説明

自動車の荷室底部構造

【課題】深底収納部に対する荷物の出し入れが容易に行われ得るようにした荷室底部構造を提供する。
【解決手段】荷室30の底部に設けられ、上方開口の凹部による第1の床下収納部34と、第1の床下収納部34の底部34Bの一部分に更に深く形成された上方開口の凹部による第2の床下収納部36とを具備した荷室底部構成部材32と、第1の床下収納部34の開口縁部34A近く上段位置と、第1の床下収納部34の底部近くの下段位置のいずれか一方に選択的に配置され、上段位置にて第1の床下収納部34の開口を開閉可能に覆蓋し、平面視で前記第2の床下収納部36の開口の少なくとも一部と整合する領域に開口部58を形成された第1の蓋体52と、前記開口部58を開閉可能に覆蓋する第2の蓋体60とを有することにより、第2の床下収納部36に対する荷物の出し入れが容易に行われ得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の荷室底部構造に関し、特に、ラゲッジフロアリッドと呼ばれるような蓋体を上下二段の高さ位置に変更可能に配置できる型式の荷室底部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハッチバック車やワゴン車等の自動車では、後部座席の後方に、荷室として、車室と連続した空間によるラゲッジスペースが設けられる。このようなラゲッジスペースを有する自動車において、ラゲッジスペースの床面を構成するラゲッジフロアリッドを上下二段の高さ位置に変更可能に配置でき、ラゲッジフロアリッドの取付高さ位置変更によって、長尺物の水平積載のために、前倒しされた後部座席のシートバックの上面とラゲッジスペースの床面とが段差なく連続する状態と、ラゲッジスペースの容積拡大、特に、高さ拡張のために、ラゲッジスペースの床面が前記シートバックの上面より低い状態の何れかを選択的に設定できる荷室底部構造が知られている(例えば、特許文献1、2、3)。
【0003】
また、ラゲッジスペースの底部に、スペアタイヤ以外の物を収納できる上方開口の凹部による床下収納部が形成され、当該床下収納部の開口を折り畳み可能なラゲッジフロアリッドによって開閉可能に覆蓋する荷室底部構造が知られている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−44872号公報
【特許文献2】特開2006−131149号公報
【特許文献3】特開2007−76401号公報
【特許文献4】特開2003−341432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
床下収納部の容積拡大のために、浅底収納部と、浅底収納部の底部の一部分に更に深く形成された上方開口の深底収納部とを設け、上下二段切替配置可能なラゲッジフロアリッドの上段位置を浅底収納部の開口縁部に整合する高さ位置とし、当該上段位置にあるラゲッジフロアリッドによって浅底収納部の開口を覆蓋し、下段位置を浅底収納部の底部と重合して浅底収納部の開口縁部に概ね整合する高さ位置とすることが考えられる。
【0006】
この荷室底部構造では、ラゲッジフロアリッドの上下二段切替配置と、床下収納部の容積拡大とが両立する。しかし、この荷室底部構造では、ラゲッジフロアリッドを下段位置に配置した状態で、ラゲッジフロアリッドを、折り畳んだり、跳ね上げたりして、深底収納部を開く構造にすることが難しく、深底収納部に対する荷物(収納物)の出し入れに際しては、ラゲッジフロアリッドを取り外す必要がある。このため、深底収納部に対する荷物の出し入れが面倒なものになり、床下収納部の容積拡大を図った、せっかくの深底収納部が使い勝手よく有用に利用されない虞がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ラゲッジフロアリッドを下段位置に配置しても深底収納部に対する荷物の出し入れが容易に行われ得るようにし、床下収納部の容積拡大を図るべく設けられた深底収納部の使い勝手をよくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による自動車の荷室底部構造は、自動車の車体に設けられる荷室の底部構造であって、荷室の底部に設けられ、上方開口の凹部による第1の床下収納部と、前記第1の床下収納部の底部の一部分に更に深く形成された上方開口の凹部による第2の床下収納部とを具備した荷室底部構成部材と、前記第1の床下収納部の開口縁部近く上段位置と、前記第1の床下収納部の底部近くの下段位置のいずれか一方に選択的に配置され、前記上段位置にて前記第1の床下収納部の開口を開閉可能に覆蓋し、平面視で前記第2の床下収納部の開口の少なくとも一部と整合する領域に開口部を形成された第1の蓋体と、前記開口部を開閉可能に覆蓋する第2の蓋体とを有する。
【0009】
本発明による自動車の荷室底部構造は、好ましくは、前記第2の蓋体は前記第1の蓋体にヒンジ接続されて開閉可能な扉状をなしている。
【発明の効果】
【0010】
本発明による自動車の荷室底部構造によれば、ラゲッジフロアリッドに相当する第1の蓋体に、開口部(小窓)が設けられていて、当該開口部が第2の蓋体によって開閉可能に蓋されるようになっていることにより、第1の蓋体が下段位置に配置されていても第2の蓋体を開けるだけで、開口部をもって第2の床下収納部(深底収納部)に対する荷物の出し入れを行うことができる。
【0011】
これより、第2の床下収納部に対する荷物の出し入れが容易に行われ得るようなり、第2の床下収納部の使い勝手がよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による自動車の荷室底部構造の一つの実施形態のラゲッジフロアリッド上段位置状態を示す断面図。
【図2】本発明による自動車の荷室底部構造の一つの実施形態のラゲッジフロアリッド下段位置状態を示す断面図。
【図3】本実施形態による自動車の荷室底部構造のラゲッジフロアリッド上段位置状態を示す斜視図。
【図4】本実施形態による自動車の荷室底部構造のラゲッジフロアリッド下段位置状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明による自動車の荷室底部構造の一つの実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。
【0014】
本実施形態は、ハッチバック車やワゴン車等の荷室底部構造であり、当該荷室底部構造に関連する車体後部は、リアフロワパネル10と、リアフロワパネル10の後端に接合されたリアパネル12とを有する。後部座席14は、リアフロワパネル10上に設けられたシートクッション14Aと、前倒し可能なシートバック14Bを有する。
【0015】
車体後部には荷室としてラゲッジスペース30が設けられている。ラゲッジスペース30は、後部座席14の車体後方側に、左右のリアサイドトリム16と、図示されていないルーフパネルおよびテールゲートと、後述するラゲッジフロアリッド50、52、54、56により画定された空間である。
【0016】
ラゲッジスペース30の下底部には、荷室底部構成部材であるラゲッジフロアアンダ部材32が設けられている。ラゲッジフロアアンダ部材32は、上部部材32Aと、下部部材32Bとにより構成されている。ラゲッジフロアアンダ部材32には、上方開口の凹部による浅底の第1の床下収納部34と、第1の床下収納部34の底部の車体後方側の一部分に更に深く形成された上方開口の凹部による深底の第2の床下収納部36とが形成されている。
【0017】
ラゲッジフロアアンダ部材32には、第1の床下収納部34の開口縁部(上縁部)34A近くの高さ位置に後述するラゲッジフロアリッド52を取り外し可能に水平支持する上部棚受け部38と、第1の床下収納部34の底部34B近くの高さ位置にラゲッジフロアリッド52を取り外し可能に水平支持する下部棚受け部40とが形成されている。
【0018】
ラゲッジフロアリッド50、52、54、56は、板状のものであり、このうち、ラゲッジフロアリッド(第1の蓋体)52は第1の床下収納部34の真上位置に取り外し可能に配置され、ラゲッジフロアリッド50はラゲッジフロアリッド52の車体前方側に固定配置され、ラゲッジフロアリッド54、56はラゲッジフロアリッド52の左右両側に固定配置される。
【0019】
ラゲッジフロアリッド52は、図1、図3に示されているように、上部棚受け部38によって水平支持されることにより、他のラゲッジフロアリッド50、54、56と面一になる第1の床下収納部34の開口縁部34A近くの高さ位置にて第1の床下収納部34の開口を開閉可能に覆蓋する上段位置に位置し、図2、図4に示されているように、下部棚受け部40によって水平支持されることにより、第1の床下収納部34の底部34B近くの下段位置に位置する。
【0020】
ラゲッジフロアリッド52は、平面視で第2の床下収納部36の開口の少なくとも一部と整合する領域に開口部58を形成されている。ラゲッジフロアリッド52には開閉リッド(第2の蓋体)60がヒンジ62によってヒンジ接続されている。換言すると、開閉リッド60は、車体前方側の縁部をヒンジ62によってラゲッジフロアリッド52にヒンジ接続され、開口部58を開閉可能に覆蓋する。ラゲッジフロアリッド52には、開閉リッド60を手で掴むための凹部64が形成されている。
【0021】
長尺物の水平積載等のために、前倒しされた後部座席14のシートバック14Bの上面とラゲッジスペース30の床面とが段差なく連続する状態にしたい場合には、ラゲッジフロアリッド52を、図1、図3に示されているように、上部棚受け部38によって水平支持される上段位置に位置させればよい。
【0022】
ラゲッジフロアリッド52が上段位置にある場合には、第2の床下収納部36に加えて第1の床下収納部34が床下収納空間として有効に機能する。第1の床下収納部34に対する荷物の出し入れは、図1に仮想線によって示されているように、ラゲッジフロアリッド52を跳ね上げることにより、行うことができる。
【0023】
ラゲッジスペース30の容積拡大、特に、高さを拡張したい場合には、図2、図4に示されているように、下部棚受け部38によって水平支持される下段位置に位置させればよい。
【0024】
ラゲッジフロアリッド52が、上段位置、下段位置の何れにある場合も、図1、図2、図4に示されているように、ヒンジ62を回動中心として開閉リッド60を持ち上げ回動させて開口部58を開くことにより、ラゲッジフロアリッド52を取り外すことなく第2の床下収納部36に対する荷物の出し入れを行えことができる。
【0025】
これにより、第2の床下収納部36に対する荷物の出し入れが容易に行われ得るようになり、第2の床下収納部36の使い勝手がよくなる。
【0026】
また、灯油缶のように、倒れては困る荷物は、開閉リッド60を開けて荷物を開口部60の縁によって拘束することにより、走行中も、荷物を倒さずに保持することができる。
【0027】
本実施形態では、左側のラゲッジフロアリッド56の下方にも床下収納ボックス70が配置されている。ラゲッジフロアリッド56は、ヒンジ66によってヒンジ接続されたリッド片68を有している。床下収納ボックス70に対する荷物の出し入れは、リッド片68を開くことにより行えるようになっている。
【符号の説明】
【0028】
10 リアフロワパネル
14 後部座席
30 ラゲッジスペース
32 ラゲッジフロアアンダ部材
34 第1の床下収納部
36 第2の床下収納部
38 上部棚受け部
40 下部棚受け部
50、52、54、56 ラゲッジフロアリッド
58 開口部
60 開閉リッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体に設けられる荷室の底部構造であって、
荷室の底部に設けられ、上方開口の凹部による第1の床下収納部と、前記第1の床下収納部の底部の一部分に更に深く形成された上方開口の凹部による第2の床下収納部とを具備した荷室底部構成部材と、
前記第1の床下収納部の開口縁部近く上段位置と、前記第1の床下収納部の底部近くの下段位置のいずれか一方に選択的に配置され、前記上段位置にて前記第1の床下収納部の開口を開閉可能に覆蓋し、平面視で前記第2の床下収納部の開口の少なくとも一部と整合する領域に開口部を形成された第1の蓋体と、
前記開口部を開閉可能に覆蓋する第2の蓋体と、
を有する自動車の荷室底部構造。
【請求項2】
前記第2の蓋体は前記第1の蓋体にヒンジ接続されて開閉可能な扉状をなしている請求項1に記載の自動車の荷室底部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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