説明

自動車の可動フロア装置

【課題】 可動フロア部の支持剛性を効果的に向上させることができる自動車の可動フロア装置を提供する。
【解決手段】車体前後方向に延びるフロアパネルの傾斜パネル部4a上であってシートに着座する乗員の足部載置領域に配設されている可動フロアパネルと、この可動フロアパネルをフロアパネルに対して昇降動させる昇降機構33と、この昇降機構33を駆動させる第2伝達ケーブル25とを備える。第2伝達ケーブル25が駆動停止した状態で可動フロアパネルを位置決め保持する保持機構334が第2伝達ケーブル25と可動フロアパネルとの間に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のシートに着座する乗員の体格や体型に応じて当該乗員の足部が載置される足部載置領域のフロア高さを変更可能な可動フロア部を備えた自動車の可動フロア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のシートに着座する乗員、特に運転席に着座するドライバの運転姿勢は、該乗員の運転快適性や走行安全性などと密接に関係することが知られている。このような乗員の運転姿勢は、シートの前後位置や高さ等を調節するシート位置調節手段を始め、固定フロア部に対して昇降可能な可動フロア部の高さを調節する可動フロア装置によっても調節可能であることが知られている。このような可動フロア装置としては、従来、次のようなものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車体前後方向に延びる固定フロア部と、上記固定フロア部上であってブレーキペダルなどのペダル下方に位置してシートに着座する乗員の足部が載置される足部載置領域に配設される可動フロアパネルと、この可動フロアパネルを上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構と、上記可動フロアパネルを固定フロア部に対して上下揺動可能に案内支持する複数本のステー部材とを備えた可動フロア装置が提案されている。この可動フロア装置は、ステー部材がガイドとしての役目を果たし、ラック機構によって構成された昇降機構によって、可動フロアパネルを昇降させるものとなされている。
【特許文献1】実開昭63−12217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような可動フロア装置においては、可動フロアパネル上に乗員の足部が載置された際に当該可動フロアパネルが沈み込んだり、ガタついたりすると、当該乗員において違和感や不安感等を生じることから、当該可動フロアパネルは一定の支持剛性をもって支持されることが望まれている。
【0005】
特に、上記特許文献1に記載の可動フロア装置のように昇降機構がラック機構によって構成されている場合には、可動フロアパネル上に乗員の足部が載置されることにより可動フロアパネルに荷重が入力されて昇降機構に逆方向の駆動力(逆駆動力)が作用し、これに伴って可動フロアパネルが沈み込んだり、ガタついたりする虞があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、可動フロア部の支持剛性を効果的に向上させることができる自動車の可動フロア装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自動車の可動フロア装置は、車体前後方向に延びる固定フロア部上であってシートに着座する乗員の足部載置領域に配設されている可動フロア部と、この可動フロア部を上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構と、この昇降機構を駆動させる駆動機構とを備えた自動車の可動フロア装置において、上記駆動機構が駆動停止した状態でその停止位置に上記可動フロア部を位置決め保持する保持機構が当該駆動機構と上記可動フロア部との間に設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
この発明によれば、上記駆動機構が駆動停止した状態でその停止位置に上記可動フロア部を位置決め保持する保持機構が設けられているので、駆動機構によって所望の停止位置に位置決めされた可動フロア部上に乗員の足部が載置されて当該可動フロア部に荷重が入力された場合でも、この荷重を保持機構によって支持することができ、これに伴って可動フロア部の沈み込みやガタツキを効果的に抑制しつつ、当該可動フロア部を高い支持剛性で支持することができる。しかも、この保持機構が上記駆動機構と可動フロア部との間に設けられているので、この保持機構によって上記可動フロア部に入力された荷重(逆駆動力)を駆動機構に伝達する手前側(上記駆動機構の可動フロア部側)で支持することができ、これにより逆駆動力に基づいて駆動機構が反転して当該可動フロア部が大幅に沈み込むこと等を有効に防止することができる。
【0009】
上記駆動機構の具体的構成は特に限定されるものではないが、例えば上記駆動機構は、駆動力を発生させる駆動源と、この駆動源で発生した駆動力を上記昇降機構に伝達する駆動力伝達手段とを備えているのが好ましく、この場合には上記保持機構はこの駆動力伝達手段と上記可動フロア部との間に設けられているのが好ましい(請求項2)。
【0010】
このように構成すれば、駆動機構に駆動力伝達手段が含まれるので、駆動源と昇降機構とを離間して配置することができ、車載レイアウト上の自由度を向上させることができる。ここで、このように駆動機構について、駆動源から駆動力伝達手段を介して昇降機構に駆動力を伝達する場合は、駆動源と昇降機構との間に駆動力伝達手段が介在されることになるが、駆動力伝達手段を設けた場合には駆動源から昇降機構に達するまでの荷重伝達経路が比較的長くなり、このように荷重伝達経路が比較的長くなると、この駆動力伝達手段における遊びや歪みの蓄積に基づいて、乗員の足部が載置されることによって可動フロア部が沈み込んだり、ガタついたりすることが想定される。この点、本発明においては上記保持機構はこの駆動力伝達手段と上記可動フロア部との間に設けられているので、駆動力伝達手段に基づく上記沈み込みやガタツキ等を効果的に防止することができる。
【0011】
この場合、上記駆動力伝達手段は、長尺の回転駆動軸部を有し、当該回転駆動軸部を軸心回りに回転させることにより上記駆動源からの駆動力を伝達するように構成されているのが好ましい(請求項3)。
【0012】
このように構成すれば、駆動力伝達手段は、軸心回りに回転することにより駆動力を伝達する回転駆動軸部によって構成されるので、この駆動力伝達手段がラック機構のスライド機構等によって構成される場合と異なり、駆動力の伝達にあたってスライド移動を伴わず、このため当該駆動力伝達手段を配設することによって、スライド移動のためのスペースを確保する必要がなく、この駆動力伝達手段をコンパクトに配設することができる。また、このように駆動力伝達手段が長尺の回転駆動軸部によって構成される場合に逆駆動力が駆動力伝達手段に作用すると、回転駆動軸部の歪みの蓄積が大きくなりがちでこの蓄積に基づいて可動フロア部の沈み込みやガタツキの要因となるが、本発明では上記したように駆動機構の可動フロア部側に上記保持機構が設けられているので、この可動フロア部の沈み込みやガタツキを確実に防止することができる。
【0013】
上記保持機構は、可動フロア部から入力された荷重を支持することにより、当該荷重(逆駆動力)が駆動機構側へ伝達されるのを遮断し得るものであれば、その具体的構成が特に限定されるものではないが、上記保持機構は、上記駆動機構から駆動力が入力されることにより回転する入力軸部と、この入力軸部と係合して入力軸部の回転に伴って回転する出力軸部と、上記入力軸部が回転していない状態において上記出力軸部の回転を規制するストッパーと、上記入力軸部が回転することにより上記ストッパーによる回転規制を解除する解除部とを備えるのが好ましい(請求項4)。
【0014】
このように構成すれば、ストッパーにより出力軸部の回転を規制し、これにより駆動機構側への逆駆動力の伝達を有効に遮断することができるとともに、入力軸部が回転することにより上記ストッパーによる回転規制を解除する解除部を備えるので、上記駆動機構による可動フロア部の昇降動の際にはストッパーが解除部によって解除されることにより当該ストッパーが可動フロア部の昇降動の際に障害となることを確実に回避することができる。
【0015】
また、上記保持機構は、上記構成に代えて、或いは上記構成に加えて、上記駆動機構によって回転駆動されるウォームと、このウォームに歯合し回転駆動力が上記昇降機構に伝達されるウォームホイールとを備えるのが好ましい(請求項5)。
【0016】
このように構成すれば、ウォームが回転されることによりウォームホイールのピッチが進み、その逆が困難であるというウォームギヤの特性を有効に利用して、簡易な構成で上記保持機構を構成することができる。
【0017】
上記昇降機構は、例えば特許文献1にあるようなラック機構等の公知の昇降機構であってもよいが、上記昇降機構は、水平軸回りに正逆回転する回転軸部と、この回転軸部に取り付けられ上記可動フロア部を昇降可能に支持する揺動アーム部とを備え、上記回転軸部が上記保持機構に接続されているのが好ましい(請求項6)。
【0018】
このように構成すれば、回転軸部と一体に回転し上下に揺動する揺動アーム部によって可動フロア部を上下に昇降動させることができ、スライド機構等によって上下にスライドさせる昇降機構と比べて、当該昇降機構をコンパクトに形成することができる。しかも、このように揺動アーム部によって可動フロア部を上下昇降動させる場合には、可動フロア部に生じた荷重がこの昇降機構を通じて逆駆動力として駆動機構に生じ易くなるが、この発明によればこの逆駆動力を保持機構によって効果的に支持することができ、従って高い支持剛性で可動フロア部を支持することができる。
【0019】
この発明において、上記駆動機構が駆動停止した状態でその停止位置に上記可動フロア部を固定フロア部に対して支持する位置決め支持機構が上記昇降機構と別体に設けられるのが好ましい(請求項7)。
【0020】
このように構成すれば、位置決め支持機構によって昇降機構と別に可動フロア部が支持されるので、可動フロア部の支持剛性をさらに高めることができる。
【0021】
上記可動フロア部は、固定フロア部に対して平行な姿勢を維持したまま上下昇降動するように構成されているものであってもよいが、上記可動フロア部は、その前後一端縁のうちいずれか一方が上記固定フロア部に枢支されているのが好ましい(請求項8)。
【0022】
このように構成すれば、可動フロア部をその枢支されている端縁を中心に上下揺動させて昇降動させることができ、この可動フロア部が固定フロア部に対して平行な姿勢を維持したまま上下昇降動させる場合に比べて占有スペースを小さく構成することができるとともに、上下昇降動に伴って可動フロア部の傾斜角度を調節することができる。
【0023】
乗員の着座姿勢を調整する着座姿勢調整装置として、この発明に係る可動フロア装置に加えてシートの位置を調節するシート位置調節機構を設ければ乗員の着座姿勢をよりきめ細やかに調整することができ、この場合には、上記昇降機構は、このシート位置調節機構と別個に駆動されるように構成されるものであってもよいが、上記シートの位置を調節するシート位置調節機構に連動して駆動されるように構成されるのが好ましい(請求項9)。
【0024】
このように構成すれば、シート位置と可動フロア部高さとを予め調整しておくことにより、シート位置に応じて最適な可動フロア高さに自動調節することができ、より使い勝手のよいものとなる。
【0025】
ここで、上記駆動機構はその具体的構成を特に限定されるものではないが、例えば手動操作によって駆動力を発生させるものであってもよく、この場合には、上記駆動機構は、乗員によって揺動操作される操作レバーと、この操作レバーが初期姿勢から所定の一方向に揺動操作される場合に当該操作レバーと係合してその揺動力を回転駆動力として伝達するとともに上記操作レバーが初期姿勢に戻る方向に揺動操作される場合に当該操作レバーとの係合を解除して揺動力の伝達を遮断する出力ギヤとを備えて構成されるのが好ましい(請求項10)。
【0026】
このように構成すれば、可動フロア部の位置調節に必要な駆動力を、操作レバーによる複数回の揺動操作によって効率的に発生させることができる。
【0027】
また、この駆動機構について、上記構成に代えて、上記駆動機構は、乗員の入力操作によって駆動する駆動モータであるとすることもできる(請求項11)。
【0028】
このように構成すれば、駆動モータによって可動フロア部を昇降させるための駆動力を発生させることができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明に係る自動車の可動フロア装置によれば、可動フロア部上に乗員の足部が載置されて当該可動フロア部に荷重が入力された場合でも、この逆駆動力を支持して可動フロア部を位置決め保持することができ、これに伴って可動フロア部の沈み込みやガタツキを効果的に抑制しつつ、当該可動フロア部を高い支持剛性で支持することができるという利点がある。しかも、この保持機構が上記駆動機構と可動フロア部との間に設けられているので、この保持機構によって上記逆駆動力を駆動機構に伝達する手前側(上記駆動機構の可動フロア部側)で支持することができ、これにより逆駆動力に基づいて駆動機構が反転して当該可動フロア部が沈み込むこと等を有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1は当第1実施形態に係る可動フロア装置を含めた自動車の着座姿勢調整装置の概略を示す斜視図であり、図2および図3は同装置の側面図および平面図である。なお、この着座姿勢調整装置は、シート位置を調節するシート位置調節装置と、高さを含めた可動フロアパネルの位置を調節する可動フロア装置とによって構成されているが、その他、ステアリングの傾斜角度等を調節するステアリング位置調節装置やブレーキペダル等のペダル位置を調節するペダル位置調節機構等を含むものであってもよい。また、当第1実施形態では、可動フロア装置を含めた着座姿勢調整装置をドライバーズシートに適用する場合について説明するが、ナビシートや後列シートにも適用可能であり、この場合はシートに着座する乗員の着座姿勢を安楽にするため等に用いられる。
【0032】
車体前後方向に延びるフロアパネル4(固定フロア部の一例に相当)上には、シートクッション51とシートバック52とを備えた乗員用シート5と、このシート5の車体前後方向の位置等を調節するシート位置調節装置6と、シート5に着座した乗員の足部が載置される可動フロアパネル7を駆動して当該可動フロアパネル7の高さ等を調節する可動フロア装置8とが配設されている。
【0033】
このフロアパネル4は、鋼板から形成され、少なくともシート5よりも前方側は図2に示すように平坦に形成されている。そして、このフロアパネル4の前端部は前上がりに傾斜して形成され、この傾斜パネル部4aの前端縁がエンジンルームと車室を仕切るダッシュパネル9に連設されている。このダッシュパネル9には、ブレーキペダルやアクセルペダル等、シート5に着座する乗員の足部によって操作されるペダル10が枢支されるとともに、上記乗員によって操作されるステアリング装置11が支持されている。また、フロアパネル4の車幅方向略中央部は上方に膨出することによりトンネル部4bが形成されている。このトンネル部4bは、車体前後方向に細長く延び、このトンネル部4bの外側は図示していないがセンターコンソールによって被覆され、当該センターコンソールとトンネル部4bとの間の空間に種々のワイヤーハーネスやダクト等が配設されるように構成されている。このフロアパネル4の車幅方向端縁には、車体前後方向に延びる閉断面を有するサイドシル12が接合され、車体剛性が向上されている。
【0034】
このフロアパネル4上であって当該パネル4のトンネル部4bとサイドシル12との間には上記乗員用シート5が配設され、このシート5はシート位置調節装置6によって位置調節可能に構成される。このシート位置調節装置6は、図2および図3に示すように、シート5を車体前後方向に移動可能に支持するシートスライド機構61と、このスライド機構61によってシート5をスライド変位させることによりシートクッション51の高さおよび傾斜角度を調節するシート昇降機構62とを備える。
【0035】
シートスライド機構61は、シート5を車体前後方向に移動可能に支持する左右一対のスライドレール63と、シートクッション51の両側縁部下方に突設されスライドレール63にスライド自在に支持されるスライドプレート64とを基本構成としている。
【0036】
スライドレール63は、スライドプレート64をそれぞれスライド自在に支持するC型鋼等からなり、フロアパネル4上に車幅方向に沿って設置された前後一対のクロスメンバ13,14の上面に所定の仰角(例えば15°程度)で前上がりに傾斜した状態で取り付けられている。また、このスライドレール63の外側壁面には、図4に示すように、車体の前後方向に延びるラックギヤ15が、シート昇降機構62の作動部となる転動ギヤ16と歯合するように固着されている。
【0037】
スライドプレート64の前部には、シートクッション51のフレーム材(図示せず)に固着される前部ブラケット17の枢支部を貫通する支軸20が、左右のスライドプレート64を互いに連結するように配設されている。また、スライドプレート64の中央部には、転動ギヤ16と一体回転する回転軸21が当該スライドプレート64を貫通する状態で枢支されるとともに、転動ギヤ16に歯合する中間ギヤ22が回転自在に支持されている。さらに、このスライドプレート64の後端部内面側には、シートクッション51の後端部を上下昇降動させるシート用昇降レバー23の基端部が枢支されている。
【0038】
また、転動ギヤ16と一体回転する上記回転軸21には、後述する駆動モータの回転力を伝達する第1伝達ケーブル24の先端部が接続されるとともに、中間ギヤ22には、その回転駆動力を上記可動フロア装置8に伝達する第2伝達ケーブル25の一端部が連結されている。また、上記スライドプレート64の内側には、中間ギヤ22と一体に回転することにより上記昇降レバー23を駆動して揺動変位させる駆動ギヤ26が設置されている。この駆動ギヤ26は、その直径が上記中間ギヤ22よりも小さく設定されることにより、その歯数が中間ギヤ22よりも少なく設定されるとともに、昇降レバー23の基端部に形成されたセクタギヤ23aに歯合するように構成されている。
【0039】
昇降レバー23の先端部は、リンクプレート27を介してシートクッション51の後部ブラケット28に連結されている。そして、上記リンクプレート27、昇降レバー23、駆動ギヤ26および中間ギヤ22により、シート5のスライド変位に連動して、シートクッション51を揺動変位させてその上下位置を調節するシート昇降機構62が構成されている。すなわち、上記第1伝達ケーブル24から転動ギヤ16を介して中間ギヤ22に伝達された回転力に応じ、駆動ギヤ26が回転駆動されるとともに、この駆動ギヤ26により昇降レバー23が駆動されて揺動変位し、これに対応して前部ブラケット17に枢支された支軸20を支点にシートクッション51の後端部が昇降動されるように構成されている。
【0040】
上記第1,第2伝達ケーブル24,25(駆動力伝達手段の一例に相当)は、それぞれ可撓性を有する長尺の回転駆動軸部24a,25aからなり、この回転駆動軸部24a,25aが軸心回りに回転駆動されて作動部に回転力を伝達するように構成されている。そして、第1,第2伝達ケーブル24,25は、回転軸21および中間ギヤ22に対する接続部から車体の中央部側に突設されるとともに、その内側端部に設けられた屈曲部を介して車体の前方側に導出されている。
【0041】
第1伝達ケーブル24は、図5に示すように、係止具29による係止位置から車体の後方側に折り返されることによりトンネル部4bの上壁に沿って後方側に延設され、その後端部が、上記センターコンソールとトンネル部4bとの上面との間の空間内に配設された駆動モータ30の出力軸にカップリング30aを介して連結されている。そして、この駆動モータ30、第1伝達ケーブル24、転動ギヤ16およびラックギヤ15により、乗員用シート5のシートクッション51を上記スライドレール63に沿って前後移動させることができ、従ってこれらの駆動モータ30、第1伝達ケーブル24、転動ギヤ16およびラックギヤ15もシートスライド機構61を構成している。具体的には、上記駆動モータ30の回転力が第1伝達ケーブル24を介して上記転動ギヤ16に伝達され、この転動ギヤ16がラックギヤ15上を転動することにより、上記シートクッション51の下面に取り付けられたスライドプレート64がスライドレール63に沿って前後移動し、乗員用シート5の前後位置が調節されるようになっている。
【0042】
上記のように駆動モータ30から第1伝達ケーブル24を介して転動ギヤ16に伝達された回転力に応じ、この転動ギヤ16を回転駆動させることにより乗員用シート5を前後移動させるシートスライド機構61と、このシートスライド機構61と連動して昇降レバー23を揺動変位させることにより乗員用シート5の上下位置を調節する上記シート昇降機構62とで、乗員の体格等に応じて乗員用シート5の設置状態等を調節するシート位置調節装置6が構成されている。
【0043】
一方、第2伝達ケーブル25は、図5に示すように、係止具29による係止位置から、さらに車体の前方側に延出され、その前端部が、可動フロア装置8に接続されている。そして、回転軸21から第2伝達ケーブル25の一端部に入力された回転力が、この第2伝達ケーブル25の他端部側に伝達されることにより、可動フロア装置8の後述するウォーム31が回転駆動されるように構成されている。すなわち、この第2伝達ケーブル25およびこの第2伝達ケーブル25に駆動力を伝達する駆動モータ30、第1伝達ケーブル24が駆動機構の一例に相当する。
【0044】
この可動フロア装置8は、ペダル10の下方であってシート5の前端縁から若干前方位置におけるフロアパネル4の上面に配設された可動フロアパネル7(可動フロア部の一例に相当)と、この可動フロアパネル7をフロアパネル4に対して昇降動させる昇降機構33とを備え、当第1実施形態では上記したようにシート位置調節装置6と連動して可動フロアパネル7を昇降動させるものとなされている。
【0045】
可動フロアパネル7は、硬質合成樹脂板または鋼板等からなる矩形状のパネルであり、当第1実施形態ではヒンジにより連結された前後2枚のパネルから構成されている。この可動フロアパネル7は、シート5に着座する乗員がペダル10を操作する場合にその足部が載置されるものであり、昇降機構33によって前側のパネルがその前端縁を中心に揺動することによって昇降動可能に構成されている。
【0046】
具体的には、可動フロアパネル7は、図6に明示するように、昇降機構33によって昇降される第1パネル71と、この第1パネル71の後端部に前端部がヒンジ結合された第2パネル72とを備えている。第1パネル71は、硬質合成樹脂板または鋼板等からなる矩形状のパネルであり、この第1パネル71の大きさを特に限定するものではないが、シート5に着座する乗員の両足が載置し得る程度の大きさに設定されている。この第1パネル71は、前端部における車幅方向両端部が所定の寸法誤差や組付誤差などを許容するヒンジ弾性支持部34によってフロアパネル4の傾斜パネル部4aに枢支されている。
【0047】
このヒンジ弾性支持部34は、一端部が第1パネル71の前端部上面に締結具344によって締結された、いわゆる蝶番であるヒンジ支持本体341と、このヒンジ支持本体341の他端部とフロアパネル4との間に介在する弾性パッド342とを有し、この弾性パッド342で各種寸法誤差や組付誤差などを許容できるように構成されている。すなわち、弾性パッド342は、例えばゴムやエラストマー等の弾性部材から板状に形成され、弾性変形させることにより寸法誤差や組付誤差などを許容可能に構成されている。そして、このヒンジ支持本体341、弾性パッド342およびフロアパネル4を締結具345によって共締めすることにより、第1パネル71をフロアパネル4の傾斜パネル部4aに対して寸法誤差や組付誤差などを許容しつつ揺動可能に支持させている。
【0048】
第2パネル72は、硬質合成樹脂板または鋼板等からなる横長矩形状のパネルであり、好ましくは第1パネル71と同様の材質から構成されている。この第2パネル72は、その前端部において、車幅方向左右両端部に配設されたヒンジ部73を介して第1パネル71の後端部に回動自在に連結されている。
【0049】
昇降機構33は、第1パネル71を昇降動させることができるものであればその具体的構成は特に限定されるものではないが、当第1実施形態では第1パネル71の所定部分(例えば中間部)を上下することにより、第1パネル71をその前端縁を中心に揺動させることにより当該第1パネル71を実質的に昇降させる機構が採用されている。
【0050】
すなわち、昇降機構33は、図6および図7に示すように、第1パネル71の下方において車幅方向に沿って延び、水平軸回りに正逆回転する回転軸部331と、この回転軸部331の長手方向両端部に取り付けられ当該回転軸部331と一体に回転する揺動アーム332と、回転軸部331をその長手方向両端部で回転自在に支持する左右一対の軸ブラケット333と、これらの左右一対の軸ブラケット333の一方側に配設され第2伝達ケーブル25からの回転駆動力を回転軸部331に伝達するとともに回転軸部331からの逆駆動力を支持する保持機構334(図7および図8参照)とを備える。そして、この昇降機構33は、乗員用シート5の位置調節と連動して回転駆動する第2伝達ケーブル25から保持機構334に回転駆動力が伝達されることにより回転軸部331および揺動アーム332が正逆回転駆動し、この揺動アーム332の先端部に当接する第1パネル71を上下に揺動させることにより可動フロアパネル7を昇降させるように構成されているとともに、第2伝達ケーブル25の回転が停止されると保持機構334によって第1パネル71を位置決め保持するように構成されている。
【0051】
この昇降機構33を図7および図8(a)〜(c)を用いて具体的に説明する。図7は昇降装置を拡大して示す斜視図であり、図8(a)は昇降機構の平面図であり、図8(b),(c)は図8(a)のb−b線、c−c線断面図である。
【0052】
回転軸部331は、図7および図8に示すように、車幅方向に沿って延び軸ブラケット333によって第1パネル71の下方であってフロアパネル4の傾斜パネル部4aに回転自在に取り付けられている。
【0053】
揺動アーム332は、図7および図8に示すように、平面視略コ字状形状を呈し、回転軸部331の長手方向両端部にそれぞれ固定されている(図1参照)。この揺動アーム332は、図8(c)に明示するように、第1パネル71側の先端部に当接ローラ部332aが回転自在に取り付けられている。
【0054】
軸ブラケット333は、鋼板を屈曲して形成されたもので、いわゆる軸受として機能する。これらの軸ブラケット333のうちトンネル部4b側に設けられた軸ブラケット333(図1では左側に配設されたブラケット333)には、保持機構334が配設されている。
【0055】
保持機構334は、第2伝達ケーブル25から入力される駆動力を回転軸部331に伝達し、逆に、回転軸部331から入力される逆駆動力、例えば可動フロアパネル7に入力された荷重に基づく逆駆動力を支持することにより当該逆駆動力の第2伝達ケーブル25への伝達を遮断するものとなされている。この保持機構334は、図7および図8に示すように、第2伝達ケーブル25の先端部に取着されたウォーム31と、このウォーム31と歯合するウォームホイール32とを備え、ウォームホイール32が回転軸部331に固着されることによりウォームホイール32と回転軸部331との間で駆動力の伝達がなされる。ウォーム31は、車体前後方向に細長く形成され、ウォームホイール32と歯合させた状態で軸ブラケット333に取り付けられている。なお、このウォーム31は、ウォームホイール32との歯合部位の前後にその周面に沿って係合溝(図示せず)が刻設され、この係合溝に軸ブラケット333に取り付けられた逆U字状の係止部333aが係止されることにより当該ウォーム31の車体前後方向への脱落を防止するものとなされている。
【0056】
なお、当第1実施形態では、図2に二点鎖線で示すように、フロアパネル4および可動フロア装置8の上にフロアマット35が敷設され見栄えを向上させるものとなされている。
【0057】
上記構成において、図示を省略したシート位置の調節スイッチを操作して駆動モータ30を作動させると、その回転力が第1伝達ケーブル24を介して転動ギヤ16に伝達され、この転動ギヤ16が回転駆動されて上記ラックギヤ15上を転動することにより、乗員用シート5のシートクッション51が、図9の実線で示す前方位置と、2点鎖線で示す後方位置との間を前後移動することになる。
【0058】
そして、シート5を車体の前方側に移動させる方向に転動ギヤ16を図4の矢印aに示す方向に回転駆動した場合には、この転動ギヤ16の回転方向aと逆方向bにシート昇降機構62の中間ギヤ22および駆動ギヤ26が回転駆動され、この駆動ギヤ26によりセクタギヤ23aが矢印c方向に回転駆動されることにより、昇降レバー23の先端部が上昇する方向に揺動変位してシートクッション51が水平状態に近い状態となる。一方、シート5を車体の後方側に移動させる場合には、転動ギヤ16、中間ギヤ22および駆動ギヤ26を、それぞれ上記前方移動時と逆方向に回転駆動することにより、昇降レバー23の先端部が下降する方向に揺動変位してシートクッション51が前上がりの傾斜状態となる。
【0059】
また、シート位置調節装置6によるシート位置の調節動作に応じて中間ギヤ22の回転力が第2伝達ケーブル25を介して可動フロア装置8に伝達されることにより、乗員の足部が載置される可動フロアパネル7の第1パネル71が昇降機構33によって昇降動される。そして、シート5のシートクッション51が前方位置に移動した場合には、図9の実線で示すように第1パネル71が上昇して略水平状態となるとともに、これに応じて乗員の着座姿勢が直立状態となるように変化する。一方、シート5のシートクッション51が後方位置に移動した場合には、図9の2点鎖線で示すように第1パネル71が下降して前上がりの傾斜状態となり、これに応じて乗員の着座姿勢が後傾状態となるように変化する。
【0060】
そして、上記調節スイッチを操作することにより可動フロアパネル7が所望の位置に位置決めして駆動モータ30を停止させると、第1および第2伝達ケーブル24,25の回転駆動も停止してシート5および可動フロアパネル7が停止する。この状態で、可動フロアパネル7上に乗員の足部が載置されて当該可動フロアパネル7に荷重が入力されると、この荷重が逆駆動力として揺動アーム332および回転軸部331を介して保持機構334に伝達されることになるが、この保持機構334によって逆駆動力を確実に支持することができる。すなわち、ウォーム31とウォームホイール32とを有するウォームギヤ(保持機構334)は、ウォーム31からウォームホイール32への駆動力の伝達は円滑に行われるが、その逆、すなわちウォームホイール32からウォーム31への駆動力の伝達は遮断するという特性を有している。従って、このウォームギヤの特性を利用して保持機構334を構成することにより、簡単な構成で可動フロアパネル7に入力された荷重を当該保持機構334で確実に支持することができる。このため、可動フロアパネル7上に乗員の足部が載置された場合でも、当該可動フロアパネル7の沈み込みおよびガタツキを効果的に抑制しつつ、この可動フロアパネル7を高い支持剛性で支持することができる。
【0061】
しかも、この保持機構334が、駆動モータ30から可動フロアパネル7に至るまでの駆動力伝達経路における第2伝達ケーブル25と可動フロアパネル7との間に設けられているので、この保持機構334によって逆駆動力が第2伝達ケーブル25よりも可動フロアパネル7側で支持することができ、これにより逆駆動力に基づいて駆動機構が反転して当該可動フロア部が大幅に沈み込むこと等を有効に防止することができる。
【0062】
すなわち、例えば保持機構334が第2伝達ケーブル25と第1伝達ケーブル24との間に設けられた場合には、逆駆動力に基づいて第2伝達ケーブル25にトルクが作用して歪みを生じることになるが、第2伝達ケーブル25が比較的長尺のものであるので、歪みが第2伝達ケーブル25の全長に亘って蓄積されその全長について比較的大きな捩れを許容してしまうことになる。従って、保持機構334が例えば上記のように第1,2伝達ケーブル24,25の間に設置されると、第2伝達ケーブル25の捩れ分、乗員の足部が載置された際の可動フロアパネル7の沈み込み範囲が大きくなることから、保持機構334は、上記したように駆動伝達経路における可動フロアパネル7に近接した位置、例えば第2伝達ケーブル25と可動フロアパネル7との間、例えばその間に設けられた昇降機構33に組み込まれるのが好ましい。
【0063】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る可動フロア装置の第2実施形態について説明する。図10は第2実施形態に係る可動フロア装置を示す側面図であり、図11は同装置に備えられた昇降機構の斜視図である。
【0064】
この第2実施形態では、昇降機構の構成、特にこの昇降機構に組み込まれた保持機構の構成が上記第1実施形態と異なるため、この点を重点的に説明する。
【0065】
この第2実施形態に係る昇降機構133は、図10および図11に示すように、第1パネル71を昇降可能に支持する左右一対の揺動アーム135と、この揺動アーム135を揺動自在に支持する左右一対のブラケット136と、このブラケット136のうち一方側のブラケット136に配設され第2伝達ケーブル25からの回転駆動力を揺動アーム135に伝達するとともに揺動アーム135からの逆駆動力を支持する保持機構137と、第1パネル71の下面両端縁に取り付けられ当該第1パネル71の昇降動に伴って揺動アーム135の先端部を案内するガイド機構138とを備える。
【0066】
揺動アーム135は、基端部がブラケット136に枢支されているとともに先端部135aがガイド機構138に沿ってスライド移動するように構成されている。この揺動アーム135のうち一方の揺動アーム135は保持機構137を介してブラケット136に枢支されている。ブラケット136は、鋼板がL字状に屈曲されることにより形成され、揺動アーム135の揺動中心軸が車幅方向に沿うように、その底面壁が締結具によってフロアパネル4に接合されている。このブラケット136のうち第2伝達ケーブル25が回転自在に取り付けられている一方のブラケット136の内側面には、保持機構137が締結具によって接合されている。
【0067】
保持機構137は、第2伝達ケーブル25が回転駆動しているときはこの第2伝達ケーブル25から入力される駆動力を揺動アーム135に伝達し、逆に、揺動アーム135から入力される逆駆動力、例えば可動フロアパネル7に入力された荷重に基づく逆駆動力を支持することにより当該逆駆動力の第2伝達ケーブル25への伝達を遮断するものとなされている。すなわち、この第2実施形態に係る保持機構137も機能的には上記第1実施形態に係る保持機構334と同様であるが、その具体的構成において上記第1実施形態と異なる。
【0068】
この保持機構137の構成を図12〜図15に基づいて説明する。保持機構137は、ロック型の逆駆動力遮断クラッチであり、入力軸を正逆いずれかの方向に回転させると出力軸もこれに伴って正逆回転し、一方出力軸を回転させても出力軸はロックされ、入力軸へ駆動力を伝達しないように構成されている。すなわち、保持機構137は、図12および図13に示すように、一端部が第2伝達ケーブル25に連結されることにより当該第2伝達ケーブル25から駆動力が入力されて回転する入力軸部140と、この入力軸部140と一体回転する入力側回転板141と、この入力側回転板141と同一軸心上に配設され当該入力側回転板141の回転に伴ってその側面に立設された係合ピン141aと係合することにより回転する出力側回転板142と、この出力側回転板142の回転に伴って一体回転するとともにこの回転駆動力を上記揺動アーム135に伝達する出力軸部143と、入力軸部140の回転停止状態において出力側回転板142の回転を規制することにより出力軸部143の回転を規制するストッパー片144(ストッパーの一例に相当)と、入力軸部140が回転することによりストッパー片144による回転規制を解除する係止解除用突出部145(解除部に相当)と、これらの各部材が入出力軸部140,143の端部を突出させた状態で収納される略円筒形のケース146とを備える。
【0069】
具体的には、入力軸部140は、図12に示すように、外端部がカップリング147により第2伝達ケーブル25に連結されているとともに、内端部が入力側回転板141の軸心に接合されている。入力側回転板141は、出力側回転板142よりも大径の円板であり、入力軸部140が接合された側面と反対側の側面における偏心位置に上記係合ピン141aが突設されている。この係合ピン141aは、出力側回転板142の偏心位置に厚み方向に穿設された係合孔142aに挿通され、入力側回転板141が所定角度(例えば10度程度)回転されることにより係合孔142aの周縁部に係合して入力側回転板141の回転に伴って出力側回転板142を回転させるように設定されている。
【0070】
また、この係合ピン141aが突設された入力側回転板141の側面には、当該係合ピン141aよりもさらに外側の偏心位置に係止解除用突出部145が突設されている。この係止解除用突出部145は、当第2実施形態では係合ピン141aと入力側回転板141の中心を通る同一直線上に配設されている。また、係止解除用突出部145は、側面視において出力側回転板142の外周縁よりも外側に配設され、これにより出力側回転板142にその外周縁から外側に突出する態様で枢支されたストッパー片144に係合可能に構成されている。そして、この係止解除用突出部145は、入力側回転板141が回転することにより、ストッパー片144に係合して、ケース146の内周面に刻設されたギヤ状の係止溝146aに係止されたストッパー片144の係止状態を解除するものとなされている。
【0071】
ストッパー片144は、出力側回転板142の正逆回転方向に対応して一対設けられるとともに、各々出力側回転板142の側面における外周縁部に枢支されている。これらのストッパー片144は、出力側回転板142の径方向外方に向かうにしたがって互いに離間する略ハの字状に配置され、それぞれ出力側回転板142の一方向またはその反対方向の回転を規制するものとなされている。例えば、図13において右側に配置されたストッパー片144は、出力側回転板142の時計方向への回転を規制するものとなされている。また、ストッパー片144は、それぞれ先端部がケース146の内周面に設けられた係止溝146aに押し付けられるように巻きばね148からなる弾性部材によって付勢され、係止解除用突出部145によってこの弾性力に抗して押動されることにより係止状態が解除されるように構成されている。特に当第2実施形態では、各ストッパー片144は、先端部にテーパー面144aを有し、その係止解除動作時にこのテーパー面144aに沿ってケース146の係止溝146a内を移動し、当該係止溝146aとの係止状態が解除され易くなっている。そして、各ストッパー片144の間に上記係止解除用突出部145が配置され、入力側回転板141が回転することにより係止解除用突出部145が当該回転方向への出力側回転板142の回転を規制しているストッパー片144に係合するものとなされている。
【0072】
この保持機構137は、上記構成において、図13に示す初期状態では各ストッパー片144の先端部がケース146の係止溝146aにそれぞれ係止されることにより、出力軸部143および出力側回転板142が正逆いずれの方向に回転に対してもその回転を規制し、これにより出力軸部143から入力された逆駆動力を支持することができる。
【0073】
一方、図13に示す初期状態から入力軸部140が回転(例えば正方向である時計回りに回転)すると、これに伴って入力側回転板141およびこの回転板141に設けられた係合ピン141a、係止解除用突出部145も回転し、この係合ピン141aが係合孔142aの周縁部に係合されるのに先立って、まず係止解除用突出部145が上記回転方向の回転を規制しているストッパー片144に係合する。この係合に伴ってストッパー片144が係止解除用突出部145によって押動されるが、このストッパー片144は先端が係止溝146aに係止されているので、このストッパー片144の回転軸が取り付けられている出力側回転板142が上記入力側回転板141の回転方向と逆方向に若干回転(上記回転方向が時計回りであるときは反時計回りに回転)することにより、ストッパー片144の係止状態が解除される。
【0074】
続いて、係止解除用突出部145とストッパー片144が係合された状態を保ちつつ、図14に示すように、係合ピン141aが出力側回転板142に設けられた係合孔142aの周縁部に係合する。この係合ピン141aが係合孔142aに係合すると、出力側回転板142が、図15に示すように、入力側回転板141と同方向に回転し始める。この出力側回転板142が回転することにより出力軸部143が回転し、これにより入力軸部140に入力された回転駆動力が出力軸部143に伝達されることになる。このとき、ストッパー片144のうち係止解除用突出部145が係合していないストッパー片144は、ケース146の係止溝146aに先端が案内されながら出力側回転板142に引き回されることになる。
【0075】
そして、第2伝達ケーブル25の回転駆動が停止されると、入力軸部140および入力側回転板141の回転駆動も停止し、ストッパー片144を付勢する巻きばね148の付勢力によってストッパー片144が係止解除用突出部145が押し戻される。これに伴って入力側回転板141および入力軸部140が反時計方向に若干回転するとともに、係止解除用突出部145に係合して押動されていたストッパー片144が巻きばね148の付勢力によってケース146に設けられた係止溝146aに再び係止して上記初期状態に復帰されることになる。
【0076】
このようにして、当第2実施形態における保持機構137は、入力軸部140から入力された駆動力を出力軸部143に伝達し、逆に、出力軸部から入力される逆駆動力を支持することにより当該逆駆動力が入力軸部140への伝達を遮断するものとなされている。
【0077】
一方、揺動アーム135の先端部を案内するガイド機構138は、図16に示すように、第1パネル71の幅方向両端部の下面に接合されたガイドレール150と、このガイドレール150によって案内されるガイドローラ151とを備える。
【0078】
ガイドレール150は、図10および図11に示すように、第1パネル71の長さ方向に沿って延設され、長手方向両端部に設けられたフランジ部150aにおいて締結具によって第1パネル71の下面に接合されている。このガイドレール150は、図16に示すように、第1パネル71の幅方向外側に開口するC型鋼等からなり、ガイドローラ151をスライド自在に支持している。このガイドローラ151によるスライド範囲は、第1パネル71の昇降量に応じて適宜設定されている。ガイドローラ151は、その回転軸部151a回りに回転可能に揺動アーム135の先端部135aに支持されている。なお、図16中、152によって示される部材は抜け止め防止用のワッシャーである。
【0079】
この第2実施形態に係る可動フロア装置180によっても、いわゆるロック型の逆駆動力遮断クラッチからなる保持機構137によって、位置決めされた可動フロアパネル上に乗員の足部が載置されて当該可動フロアパネルに荷重が入力された場合でも、この荷重を支持することができ、これに伴って可動フロアパネルの沈み込みやガタツキを効果的に抑制しつつ、当該可動フロアパネルを高い支持剛性で支持することができる。しかも、この保持機構137が駆動力伝達経路における第2伝達ケーブル25と可動フロアパネル7との間の昇降機構133に組み込まれているので、この保持機構137によって可動フロアパネル7に入力された逆駆動力を第2伝達ケーブル25に伝達する手前側で支持することができ、これにより逆駆動力に基づいて第2伝達ケーブル25が捩れて可動フロアパネル7が沈み込むこと等を有効に防止することができる。
【0080】
また、ストッパー片144により出力側回転板142および出力軸部143の回転を規制し、これにより入力軸部140への逆駆動力の伝達を有効に遮断することができるとともに、入力軸部140が回転することによりストッパー片144による回転規制を解除する係止解除用突出部145を備えるので、駆動モータ30および第1、第2伝達ケーブル24,25が回転駆動されることによって可動フロアパネル7が昇降動する際にはストッパー片144が係止解除用突出部145によって解除されることにより当該ストッパー片144が可動フロアパネル7の昇降動の際に障害となることを確実に回避することができる。すなわち、この保持機構137によれば、簡単な構成で確実に入力軸部140側への逆駆動力の伝達を遮断することができる。
【0081】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る可動フロア装置の第3実施形態について説明する。図17は第3実施形態に係る可動フロア装置を示す側面図である。
【0082】
この第3実施形態では、昇降機構の構成、特にこの昇降機構に組み込まれた保持機構の構成が上記第1、第2実施形態と異なる。
【0083】
すなわち、この第3実施形態に係る保持機構237は、上記第1、第2実施形態に係る保持機構(ウォームギヤと逆駆動力遮断クラッチ)を併用したもので、ウォームホイール32の出力軸が上記第2実施形態の入力軸部140に連結された構造となっている。その他の構成は上記第1、第2実施形態と同様であるので、ここでは図中に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0084】
この第3実施形態に係る可動フロア装置280においても、可動フロアパネルの第1パネル71に入力された荷重に基づく逆駆動力を支持することができ、これに伴って可動フロアパネルの沈み込みやガタツキを効果的に抑制しつつ、当該可動フロアパネルを高い支持剛性で支持することができる。
【0085】
特に、この第3実施形態に係る可動フロア装置280によれば、逆駆動力遮断クラッチとして構成される保持機構137とウォームギヤ31,32によって2段階で逆駆動力を支持することができるので、例えば係止解除用突出部145が配設されるストッパー片144間の間隙に基づく可動フロアパネルの沈み込みやガタツキを効果的に抑制し、上記第1、第2実施形態に係る可動フロア装置と比べて、可動フロアパネルをより高い支持剛性で支持することができる。
【0086】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る可動フロア装置の第4実施形態について説明する。図18は第4実施形態に係る可動フロア装置における上記第1実施形態と異なる要部を示す側面図である。
【0087】
この第4実施形態では、昇降機構として上記第1実施形態における昇降機構33に代えて送りねじ方式の昇降機構433が用いられ点で上記第1実施形態と異なる。
【0088】
すなわち、この第4実施形態に係る昇降機構433は、可動フロアパネル7の昇降動に伴ってフロアパネル4上を摺動する第2パネル72の後端縁を前後にスライド移動させることにより、可動フロアパネル7を昇降動させるように構成されている。この昇降機構433は、車体前後方向に配設され第2伝達ケーブル25に連結される送りねじ434と、この送りねじ434の長手方向両端部を回転自在に支持する支持ブラケット435と、送りねじ434が正逆回転することにより前後に移動するスライダー436と、第2パネル72の後端部に取着されスライダー436に連結棒437を介して枢支された取付部438とを備え、このスライダー436が前後に送られることにより第2パネル72を含めた可動フロアパネル7が上下に昇降動されるように構成されている。
【0089】
送りねじ434は、長尺の雄ねじ部材であり、長手方向への移動が拘束された状態で正逆回転自在に支持ブラケット435に支持されている。この送りねじ434の長さは、可動フロアパネル7の昇降動の範囲に応じて適宜設定される。支持ブラケット435は、前後一対の支持部435aとこの支持部435aの下端縁が取り付けられた取付プレート435bとを有し、取付プレート435bの前後両端縁が締結具によってフロアパネル4の上面に取り付けられている。
【0090】
スライダー436は、図19に示すように、送りねじ434の雄ねじが螺合可能な雌ねじ孔436aが前後に貫設されており、この雌ねじ孔436aに送りねじ434が螺合された状態で支持ブラケット435の取付プレート435b上であって支持部435a間をスライド可能に構成されている。このスライダー436の可動フロアパネル7側の側面には連結棒437が緊密状態に嵌合される嵌合孔436bが形成されている。
【0091】
この連結棒437が枢支されている取付部438は、第2パネル72の後端部下面に接合されている。この取付部438は、スライダー436側に開口した断面視コ字状の取付本体438aと、この取付本体438aの内部に緊密状態に嵌合された弾性ブッシュ438bとを備え、車幅方向に沿ってこの弾性ブッシュ438bに穿設された挿通孔438cに上記連結棒437が挿通されることにより取付部438とスライダー436との相対位置を所定の範囲で許容しつつスライド変位させるように構成されている。なお図19中、439によって示される部材は、連結棒437に取り付けられた抜け止め用のワッシャーである。
【0092】
この第4実施形態に係る可動フロア装置においても、可動フロアパネル7の第1パネル71に入力された荷重に基づく逆駆動力を送りねじ434とスライダー436からなる保持機構によって支持することができ、これに伴って可動フロアパネル7の沈み込みやガタツキを効果的に抑制しつつ、当該可動フロアパネル7を高い支持剛性で支持することができる。
【0093】
(その他の実施形態)
なお、以上に説明した可動フロア装置は、本発明に係る装置に含まれる実施形態であって、装置の具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であり、その変形例を以下に説明する。
【0094】
(1)上記各実施形態は、駆動モータ30から昇降機構33,133,433へ駆動力を伝達するために、可撓性を有し軸心回りに回転駆動する回転駆動軸部24a、25aからなる伝達ケーブル24,25が用いられているが、この伝達ケーブルの具体的構成は特に限定されるものではない。
【0095】
例えば、図20に示すように、上記第1実施形態の伝達ケーブル24,25について、回転駆動軸部を被覆する保護チューブ25bを設けるものとしてもよい。この場合、回転駆動軸部(図例では回転駆動軸部25a)は、伝達対象部材(図例ではウォーム31)近傍で保護チューブ25bから露出されるとともに、その露出部分の両端で保護チューブ25bを介して支持部501に支持されるように構成される。
【0096】
なお、この図20では、ウォーム31の上方にこのウォーム31に歯合するウォームホイール32が設けられているとともに、軸ブラケット333の外側面にこれらのウォーム31、およびウォームホイール32が設けられている点で上記第1実施形態と異なる。
【0097】
このように構成すれば、回転駆動軸部25aが保護チューブ25bによって被覆されるので、駆動モータ30と伝達対象部材との間において、伝達ケーブルが他の車載部材に摺接することによる影響を可及的に抑制することができるという利点がある。
【0098】
また、伝達ケーブルについて、可撓性を有する回転駆動軸部に代えて、図21に示すように、一定の剛性を有するロッド601を設けるものとしてもよい。このロッド601は、車体前後方向に沿って配設され、一端部が保持機構334を構成するウォーム31に接続されるとともに、他端部がウォームギヤを介して乗員用シートの下方に配設された駆動モータ630にウォームギヤを介して接続されている。
【0099】
このように構成しても、回転駆動軸部24a,25aを有する伝達ケーブルと同様に、駆動モータ等の駆動源からの駆動力を効率的に伝達することができる。
【0100】
(2)上記各実施形態では、駆動機構は、駆動力を発生させる駆動モータ30,630と、この駆動モータ30,630によって発生した駆動力を可動フロア装置8に伝達する第1,第2伝達ケーブル24,25とを備えるが、駆動機構の具体的構成は特に限定されるものではない。
【0101】
例えば、駆動機構は、乗員による操作レバーの揺動操作に基づいて駆動力を発生させるスライド操作機構と、このスライド操作機構によって発生した駆動力を可動フロア装置に伝達する駆動力伝達ケーブルとを有して構成されるものであってもよい。
【0102】
具体的には、駆動機構は、図22に示すように、上記第1実施形態の駆動モータ30および第1伝達ケーブル24に代えて、乗員による操作レバー731の揺動操作に基づいて駆動力を発生させるスライド操作機構701を備え、上記スライド操作機構701によって発生した駆動力で中間ギヤ22(出力ギヤの一例に相当)を回転駆動させてシート位置調節装置6に駆動力を伝達するとともに、この中間ギヤ22に接続された駆動力伝達ケーブル725を介して可動フロア装置8に駆動力を伝達するように構成されている。なお、この駆動力伝達ケーブル725は、上記第1実施形態の第2伝達ケーブル25と同様に配設されている。
【0103】
このスライド操作機構701は、図23,図24に示すように、中間ギヤ22とスライドプレート64との間に当該中間ギヤ22と軸心を一致させた状態で回転自在に介設された第1操作レバー731(操作レバーの一例に相当)と、この第1操作レバー731に枢支されるとともに、第1操作レバー731の把持部と一体に把持される把持部を備えた第2操作レバー732と、上記第1操作レバー731の側面に突設された水平軸733を支点として揺動可能に支持された係止片734と、この係止片734を案内するガイド部材735とを有している。
【0104】
第2操作レバー732には、スライドレール63等に係脱してシート5のスライド変位をロック、解除するロック片(図示せず)にロック解除用の駆動力を伝達する伝達ワイヤ736が係止されている。すなわち、スライド操作機構701によりシートクッション51を車体の前後方向にスライド操作する際に、第1操作レバー731と第2操作レバー732とを一体に把持すると、上記伝達ワイヤ736からロック片に伝達される駆動力に応じてロック片が解除され、このロック片からなるロック機構によりスライド変位が規制されたシートクッション51のロック状態が解除されるように構成されている。
【0105】
係止片734は、図24および図25に示すように、中間ギヤ22の歯に係合される一対の係合孔737が設けられた係合部738と、この係合部738の内端部(シートクッション51の内方側に位置する端部)から上部内方に向けて突設されたL字状部739と、このL字状部739の内端部から内方に向けて突設された突部740とを有している。係止片734の係合孔737が中間ギヤ22の歯に係合された状態に保持されることにより、第1操作レバー731と中間ギヤ22とが係止片734を介して一体に連結され、第1操作レバー731の回動操作力が中間ギヤ22に入力されるようになっている。
【0106】
ガイド部材735は、一方のスライドプレート64に突設された水平軸741を支点にして揺動可能に支持された支持部742と、この支持部742の外側端部から下方に突設された下窄まりの三角形状を有する側板部743と、この側板部743の下辺部に沿って設けられたV字状のガイド部744と、このガイド部744の前端部および後端部に突設された水平部745,746とを有している。そして、通常時には、上記水平軸741に外嵌された鶴巻ばねからなる付勢部材747の付勢力に応じ、ガイド部材735が水平状態に保持されるとともに、係止片734の突部740がガイド部744の中央部に位置することにより、係止片734の係合孔737が中間ギヤ22の歯に係合された状態に保持されている。
【0107】
スライド操作機構701の第1,第2操作レバー731,732が把持されて揺動操作されると、ロック片等からなるロック機構によるシートクッション51のロックが解除されるとともに、係止片734の係合孔737が中間ギヤ22の歯に係合された状態で、図26に示すように、第1操作レバー731の回転力が係止片734を介して中間ギヤ22に伝達される。これにより上記中間ギヤ22が回転駆動されるとともに、その回転力が転動ギヤ16に伝達され、この転動ギヤ16が第1操作レバー731の操作量に対応した距離だけ上記ラックギア15上を転動することになる。この場合、ガイド部材735は、係止片734の突部740により、付勢部材747の付勢力に抗して後端部側の水平部746が押し下げられた状態となる。
【0108】
第2レバー732を戻し、第1操作レバー731を初期位置に戻す方向に揺動操作されると、付勢部材747の付勢力に応じ、図27に示すように、係止片734の係合部738が中間ギヤ22の歯から離間する方向に駆動されて第1操作レバー731と中間ギヤ22との連結状態が解除される。このため、中間ギヤ22に逆転力を付与することなく、第1操作レバー731を初期位置に戻すことにより、係止片734を図25に示す状態に移行させることが可能となる。この操作が繰り返されることにより、予め設定された範囲内で、上記スライドプレート64およびシートクッション51がスライドレール63に沿って車体の前後方向にスライド変位することになる。
【0109】
なお、上記第1操作レバー731の揺動操作が途中で中止されて係止片734と中間ギヤ22との係合状態が解除される場合であっても、ガイド部材735を水平方向に付勢する付勢部材747の付勢力に応じで係止片734が中間ギヤ22の歯から離脱するため、第1操作レバー731を初期位置に戻す際に、第1操作レバー731から中間ギヤ22に逆転力が付与されることが防止されることになる。
【0110】
(3)上記各実施形態において、上記駆動機構が駆動停止した状態でその停止位置に可動フロアパネル7をフロアパネル4に対して支持する位置決め支持機構80が昇降機構33と別体に設けられるものとしてもよい。
【0111】
例えば、図28に示すように、第1実施形態の可動フロア装置8に位置決め支持機構80を設けるものとしてもよい。
【0112】
すなわち、図28に示すように、位置決め支持機構80は、車両前後方向に沿って配設されたスライドレール81と、このスライドレール81に沿って前後スライド移動するスライダー82と、スライドレール81の長手方向中央部やや後寄りに固定されスライダー82のスライド移動を規制するストッパ83と、スライダー82の前端部に一端が枢支されるとともに他端が第1パネル71の下面後端部に枢支されたリンク支持アーム84とを備える。
【0113】
スライドレール81は、複数本配設されるものであってもよいが、この変形例では第1パネル71の幅方向略中央部の下方に単一のものが設けられている。このスライドレール81は、図30に示すように断面略C字状に形成され、この上方開口部を通じてスライダー82のアーム取付部82aを突出可能に構成されている。
【0114】
スライダー82は、図28,30に示すように、スライドレール81の長さに対して略半分程度の長さを有する断面逆T字状の長尺部材として構成され、図29に示すように、その下面にスライドレール81の底面壁に沿って転動するスライドローラ82bが設けられている。図30に示すように、スライダー82の前端部にはアーム取付部82aが突設され、このアーム取付部82aにリンク支持アーム84の下端部がピン結合されている。
【0115】
また、スライダー82の上端には、スライダー82の長手方向に沿って延びるラックギヤ82cが形成されている。
【0116】
ストッパ83は、内部空間が上下に仕切られたケース83aと、このケース83aの上部収納室83bに収納された電磁石83eと、ケース83aの仕切り板に形成された連通孔83dを通じて上部収納室83bから下部収納室83cに亘って配設された係止片83fとを備え、この係止片83fは、その下部に設けられたフランジ83iがコイルばね83hによって下方に押圧されることにより下方に付勢されるとともに、電磁石83eの図示しない電磁コイルに通電されることにより上記付勢力に抗して当該電磁石83eに吸着されるように構成されている。係止片83fの下端には前後方向に並設された複数の係止爪83gが設けられ、この係止爪83gがスライダー82のラックギヤ82cに歯合可能に構成されている。そして、この係止爪83がラックギヤ82cに歯合することにより、当該ストッパ83がスライダー82の移動を規制するものとなされている。
【0117】
電磁石83eは、その電磁コイル(図示せず)が図示しない電源に接続され、この電源が図示しないコントロールユニットによってON・OFF制御されることにより、係止片83fをラックギヤ82cに対して係脱させるように構成されている。なお、コントロールユニットによる電磁石83eに対する通電のタイミングは駆動モータ30の駆動タイミングに同期されている。したがって、駆動モータ30の駆動時には、ラックギヤ82cに対する係止爪83gの歯合が解除され、スライダー82はスライド移動可能な状態におかれることになる。一方、駆動モータ30の非駆動時には、係止爪83gがラックギヤ82cに歯合され、スライダー82はスライド規制状態におかれることになる。
【0118】
リンク支持アーム84は、その下端部がスライダー82のアーム支持部82aに枢支されているとともに、その上端部が第1パネル71の下面後端部に取着された取付ブラケットに枢支され、これによりスライダー82と第1パネル71とをリンク結合している。
【0119】
このように構成すれば、上記第1実施形態の効果に加え、位置決め支持機構80によって、昇降機構33による可動フロアパネル7の昇降動を邪魔することなく、駆動機構が駆動停止した状態でその停止位置に第1パネル71の後端部をフロアパネル4に対して支持できるので、可動フロアパネル7、特に第1パネル71の支持剛性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明に係る可動フロア装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】同装置とともにシート位置調節装置を示す側面図である。
【図3】同装置とともにシート位置調節装置を示す平面図である。
【図4】シート位置調節装置の要部を示す拡大斜視図である。
【図5】シート位置調節装置の要部を示す平面図である。
【図6】可動フロア装置を拡大して示す側面図である。
【図7】同装置の保持機構を含めた昇降機構を示す斜視図である。
【図8】(a)は同装置の昇降機構の平面図、(b)、(c)は図(a)のb−b線、c−c線断面図である。
【図9】同装置の使用状態を示す側面図である。
【図10】本発明に係る可動フロア装置の第2実施形態を示す側面図である。
【図11】同装置の保持機構を含めた昇降機構を示す斜視図である。
【図12】同装置の保持機構を示す横断面図である。
【図13】同装置の保持機構を示す縦断面図である。
【図14】同装置の保持機構の使用状態を示す縦断面図である。
【図15】同装置の保持機構の使用状態を示す縦断面図である。
【図16】同装置のガイド機構を示す断面図である。
【図17】本発明に係る可動フロア装置の第3実施形態の要部を示す斜視図である。
【図18】本発明に係る可動フロア装置の第4実施形態の要部を示す斜視図である。
【図19】同装置のスライダーおよび取付部を示す断面図である。
【図20】本発明に係る可動フロア装置の変形例を示す側面図である。
【図21】本発明に係る可動フロア装置の他の変形例を示す平面図である。
【図22】同装置の駆動機構の変形例を示す側面図である。
【図23】同変形例を拡大して示す側面図である。
【図24】同変形例を示す斜視図である。
【図25】同変形例の使用状態を示す斜視図である。
【図26】同変形例の使用状態を示す斜視図である。
【図27】同変形例の使用状態を示す斜視図である。
【図28】本発明に係る可動フロア装置のさらに他の変形例を示す側面図である。
【図29】同変形例の位置決め支持機構の断面図である。
【図30】同変形例の位置決め支持機構の断面図である。
【符号の説明】
【0121】
4 フロアパネル(固定フロア部)
5 乗員用シート
6 シート位置調節装置
7 可動フロアパネル(可動フロア部)
8 可動フロア装置
24 第1伝達ケーブル(駆動力伝達手段)
24a 回転駆動軸部
25 第2伝達ケーブル(駆動力伝達手段)
25a 回転駆動軸部
30,630 駆動モータ(駆動源)
31 ウォーム
32 ウォームホイール
33 昇降機構
71 第1パネル
72 第2パネル
331 回転軸部
332 揺動アーム
333 軸ブラケット
334 保持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延びる固定フロア部上であってシートに着座する乗員の足部載置領域に配設されている可動フロア部と、この可動フロア部を上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構と、この昇降機構を駆動させる駆動機構とを備えた自動車の可動フロア装置において、
上記駆動機構が駆動停止した状態でその停止位置に上記可動フロア部を位置決め保持する保持機構が当該駆動機構と上記可動フロア部との間に設けられていることを特徴とする自動車の可動フロア装置。
【請求項2】
上記駆動機構は、駆動力を発生させる駆動源と、この駆動源で発生した駆動力を上記昇降機構に伝達する駆動力伝達手段とを備え、上記保持機構はこの駆動力伝達手段と上記可動フロア部との間に設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項3】
上記駆動力伝達手段は、長尺の回転駆動軸部を有し、当該回転駆動軸部を軸心回りに回転させることにより上記駆動源からの駆動力を伝達するように構成されていることを特徴とする請求項2記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項4】
上記保持機構は、上記駆動機構から駆動力が入力されることにより回転する入力軸部と、この入力軸部と係合して入力軸部の回転に伴って回転する出力軸部と、上記入力軸部が回転していない状態において上記出力軸部の回転を規制するストッパーと、上記入力軸部が回転することにより上記ストッパーによる回転規制を解除する解除部とを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項5】
上記保持機構は、上記駆動機構によって回転駆動されるウォームと、このウォームに歯合し回転駆動力を上記昇降機構に伝達するウォームホイールとを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項6】
上記昇降機構は、水平軸回りに正逆回転する回転軸部と、この回転軸部に取り付けられ上記可動フロア部を昇降可能に支持する揺動アーム部とを備え、上記回転軸部が上記保持機構に接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項7】
上記駆動機構が駆動停止した状態でその停止位置に上記可動フロア部を固定フロア部に対して支持する位置決め支持機構が上記昇降機構と別体に設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項6記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項8】
上記可動フロア部は、その前後一端縁のうちいずれか一方が上記固定フロア部に枢支されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項9】
上記昇降機構は、上記シートの位置を調節するシート位置調節機構に連動して駆動されるように構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項10】
上記駆動機構は、乗員によって揺動操作される操作レバーと、この操作レバーが初期姿勢から所定の一方向に揺動操作される場合に当該操作レバーと係合してその揺動力を回転駆動力として伝達するとともに上記操作レバーが初期姿勢に戻る方向に揺動操作される場合に当該操作レバーとの係合を解除して揺動力の伝達を遮断する出力ギヤとを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項11】
上記駆動機構は、乗員の入力操作によって駆動する駆動モータであることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2006−273196(P2006−273196A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97441(P2005−97441)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】