説明

自動車の前部車体構造

【課題】エンジンルームとその車両後方の車室とを仕切るダッシュパネルと、該ダッシュパネルからサスペンションタワーのほぼ直上方の離間した位置まで車両前方に延びるカウルフロントパネルとを有する自動車の前部車体構造において、サスペンション部材等のサービス性を阻害することなく、カウルフロントパネルの剛性を向上可能な構造を提供する。
【解決手段】サスペンションタワー80とカウルフロントパネル104とを連結する連結ブラケット110を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の前部車体構造に関し、車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体前部には、エンジンルームとその車両後方の車室とを仕切るダッシュパネルと、該ダッシュパネルからサスペンションタワーの上方まで車両前方に延びるカウルフロントパネルとが備えられるが、車体デザイン上、フロントガラスを大きく前傾させるために、例えば、特許文献1に開示されているように、カウルフロントパネルをサスペンションタワーの上方まで前方に延ばす構成とする場合がある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−262290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、前記特許文献1に記載のものにおいては、カウルフロントパネルは、サスペンションタワーの上方といっても後部側の上方まで延びているだけであるが、例えば直上方までさらに前方にまで延ばした場合、該パネルの剛性が低下する。そこで、これを解決するためにカウルフロントパネルをサスペンションタワーの上面に接合することが考えられる。しかし、このようにすると、サスペンションタワーに取り付けられるサスペンション部材等のサービス性が阻害されることとなる。
【0005】
そこで、本発明は、カウルフロントパネルがサスペンションタワーのほぼ直上方まで延びている場合に、サスペンション部材等のサービス性を阻害することなく、カウルフロントパネルの剛性を向上可能な構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0007】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、エンジンルームとその車両後方の車室とを仕切るダッシュパネルと、該ダッシュパネルからサスペンションタワーのほぼ直上方の離間した位置まで車両前方に延びるカウルフロントパネルとを有する自動車の前部車体構造であって、前記サスペンションタワーとカウルフロントパネルとを連結する連結ブラケットが設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の自動車の前部車体構造において、前記サスペンションタワーの上面を補強する補強部材が設けられており、該補強部材に、前記連結ブラケットの下部が取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の自動車の前部車体構造において、前記補強部材には、上方へ立ち上がる立設片部が設けられており、前記連結ブラケットの下部は、該立設辺部に取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれかに記載の自動車の前部車体構造において、前記カウルフロントパネルは、該パネルの側部を構成し、車体側壁部に接合されると共に、前記連結ブラケットの上部が取り付けられたサイドパネルと、本体部を構成し、サイドパネルに対して着脱自在な本体パネルとで構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4のいずれかに記載の自動車の前部車体構造において、前記カウルフロントパネルの側部が車体側壁部に接合され、該車体側壁部の下端部がその下方のエプロンレインフォースメントに接合され、該エプロンレインフォースメントの内側面部がその車幅方向内側のサスペンションタワーの外側面部に接合されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項5に記載の自動車の前部車体構造において、前記サスペンションタワーの外側面部とエプロンレインフォースメントの内側面部との接合部の上方において、前記エプロンレインフォースメントの上面部とサスペンションタワーの外側面部とを接合する補強ガセットが設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、前記請求項3に記載の自動車の前部車体構造において、前記カウルフロントパネルの側部が車体側壁部に接合され、該車体側壁部の下端部がその下方のエプロンレインフォースメントに接合され、該エプロンレインフォースメントの内側面部がその車幅方向内側のサスペンションタワーの外側面部に接合されていると共に、前記サスペンションタワーの外側面部とエプロンレインフォースメントの内側面部との接合部の上方において、前記エプロンレインフォースメントの上面部とサスペンションタワーの外側面部とを接合する補強ガセットが設けられており、該補強ガセットに、サスペンションタワーの外側面部への接合部から上方に延び、前記連結ブラケットと共に前記立設辺部に取り付けられる延出部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、前記請求項7に記載の自動車の前部車体構造において、前記連結ブラケットと補強ガセットとが一体成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
次に、本発明の効果について説明する。
【0016】
まず、請求項1に記載の発明によれば、カウルフロントパネルを、ダッシュパネルからサスペンションタワーのほぼ直上方まで車両前方に延ばす場合に、該カウルフロントパネルはサスペンションタワーに対して離間するように設けられているから、カウルフロントパネルとサスペンションタワーとの間に作業スペースが確保されることとなり、サスペンションタワー及びそれよりも車両後方の部位のサービス性の悪化が抑制されることとなる。
【0017】
その場合に、このようにカウルフロントパネルをサスペンションタワーの直上方まで延ばしさらに該タワーに対して離間させた構造では、カウルフロントパネルの剛性の点で懸念が生じるが、本発明では、カウルフロントパネルと、もともと剛性の高いサスペンションタワーとを連結ブラケットにより連結したので、カウルフロントパネルが連結ブラケットを介してサスペンションタワーに支持されることとなり、カウルフロントパネルの剛性が向上することとなる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明によれば、サスペンションタワーの上面を補強する補強部材に前記連結ブラケットの下部が取り付けられているから、連結ブラケットが強固に支持されることとなり、その結果、カウルフロントパネルの剛性が一層向上することとなる。また、サスペンションタワーの上面を補強する補強部材を利用するので、新たに専用の補強部材を設けることなく、カウルフロントパネルの剛性を向上させることができる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記補強部材には、上方へ立ち上がる立設片部が設けられており、前記連結ブラケットの下部は該立設辺部に取り付けられているから、サスペンションタワーの上面が連結ブラケットの下部により占有されるのが回避される。したがって、該上面に取り付ける必要のあるサスペンションの配設位置や取付等に影響を与えるのが回避されることとなる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記カウルフロントパネルは、該パネルの側部を構成し、車体側壁部に接合されると共に、前記連結ブラケットの上部が取り付けられたサイドパネルと、本体部を構成し、サイドパネルに対して着脱自在な本体パネルとで構成されているから、カウルフロントパネルの下方の部位の作業を行うときには取り外すことができる。したがって、カウルフロントパネルの下方の部位の作業時の作業性が向上することとなる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明によれば、前記カウルフロントパネルの側部が車体側壁部に接合され、該車体側壁部の下端部がその下方のエプロンレインフォースメントに接合され、該エプロンレインフォースメントの内側面部がその車幅方向内側のサスペンションタワーの外側面部に接合されているから、カウルフロントパネルと、連結部材と、車体側壁部と、エプロンレインフォースメントと、サスペンションタワーとで、閉断面構造が形成されることとなる。したがって、カウルフロントパネルの剛性がより一層向上することとなる。
【0022】
また、請求項6に記載の発明によれば、前記サスペンションタワーの外側面部とエプロンレインフォースメントの内側面部との接合部の上方において、前記エプロンレインフォースメントの上面部とサスペンションタワーの外側面部とを接合する補強ガセットが設けられているから、サスペンションタワーとエプロンレインフォースメントとの結合力が向上し、前記閉断面構造の剛性が向上することとなる。したがって、この閉断面構造を構成するカウルフロントパネルの剛性もさらに一層向上することとなる。
【0023】
また、請求項7に記載の発明によれば、補強ガセットに、サスペンションタワーの外側面部への接合部から上方に延び、前記連結ブラケットと共に前記立設辺部に取り付けられる延出部が設けられているから、カウルフロント側部が連結ブラケット、補強ガセットを介してサスペンションタワーの外側面部にも支持されることとなり、カウルフロントパネルの剛性がさらに向上することとなる。また、サスペンションタワーが連結ブラケットと補強ガセットとで上下から支持されることとなるので、該サスペンションタワーが、サスペンション部材から受ける内倒れ方向の力により内倒れするのが抑制されることとなる。
【0024】
また、請求項8に記載の発明によれば、前記連結ブラケットと補強ガセットとが一体成形されているから、部品点数を削減しつつ、請求項7に記載の効果を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係る自動車の前部車体構造について説明する。
【0026】
図1、図2に示すように、第1の実施の形態に係る自動車1の前部には、図示しないボンネットフードにより開閉可能なエンジンルーム2が設けられてエンジン3が配設されていると共に、該エンジンルーム2の車両後方にはダッシュパネル10を挟んで車室が設けられている。ダッシュパネル10は、該パネル10の下側部分を構成するダッシュロアパネル11と、上側部分を構成するダッシュアッパパネル12と、後述するフロントダッシュアッパパネル102(図4参照)とで構成されている。
【0027】
ダッシュパネル10の左右の側縁部には、上下に延び、左右のフロントサイドドアの前端部を支持する閉断面構造のヒンジピラー20,20が接合されている。左右のヒンジピラー20,20の上端部からはそれぞれフロントピラー30,30が後方上方に大きく傾斜して延び、下端部からはそれぞれサイドシル40,40が後方に延びている。
【0028】
左右のヒンジピラー20,20の上端側前方にはそれぞれサイドエプロン50,50が設けられている。このサイドエプロン50は、ヒンジピラー20の上端よりも若干低い位置から前方に延びるエプロンレインフォースメント51を有している。エプロンレインフォースメント51は、図3にも示すように、断面ハット状の外側部材52及び内側部材53の上下のフランジ部を接合することにより断面形状が略方形の閉断面構造体として構成されている。
【0029】
図1〜図2に示すように、左右のフロントサイドフレーム60,60が、左右のヒンジピラー20,20よりも車幅方向内側で、かつエプロンレインフォースメント50,50よりも下方において、ダッシュパネル10(ダッシュロアパネル11)から前方に延びている。このフロントサイドフレーム60は、図3にも示すように、断面ハット状の外側部材61及び内側部材62の上下のフランジ部を接合することにより断面形状が略方形の閉断面構造体として構成されている。
【0030】
左右のフロントサイドフレーム60,60のダッシュパネル10(ダッシュロアパネル11)への接続部同士を、ダッシュパネル10のエンジンルーム2側において連結するダッシュクロスメンバ70が設けられている。該ダッシュクロスメンバ70は、車幅方向に延びる断面ハット状のもので、上下のフランジ部がダッシュパネル10(ダッシュロアパネル11)にそれぞれ接合されていると共に、左右の端部がフロントサイドフレーム60,60の内側部材62に接合され、前記ダッシュパネル10との間に閉断面構造を形成している。
【0031】
図1〜図3に示すように、ダッシュパネル10の左右の側部前方には、フロントサイドフレーム60よりも車幅方向外側で、かつエプロンレインフォースメント50よりも車幅方向内側に、サスペンションタワー80,80が設けられている。サスペンションタワー80を構成するホイールハウスインナパネル81の内側面部81aの下端部はフロントサイドフレーム60の外側部材61の上部フランジ部に接合され、外側面部81bの下部はエプロンレインフォースメント50の内側部材53の内側面部53aに接合され、後端部がダッシュパネル10のダッシュアッパパネル12に接合されている。
【0032】
サスペンションタワー80を構成するホイールハウスインナパネル81のほぼ平坦な頂部81cの上面及び下面には、図4にも示すように、該頂部81cを補強する略リング状(図6参照)の上面補強部材90及び下面補強部材95が接合されている。そして、このサスペンションタワー80の上面におけるこのように上面補強部材90及び下面補強部材95により補強された部位に、サスペンションダンパSが固定部材ST(例えばボルト・ナット)により固定されている。
【0033】
このうち上面補強部材90は、板状の第1、第2補強部材91,22で構成され、その後端部には、ダッシュアッパパネル12の側部前端部が接合されている。第1補強部材91の前縁部及び後縁部には上下方向への折り返し部が設けられ、これにより該部材91の剛性が高められている。また、第2補強部材92は、第1補強部材91よりも板厚が厚くされ、これにより剛性が高められている。
【0034】
図1に示すように、ダッシュパネル10の上方には、左右のヒンジピラー20間にわたって車幅方向に延びるカウル100が設けられている。該カウル100は、図4、図5に示すように、カウルパネル101と、フロントダッシュアッパパネル102と、フロントカウルパネル103と、カウルクロスメンバ104と、樹脂製カウル部材105とを有している。なお、フロントダッシュアッパパネル102は、特許請求の範囲においてはダッシュパネルに含まれる。
【0035】
カウルパネル101は、前記ダッシュアッパパネル12の上端部からフロントガラス5の前端部(下端部)に向かって斜め前方上方に延び、前端部がシール材106を介してフロントガラス5の前端部(下端部)を支持している。
【0036】
フロントダッシュアッパパネル102は、左右の端部がダッシュアッパパネル12とダッシュロアパネル11との接合部に接合され、後端部のフランジがダッシュアッパパネル12に接合され、前端部がサスペンションタワー80の後端部上方に位置している。
【0037】
フロントカウルパネル103は、車幅方向中間部に設けられ、カウルパネル101の前後方向中間部とフロントダッシュアッパパネル102の前端近傍部とを連結している。
【0038】
カウルフロントパネル104は、図3、図4に示すように、該パネル104の側部を構成し、かつエプロンレインフォースメント50の車内側のパネル54に固着されたカウルフロントサイドパネル104a,104aと、該パネル104の本体部を構成し、カウルフロント本体パネル104bとで構成されている。カウルフロント本体パネル104bは、左右両端部が、カウルフロントサイドパネル104a,104aに2点でボルト固定され、図4に示すように後端部がフロントダッシュアッパパネル102の前端近傍部にシール部材108を介して載置された状態でボルト固定され、前部側が、図2、図4に示すようにサスペンションタワー80の上方の離間した位置に位置している。
【0039】
樹脂性カウル部材105は、カウル100の外側意匠面を形成するもので、通気口やワイパー用開口等が設けられ、前端部(下端部)のフランジがカウルフロントパネル104の前端部にボルト固定され、後端部(上端部)がフロントガラス5の前端部上面に当接している。
【0040】
カウルフロントパネル104及び樹脂性カウル部材105は、ボルト締結を解除することにより取り外し可能となっている。
【0041】
ここで、本実施の形態においては、図3、図6に示すように、サスペンションタワー80とカウルフロントパネル104とを連結する連結ブラケット110が設けられている。この連結ブラケット110は、上下に延びる縦面部110aと、該縦面部110aの上端から車幅方向外側にほぼ水平に延びる横面部110bとを有し、縦面部110aの下部が、前記第1補強部材91の車幅方向外側の端部から上方へ立ち上がる立設片部91aに複数個所で溶接により接合され、横面部110bが、前記カウルフロントサイドパネル104aの車幅方向内側縁部に複数個所で溶接により接合されている。
【0042】
また、サスペンションタワー80の外側面部81bとエプロンレインフォースメント51の内側部材53の内側面部53aとの接合部の上方には、エプロンレインフォースメント51の内側部材53の上面部53bとサスペンションタワー80の外側面部81aとを接合する補強ガセット120が設けられている。この補強ガセット120は、エプロンレインフォースメント51の上面部53bに沿うように形成された横面部120aと、該横面部120aの車内側端からサスペンションタワー80の外側面部81bに沿うように傾斜して上方へ延びる傾斜面部120bとを有し、横面部120aが、エプロンレインフォースメント51の上面部53bに溶接により接合され、傾斜面部120bが、サスペンションタワー80の外側面部81bに溶接により接合されている。
【0043】
次に、本実施の形態に係る自動車の側部車体構造の作用、効果について説明する。
【0044】
まず、カウルフロントパネル104がフロントダッシュアッパパネル102(ダッシュパネル)からサスペンションタワー80のほぼ直上方まで車両前方に延びている場合でも、該カウルフロントパネル104はサスペンションタワー80に対して離間するように設けられているから、カウルフロントパネル104とサスペンションタワー80との間に作業スペースが確保されることとなり、サスペンションタワー80及びそれよりも車両後方の部位のサービス性の悪化が抑制されることとなる。
【0045】
その場合に、このようにカウルフロントパネル104をサスペンションタワー80の直上方まで延ばしさらに該タワー80に対して離間させた構造では、カウルフロントパネル104の剛性の点で懸念が生じるが、本実施の形態においては、カウルフロントパネル104と、もともと剛性の高いサスペンションタワー80とを連結ブラケット110により連結したので、カウルフロントパネル104が連結ブラケット110を介してサスペンションタワー80に支持されることとなり、カウルフロントパネル104の剛性が向上することとなる。
【0046】
また、サスペンションタワー80の上面を補強する補強部材91に連結ブラケット110の下部が取り付けられているから連結ブラケットが強固に支持されることとなり、その結果、カウルフロントパネル104の剛性が一層向上することとなる。また、サスペンションタワー80の上面81cを補強する補強部材91を利用するので、新たに専用の補強部材を設けることなく、カウルフロントパネル104の剛性を向上させることができる。
【0047】
また、補強部材91には、上方へ立ち上がる立設片部91aが設けられており、連結ブラケット110の下部は該立設辺部91aに取り付けられているから、サスペンションタワー80の上面81c(頂部)が連結ブラケット110の下部により占有されるのが回避される。したがって、該上面81aに取り付ける必要のあるサスペンションの配設位置や取付等に影響を与えるのが回避されることとなる。
【0048】
また、カウルフロントパネル104は、該パネル104の側部を構成し、サイドエプロン50(車体側壁部)に接合されると共に、連結ブラケット110の上部が取り付けられたカウルフロントサイドパネル104aと、本体部を構成し、カウルフロントサイドパネル104aに対して着脱自在なカウルフロント本体パネル104bとで構成されているから、カウルフロントパネル104の下方の部位の作業を行うときには取り外すことができる。したがって、カウルフロントパネル104の下方の部位の作業時の作業性が向上することとなる。
【0049】
また、カウルフロントパネル104の側部がサイドエプロン50(車体側壁部)に接合され、該サイドエプロン50(車体側壁部)の下端部がその下方のエプロンレインフォースメント51に接合され、該エプロンレインフォースメント51の内側面部53aがその車幅方向内側のサスペンションタワー80の外側面部81bに接合されているから、カウルフロントパネル51と、連結部材110と、サイドエプロン50(車体側壁部)と、エプロンレインフォースメント51と、サスペンションタワー80とで閉断面構造が形成されることとなる。したがって、カウルフロントパネル104の剛性がより一層向上することとなる。
【0050】
また、サスペンションタワー80の外側面部81bとエプロンレインフォースメント51の内側面部53aとの接合部の上方において、エプロンレインフォースメント51の上面部53bとサスペンションタワー80の外側面部81bとを接合する補強ガセット120が設けられているから、サスペンションタワー80とエプロンレインフォースメント51との結合力が向上し、前記閉断面構造の剛性が向上することとなる。したがって、この閉断面構造を構成するカウルフロントパネル104の剛性もさらに一層向上することとなる。
【0051】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、説明においては、同構成のものには第1の実施の形態と同一の符号を用いる。
【0052】
この第2の実施の形態においては、図7に示すように、補強ガセット120′に、傾斜面部120b′(サスペンションタワーの外側面部への接合部)から連結ブラケット110の縦面部110aと補強部材91の立設辺部91aとの重合部まで上方に延びる延出部120c′が設けられ、該延出部120c′が、これらと共に溶接により複数箇所で接合されている。なお、それ以外の構成は、第1の実施の形態と同様であり、説明は省略する。
【0053】
このような構成によれば、カウルフロントサイドパネル104aが、連結ブラケット110、補強ガセット120を介してサスペンションタワー80の外側面部81bにも支持されることとなり、カウルフロントパネル104の剛性がさらに向上することとなる。また、サスペンションタワー80が連結ブラケット110と補強ガセット120とで上下から支持されることとなるので、該サスペンションタワー80がサスペンション部材から受ける内倒れ方向の力により内倒れするのが抑制されることとなる。
【0054】
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0055】
この第3の実施の形態においては、図8に示すように、補強ガセット120″と連結ブラケット110″とは、延出部120c″と縦面部110a″とが連結されることにより、一体成形されている。このような構成によれば、部品点数を削減しつつ、第2の実施の形態と同様の効果を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、エンジンルームとその車両後方の車室とを仕切るダッシュパネルと、該ダッシュパネルからサスペンションタワーのほぼ直上方の離間した位置まで車両前方に延びるカウルフロントパネルとを有する自動車の前部車体構造に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る自動車の前部車体構造の車両斜め前方からの要部斜視図である。
【図2】サスペンションタワー周辺の平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】図2のC−C断面図である。
【図6】図3のD−D断面図である(なお、カウルフロント本体パネルを取り外した状態で示している。
【図7】本発明の第2の実施の形態についての図3相当の図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態についての図3相当の図である。
【符号の説明】
【0058】
1 自動車
2 エンジンルーム
3 エンジン
5 フロントガラス
50 サイドエプロン(車体側壁部)
51 エプロンレインフォースメント
53a 内側面部
53b 上面部
80 サスペンションタワー
81b 外側面部
91 補強部材
91a 立設辺部
104 カウルフロントパネル
104a カウルフロントサイドパネル(サイドパネル)
104b カウルフロント本体(本体パネル)
110,110″ 連結ブラケット
120,120′,120″ 補強ガセット
120c′ 延出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームとその車両後方の車室とを仕切るダッシュパネルと、該ダッシュパネルからサスペンションタワーのほぼ直上方の離間した位置まで車両前方に延びるカウルフロントパネルとを有する自動車の前部車体構造であって、
前記サスペンションタワーとカウルフロントパネルとを連結する連結ブラケットが設けられていることを特徴とする自動車の前部車体構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の自動車の前部車体構造において、
前記サスペンションタワーの上面を補強する補強部材が設けられており、
該補強部材に、前記連結ブラケットの下部が取り付けられていることを特徴とする自動車の前部車体構造。
【請求項3】
前記請求項2に記載の自動車の前部車体構造において、
前記補強部材には、上方へ立ち上がる立設片部が設けられており、
前記連結ブラケットの下部は、該立設辺部に取り付けられていることを特徴とする自動車の前部車体構造。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれかに記載の自動車の前部車体構造において、
前記カウルフロントパネルは、該パネルの側部を構成し、車体側壁部に接合されると共に、前記連結ブラケットの上部が取り付けられたサイドパネルと、本体部を構成し、サイドパネルに対して着脱自在な本体パネルとで構成されていることを特徴とする自動車の前部車体構造。
【請求項5】
前記請求項1から請求項4のいずれかに記載の自動車の前部車体構造において、
前記カウルフロントパネルの側部が車体側壁部に接合され、該車体側壁部の下端部がその下方のエプロンレインフォースメントに接合され、該エプロンレインフォースメントの内側面部がその車幅方向内側のサスペンションタワーの外側面部に接合されていることを特徴とする自動車の前部車体構造。
【請求項6】
前記請求項5に記載の自動車の前部車体構造において、
前記サスペンションタワーの外側面部とエプロンレインフォースメントの内側面部との接合部の上方において、前記エプロンレインフォースメントの上面部とサスペンションタワーの外側面部とを接合する補強ガセットが設けられていることを特徴とする自動車の前部車体構造。
【請求項7】
前記請求項3に記載の自動車の前部車体構造において、
前記カウルフロントパネルの側部が車体側壁部に接合され、該車体側壁部の下端部がその下方のエプロンレインフォースメントに接合され、該エプロンレインフォースメントの内側面部がその車幅方向内側のサスペンションタワーの外側面部に接合されていると共に、
前記サスペンションタワーの外側面部とエプロンレインフォースメントの内側面部との接合部の上方において、前記エプロンレインフォースメントの上面部とサスペンションタワーの外側面部とを接合する補強ガセットが設けられており、
該補強ガセットに、サスペンションタワーの外側面部への接合部から上方に延び、前記連結ブラケットと共に前記立設辺部に取り付けられる延出部が設けられていることを特徴とする自動車の前部車体構造。
【請求項8】
前記請求項7に記載の自動車の前部車体構造において、
前記連結ブラケットと補強ガセットとが一体成形されていることを特徴とする自動車の前部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−230437(P2008−230437A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73863(P2007−73863)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】