説明

自動車用物体認識システム

本発明は、少なくとも2個の物体認識センサを備え、該センサの認識範囲が進行方向において部分的に重なる、自動車用の物体認識システムに関する。本発明によれば、第1の物体認識センサが、所定の第1垂直認識角度において、その認識範囲内で道路表面を付随的に検出し、第2の物体認識センサは、第1の物体認識センサの第1垂直認識角度未満である所定の第2垂直認識角度において、第1の物体認識センサの認識範囲内で、進行方向において道路表面を検出しない。両方の物体認識センサが物体を認識したときに限り、評価ユニットが第1の物体認識センサの認識範囲において物体の存在を推測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の少なくとも2つの物体認識センサを備えた自動車用物体認識システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、少なくとも3つの物体検出器の組み合わせを備えた自動車用物体検出システムを開示している。各物体検出器は、異なる検出領域及び/又は異なる検出範囲を有する。検出領域は、自動車の前方に進行方向に延在し、重なっている。複数の物体検出器の使用は、個々の検出領域それぞれについて、該領域に最適な物体検出器を使用することが可能であるという利点を有する。
【0003】
特許文献2は、自動車と物体との間の距離を測定する方法を開示している。該方法は、自動車内で、物体との距離が短い場合、対応する測定範囲を有する第1測定装置の出力信号を考慮し、物体との距離がより長い場合、対応してより大きな測定範囲を有する第2測定装置の出力信号を考慮する。物体の距離に応じて、第1あるいは第2測定装置が起動される。さらに、測定装置の出力信号は物体の距離に応じて重み付けされる。2つの測定装置を、異なる物理的測定原理で操作することができる。
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第199 34 670 A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第195 01 612 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、自動車の走行を実際に妨害しかつ阻害する物体を、先行技術で知られる物体認識システムと比較して、より高い信頼度で認識することができる少なくとも2個の物体認識センサを備えた自動車用物体認識システムを提供する目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、請求項1の特徴を有する少なくとも2個の物体認識センサを備えた自動車用物体認識システムによって達成される。
【0007】
本発明によれば、所定の第1垂直認識角度を有する第1の物体認識センサが、その認識範囲において道路表面を付随的に検出する。第1の物体認識センサの第1垂直認識角度未満である、所定の第2垂直認識角度を有する第2の物体認識センサは、第1の物体認識センサの認識範囲における進行方向の道路表面を付随的に検出しない。両方の物体認識センサが物体を認識した時に限り、第1の物体認識センサの認識範囲における物体の存在を推測する評価ユニットが提供される。本発明の自動車用物体認識システムは、認識範囲が進行方向において部分的に重なる少なくとも2個の物体認識センサを備える。先行技術で知られる物体認識システムを使用した場合、一般的に、自動車に対する距離および横方向の位置を決定することが可能であるが、検出された物体の高さを検出することはできない。しかし、現実の交通環境では、高さが僅かでありかつ自動車がほとんど問題なく上を走行することができる物体が現れる。これらの物体の例として、例えば、突出したマンホールカバー、ベースプレート、あるいは立抗の格子が挙げられる。これらは先行技術で知られる物体認識システムの場合、衝突物体に該当するとして認識され、対応するプリクラッシュシステムの場合、誤った起動を引き起こす。本発明による物体認識システムにより、危機的な状況に対する起動の信頼性が高められる。第1の物体認識センサの第1の垂直認識角度未満である所定の第2垂直認識角度を有する第2の物体認識センサを使用することによって、実際に自動車の走行を妨害しかつ阻害する物体が信頼性をもって認識されることが可能になる。起動が予想される状況をできるだけ多く認識することが目的ではなく、全ての不要かつ不適切な起動を抑制することが目的である。この場合、第1および第2の物体認識センサが異なる物理的測定原理を備えていると有利である。2つの異なる物理的な測定原理を使用することによって、起動の信頼性、それゆえ物体認識システムの正確性がさらに高められる。
【0008】
本発明の一発展形態において、進行方向における第1の物体認識センサの第1水平認識角度が、第2の物体認識センサの第2水平認識角度よりも大きく、評価ユニットは、両方の物体認識センサが物体を認識したときに限り、第1の物体認識センサの認識範囲において物体の存在を推測する。結果として、実際にまた自動車に対する障害となり、かつ真の潜在的危険性を示すそうした物体だけが、自動車の前方水平周囲領域における障害として識別される。自動車の安全装置の望ましくない誤った起動が回避される。
【0009】
さらに、本発明の有利な発展形態が、従属請求項に再現される。
【0010】
本発明は、図1における例証的な実施形態に基づいて、さらに詳細に説明される。図1は、一体型物体認識システムを備えた道路上の自動車を、側面図で示す概略的な説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
自動車2用の物体認識システム1は、図面によれば、2個の物体認識センサ3、4を備え、該センサの認識範囲5、6は進行方向における領域5’において重なる。所定の第1垂直認識角度7を有する第1の物体認識センサ3が、進行方向におけるその認識範囲5において道路表面8を付随的に検出する。第1の物体認識センサ3の第1垂直認識角度7未満である、所定の第2垂直認識角度9を有する第2の物体認識センサ4は、第1の物体認識センサ3の認識範囲5内で、進行方向において道路表面8を付随的に検出しない。評価ユニット10が第1の物体認識センサ3の認識範囲5において物体11、12の存在を推測するのは、第1の物体認識センサ3および第2の物体認識センサ4の両方が物体11、12を認識したときだけである。この例示的な実施形態では、道路表面8上の平らな物体11は、自動車2を妨害しているものとして認識されない。なぜなら、平らな物体11は第1の物体認識センサ3によってのみ検出され、第2の物体認識センサ4によっては認識されないからである。平らな物体11は、運転を妨害するものとして評価されないので、平らな物体11のために予防的な乗員保護用の安全手段が作動されることはなく、また始動されることはない。より大きな、とりわけより高い物体12が、第1の物体認識センサ3および第2の物体認識センサ4の両方によって同時に検出される。従って、より高い物体12は、運転にとって潜在的危険性を有するものとして見なされ、予防的な乗員保護用の安全手段が作動され始動される。そのようにして物体認識システム1は、運転にとって危険因子である物体12と、妨害するような態様で運転を制限することはない物体11とを区別するという選択を有する。予防的な乗員保護用の安全手段の作動に対する不適切な起動を回避することができ、したがって自動車の乗員に対する安全性が著しく高められる。
【0012】
第1の物体認識センサ3の認識領域5における物体11、12の認識が補足的に有効とされる場合もあるが、それは物体11、12が、第2の物体認識センサ4により第1の物体認識センサ3の認識領域5における物体11、12の軌跡を追跡および事前計算することによって有効とされる場合である。
【0013】
さらに、第1の物体認識センサ3の第1水平認識角度は、進行方向において、第2の物体認識センサ4の第2水平認識角度よりも大きくてもよく、評価ユニット10は、物体認識センサ3、4の両方が物体11、12を同時に認識したときに限り、第1の物体認識センサ3の認識領域5において物体11、12の存在を推測する。結果として、自動車2の予側される経路を、前方領域において横方向に実際に制限する物体11、12だけが妨害物として認識される。
【0014】
第1の物体認識センサ3は、例えば、約22GHzまたは24GHzの動作周波数を有するレーダーセンサ、ライダー(LIDAR)センサ(光による検知と測距)、あるいは多様な好適な構成を有し得るカメラであってもよい。
【0015】
第2の物体認識センサは、具体的には、約76〜77GHzの周波数範囲の高周波マイクロ波放射を使用するACCレーダーセンサ(車間距離制御)あるいはライダーセンサであってもよい。第1および第2の物体認識センサ3、4が異なる物理的測定原理を備えていると有利である。
【0016】
物体認識システム1は、自動車2の少なくとも一方の側面周辺領域用に及び/又は後方周辺領域用に使用可能であってもよい。
【0017】
本発明による、2個の物体認識センサ3、4を備えた自動車2用の物体認識システム1は、自動車2が走行する上で妨害の影響を実際に有する物体12の信頼性のある認識を確実にする。運転する上で危険な影響をもたない物体11の検出を考慮することによる、予防的な乗員保護用の安全手段の不適切な起動が回避される。物体認識システム1の基本的な構成要素は、一般的に、種々のアプリケーションとして自動車2内にすでに設置されているので、物体認識システム1は少ない費用で構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一体型物体認識システムを備えた道路上の自動車を、側面図で示す概略的な説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個の物体認識センサ(3、4)を備え、該センサの認識範囲(5、6)が進行方向において部分的に重なる、自動車(2)用の物体認識システム(1)において、
所定の第1垂直認識角度(7)を有する第1の物体認識センサ(3)が、その認識範囲(5)において道路表面(8)を付随的に検出し、前記第1の物体認識センサ(3)の前記第1垂直認識角度(7)未満である、所定の第2垂直認識角度(9)を有する第2の物体認識センサ(4)は、前記第1の物体認識センサ(3)の前記認識範囲(5)内で、進行方向において道路表面(8)を付随的に検出せず、両方の物体認識センサ(3、4)が物体(11、12)を認識したときに限り、評価ユニット(10)が前記第1の物体認識センサ(3)の前記認識範囲(5)において前記物体(11、12)の存在を推測することを特徴とする物体認識システム(1)。
【請求項2】
前記第1の物体認識センサ(3)の第1水平認識角度は、進行方向において、前記第2の物体認識センサ(4)の第2水平認識角度よりも大きく、前記評価ユニット(10)は、両方の物体認識センサ(3、4)が物体(11、12)を認識したときに限り、前記第1の物体認識センサ(3)の前記認識範囲(5)において前記物体(11、12)の存在を推測することを特徴とする請求項1に記載の物体認識システム(1)。
【請求項3】
前記第1および第2の物体認識センサ(3、4)は、異なる物理的測定原理を有することを特徴とする請求項1に記載の物体認識システム(1)。
【請求項4】
前記第1の物体認識センサ(3)は、レーダーセンサ、ライダーセンサ、又はカメラであることを特徴とする請求項1に記載の物体認識システム(1)。
【請求項5】
前記第2の物体認識センサ(4)は、ACCレーダーセンサ又はライダーセンサであることを特徴とする請求項1に記載の物体認識システム(1)。
【請求項6】
前記物体認識システム(1)は、前記自動車(2)の少なくとも一方の側面周辺領域用に及び/又は後方周辺領域用に使用可能であることを特徴とする請求項1に記載の物体認識システム(1)。

【図1】
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【公表番号】特表2007−536536(P2007−536536A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511933(P2007−511933)
【出願日】平成17年4月23日(2005.4.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004380
【国際公開番号】WO2005/109036
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】