説明

自動車の内装用部材の取り付け構造および該構造を利用した内装トリム

【課題】内装用部材取付孔の位置精度や真円度が低くても内装用部材の取り付け位置精度を高くすることのできる、自動車の内装用部材の取り付け構造および該構造を利用した内装トリムを提供する。
【解決手段】内装用部材12には、柱状の取付部20を突設し、内装トリム14には、取付部20の直径よりも大きく形成された内装用部材取付孔34と、内装用部材取付孔34を臨む位置に設けられ、取付部20を位置決めする位置決め部材32とを形成する。この位置決め部材32は、内装用部材取付孔34に対面し、かつ、取付部20の先端面20aが当接され、先端面20aが固定具15で固定される当接面40と、内装用部材取付孔34から当接面40まで先端面20aをガイドするガイド面44aとを有しており、当接面40とガイド面44aとにより、取付部20の先端が嵌入する嵌入部50が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車内に取り付けられた内装トリムに、カップホルダーやアームレストなどの内装用部材を精度良く取り付ける構造および該構造を利用した内装トリムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、様々なユーザーの嗜好に適合させるため、年々、多様化・高品質化が進められていることにより、その車内には、様々なカップホルダーやアームレストなどの内装用部材が取り付けられるようになっており、このような内装用部材を取り付ける構造も数多く開発されている。
【0003】
内装用部材の取り付け構造1の一例として、図18に示すように、内装用部材2から適宜の箇所において突設された複数の筒状の取付部3と、内装用部材取付孔4が設けられた内装トリム5とを、内装トリム5の裏側から内装用部材取付孔4に挿通したネジ6で螺合する取り付け構造1が挙げられる(特許文献1)。
【0004】
特許文献1の取り付け構造1によれば、内装トリム5に設けられた内装用部材取付孔4の位置に応じて、内装トリム5に対する内装用部材2の位置決めをすることができる。
【特許文献1】特開2000−343997号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述したようにユーザーの嗜好が多様化している現在、同一車種に対して複数のグレードや複数のオプションパーツが用意されることが多く、ユーザーは、自分の嗜好にあったグレードやオプションパーツを選べるようになっている。このため、あるグレードでは内装トリムに取り付けられている内装用部材が、別のグレードでは取り付ける必要がないという場合が当然に生じる。
【0006】
このような場合、内装用部材2を取り付けるための内装用部材取付孔4が設けられた内装トリム5と、内装用部材取付孔4がない内装トリム5とを予め準備するのはコストアップの原因となることから、内装用部材取付孔4がない内装トリム5のみを準備しておき、必要に応じてプレスやエンドミル加工などといった二次加工によって内装用部材取付孔4を穿設するようにしている。
【0007】
しかし、二次加工で穿設した内装用部材取付孔4は、その位置精度が低くなるだけでなく、その断面が真円でなく歪んだ円となる(つまり、真円度が低い)おそれがあり、内装トリム5に設けられた内装用部材取付孔4の位置に応じて内装用部材2の位置が決まる特許文献1の内装用部材2の取り付け構造1では、内装トリム5に対して内装用部材2を精度良く取り付けることができないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、内装用部材取付孔の位置精度や真円度が低くても内装用部材の取り付け位置精度を高くすることのできる自動車の内装用部材の取り付け構造および該構造を利用した内装トリムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載した発明は、「自動車の内装用部材12を内装トリム14に取り付ける構造10であって、
内装用部材12には、柱状の取付部20が突設されており、
内装トリム14は、
取付部20の直径よりも大きく形成された取付部20挿通用の内装用部材取付孔34と、
内装用部材12が取り付けられる面の反対面において、内装用部材取付孔34を臨む位置に設けられ、内装トリム14に対する内装用部材12の位置決めを行うために、内装用部材取付孔34に挿通された取付部20を位置決めする位置決め部材32とを有しており、
位置決め部材32は、
内装用部材取付孔34に対面し、かつ、取付部20の先端面20aが当接されると共に、先端面20aが固定具15で固定される当接面40と、
内装用部材取付孔34から当接面40まで先端面20aをガイドするガイド面44a、44b、44cとを有しており、
当接面40とガイド面44a、44b、44cとにより、取付部20の先端が嵌入する嵌入部50が形成されている」ことを特徴とする自動車の内装用部材の取り付け構造10である。
【0010】
本発明によれば、内装用部材12に突設された柱状の取付部20を、取付部20の直径よりも大きく内装トリム14に形成された内装用部材取付孔34に挿通していくと、柱状の取付部20の先端面20aは、ガイド面44a、44b、44cによって当接面40にガイドされた後、当接面40とガイド面44a、44b、44cとで形成された嵌入部50に嵌入し、当接面40に当接する。これにより、取付部20の位置が決められ、同時に内装用部材12の内装トリム14に対する位置が決められる。
【0011】
このように、内装トリム14に対する内装用部材12の位置は、内装トリム14に必要に応じて設けられた内装用部材取付孔34の位置精度等とは関係なく、予め内装トリム14に設けられている位置決め部材32によって決められる。
【0012】
また、位置決め部材32の当接面40を取付部20の先端面20aに対して固定具15で固定することにより、位置決め部材32を介して内装用部材12を内装トリム14に固定することができるので、内装トリム14に取り付けられた内装用部材12に大きな衝撃が加わったとしても、その衝撃は内装トリム14の表面に直接加わることがない。このため、内装用部材12に大きな荷重が加わって内装トリム14の表面が破損するのを防止することができる。
【0013】
請求項2に記載した発明は、「自動車の内装用部材12を内装トリム14に取り付ける構造10であって、
内装用部材12には、内装用部材12から突設された柱状の基部太軸部60と、基部太軸部60の先端面60aから突設され、基部太軸部60よりも細く形成された柱状の先端細軸部62とを有する取付部20が設けられており、
内装トリム14は、
基部太軸部60の直径よりも大きく形成された取付部20挿通用の内装用部材取付孔34と、
内装用部材12が取り付けられる面の反対面において、内装用部材取付孔34を臨む位置に設けられ、内装トリム14に対する内装用部材12の位置決めを行うために、内装用部材取付孔34に挿通された取付部20を位置決めする位置決め部材32とを有しており、
位置決め部材32は、
内装用部材取付孔34に対面し、かつ、取付部20の先端細軸部62が嵌め込まれる嵌込孔64を有しており、基部太軸部60の先端面60aが当接される当接面40と、
内装用部材取付孔34から当接面40まで先端面60aをガイドするガイド面44a、44b、44cとを有しており、
嵌込孔64に嵌め込まれた先端細軸部62は位置決め部材32に固定されている」ことを特徴とする自動車の内装用部材の取り付け構造10である。
【0014】
本発明によれば、内装用部材12に突設された柱状の取付部20を、取付部20の基部太軸部60の直径よりも大きく内装トリム14に形成された内装用部材取付孔34に挿通していくと、取付部20の先端細軸部62が位置決め部材32に設けられた嵌込孔64に嵌め込まれた後、基部太軸部60の先端面60aが位置決め部材32の当接面40に当接する。これにより、取付部20の位置が決められ、同時に内装用部材12の内装トリム14に対する位置も決められる。
【0015】
このように、内装トリム14に対する内装用部材12の位置は、内装トリム14に必要に応じて設けられた内装用部材取付孔34の位置精度等とは関係なく、予め内装トリム14に設けられた位置決め部材32によって決められる。
【0016】
また、取付部20の先端細軸部62を位置決め部材32に固定することにより、位置決め部材32を介して内装用部材12を内装トリム14に固定することができるので、内装トリム14に取り付けられた内装用部材12に大きな衝撃が加わったとしても、その衝撃は内装トリム14の表面に直接加わることがない。このため、内装用部材12に大きな荷重が加わって内装トリム14の表面が破損するのを防止することができる。
【0017】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載の位置決め部材が複数箇所設けられている内装トリム14に関し、「取付部20の先端面20aあるいは60aが当接される当接面40に対応する内装トリム14の対応部位が、取付部20挿通用の内装用部材取付孔34形成部位となっている」ことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る内装トリム14よれば、内装用部材12を取り付ける必要がない場合は、内装用部材取付孔34のない状態で使用することができ、一方、内装用部材12を取り付ける必要がある場合は、二次加工により内装用部材取付孔34を設けることにより、内装用部材取付孔34の精度によらず、内装用部材12を内装トリム14に対して高い位置精度で取り付けることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、内装トリムに対する内装用部材の位置は、内装トリムに必要に応じて設けられた内装用部材取付孔の位置精度等とは関係なく、予め内装トリムに設けられた位置決め部材によって決められるので、必要に応じて二次加工により設けられた内装用部材取付孔の位置精度や真円度が低くても、位置決め部材を精度良く形成しておくことにより、内装トリムに対する内装用部材の取り付け位置精度を高くすることのできる自動車の内装用部材の取り付け構造および該構造を利用した内装トリムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を適用した自動車の内装用部材の取り付け構造10は、自動車の車内に取り付けられた内装トリムに、カップホルダーやアームレストなどの内装用部材を精度良く取り付けるための構造であり、以下に記載する実施例では、「トノカバー受け」を内装用部材の一例として内装トリムに取り付ける場合について、いくつかの実施例に分けて説明する。トノカバーとは、ハッチバック車やワゴン車などのトランクルームを覆い、トランクルームの荷物が外部から見えないようにするためのカバーのことをいい、トノカバー受けとは、このカバーを受けるための内装用部材12である。
【0021】
(第1の実施例)
図1は、本発明が適用された自動車の内装用部材12および内装トリム14を示す分解斜視図であり、図2は、図1のII−II矢視による断面を拡大した分解断面図であり、図3は、図2のIII−III矢視による断面を示した分解断面図である。
【0022】
本実施例に係る自動車の内装用部材の取り付け構造10(図1〜3)は、内装用部材12(=トノカバー受け)を自動車の車内に取り付けられる内装トリム14(=トランクルーム側壁)に固定具15で取り付ける構造である。以下、ネジを固定具15の代表例として説明する。もちろん、ネジに替えて、リベットや釘など他の材料を用いてもよい。
【0023】
また、説明の便宜上、図1中の水平方向を「左右方向X」、垂直方向を「上下方向Y」、および内装トリム14に内装用部材12を取り付ける方向、つまり、後述する内装用部材12の取付部20を内装トリム14に設けられた内装用部材取付孔34に挿入する方向を「挿入方向Z」という。
【0024】
内装用部材12は、ポリプロピレン(もちろん、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、金属など他の材質を用いてもよい)を射出成形して製造されており、内装用部材本体16と、基部18と、取付部20と、横方向補強部材22と、縦方向補強部材24と、内装トリム14の表面に当接する内装トリム当接部25とで一体に形成されている。
【0025】
内装用部材本体16には、内装用部材本体16から水平に延出された、図示しないトノカバーを載置するための載置部26と、載置したトノカバーを係止するための係止ピン28とが一体に形成されている。
【0026】
取付部20は、内装用部材本体16に一体に形成された基部18をベースとして内装用部材12から突設された円筒状の部材であり、取付部20の内径dは、ネジ15におけるネジ部の外径よりもやや小さく設定されている。なお、取付部20の形状は、中空の角柱状であってもよい。
【0027】
横方向補強部材22および縦方向補強部材24は、基部18に対する取付部20の取り付け強度を高めるため、取付部20を中心として放射状に設けられたリブである。
【0028】
内装トリム14は、自動車の内面に取り付けられる内張り材であり、内装用部材12と同様に、ポリプロピレン(もちろん、もちろん、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、金属など他の材質を用いてもよい)を射出成形して製造されており、内装トリム本体30と位置決め部材32と、内装トリム本体30に対する位置決め部材32の取り付け強度を高めるために設けられた補強部材33とで一体に形成されている。
【0029】
また、内装トリム14には、内装用部材12の取付部20を挿通するための内装用部材取付孔34が穿設されているが、射出成形によって製造された段階の内装トリム14には、この内装用部材取付孔34が形成されておらず、内装用部材12を取り付ける場合にのみ、プレスやエンドミル加工などといった二次加工によって内装トリム14に内装用部材取付孔34が穿設される。
【0030】
位置決め部材32は、内装トリム14に対する内装用部材12の位置決めを行うための部材であり、内装トリム14の裏面(内装用部材12が取り付けられる面と反対の面)において、内装用部材取付孔34を臨む位置に設けられている(なお、「内装用部材取付孔34を臨む位置」とは、「内装用部材取付孔34を囲む位置」をも含む概念である。)。
【0031】
また、位置決め部材32は、略角錐台形状に形成されており、この略角錐台形状の天面にあたる当接部36と、側面にあたるガイド部38とを有している。また、ガイド部38の底端(つまり、略角錐台形状の底)は、内装トリム本体30の裏面に一体的に接続されている。なお、位置決め部材32の形状は、略円錐台形状であってもよい。
【0032】
当接部36は、内装用部材取付孔34が設けられた場合、当該内装用部材取付孔34に対向する位置に配設されており、後述するように内装用部材12の取付部20の先端面20aに当接される板材である。また、当接部36における内装用部材取付孔34に対向する面(つまり、取付部20の先端面20aに当接される面)が当接面40となっている。また、当接部36には、当接面40と当接面40の反対側の面とを連通する貫通孔42が形成されており、貫通孔42にはネジ15が挿入される(詳細は後述する)。
【0033】
当接面40は、略正方形状(位置決め部材32が略円錐台形状である場合には、略円形状)に形成されており、その一辺の長さは、取付部20の先端面20aの直径よりもやや大きく形成されている。また、当接面40と内装トリム本体30との距離は、取付部20の先端面20aが当接面40に当接したとき、内装用部材12の横方向補強部材22の内装トリム側端縁22aや内装トリム当接部25の内装トリム側端縁25aが内装トリム本体30の表面(内装用部材12が取り付けられる側の面)に当接するように設定されている。
【0034】
ガイド部38は、上述したように、略角錐台形状(あるいは略円錐台形状)の位置決め部材32の側面にあたり、本実施例では、3つのガイド板38a、38b、38cを組み合わせて形成されている。このため、略角錐台形状を構成する4つの側面中の1面には、ガイド板が配設されていないことになる。なお、このようにしたのは、射出成型時における型抜きのし易さを考慮したものであり、射出成形後に4つ目の側面にガイド板を取り付け、位置決め部材32の略角錐台形状を構成する全ての側面にガイド板を配設するようにしてもよい。
【0035】
ガイド板38aは、図2に示すように、内装トリム14の裏面に向かって左側に配設されている。また、ガイド板38bは、図3に示すように、内装トリム14の裏面に向かって上側に配設されており、さらに、ガイド板38cは、内装トリム14の裏側に向かって下側に配設されている。
【0036】
ガイド板38a、38b、38cにおける内装用部材取付孔34を臨む(「内装用部材取付孔34を囲む」をも含む概念)面は、それぞれ取付部20の先端面20aをガイドするガイド面44a、44b、44cとなっている。
【0037】
これらガイド面44a、44b、44cについて詳述すると、ガイド板38aのガイド面44aは、図2に示すように、その一方端縁44a1が内装トリム本体30の裏面に接続されており、他方端縁44a2が当接面40に接続されている。また、ガイド面44aは、一方端縁44a1と他方端縁44a2との間における他方端縁44a2寄りの位置44a3で屈曲され、その断面が「ヘ字状」に形成されている。つまり、ガイド面44aは、当接面40に直交する直交面46aと、当接面40に向けて傾斜する傾斜面48aとで構成されている。
【0038】
ガイド面44bは、図3に示すように、その一方端縁44b1が内装トリム本体30の裏面に接続されており、他方端縁44b2が当接面40に接続されている。また、ガイド面44bは、一方端縁44b1と他方端縁44b2との間における他方端縁44b2寄りの位置44b3で屈曲され、その断面が「ヘ字状」に形成されている。つまり、ガイド面44bは、当接面40に直交する直交面46bと、当接面40に向けて傾斜する傾斜面48bとで構成されている。
【0039】
ガイド面44cは、その一方端縁44c1が内装トリム本体30の裏面に接続されており、他方端縁44c2が当接面40に接続されている。また、ガイド面44cは、他のガイド面44a、44bとは異なり、その断面は直線状に形成されている。つまり、ガイド面44cは、他のガイド面44a、44bとは異なり、当接面40に向けて傾斜する傾斜面だけで構成されている。
【0040】
ガイド面44a、44b、44cで囲繞された空間の断面は、当接面40に近づくにつれて小さくなっていき、当接面40の近傍で当接面40と同じになる。また、上述したように、当接面40の一辺の長さは、取付部20の先端面20aの直径よりもやや大きく形成されており、当接面40の近傍におけるガイド面44a、44b、44cで囲繞された空間は、ガイド面44a、44b、44cにガイドされた取付部20の先端部が嵌入する嵌入部50となる。
【0041】
次に、内装トリム14に内装用部材12を取り付ける手順について説明する。図4に示すように、射出成形された段階の内装トリム14には内装用部材取付孔34が設けられていないので、この内装トリム14に内装用部材12を取り付ける場合には、プレスやエンドミル加工などといった二次加工により、内装用部材取付孔形成部位Rに内装用部材取付孔34を穿設する。なお、穿設する内装用部材取付孔34の位置および真円度についての精度は、あまり高く設定する必要がなく、内装トリム14に対する内装用部材12の取付精度が1mm以下のオーダーであれば、数mmオーダーでよい。また、穿設する内装用部材取付孔34の大きさも内装用部材12の取付部20の断面よりも大きく形成されていれば高い精度は必要ない。
【0042】
穿設された内装用部材取付孔34に内装用部材12の取付部20を挿通すると、取付部20の先端面20aの周縁20bがいずれかのガイド面44a、44b、44cに当接する。そして、引き続き内装用部材12を内装トリム14に向けて移動させていくと、先端面20aの周縁20bはいずれかのガイド面44a、44b、44c上を摺動し、取付部20の先端面20aは、嵌入部50に近づいていき、最終的に嵌入部50に嵌入して当接面40に当接する。この段階で内装トリム14に対する内装用部材12の位置決めが完了する(図5、6参照)。
【0043】
そして、取付部20の先端面20aを当接面40に当接させた後、ネジ15を当接部36の貫通孔42から取付部20の内側にねじ込むことにより、取付部20の先端面20aと当接面40とを固定する。この段階で内装トリム14に対する内装用部材12の取付が完了する(図7、8参照)。
【0044】
このように、内装トリム14に対する内装用部材12の位置は、内装用部材12を取り付ける場合において内装トリム14に設けられた内装用部材取付孔34の位置精度等とは関係なく、予め内装トリム14に設けられた位置決め部材32によって決められる。このため、二次加工によって設けられた内装用部材取付孔34の位置精度や真円度が低くても、位置決め部材32を精度良く形成しておくことにより、内装トリム14に対する内装用部材12の取り付け位置精度を高くすることができる。
【0045】
また、位置決め部材32の当接面40を取付部20の先端面20aに対してネジ15で固定することにより、位置決め部材32を介して内装用部材12を内装トリム14に固定することができるので、内装トリム14に取り付けられた内装用部材12に大きな衝撃が加わったとしても、その衝撃は内装トリム14の表面に直接加わることがない。このため、内装用部材12に大きな荷重が加わって内装トリム14の表面が破損するのを防止することができる。
【0046】
なお、本実施例の変形例として、図9に示すように、内装トリム14の裏側に向かって下側に配設されたガイド板38cのガイド面44cの形状を、他のガイド面44a、44bと同様に、一方端縁44c1と他方端縁44c2との間における他方端縁44c2寄りの位置44c3で屈曲してその断面を「ヘ字状」に形成し、ガイド面44cを、当接面40に直交する直交面46cと、当接面40に向けて傾斜する傾斜面48cとで構成してもよい。この場合、当接面40、ガイド面44bの直交面46bおよびガイド面44cの直交面46cで囲繞された空間が、取付部20の先端が嵌入する嵌入部50となる。
【0047】
また、他の変形例として、図10に示すように、ガイド板38bのガイド面44bを当接面40に向けて傾斜する傾斜面としてもよい。この場合、当接面40、ガイド面44bおよびガイド面44cで囲繞された空間のうち当接面40の近傍部分が、取付部20の先端が嵌入する嵌入部50となる。
【0048】
さらに、他の変形例として、図11に示すように、ガイド板38bのガイド面44bを2箇所(44b3および44b4)で屈曲させることにより、直交面46b、傾斜面48b、および直交面46bと傾斜面48bとの間に配設され、当接面40に平行な平行面52bで構成し、同様にして、ガイド板38cのガイド面44cも直交面46b、傾斜面48b、および直交面46cと傾斜面48cとの間に配設され、当接面40に平行な平行面52cで構成してもよい。この場合、当接面40、ガイド面44bの直交面46bおよびガイド面44cの直交面46cで囲繞された空間が、取付部20の先端が嵌入する嵌入部50となる。
【0049】
上記変形例は、位置決め部材32の略角錐台形状の上下側面であるガイド板38b、38cを用いて説明したが、これらの変形例を略角錐台形状の左右側面にあるガイド板38aに適用することもできる。
【0050】
(第2の実施例)
第2の実施例に係る自動車の内装用部材の取り付け構造10(図12〜図13)は、第1の実施例と同じく、内装用部材12を自動車の車内に取り付けられる内装トリム14に取り付ける構造であるが、内装用部材12の取付部20の先端部が当接部36に設けられた嵌込孔64に嵌め込まれる点が第1の実施例と相違している。
【0051】
内装用部材12は、ポリプロピレン(もちろん、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、金属など他の材質を用いてもよい)を射出成形して製造されており、内装用部材本体16と、基部18と、取付部20と、横方向補強部材22と、縦方向補強部材24と、内装トリム14の表面に当接する内装トリム当接部25とで一体に形成されている。
【0052】
内装用部材本体16には、上述したように、内装用部材本体16から水平に延出された、図示しないトノカバーを載置するための載置部26と、載置したトノカバーを係止するための係止ピン28とが一体に形成されている。
【0053】
取付部20は、内装用部材本体16に一体に形成された基部18をベースとして内装用部材12から突設された段付きの円柱部材であり、内装用部材12から突設された円柱状の基部太軸部60と、基部太軸部60の先端面60aから突設され、基部太軸部60よりも細く形成された円柱状の先端細軸部62とで構成されており、基部太軸部60の先端面60aと先端細軸部62の側面とで段が形成されている。また、先端細軸部62の長さは、後述する位置決め部材32の当接部36の厚みよりも長く形成されている。なお、取付部20の形状は、角柱状であってもよい。
【0054】
横方向補強部材22および縦方向補強部材24は、基部18に対する取付部20の取り付け強度を高めるた、取付部20を中心として放射状に設けられたリブである。
【0055】
内装トリム14は、自動車の内面に取り付けられる内張り材であり、内装用部材12と同様に、ポリプロピレン(もちろん、もちろん、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、金属など他の材質を用いてもよい)を射出成形して製造されており、内装トリム本体30と位置決め部材32と、内装トリム本体30に対する位置決め部材32の取り付け強度を高めるために設けられた補強部材33とで一体に形成されている。
【0056】
また、内装トリム14には、内装用部材12の取付部20を挿通するための内装用部材取付孔34が穿設されているが、射出成形によって製造された段階の内装トリム14には、この内装用部材取付孔34が形成されておらず、内装用部材12を取り付ける場合にのみ、プレスやエンドミル加工などといった二次加工によって内装トリム14に内装用部材取付孔34が穿設される。
【0057】
位置決め部材32は、内装トリム14に対する内装用部材12の位置決めを行うための部材であり、内装トリム14の裏面(内装用部材12が取り付けられる面と反対の面)において、内装用部材取付孔34を臨む位置に設けられている(なお、「内装用部材取付孔34を臨む位置」とは、「内装用部材取付孔34を囲む位置」をも含む概念である。)。
【0058】
また、位置決め部材32は、略角錐台形状に形成されており、この略角錐台形状の天面にあたる当接部36と、側面にあたるガイド部38とを有している。また、ガイド部38の底端(つまり、略角錐台形状の底)は、内装トリム本体30の裏面に一体的に接続されている。なお、位置決め部材32の形状は、略円錐台形状であってもよい。
【0059】
当接部36は、内装用部材取付孔34が設けられた場合、当該内装用部材取付孔34に対向する位置に配設された板材であり、その略中央部には、取付部20の先端細軸部62が嵌め込まれる嵌込孔64が挿入方向Zに設けられている。また、前述したように、取付部20の先端細軸部62の長さは、当接部36の厚みよりも長く形成されているので、嵌込孔64に嵌め込まれた先端細軸部62の先端部は、嵌込孔64から露出するようになる。また、当接部36における内装用部材取付孔34に対向する面は、嵌込孔64に取付部20の先端細軸部62が嵌め込まれたとき、取付部20の基部太軸部60の先端面60aと当接する当接面40となっている。
【0060】
当接面40は、略正方形状(位置決め部材32が略円錐台形状である場合には、略円形状)に形成されており、その一辺の長さは、取付部20における基部太軸部60の先端面60aの直径よりもやや大きく形成されている。また、当接面40と内装トリム本体30との距離は、基部太軸部60の先端面60aが当接面40に当接したとき、内装用部材12の横方向補強部材22の内装トリム側端縁22aや内装トリム当接部25の内装トリム側端縁25aが内装トリム本体30の表面(内装用部材12が取り付けられる側の面)に当接するように設定されている。
【0061】
ガイド部38は、上述したように、略角錐台形状(あるいは略円錐台形状)の位置決め部材32の側面にあたり、3つのガイド板38a、38b、38cを組み合わせて形成されている。このため、略角錐台形状を構成する4つの側面中の1面には、ガイド板が配設されていないことになる。なお、このようにしたのは、射出成型時における型抜きのし易さを考慮したものであり、射出成形後に4つ目の側面にガイド板を取り付け、位置決め部材32の略角錐台形状を構成する全ての側面にガイド板を配設するようにしてもよい。
【0062】
ガイド板38aは、図12に示すように、内装トリム14の裏面に向かって左側に配設されている。また、ガイド板38bは、図13に示すように、内装トリム14の裏面に向かって上側に配設されており、さらに、ガイド板38cは、内装トリム14の裏側に向かって下側に配設されている。
【0063】
ガイド板38a、38b、38cの内装用部材取付孔34を臨む面は、それぞれ取付部20の先端面20aをガイドするガイド面44a、44b、44cとなっている。
【0064】
これらガイド面44a、44b、44cについて詳述すると、ガイド板38aのガイド面44aは、図12に示すように、その一方端縁44a1が内装トリム本体30の裏面に接続されており、他方端縁44a2が当接面40に接続されている。また、ガイド面44aは、一方端縁44a1と他方端縁44a2との間における他方端縁44a2寄りの位置44a3で屈曲され、その断面が「ヘ字状」に形成されている。つまり、ガイド面44aは、当接面40に直交する直交面46aと、当接面40に向けて傾斜する傾斜面48aとで構成されている。
【0065】
ガイド面44bは、図13に示すように、その一方端縁44b1が内装トリム本体30の裏面に接続されており、他方端縁44b2が当接面40に接続されている。また、ガイド面44bは、一方端縁44b1と他方端縁44b2との間における他方端縁44b2寄りの位置44b3で屈曲され、その断面が「ヘ字状」に形成されている。つまり、ガイド面44bは、当接面40に直交する直交面46bと、当接面40に向けて傾斜する傾斜面48bとで構成されている。
【0066】
また、ガイド面44cも同様に、その一方端縁44c1が内装トリム本体30の裏面に接続されており、他方端縁44c2が当接面40に接続されている。また、ガイド面44cは、一方端縁44c1と他方端縁44c2との間における他方端縁44c2寄りの位置44c3で屈曲され、その断面が「ヘ字状」に形成されている。つまり、ガイド面44cは、当接面40に直交する直交面46cと、当接面40に向けて傾斜する傾斜面48cとで構成されている。
【0067】
このように、ガイド面44a、44b、44cで囲繞された空間の断面は、当接面40に近づくにつれて小さくなっていき、当接面40の近傍で当接面40と同じになる。また、上述したように、当接面40の一辺の長さは、基部太軸部60の先端面60aの直径よりもやや大きく形成されている。
【0068】
次に、内装トリム14に内装用部材12を取り付ける手順について説明する。射出成形された段階の内装トリム14は、内装用部材取付孔34が設けられていないので、この内装トリム14に内装用部材12を取り付ける場合には、プレスやエンドミル加工などといった二次加工により、所定の位置に内装用部材取付孔34を穿設する。なお、穿設する内装用部材取付孔34の位置および真円度についての精度は、あまり高く設定する必要がなく、内装トリム14に対する内装用部材12の取付精度が1mm以下のオーダーであれば、数mmオーダーでよい。また、穿設する内装用部材取付孔34の大きさも内装用部材12の取付部20における基部太軸部60の断面よりも大きく形成されていれば高い精度は必要ない。
【0069】
穿設された内装用部材取付孔34に内装用部材12の取付部20を挿通すると、取付部20における先端細軸部62の先端面62aの周縁62bがいずれかのガイド面44a、44b、44cに当接する。そして、引き続き内装用部材12を内装トリム14に向けて移動させていくと、先端細軸部62の先端面62aの周縁62bが当該ガイド面44a、44bあるいは44c上を摺動することにより、先端細軸部62の先端は、当接部36に設けられた嵌込孔64に近づき、当接面40上を摺動して最終的に嵌込孔64に嵌入する(図14、15参照)。
【0070】
さらに、内装用部材12を内装トリム14に向けて移動させていくと、先端細軸部62の先端部が嵌込孔64から露出し、基部太軸部60の先端面60aが当接面40に当接する。この段階で内装トリム14に対する内装用部材12の位置決めが完了する(図16、17参照)。
【0071】
そして、嵌込孔64から露出した先端細軸部62の先端部に予め熱しておいたリベット工具70を押しつけることにより、先端細軸部62の先端部62cを変形させて締め付け頭72を形成する。締め付け頭72を形成することによって先端細軸部62が位置決め部材32に固定され、この段階で内装トリム14に対する内装用部材12の取付が完了する。
【0072】
このように、内装トリム14に対する内装用部材12の位置は、内装用部材12を取り付ける場合において内装トリム14に設けられた内装用部材取付孔34の位置精度等とは関係なく、予め内装トリム14に設けられた位置決め部材32によって決められる。このため、二次加工によって設けられた内装用部材取付孔34の位置精度や真円度が低くても、位置決め部材32を精度良く形成しておくことにより、内装トリム14に対する内装用部材12の取り付け位置精度を高くすることができる。
【0073】
また、取付部20の先端細軸部62を位置決め部材に固定することにより、位置決め部材32を介して内装用部材12を内装トリム14に固定することができるので、内装トリム14に取り付けられた内装用部材12に大きな衝撃が加わったとしても、その衝撃は内装トリム14の表面に直接加わることがない。このため、内装用部材12に大きな荷重が加わって内装トリム14の表面が破損するのを防止することができる。
【0074】
本実施例では、先端細軸部62を位置決め部材32に固定する方法としてリベット締めする場合について説明したが、当該方法はこれに限定されるものではなく、例えば、先端細軸部62と当接部36の嵌込孔64とを締まり嵌めにしてもよいし、先端細軸部62と当接部36とを熱融着してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明が適用された自動車の内装用部材および内装トリムを示す斜視図である。
【図2】図1のII−II矢視による断面(横断面)を拡大した分解断面図である。
【図3】図2のIII−III矢視による分解断面図である。
【図4】内装用部材取付孔が穿設される前の内装トリムを示す断面図である。
【図5】内装用部材が内装トリムに対して位置決めされた状態を示す断面図である。
【図6】図5のVI−VI矢視による断面図である。
【図7】内装用部材が内装トリムに対して固定された状態を示す断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII矢視による断面図である。
【図9】他の変形例を示す断面図である。
【図10】他の変形例を示す断面図である。
【図11】他の変形例を示す断面図である。
【図12】他の実施例を示す断面図である。
【図13】図11のXIII−XIII矢視による断面図である。
【図14】内装用部材が内装トリムに対して位置決めされた状態を示す断面図である。
【図15】図14のXV−XV矢視による断面図である。
【図16】内装用部材が内装トリムに対して固定された状態を示す断面図である。
【図17】図14のXVII−XVII矢視による断面図である。
【図18】従来技術を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
10…自動車の内装部材の取り付け構造
12…内装用部材
14…内装トリム
15…固定具(ネジ)
16…内装用部材本体
18…基部
20…取付部
22…横方向補強部材
24…縦方向補強部材
25…内装トリム当接部
26…載置部
28…係止ピン
30…内装トリム本体
32…位置決め部材
33…補強部材
34…内装用部材取付孔
36…当接部
38…ガイド部
40…当接面
42…貫通孔
44a、44b、44c…ガイド面
46a、46b、46c…直交面
48a、48b、48c…傾斜面
50…嵌入部
60…基部太軸部
62…先端細軸部
64…嵌込孔
70…リベット工具
72…締め付け頭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の内装用部材を内装トリムに取り付ける構造であって、
前記内装用部材には、柱状の取付部が突設されており、
前記内装トリムは、
前記取付部の直径よりも大きく形成された前記取付部挿通用の内装用部材取付孔と、
前記内装用部材が取り付けられる面の反対面において、前記内装用部材取付孔を臨む位置に設けられ、前記内装トリムに対する前記内装用部材の位置決めを行うために、前記内装用部材取付孔に挿通された前記取付部を位置決めする位置決め部材とを有しており、
前記位置決め部材は、
前記内装用部材取付孔に対面し、かつ、前記取付部の先端面が当接されると共に、前記先端面が固定具で固定される当接面と、
前記内装用部材取付孔から前記当接面まで前記先端面をガイドするガイド面とを有しており、
前記当接面と前記ガイド面とにより、前記取付部の先端が嵌入する嵌入部が形成されていることを特徴とする自動車の内装用部材の取り付け構造。
【請求項2】
自動車の内装用部材を内装トリムに取り付ける構造であって、
前記内装用部材には、前記内装用部材から突設された柱状の基部太軸部と、前記基部太軸部の先端面から突設され、前記基部太軸部よりも細く形成された柱状の先端細軸部とを有する取付部が設けられており、
前記内装トリムは、
前記基部太軸部の直径よりも大きく形成された前記取付部挿通用の内装用部材取付孔と、
前記内装用部材が取り付けられる面の反対面において、前記内装用部材取付孔を臨む位置に設けられ、前記内装トリムに対する前記内装用部材の位置決めを行うために、前記内装用部材取付孔に挿通された前記取付部を位置決めする位置決め部材とを有しており、
前記位置決め部材は、
前記内装用部材取付孔に対面し、かつ、前記取付部の前記先端細軸部が嵌め込まれる嵌込孔を有しており、前記基部太軸部の先端面が当接される当接面と、
前記内装用部材取付孔から前記当接面まで前記先端面をガイドするガイド面とを有しており、
前記嵌込孔に嵌め込まれた前記先端細軸部は前記位置決め部材に固定されていることを特徴とする自動車の内装用部材の取り付け構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の位置決め部材が複数箇所設けられている内装トリムであって、
前記取付部の前記先端面が当接される前記当接面に対応する前記内装トリムの対応部位が、前記取付部挿通用の内装用部材取付孔形成部位となっていることを特徴とする内装トリム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−96346(P2009−96346A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270243(P2007−270243)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(591025082)日泉化学株式会社 (19)
【Fターム(参考)】