説明

自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造

【課題】インストルメントパネルの商品性をソフト層によって向上させることができると共に、インストルメントパネルに取り付けられた内装部品が衝撃荷重によって破損する確率を低減することができる自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造を得る。
【解決手段】耐衝撃構造10では、インストルメントパネル12の基材22の表面が、ダイラタント特性を有する材料からなるダイラタントソフト層24によって覆われている。このダイラタントソフト層24は、部品取付用開口20に嵌め込まれたクラスタ14(内装部品)と隣り合って配置されている。このダイラタントソフト層24は、通常時は柔軟であるため、インストルメントパネル12の商品性を向上させることができる。また、インストルメントパネル12に衝突物26が衝突した際には、ダイラタントソフト層24が瞬時に硬化することにより、衝突荷重がクラスタ14に集中することが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示された自動車用インストルメントクラスタの耐衝撃構造では、インストルメントパネルにクラスタが取り付けられている。このクラスタには、ヒータコントロールユニットが取り付けられた取付け開口が形成されており、当該取付け開口の上縁部には、インストルメントパネル又はクラスタに衝撃荷重が作用した際に、ヒータコントロールユニットに当接してクラスタの変形を阻止するリブが一体形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−153725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インストルメントパネルには、基材の表面がウレタンフォーム等からなるソフト層によって覆われることにより、商品性を向上させたものがある。しかしながら、このようなインストルメントパネルでは、反力が小さいソフト層がクラスタ等の内装部品と隣り合って配置されるため、両者の境目付近に衝撃荷重が作用した際には、ソフト層が変形することにより、内装部品に衝撃荷重が集中して内装部品が破損する虞がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、インストルメントパネルの商品性をソフト層によって向上させることができると共に、インストルメントパネルに取り付けられた内装部品が衝撃荷重によって破損する確率を低減することができる自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造は、基材の表面がソフト層によって覆われたインストルメントパネルと、前記インストルメントパネルに取り付けられると共に、前記ソフト層の表面に沿う方向で前記ソフト層と隣り合って配置された内装部品と、を備え、前記ソフト層は、少なくとも前記内装部品と隣り合う部位の一部がダイラタント特性を有する材料によって形成されている。
【0007】
請求項1に記載の自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造では、インストルメントパネルのソフト層は、少なくとも内装部品(クラスタ、レジスタ、オーナメント等)と隣り合う部位の一部がダイラタント特性を有する材料によって形成されている。このため、少なくとも上記一部の側に衝撃荷重が作用した際には、ダイラタント特性を有する材料が瞬時に硬化する。これにより、内装部品に作用する衝撃荷重をインストルメントパネルの基材に分散することができるので、内装部品が破損する確率を低減することができる。しかも、ダイラタント特性を有する材料は、通常時は柔軟であるため、当該ソフト層によってインストルメントパネルの商品性を向上させることができる。なお、当該ソフト層における内装部品と隣り合う部位の全部がダイラタント特性を有する材料によって形成されている場合には、内装部品が破損する確率を大幅に低減することができることは言うまでもない。
【0008】
請求項2に記載の発明に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造は、請求項1に記載の自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造において、前記ソフト層は、ダイラタント特性を有する材料によって形成されている。
【0009】
請求項2に記載の自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造では、ダイラタント特性を有する材料によって形成されたソフト層が、内装部品と隣り合って配置されている。つまり、ソフト層において、内装部品と隣り合う部位とそれ以外の部位とが同じ材料によって一体に形成されているため、両者の間に視覚的に認識可能な境界が形成されることを防止できる。これにより、インストルメントパネルの外観品質を向上させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造は、請求項1に記載の自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造において、前記ソフト層は、前記基材の表面に積層された発泡体層と、当該発泡体層の表面に積層された表皮層とを有し、当該表皮層がダイラタント特性を有する材料によって形成されている。
【0011】
請求項3に記載の自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造では、インストルメントパネルの基材の表面に発泡体層(例えば、ウレタンフォーム層)が積層されており、当該発泡体層の表面に積層された表皮層が、ダイラタント特性を有する材料によって形成されている。これにより、ダイラタント特性を有する材料の使用量を少なくすることができる。また、表皮層(ダイラタント特性を有する材料)の厚さ寸法を小さく設定することができるので、硬化時における表皮層の剛性を低くすることができる。これにより、表皮層(インストルメントパネル)に衝突物が衝突した際に、当該衝突物に生じる最大加速度を小さくすることができるので、衝突物を良好に保護することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造は、請求項2に記載の自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造において、前記ソフト層は、前記基材に形成された貫通孔を貫通して前記基材の裏面側へ延出された基材補強部を有している。
【0013】
請求項4に記載の自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造では、ダイラタント特性を有する材料によって形成され、インストルメントパネルの基材の表面に積層されたソフト層が、基材に形成された貫通孔を貫通して基材の裏面側へ延出された基材補強部を有している。このため、ソフト層に衝撃荷重が加えられた際には、基材の表面側及び裏面側でソフト層が硬化することにより、基材を補強することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造は、請求項1又は請求項2に記載の自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造において、前記表皮層は、前記基材側へ延出された脚部を有している。
【0015】
請求項5に記載の自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造では、インストルメントパネルの基材の表面に発泡体層が積層されており、当該発泡体層の表面に積層された表皮層が、ダイラタント特性を有する材料によって形成されている。この表皮層は、基材側へ延出された脚部を有しているため、表皮層に衝撃荷重が作用した際には、硬化した表皮層の脚部の先端が基材に当たることにより、衝撃荷重を基材に分散することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造では、インストルメントパネルの商品性をソフト層によって向上させることができると共に、インストルメントパネルに取り付けられた内装部品が衝撃荷重によって破損する確率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造が適用されたインストルメントパネルの斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿った切断面を示す拡大縦断面図である。
【図3】従来のインストルメントパネル及びクラスタの部分的な構成を示す図2に対応する縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造が適用されたインストルメントパネル及びクラスタの部分的な構成を示す図2に対応する縦断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の第1変形例の構成を示す図2に対応する縦断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の第2変形例の構成を示す図2に対応する縦断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造が適用されたインストルメントパネル及びクラスタの部分的な構成を示す図2に対応する縦断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造が適用されたインストルメントパネル及びクラスタの部分的な構成を示す図2に対応する縦断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態の変形例の構成を示す図2に対応する縦断面図である。
【図10】(A)は、本発明の第5実施形態に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造が適用されたインストルメントパネル及びクラスタの部分的な構成を示す図2に対応する縦断面図であり、(B)は、(A)の矢印L方向から見た構成を示す部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
以下、図1〜図3を用いて、本発明の第1実施形態に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造10(以下、単に「耐衝撃構造10」という)について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印Wは車両幅方向を示している。
【0019】
図1に示されるように、本第1実施形態では、自動車の車室の前部に配置されたインストルメントパネル12には、内装部品(加飾部品)としてのクラスタ14、レジスタ16、及びオーナメント18が取り付けられている。クラスタ14は、図2に示されるように、インストルメントパネル12に形成された部品取付用開口部20に嵌め込まれている。レジスタ16も同様にインストルメントパネル12に形成された図示しない部品取付用開口に嵌め込まれている。オーナメント18は、インストルメントパネル12に形成された図示しない部品取付用凹部に嵌め込まれており、クリップによってインストルメントパネル12に係止されている。
【0020】
インストルメントパネル12は、樹脂材料(例えば、ポリプロピレン等)からなるシート材によって成形された基材22を備えている。この基材22は、部品取付用開口部20の周縁部がインストルメントパネル12の裏側へ向けて断面クランク状に屈曲して形成されている。
【0021】
基材22の表面には、ダイラタント特性を有する材料からなるソフト層24(以下、説明の都合上、「ダイラタントソフト層24」という)が積層形成されている。なお、図1においては、説明の都合上、ダイラタントソフト層24が配設された部位にハッチングが付されている。このダイラタントソフト層24は、例えば、英国のd3oTMlab社が製造する「d3oTM」によって形成されている。この「d3oTM」は、衝撃が加わっていないときや衝撃が弱いときは柔軟であるが、強い衝撃が加えられると瞬時に硬化すると共に、優れたエネルギ吸収性能を発揮する材料である。
【0022】
なお、本実施形態では、ダイラタントソフト層24は、基材22と一体成形されたものであるが、これに限らず、ダイラタントソフト層24が基材22とは別に成形されて、基材22に取り付けられる構成にしてもよい。
【0023】
このダイラタントソフト層24は、基材22よりも厚く形成されており、基材22の表面を覆っている。このダイラタントソフト層24における部品取付用開口部20の周縁部は、基材22における部品取付用開口部20の周縁部よりも、部品取付用開口部20を拡大する側へ退避している(図2の二点鎖線参照)。
【0024】
図1に示されるように、部品取付用開口部20に嵌め込まれたクラスタ14は、上方部位における上縁部及び左右の縁部がダイラタントソフト層24の表面に沿う方向でダイラタントソフト層24と隣り合って配置されている。また、レジスタ16は、周縁部の全部がダイラタントソフト層24の表面に沿う方向でダイラタントソフト層24と隣り合って配置されており、オーナメント18は、上縁部がダイラタントソフト層24の表面に沿う方向でダイラタントソフト層24と隣り合って配置されている。但し、クラスタ14、レジスタ16及びオーナメント18の各表面(意匠面)は、ダイラタントソフト層24の表面よりも僅かに基材22側へ退避して配置されている(図2参照)。
【0025】
次に、本第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0026】
上記構成の耐衝撃構造10では、インストルメントパネル12のダイラタントソフト層24が、インストルメントパネル12に取り付けられた内装部品(クラスタ14、レジスタ16及びオーナメント18)と隣り合って配置されている。このダイラタントソフト層24は、ダイラタント特性を有する材料によって形成されているため、図2に示されるように、ダイラタントソフト層24と上記内装部品(ここではクラスタ14)との境界付近に衝突物26が衝突した際には、衝突物26からの衝撃荷重によって、ダイラタントソフト層24を構成するダイラタント特性を有する材料が瞬時に硬化する。これにより、クラスタ14に作用する衝撃荷重をインストルメントパネル12の基材22に分散することができるので、クラスタ14が破損する確率を低減することができる(破損し難くすることができる)。
【0027】
つまり、図3に示されるような従来のインストルメントパネル30では、衝突物26が衝突した際に、ウレタンフォーム等からなる発泡体層32と、皮革等からなり発泡体層32の表面を覆う表皮層34とによって構成されたソフト層36が変形することにより、衝突物26からの衝撃荷重がクラスタ14に集中し、クラスタ14が破損する虞がある。このため、クラスタ14の割れを防止するために、クラスタ14の成形金型のゲート位置の見直し、クラスタ14の肉厚アップ、材料変更などの対策が必要になり、費用と時間がかかるという問題がある。これに対し、本実施形態では、上述の如くダイラタントソフト層24が硬化することにより、内装部品が破損する確率を低減することができるので、結果的に内装部品の製造コスト等を低減することができる。しかも、ダイラタントソフト層24を構成する「d3oTM」は、優れた衝撃吸収性能を発揮するため、衝突物26を保護することもできる。
【0028】
さらに、「d3oTM」は、通常時は柔軟であるため、ダイラタントソフト層24によってインストルメントパネル12の商品性を向上させることができる。この点、図3に示されるような従来のインストルメントパネル30では、ソフト層36が柔らかすぎる(例えば、硬度がショアAにて50度未満である)場合、法規上インストルメントパネル12が構造物と見なされなくなり、自動車に搭載できなくなるという不都合がある。つまり、ソフト層36が柔らかすぎると、衝突物26が衝突した際に基材22の角部が衝突物26と衝突することになるので、これを回避するためにソフト層36を硬くせざるを得ず、商品性が低下してしまう。
【0029】
これに対し、本実施形態に係るダイラタントソフト層24を構成する「d3oTM」は、衝撃が加わっていないときや衝撃が弱いとき(通常時)には、例えば、硬度がショアAにて50度未満の柔らかさを確保することができる反面、衝撃が加えられた際には、ショアAにて50度以上の硬度に硬化する。これにより、商品性の向上と内装部品の破損抑制とを両立することができる。
【0030】
さらに、本実施形態では、ダイラタントソフト層24の全部が、ダイラタント特性を有する材料によって形成されている。つまり、ダイラタントソフト層24において、内装部品(クラスタ14、レジスタ16及びオーナメント18)と隣り合う部位と、それ以外の部位とが同じ材料によって一体に形成されているため、両者の間に視覚的に認識可能な境界が形成されることを防止できる。これにより、インストルメントパネル12の外観品質を向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態では、ダイラタントソフト層24における部品取付用開口部20の周縁部が、基材22における部品取付用開口部20の周縁部よりも、部品取付用開口部20を拡大する側へ退避している(図2の二点鎖線参照)。このため、基材22の一部を切断して部品取付用開口部20を形成する際に、ダイラタントソフト層24が硬化して切断作業が困難になることを回避できる。
【0032】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、前記第1実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
【0033】
<第2の実施形態>
図4には、本発明の第2の実施形態に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造40が図2と対応した縦断面図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされており、前記第1実施形態に係るインストルメントパネル12と同様構成のインストルメントパネル42を備えている。但し、このインストルメントパネル42では、ソフト層44が基材22の表面に積層されたウレタンフォーム層46(発泡体層)を備えている。このウレタンフォーム層46の表面には、ダイラタント特性を有する材料(ここでは、「d3oTM」)からなる表皮層48(以下、「ダイラタント表皮層48」という)が積層形成されている。このダイラタント表皮層48は、部品取付用開口部20側の端部が、基材22側へ延出された荷重伝達部48Aとされており、当該荷重伝達部48Aの先端が基材22の表面に当接している。
【0034】
この実施形態では、インストルメントパネル42のダイラタント表皮層48のみがダイラタント特性を有する材料によって形成されているため、ダイラタント特性を有する材料の使用量を少なくすることができる。また、ダイラタント表皮層48の厚さ寸法が小さく設定されているので、硬化時におけるダイラタント表皮層48の剛性を低くすることができる。これにより、ダイラタント表皮層48(インストルメントパネル42)に衝突物が衝突した際に、ダイラタント表皮層48が撓むことにより、当該衝突物に生じる最大加速度を小さくすることができる(例えば、最大加速度を80G以下にすることができる)。したがって、衝突物を良好に保護することができる。
【0035】
しかも、この実施形態では、ダイラタント表皮層48が、基材22に当接した荷重伝達部48Aを備えている。このため、当該荷重伝達部48Aが衝突物からの衝撃荷重によって硬化することにより、クラスタ14側に衝撃荷重が集中することを防止できる。したがって、この実施形態においても、前記第1実施形態と同様にクラスタ14が破損する確率を低減することができる。
【0036】
なお、上記第2実施形態において、図5に示されるように、ダイラタント表皮層48の裏面に複数のノッチ49を形成する構成にしてもよい。これらのノッチ49は、例えば車両幅方向に延在している。この構成では、硬化時におけるダイラタント表皮層48の剛性を更に低下させることができるため、ダイラタント表皮層48に衝突物が衝突した際に、当該衝突物に生じる最大加速度を良好に低減することができる。
【0037】
また、上記第2実施形態において、図6に示されるように、ダイラタント表皮層48の裏面から基材22側へ複数の脚部48Bを延出させ、これらの脚部48Bの先端を基材22に当接させる構成にしてもよい。この構成では、ダイラタント表皮層48に衝突物が衝突した際に、衝突物からの衝撃荷重を複数の脚部48Bを介して基材22に分散することができる。これにより、前記第1の実施形態と基本的に同様の作用効果を得ることができる。しかも、前記第1実施形態と比較して、ダイラタント特性を有する材料の使用量を低減することができるので、低コスト化を図ることができる。
【0038】
<第3の実施形態>
図7には、本発明の第3の実施形態に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造50が図2と対応した縦断面図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされており、前記第1実施形態に係るインストルメントパネル12と同様構成のインストルメントパネル52を備えている。但し、このインストルメントパネル52では、ダイラタントソフト層24の表面が、皮革、合成皮革、塩化ビニールなどからなる異材質表皮層54によって覆われている。
【0039】
この実施形態では、インストルメントパネル52の表面(意匠面)が異材質表皮層54によって構成されているため、異材質表皮層54の材質を変更することにより、インストルメントパネル52の外観品質、触感、硬度などを自由に変更することができる。
【0040】
<第4の実施形態>
図8には、本発明の第4の実施形態に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造60が図2と対応した縦断面図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされており、前記第1実施形態に係るインストルメントパネル12と同様構成のインストルメントパネル62を備えている。但し、このインストルメントパネル62では、ダイラタントソフト層24がクラスタ14等の内装部品と隣り合う部位にだけ設けられており、それ以外の部位には、従来と同様のウレタンフォーム層32及び表皮層34からなるソフト層36が配設されている。
【0041】
この実施形態では、ダイラタントソフト層24が内装部品と隣り合う部位にだけ設けられているため、ダイラタント特性を有する材料の使用量を大幅に低減することができる。これにより、低コスト化を図ることができる。しかも、ダイラタントソフト層24及びソフト層36の柔らかさによって、インストルメントパネル62の商品性を向上させることができると共に、インストルメントパネル62に衝突物が衝突した際には、ダイラタントソフト層24が瞬時に硬化することによって、内装部品が破損する確率を低減することができる。
【0042】
なお、上記第4実施形態において、図9に示されるように、ダイラタントソフト層24を基材22側が開口した開断面形状に形成し、当該開断面内にウレタンフォーム層32を設ける構成にしてもよい。これにより、ダイラタント特性を有する材料の使用量を更に低減することができるため、更なる低コスト化を図ることができる。しかも、ダイラタントソフト層24に設けられた脚部24A、24Bを介して、衝突物からの衝撃荷重を基材22に良好に分散することができる。
【0043】
<第5の実施形態>
図10には、本発明の第5の実施形態に係る自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造70が図2と対応した縦断面図にて示されている。この実施形態は、前記第1実施形態と基本的に同様の構成とされており、前記第1実施形態に係るインストルメントパネル12と同様構成のインストルメントパネル72を備えている。但し、このインストルメントパネル72では、ダイラタントソフト層24は、基材22に形成された複数の円形の貫通孔74を貫通して基材22の裏面側へ延出された基材補強部24Cを一体に有している。この基材補強部24Cは、図2に示されるように、基材22の裏面側において、隣り合う貫通孔74を結ぶように格子状に形成されている。
【0044】
この実施形態では、インストルメントパネル72に衝撃荷重が加えられた際には、基材22の表面側及び裏面側でダイラタントソフト層24が硬化する。これにより、硬化したダイラタントソフト層24によって基材22を補強することができる。また、基材22とダイラタントソフト層24との接着性を向上させることもできる。
【0045】
なお、上記第5実施形態においては、貫通孔74が円形に形成され、基材補強部24Cが格子状に形成された構成にしたが、請求項4に係る発明はこれに限らず、貫通孔及び基材補強部の形状は適宜変更することができる。例えば、基材補強部が基材の板厚方向から見て円形(丸形)に形成された構成にしてもよい。
【0046】
また、前記第1〜第5実施形態では、内装部品としてのクラスタ14、レジスタ16及びオーナメント18がインストルメントパネル12に取り付けられた場合について説明したが、請求項1〜請求項5に係る発明はこれに限らず、他の種類の内装部品がインストルメントパネル12に取り付けられる場合にも適用することができる。また、内装部品に対するダイラタント特性を有する材料の配置は、上記各実施形態に限定されるものではない。
【0047】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
10 自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造
12 インストルメントパネル
14 クラスタ(内装部品)
16 レジスタ(内装部品)
18 オーナメント(内装部品)
22 基材
24 ダイラタントソフト層(ソフト層)
24C 基材補強部
40 自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造
42 インストルメントパネル
44 ソフト層
46 ウレタンフォーム層(発泡体層)
48 表皮層
48B 脚部
50 自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造
52 インストルメントパネル
60 自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造
62 インストルメントパネル
70 自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造
72 インストルメントパネル
74 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面がソフト層によって覆われたインストルメントパネルと、
前記インストルメントパネルに取り付けられると共に、前記ソフト層の表面に沿う方向で前記ソフト層と隣り合って配置された内装部品と、
を備え、
前記ソフト層は、少なくとも前記内装部品と隣り合う部位の一部がダイラタント特性を有する材料によって形成されている自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造。
【請求項2】
前記ソフト層は、ダイラタント特性を有する材料によって形成されている請求項1に記載の自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造。
【請求項3】
前記ソフト層は、前記基材の表面に積層された発泡体層と、当該発泡体層の表面に積層された表皮層とを有し、当該表皮層がダイラタント特性を有する材料によって形成されている請求項1に記載の自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造。
【請求項4】
前記ソフト層は、前記基材に形成された貫通孔を貫通して前記基材の裏面側へ延出された基材補強部を有する請求項2に記載の自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造。
【請求項5】
前記表皮層は、前記基材側へ延出された脚部を有する請求項3に記載の自動車用インストルメントパネルの耐衝撃構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−153234(P2012−153234A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13330(P2011−13330)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】