説明

自動車の車体後部構造

【課題】車高違い車両の後突による後突車両の乗り上げ回避、衝突荷重の分散が十分に行われ、後突時のキャビン(車室)の変形を効果的に抑制すること。
【解決手段】車体前後方向に延在するリアフロアフレーム21に接続され、車体後部の車幅方向側部に上下方向に設けられたリア縦フレーム31と、サイドドア9に設けられているドアービーム13と同じ高さ位置に配置されて後輪配置部の上方部を車体前後方向に延在し、後端部をリア縦フレーム31に接続されたリア水平フレーム33とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体後部構造に関し、特に、車室内と後部荷室とを区画するリアバルクヘッドが無いハッチバックタイプの自動車に適した車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内と後部荷室とを区画するリアバルクヘッド(隔壁)が無いハッチバックタイプの自動車の車体後部構造として、リアフロアフレームを後部側を上方に曲がって延びるキックアップ部を設ける共に、キックアップ部より下方に当該キックアップ部と略平行に延在するレインフォースメントを設け、これらの後端を各々リアピラーに接続し、更にリアピラーと後部座席後方のクォータピラーとの間に車体前後方向に延在するサスペンション支持メンバを設けたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、車体前後方向に延在するリアフロアサイドメンバと当該リアフロアサイドメンバより上側に配置されたリアクロスメンバとを鈎形の連結部材によって連結した車体後部構造がある(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−322822号公報
【特許文献2】特開2006−273134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車体後部構造は、車体後部の剛性向上が図られ、後突(後面衝突)に対する耐力が向上する。しかし、衝突荷重の分散、車高違い車両の後突による後突車両の乗り上げ回避について十分な対策が成されているとは云えない。
【0005】
特許文献2の車体後部構造は、車高違い車両の後突による後突車両の乗り上げ回避、衝突荷重の分散について対策されたものであるが、十分ではなく、しかも、後部座席からリアクロスメンバまでの距離が短いハッチバックタイプの小型車ではスペースを有効に利用できず、効果的な適用が難しい。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、後部座席からリアクロスメンバまでの距離が短いハッチバックタイプの小型車においても、車高違い車両の後突による後突車両の乗り上げ回避、衝突荷重の分散が十分に行われ、後突時のキャビン(車室)の変形を効果的に抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による自動車の車体後部構造は、車体前後方向に延在するリアフロアフレームに接続され、車体後部の車幅方向側部に上下方向に設けられたリア縦フレームと、サイドドアに設けられているドアービームと同じ高さ位置に配置されて後輪配置部の上方部を車体前後方向に延在し、後端部を前記リア縦フレームに接続されたリア水平フレームとを有する。
【0008】
本発明による自動車の車体後部構造は、好ましくは、前記リア縦フレームは、後輪配置部より車体後部にあって、前記リアフロアフレームとの接続高さ位置より車体前後方向に見て前記後輪配置部と重畳する高さ位置まで垂下している。
【0009】
本発明による自動車の車体後部構造は、好ましくは、前記リア縦フレームと前記リア水平フレームは、車幅方向の左右両側に各々設けられており、左右の前記リア縦フレームが車体後部を車幅方向に延在するリアクロスメンバによって互いに接続されている。
【0010】
本発明による自動車の車体後部構造は、好ましくは、前記リア水平フレームの車室内側に給油口用の燃料パイプが配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明による自動車の車体後部構造によれば、車体後部の車幅方向側部に上下方向に設けられたリア縦フレームは、後突車両のフロントバンパ位置の如何に拘わらず後突荷重を受け止める。これにより、後部座席からリアクロスメンバまでの距離が短いハッチバックタイプの小型車においても、車高違い車両の後突による後突車両の乗り上げ回避が行われる。
【0012】
リア縦フレームが受けた後突荷重は、リアフロアフレームとリア水平フレームに分散し、リア水平フレームより更にドアービームへ伝わり、ドアービームが後突荷重の車体前方への分散に積極的に寄与する。これにより、後突対策専用部品の点数を削減した上で、衝突荷重の分散が十分に行われ、後突時のキャビンの変形が効果的に抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明による自動車の車体後部構造の一つの実施形態を、図1〜図3を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明による車体後部構造を適用されたハッチバックタイプの自動車の全体構成を示している。図1において、1は車体全体を、3は前輪(フロントタイヤ)を、5は後輪(リアタイヤ)を、7はフロントサイドドアを、9はリアサイドドアを、11はテールゲートを各々示している。
【0015】
左右のリアサイドドア9は、各々、ドアインナパネル9Aと、ドアスキン(ドアアウタパネル)9Bとの組立体により構成されている。リアサイドドア9の内部には、パイプ式のドアービーム13が設けられている。ドアービーム13は、ドア補強用のものであり、リアサイドドア9を車体前後方向にほぼ水平に延在し、前端をドアインナパネル9Aの前部に、後端をドアインナパネル9Aの後部に各々ブラケット14等によって固定されている。
【0016】
車体後部構造体として、リアアウタサイドパネル15と、リアインナサイドパネル17と、車体前後方向に延在する左右のリアフロアフレーム21と、車体後部を車幅方向に延在するリアクロスメンバ(スペアパンクロスメンバ)23とが設けられている。リアクロスメンバ23は、左右のリアフロアフレーム21の後端部を各々接続(溶接)され、左右のリアフロアフレーム21を互いに連結している。
【0017】
リアクロスメンバ23の車体後方側にはリアバンパビームエクステンション25によってリアバンパビーム27が取り付けられている。リアバンパビーム27の外側にはリアバンパフェース29が設けられている。
【0018】
車体後部の車幅方向の左右両側部には各々上下方向に延在するリア縦フレーム31が設けられている。左右のリア縦フレーム31は、車体後部の左右両隅部にあり、リアフロアフレーム21との接続部23Aより車幅方向外方に延びたリアクロスメンバ23の端部23Bに接続(溶接)され、リアフロアフレーム21によって支持されている。換言すると、左右のリア縦フレーム31は車体後部を車幅方向に延在するリアクロスメンバ23によって互いに接続されている。左右のリア縦フレーム31は、左右のリアインナサイドパネル17にも溶接等によって接続されている。
【0019】
左右のリア縦フレーム31は、左右の後輪5の真後位置にあり、リアクロスメンバ23との接続部より上方に延在する上延在部31Aと、リアクロスメンバ23との接続部より下方に延在(垂下)する下延在部31Bとを有する。下延在部31Bはリアフロアフレーム21との接続高さ位置より車体前後方向に見て後輪配置部と重畳する高さ位置まで垂下している。
【0020】
左右の後輪配置部の上方部には、各々、車体前後方向にほぼ水平に延在する左右のリア水平フレーム33が設けられている。左右のリア水平フレーム33は、本実施形態では、各々、リアインナサイドパネル17の車室内側に配置されて前後両端をリアインナサイドパネル17のフランジ面に溶接された後方水平フレーム33Aと、後方水平フレーム33Aと同一高さ位置において前端をリアアウタサイドパネル15のフランジ目に溶接され、後端をリアインナサイドパネル17のフランジ面に溶接された前方水平フレーム33Bとに分割構成されており、後端をリアインナサイドパネル17を介してリア縦フレーム31に接続されている。
【0021】
左右のリア水平フレーム33は、左右のリア水平フレーム33が左右のリアサイドドア9に設けられているドアービーム13と同じ高さ位置に設けられている。
【0022】
給油口用の燃料パイプ12は、給油リッド12Aが設けられている側のリア水平フレーム33の車室内側に配置されている。
【0023】
次に、本実施形態による車体後部構造の作用効果について説明する。
【0024】
リア縦フレーム33が車体後部の車幅方向側部において上下方向に延在しているので、、リア縦フレーム33の上下寸法範囲において、リア縦フレーム33が後突荷重を受け止める。
【0025】
これにより、リア縦フレーム33の上下寸法範囲内において後突車両のフロントバンパ位置の如何に拘わらず、リア縦フレーム33が後突荷重を受け止めるから、後部座席からリアクロスメンバ23までの距離が短いハッチバックタイプの小型車においても、車高違い車両の後突による後突車両の乗り上げが回避される。
【0026】
また、リア縦フレーム31が、車体前後方向に見て後輪配置部と重畳する高さ位置にまで垂下していることにより、後突時のリア縦フレーム31の前方変位が、後輪5、特にタイヤによって阻止される。これにより、後突車両の乗り上げ回避がより確実になる。
【0027】
リア縦フレーム33が受けた後突荷重は、リアクロスメンバ23を介してリアフロアフレーム21に分散すると共にリア水平フレーム33に分散し、リア水平フレーム33より更にドアービーム13へ伝わる。このようにして、ドアービーム13は後突荷重の車体前方への分散に積極的に寄与する。
【0028】
これにより、つまり、ドアービーム13の後突対策についての有効利用により、後突対策専用部品の点数を削減した上で、衝突荷重の分散が十分に行われ、後突時のキャビンの変形が効果的に抑制される。
【0029】
また、左右のリア縦フレーム33がリアクロスメンバ23によって互いに接続されているので、オフセット衝突時の衝突荷重がオフセット衝突側とは反対の側へ分散する。
【0030】
これにより、オフセット衝突時の衝突荷重の分散も良好になり、車体後部の構造体の板厚を薄くでき、車体の軽量化を図ることができる。また、この接続構造により、左右のリア縦フレーム33を左右の後輪5の後方に、容易く垂直配置することができる。
【0031】
また、リア水平フレーム33の車室内側に燃料パイプ12が配置されていることにより、燃料パイプ12の変形に対してリア水平フレーム33が保護する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による車体後部構造を適用されたハッチバックタイプの自動車の全体構成を示す図である。
【図2】図1の線II−IIに沿った断面図に相当する要部の平断面図である。
【図3】図1のIII矢視図に相当する要部の背面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 車体全体
3 前輪
5 後輪
7 フロントサイドドア
9 リアサイドドア
11 テールゲート
12 燃料パイプ
13 ドアービーム
15 リアアウタサイドパネル
17 リアインナサイドパネル
21 リアフロアフレーム
23 リアクロスメンバ
31 リア縦フレーム
33 リア水平フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延在するリアフロアフレームに接続され、車体後部の車幅方向側部に上下方向に設けられたリア縦フレームと、
サイドドアに設けられているドアービームと同じ高さ位置に配置されて後輪配置部の上方部を車体前後方向に延在し、後端部を前記リア縦フレームに接続されたリア水平フレームと、
を有する自動車の車体後部構造。
【請求項2】
前記リア縦フレームは、後輪配置部より車体後部にあって、前記リアフロアフレームとの接続高さ位置より車体前後方向に見て前記後輪配置部と重畳する高さ位置まで垂下している請求項1に記載の自動車の車体後部構造。
【請求項3】
前記リア縦フレームと前記リア水平フレームは、車幅方向の左右両側に各々設けられており、左右の前記リア縦フレームが車体後部を車幅方向に延在するリアクロスメンバによって互いに接続されている請求項1または2に記載の自動車の車体後部構造。
【請求項4】
前記リア水平フレームの車室内側に給油口用の燃料パイプが配置されている請求項1から3の何れか一項に記載の自動車の車体後部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−173107(P2009−173107A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12472(P2008−12472)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】