説明

自動車用内燃機関

本発明は、少なくとも噴射される燃料量を表す信号によってエンジンの出力トルクを制御する記憶機能を持つ電子制御部材(20、23)を有する自動車用内燃機関に関する。異なる回転数におけるエンジントルクの基準値は前記制御部材に記憶される。トルク送信機(24)は現在の出力トルクを検出するとともに前記現在の出力トルクを表す信号を前記制御部材に送信する。前記制御部材は前記現在トルクを前記記憶された基準値と比較しエンジン性能が正常であるかどうかを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用内燃機関において、運転者により要求されるとともに少なくともエンジンの燃焼室内に噴射される燃料量を表す信号によってエンジンの出力トルクを制御する記憶機能を持つ電子制御部材を有する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のトルクおよび回転数の制御と、関連ある自動変速ギヤボックスにおけるギヤシフトの制御とのために、一般に、運転者(アクセル位置)により要求される燃料量、エンジン速度、ギヤボックスの入力軸における回転数および走行速度を含む異なるエンジンおよび自動車データを表すさまざまな信号の送信を受けるとともに、多数の調整要素、たとえばサーボモータを用いてエンジン速度とギヤボックスにおけるギヤシフトとを正確に調整するマイクロプロセッサの形態をとる制御部材を用いることが一般に知られている。
【0003】
【特許文献1】スウェーデン国特許発明第0201878号明細書
【発明の開示】
【0004】
本発明の目的は、冒頭部分に記載の種類の内燃機関において、エンジンのトルク性能を常に診断して、エンジンがアクセルレバーに対応するトルクを供給できなくなる原因となる欠陥を有するかどうか、たとえば、エンジンは、吸気マニホルドにおける漏れのために過度に低いトルクを供給しているか、または給気圧力調整不良の結果として過度に高い給気圧力を、以って過度に高いトルクを生じしめているかを発見することを可能にする内燃機関を創出することにある。
【0005】
これは、本発明にしたがって、異なる回転速度におけるエンジンの基準値を制御部材の記憶装置に記憶させることと、エンジンのクランク軸から現在の出力トルクを検出するとともに、前記制御部材に前記現在の出力トルクを表す信号を送信するトルク送信機を配設することと、前記制御部材を、前記トルク送信機により検出される現在のトルクを常に記録するとともに問題の回転速度における前記記憶された基準値と比較し、かつ前記基準値と前記検出された現在値との間における不一致に関する情報を記憶するように構成することとによって達成される。
【0006】
好ましくは、本発明にしたがった前記エンジン診断機能は、エンジン制御機能とは別に、さらに変速制御機能を有するとともに、特許文献1に記載されているように、内燃機関と関連ある自動変速ギヤボックスとを制御するために用いられる制御装置にプログラムされる。現在のエンジントルクは、この場合は、ギヤボックスの入力軸と調和せしめられるトルク送信機から受信される。トルク送信機により検出される入力軸トルクを用いて現在の路面抵抗を計算するとともに、前記計算された路面抵抗に基づいてギヤを選択することとは別に、トルク送信機により検出されるトルクは、この場合は、エンジン診断にも用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
付随するギヤボックスを有する内燃機関の実施例の略図を示す添付図面に示される例証的な実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0008】
図において、1は、クラッチケース4内に密閉される、一般に3により示される単板乾式クラッチに結合されるクランク軸2を有する6気筒内燃機関、たとえばディーゼル機関を示す。単板乾式クラッチの代わりに、二枚板クラッチが用いられうる。クランク軸2は、クラッチ3のクラッチハウジング5に回転不能に接続される一方で、円板6は、一般に9により示されるギヤボックスのケーシング8内において回転可能に取り付けられる入力軸7に回転不能に接続される。ケーシング8内において、主軸10と中間軸11とが回転可能に取り付けられる。
【0009】
ギヤボックス9は、特許文献1に図示および説明される種類のものとされ得、内燃機関1とあわせて、ギヤボックス9の構造および作用のより詳細な説明については、前記文献を参照されたい。
【0010】
エンジン1は、アクセル21と調和せしめられる送信機22から受信されうる、運転者により要求される燃料量を表す信号によってエンジントルクを調整する記憶機能を有する電子制御装置20により制御される。このエンジン制御装置は、ギヤボックスにおけるギヤシフトを制御する電子変速制御装置23と通信する。変速制御装置23は、燃料噴射量に関する一定の情報を受信するとともに、該噴射量による現在のエンジントルクを記録する。
【0011】
変速制御装置23は、さらにまた、ギヤボックスの入力軸7における現在のトルクに関する一定の情報を、本質的に周知であり、かつ従来的に研究所において用いられてきた種類のものとされうる、前記入力軸と調和せしめられるトルク送信機24を介して受信するとともに、前記トルク送信機24からの前記信号を用いて、現在の路面抵抗を計算する。これにより、変速制御装置23は、クラッチ3の前における1個以上のエンジン駆動/エンジン取付け動力点26により駆動される1個以上の補助装置25により影響される、燃料噴射量により計算されるエンジントルクに呼応するのではなしに、実際の路面抵抗に基づいてギヤ選択とギヤシフト時期とを判断する。たとえば油圧ポンプ、冷却ファン、発電機、圧縮空気式コンプレッサまたはACコンプレッサでありうる前記補助装置25は、エンジン制御装置20に接続される手動かつ/または自動制御装置27によって、エンジンの駆動のために接続または接続解除されうる。
【0012】
ギヤボックスの入力軸7においてトルク送信機24により検出されるトルクは、本発明にしたがって用いられて、エンジンのトルク性能が診断されて、エンジンが故障してアクセルレバーに対応するトルクを供給していないかどうかが発見される。たとえば、エンジンシリンダへの給気に影響を及ぼす漏れによる「低調化」または過度に高い給気圧力とシリンダへの過剰な給気量とを生じしめる給気圧力調整不良による「激烈化」が感知される。
【0013】
この目的のために、異なる回転数におけるエンジントルクの基準値が、本発明にしたがって、エンジン制御装置20において記憶される。これらの基準値は、手動的にプログラム入力される値と、出荷に先立つ、試験運転装置におけるエンジンの試験運転時のエンジン機能測定とによって得られうる。多数の異なる回転数において最大エンジントルクを測定するとともに、これらの測定値を外挿することによって、エンジンの回転速度範囲内におけるエンジンの最大トルク曲線を判断することができ、その後、この最大トルク曲線が制御装置に記憶せしめられる。
【0014】
変速制御装置23は、エンジン制御装置20を介して(燃料噴射量によって)現在のエンジントルクを、トルク送信機24を介して現在のエンジン速度におけるギヤボックスの入力軸7での現在のトルクを記録する。この情報を補助装置25の状態(接続状態または接続解除状態)に関する情報とあわせて用いて、変速制御装置23は、異なるエンジン速度におけるエンジントルクを計算するとともに、これを基準値と比較して、エンジン性能が正常であるかどうかを判断することができる。正常な性能との不一致が指示される場合は、この不一致が、制御装置に記憶されて、たとえば整備員は、制御装置に測定器を接続すると、性能が正常値を上回るかまたは下回るかどうか、すなわち出力トルクが基準値を上回るかまたは下回るかどうかを判断することができるようになる。正常な性能との不一致が指示される場合は、さらにまた、直接車上、たとえば走行データ表示装置上において制御装置からこのことを報告させることが考えられうる。
【0015】
正常な性能との不一致の記録には、当然ながら、エンジンの制動時に、運転者により要求される燃料量が零になりうるため、エンジントルクが負となる不一致の記録も含まれる。基準値との正のトルクの不一致の記録では、1個以上の補助装置25がオン状態にあるかどうかが考慮されるのと全く同様に、負のトルクの記録では、1個以上の補助ブレーキ装置(図示せず)、たとえば圧縮ブレーキまたは排気ブレーキが作動しているかどうかが考慮される。
【0016】
互いに通信する別々のエンジンと変速装置とを有する、図面に示された実施例を参照して、前記に本発明を説明したが、本発明の範囲内において、エンジンおよび変速制御機能は、さらにまた、当然ながら、同じ1個の制御装置に一体化されうる。トルク送信機がギヤシフトの制御に用いられない場合は、トルク送信機をギヤボックスの入力軸と調和させる必要はないが、その代わりに、それが適切である場合は、エンジンのクランク軸と調和せしめられうる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者により要求されるとともに少なくともエンジンの燃焼室内に噴射される燃料量を表す信号によってエンジンの出力トルクを制御する記憶機能を持つ電子制御部材(20、23)を有しており、異なる回転数におけるエンジントルクの基準値が前記制御部材に記憶される自動車用内燃機関において、エンジンのクランク軸(2)から現在の出力トルクを検出するとともに、前記現在の出力トルクを表す信号を前記制御部材(20、23)に送信するトルク送信機(24)が配設され、前記制御部材は、前記トルク送信機により検出される前記現在のトルクを常に記録するとともに問題の回転数における前記記憶された基準値と比較し、かつ前記基準値と前記検出された現在値との間における不一致に関する情報を記憶するように設計されることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記制御部材(20、23)は、前記検出された現在値が前記記憶された基準値を上回るかまたは下回るかどうかを指示するように設計されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
少なくとも1個の補助装置(25)が、手動かつ/または自動切換え部材(27)によって、エンジンの動力点(26)に結合または前記動力点から結合され得、前記制御部材(20、23)は、前記記憶された基準値を前記現在のトルクと比較するときに、前記補助装置が接続状態または接続解除状態にあるかどうかを考慮するように設計されることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関。
【請求項4】
エンジンのクランク軸に駆動可能な構成に接続されうる入力軸を備える自動変速ギヤボックスを有する内燃機関であって、前記トルク送信機(24)は、前記ギヤボックスの前記入力軸(7)と調和せしめられ、前記制御部材(20、23)は、前記エンジン制御機能とは別に、さらにまた、前記制御部材に供給され、少なくともエンジン速度、ギヤボックスの入力軸における回転数および走行速度を含む、選択ギヤとさまざまなエンジンおよび自動車データとを表す信号によってギヤシフトを制御する変速制御機能を有し、前記制御部材は、前記トルク送信機により検出される前記入力軸における前期現在のトルクに呼応して現在の路面抵抗を計算するとともに、前記計算された路面抵抗に基づいてギヤを選択するように設計されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者により要求されるとともに少なくともエンジンの燃焼室内に噴射される燃料量を表す信号によってエンジンの出力トルクを制御する記憶機能を持つ電子制御部材(20、23)を有しており、異なる回転数におけるエンジントルクの基準値が前記制御部材に記憶される自動車用内燃機関において、エンジンのクランク軸(2)から現在の出力トルクを検出するとともに、前記現在の出力トルクを表す信号を前記制御部材(20、23)に送信するトルク送信機(24)が配設され、前記制御部材は、前記トルク送信機により検出される前記現在のトルクを常に記録するとともに問題の回転数における前記記憶された基準値と比較し、かつ前記基準値と前記検出された現在値との間における不一致に関する情報を記憶するように設計されることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記制御部材(20、23)は、前記検出された現在値が前記記憶された基準値を上回るかまたは下回るかどうかを指示するように設計されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
少なくとも1個の補助装置(25)が、手動かつ/または自動切換え部材(27)によって、エンジンの動力点(26)に結合または前記動力点から結合され得、前記制御部材(20、23)は、前記記憶された基準値を前記現在のトルクと比較するときに、前記補助装置が接続状態または接続解除状態にあるかどうかを考慮するように設計されることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関。
【請求項4】
エンジンのクランク軸に駆動可能な構成に接続されうる入力軸を備える自動変速ギヤボックスを有する内燃機関であって、前記トルク送信機(24)は、前記ギヤボックスの前記入力軸(7)と調和せしめられ、前記制御部材(20、23)は、前記エンジン制御機能とは別に、さらにまた、前記制御部材に供給され、少なくともエンジン速度、ギヤボックスの入力軸における回転数および走行速度を含む、選択ギヤとさまざまなエンジンおよび自動車データとを表す信号によってギヤシフトを制御する変速制御機能を有し、前記制御部材は、前記トルク送信機により検出される前記入力軸における前期現在のトルクに呼応して現在の路面抵抗を計算するとともに、前記計算された路面抵抗に基づいてギヤを選択するように設計されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関。

【公表番号】特表2006−509945(P2006−509945A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558953(P2004−558953)
【出願日】平成15年12月1日(2003.12.1)
【国際出願番号】PCT/SE2003/001864
【国際公開番号】WO2004/052676
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(500277711)ボルボ ラストバグナー アーベー (163)
【Fターム(参考)】