説明

自動車の後部表示装置

【課題】後続車のドライバーに、極く簡単な操作で、所望する文字情報を報せることのできる自動車の後部表示装置を提案する。
【解決手段】車室内のドライバーDRによって発せられた音声を認識する音声認識装置12と、その音声認識装置12によって認識された音声の内容を文字表示する透明導電膜13とを有し、この透明導電膜13は、自動車の後部のリヤウィンドガラス8の下部に貼着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後続車のドライバーに所望する文字情報を報せることのできる自動車の後部表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
快適な運転と安全性の確保を目的として、後続車のドライバーに、例えば「ありがとうございます」又は「前方に歩行者がいます」などの情報を伝えることができるようにした自動車の後部表示装置は従来より周知である(特許文献1及び2参照)。
【0003】
従来のこの種の後部表示装置によっても、後続車のドライバーに所定の情報を確実に伝えることができるのであるが、従来の後部表示装置は、後続車に報せる情報が1つに限られていたり、報せる情報を選択するためにドライバーが選択ボタンを押下するなどの煩雑な操作を必要とする欠点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−278521号公報
【特許文献2】特開2002−2373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、多数の情報のなかから選択された所望する情報を、簡単な操作で後続車のドライバーに報せることのできる自動車の後部表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、車室内のドライバーによって発せられた音声を認識する音声認識装置と、該音声認識装置によって認識された音声の内容を文字表示する透明導電膜とを有し、該透明導電膜は、自動車のリヤウィンドガラスに貼着されていることを特徴とする自動車の後部表示装置を提案する(請求項1)。
【0007】
また、上記請求項1に記載の自動車の後部表示装置において、前記音声認識装置は、予め登録された複数の音声内容のうち、ドライバーにより発せられた音声に最も近い内容の音声を選択し、その選択された音声の文字を前記透明導電膜に表示するように構成されていると有利である(請求項2)。
【0008】
さらに、上記請求項1又は2に記載の自動車の後部表示装置において、前記音声認識装置の作動をオン,オフするスイッチが、車室内に配置されたステアリングホイールに設けられていて、前記透明導電膜は、前記リヤウィンドガラスの表面に沿った当該リヤウィンドガラスの高さ方向幅の1/2の高さ位置よりも下方のリヤウィンドガラス面に貼着されていると有利である(請求項3)。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車室内のドライバーによって発せられた音声を音声認識装置によって認識し、その認識した音声内容を、透明導電膜に文字表示するように構成されているので、多数の情報のなかから選択された所望する情報を、簡単な操作で後続車のドライバーに報せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】後部表示装置を搭載した自動車の概略側面図である。
【図2】図1に示した自動車を後方から見た背面図である。
【図3】車室内に配置されたステアリングホイールの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に従って詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る後部表示装置を搭載した自動車の側面図であり、図2は図1に示した自動車を後方から見た背面図である。図1に示すように、自動車の車室内には、ドライバーDRが着座する運転席1と、その隣りに位置する助手席2とが設けられ、その後方に後部座席3が配置されている。後部座席3のシートバック4の上部にはヘッドレスト5が取り付けられている。また、運転席1に着座したドライバーDRは、ステアリングホイール6を握って自動車を運転する。図1における符号7は車室の前部を区画するフロントウィンドガラス示し、符号8は車室の後部を区画するリヤウィンドガラスを示している。また、符号9,10は、車体11の側部に回動開閉可能に支持されたサイドドアを示している。
【0013】
本例の自動車の後部表示装置は、図1に示すように、車室内のドライバーDRによって発せられた音声を認識する音声認識装置12と、その音声認識装置12によって認識された音声の内容を文字表示するそれ自体公知な透明導電膜13とを有しており、その透明導電膜13は、図2にも示すように、自動車のリヤウィンドガラス8に貼着されている。
【0014】
より具体的に示すと、音声認識装置12には、予め複数の音声内容が登録されている。例えば、「ありがとうございます」、「前方に歩行者がいます」、「車内に子供がいます」、「車間距離をおとり下さい」、「お先にどうぞ」などの10種類程度の音声内容情報が音声認識装置12に記憶されているのである。一方、図3に示すように、車室内に配置されたステアリングホイール6には、音声認識装置12の作動をオン,オフするためのスイッチ14が設けられている。
【0015】
車室内のドライバーDRが、後続車のドライバーに対して所望する情報を伝えたいときは、先ずスイッチ14を押下して、音声認識装置12を起動(オン)させる。次いで、ドライバーDRが、後続の自動車のドライバーに報せたい音声を発すると、音声認識装置12は、予め登録された複数の音声内容のうち、ドライバーDRにより発せられた音声に最も近い内容の音声を選択し、その選択された音声に対応する信号を透明導電膜13に送信する。これにより、透明導電膜13に所定の電流が流されて、その透明導電膜13に、選択された音声の文字、例えば図2に示すように「ありがとうございます」なる文字が表示される。これにより、後続車のドライバーに対して、所望する情報を文字によって正しく報せることができる。再びスイッチ14を押下することにより、音声認識装置12がオフされ、透明導電膜13に表示されていた文字が消失する。
【0016】
上述のように、車室内のドライバーDRは、スイッチ14を押下すると共に、後続車に伝えたい内容の音声を発するだけで、その情報を後続車のドライバーに報せることができ、その操作は極めて簡単である。しかも、スイッチ14は、ステアリングホイール6に設けられているので、ドライバーDRは、ステアリングホイール6を握ったままスイッチ14を操作でき、その操作性が一層高められる。
【0017】
また、ドライバーDRは、予め登録された複数の音声内容のうち、自らが選んだ所望する情報を後続車に報せることができる。このように、後部表示装置の機能が高められているのである。
【0018】
さらに、後部表示装置の非使用時には、透明導電膜13の全体が透明であるため、この透明導電膜13によってドライバーDRが後方の視界を妨げられることはない。また、図1に示すように、透明導電膜13は、リヤウィンドガラス8の表面に沿った当該リヤウィンドガラス8の高さ方向幅HWの1/2の高さ位置Lよりも下方のウィンドガラス面に貼着されている。このように、透明導電膜13は、リヤウィンドガラス8の下部に貼り付けられているので、次に示す効果を奏することができる。
【0019】
ドライバーDRがリヤウィンドガラス8を通して後方を視認した際、一般に、リヤウィンドガラス8の下部は、後部座席3のヘッドレスト5によって覆われて後方を視認できない領域である。このように、元々視認できないリヤウィンドガラス8の領域に透明導電膜13が貼着されているので、その透明導電膜13に文字が表示された状態でドライバーDRが後方を目視したとき、その透明導電膜13によって後方の視界が妨げられるようなことはない。
【符号の説明】
【0020】
6 ステアリングホイール
8 リヤウィンドガラス
12 音声認識装置
13 透明導電膜
14 スイッチ
DR ドライバー
HW 高さ方向幅
L 高さ位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内のドライバーによって発せられた音声を認識する音声認識装置と、該音声認識装置によって認識された音声の内容を文字表示する透明導電膜とを有し、該透明導電膜は、自動車のリヤウィンドガラスに貼着されていることを特徴とする自動車の後部表示装置。
【請求項2】
前記音声認識装置は、予め登録された複数の音声内容のうち、ドライバーにより発せられた音声に最も近い内容の音声を選択し、その選択された音声の文字を前記透明導電膜に表示する請求項1に記載の自動車の後部表示装置。
【請求項3】
前記音声認識装置の作動をオン,オフするスイッチが、車室内に配置されたステアリングホイールに設けられていて、前記透明導電膜は、前記リヤウィンドガラスの表面に沿った当該リヤウィンドガラスの高さ方向幅の1/2の高さ位置よりも下方のリヤウィンドガラス面に貼着されている請求項1又は2に記載の自動車の後部表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−136128(P2012−136128A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289012(P2010−289012)
【出願日】平成22年12月25日(2010.12.25)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】