説明

自動車ドアのシール構造

【課題】ピラーウェザストリップとミラーベースとドアガラスとの隙間から車室に侵入する水を、ドアガラスを汚すことなく排出すること。
【解決手段】自動車のフレームレス式ドア1のミラーベース2の上縁および後部縦縁に沿って上縁ウェザストリップ3aと縦縁ウェザストリップ3bを設けて、ミラーベース2とフロントピラー4との間、およびミラーベース2とドアガラス5との間のシールする自動車ドアのシール構造において、後方側が開口する断面U字形の縦縁ウェザストリップ3bには、ドアガラス5の前縁50を内外から挟む側面部32,33のうち車室側の側面部32の内面にドアガラス5との間に隙間34を設け、該隙間34と、ドア閉時にピラーウェザストリップ40、縦縁ウェザストリップ3bおよびドアガラス5の三部材間に生じる隙間Hを連通せしめ、隙間Hから侵入した水を縦縁ウェザストリップ3bの隙間34に導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のドアまわりをシールする自動車ドアのシール構造、特にフレームレスドアのドアベルトラインの前端に設けたミラーベースとフロンピラーとの間およびミラーベースとドアガラスの前縁との間をシールするシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すスポーツタイプのハードトップやルーフが開閉可能のクーペカブリオレに用いられるフレームレスタイプのフロントドア1には、ドアパネルの上縁をなすドアベルトライン10の前端に、略三角形状のミラーベース2が立設され、これにサイドミラー20が支持されている。ミラーベース2にはその上縁および後部縦縁に沿ってウェザストリップ3が設置され、ミラーベース2の上縁とこれと対向するフロントピラー4との間、およびミラーベース2の後部縦縁とフロントドア1に昇降可能に設けられたドアガラス5の前縁との間がシールされている。
【0003】
図5、図6に示すように、ミラーベース用のウェザストリップ3は合成ゴム等からなる成形品で、ミラーベース2の上縁に沿って前下がり傾斜状の上縁ウェザストリップ3aと、ミラーベース2の後部縦縁に沿う縦縁ウェザストリップ3bとが一連に成形されている。上縁ウェザストリップ3aはドア閉時にフロントピラー4のピラーウェザストリップ40に圧接する。縦縁ウェザストリップ3bは、後方に向けて開口する断面略U字形で溝30を形成し、該溝30によりドアガラス5の前縁50を昇降案内する。
【0004】
ところで、図6に示すように、縦縁ウェザストリップ3bの溝30の上端は、一体成形された閉鎖上面31で閉じられ、ドアガラス5の上昇上限で、ドアガラス5の上縁51の前端が閉鎖上面31に当接する。従って、閉鎖上面31の端縁とドアガラス5の上縁51との間には、閉鎖上面31の厚み分の段差ができ、ドア閉時には、フロントピラー4のピラーウェザストリップ40とこれに圧接する閉鎖上面31の端縁およびドアガラス5の上縁51との三部材間に略三角形状の小さな隙間Hが生じる。
【0005】
上記隙間Hには、洗車時などに車体に吹き付けられる高圧の水が侵入し、侵入した水はドアガラス5の車室側面を伝って流下し、ガラスの車室側面およびドアパネルの車室面を汚すといった問題があった。
【0006】
下記特許文献1では、フレームレスタイプのドアのベンチガラスとドアガラスとを仕切るガイドの上端に設けられ、ドア閉時にフロントピラーのピラーウェザストリップに当接するシール材において、その車室内側の表面に水受けリップを設け、上記ピラーウェザストリップとこれに当接したシール材の上縁とベンチガラスの上縁との境界の隙間、およびシール材の上縁とドアガラスの上縁との境界の隙間から侵入する水を受け、リップで受けた水をベンチガラスの車室内面沿いに流下せしめることが提案されている。
しかし、水受けリップはシール材の表面から張り出し、上向きに開口する溝を形成しており、溝が露見して見栄えがよいとは言えない。またベンチガラスを伝う水滴でベンチガラスが汚れる。
【特許文献1】特開2007−284009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、ピラーウェザストリップとこれに圧接するミラーベースのウェザストリップとドアガラスの上縁との三部材間の隙間から車室内に侵入する水を、ウェザストリップの内部に沿って流下せしめ、ガラスの側面を汚すことなく排出する自動車ドアのシール構造を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自動車のフレームレス式ドアのドアパネル上縁をなすドアベルトラインの前端に略三角形状のミラーベースを設置し、ドア閉時に、該ミラーベースの傾斜上縁に沿う上縁ウェザストリップがフロントピラーに沿って設けたピラーウェザストリップに圧接し、上記ミラーベースの後部縦縁に沿う縦縁ウェザストリップがドアガラスの前縁の昇降を案内するとともに上記前縁をシールし、上記ドアガラスの上縁が上記ピラーウェザストリップに圧接する自動車ドアのシール構造において、上記ピラーウェザストリップと、上記縦縁ウェザストリップの上端縁と、上記ドアガラスの三部材間に生じる隙間を、上記縦縁ウェザストリップ内に形成したドアガラスの側面との間の隙間に連通せしめ、上記三部材間の隙間から侵入した水を上記縦縁ウェザストリップ内の隙間に導入し、導入された水をドアパネル内に流下せしめるようになす(請求項1)。
三部材間の隙間から侵入した水を、ミラーベースの縦縁ウェザストリップ内の隙間へ導き、該隙間内を流下せしめてドアパネル内へ排水せしめるので、ドアガラスが汚れない。
【0009】
請求項1に記載の自動車ドアのシール構造において、上記ミラーベースの縦縁ウェザストリップは後方側が開口する断面U字形で、左右両側の側面部の先端のリップがドアガラスの前縁を内外から挟むとともに、上記縦縁ウェザストリップの車室側の側面部の内面に上記ドアガラスとの間の上記隙間を形成し、上記縦縁ウェザストリップの上端を閉鎖上面で閉じ、ドア閉時に上記ピラーウェザストリップに圧接した上記閉鎖上面の端縁に沿って生じる上記三部材間の隙間と、上記縦縁ウェザストリップの車室側の側面部の内面の隙間とを連通せしめる(請求項2)。
三部材間の隙間から侵入した水を、縦縁ウェザストリップの車室側の側面部とドアガラスとの隙間によりドアパネル内へ良好に流下させる。
【0010】
請求項2に記載の自動車ドアのシール構造において、上記縦縁ウェザストリップには、上記車室側の側面部の上端に略L字形の切欠きを形成し、上記三部材間の隙間から侵入した水を上記切欠きの垂直縁を伝って流下させ、流下した水を上記切欠きの水平縁から上記縦縁ウェザストリップの隙間に流入せしめるようになす(請求項3)。
縦縁ウェザストリップの車室側の側面部の切欠きの垂直縁の案内により三部材間の隙間から侵入した水を確実に縦縁ウェザストリップの隙間へ導くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1ないし図4に基づいて、フレームレスタイプのドアのミラーベースの周囲をシールするシール構造に本発明を適用した実施形態を説明する。
図1に示すように、ドア1にはドアベルトライン10の前端に、略三角形状で、前下がり傾斜の上縁と、ほぼ垂直の後部縦縁とを備えたミラーベース2が立設してあり、ミラーベース2の車外面にサイドミラー20が取付けられている。ミラーベース2は金属製の厚板または芯材を埋設した硬質合成樹脂の板体からなり、下縁がドアパネルに固定してある。
【0012】
ミラーベース3には上縁および後部縦縁に沿ってウェザストリップ3が装着してある。ウェザストリップ3は合成ゴム、例えばNBRにPVCを混合した材料等からなる成形品で、ミラーベース3の上縁に沿う傾斜状の上縁ウェザストリップ3aと、後部縦縁に沿う縦縁ウェザストリップ3bが一連に形成してある。ウェザストリップ3はその内周に形成した浅い溝をミラーベース2の外周に嵌着してある。
【0013】
図2は上縁ウェザストリップ3aと縦縁ウェザストリップ3bとが交わるウェザストリップ3の上端まわりを示し、ドア閉状態で車室側から見た拡大側面図で、図3はウェザストリップ3の上端まわりを上から見た平面図で、図2、図3に示すように、上縁ウェザストリップ3aはミラーベース2の上縁を被覆する丸みのある厚肉状で、上縁の幅がドアガラス5の厚み程度となるように車室側および車内外の側面を上縁に向けて先細り形状としてある。上縁ウェザストリップ3aはその上縁を、ドア閉時にフロントピラー4の下縁に沿って設けたピラーウェザストリップ40に圧接してミラーベース2とフロントピラー4との間をシールする。
【0014】
図2およびそのIV−IV線の断面図たる図4に示すように、縦縁ウェザストリップ3bは後方に向かって開口する丸みのある断面ほぼU字形で、ドアガラス5の前縁50を挿入する溝30を形成している。縦縁ウェザストリップ3bの車室側および車外側の側面部32,33の開口縁にはそれぞれリップ321,331が形成してあり、溝30内に挿入されたドアガラス5の前縁50を内外両面から挟み、ドアガラス5の前縁50の昇降を案内するとともに、ミラーベース2とドアガラス5との間をシールする。
【0015】
なお、縦縁ウェザストリップ3bは溝30の溝幅がドアガラス5の厚みより広くしてあり、両側面部32,33の内面とドアガラス5との間には隙間34が設けてある。また両側面部32,33の内面中間位置に小型の中間リップ322,332が設けてあり、ドアガラス5を内外両面から挟む。
【0016】
図2ないし図4に示すように、縦縁ウェザストリップ3bの上端はその前後幅が前側へ狭くしてある。
車室側の側面部32の上端には、垂直縁35と水平縁36とからなるL字形の切欠きを設け、これにより側面部32の上端の前後幅をその一般部よりも狭くしている。垂直縁35は、側面部32の一般部の前後幅に対してその半分程度の位置に設けてあり、垂直縁35はドアガラス5の車室側面に当接するように形成してある。水平縁36には、側面部32の内面のリップ321と中間リップ322との間でドアガラス5との間の隙間34が連通せしめてある。
一方、車外側の側面部33の上端は、先端のリップ331が前斜め上方に向けて傾斜状に設けてあり、その上端は車室側の側面部32の垂直縁35の上端位置に揃えてある。
【0017】
このように両側面部32,33の上端の前後幅を狭くすることで、溝30の上端の前後長が短くしてある。そして、溝30の上端末、即ち縦縁ウェザストリップ3bの上端は閉鎖上面31で閉じてある。閉鎖上面31は上縁ウェザストリップ3aの上縁と一連に前下がり傾斜状に形成してある。閉鎖上面31の端縁311は、車室側の側面部32の垂直縁35の上端および車外側の側面部33の前斜め傾斜状のリップ331の上端に揃えてある。
閉鎖上面31には、上昇上限位置でドアガラス5の上縁51前端が下方から当接する。
【0018】
ドア閉時、縦縁ウェザストリップ3bの上端は、閉鎖上面31が上縁ウェザストリップ3aの上縁と一体にピラーウェザストリップ40に圧接する。またドアガラス5の上縁51もピラーウェザストリップ40に圧接する。この場合、閉鎖上面31の端縁311とドアガラス5の上縁51との間に閉鎖上面31の厚み分の段差ができ、ピラーウェザストリップ40とこれに当接する閉鎖上面31およびドアガラス5の上縁51との三部材の間には、閉鎖上面31の端縁311沿いに略三角形状の隙間Hが生じる。
【0019】
洗車時などに吹き付けられる高圧の水が上記隙間Hから車室に侵入すると、その水は、縦縁ウェザストリップ3bの車室側の側面部32の上端に設けた切欠きの垂直縁35に沿って下方へ案内され、垂直縁35沿いから水平縁36の隙間34を通って側面部32の内面へ導かれ、ドアパネル内へ流下し、更にドアパネルの下縁の排水孔より車外へ排水される。
【0020】
本実施形態によれば、三部材間の隙間Hより侵入する水がドアガラス5を伝うことがなく、ドアガラス5およびドアパネルの車室面が汚れない。また縦縁ウェザストリップ3bはその車室側の側面部32の上端にL字形の切欠きを設け、その垂直縁35により三部材間の隙間Hと側面部32内面の隙間34を連通せしめる簡素な構造で、従来構造の水受けリップのように見栄えを損ねることもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の自動車ドアのシール構造たるミラーベースのウェザストリップを示すドアのドアベルトライン前端付近の斜視図である。
【図2】本発明の要部を示すものでドア閉状態で上記ウェザストリップの上端まわりの車室側から見た拡大側面図である。
【図3】上記ウェザストリップの上端まわりを上から見た平面図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】自動車のフレームレス式ドアのミラーベースまわりを示す側面図である。
【図6】図2に対応して、従来のウェザストリップの上端まわりを示す車室側の拡大側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 フレームレス式ドア
10 ドアベルトライン
2 ミラーベース
3 ウェザストリップ
3a 上縁ウェザストリップ
3b 縦縁ウェザストリップ
31 閉鎖上面
311 端縁
32、33 側面部
321,331 リップ
34 車室側の側面部内の隙間(縦縁ウェザストリップ内の隙間)
35 垂直縁
36 水平縁
4 フロントピラー
40 ピラーウェザストリップ
5 ドアガラス
50 前縁
51 上縁
H 三部材間の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフレームレス式ドアのドアパネル上縁をなすドアベルトラインの前端に略三角形状のミラーベースを設置し、ドア閉時に、該ミラーベースの傾斜上縁に沿う上縁ウェザストリップがフロントピラーに沿って設けたピラーウェザストリップに圧接し、上記ミラーベースの後部縦縁に沿う縦縁ウェザストリップがドアガラスの前縁の昇降を案内するとともに上記前縁をシールし、上記ドアガラスの上縁が上記ピラーウェザストリップに圧接する自動車ドアのシール構造において、
上記ピラーウェザストリップと、上記縦縁ウェザストリップの上端縁と、上記ドアガラスの三部材間に生じる隙間を、上記縦縁ウェザストリップ内に形成したドアガラスの側面との間の隙間に連通せしめ、
上記三部材間の隙間から侵入した水を上記縦縁ウェザストリップ内の隙間に導入し、導入された水をドアパネル内に流下せしめるようになしたことを特徴とする自動車ドアのシール構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車ドアのシール構造において、
上記ミラーベースの縦縁ウェザストリップは後方側が開口する断面U字形で、左右両側の側面部の先端のリップがドアガラスの前縁を内外から挟むとともに、上記縦縁ウェザストリップの車室側の側面部の内面に上記ドアガラスとの間の上記隙間を形成し、
上記縦縁ウェザストリップの上端を閉鎖上面で閉じ、ドア閉時に上記ピラーウェザストリップに圧接した上記閉鎖上面の端縁に沿って生じる上記三部材間の隙間と、上記縦縁ウェザストリップの車室側の側面部の内面の隙間とを連通せしめた自動車ドアのシール構造。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車ドアのシール構造において、
上記縦縁ウェザストリップには、上記車室側の側面部の上端に略L字形の切欠きを形成し、上記三部材間の隙間から侵入した水を上記切欠きの垂直縁を伝って流下させ、流下した水を上記切欠きの水平縁から上記縦縁ウェザストリップの隙間に流入せしめるようになした自動車ドアのシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−83421(P2010−83421A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257182(P2008−257182)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】