベルト
27 ベルト巻装装置
29 固定具
33 第2挿通孔
37,39,41,45,47,49 係合片部
57a 第1リブ(衝撃吸収用リブ)
57b 第2リブ(衝撃吸収用リブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1挿通孔を有するアンカーがアンカーボルトによってピラーパネルの車室側に取り付けられ、上記アンカーの第1挿通孔に挿通したシートベルトの一端にベルト巻装装置が取り付けられるとともに他端に固定具が取り付けられ、上記固定具が車体又は座席に取り付けられる自動車において、上記アンカー、アンカーボルト及びピラーパネルを車室側から被う樹脂製ピラートリムであって、
取付口を有する板状のピラートリム本体と、上記取付口に着脱自在に取り付けられ、上記アンカーボルト及び該アンカーボルト近傍を車室側から被う板状のサブトリムとを備え、
上記サブトリムには、上記シートベルトを挿通する第2挿通孔が形成され、
上記サブトリム裏面には、上記ピラートリム本体に上記取付口周縁部で係合する複数の係合片部と、上記アンカーボルトに先端部が近接するようにその対向位置に配置される複数の衝撃吸収用リブとがアンカーボルトの締結方向に略沿うようにそれぞれ一体に立設されていることを特徴とする自動車のピラートリム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−220713(P2009−220713A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67822(P2008−67822)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】