説明

自動車用ウェザーストリップ

【課題】ドア閉じ性を悪化させることなく遮音性能に特に優れる自動車用ウェザーストリップを提供する。
【解決手段】ドアの開口縁に沿って形成されたフランジFに取付けられる断面略U字形状の取付基部31と、該取付基部31の車外側側面部31aに一体成形されドア閉時にドアに弾接する中空シール部32を備える自動車用ウェザーストリップ30であって、前記中空シール部32の中空内壁周面に、中空状でその内周面に複数の波形状の凹凸部37が形成された筒壁部38を設け、前記中空シール部32を比重0.4〜0.8の通常のスポンジ材とし、前記筒壁部38を比重0.3以下の低比重のスポンジ材とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開口縁に沿って形成されたフランジに取付けられ、ドアに弾接して車内外をシールする中空シール部が設けられた自動車用ウェザーストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、自動車のサイドドア1,2におけるドア開口縁に沿って形成されたフランジFには、図5に示すような自動車用ウェザーストリップ10が取付けられ、ドア1,2に弾接して車内外をシールしている。なお、図5は、図3のA−A線拡大断面図であり、自動車用ウェザーストリップ10の要部を示している。
自動車用ウェザーストリップ10は、フランジFに取付けられる断面略U字形状の取付基部11と、その取付基部11の車外側側面部11aに一体成形されドア1,2閉時にドア1,2に弾接する中空シール部12を備えている。
取付基部11には車外側側面部11a,車内側側面部11bの内方から連結部11c側に傾斜してフランジFを保持する複数の保持リップ13が形成されているとともに内部には補強のための芯材14が埋設されている。また、取付基部11の車内側側面部11bと連結部11cの接続部から車内側に向けて、内装材(図示しない)に弾接するリップ部15が設けられている。
【0003】
図3では車両としてセダン車を示したが、図4に示すような、車体に沿って動くスライドドア3を備えるワンボックスワゴン車においても、図6に示すような自動車用ウェザーストリップ20が取付けられている。なお、図6は、図4のB−B線拡大断面図であり、自動車用ウェザーストリップ20の要部を示している。
自動車用ウェザーストリップ20も、自動車用ウェザーストリップ10と同様に、ドア3の開口縁に沿って形成されたフランジFに取付けられる、車外側側面部11a,車内側側面部11b,連結部11cからなる断面略U字形状の取付基部21と、取付基部21の車外側側面部21aに一体成形されドア3閉時にドア3に弾接する中空シール部22を備えている。また、取付基部21には、複数の保持リップ23,芯材24,リップ部25が設けられている。
【0004】
このような自動車用ウェザーストリップ10,20においては、中空シール部12,22をメインシールとしてシールラップ量を多くとるため、中空形状が大きくなり、それにともない特にコーナー部では、中空シール部12,22が均一に変形せずにコーナーに対する追従性(コーナリング)が悪くなり皺が発生したりして、外観上見栄えが悪くなったりシール機能が低下する場合があった。
特に、セダン車の場合は、中空シール部12とドア1,2に取付けられたドアウェザーストリップ(図示しない)によって車内外がシールされるのに対して、ワンボックスワゴン車の場合は、中空シール部22だけで車内外がシールされるので、中空シール部22の大きさは、セダン車の中空シール部12よりも大きく、コーナリングに与える影響が大きく、しかも遮音性もよくない。
【0005】
そこで、この問題を改善するため、中空シール部12,22の肉厚を厚くしたり、あるいは、図7に示すように、2重の中空シール部22a,22bを形成することが知られている。また、中空シール部12,22の内側にリング状のスポンジ材を設けたものも知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平9−2072号公報
【特許文献2】特開2004−58819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、中空シール部12,22の肉厚を厚くしたり、あるいは、2重の中空シール部22a,22bを形成したものは、ドア1,2,3の閉時における中空シール部12,22の圧縮荷重が大きくなりドア閉じ性が悪化するといった問題がある。
また、特許文献1,2で示したように、中空シール部12,22の内側にリング状のスポンジ材を設けたものは、ドア閉じ性を悪化させることなくある程度の遮音効果も得られるものの、遮音性については十分でない場合があり改良の余地がある。
特に、中空シール部22だけで車内外がシールされることが多いワンボックスワゴン車の場合は、優れた遮音性能が要求される。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、ドア閉じ性を悪化させることなく遮音性能に特に優れる自動車用ウェザーストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の自動車用ウェザーストリップは、ドア(1,2,3)開口縁又はドア周縁に取付けられる取付基部(31,41)と、該取付基部(31,41)の車外側側面部(31a,41a)に一体成形されドア閉時にドア(1,2,3)周縁又はドア(1,2,3)開口縁に弾接する中空シール部(32,42)を備える自動車用ウェザーストリップ(30,40)であって、
前記中空シール部(32,42)の中空内壁周面に、中空状でその内周面に複数の凹凸部(37,47)が形成された筒壁部(38,48)を設け、前記中空シール部(32,42)を比重0.4〜0.8の通常のスポンジ材とし、前記筒壁部(38,48)を比重0.3以下の低比重のスポンジ材としたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の自動車用ウェザーストリップは、ドア(1,2,3)開口縁又はドア周縁に取付けられる取付基部(31,41)と、該取付基部(31,41)の車外側側面部(31a,41a)に一体成形されドア閉時にドア(1,2,3)周縁又はドア(1,2,3)開口縁に弾接する中空シール部(32,42)を備える自動車用ウェザーストリップ(30,40)であって、
前記中空シール部(32,42)の中空内壁周面に、中空状でその内周面に複数の凹凸部(37,47)が形成された筒壁部(38,48)を設け、前記中空シール部(32,42)をソリッド材とし、前記筒壁部(38,48)を比重0.3以下の低比重のスポンジ材としたことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の請求項3に記載の自動車用ウェザーストリップは、前記中空シール部(42)は、切れ目の無い断面略楕円状でその楕円の長径が前記取付基部(41)の車外側側面部(41a)の延びる方向に略平行になるように、前記取付基部(41)の車外側側面部(41a)から突出する首部(49)に接続されてなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載の自動車用ウェザーストリップは、前記凹凸部(37,47)は波形状であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に記載の自動車用ウェザーストリップは、前記ドアをスライドドア(3)としたことを特徴とする。
【0013】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための最良の形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の自動車用ウェザーストリップによれば、中空シール部内に比重0.3以下の低比重のスポンジ材からなる筒壁部が設けられているので、筒壁部が設けられていない場合と比較してドアの閉時に弾接による中空シール部の圧縮荷重は変わらない。
そして、中空シール部には比重0.4〜0.8の通常のスポンジ材が使用されているので、コーナー部においてもドア閉じ性が特に悪化するものではない。また通常のスポンジ材を使用することで外観性、磨耗性、ヘタリ性など、現有の製品と同等の性能を発揮させている。
しかも、中空シール部内側に筒壁部が設けられることによって、その分、厚みが生じるので、遮音効果も向上する。その上、特に筒壁部の内周面には複数の凹凸部が形成されていて表面積が増加しているので、一層良好な遮音性能が得られる。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載の自動車用ウェザーストリップによれば、中空シール部をソリッド材とし、中空シール部内に設けた筒壁部を比重0.3以下の低比重のスポンジ材としたので、筒壁部が設けられていない場合と比較してドアの閉時に弾接による中空シール部の圧縮荷重は変わらない。
しかも、中空シール部内側に筒壁部が設けられることによって、その分、厚みが生じるので、遮音効果も向上する。その上、特に筒壁部の内周面には複数の凹凸部が形成されていて表面積が増加しているので、一層良好な遮音性能が得られる。
【0016】
さらに、本発明の請求項3に記載の自動車用ウェザーストリップによれば、中空シール部は、切れ目の無い断面略楕円状でその楕円の長径が取付基部の車外側側面部の延びる方向に略平行になるように、取付基部の車外側側面部から突出する首部に接続されてなるので、請求項1又は2に係る発明の作用効果と同様に、コーナー部においてもドア閉じ性が特に悪化するものではなく、良好な遮音性能が得られる。
それに加え、特に中空シール部は、切れ目の無い断面略楕円状であり、その内周面に筒壁部が設けられているので、中空シール部のどの部位においても中空シール部と筒壁部による二重壁が形成されるので、遮音性は高い。
【0017】
また、中空シール部は断面略楕円状であるので良好なシール状態にすることが容易である。例えば、請求項5に係る発明のように、ワンボックスワゴン車などスライドドアを使用する車両では、スライドドアは構造上、断面に対しさまざまな進入軌跡でシールしなければならないが、全ての部位(セクション)で良好なシール状態を作ろうとすると楕円形状が良い。また、中空シール部内に比重0.3以下の低比重のスポンジ材を入れることは生産上非常に困難であるが、生産性を考慮すると、中空シール部を断面略楕円状にすると入れ易い。
【0018】
また、中空シール部は、取付基部に首部、すなわち一本の連結部を介して一体成形されているので、取付基部に芯材が埋設されている場合、その芯材のコア間の伸び縮みの影響を受け難くコーナリング性能に優れる。特に、コーナー部においては、取付基部に対して中空シール部の付け根部が2つあるとそれら付け根部の周長差によって中空シール部に挫屈が生じる場合があるが、中空シール部が一本の首部で接続される場合にはこのような周長差は発生しないので中空シール部に挫屈は生じない。
また、取付基部に対して中空シール部の付け根部が2つある自動車用ウェザーストリップの場合は、弾接時の荷重がリニアに上がるが、中空シール部が一本の首部で接続される場合は中空シール部が首部を起点に逆そりにたわみ荷重曲線がフラットで低荷重になる。
【0019】
また、本発明の請求項4に記載の自動車用ウェザーストリップによれば、凹凸部を波形状にしたので、筒壁部の内周面の表面積を効率的に大きくして遮音効果を高めることができる。
【0020】
なお、本発明に記載の自動車のドアは、サイドドアでもよく、請求項5に係る発明のように、スライドドアでもよい。
特にワンボックスワゴン車などスライドドアを使用する車両では中空シール部だけでシールする構造が多く遮音性がよくないため、スライドドアに適用した場合には効果が大きい。
また、中空シール部と筒壁部の2重構造になっているため、コーナー部において、中空シール部が近回りする等による形状のくずれや倒れが起きにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第一実施形態)
図1を参照して、本発明の第一実施形態に係る自動車用ウェザーストリップ30について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る自動車用ウェザーストリップ30をフランジFに取付けた状態を示す、図4のB−B線拡大断面図である。
【0022】
この自動車用ウェザーストリップ30は、車体に沿って動くスライドドア3を備えるワンボックスワゴン車において、スライドドア3の開口縁に沿って形成されたフランジFに取付けられたものであり、取付基部31と中空シール部32を備え、中空シール部32内には筒壁部38が設けられている。自動車用ウェザーストリップ30は、押出成形されたものであり、ドア開口縁の直線部だけでなくコーナー部に沿っても設けられていて両端部は、型成形接続されている。なお、接続部以外にも部分的に型成形部を設けることも可能である。
【0023】
取付基部31は、車外側側面部31aと、車内側側面部31bと、両側面部31a,31bを連結する連結部31cからなる断面略U字形状であり、フランジFに取付けられている。
取付基部31には車外側側面部31a及び車内側側面部31bの内方から連結部31c側に傾斜してフランジFを保持する複数の保持リップ33が形成されているとともに内部には補強のための芯材34が埋設されている。また、取付基部31の車内側側面部31bと連結部31cの接続部から車内側に向けて、内装材(図示しない)に弾接するリップ部35が設けられている。
【0024】
また、中空シール部32は、取付基部11の車外側側面部11aに一体成形されていて、スライドドア3の閉時にスライドドア3に弾接して車内外をシールする。
なお、スライドドア3にはドアウェザーストリップは設けられてなく、中空シール部32のみで車内外はシールされている。
【0025】
そして、筒壁部38は、中空シール部32の中空内壁周面に設けられ、中空状(断面環状)である。
筒壁部38の内周面には複数の波形状の凹凸部37が内周面の全周にわたって形成されている。ここでは、凹凸部37の波形状は均一ではないが、隣あう波形同士が均一の形状をするものとしてもよい。筒壁部38の大きさは、中空シール部32がスライドドア3に弾接した際に、相対向する凹凸部37が当接し、いわゆる底付き状態とはならない程度の大きさとしている。
【0026】
ここで、中空シール部32としては、比重0.4〜0.8の通常のスポンジ材を使用して外観性、磨耗性、ヘタリ性など、現有の製品と同等の性能を発揮させている。また、筒壁部38としては、比重0.3以下の低比重で高発泡のスポンジ材(ハイソフトスポンジ)を使用している。この高発泡のスポンジ材の比重が0.3を超えるとドア閉じ性が悪化するので好ましくない。また、筒壁部38を構成する高発泡のスポンジ材としては、EPDMエチレンプロピレンゴムが扱い易く作業性がよいため好ましいが、ゴム材、熱可塑性樹脂等、その材質は特に限定されるものではない。なお、取付基部31としては、ソリッド材を使用しているが、特に限定されるものではなく、発泡体であってもよい。
【0027】
以上のように構成された自動車用ウェザーストリップ30によれば、中空シール部32内に比重0.3以下の低比重で高発泡のスポンジ材からなる筒壁部38が設けられているので、筒壁部38が設けられていない場合と比較してスライドドア3の閉時に弾接による中空シール部32の圧縮荷重は変わらない。
そして、中空シール部32にはスポンジ材が使用されているので、コーナー部においてもドア閉じ性が特に悪化するものではない。
しかも、中空シール部32内側に筒壁部38が設けられることによって、その分、厚みが生じるので、遮音効果も向上する。その上、特に筒壁部38の内周面には複数の波形状の凹凸部37が内周面の全周にわたって形成されていて表面積が増加しているので、一層良好な遮音性能が得られる。
【0028】
(第二実施形態)
次に図2を参照して、本発明の第二実施形態に係る自動車用ウェザーストリップ40について説明する。図2は、本発明の第二実施形態に係る自動車用ウェザーストリップ40をフランジFに取付けた状態を示す、図4のB−B線拡大断面図である。
【0029】
この自動車用ウェザーストリップ40も、第一実施形態と同様に、車体に沿って動くスライドドア3を備えるワンボックスワゴン車において、スライドドア3の開口縁に沿って形成されたフランジFに取付けられたものであり、取付基部41と中空シール部42を備え、中空シール部42内には筒壁部48が設けられている。自動車用ウェザーストリップ40は、押出成形されたものであり、ドア開口縁の直線部だけでなくコーナー部に沿っても設けられていて両端部は型成形接続されている。なお、接続部以外にも部分的に型成形部を設けることも可能である。
【0030】
取付基部41は、車外側側面部41aと、車内側側面部41bと、両側面部41a,41bを連結する連結部41cからなる断面略U字形状であり、フランジFに取付けられ、取付基部41にはフランジFを保持する複数の保持リップ43が形成されているとともに内部には補強のための芯材44が埋設され、また内装材(図示しない)に弾接するリップ部45も設けられている。
【0031】
また、中空シール部42は、取付基部41の車外側側面部41aに首部49を介して一体成形され、スライドドア3の閉時にスライドドア3に弾接して車内外をシールする。
特に、本発明の第二実施形態の自動車用ウェザーストリップ40では、中空シール部42は、切れ目の無い断面略楕円状であり、その楕円の長径が取付基部41の車外側側面部41aの延びる方向及びフランジFの延びる方向に略平行になるように、取付基部41の車外側側面部41aから突出する首部49に接続されている。
なお、スライドドア3にはドアウェザーストリップは設けられてなく、中空シール部42のみで車内外はシールされている。
【0032】
そして、筒壁部48は、第一実施形態における筒壁部38と同様に、中空シール部42の中空内壁周面に設けられ、中空状(断面環状)であり、筒壁部48の内周面には複数の波形状の凹凸部47が内周面の全周にわたって形成されている。ここでは、凹凸部47の波形状は均一ではないが、隣あう波形同士が均一の形状をするものとしてもよい。筒壁部48の大きさは、中空シール部42がスライドドア3に弾接した際に、相対向する凹凸部47が当接し、いわゆる底付き状態とはならない程度の大きさとしている。
【0033】
ここで、中空シール部42としては、比重0.4〜0.8の通常のスポンジ材を使用し、筒壁部48としては、比重0.3以下の低比重で高発泡のスポンジ材(ハイソフトスポンジ)を使用している。この高発泡のスポンジ材の比重が0.3を超えるとドア閉じ性が悪化するので好ましくない。また、筒壁部48を構成する高発泡のスポンジ材としては、EPDMエチレンプロピレンゴムが扱い易く作業性がよいため好ましいが、ゴム材、熱可塑性樹脂等、その材質は特に限定されるものではない。なお、取付基部41としては、ソリッド材を使用しているが、特に限定されるものではなく、発泡体であってもよい。
【0034】
以上のように構成された自動車用ウェザーストリップ40によれば、第一実施形態の自動車用ウェザーストリップ30と同様に、コーナー部においてもドア閉じ性が特に悪化するものではなく、しかも良好な遮音性能が得られる。
それに加え、特に中空シール部42は、切れ目の無い断面略楕円状であり、その内周面全体にわたって筒壁部48が設けられているので、中空シール部42のどの部位においても中空シール部42と筒壁部48による二重壁が形成される。つまり、第一実施形態の自動車用ウェザーストリップ30では、取付基部31に対する中空シール部32の2つの付け根部間には筒壁部38による一つの壁が形成されるものの、第二実施形態に自動車用ウェザーストリップ34では、中空シール部42のいずれの部位でもその中空シール部42と筒壁部48による二重壁が形成されるので、第一実施形態の自動車用ウェザーストリップ30と比較して遮音性は高い。
【0035】
また、中空シール部42は断面略楕円状であるので良好なシール状態にすることが容易である。すなわち、スライドドア3は構造上、断面に対しさまざまな進入軌跡でシールしなければならないが、全ての部位(セクション)で良好なシール状態を作ろうとすると楕円形状が良い。また、中空シール部42内にハイソフトスポンジを入れることは生産上非常に困難であるが、生産性を考慮すると、中空シール部42を断面略楕円状にすると入れ易い。
【0036】
また、中空シール部42は、取付基部41に首部49、すなわち一本の連結部を介して一体成形されているので、取付基部41に埋設された芯材44のコア間の伸び縮みの影響を受け難くコーナリング性能に優れる。特に、第一実施形態の自動車用ウェザーストリップ30では、コーナー部においては、取付基部31に対する中空シール部32の2つの付け根部の周長差によって中空シール部32に挫屈が生じる場合があるが、第ニ実施形態の自動車用ウェザーストリップ40のように中空シール部42が一本の連結部で接続される場合にはこのような周長差は発生しないので中空シール部42に挫屈は生じない。
また、第一実施形態の自動車用ウェザーストリップ30の場合は、弾接時の荷重がリニアに上がるが、第ニ実施形態の自動車用ウェザーストリップ40のように中空シール部42が一本の連結部で接続される場合は中空シール部42が連結部を起点に逆そりにたわみ荷重曲線がフラットで低荷重になる。そして、フラットな荷重曲線は建付けバラツキがどの位置にあっても同性能となる。
【0037】
なお、本発明の第一,第二実施形態に係る自動車用ウェザーストリップ30,40では、スライドドア3を備えるワンボックスワゴン車に適用した例を示したが、図3で示したようなセダン車等の車両においても適用可能である。また、自動車用ウェザーストリップ30,40をドア1,2,3の開口縁に設け、ドア1,2,3の閉時にドア1,2,3の周縁に弾接させて車内外をシールする構造としたが、逆に、自動車用ウェザーストリップ30,40をドア1,2,3の周縁に設け、ドア1,2,3の閉時にドア1,2,3の開口縁に弾接させて車内外をシールする構造としてもよい。
【0038】
また、本発明の第一,第二実施形態に係る自動車用ウェザーストリップ30,40では、中空シール部32,42を比重0.4〜0.8の通常のスポンジ材とし、筒壁部38,48を比重0.3以下の低比重で高発泡のスポンジ材(ハイソフトスポンジ)としたが、中空シール部32,42をソリッド材とし、筒壁部38,48を比重0.3以下の低比重で高発泡のスポンジ材としても、特にドア閉じ性を悪化させることなく遮音効果を高めることができる。
【0039】
また、本発明の第一,第二実施形態に係る自動車用ウェザーストリップ30,40では、筒壁部38,48の全周にわたって波形状の凹凸部37,47を設けたが、部分的に設けるだけでもその分、表面積が増加するので遮音性は向上する。また、凹凸部37,47の形状は、波形状に限定されるものではなく筒壁部38,48の内周面の表面積を増加させる形状であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第一実施形態に係る自動車用ウェザーストリップを示す、図4のB−B線拡大断面図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係る自動車用ウェザーストリップを示す、図4のB−B線拡大断面図である。
【図3】セダン車の外観側面図である。
【図4】ワンボックスワゴン車の外観側面図である。
【図5】従来例に係る自動車用ウェザーストリップを示す、図3のA−A線拡大断面図である。
【図6】従来例に係る自動車用ウェザーストリップを示す、図4のB−B線拡大断面図である。
【図7】従来例に係る別の自動車用ウェザーストリップを示す、図4のB−B線拡大断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 サイドドア
2 サイドドア
3 スライドドア
10,20 自動車用ウェザーストリップ
11,21 取付基部
11a,21a 車外側側面部
11b,21b 車内側側面部
11c,21c 連結部
12,22,22a,22b 中空シール部
13,23 保持リップ
14,24 芯材
15,25 リップ部
30,40 自動車用ウェザーストリップ
31,41 取付基部
31a,41a 車外側側面部
31b,41b 車内側側面部
31c,41c 連結部
32,42 中空シール部
33,43 保持リップ
34,44 芯材
35,45 リップ部
37,47 凹凸部
38,48 筒壁部
49 首部
F フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口縁又はドア周縁に取付けられる取付基部と、該取付基部の車外側側面部に一体成形されドア閉時にドア周縁又はドア開口縁に弾接する中空シール部を備える自動車用ウェザーストリップであって、
前記中空シール部の中空内壁周面に、中空状でその内周面に複数の凹凸部が形成された筒壁部を設け、前記中空シール部を比重0.4〜0.8の通常のスポンジ材とし、前記筒壁部を比重0.3以下の低比重のスポンジ材としたことを特徴とする自動車用ウェザーストリップ。
【請求項2】
ドア開口縁又はドア周縁に取付けられる取付基部と、該取付基部の車外側側面部に一体成形されドア閉時にドア周縁又はドア開口縁に弾接する中空シール部を備える自動車用ウェザーストリップであって、
前記中空シール部の中空内壁周面に、中空状でその内周面に複数の凹凸部が形成された筒壁部を設け、前記中空シール部をソリッド材とし、前記筒壁部を比重0.3以下の低比重のスポンジ材としたことを特徴とする自動車用ウェザーストリップ。
【請求項3】
前記中空シール部は、切れ目の無い断面略楕円状でその楕円の長径が前記取付基部の車外側側面部の延びる方向に略平行になるように、前記取付基部の車外側側面部から突出する首部に接続されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用ウェザーストリップ。
【請求項4】
前記凹凸部は波形状であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の自動車用ウェザーストリップ。
【請求項5】
前記ドアをスライドドアとしたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の自動車用ウェザーストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−58637(P2010−58637A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225905(P2008−225905)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】