説明

自動車の運転姿勢調整装置

【課題】各体格のドライバに対してフロア51の昇降位置を最適にすることが可能な自動車の運転姿勢調整装置1を提供する。
【解決手段】可動フロア51の昇降位置を調整するフロア調整手段5は、検出されたドライバの体格に応じて、当該体格が小さいほどフロア51が上昇するように、ドライバの体格に略比例する第1の調整特性でもってフロア51の位置を調整すると共に、検出された体格が所定の体格よりも小さいときには、第1の調整特性とは異なる第2の調整特性でもってフロア51の昇降位置を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席に着座するドライバの運転姿勢を調整する自動車の運転姿勢調整装置に係り、特にドライバが踏み操作するペダルの近傍に配設されたフロアの昇降位置を調整する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の運転姿勢調整装置として、ドライバの体格を検出し、その検出した体格に応じて、ペダルやフロア位置等を含む各種の運転操作系を調整する装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭63−69655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の運転姿勢調整装置は、ドライバの体格が大きいほど、運転操作系の配設位置をドライバから遠ざけ、ドライバの体格が小さいほど、運転操作系の配設位置をドライバに近づけるようにしている。つまり、ドライバの体格に略比例した調整特性でもって運転操作系の配設位置を調整している。
【0004】
ところで、ドライバには男性と女性とが含まれるが、男性の履物に比べて女性の履物の踵が高い場合が多々ある。履物の踵の高低によってドライバの実質的な脚の長さが変化するため、体格に対する脚の長さと相違することになる。そのため、運転操作系の1つであるペダル及びその近傍のフロアに着目すると、単にドライバ体格に略比例した調整特性でもってフロアの昇降位置を調整したのでは、ドライバの履物によってはペダルに対するフロアの昇降位置が最適化されない場合が起こり得る。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、各体格のドライバに対してフロアの昇降位置を最適にすることが可能な自動車の運転姿勢調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の運転姿勢調整装置は、運転席に着座するドライバの運転姿勢を調整する自動車の運転姿勢調整装置である。
【0007】
この運転姿勢調整装置は、上記ドライバの体格を検出する体格検出手段と、上記ドライバが踏み操作するペダルと、上記ペダルの近傍で、昇降可能に配設された可動フロアと、上記可動フロアの昇降位置を調整するフロア調整手段と、を備える。
【0008】
そして、上記フロア調整手段は、上記体格検出手段によって検出されたドライバの体格に応じて、当該体格が小さいほど上記可動フロアの位置が上方に位置するように、上記ドライバの体格に略比例する第1の調整特性でもって上記可動フロアの昇降位置を調整すると共に、上記検出された体格が所定の体格よりも小さいときには、上記第1の調整特性とは異なる第2の調整特性でもって上記可動フロアの昇降位置を調整する。
【0009】
この構成によると、フロア調整手段は、体格検出手段によって検出されたドライバの体格に応じて、ドライバの体格に略比例する第1の調整特性でもって可動フロアの昇降位置を調整する。これによってドライバの体格が小さいほど可動フロアが上昇するようになり、ドライバの体格に応じた最適な昇降位置に可動フロアが位置する。
【0010】
そして、上記フロア調整手段は、上記体格検出手段によって検出された体格が所定の体格よりも小さいときには、上記第1の調整特性とは異なる第2の調整特性でもって上記可動フロアの昇降位置を調整する。つまり、ドライバの体格に略比例する第1の調整特性のみで可動フロアの昇降位置を調整したのでは、履物の踵の高低によって、可動フロアの昇降位置が最適化されない場合が生じるのに対し、所定の体格よりも小さいときには、第1の調整特性とは異なる第2の調整特性でもって、可動フロアの昇降位置を調整することによって、履物の踵の高さを考慮して、各体格のドライバに対し可動フロアの昇降位置が最適化される。
【0011】
尚、「所定の体格」は、例えば比較的体格の小さい男性の体格とすることができ、その場合、所定の体格よりも小さい体格は女性に相当する。つまり、所定の体格よりも小さい体格のドライバは、踵の高い履物を履くことの多いドライバに相当するのである。
【0012】
ここで、上記第2の調整特性は、上記ドライバの体格が小さいほど上記可動フロアが上方に位置する特性であると共に、上記第1の調整特性に比べて体格の変化に対する可動フロアの昇降位置の調整量が抑制された特性としてもよい。
【0013】
こうすることで、上記フロア調整手段は、上記検出された体格が所定の体格よりも小さいときには、その所定の体格に対応するフロア昇降位置に対して、可動フロアの昇降位置を大きく変化させないことになる。それによって、踵の高い履物を履くことによって、実質的な脚の長さが、体格に対する脚の長さよりも長くなる女性ドライバに対し可動フロアの昇降位置が最適化される。
【0014】
また、第2の調整特性は調整量が抑制された特性であるため、可動フロアの昇降可能な範囲(昇降しろ)を小さくすることが可能になり、車室空間の拡大の点で有利になる。
【0015】
また、これとは異なり、上記第2の調整特性は、上記ドライバの体格の変化に対して上記可動フロアの昇降位置を変化させない特性としてもよい。
【0016】
こうすることで、上記フロア調整手段は、上記検出された体格が所定の体格よりも小さいときには、所定の体格に対応するフロア昇降位置のままにすることになる。それによって、上記と同様に、踵の高い履物を履くことによって、実質的な脚の長さが、体格に対する脚の長さよりも長くなる女性ドライバに対し可動フロアの昇降位置が最適化されると共に、可動フロアの昇降しろを小さくすることが可能になり、車室空間の拡大の点で有利になる。
【0017】
さらに、上記第2の調整特性は、上記ドライバの体格が小さいほど上記可動フロアが下方に位置する特性としてもよい。
【0018】
こうすることで、上記フロア調整手段は、上記検出された体格が所定の体格よりも小さいときには、その所定の体格に対応するフロア昇降位置よりも下方に、可動フロアを位置付けることになる。それによって、上記と同様に、踵の高い履物を履くことによって、実質的な脚の長さが、体格に対する脚の長さよりも長くなる女性ドライバに対し可動フロアの昇降位置が最適化されると共に、可動フロアの移動しろを小さくすることが可能になり、車室空間の拡大の点で有利になる。
【0019】
上記運転姿勢調整装置は、上記体格検出手段によって検出されたドライバの体格に応じて、上記ペダルの配設位置を調整するペダル調整手段をさらに備える、としてもよい。
【0020】
つまり、上記フロア調整手段が、ドライバの体格に応じて可動フロアの昇降位置を調整すると共に、ペダル調整手段によってペダルの配設位置を調整することによって、ドライバのペダルに対する姿勢をより細やかに調整することが可能になる。また、ペダルの配設位置を調整することによって、可動フロアの調整量を少なくすることも可能になり、ひいては可動フロアの昇降しろを小さくして、車室空間の拡大が図られる。
【0021】
上記運転席は、座面の位置を調整するシート調整手段と、該シート調整手段によって調整された座面の位置を検出するシート位置検出手段と、を備え、上記体格検出手段は、上記シート位置検出手段からなる、としてもよい。
【0022】
こうすることで、体格検出手段を別途設ける必要がなくなる上に、運転席に着座したドライバが、シート調整手段によって座面の位置を調整した後に、その座面の位置によって体格が検出されてペダル調整手段によるペダルの配設位置が調整される。つまり、ドライバが、目線の位置やステアリングホイールに対する姿勢を調整すべく座面の位置を調整してドライバの着座位置が決定された後に、ペダルの配設位置が調整されることで、ドライバの運転姿勢の調整を的確に行い得る。
【0023】
上記シート調整手段は、上記座面の、車両前後方向位置及び上下方向位置、並びに角度を連動して調整することによって、上記ドライバを、その体格に対応するモードの姿勢にさせかつ該姿勢を維持しつつ所定の車幅方向軸周りに回動させ、それによって体格の異なる各ドライバの目線の位置を一定にし、上記フロア調整手段は、上記シート調整手段による座面の調整に連動して上記可動フロアの昇降位置及び角度を調整する、としてもよい。
【0024】
シート調整手段が、座面の、車両前後方向位置及び上下方向位置、並びに角度を連動して調整することによって、体格の異なる各ドライバの着座姿勢を適切に調整しつつ、座面の車両前後方向に対する移動しろが小さくなる。また、シート調整手段による座面の調整に連動してフロア調整手段が可動フロアの昇降位置及びその角度を調整することによって、回動されるドライバの着座姿勢に応じてペダルに対する足の角度が適正化される。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明の自動車の運転姿勢調整装置によると、ドライバの体格に応じてドライバの体格に略比例する第1の調整特性でもって可動フロアの昇降位置を調整することにより、ドライバの体格に応じた最適な配設位置に可動フロアが配設されると共に、ドライバの体格が所定の体格よりも小さいときには、上記第1の調整特性とは異なる第2の調整特性でもって上記可動フロアの昇降位置を調整することにより、可動フロアの位置を、ドライバの履物の踵の高さを考慮して設定することが可能になり、各体格のドライバに対し可動フロアの昇降位置を最適化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態に係る自動車の運転姿勢調整装置1の全体構成を示している。この運転姿勢調整装置1は、ステアリングホイール2が配設された運転席に着座するドライバの運転姿勢を調整する装置であり、運転席に設けられたシート31の位置を調整するシート調整手段4と、ペダル近傍の可動フロア51の昇降位置を調整するフロア調整手段5と、アクセルペダル71の配設位置を調整するアクセルペダル調整手段7及びブレーキペダル81の配設位置を調整するブレーキペダル調整手段8と、を含む。
【0028】
上記運転席に相当するアンダーフロア91には、スライド機構40が配設されている。このスライド機構40は、図2に示すように、アンダーフロア91に固定されたロアレール41と、ロアレール41に対して車両前後方向(以下、単に前後方向という)に摺動可能なアッパレール42とからなる。尚、アッパレール42は、通常時はロアレール41に対して位置固定されている。
【0029】
上記シート調整手段4は、上記アッパレール42と、上記シート31のシートクッションが固定されるシートフレーム32との間に配設されており、このシート調整手段4は、上記シート31の座面の、前後方向位置及び上下方向位置並びに角度を連動して調整する。
【0030】
具体的にシート調整手段4は、それぞれ上記アッパレール42に取り付けられた支持ブラケット43にピン結合される前側リンク44と後側リンク45とを備えている。この2つのリンク44,45の内、前側リンク44は上記シートフレーム32の前端位置にピン結合される一方、後側リンク45は上記シートフレーム32の後端位置のピン結合されている。
【0031】
また、上記前側リンク44は後側リンク45に比べてリンク長が長く設定されていると共に、後側リンク45には、その長手方向に延びるスリット45aが形成されている。
【0032】
上記シート調整手段4はまた、上記前側リンク44と後側リンク45との中間位置に位置し、上記アッパレール42に取り付けられたギヤボックス46を備えている。
【0033】
上記ギヤボックス46は、操作レバー47と、この操作レバー47に対して回転一体に取り付けられたラチェット47aと、このラチェット47aと係合して回転するギヤ47bと、このギヤ47bと回転一体に設けられたピニオン(又はウォーム)47cと、このピニオン47cに噛み合うラック部材48と、を有している。
【0034】
上記操作レバー47は、ドライバが手動で操作するレバーであり、車幅方向に延びる所定の回転軸周りに回転可能に上記ギヤボックス46に取り付けられている。上記ギヤ47b及びピニオン47cは、上記操作レバー47(及びラチェット47a)の回転軸に平行な別の回転軸周りに回転可能に上記ギヤボックス46に取り付けられている。
【0035】
上記ラック部材48は、前後方向に延びるように配設されて、その略中間部が上記ピニオン47cに噛み合っており、上記ラック部材48の後端部は上記後側リンク45のスリット45aに対してスライドピン48aにより結合されている。
【0036】
これによって、ドライバが上記操作レバー47を回動操作することによって、ラチェット47a、ギヤ47b、及びピニオン47cを介してラック部材48が前後方向に移動し、それに伴いスライドピン48aを介して結合された後側リンク45が起伏する。そうして、上記シートフレーム32、ひいてはシート31の座面は、上記前側リンク44と後側リンク45とによって、その位置を変更することになるが、このときに、上記前側リンク44と後側リンク45とのリンク長が互いに相違することによって、上記座面は、その前後方向位置、上下方向位置、及び角度が連動して変更されることになる。具体的には、座面が前方に移動するほど、上方に位置すると共に座面の水平に対する角度は小さくなり(図2の二点鎖線参照)、座面が後方に移動するほど、下方に位置すると共に座面の水平に対する角度は大きくなる(図2の一点鎖線参照)。ここで、図1に示す位置a1は、体格が大きいドライバの着座状態に対応し、位置b1は体格が所定体格の(比較的小さい体格の男性)ドライバの着座状態に対応し、位置c1は所定体格よりも体格が小さい(女性)ドライバの着座状態に対応する。
【0037】
このように、座面の前後方向位置、上下方向位置、及び角度を連動して変更することによって、単に座面の前後方向位置を変更するだけの場合とは異なり、体格毎に運転姿勢(モード)を異ならせることができる。つまり、図3に示すように、体格の大きいドライバM1,M2(男性の比較的体格の大きいドライバ)は、膝が曲がる姿勢(いわゆるRV車における運転姿勢(RVモード)、図4参照)となり、体格の小さいドライバM3,F3(男性の比較的体格の小さいドライバ及び女性の比較的体格の小さいドライバ)は、膝が伸びる姿勢(いわゆるセダンにおける運転姿勢(セダンモード)、図4参照)となる。また、上記の座面の調整は、図4に示すように、体格に対応するモードの姿勢にされたドライバを、所定の車幅方向軸(例えばアクセルペダル71の揺動中心に設定すればよい)周りに回動させることになる(図4のP1,P1’参照)。このモード及び回動の組み合わせによって、図3に示すように、体格の異なる各ドライバM1,M2,M3,Fの目線Eの位置を同じにすることができる。
【0038】
こうした運転姿勢の調整によって、体格の異なる各ドライバの運転姿勢の適正化だけでなく、体格の大きいドライバは膝が曲がる姿勢となり、体格の小さいドライバは膝が伸びる姿勢となるため、シート31の前後方向に対する移動可能な範囲(移動しろ)を小さくすることができるという利点もある(図4のL1参照)。
【0039】
そして、図1に示すように、上記シート31には、シート位置検出センサ49が設けられており、このセンサ49によってシート31(座面)の位置が検出される。
【0040】
上記ペダル71,81の近傍に位置するフロアは、上記フロア調整手段5によってその昇降位置が調整される可動フロア51であって、この可動フロア51は、図5,6に示すように、前後方向に並んだ前側フロア51aと後側フロア51bとが互いにヒンジ結合されて構成される。上記前側フロア51aはその前端部がアンダーフロア91に対して車幅方向に延びる枢軸回りに枢支される一方、上記後側フロア51bの後端は後述するベースプレート52を覆うように配設されたアッパーフロア92の上面に載置されており、後述するように、上記可動フロア51の昇降に応じてこのアッパーフロア92の上面を摺動するようになっている。
【0041】
上記フロア調整手段5は、上記固定構造のアンダーフロア91と可動フロア51との間の配設されている。このフロア調整手段5は、上記アンダーフロア91の上面に取り付けられて運転席において車幅方向に拡がるベースプレート52と、前後方向に延びる2つのリンクロッド53(図5では1つのみ示す)と、この2つのリンクロッド53の前端部にそれぞれピン結合される2つのスイングアーム54(図5では1つのみ示す)と、上記2つのリンクロッド53の後端部にそれぞれピン結合される2つのモータリンク55(図5では1つのみ示す)と、を備えている。また、上記ベースプレート52上面における車幅方向の略中央位置にはフロアモータ56が配設されており、このフロアモータ56の出力軸56aは、車幅方向の両側外方に向かって延びている。
【0042】
上記2つのリンクロッド53はそれぞれ、図6に示すように、上記ベースプレート52の車幅方向両側外方に配設されている。
【0043】
図5に示すように、上記各モータリンク55は、その一端部が上記リンクロッド53の後端部にピン結合される一方、その他端部は、上記フロアモータ56の出力軸56aに対して連結されている。
【0044】
上記各スイングアーム54は側面視で略L字状に形成されており、そのL字状スイングアーム54の屈曲部が、上記ベースプレート52の前端上面に車幅方向に延びるように設けられた回転支軸54aに対し連結されている。また、上記スイングアーム54の屈曲部を挟んだ一方の端部が、上記リンクロッド53の前端部に対してピン結合される一方、上記スイングアーム54の屈曲部を挟んだ他方の端部には、車幅方向に延びるローラ57が回転可能に取り付けられている。このローラ57は、ベースプレート52の車幅方向両側外方それぞれに配設された2つのスイングアーム54の間を互いに連結するように配設されていると共に、上記可動フロア51(前側フロア51a)の下面に当接している。
【0045】
これによって、上記フロアモータ56を駆動させると、モータリンク55を介してリンクロッド53が前後方向に移動し、それによって上記スイングアーム54が回転支軸54a周りに回動する。そうして、このスイングアーム54に取り付けられたローラ57の上下方向位置が変更されることになり、このローラ57に当接する可動フロア51の昇降位置が変更されることになる。すなわち、上記リンクロッド53が後方に移動するようにフロアモータ56を駆動させたときには、上記スイングアーム54が反時計回りに回動し、ローラ57が上方に移動する。その結果、前側フロア51aが上記枢軸を中心として反時計回りに上方に回動し、それに伴い後側フロア51bが時計回りに回動する。そうして可動フロア51が上昇する。これに対し、上記リンクロッド53が前方に移動するようにフロアモータ56を駆動させたときには、上記スイングアーム54が時計回りに回動し、ローラ57が下方に移動する。その結果、前側フロア51aが上記枢軸を中心として時計回りに下方に回動し、それに伴い後側フロア51bが反時計回りに回動する。そうして可動フロア51が下降する。このように上記可動フロア51は、昇降位置の変更に伴いその角度も変更される。
【0046】
上記アクセルペダル調整手段7及びブレーキペダル調整手段8は、アクセルペダル71及びブレーキペダルの操作角度及び踏み面高さを同時に調整するものである。アクセルペダル調整手段7の構成とブレーキペダル調整手段8の構成とは共に同じであるため、以下、図7,8を参照しながらアクセルペダル調整手段7の構成について説明し、ブレーキペダル調整手段8の構成についてはその説明を省略する。
【0047】
図7,8に示すように、上記アクセルペダル調整手段7は、ダッシュパネル93(図1参照)に取付られるブラケット72を備えている。このブラケット72には、略車幅方向に延びてアクセルペダル71の回動中心を構成する支軸73が設けられており、この支軸73に対してペダルブラケットアッパ74の上端部が枢支されている。
【0048】
上記ペダルブラケットアッパ74の下端部には、上記支軸73を中心とする円弧状に形成されたガイド溝75aを有するガイド部材75が一体的に設けられており、このガイド溝75aの円弧形状に沿って移動可能なスライダ76が、上記ガイド溝75aの内部に配設されている。そうして、上記スライダ76には、その下端部にアクセルペダル71が取り付けられたペダルブラケットロア77の上端部が一体的に設けられている。また、上記スライダ76の側面にはラック部76aが形成されており、このラック部76aにはウォームギヤ78aが常時噛合している。このウォームギヤ78aは、アクセルペダル用モータ79の出力軸に連結されたフレキシブルワイヤ78と連結されており、上記ウォームギヤ78aは上記フレキシブルワイヤ78を介して上記モータ79により回転するようになっている。
【0049】
これにより、上記アクセルペダル用モータ79を駆動させると、フレキシブルワイヤ78を介してウォームギヤ78aが回転し、そのウォームギヤ78aにラック部76aが噛合しているスライダ76が、ガイド溝75aに沿って前後方向に移動する。このスライダ76の移動に伴い、ペダルブラケットロア77を介してアクセルペダル71が上記支軸73を中心として回動するようになり、アクセルペダル71の操作角度と踏み面高さとが共に調整されることになる。
【0050】
上述したように、アクセルペダル調整手段7の構成とブレーキペダル調整手段8の構成とは共に同じであり、図6に示すように、ブレーキペダル調整手段8は上記アクセルペダル調整手段7とは別に、ブレーキペダル用モータ89を備えている。また、上記ブレーキペダル81は、その移動方向DBが前後方向に略一致するように、配設されているのに大使、上記アクセルペダル71は、その移動方向DAが前方が車幅方向の外方、後方が車幅方向の内方(ブレーキペダル81に近づく方向)となるように前後方向に対して傾いて配設されている。
【0051】
上記運転姿勢調整装置1は、上記フロアモータ56、並びにアクセルペダル用モータ79及びブレーキペダル用モータ89の駆動を制御するECU94をさらに備えている。このECU94は、上記シート位置検出センサ49の検出信号を受けて、予め設定された調整特性でもって、上記フロアモータ56、並びにアクセルペダル用モータ79及びブレーキペダル用モータ89の3つのモータの制御を行う。つまり、上記シート位置検出センサ49によって検出されるシートの位置がドライバの体格に対応することから、上記ECU94はドライバの体格に応じて、可動フロア51の昇降位置、アクセルペダル71の配設位置、及びブレーキペダル81の配設位置をそれぞれ最適に調整する。このように運転姿勢調整装置1は、シート調整手段4による座面の調整に連動して、フロア調整手段5が可動フロア51の昇降位置を調整すると共に、アクセル及びブレーキペダル調整手段7,8がアクセル及びブレーキペダル71,81の配設位置を調整する。
【0052】
次に、上記ECU94によるアクセル及びブレーキペダル71,81の配設位置と、可動フロア51の昇降位置との調整制御について説明する。
【0053】
上記ECU94は、上記可動フロア51、アクセルペダル71及びブレーキペダル81の調整のために予め設定された調整特性として3つのマップを有している。具体的に上記ECU94は、図9に示すように、シート位置に対する可動フロア51の昇降位置が設定されたシート−フロアマップ(図9(a))、シート位置に対するアクセルペダル71の配設位置が設定されたシート−アクセルペダルマップ(図9(b))、及びシート位置に対するブレーキペダル81の配設位置が設定されたシート−ブレーキペダルマップ(図9(c))の3つのマップを有していて、これらのマップに基づいて、可動フロア51の昇降位置、アクセルペダル71の配設位置、及びブレーキペダル81の配設位置を調整する。
【0054】
上記シート−フロアマップは基本的に、可動フロア51の昇降位置がシート位置に対して略比例の関係となるように設定されている(第1の調整特性)。これにより、上記ECU94は、シート位置が前方位置であるほど、換言すればドライバの体格が小さいほど可動フロア51が上昇するようにフロアモータ56を制御する。但し、上記シート−フロアマップは、シート位置が所定のシート位置、具体的には比較的体格の小さい男性に対応するシート位置(M3)よりも前方であるときには第1の調整特性とは異なる第2の調整特性に設定されている。この第2の調整特性は、上記シート位置が前方位置であるほど上記可動フロア51が上昇する特性であると共に、上記第1の調整特性に比べてシート位置の変化に対する可動フロア51の昇降位置の調整量が抑制された特性(以下、この特性を抑制型と呼称する)となっている。
【0055】
上記シート−アクセルペダルマップも基本的に、アクセルペダル71の配設位置がシート位置に対して略比例の関係となるように設定されている(第1の調整特性)。これにより、上記ECU94は、シート位置が前方位置であるほど、換言すればドライバの体格が小さいほどアクセルペダル71がドライバに近づくようにアクセルペダル用モータ79を制御する。但し、上記シート−アクセルペダルマップは、シート位置が所定のシート位置(M3)よりも前方であるときには第1の調整特性とは異なる第2の調整特性に設定されている。この第2の調整特性は、上記シート位置が前方位置であるほど上記アクセルペダル71がドライバから離れる特性(以下、この特性を反転型と呼称する)となっている。
【0056】
また、上記シート−ブレーキペダルマップも基本的に、ブレーキペダル81の配設位置がシート位置に対して略比例の関係となるように設定されている(第1の調整特性)。これにより、上記ECU94は、ドライバの体格が小さいほどブレーキペダル81がドライバに近づくように、ブレーキペダル用モータ89を制御する。但し、上記シート−ブレーキペダルマップも、シート位置が所定のシート位置(M3)よりも前方であるときには第1の調整特性とは異なる第2の調整特性に設定されている。この第2の調整特性は、上記シート−アクセルペダルマップと同様に反転型の特性となっている。
【0057】
従って、ドライバがシートに着座して、操作レバー47を操作することにより座面の位置を設定し、そのシート位置をシート位置検出センサ49が検出すれば、上記ECU94は、その検出信号を受けて上記シート−フロアマップ、シート−アクセルペダルマップ及びシート−ブレーキペダルマップの各マップを参照することにより、必要なモータ制御量を算出する。そうして、上記ECU94は、算出したモータ制御量で上記フロアモータ56、アクセルペダル用モータ79及びブレーキペダル用モータ89をそれぞれ制御する。これにより、図1に示すように、シート位置が位置a1であるとき、換言すればドライバの体格が大きいとき(M1の体格)には、可動フロア51は下方位置である位置a2に位置する一方、アクセルペダル71及びブレーキペダル81は共に、前方位置(ドライバから離れた位置)である位置a3に位置する。また、シート位置が位置b1である、換言すればドライバの体格が所定体格のとき(M3の体格)には、可動フロア51は上方位置である位置b2に位置する一方、アクセルペダル71及びブレーキペダル81は共に後方位置(ドライバに近い位置)である位置b3に位置する。そして、シート位置が位置c1であるとき、換言すればドライバの体格が所定体格よりも小さいとき(F3の体格)には、可動フロア51はさらに上方位置である位置c2に位置する一方、アクセルペダル71及びブレーキペダル81は共に中位置である位置c3に位置する。
【0058】
このように、所定体格よりも小さい体格のドライバ、一般的に女性ドライバであるときには、上記アクセルペダル71及びブレーキペダル81は、比較的体格の小さい男性ドライバ(M3)のときよりもドライバから離れた位置に配置される。これにより、女性ドライバは踵の高い履物を履く確率が高く、その場合、実質的な脚の長さが、体格に対応する脚の長さよりも長くなるが、その場合でも、図10に示すように、アクセルペダル71及びブレーキペダル81の配設位置を最適な位置にすることができる。
【0059】
また、図6に示すように、アクセルペダル71の移動方向が前後方向に対して傾いていることで、アクセルペダル71が後方に位置するほど、アクセルペダル71とブレーキペダル81との車幅方向に対する間隔が狭くなる。従って、ドライバの体格が小さいほど、アクセルペダル71とブレーキペダル81との車幅方向に対する間隔が狭くなり、足の小さいドライバが少ない移動量でブレーキペダル81からアクセルペダル71に又はその逆方向に踏み替え可能になり、ペダルの踏み替え性が高まる。
【0060】
また、アクセルペダル71及びブレーキペダル81に係る第2の調整特性は、反転型の特性、つまり調整方向を第1の調整特性に対して逆向きにした特性であるため、これらのペダル71,81の移動移動しろを小さくすることができ、車室空間の拡大の点で有利になる。
【0061】
同様に、可動フロア51に係る第2の調整特性は、調整量を抑制した特性(抑制型)であるため、可動フロア51の昇降しろを小さくすることができ、車室空間の拡大の点で有利になる。
【0062】
そして、上記アクセルペダル71、ブレーキペダル81及び可動フロア51を連動させて、運転姿勢を調整することにより、より細やかにドライバのペダルに対する姿勢を調整することができると共に、各ペダル71,81及び可動フロア51を単独で調整する場合と比較して、各ペダル71,81及び可動フロア51の調整量をそれぞれ少なくすることができ、それぞれの調整しろをさらに小さくして、車室空間の更なる拡大が図られる。
【0063】
また、上記ECU94は、シート位置検出センサ49の検出結果に応じて、各ペダル71,81及び可動フロア51の位置調整を行うため、ドライバが座面の位置を設定してドライバの着座位置が決定された後に、各ペダル71,81及び可動フロア51の位置が調整される。つまり、シート位置の調整、各ペダル71,81及び可動フロア51の位置が調整、の順番で各調整を行うことによって、ドライバの運転姿勢の調整を的確に行うことができる。
【0064】
特に上記シート調整手段4は、体格に対応するモードの姿勢にさせたドライバを所定の車幅方向軸周りに回動させるのに対し、アクセル及びブレーキペダル調整手段7,8がアクセルペダル71及びブレーキペダルの操作角度を調整すると共に、フロア調整手段5が可動フロア51の昇降位置及び角度を調整することにより、ドライバの着座姿勢に応じてペダルに対する足の角度が適正化されるのである。
【0065】
(各ペダル及び可動フロアの調整特性の変形例)
各ペダル71,81及び可動フロア51の調整特性(第2の調整特性)は、図9に示した特性に限らない。以下、各ペダル71,81及び可動フロア51の調整特性の変形例について、説明する。
【0066】
(変形例1)
可動フロア51に係る第2の調整特性は反転型の特性としてもよい。つまり、図11(a)に示すように、シート−フロアマップは基本的に、可動フロア51の昇降位置がシート位置に対して略比例の関係となるように設定する(第1の調整特性)一方、上記シート位置が所定のシート位置(M3)よりも前方であるときには上記シート位置が前方位置であるほど上記フロアが下方に位置するように設定する(第2の調整特性)。これにより、上記ECU94は、シート位置が前方位置であるほど、換言すればドライバの体格が小さいほど可動フロア51が上昇するようにフロアモータ56を制御すると共に、シート位置が所定のシート位置(M3)よりも前方であるときには、上記シート位置が前方位置であるほど上記可動フロア51を下降させる。
【0067】
また、アクセルペダル71及びブレーキペダル81の第2の調整特性は抑制型の特性としてもよい。つまり、図11(b)(c)に示すように、シート−アクセルペダルマップ及びシート−ブレーキペダルマップは基本的に、アクセル及びブレーキペダル71,81の配設位置がシート位置に対して略比例の関係となるように設定する(第1の調整特性)一方、シート位置が所定のシート位置(M3)よりも前方であるときには、シート位置が前方位置であるほどアクセル及びブレーキペダル71,81の位置がドライバ側に接近すると共に、第1の調整特性に比べて体格の変化に対する調整量が抑制されるように設定する(第2の調整特性)。これにより、上記ECU94は、シート位置が前方位置であるほど、換言すればドライバの体格が小さいほどアクセル及びブレーキペダル71,81がドライバに近づくようにアクセル及びブレーキペダル用モータ79,89を制御すると共に、シート位置が所定のシート位置(M3)よりも前方であるときには、上記アクセル及びブレーキペダル71,81をあまり大きく移動させない。
【0068】
その結果、図12に示すように、シート位置が位置a1であるとき、換言すればドライバの体格が大きいとき(M1の体格)には、可動フロア51は下方位置である位置a4に位置する一方、アクセルペダル71及びブレーキペダル81は共に、前方位置(ドライバから離れた位置)である位置a5に位置する。また、シート位置が位置b1である、換言すればドライバの体格が所定体格のとき(M3の体格)には、可動フロア51は上方位置である位置b4に位置する一方、アクセルペダル71及びブレーキペダル81は共に中位置である位置b5に位置する。そして、シート位置が位置c1であるとき、換言すればドライバの体格が所定体格よりも小さいとき(F3の体格)には、可動フロア51は中位置である位置c4に位置する一方、アクセルペダル71及びブレーキペダル81は共に後方位置(ドライバに近い位置)である位置c5に位置する。
【0069】
この場合でも、踵の高い履物を履いた女性ドライバに対して、アクセルペダル71及びブレーキペダル81の配設位置を最適な位置にすることができる。
【0070】
(変形例2)
図13(a)に示すように、可動フロア51の昇降位置に係る第2の調整特性は、シート位置の変化に対して可動フロアの昇降位置を変化させない特性((以下、この特性を禁止型と呼称する)としてもよい。同様に、アクセルペダル71及びブレーキペダル81の配設位置に係る第2の調整特性も、図13(b)(c)に示すように、シート位置の変化に対してペダル71,81の配設位置を変化させない、禁止型の特性としてもよい。
【0071】
(変形例3)
上記アクセル及びブレーキペダル71,81、可動フロア51は、それぞれECU94により各モータ56,79,89を電気的に制御することによって、シート位置に対して二次関数的な調整特性で調整していた。これに対し、例えば図14に示すように、各ペダル71,81及び可動フロア51の調整特性は、シート位置に対して一次関数的に設定してもよい。具体的に図14(a)は、所定の体格よりも小さいときに調整量を抑制する抑制型の特性の例を示し、同図(b)は、所定の体格よりも小さいときに制御方向を反転させる反転型の特性の例を示し、同図(c)は、所定の体格よりも小さいときに制御を禁止する禁止型の特性の例を示している。
【0072】
こうした調整特性を採用することによって、例えばギヤ等を利用した機械的な制御が可能になり、システムの機構を簡便化させることができる。
【0073】
尚、図9,11,13に示す二次関数的な制御と、図14に示す一次関数的な制御とを組み合わせてもよい。例えばアクセルペダル71は一次関数的に制御する一方で、ブレーキペダル81は二次関数的に制御する、又はその逆としてもよい。また、可動フロア51は二次関数的に制御する一方で、各ペダル71,81は一次関数的に制御する、又はその逆としてもよい。
【0074】
(フロアの調整特性と、各ペダルの調整特性との組み合わせ)
次に、可動フロア51の調整特性と各ペダル71,81の調整特性との組み合わせについて説明する。
【0075】
例えば図9(a)に示す抑制型のフロア調整特性に対しては、例えば図9(b)(c)、図11(b)(c)又は図13(b)(c)に示す反転型、抑制型及び禁止型のいずれかのペダル調整を組み合わせることが可能である。
【0076】
また、例えば図11(a)に示す反転型のフロア調整特性に対しては、例えば図11(b)(c)又は図13(b)(c)に示す抑制型又は禁止型のペダル調整を組み合わせることが可能である。
【0077】
さらに、例えば図13(a)に示す禁止型のフロア調整特性に対しては、例えば図9(b)(c)、図11(b)(c)又は図13(b)(c)に示す反転型、抑制型及び禁止型のいずれかのペダル調整を組み合わせることが可能である。
【0078】
(アクセルペダルの調整特性と、ブレーキペダルの調整特性との組み合わせ)
次に、アクセルペダル71の調整特性と、ブレーキペダル81の調整特性との組み合わせについて説明する。
【0079】
先ず、図15に示すように、アクセルペダル71の調整特性とブレーキペダル81の調整特性とを同じ型とする組み合わせであり、アクセルペダル71の調整特性として抑制型を採用したときには、ブレーキペダル81の調整特性も同じ抑制型とし、アクセルペダル71の調整特性として禁止型を採用したときには、ブレーキペダル81の調整特性も同じ禁止型とし、アクセルペダル71の調整特性として反転型を採用したときには、ブレーキペダル81の調整特性も同じ反転型とする、としてもよい。
【0080】
2つのペダル71,81の調整特性を同じ型とすることで制御が容易になるという利点がある。尚、アクセルペダル71とブレーキペダル81との前後方向に対する間隔が変化しないが、図6に示すように、アクセルペダル71の移動方向を前後方向に対して傾けることによって車幅方向に対する間隔は変化する。
【0081】
これに対し、図16に示すように、ドライバの体格が小さいほど、アクセルペダル71とブレーキペダル81との前後方向に対する間隔(段差)が小さくなるように、2つのペダル71,81の調整特性を異ならせてもよい。つまり、アクセルペダル71の調整特性として抑制型を採用したときには、ブレーキペダル81の調整特性は反転型、又は禁止型を採用し、アクセルペダル71の調整特性として禁止型を採用したときには、ブレーキペダル81の調整特性は反転型を採用する、としてもよい。
【0082】
このようなアクセルペダル71の調整特性とブレーキペダル81の調整特性との組み合わせによって、ドライバの体格が小さいほど、アクセルペダル71とブレーキペダル81との前後方向に対する間隔(段差)が小さくなる。また、上述したように、アクセルペダル71とブレーキペダル81との車幅方向に対する間隔(段差)も小さくなる。その結果、体格の小さいドライバ、つまり相対的に足が小さいドライバが2つのペダル71,81の踏み替えをする際に、その足の移動量が少なくなりペダルの踏み替え性が高まる。
【0083】
また、図17に示すように、アクセルペダル71の調整特性として抑制型、禁止型、又は反転型を採用したときに、ブレーキペダル81の調整特性は抑制型を採用する、としてもよい。
【0084】
つまり、ブレーキペダル81については抑制型のみを採用し、禁止型、又は反転型は採用しないとしてもよい。これは、アクセルペダル71は、踵をフロアに付けた状態で踏み操作されるペダルであるため、アクセルペダル71の最適な配設位置は、履物の踵の高さの影響を大きく受ける。そこで、アクセルペダル71の調整特性として、抑制型、禁止型、又は反転型を採用することにより、ドライバの履物の踵の高さを考慮したアクセルペダル71の配設位置の調整が実現する。
【0085】
これに対し、ブレーキペダル81は、踵をフロアに付けないで踏み操作する場合が多いペダルであるため、ブレーキペダル81の最適な配設位置は、履物の踵の高さの影響をあまり受けない。また、ブレーキペダル81は、急ブレーキ時等において強い踏み力が必要なペダルである一方で、体格の小さいドライバほど踏み力が弱い傾向にある。そこで、ブレーキペダル81の調整特性としては、ドライバの体格が小さいほどブレーキペダル81がドライバの側に常に近づく、抑制型の調整特性を採用することが望ましい。そうすることで、ブレーキペダル81の配設位置を体格に応じて適正にしつつ、ドライバの体格に応じた踏み力を確保することができる。
【0086】
尚、ブレーキペダル81の調整を第1の調整特性と、これとは異なる第2の調整特性とでもって行わずに、第1の調整特性のみで行ってもよい。この場合も上述したように、ブレーキペダル81の配設位置を体格に応じて適正にしつつ、ドライバの体格に応じた踏み力を確保することができる。
【0087】
(他の実施の形態)
尚、上記実施形態では、シート調整手段4を、不等長のダブルリンクによって構成しているが、シート調整手段4の構成はこれに限るものではない。また、上記シート調整手段4のように、シート31の座面を前後方向位置及び上下方向位置、並びに角度を連動して調整するものでなくてもよく、単に前後方向位置のみを調整するものであってもよい。
【0088】
また、上記シート位置検出センサ49によってシート位置を検出することにより、ドライバの体格を検出しているが、ドライバの体格は別の手段によって検出することも可能である。例えばドライバをカメラ等により撮像することによっても、ドライバの体格を検出することは可能である。
【0089】
さらに、上記実施形態では、各ペダル71,81の調整と、可動フロア51の調整とを連動して行っているが、可動フロア51の昇降位置のみ、ドライバの体格に応じて調整してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明したように、本発明は、単一の調整特性ではなく、異なる2つの調整特性でもってフロアの昇降位置を調整するから、フロアの昇降位置を、ドライバの履物の踵の高さを考慮して設定することが可能になり、運転席に着座するドライバの運転姿勢をより適正に調整することができる点で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】自動車の運転姿勢調整装置を構成を示す図である。
【図2】シート調整手段の構成を示す側面図である。
【図3】体格の異なるドライバの着座姿勢を示す説明図である。
【図4】着座姿勢の調整概念を示す説明図である。
【図5】フロア調整手段の構成を示す断面図である。
【図6】フロア調整手段及びペダル調整手段の構成を示す平面図である。
【図7】ペダル調整手段の構成を示す斜視図である。
【図8】図6のVIII−VIII断面図である。
【図9】可動フロア、各ペダルの調整特性の一例である。
【図10】ドライバの体格に応じてフロア及びペダルを調整した状態を示す側面図である。
【図11】可動フロア、各ペダルの調整特性の別の例である。
【図12】図10に示す調整特性に従ってフロア、ペダルを調整した状態を示すである。
【図13】可動フロア、各ペダルの調整特性のさらに別の例である。
【図14】可動フロア、各ペダルの一次関数的な調整特性を示す図である。
【図15】アクセルペダルとブレーキペダルとの調整特性の組み合わせ例を示す図である。
【図16】アクセルペダルとブレーキペダルとの調整特性の組み合わせの別の例を示す図である。
【図17】アクセルペダルとブレーキペダルとの調整特性の組み合わせのさらに別の例を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 運転姿勢調整装置
31 シート
4 シート調整手段
49 シート位置検出センサ(シート位置検出手段,体格検出手段)
5 フロア調整手段
51 可動フロア
7 アクセルペダル調整手段
71 アクセルペダル
8 ブレーキペダル調整手段
81 ブレーキペダル
94 ECU(アクセルペダル調整手段、ブレーキペダル調整手段、フロア調整手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席に着座するドライバの運転姿勢を調整する自動車の運転姿勢調整装置であって、
上記ドライバの体格を検出する体格検出手段と、
上記ドライバが踏み操作するペダルと、
上記ペダルの近傍で、昇降可能に配設された可動フロアと、
上記可動フロアの昇降位置を調整するフロア調整手段と、を備え、
上記フロア調整手段は、
上記体格検出手段によって検出されたドライバの体格に応じて、当該体格が小さいほど上記可動フロアの位置が上方に位置するように、上記ドライバの体格に略比例する第1の調整特性でもって上記可動フロアの昇降位置を調整すると共に、上記検出された体格が所定の体格よりも小さいときには、上記第1の調整特性とは異なる第2の調整特性でもって上記可動フロアの昇降位置を調整する自動車の運転姿勢調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転姿勢調整装置において、
上記第2の調整特性は、上記ドライバの体格が小さいほど上記可動フロアが上方に位置する特性であると共に、上記第1の調整特性に比べて体格の変化に対する可動フロアの昇降位置の調整量が抑制された特性である運転姿勢調整装置。
【請求項3】
請求項1に記載の運転姿勢調整装置において、
上記第2の調整特性は、上記ドライバの体格の変化に対して上記可動フロアの昇降位置を変化させない特性である運転姿勢調整装置。
【請求項4】
請求項1に記載の運転姿勢調整装置において、
上記第2の調整特性は、上記ドライバの体格が小さいほど上記可動フロアが下方に位置する特性である運転姿勢調整装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の運転姿勢調整装置において、
上記体格検出手段によって検出されたドライバの体格に応じて、上記ペダルの配設位置を調整するペダル調整手段をさらに備える運転姿勢調整装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の運転姿勢調整装置において、
上記運転席は、座面の位置を調整するシート調整手段と、該シート調整手段によって調整された座面の位置を検出するシート位置検出手段と、を有し、
上記体格検出手段は、上記シート位置検出手段からなる運転姿勢調整装置。
【請求項7】
請求項6に記載の運転姿勢調整装置において、
上記シート調整手段は、上記座面の、車両前後方向位置及び上下方向位置、並びに角度を連動して調整することによって、上記ドライバを、その体格に対応するモードの姿勢にさせかつ該姿勢を維持しつつ所定の車幅方向軸周りに回動させ、それによって体格の異なる各ドライバの目線の位置を一定にし、
上記フロア調整手段は、上記シート調整手段による座面の調整に連動して上記可動フロアの昇降位置及び角度を調整する運転姿勢調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−44422(P2006−44422A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226986(P2004−226986)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】