説明

自動車用の液化ガス燃料の供給装置

【課題】複数の燃料貯蔵用容器を切り替えて自動車の車載燃料タンクに液化ガス燃料を供給する装置の性能を向上し、かつ、燃料貯蔵用容器の切り替えによる充填作業時間の増大を抑制する。
【解決手段】複数の燃料貯蔵用容器3a、bの液相の液化ガス燃料を車載燃料タンクに供給する複数の燃料供給管路9a,bと、加圧用ガス容器5に連通され各燃料貯蔵用容器の気相部に加圧ガスを供給する複数の加圧用ガス管路21a,bと、燃料供給管路に設けられた各燃料供給用弁13a,bと加圧用ガス管路に設けられた各加圧用弁27a、bの開閉を制御する制御手段49を備え、制御手段は、燃料貯蔵用容器内の液化ガス燃料が最大収容量の20%以下に低下したとき、車載燃料タンクへの充填作業が終わるまでの設定時間の経過後に、別の燃料貯蔵用容器の加圧用弁を開いた後、現在充填中の燃料貯蔵用容器の燃料供給用弁を閉じて、別の燃料貯蔵用容器の弁を開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の液化ガス燃料の供給装置に係り、特に、複数の燃料貯蔵用容器を備えた自動車用の液化ガス燃料の供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の液化ガス燃料を自動車の燃料タンクに充填するため、液化ガス燃料を収容する燃料貯蔵用容器から自動車の燃料タンクに液化ガスを供給する自動車用の液化ガス燃料供給装置が用いられている。自動車用の液化ガス燃料供給装置には、燃料供給管路に送液用のポンプを設け、このポンプの駆動により燃料貯蔵用容器内に収容された液相の液化ガス燃料を自動車の燃料タンクに充填するものがある。しかし、この液化ガス燃料供給装置の場合、高圧ガス保安法上の規定により、保安監督者の選任や敷地内での保安距離の確保などが必要となる。このため、液化ガス燃料供給装置を設置した液化ガス供給施設つまりオートガススタンドを容易に設置できないという問題などが生じる。
【0003】
そこで、自動車用の液化ガス燃料を自動車の燃料タンクに充填するため、液化ガス燃料を収容する燃料貯蔵用容器の気相部に、燃料貯蔵用容器内を加圧するための加圧用ガス、例えばプロパンガス、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどを供給することによって燃料貯蔵用容器内の圧力を高め、燃料貯蔵用容器内に収容された液相の液化ガス燃料を自動車の燃料タンクに充填する液化ガス燃料供給装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような加圧用ガスを用いた液化ガス燃料供給装置では、高圧ガス保安法上の規定により、保安監督者の選任や敷地内での保安距離の確保などの必要がなく、オートガススタンドの設置を容易に行うことなどができる。
【0004】
また、このような加圧用ガスを用いて液化ガス燃料を自動車の燃料タンクに充填する液化ガス燃料供給装置として、複数の燃料貯蔵用容器を備えたものが提案されている(例えば、特許文献2乃至4参照)。このような複数の燃料貯蔵用容器を備えた液化ガス燃料供給装置では、複数の燃料貯蔵用容器のうちから選択した燃料貯蔵用容器から自動車の燃料タンクに液化ガス燃料を充填し、この液化ガス燃料の供給に用いていた燃料貯蔵用容器からの液化ガス燃料の供給ができない状態や、できない状態に近くなると、別の燃料貯蔵用容器に切り替えて液化ガス燃料の供給、充填を行うようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−210989号公報(第2−3頁、第1図)
【特許文献2】特開2001−280588号公報(第3−7頁、第1図)
【特許文献3】特開2001−317690号公報(第3頁、第1図、第2図)
【特許文献4】特開2005−42786号公報(第5−7頁、第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数の燃料貯蔵用容器を備え、液化ガス燃料の供給に用いる燃料貯蔵用容器を切り替える液化ガス燃料供給装置では、液化ガス燃料の供給に用いる燃料貯蔵用容器を切り替える際の各所に設けられた弁の開閉動作などの制御をはじめ、燃料貯蔵用容器の切り替え時の各機器類などの制御の仕方によっては、蒸気圧の差などの条件により複数の燃料貯蔵用容器間で液化ガス燃料が移動してしまう場合がある。また、加圧用ガスの使用量の増大、充填時間の増大、自動車の車載容器に液化ガス燃料を充填するための燃料供給管路での燃料貯蔵用容器方向への液化ガス燃料の逆流、また、このような液化ガス燃料の逆流による液化ガス燃料の充填量の計測誤差などの種々の問題が生じる場合がある。
【0007】
このように、複数の燃料貯蔵用容器を備えた自動車用の液化ガス燃料供給装置では、燃料貯蔵用容器の切り替え時の各機器類などの制御の仕方により、上記のような液化ガス燃料供給装置の性能に関わる種々の問題が発生する可能性がある。これに対して、従来の複数の燃料貯蔵用容器を備えた自動車用の液化ガス燃料供給装置では、このような燃料貯蔵用容器の切り替え時の各機器類などの制御の仕方によって発生する液化ガス燃料供給装置の性能に関わる種々の問題について考慮されていない。このため、これらの問題を解決して性能を向上できる複数の燃料貯蔵用容器を備えた自動車用の液化ガス燃料供給装置が望まれている。
【0008】
本発明の課題は、複数の燃料貯蔵用容器を備えた自動車用の液化ガス燃料供給装置の性能を向上し、充填作業途中で充填に用いる燃料貯蔵用容器が切り替わることを防止して充填作業の作業時間の増大を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の自動車用の液化ガス燃料供給装置は、自動車用の液化ガス燃料が収容される複数の燃料貯蔵用容器と、これらの各燃料貯蔵用容器内を加圧するガスを供給する加圧用ガス容器と、この加圧用ガス容器内の加圧用ガスを各燃料貯蔵用容器の気相部に導く加圧用ガス管路と、各燃料貯蔵用容器内の液相部に一端を位置させ自動車の燃料タンクに前記燃料貯蔵用容器内の液相の液化ガス燃料を供給する燃料供給管路と、各加圧用ガス管路に設けられて前記各燃料貯蔵用容器への加圧用ガスの供給を制御する加圧用弁と、燃料貯蔵容器の液相部に連通する各燃料供給管路に各々設けられて燃料供給管路内の流路を開閉する燃料供給用弁と、各加圧用弁と各燃料供給用弁の開閉を制御する制御手段を備え、複数の燃料貯蔵用容器には、各々、燃料貯蔵用容器内の液相の液化ガス燃料の量を検出する液量検出手段が設けられており、制御手段は、自動車の燃料タンクへの現在の充填に用いている燃料貯蔵用容器内の液相の液化ガス燃料の量が、現在の充填に用いている燃料貯蔵用容器の最大収容量の20%以下の設定量に低下したとき、現在の充填に用いている燃料貯蔵用容器による充填作業途中の前記自動車の燃料タンクへの充填作業が終わるまでの時間として設定された時間の経過後に、次に液化ガス燃料の充填に用いる別の燃料貯蔵用容器に対応する加圧用弁を開き、この加圧用弁を開いた後、現在の充填に用いている燃料貯蔵用容器に対応する燃料供給用弁を閉じ、加圧用弁を開いた別の燃料貯蔵用容器に対応する燃料供給用弁を開いて充填に用いる燃料貯蔵容器を切り替えるようにしてなることを特徴とする。
【0010】
このような構成とすることにより、現在液化ガス燃料の供給に用いている燃料貯蔵用容器から、次に液化ガス燃料の供給に用いる別の燃料貯蔵用容器に切り替える際、現在液化ガス燃料の供給に用いている燃料貯蔵用容器の燃料供給用弁と、次に液化ガス燃料の供給に用いる別の燃料貯蔵用容器の燃料供給用弁とが同時に開いていないから、これらの燃料貯蔵用容器が連通した状態になるのを防止できる。したがって、現在液化ガス燃料の供給に用いている燃料貯蔵用容器内よりも、次に液化ガス燃料の供給に用いる別の燃料貯蔵用容器内の方が、蒸気圧が高い場合などであっても、現在液化ガス燃料の供給に用いている燃料貯蔵用容器内から次に液化ガス燃料の供給に用いる別の燃料貯蔵用容器内へ液化ガス燃料が移動するのを防ぐことができる。すなわち、蒸気圧が異なる燃料貯蔵用容器間での液化ガス燃料の移動の防止や、加圧用ガスの使用量の増大の防止などができる。すなわち、蒸気圧が異なる燃料貯蔵用容器間での液化ガス燃料の移動の防止や、加圧用ガスの使用量の増大の防止などができる。
【0011】
さらに、現在液化ガス燃料の供給に用いている燃料貯蔵用容器から次に液化ガス燃料の供給に用いる別の燃料貯蔵用容器に切り替えるとき、液化ガス燃料の供給に用いる燃料貯蔵用容器の切り替えの前に、予め、次に液化ガス燃料の供給に用いる別の燃料貯蔵用容器を加圧用ガスで加圧しているから、燃料供給管路内の液化ガス燃料が逆流するのを防ぐことができる。このように、蒸気圧が異なる燃料貯蔵用容器間での液化ガス燃料の移動や、液化ガス燃料の逆流などを防止できることにより、複数の燃料貯蔵用容器を備えた自動車用の液化ガス燃料供給装置の性能を向上できる。
【0012】
また、切り替え動作を開始するための設定量である現在の充填に用いている燃料貯蔵用容器の最大収容量の20%以下になってから、現在充填に用いている燃料貯蔵用容器による充填作業途中の燃料タンクへの充填作業が終わるまでの設定時間経過後に、現在液化ガス燃料の充填に用いている燃料貯蔵用容器を次に充填に用いる別の燃料貯蔵用容器に切り替えているから、充填作業途中の燃料タンクへの充填作業を中断することがないので、充填作業の作業時間の増大を抑制できる。
【0013】
さらに、複数の燃料貯蔵用容器には、各々、この燃料貯蔵用容器内の液化ガスを加熱する加熱手段と、燃料貯蔵用容器内の圧力を検出する圧力検出手段及び燃料貯蔵用容器内の液化ガスの加熱温度を検出する温度検出手段の少なくとも一方とが設けられており、加熱手段は、対応する圧力検出手段で検出した圧力及び温度検出手段で検出した温度の少なくとも一方に応じて加熱を制御し、加熱手段のうち、燃料供給用弁を開いて燃料の充填に用いる燃料貯蔵用容器に設けられた加熱手段のみを作動させ、他の加熱手段は停止状態にする構成とすることができる。
【0014】
このような構成とすれば、加圧用ガスは、実際に液化ガス燃料の供給に用いている燃料貯蔵用容器のみに供給されることになるため、同時に複数の燃料貯蔵用容器に無駄な加圧用ガスが供給されるのを防止し、加圧用ガスの使用量の増大を防ぐことができる。また、実際に液化ガス燃料の供給に用いる燃料貯蔵用容器だけが加熱され、他の燃料貯蔵用容器は加熱されないため、加熱で無駄なエネルギーが消費されるのを抑制し、省エネルギー性を向上できる。このように、省エネルギー性も向上できることなどにより、複数の燃料貯蔵用容器を備えた自動車用の液化ガス燃料供給装置の性能をより向上できる。
【0015】
また、複数の燃料貯蔵用容器には、各々、この燃料貯蔵用容器内の液化ガスを加熱する加熱手段と、燃料貯蔵用容器内の圧力を検出する圧力検出手段及び燃料貯蔵用容器内の液化ガスの加熱温度を検出する温度検出手段の少なくとも一方とが設けられており、加熱手段は、対応する圧力検出手段で検出した圧力及び温度検出手段で検出した温度の少なくとも一方に応じて加熱を制御し、液量検出手段が、燃料の供給に用いている燃料貯蔵用容器内の液相の液化ガスの量が、切り替え動作を開始するための設定量以下の量よりも多い予め設定した別の設定量以下になったことを検出すると、次に燃料の充填に用いる別の燃料貯蔵用容器の加熱手段を作動する構成とする。
【0016】
これにより、現在液化ガス燃料の供給に用いている燃料貯蔵用容器内の液相の液化ガス燃料の量が切り替え動作を開始するための設定量以下になる前に、次に燃料の供給に用いる別の燃料貯蔵用容器内の液化ガス燃料の加熱が開始される。このため、次に燃料の供給に用いる別の燃料貯蔵用容器から液化ガス燃料の供給を開始するときに、この別の燃料貯蔵用容器内を必要な温度、圧力に昇温及、昇圧し、燃料供給用弁が開かれたときに液化ガスの供給が可能な状態にできる。したがって、複数の燃料貯蔵用容器を備えた自動車用の液化ガス燃料供給装置の性能をより向上できる。
【0017】
さらに、燃料供給用弁は、緊急時に強制的に閉じられて液化ガス燃料の供給を遮断する緊急遮断弁を兼ねている構成とすれば、装置構成を簡素化できる。また、予め設定した液相の液化ガスの量に関係なく、燃料の供給に用いている燃料貯蔵用容器に対応する燃料供給用弁を閉じ、次に液化ガス燃料の供給に用いる別の燃料貯蔵用容器に対応する燃料供給用弁を開く指令を燃料供給用弁制御手段に送る切り替え指令手段を備えた構成とする。
【0018】
ところで、加圧用ガスを用いて容器内に収容された液化ガス燃料を自動車の車載容器に充填する液化ガス燃料供給装置では、自動車の燃料タンクとなる車載容器に接続して液化ガス燃料を供給するための充填ノズルをディスペンサーなどの設備から外すと、加圧用ガスの供給及び停止を制御する弁が開いた状態となり、燃料貯蔵用容器に加圧用ガスが供給される。そして、充填ノズルをディスペンサーなどの設備に戻すと加圧用ガスの供給及び停止を制御する弁が閉じた状態となり、加圧用ガスの燃料貯蔵用容器への供給が停止する。したがって、従来の液化ガス燃料供給装置では、充填ノズルをオートガス車の燃料タンクなどに接続している間、加圧用ガスが燃料貯蔵用容器に供給され続ける。
【0019】
しかし、充填ノズルを自動車の車載容器などに接続している間、加圧用ガスが燃料貯蔵用容器に供給され続けると、加圧に必要とされる量以上に加圧用ガスが供給されることになる場合がある。加圧用ガスが加圧に必要とされる量以上に供給されると、加圧用ガスの消費量が多くなる上、加圧用ガスの充填サイクルや配送サイクルが短くなることなどから、ランニングコストが増大してしまう。また、燃料貯蔵用容器内が加圧用ガスで加圧された状態になっていると、時間とともに加圧用ガスが液化ガス燃料に溶け込む場合がある。このため、加圧用ガスの種類によっては、液化ガス燃料に溶け込んでいる加圧用ガスの量が増えるに連れて、自動車の車載容器内の圧力が高くなり易くなり、充填速度が低下し易くなったり、充填不可能になったりする場合がある。
【0020】
これに対し、加圧用弁を開く指令を加圧用弁制御手段に送る加圧指令手段を備え、加圧用弁制御手段は、加圧指令手段からの指令信号によって加圧用弁を開いてから予め設定した時間経過すると加圧用弁を閉じる構成とする。このような構成とすれば、例えば自動車の車載タンクに液化ガス燃料を充填しようとしたとき、液化ガス燃料が充填されなければ、加圧スイッチを押すことによって燃料貯蔵用容器内を加圧し、燃料貯蔵用容器内の圧力を充填に必要な圧力にできる。このとき、燃料貯蔵用容器内の加圧、つまり、燃料貯蔵用容器内への加圧用ガスの供給は予め設定された時間の間しか行われないため、例えば予め設定された時間を加圧に必要とされる程度の量の加圧用ガスが燃料貯蔵用容器に供給されるのに要する時間に設定しておく。これにより、加圧用ガスを用いた自動車用の液化ガス燃料供給装置における加圧用ガスの供給量を低減でき、複数の燃料貯蔵用容器を備えた自動車用の液化ガス燃料供給装置の性能をさらに向上できる。
【0021】
さらに、燃料供給管路には、この燃料供給管路内を通流する液化ガス燃料を予め設定した温度に冷却する冷却手段が設けられている構成とする。これにより、加圧用ガスを用いた自動車用の液化ガス燃料供給装置における加圧用ガスの供給量をより低減でき、複数の燃料貯蔵用容器を備えた自動車用の液化ガス燃料供給装置の性能を一層向上できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の燃料貯蔵用容器を備えた自動車用の液化ガス燃料供給装置の性能を向上し、充填作業途中で充填に用いる燃料貯蔵用容器が切り替わることを防止して充填作業の作業時間の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用してなる複数の燃料貯蔵用容器を備えた自動車用の液化ガス燃料供給装置の一実施形態の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を適用してなる自動車用の液化ガス燃料供給装置の一実施形態について図1を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなる自動車用の液化ガス燃料供給装置の概略構成を模式的に示す図である。なお、図1において、加圧用ガスとなる液化ガスが収容される加圧用ガス容器や加圧用ガス容器の加熱手段を構成する加熱器、液化ガス燃料が収容される燃料貯蔵用容器、そして、冷却手段を構成する熱交換器などは断面の状態で示している。
【0025】
本実施形態の自動車用の液化ガス燃料供給装置1は、図1に示すように、自動車用の液化ガス燃料、例えば液化石油ガス(LPG)である液化プロパンと液化ブタンなどを混合した液化ガス燃料を収容して貯蔵するため、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3bの2基の燃料貯蔵用容器を備えている。さらに、液化ガス燃料供給装置1は、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3b内を加圧するための加圧用ガスとなる液化ガス、例えば液化石油ガス(LPG)である液化プロパンを収容するための加圧用ガス容器であるプロパンバルク貯槽5を1基備えている。
【0026】
第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3bには、各々、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3b内の液相部7a、7bに一端側が連通する連結管路9a、9bが設けられている。連結管路9a、9bの他端は、図示していない自動車の燃料タンクとなる車載LP容器への液化ガス燃料の供給を行うための1本の燃料供給管路11に連結されて合流した状態となっている。
【0027】
連結管路9a、9bの各々の第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3bの外側に配管された部分には、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3b側から順に、出口弁12a、12b及び燃料供給用弁13a、13bが設けられている。燃料供給管路11は、図示していない車載LP容器への液化ガス燃料の供給及び供給停止の制御などを行うディスペンサー14に連結されている。燃料供給用弁13a、13bは、窒素ガスによって開閉動作を行う弁であり、燃料供給用弁13a、13bには、各々、この弁の開閉動作を行うための窒素を供給する窒素管路15a、15bを介して窒素ボンベ16が連結されている。
【0028】
窒素管路15a、15bには、各々、燃料供給用弁13a、13bへの窒素の供給及び遮断を制御する電磁弁である窒素制御用三方弁17a、17bが設けられている。なお、本実施形態では、窒素管路15a、15bは、途中で合流して1本の窒素管路15となり、1本の窒素ボンベ16に連結されている。また、窒素管路15a、15bが合流した窒素管路15の窒素ボンベ16近傍にはレギュレータ18が設けられている。しかし、窒素ボンベの数や、燃料供給用弁の作動機構などは適宜選択できる。
【0029】
第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3bは、各々の気相部19a、19bが、プロパンバルク貯槽5の気相部20と、加圧用ガス管路21を介して連通している。加圧用ガス管路21は、一端側がプロパンバルク貯槽5の気相部20に、途中で2本の加圧用ガス管路21a、21bに分岐し、これらの端部側つまり加圧用ガス管路21の他端側は、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3bの各々の気相部19a、19bで開口した状態となっている。
【0030】
第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3bには、各々、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3bの外側に設けられた圧力スイッチ用弁22a、22bを介して第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3b内の圧力を検出する圧力検出手段となる圧力スイッチ23a、23b及び圧力計24a、24bが設けられている。さらに、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3bには、各々、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3b内の液相部7a、7bの液面を検出するための液面計25a、25bが設けられている。
【0031】
加圧用ガス管路21のプロパンバルク貯槽5の外側に配管された部分には、プロパンバルク貯槽5側から順に、出口弁26、プロパンバルク貯槽5内の圧力を検出する圧力検出手段となる圧力スイッチ23c及び圧力計25cが設けられている。さらに、分岐後の加圧用ガス管路21a、21bの第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3bの外側に配管された部分には、各々、加圧用ガスの流れに対して上流側から順に、電磁弁からなる加圧用弁27a、27b、そして、入口弁29a、29bが設けられている。
【0032】
なお、圧力スイッチ23a、23bは、各々、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3b内の圧力を検出するとともに、検出した圧力が予め設定した圧力になると電気信号を発信する。また、圧力スイッチ23cは、加圧用ガス管路21のプロパンバルク貯槽5近傍の部分内の圧力を検出することによってプロパンバルク貯槽5内の圧力を検出するとともに、検出した圧力が予め設定した圧力になると電気信号を発信する。
【0033】
本実施形態の液面計25a、25bは、液相部7a、7bの液面に応じて上下するフロート30a、30bを有している。そして、液面計25a、25bは、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3b内の液相部7a、7bの液面の位置に対応するフロート30a、30bの位置を電気信号として発信する。
【0034】
第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3bには、各々、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3bの外側底面に設置されて、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3b内の液化プロパンを加熱するための加熱器31a、31bが設けられている。加熱器31a、31bは、同じ構造であり、上面が開口された金属製のケース32a、32bの中に蛇腹状に屈曲させた銅などの熱伝導性を有する材料で形成した熱交換管路33a、33bを配設したものである。そして、加熱器31a、31bは、ケース32a、32bの開口の縁部を第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3b内の外側底面に密着させることで取り付けられている。
【0035】
同様に、プロパンバルク貯槽5にも、プロパンバルク貯槽5の外側底面に設置されて、プロパンバルク貯槽5内の液化プロパンを加熱するため、加熱器31a、31bと同じ構造の加熱器31cが設けられている。また、加熱器31a、31b、31cの熱交換管路33a、33b、33cとケース32a、32b、32cとの間の空間には、水などの熱媒となる液体やシリコンなどの熱伝達可能な充填物を充填している。加熱器31a、31bの熱交換管路33a、33bは、各々、熱媒が内部を通流する熱媒循環管路34a、34bを介して熱媒を加熱するための1台の熱源機35aに連結されている。
【0036】
熱媒循環管路34a、34bは、熱源機35a近傍で、熱媒循環管路34が熱媒循環管路34a、34bに分岐したものであり、熱源機35a近傍で合流している。また、熱媒循環管路34a、34bの熱源機35aから加熱器31a、31bに熱媒を供給する側の部分には、各々、熱媒の供給及び遮断を制御する電動弁である熱媒通流制御弁36a、36bが設けられている。加熱器31cの熱交換管路33cは、各々、熱媒が内部を通流する熱媒循環管路34cを介して熱媒を加熱するための1台の熱源機35bに連結されている。
【0037】
なお、本実施形態では、熱源機35a、35bは、熱媒を加熱するためのバーナや熱媒を循環させるためのポンプなどを内蔵したものを用いており、熱源機35a、35b内のバーナに供給される燃料として、加圧用ガス管路21aから分岐した分岐管路21cを介して供給されるプロパンバルク貯槽5内の気相のプロパンガスを利用している。分岐管路21cには、2段の調整器37、38が設けられている。
【0038】
このように、本実施形態では、加熱器31a、31b、31cや熱媒循環管路34、34a、34b、34c、熱源機35a、35b、熱媒通流制御弁36a、36bなどが、加熱手段を構成している。また、加熱器31a、31b、31cには、各々、加熱器31a、31b、31cの加熱温度を検出する温度検出手段となる温度スイッチ39a、39b、39cが設けられている。温度スイッチ39a、39b、39cは、加熱器31a、31b、31cのケース32a、32b、32c内に充填された充填物の温度を検出することによって加熱器31a、31b、31cによる第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3bやプロパンバルク貯槽5の加熱温度を検出するとともに、検出した温度が予め設定した温度になると電気信号を発信する。
【0039】
本実施形態の燃料供給管路11には、燃料供給管路11を通流する液化ガス燃料を冷却するための熱交換器41が設けられている。本実施形態の熱交換器41は、プレートフィン型の熱交換器であり冷却媒体との間で熱交換を行い、燃料供給管路11内を通流する液化ガス燃料の温度を降下させるものである。熱交換器41に代えて、プレートフィン型以外の構造の熱交換器を用いることもできるが、熱交換器41のようなプレートフィン型の熱交換器を用いれば、熱交換器の小型化や低コスト化などが可能となる。
【0040】
本実施形態では、熱交換器41の冷却媒体が通流する流路は、水などの冷却媒体が循環する冷媒管路43を介してポンプなどを内蔵した冷媒循環機45に連結されている。また、冷媒循環機45を用いず、冷却媒体を直接水道から得ることなどもできる。この場合、例えば2本の冷媒管路43のうち、一方の冷媒管路を図示していない水道に連結し、他方の冷媒管路を排水用の管路とする。なお、本実施形態のように冷却媒体を循環させる構成の場合には、冷却媒体として、水以外の種々の冷媒となる液体や、圧縮空気などの気体などを用いることができる。このように、本実施形態の冷却手段は、熱交換器41、冷媒管路43、冷媒循環機45などで構成されている。
【0041】
本実施形態のディスペンサー14は、液化ガス燃料の図示していない車載LP容器への供給の開始及び停止を指令する図示していない充填スイッチ、この図示していない充填スイッチに連動して燃料供給管路11の流路を開閉する図示していない制御弁などを有している。さらに、ディスペンサー14は、このディスペンサー14を通過した液相の液化ガス燃料の体積を計測する図示していない流量計、この流量計で計測した総流量つまり充填量を表示する表示部14a、そして、図示していない車載LP容器の供給口部に連結され、ディスペンサー14を通過した液化ガス燃料を図示していない車載LP容器に導くホース14b及び充填ノズル14cなどを有している。
【0042】
なお、ディスペンサー14の図示していない充填スイッチが、熱交換器41への冷却媒体の通流及び停止や、冷媒循環機45の駆動及び停止などを制御できる構成とすれば、不要なときに冷却媒体の通流や冷媒循環機45の運転が行われないため、省エネルギー効果が得られる。また、ディスペンサー14の近傍には、接地された静電気除去シート46が設けられている。
【0043】
本実施形態では、プロパンバルク貯槽5から第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3bへの加圧用ガスの供給や液化ガス燃料を供給するオートガスバルク貯槽の選択、第1オートガスバルク貯槽3aや第2オートガスバルク貯槽3b、プロパンバルク貯槽5の加熱などは、防滴構造の収納箱47内に収容された液化ガス燃料供給装置1の制御盤49内の制御部によって制御されている。
【0044】
したがって、制御盤49には、窒素制御用三方弁17a、17b、圧力スイッチ23a、23b、23c、加圧用弁27a、27b、熱源機35a、35b、熱媒通流制御弁36a、36b、温度スイッチ39a、39b、39c、冷媒循環機45などが、各々、配線51を介して電気的に接続されている。収納箱47内には、第1オートガスバルク貯槽3aの液面計25aに対応するレベルコンバータ53a、第1オートガスバルク貯槽3bの液面計25bに対応するレベルコンバータ53bも収容されている。レベルコンバータ53a、53bは、制御盤49に電気的に接続されており、液面計25a、25bは、各々、配線55を介してレベルコンバータ53a、53bに接続されている。
【0045】
制御盤49内の制御部は、レベルコンバータ53a、53bからの第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3b内の液相部7a、7bの液面の位置の情報から、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3b内の液相の液化ガス燃料の量が、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3bの液相の液化ガス燃料の最大収容量の40%以下の量になったこと、さらに、切り替え動作を開始するための設定量である20%以下の量になったことを判断する。このように、本実施形態では、液面計25a、25b、レベルコンバータ53a、53b、制御盤49内の制御部などが、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3b内の液相の液化ガス燃料の量を検出するための液量検出手段となっている。
【0046】
さらに、制御盤49には、操作盤57が配線51を介して電気的に接続されている。操作盤57は、例えばディスペンサー14の近傍など、液化ガス燃料の充填作業を行う作業者が操作し易い場所に設置されている。操作盤57には、加圧用ガスのプロパンバルク貯槽5から第1オートガスバルク貯槽3aや第2オートガスバルク貯槽3bへの供給、つまり、加圧用弁27a、27bを開くことを指令する加圧スイッチ59が設けられている。
【0047】
加えて、操作盤57には、窒素制御用三方弁17aと窒素制御用三方弁17bの開閉を切り替えることによって燃料供給用弁13aと燃料供給用弁13bの開閉を切り替えること、すなわち、液化ガス燃料の充填に用いるオートガスバルク貯槽を、第1オートガスバルク貯槽3aと第2オートガスバルク貯槽3bとの間で切り替えることを指令する切り替えスイッチ61が設けられている。さらに、操作盤57には、現在液化ガス燃料の供給に用いているオートガスバルク貯槽を知らせるための表示ランプ63a、63bが設けられている。
【0048】
本実施形態では、第1オートガスバルク貯槽3aに対応する表示ランプ63aと、第2オートガスバルク貯槽3bに対応する表示ランプ63bが設けられており、現在液化ガス燃料の供給に用いられている側の表示ランプが点灯することで、第1オートガスバルク貯槽3aと第2オートガスバルク貯槽3bのいずれのオートガスバルク貯槽が現在液化ガス燃料の供給に用いられているのかを表示する。
【0049】
また、操作盤57には、第1オートガスバルク貯槽3aや第2オートガスバルク貯槽3bからの液化ガス燃料の供給の遮断、つまり、開いている燃料供給用弁13a、13bを閉じることを指令する遮断スイッチ65が設けられている。
【0050】
制御盤49内の制御部は、加圧スイッチ59がオンされたことに対応する電気信号を受けると、第1オートガスバルク貯槽3aと第2オートガスバルク貯槽3bのうち、液化ガス燃料の供給に用いているオートガスバルク貯槽に対応する加圧用弁、つまり、加圧用弁27aと加圧用弁27bのいずれか一方を開く。このとき、制御盤49内の制御部は、加圧用弁27a、27bを開いている時間を設定するためのタイマー機能を有しており、このタイマー機能によって予め設定された時間が経過すると加圧用弁27aと加圧用弁27bのうち、開かれた加圧用弁を閉じ、加圧用ガスのプロパンバルク貯槽5からの加圧用ガスの供給を遮断する。
【0051】
このように、本実施形態の制御盤49内の制御部は、加圧スイッチ59とともに、第1オートガスバルク貯槽3aや第2オートガスバルク貯槽3bを加圧するために加圧用弁27aや加圧用弁27bを開くことを指令する加圧指令手段を構成し、さらに、この加圧指令手段は、加圧用弁27aや加圧用弁27bを開いたとき、予め設定された時間経過すると加圧用弁27aや加圧用弁27bを閉じる。また、本実施形態の制御盤49内の制御部は、切り替えスイッチ61がオンされたことに対応する電気信号を受けると、燃料供給用弁13aと燃料供給用弁13bとの間で弁の開閉を切り替えることで第1オートガスバルク貯槽3aと第2オートガスバルク貯槽3bとの間で液化ガス燃料の供給に用いるオートガスバルク貯槽を切り替える。したがって、本実施形態の制御盤49内の制御部は、切り替えスイッチ61とともに、液化ガス燃料の供給に用いるオートガスバルク貯槽の切り替えを指令する切り替え指令手段を構成する。
【0052】
加えて、本実施形態の制御盤49内の制御部は、遮断スイッチ65がオンされたことに対応する電気信号を受けると、開いている燃料供給用弁13a、13bを閉じる。したがって、本実施形態の制御盤49内の制御部は、遮断スイッチ65とともに、強制的に液化ガス燃料の供給を遮断する強制遮断手段も構成している。また、本実施形態の制御盤49内の制御部は、予め設定した圧力になったときに各圧力スイッチ23a、23b、23cが発信する電気信号や、予め設定した温度になったときに各温度スイッチ39a、39b、39cが発信する電気信号により、対応する熱源機35a、35bを駆動及び停止させ、また、対応する熱媒通流制御弁36a、36bの開閉を行う。
【0053】
なお、本実施形態では、第1オートガスバルク貯槽3a、第2オートガスバルク貯槽3b、プロパンバルク貯槽5には、各々、安全弁67a、67b、67cが設けられている。また、燃料供給管路11にも、安全弁67dが、さらに、ディスペンサー14にも、図示していないが安全弁が設けられている。安全弁67a、67b、67c、67d、そして、ディスペンサー14の図示していない安全弁には、各々、安全弁放出管路69a、69b、69c、69d、69eが連結されており、各安全弁放出管路69a、69b、69c、69d、69eは、放出側で、1本の安全弁放出管路69に集合している。
【0054】
また、本実施形態では、第1オートガスバルク貯槽3a、第2オートガスバルク貯槽3b、プロパンバルク貯槽5の上部には、カバー71a、71b、71cが取り付けられており、各弁類などを覆っている。さらに、本実施形態の制御部収納箱47内には、地震などの揺れを感知する感震器73も設置されている。制御盤49には、配線51を介して、NCU73、事務所などの建家75内に設置されたガス漏れ警報機77、第1オートガスバルク貯槽3aや第2オートガスバルク貯槽3bの近傍に設置されたガス漏れ報知器79なども電気的に接続されている。
【0055】
このような構成の自動車用の液化ガス燃料供給装置1の動作や本発明の特徴部などについて説明する。本実施形態の自動車用の液化ガス燃料供給装置1では、制御盤49内の制御部がプロパンバルク貯槽5内の圧力に応じて熱源機35bを駆動し、加熱された熱媒が加熱器31cに供給される。加熱器31cは、熱源機35bからの加熱された熱媒の熱によりプロパンバルク貯槽5を加熱する。プロパンバルク貯槽5が加熱されることにより、プロパンバルク貯槽5の液相部81のプロパンが加熱されて気化し、気相のプロパンガスとなる。このプロパンガスが、第1オートガスバルク貯槽3aや第2オートガスバルク貯槽3b内の圧力を上昇させるための加圧用ガスとなる。
【0056】
ここで、制御盤49内の制御部は、加熱器31cによる加熱温度が予め設定された温度、例えば40℃付近に保つように、さらに、プロパンバルク貯槽5内の圧力が予め設定された圧力、例えば0.7MPa付近に保つように加熱器31cによるプロパンバルク貯槽5の加熱を制御する。このため、圧力スイッチ23cは、プロパンバルク貯槽5内の圧力が上昇し、例えば0.7MPa以上になると電気信号を発信し、この電気信号により制御盤49内の制御部は熱源機35bを停止させる。一方、圧力スイッチ23cは、プロパンバルク貯槽5内の圧力が降下し、例えば0.65MPa以下になると電気信号を発信し、この電気信号により制御盤49内の制御部は熱源機35bを駆動させる。
【0057】
さらに、温度スイッチ39cは、加熱器31cの充填物の温度が上昇し、例えば37.5℃以上になると電気信号を発信し、この電気信号により制御盤49内の制御部は熱源機35bを停止させる。一方、温度スイッチ39cは、加熱器31cの充填物の温度が降下し、例えば34℃以下になると電気信号を発信し、この電気信号により制御盤49内の制御部は熱源機35bを駆動させる。このように、加熱器31cによる加熱は、熱媒循環管路34cを通流する熱媒の通流を制御することで制御されている。なお、加熱器31cによるプロパンバルク貯槽5の加熱は、熱媒循環管路34cを通流する熱媒の温度を制御することで制御することもできる。
【0058】
同様に、本実施形態の自動車用の液化ガス燃料供給装置1では、制御盤49内の制御部が第1オートガスバルク貯槽3aや第2オートガスバルク貯槽3b内の圧力に応じて熱源機35aを駆動し、加熱された熱媒が加熱器31aや加熱器31bに供給される。第1オートガスバルク貯槽3aや第2オートガスバルク貯槽3bの加熱を行うとき、制御盤49内の制御部は、液化ガス燃料の供給に用いる方のオートガスバルク貯槽の加熱器にのみ加熱された熱媒を供給する。例えば、最初に第1オートガスバルク貯槽3aが液化ガス燃料の供給に用いられる場合、制御盤49内の制御部は、熱媒循環管路34aに設けられた熱媒通流制御弁36aを開き、熱媒循環管路34bに設けられた熱媒通流制御弁36bを閉じた状態で熱源機35aを駆動し、加熱された熱媒を加熱器31aのみに供給する。
【0059】
第1オートガスバルク貯槽3aに設けられた加熱器31aは、熱源機35aからの加熱された熱媒の熱により第1オートガスバルク貯槽3aを加熱する。第1オートガスバルク貯槽3aが加熱されることにより、第1オートガスバルク貯槽3aの液相部7aの液化ガス燃料が加熱されて気化し第1オートガスバルク貯槽3a内の圧力を上昇させ、液化ガス燃料の供給圧力を必要な圧力以上に保持している。
【0060】
ここで、制御盤49内の制御部は、プロパンバルク貯槽5の加熱器31cと同様の制御によって、加熱器31aの加熱温度を予め設定された温度に、さらに、第1オートガスバルク貯槽3a内の圧力を予め設定された圧力に保つよう加熱を制御する。第2オートガスバルク貯槽3bの加熱器31bも、第1オートガスバルク貯槽3aの加熱器31aと同様に加熱が制御される。ただし、熱媒通流制御弁36aと熱媒通流制御弁36bは、原則的に、一方が開いているときには、他方は閉じた状態となるように制御され、第1オートガスバルク貯槽3aと第2オートガスバルク貯槽3bのうち、液化ガス燃料の供給に用いているオートガスバルク貯槽の加熱器のみが加熱を行う。なお、加熱器31a、31bによる第1オートガスバルク貯槽3a、第2オートガスバルク貯槽3bの加熱は、プロパンバルク貯槽5の加熱器31cと同様に、熱媒循環管路34を通流する熱媒の温度を制御することで制御することもできる。
【0061】
このように第1オートガスバルク貯槽3aと第2オートガスバルク貯槽3bのうち、液化ガス燃料の供給に用いるオートガスバルク貯槽内の圧力、そして、プロパンバルク貯槽5内の圧力がほぼ一定の圧力に保たれた状態で、作業者は、図示していない自動車の車載LP容器に、ディスペンサー14の充填ノズル14cを接続し、ディスペンサー14の図示していない充填スイッチをオンする。これにより、ディスペンサー14内の制御弁が開く。
【0062】
このとき、制御盤49内の制御部は、第1オートガスバルク貯槽3aと第2オートガスバルク貯槽3bのうち、液化ガス燃料の供給に用いるオートガスバルク貯槽からのみ液化ガス燃料を供給する。このため、以下の説明では、最初に第1オートガスバルク貯槽3aを液化ガス燃料の供給に用いる場合を一例として示す。
【0063】
制御盤49内の制御部は、最初に液化ガス燃料の供給に用いる第1オートガスバルク貯槽3aに対応する燃料供給用弁13aのみを開き、第2オートガスバルク貯槽3bに対応する燃料供給用弁13bは、閉じた状態にしておく。したがって、本実施形態の液化ガス燃料供給装置1では、制御盤49内の制御部は、窒素制御用三方弁17aを開き、窒素制御用三方弁17bを閉じたままとすることで、燃料供給用弁13aにのみ窒素を供給して燃料供給用弁13aのみが開いた状態とする。これにより、第1オートガスバルク貯槽3aから車載LP容器に液化ガス燃料の充填が行われる。
【0064】
ところで、液化ガス燃料の充填を始めた直後など、種々の条件によって、第1オートガスバルク貯槽3aの加熱器31aで加熱を行っていたとしても、第1オートガスバルク貯槽3a内の圧力が必要な圧力に上昇しておらず、図示していない自動車の車載LP容器内の圧力と同等か、それ以下の場合がある。この場合、第1オートガスバルク貯槽3aから図示していない自動車の車載LP容器への液化ガス燃料の充填が行われない。液化ガス燃料の充填が行われていないことは、例えばディスペンサー14の表示部14aの表示が動かないことなどから判断することができる。
【0065】
液化ガス燃料の充填が行われない場合、作業者は、操作盤57の加圧スイッチ59をオンする。これにより、制御盤49内の制御部は、第1オートガスバルク貯槽3aに対応する加圧用ガス管路21aに設けられた加圧用弁27aを予め設定された時間の間開いた状態とし、予め設定された時間が経過すると電磁弁からなる加圧用弁27aを閉じる。そして、加圧用弁27aが開いている間だけ、加圧用ガス管路21aを介して、プロパンバルク貯槽5内のプロパンガスが加圧用ガスとして第1オートガスバルク貯槽3aに流入し、第1オートガスバルク貯槽3a内の圧力が上昇する。
【0066】
第1オートガスバルク貯槽3a内の圧力が上昇し、図示していない自動車の車載LP容器内の圧力よりも高くなると、第1オートガスバルク貯槽3aから図示していない自動車の車載LP容器への液化ガス燃料の充填が行われる。このとき、液化ガス燃料の供給に用いていない第2オートガスバルク貯槽3bに対応する加圧用ガス管路21bに設けられた加圧用弁27bは閉じた状態のままである。
【0067】
また、加圧スイッチ59をオンして、予め設定した時間の間プロパンバルク貯槽5内のプロパンガスを第1オートガスバルク貯槽3aに供給しても第1オートガスバルク貯槽3a内の圧力が液化ガス燃料の充填を行う車載LP容器内の圧力よりも高くならず、液化ガス燃料の充填が行われない場合、再度、加圧スイッチ59をオンすることによって、液化ガス燃料の充填を行うことができる。
【0068】
一方、作業者がディスペンサー14の図示していない充填スイッチをオンし、ディスペンサー14の制御弁が開いたとき、第1オートガスバルク貯槽3a内の圧力が図示していない自動車の車載LP容器内の圧力よりも高ければ、加圧スイッチ59をオンしなくても、液化ガス燃料の充填が行われる。例えば、連続して液化ガス燃料の充填を行うため、以前に加圧スイッチ59をオンすることで第1オートガスバルク貯槽3a内の圧力が液化ガス燃料の充填を行う車載LP容器内の圧力よりも高くなっている場合や、加熱器31aによる加熱で第1オートガスバルク貯槽3a内の圧力が液化ガス燃料の充填を行う車載LP容器内の圧力よりも高くなっている場合などは、プロパンバルク貯槽5内のプロパンガスを第1オートガスバルク貯槽3aに供給しなくても液化ガス燃料の充填を行うことができる。
【0069】
第1オートガスバルク貯槽3aから図示していない車載LP容器への液化ガス燃料の充填を繰り返すと、第1オートガスバルク貯槽3a内の液相の液化ガス燃料の量が減って行く。制御盤49内の制御部は、液面計25aからの情報によって検出したで第1オートガスバルク貯槽3a内の液相の液化ガス燃料が最大収容量の40%以下の量になったと判断すると、次に液化ガス燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3bの加熱器31bによって、第2オートガスバルク貯槽3bの加熱を開始する。つまり、制御盤49内の制御部は、第1オートガスバルク貯槽3a内の液相の液化ガス燃料の量が最大収容量の40%になったと判断すると、熱媒循環管路34bに設けられた熱媒通流制御弁36bを開き、熱源機35aからの熱媒を加熱器31bに通流させる。
【0070】
そして、熱源機35aからの熱媒を加熱器31bに通流させることで、第2オートガスバルク貯槽3bの加熱器31bによって、第2オートガスバルク貯槽3bの加熱を行い、第2オートガスバルク貯槽3b内を昇温、昇圧させるウォーミングアップを行う。このウォーミングアップのときも、加熱器31bによる加熱の制御は、前述のように、第2オートガスバルク貯槽3b内の圧力と加熱器31bの加熱温度とによって制御される。また、通常は、加熱器31aと加熱器31bは、液化ガス燃料の供給に用いるオートガスバルク貯槽に設けられた方のみしか加熱を行わないが、このウォーミングアップのときは、例外として熱媒通流制御弁36aと熱媒通流制御弁36bが同時に開き、加熱器31aと加熱器31bが同時に加熱を行っている状態となる場合がある。
【0071】
さらに、制御盤49内の制御部は、液面計25aからの情報によって検出したで第1オートガスバルク貯槽3a内の液相の液化ガス燃料の量が切り替え動作を開始するための設定量である最大収容量の20%以下の量になったと判断すると、現在液化ガス燃料の供給に用いている第1オートガスバルク貯槽3aからの液化ガス燃料の供給を止め、次に液化ガス燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3bからの液化ガス燃料の供給を開始するための切り替え動作を開始する。
【0072】
本実施形態の液化ガス燃料供給装置1では、制御盤49内の制御部は、第1オートガスバルク貯槽3a内の液相の液化ガス燃料が最大収容量の20%以下の量になったと判断すると、20%以下の量になってから予め設定した時間経過後、例えば10分程度経過後、次に液化ガス燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3bに対応する加圧用弁27bを開いて、プロパンバルク貯槽5から第2オートガスバルク貯槽3bに加圧用ガスを供給する。通常は、加圧用弁27aと加圧用弁27bは、液化ガス燃料の供給に用いるオートガスバルク貯槽に対応する方のみしか開かないが、この切り替え動作のときは、例外として、加圧用弁27aと加圧用弁27bが同時に開いた状態となる場合がある。
【0073】
さらに、制御盤49内の制御部は、次に液化ガス燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3bに対応する加圧用弁27bを開いてから予め設定した時間経過後、例えば1分程度経過後、現在液化ガス燃料の供給に用いている第1オートガスバルク貯槽3aに対応する燃料供給用弁13aを閉じ、次に液化ガス燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3bに対応する燃料供給用弁13bを開く。このように、液化ガス燃料の供給を行うオートガスバルク貯槽が、第1オートガスバルク貯槽3aから第2オートガスバルク貯槽3bに切り替えられ、第2オートガスバルク貯槽3bから図示していない車載LP容器に液化ガス燃料の充填が行われる。なお、この切り替えの際、もし、第1オートガスバルク貯槽3aに対応する加圧用弁27aが開いている場合は、燃料供給用弁13aを閉じるとともに、加圧用弁27aも閉じる。
【0074】
また、本実施形態の液化ガス燃料供給装置1の操作盤57には、切り替えスイッチ61が設けられているため、この切り替えスイッチ61をオンすることで、必要に応じ、強制的に液化ガス燃料の供給に用いるオートガスバルク貯槽を切り替えることができる。このときの切り替え動作も、上記のような液面計25aなどによる自動的な切り替え動作と同様の過程で行われる。
【0075】
なお、制御盤49内の制御部に予め設定された各時間、すなわち、加圧用弁27aを開いて加圧用ガスを第1オートガスバルク貯槽3aに供給する時間、切り替え動作の際に燃料が最大収容量の20%以下の量になってから次に液化ガス燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3bに対応する加圧用弁27bを開くまでの時間、そして、第2オートガスバルク貯槽3bに対応する加圧用弁27bを開いてから第2オートガスバルク貯槽3bに対応する燃料供給用弁13bを開くまでの時間などは、試験などを行い、適宜決定している。また、制御盤49内の制御部に予め設定しておくこれらの各時間は、条件に応じて変えることもできる。例えば、プロパンガスの圧力が低くなる冬場は、圧力が高くなる夏場よりも長くするといったように設定を適宜変更することもできる。
【0076】
また、液化ガス燃料の充填作業を行っているときに何らかの問題が生じるなど、緊急に加圧用ガスの供給を遮断する必要がある場合には、作業者が操作盤57の遮断スイッチ65をオンすることで、加圧スイッチを押してから予め設定した時間が経過していなくても、制御盤49内の制御部が加圧用弁27aや加圧用弁27bを閉じ、また、第1オートガスバルク貯槽3aや第2オートガスバルク貯槽3b内の液量になど関係なく、燃料供給用弁13aや燃料供給用弁13bを強制的に閉じ、加圧用ガスや液化ガス燃料の供給を遮断することができる。
【0077】
このように、本実施形態の自動車用の液化ガス燃料供給装置1では、制御盤49内の制御部は、現在液化ガス燃料の供給に用いている第1オートガスバルク貯槽3aから、次に液化ガス燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3bに切り替える際、第1オートガスバルク貯槽3aに対応する燃料供給用弁13aを閉じ、第2オートガスバルク貯槽3bに対応する燃料供給用弁13bを開く。このため、第1オートガスバルク貯槽3aと第2オートガスバルク貯槽3bとが連通した状態になるのを防ぐことができる。
【0078】
もし、第1オートガスバルク貯槽3aと第2オートガスバルク貯槽3bの両方から液相の液化ガス燃料を供給したり、燃料の供給に用いるオートガスバルク貯槽を切り替える際に第1オートガスバルク貯槽3aに対応する燃料供給用弁13aと第2オートガスバルク貯槽3bに対応する燃料供給用弁13bとが同時に開いたりするなど、第1オートガスバルク貯槽3aと第2オートガスバルク貯槽3bとが連通した状態になったりした場合、第1オートガスバルク貯槽3a内と第2オートガスバルク貯槽3b内の蒸気圧が異なると、液相の液化ガス燃料が蒸気圧の低い方に移動してしまう。
【0079】
例えば第2オートガスバルク貯槽3bが日向にあり、第1オートガスバルク貯槽3aが日陰にあるなど、第2オートガスバルク貯槽3b内の方が第1オートガスバルク貯槽3aよりも圧力が高くなるような条件下にあると、次に液化ガス燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3b内の液相の液化ガスが第1オートガスバルク貯槽3aに移動してしまい、第2オートガスバルク貯槽3bが供給できる液相の液化ガス燃料の量が減少してしまうことになる。
【0080】
しかし、本実施形態の液化ガス燃料供給装置1では、第1オートガスバルク貯槽3aと第2オートガスバルク貯槽3bとが連通した状態になるのを防ぐことができるため、第1オートガスバルク貯槽3aと第2オートガスバルク貯槽3bとの間での蒸気圧の差などによる液化ガス燃料の移動を防ぐことができる。加えて、本実施形態の液化ガス燃料供給装置1では、第1オートガスバルク貯槽3aが液化ガス燃料の供給に用いられているときは、原則的に、第1オートガスバルク貯槽3aに対応する加圧用弁27aのみが開いた状態となるため、加圧用ガスは、液化ガス燃料の供給に用いている第1オートガスバルク貯槽3aのみに供給されることになる。このため、切り替えを行う場合を除き、同時に第1オートガスバルク貯槽3aと第2オートガスバルク貯槽3bに加圧用ガスが供給されるのを防止し、加圧用ガスの使用量の増大を防ぐことができる。
【0081】
さらに、本実施形態の液化ガス燃料供給装置1では、第1オートガスバルク貯槽3aと第2オートガスバルク貯槽3bとに、各々、収容している液相の液化ガスの量を検出する液面計25a、25bが設けられている。そして、制御盤49内の制御部が、例えば燃料の供給に用いている第1オートガスバルク貯槽3a内の液相の液化ガスの量が予め設定した設定量以下になったことを判断すると、この設定量以下になってから予め設定した時間経過後、次に液化ガス燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3bに対応する加圧用弁27bを開き、この加圧用弁27bを開いた後、現在燃料の供給に用いている第1オートガスバルク貯槽3aに対応する燃料供給用弁13aを閉じ、次に液化ガス燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3bに対応する燃料供給用弁13bを開く。
【0082】
このため、現在液化ガス燃料の供給に用いている第1オートガスバルク貯槽3aから次に液化ガス燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3bに切り替えるとき、切り替えの前に予め第2オートガスバルク貯槽3bを加圧用ガスで加圧しておくことができ、燃料供給管路11内の液化ガス燃料が第2オートガスバルク貯槽3b方向に逆流するのを防ぐことができる。液化ガス燃料が逆流すると、ディスペンサー14による液化ガス燃料の充填量の計量などでは、逆流した量を補正することができないため、図示していない自動車の車載LP容器への液化ガス燃料の充填量の計測誤差が発生してしまう。しかし、本実施形態の液化ガス燃料供給装置1では、燃料供給管路11内の液化ガス燃料の逆流を防ぐことができるため、液化ガス燃料の充填量の計測誤差の発生を抑制できる。
【0083】
このように、本実施形態の液化ガス燃料供給装置1では、蒸気力が異なる燃料貯蔵用容器間での液化ガス燃料の移動や、加圧用ガスの使用量の増大を防止でき、さらに、液化ガス燃料の逆流も防止できるため、複数の燃料貯蔵用容器を備えた自動車用の液化ガス燃料供給装置の性能を向上できる。
【0084】
さらに、本実施形態の自動車用の液化ガス燃料供給装置1では、液化ガス燃料の供給に用いている第1オートガスバルク貯槽3a内の液相の液化ガス燃料の量が最大収容量の20%以下といったような予め設定した設定量以下になってから、加圧用弁27bを開くまでの時間を、10分程度経過してからといったように、現在液化ガス燃料の供給に用いている第1オートガスバルク貯槽3aによる充填作業が終わるまでの時間に設定している。液化ガス燃料の量が最大収容量の20%以下といったような予め設定した設定量になったときには、まだ第1オートガスバルク貯槽3aから図示していない車載LP容器への液化ガス燃料の充填作業の途中であり、この時点ですぐに第2オートガスバルク貯槽3bへの切り替え動作を行うと、充填作業の時間が長くなる。これに対し、本実施形態では、第1オートガスバルク貯槽3aによる充填が終了してから第2オートガスバルク貯槽3bに切り替えるため、充填作業の作業時間の増大を抑制できる。
【0085】
加えて、制御盤49内の制御部は、加熱手段を構成する熱媒通流制御弁36aと熱媒通流制御弁36bのうち、例えば、燃料供給用弁13aを開いて燃料の供給に用いる第1オートガスバルク貯槽3aの熱媒通流制御弁36aのみを開いて加熱器31aのみが加熱を行う。すなわち、燃料供給用弁を開いて燃料の供給に用いる燃料貯蔵用容器に設けられた加熱手段のみを作動させ、他の加熱手段は停止状態となるため、実際に液化ガス燃料の供給に用いる燃料貯蔵用容器だけが加熱され、他の燃料貯蔵用容器は加熱されず、省エネルギー性を向上できる。つまり、省エネルギー性も向上できることにより、複数の燃料貯蔵用容器を備えた自動車用の液化ガス燃料供給装置の性能を一層向上できる。
【0086】
さらに、本実施形態の自動車用の液化ガス燃料供給装置1では、制御盤49内の制御部は、液化ガス燃料の供給に用いている第1オートガスバルク貯槽3a内の液相の液化ガス燃料の量が最大収容量の40%以下といったような切り替え動作を開始するための設定量よりも多い予め設定した別の設定量以下になると、熱媒通流制御弁36bを開いて加熱器31bに熱媒を通流させるなど、次に燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3bに対応する加熱手段を作動させている。
【0087】
このため、現在液化ガス燃料の供給に用いている第1オートガスバルク貯槽3a内の液相の液化ガス燃料の量が切り替え動作を開始するための設定量以下になる前に、次に燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3b内の液化ガス燃料の加熱が開始され、次に燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3bから液化ガス燃料の供給を開始するときに、この第2オートガスバルク貯槽3b内を、必要な温度及び圧力に昇温、昇圧し、燃料供給用弁13bが開かれたときに液化ガスの供給が可能な状態にできる。したがって、複数の燃料貯蔵用容器を備えた自動車用の液化ガス燃料供給装置の性能をさらに向上できる。
【0088】
加えて、燃料供給用弁13a,13bは、緊急時に強制的に閉じられて液化ガス燃料の供給を遮断する緊急遮断弁を兼ねているため、装置構成を簡素化できる。
【0089】
さらに、制御盤49内の制御部は、第1オートガスバルク貯槽3a内などの液相の液化ガス燃料の量に対して予め設定した切り替え動作を開始するための設定量に関係なく、そのとき燃料の供給に用いている第1オートガスバルク貯槽3aなどに対応する燃料供給用弁13aなどを閉じ、次に液化ガス燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3bなどに対応する燃料供給用弁13bを開く指令を燃料供給用弁制御手段に送る切り替え指令手段の役割も果たしている。このため、液化ガス燃料の供給に用いている第1オートガスバルク貯槽3aなどに不具合が生じた場合など、液相の液化ガス燃料の量が切り替え動作を開始するための設定量以下になっていなくても、次に液化ガス燃料の供給に用いる第2オートガスバルク貯槽3bなどに液化ガス燃料の供給を切り替えることができる。
【0090】
ここで、従来の加圧用ガスを用いて容器内に収容された液化ガス燃料を自動車の車載容器に充填する液化ガス燃料供給装置では、自動車の燃料タンクとなる車載容器に接続して液化ガス燃料を供給するための充填ノズルをディスペンサーなどの設備から外すと、加圧用ガスの供給及び停止を制御する弁が開いた状態となり、燃料貯蔵用容器に加圧用ガスが供給される。そして、充填ノズルをディスペンサーなどの設備に戻すと加圧用ガスの供給及び停止を制御する弁が閉じた状態となり、加圧用ガスの燃料貯蔵用容器への供給が停止する。したがって、従来の液化ガス燃料供給装置では、充填ノズルをオートガス車の燃料タンクなどに接続している間、加圧用ガスが燃料貯蔵用容器に供給され続ける。
【0091】
しかし、充填ノズルを自動車の車載容器などに接続している間、加圧用ガスが燃料貯蔵用容器に供給され続けると、加圧に必要とされる量以上に加圧用ガスが供給されることになる場合がある。加圧用ガスが加圧に必要とされる量以上に供給されると、加圧用ガスの消費量が多くなる上、加圧用ガスの充填サイクルや配送サイクルが短くなることなどから、ランニングコストが増大してしまう。また、燃料貯蔵用容器内が加圧用ガスで加圧された状態になっていると、時間とともに加圧用ガスが液化ガス燃料に溶け込む場合がある。このため、加圧用ガスの種類によっては、液化ガス燃料に溶け込んでいる加圧用ガスの量が増えるに連れて、自動車の車載容器内の圧力が高くなり易くなり、充填速度が低下し易くなったり、充填不可能になったりする場合がある。
【0092】
これに対し、本実施形態の液化ガス燃料供給装置1では、必要に応じて加圧スイッチ59を押すことによって、液化ガス燃料の供給に用いている第1オートガスバルク貯槽3aなどを加圧し、第1オートガスバルク貯槽3a内などの圧力を充填に必要な圧力にできる。このとき、プロパンバルク貯槽5から第1オートガスバルク貯槽3a内などへの加圧用ガスとなるプロパンガスの供給は、制御盤49内の制御部に予め設定された時間の間しか行われない。このため、従来の液化ガス燃料供給装置のように、充填ノズルをディスペンサーから取り外している間、加圧用ガスがオートガスバルク貯槽に供給されることはない。したがって、加圧用ガスを用いた自動車用の液化ガス燃料供給装置における加圧用ガスの供給量を低減できる。
【0093】
さらに、加圧用ガスの供給量を低減できることによって、加圧用ガスの使用量が減少し、加圧用ガスの消費によるコストや加圧用ガスの補充するための配送コストなどを低減できる。加えて、加圧用ガスとなるプロパンガスの使用量が減少することから、連続して液相のプロパンを蒸発させる時間を短くでき、プロパンバルク貯槽5内の圧力つまり加圧用ガスの圧力を比較的高い状態に維持できるようになり、液化ガス燃料中の車載LP容器への充填速度を高くできる。さらに、連続して液相のプロパンを蒸発させる時間を短くできることから、プロパンバルク貯槽5の表面温度の低下を抑制でき、結露などによるプロパンバルク貯槽5の腐蝕などを防止できる。
【0094】
ところで、液化ガス燃料の供給に用いている第1オートガスバルク貯槽3a内などを加圧用ガスとなるプロパンガスなどで加圧して行くと、時間の経過とともにプロパンガスが液化ガス燃料に溶け込んで行く。プロパンガスが液化ガス燃料に溶け込むと、液化ガス燃料の加圧用ガスとして用いたプロパンガスの割合が多くなる。そして、液化ガス燃料中のプロパンガスの割合が多くなると、車載LP容器内の圧力が上昇し易くなり、液化ガス燃料中の車載LP容器への充填速度の低下や充填ができなくなるといった状態を招き易くなる。これに対して、本実施形態の液化ガス燃料供給装置1では、加圧用ガスの供給量を低減できるため、液化ガス燃料中のプロパンガスの割合の増大を抑制できる。したがって、車載LP容器内の圧力の上昇を抑制でき、液化ガス燃料中の車載LP容器への充填速度の低下や充填ができなくなるといった状態が生じるのを抑制できる。
【0095】
さらに、本実施形態の液化ガス燃料供給装置1では、異常が発生した場合に、緊急遮断弁を兼ねている燃料供給用弁13a,13bを強制的に閉じて液化ガス燃料の通流を遮断する強制遮断手段となる遮断スイッチ65や制御盤49内の制御部などを備えている。このため、液化ガス燃料の充填を行っているときでも、異常が生じたときなどに液化ガス燃料の供給を遮断でき、安全性を向上できる。加えて、本実施形態の液化ガス燃料供給装置1では、燃料供給管路11に、燃料供給管路11内を通流する液化ガス燃料を予め設定した温度に冷却する冷却手段となる熱交換器41が設けられている。このため、加圧用ガスを用いた自動車用の液化ガス燃料供給装置における加圧用ガスの供給量をより低減できる。
【0096】
さらに、本実施形態の液化ガス燃料供給装置1では、加熱された熱媒の熱を利用して第1オートガスバルク貯槽3a、第2オートガスバルク貯槽3b、プロパンバルク貯槽5を加熱する加熱器31a、31b、31cを用いている。このため、防爆対応の加熱手段を用いることなく加圧用ガスを得るための液化ガスや液化ガス燃料を加熱できる。
【0097】
また、本実施形態では、強制遮断手段として遮断スイッチ65を設けた構成を示した。しかし、強制遮断手段は、遮断スイッチ65を設けた構成だけでなく、ガス漏れ検知器に連動して遮断を行うような構成や、感震器に連動して遮断を行う構成、これらを組み合わせた構成などにすることもできる。さらに、強制遮断手段を設けていない構成にすることもできる。
【0098】
また、本実施形態では、圧力スイッチ23a、23bと温度スイッチ39a、39bを併用しているが、少なくとも一方を用いてプロパンバルク貯槽5の加熱を制御する構成にすることもできる。また、本実施形態では、制御盤49内の制御部は、圧力スイッチ23a、23bや温度スイッチ39a、39bを利用したプロパンバルク貯槽5の加熱の制御、加圧指令手段、強制遮断手段、タイマー機能を含む弁閉止手段などの役割を果たしている。しかし、これらの各手段を本実施形態のように一つの制御盤49内に制御部として一体化せず、適宜複数のユニットに分けた構成などにすることもできる。
【0099】
また、本実施形態では、加熱手段として、第1オートガスバルク貯槽3a及び第2オートガスバルク貯槽3bや、プロパンバルク貯槽5の外側底面に設けた加熱器31a、31b、31cを有する構成を示しているが、加熱手段は、オートガスバルク貯槽やプロパンバルク貯槽をジャケット構造にしたり、オートガスバルク貯槽やプロパンバルク貯槽内に熱媒体が通流する管路などを内挿した構造などにしたりすることもできる。さらに、加熱手段は、ヒータやバーナなどを含む加熱装置を直接オートガスバルク貯槽やプロパンバルク貯槽に取り付けたり、オートガスバルク貯槽やプロパンバルク貯槽の底面の下方に設けたりした構成などにすることもできる。ただし、ヒータやバーナなどを含む加熱装置を直接オートガスバルク貯槽やプロパンバルク貯槽に取り付ける場合、加熱装置は防爆構造にする必要があるため、構成の複雑化やコストの増大を招く場合があり、本実施形態のような加熱器31a、31b、31cを含む加熱手段を用いることが望ましい。このとき、加熱手段を構成する熱源機の数などは適宜選択できる。
【0100】
また、本実施形態では、冷却手段として、熱交換器41を有する構成としているが、冷却手段は、燃料供給管路11を通流する液化ガス燃料の温度を低下できれば様々な構成のものを用いることができる。例えば、ペルチェ素子などの冷却装置を直接燃料供給管路11に取り付けることもできる。ただし、ペルチェ素子などの電気を利用した冷却装置を直接燃料供給管路に取り付ける場合、冷却装置は防爆構造にする必要があるため、構成の複雑化やコストの増大を招く場合がある。これに対して、本実施形態の熱交換器41を有する冷却手段のような構成であれば、防爆対策の必要がない。さらに、冷却手段を設けていない構成にすることもできる。
【0101】
また、本実施形態では、液化ガス燃料の充填を行うとき、ディスペンサー14の図示していない充填スイッチをオンする構成を示したが、充填ノズル14cの脱着でディスペンサー14の制御弁を開閉する構成などにすることもできる。さらに、本実施形態では、2つのオートガスバルク貯槽を備え、最初に第1オートガスバルク貯槽3aから液化ガス燃料の供給を行い、次に第2オートガスバルク貯槽3bから液化ガス燃料の供給を行う場合を例示している。しかし、本発明は、オートガスバルク貯槽つまり燃料貯蔵用容器の設置数や、液化ガス燃料の供給に用いる順序などが異なる液化ガス燃料供給装置にも適用できる。
【0102】
このように、本発明は、複数の燃料貯蔵用容器を備えた様々な構成の液化ガス燃料供給装置に適用でき、また、本発明を適用してなる液化ガス燃料供給装置は、本実施形態の構成に限らず、様々な構成にすることができる。
【符号の説明】
【0103】
1 液化ガス燃料供給装置
3a 第1オートガスバルク貯槽
3b 第2オートガスバルク貯槽
5 プロパンバルク貯槽
7a、7b、81 液相部
9a、9b 連結管路
11 燃料供給管路
13a、13b 燃料供給用弁
14 ディスペンサー
19a、19b、20 気相部
21、21a、21b 加圧用ガス管路
25a、25b 液面計
27a、27b 加圧用弁
31a、31b、31c 加熱器
34、34a、34b、34c 熱媒循環管路
35a、35b 熱源機
41 熱交換器
49 制御盤
57 操作盤
59 加圧スイッチ
61 切り替えスイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の液化ガス燃料が収容される複数の燃料貯蔵用容器と、該各燃料貯蔵用容器内を加圧するガスを供給する加圧用ガス容器と、該加圧用ガス容器内の加圧用ガスを前記各燃料貯蔵用容器の気相部に導く加圧用ガス管路と、前記各燃料貯蔵用容器内の液相部に一端を位置させ自動車の燃料タンクに前記燃料貯蔵用容器内の液相の液化ガス燃料を供給する燃料供給管路と、前記各加圧用ガス管路に設けられて前記各燃料貯蔵用容器への加圧用ガスの供給を制御する加圧用弁と、前記燃料貯蔵容器の液相部に連通する前記各燃料供給管路に各々設けられて該燃料供給管路内の流路を開閉する燃料供給用弁と、前記各加圧用弁と前記各燃料供給用弁の開閉を制御する制御手段を備え、
前記複数の燃料貯蔵用容器には、各々、該燃料貯蔵用容器内の液相の液化ガス燃料の量を検出する液量検出手段が設けられており、
前記制御手段は、前記自動車の燃料タンクへの現在の充填に用いている燃料貯蔵用容器内の液相の液化ガス燃料の量が、現在の充填に用いている燃料貯蔵用容器の最大収容量の20%以下の設定量に低下したとき、現在の充填に用いている燃料貯蔵用容器による充填作業途中の前記自動車の燃料タンクへの充填作業が終わるまでの時間として設定された時間の経過後に、次に液化ガス燃料の充填に用いる別の前記燃料貯蔵用容器に対応する前記加圧用弁を開き、該加圧用弁を開いた後、現在の充填に用いている燃料貯蔵用容器に対応する前記燃料供給用弁を閉じ、前記加圧用弁を開いた前記別の燃料貯蔵用容器に対応する前記燃料供給用弁を開いて充填に用いる燃料貯蔵容器を切り替えるようにしてなる自動車用の液化ガス燃料供給装置。
【請求項2】
前記複数の燃料貯蔵用容器には、各々、該燃料貯蔵用容器内の液化ガスを加熱する加熱手段と、前記燃料貯蔵用容器内の圧力を検出する圧力検出手段及び前記燃料貯蔵用容器内の液化ガスの加熱温度を検出する温度検出手段の少なくとも一方とが設けられており、前記加熱手段は、対応する前記圧力検出手段で検出した圧力及び前記温度検出手段で検出した温度の少なくとも一方に応じて加熱を制御し、前記加熱手段のうち、前記燃料供給用弁を開いて液化ガス燃料の充填に用いる前記燃料貯蔵用容器に設けられた加熱手段のみを作動させ、他の加熱手段は停止状態にしてなることを特徴とする請求項1に記載の自動車用の液化ガス燃料供給装置。
【請求項3】
前記現在の充填に用いている燃料貯蔵用容器内の液相の液化ガス燃料の量が、前記設定量よりも多い予め設定した別の設定量に低下したことを検出すると、次に液化ガス燃料の充填に用いる前記別の燃料貯蔵用容器の加熱手段を作動してなることを特徴とする請求項2に記載の自動車用の液化ガス燃料供給装置。
【請求項4】
前記燃料供給用弁は、緊急時に強制的に閉じられて液化ガス燃料の供給を遮断する緊急遮断弁を兼ねていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動車用の液化ガス燃料供給装置。
【請求項5】
前記加圧用弁を開く指令を前記制御手段に送る加圧スイッチを備え、前記制御手段は、前記加圧スイッチが押された後、予め設定した時間経過すると当該加圧用弁を閉じてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自動車用の液化ガス燃料供給装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−237453(P2012−237453A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176485(P2012−176485)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【分割の表示】特願2005−300511(P2005−300511)の分割
【原出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】