説明

自律移動体

【課題】干渉する可能性のある障害物が存在する場合に、停止行動又は退避行動を状況に応じて適切に行うことが可能な自律移動体を提供することを目的とする。
【解決手段】自律移動体1は、レーザレンジセンサ12と電子制御装置20とを備える。電子制御装置20は、自機の大きさD2を記憶する記憶部22と、自機が移動可能な領域である通路95の幅方向の大きさを示す空間サイズD1を特定する幅特定部27と、障害物情報に基づき、路面において移動目標方向72と略直交する方向について、干渉障害物66の大きさD8を算出する算出部23と、空間サイズD1、自機の大きさD2、及び干渉障害物66の大きさD8に基づいて、停止行動又は退避行動を選択する行動選択部24と、停止行動が選択された場合、自機を停止させ、退避行動が選択された場合、自機を退避させる移動制御部25とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律的に移動する自律移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、目的地まで自律的に移動する自律移動体が知られている。例えば、下記特許文献1には、レーザーレンジファインダによって障害物を検出し、検出した障害物との干渉を避けて自律的に移動する自律移動体が記載されている。また、下記特許文献2には、超音波センサによって走行方向前方の障害物が検出された場合、赤外センサの出力があれば障害物が人であると判断する自律移動体が記載されている。この自律移動体は、障害物が人であると判断した場合は停止し、人がよけてくれることを期待して一定時間待機する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−288930号公報
【特許文献2】特開平9−185412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載の自律移動体では、障害物が人であると判断して停止した場合であっても、人と自律移動体とがすれ違うだけの余裕が通路になければ、人は自律移動体を避けて通ることができない。そこで、特許文献2に記載の自律移動体において、障害物を検出した場合に、自律移動体が、後方に退避して退避路に移動することも考えられる。しかし、この場合は、通路で障害物とすれ違うことが可能であるときにも退避した場合、目的地に到着するまでの時間が長くなる。このように、障害物との干渉を回避するために自律移動体が行う最適な行動は、状況によって変化する。
【0005】
そこで本発明は、干渉する可能性のある障害物が存在する場合に、停止行動又は退避行動を状況に応じて適切に行うことが可能な自律移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自律移動体は、計画された経路に従って自律的に移動する自律移動体であって、水平方向の自機の大きさを記憶する記憶手段と、計画された経路が設定され、自機が移動可能な領域である通路の幅方向の大きさを示す通路幅を特定する幅特定手段と、自機周囲の障害物情報を取得する障害物情報取得手段と、障害物情報取得手段によって取得された障害物情報に基づいて、通路面と平行な面において自機の移動目標方向と略直交する方向について、移動目標方向に存在する障害物の大きさを算出する算出手段と、記憶手段によって記憶された自機の大きさ、幅特定手段によって特定された通路幅、及び算出手段によって算出された障害物の大きさに基づいて、停止行動又は退避行動を選択する選択手段と、選択手段によって停止行動が選択された場合、自機を停止させるように制御し、選択手段によって退避行動が選択された場合、自機を退避させるように制御する移動制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
この本発明に係る自律移動体では、記憶手段が、水平方向の自機の大きさを記憶し、幅特定手段が、計画された経路が設定され、自機が移動可能な領域である通路の幅方向の大きさを示す通路幅を特定する。また、障害物情報取得手段が、自機周囲の障害物情報を取得し、この障害物情報に基づいて、算出手段が、通路面と平行な面において移動目標方向と略直交する方向について、移動目標方向に存在する障害物の大きさを算出する。すなわち、自律移動体がそのまま前進した場合に干渉する可能性のある障害物の大きさが算出される。更に、選択手段は、自機の大きさ、障害物の大きさ、及び通路幅に基づいて、停止行動又は退避行動を選択する。すなわち、自律移動体と障害物とが通路上ですれ違うことが可能な状況か否かを判断するために必要な情報に基づいて、自律移動体は、停止行動と退避行動とのいずれかを選択する。そして、移動制御手段は、停止行動を選択した場合に、自機が停止するように制御し、退避行動を選択した場合は、自機が退避するように制御する。従って、干渉する可能性のある障害物が存在する場合に、自律移動体が停止行動又は退避行動を状況に応じて適切に行うことが可能となる。
【0008】
上記本発明に係る自律移動体では、選択手段が、自機の大きさと障害物の大きさとの合計値が通路幅より小さい場合に、停止行動を選択し、合計値が通路幅以上である場合に、退避行動を選択することが好ましい。
【0009】
この好ましい構成によれば、選択手段は、自機の大きさと障害物の大きさとの合計値が通路幅より小さい場合に、停止行動を選択する。すなわち、自律移動体と障害物とが通路上ですれ違う余裕がある状況においては、自律移動体は停止行動を選択する。このため、障害物が人等の自律的に移動できるものである場合、自律移動体が停止した状態で、障害物が自律移動体をよけて通路上ですれ違うことができる。また、選択手段は、自機の大きさと障害物の大きさとの合計値が上記の通路幅以上である場合に、退避行動を選択する。すなわち、自律移動体と障害物とが通路上ですれ違う余裕がない状況においては、自律移動体は退避行動を選択する。このため、障害物が人等の自律的に移動できるものである場合、障害物が前進することができる。
【0010】
上記本発明に係る自律移動体では、算出手段が、障害物情報に基づいて特定された環境地図上の点であって、自機周囲の障害物の存在を示す点の中から、移動目標方向に存在し、自機と最も近い点を特定する最近傍特定手段と、地図上の点の中から、最近傍特定手段によって特定された点を含み移動目標方向と略直交する方向に延びた帯状領域に含まれる点を特定する障害物特定手段とを有し、障害物特定手段によって特定された点を用いて、障害物の大きさを算出することが好ましい。
【0011】
この好ましい構成によれば、最近傍特定手段が、障害物情報に基づいて特定された環境地図上での点であって、障害物の存在を示す点の中から、移動目標方向に存在し、自機と最も近い点を特定する。そして、障害物特定手段が、障害物の存在を示す地図上の点の中から、最近傍特定手段によって特定された点を含み移動目標方向に略直交する方向に延びた帯状領域に含まれる点を特定する。すなわち、自律移動体は、干渉する可能性があり、自機に最も近い障害物の点と、この障害物の点から移動目標方向と略直交する方向に広がる障害物の点とを、一纏まりとみなしてクラスタリングする。このクラスタリングされた障害物の点は、帯状領域内における一纏まりとみなされた障害物を示し、この障害物は、移動目標方向に存在し、自機との間の距離が最も近い障害物である。従って、算出手段が、特定された点を用いて障害物の大きさを算出することにより、移動目標方向に位置し、自機との間の距離が最も近い障害物について、上記大きさを算出することができる。
【0012】
上記本発明に係る自律移動体では、算出手段が、障害物特定手段によって特定された複数の点のうち、移動目標方向と略直交する方向に最も離れた2点間の距離を障害物の大きさとして算出することが好ましい。
【0013】
この好ましい構成によれば、算出手段は、帯状領域内における一纏まりとみなした障害物について、移動目標方向と略直交する方向について両端の点の距離を障害物の大きさとして算出する。従って、自律移動体は、移動目標方向に位置し、自機との間の距離が最も近い障害物について、移動目標方向に略直交する方向の大きさを算出することができる。
【0014】
上記本発明に係る自律移動体では、記憶手段が、水平な平面において自機を内包する円の直径を自機の大きさとして記憶し、幅特定手段は、通路において自機が幅方向に移動可能な距離を示す移動余裕を特定し、該移動余裕と自機の大きさとの合計値を通路幅として特定することが好ましい。
【0015】
この好ましい構成によれば、水平方向の自機の大きさは、自機を内包する円の直径により表される。すなわち、自機の大きさは、水平な平面における自機の最大寸法以上の値を表している。そして、自機が通路において移動可能な幅方向の大きさを示す通路幅は、自機の大きさと、上記移動余裕との合計値として特定される。すなわち、通路幅は、水平な平面における自機の最大寸法以上の値と、自機が幅方向に移動可能な距離との合計値として特定される。従って、自機が何れの方向を向いているかに関わらず、通路上において障害物とすれ違うだけの余裕があるか否かを判定することができる。
【0016】
上記本発明に係る自律移動体では、移動余裕は、値を任意に変更可能なパラメータを用いて表されることが好ましい。
【0017】
この好ましい構成によれば、自機が移動する環境に応じてパラメータの値を設定することにより、通路幅を環境に応じて定義することができる。
【0018】
上記本発明に係る自律移動体では、障害物情報に基づいて通路の端に停止位置を設定する停止位置設定手段を備え、移動制御手段は、選択手段によって停止行動が選択された場合、停止位置設定手段によって設定された停止位置に移動して停止するように制御することが好ましい。
【0019】
この好ましい構成によれば、自律移動体は、停止行動を選択した場合に、停止位置を自ら設定し、設定した停止位置まで移動して停止する。停止位置は、障害物情報に基づいて、通路の端に設定される。すなわち、自律移動体は、停止行動を選択した場合に、通路の端に寄って停止する。従って、障害物が人である場合、自律移動体が人に道を譲る行動を行うことができる。
【0020】
上記本発明に係る自律移動体は、通路と交わる退避路上に待機位置を設定する待機位置設定手段を備え、移動制御手段が、選択手段によって退避行動が選択された場合に、待機位置に向かって退避するように制御することが好ましい。
【0021】
この好ましい構成によれば、自律移動体は、退避行動を選択した場合に、通路と交わる退避路上に待機位置を自ら設定し、設定した待機位置に向かって退避する。これにより、自機と障害物とが通路上ですれ違うことができない状況においては、自機が通路から退避することにより、障害物が通路上を通過可能な状況を作り出すことができる。
【0022】
上記本発明に係る自律移動体では、移動制御手段が、待機位置に退避してから所定時間待機した後、再び計画された経路に従って移動するように制御することが好ましい。
【0023】
この好ましい構成によれば、自律移動体と障害物とが通路上ですれ違うことができない状況において、自律移動体が通路から退避することにより、障害物が通路上を通過可能な状況を作り出し、待機位置で所定時間待機した後、元の計画された経路に従った移動を再開する。従って、障害物が人等の自律的に移動できるものである場合に、障害物が通路を通過すれば、自律移動体が通路に戻って、再び計画された経路に従った移動を再開することができる。
【0024】
上記本発明に係る自律移動体は、移動目標方向に障害物が存在する通路を迂回する迂回路を探索する探索手段を備え、制御手段は、選択手段によって退避行動が選択された場合、探索手段によって探索された迂回路へ退避するように制御することが好ましい。
【0025】
この好ましい構成によれば、自律移動体と障害物とが通路上ですれ違うことができない状況において、自律移動体は、障害物が存在する通路を迂回する迂回路を自ら探索し、探索した迂回路へ退避する。従って、迂回路を通って目的地まで移動することができる。
【0026】
上記本発明に係る自律移動体では、制御手段が、選択手段によって退避行動が選択された場合、停止位置設定手段によって設定された停止位置に移動して停止するように制御した後、退避するように制御することが好ましい。
【0027】
この好ましい構成によれば、自律移動体は、停止位置まで移動して停止してから退避行動を行う。すなわち、自律移動体は、通路の端によけて停止した後、退避する。従って、障害物が人である場合に、自律移動体が人に道を譲る行動を行ってから、退避することができる。
【0028】
本発明に係る自律移動体は、計画された経路に従って自律的に移動する自律移動体であって、計画された経路が設定された通路において自機が幅方向に移動可能な距離を示す移動余裕を特定する幅特定手段と、自機周囲の障害物情報を取得する障害物情報取得手段と、障害物情報取得手段によって取得された障害物情報に基づいて、通路面と平行な面において自機の移動目標方向と略直交する方向について、移動目標方向に存在する障害物の大きさを算出する算出手段と、幅特定手段によって特定された移動余裕と、算出手段によって算出された障害物の大きさとに基づいて、停止行動又は退避行動を選択する選択手段と、選択手段によって停止行動が選択された場合に、自機を停止させるように制御し、選択手段によって退避行動が選択された場合に、自機を退避させるように制御する移動制御手段とを備えることを特徴とする自律移動体。
【0029】
この本発明に係る自律移動体では、幅特定手段が、計画された経路が設定された通路において自機が幅方向に移動可能な距離を示す移動余裕を特定する。また、障害物情報取得手段が、自機周囲の障害物情報を取得し、この障害物情報に基づいて、算出手段が、通路面と平行な面において自機の移動目標方向と略直交する方向について、移動目標方向に存在する障害物の大きさを算出する。すなわち、自律移動体がそのまま前進した場合に干渉する可能性のある障害物の大きさが算出される。更に、選択手段は、幅方向に移動可能な距離を示す移動余裕と、障害物の大きさとに基づいて、停止行動又は退避行動を選択する。すなわち、自律移動体と障害物とが通路上ですれ違うことが可能な状況か否かを判断するために必要な情報に基づいて、自律移動体は、停止行動と退避行動とのいずれかを選択する。そして、移動制御手段は、停止行動を選択した場合に、自機が停止するように制御し、退避行動を選択した場合は、自機が後方に退避するように制御する。従って、干渉する可能性のある障害物が存在する場合に、自律移動体が停止行動又は退避行動を状況に応じて適切に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、干渉する可能性のある障害物が存在する場合に、停止行動又は退避行動を状況に応じて適切に行うことが可能なとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態に係る自律移動体の概略構成を示す図である。
【図2】自律移動体が備える電子制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】移動制御に用いる各種の情報を説明するための図である。
【図4】自律移動体が行う行動の種類を説明するための図である。
【図5】干渉距離の算出方法を説明するための図である。
【図6】クラスタリング方法を説明するための図である。
【図7】回避通過点と経路との距離を算出する方法を説明するための図である。
【図8】回避行動を選択するか否かを判定する方法を説明するための図である。
【図9】停止行動と回避行動との選択方法を説明するための図である。
【図10】停止位置の設定方法を説明するための図である。
【図11】待機位置の設定方法を説明するための図である。
【図12】停止位置までの距離と速度との関係を示すグラフである。
【図13】干渉判定の方法を説明するための図である。
【図14】行動選択処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】エッジ点の特定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図16】停止行動時の移動制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図17】待機行動と迂回行動との選択処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図18】退避行動が選択された場合の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。まず、図1を参照して、実施形態に係る自律移動体1の概略について説明する。図1は、自律移動体1の概略構成を示す図である。
【0033】
本実施形態に係る自律移動体1は、例えば、病院又は工場等の施設内に配備され、目的地までの経路を自ら計画し、計画した経路に従って壁や柱等の障害物を回避しながら自律的に移動するロボットである。なお、本発明に係る自律移動体は、無人搬送台車(AGV:Automated Guided Vehicle)等にも適用することができる。自律移動体1は、環境地図に予め記憶した既知の障害物を回避するように経路を計画し、計画した経路に従って移動する際に、遭遇する未知の障害物を各種の障害物センサによって検出する。自律移動体1は、障害物センサを用いて移動目標方向の障害物を検出した場合、その状況に応じて回避行動、停止行動、又は、退避行動のいずれかを自ら選択して自機の移動を制御する。
【0034】
本実施形態の自律移動体1は、中空円柱状の本体11を有し、本体11内に電子制御装置20が搭載され、本体11側面に周囲の障害物を検出するための障害物センサが配置されている。自律移動体1は、本実施形態では、障害物センサとして、レーザーレンジファインダ12、超音波センサ13、及びステレオカメラ14を備えている。レーザーレンジファインダ12、超音波センサ13、及びステレオカメラ14は、特許請求の範囲に記載の障害物情報取得手段として機能する。
【0035】
レーザーレンジファインダ12は、正面に取り付けられ、自機の周囲を水平方向に中心角240°程度の扇状に走査する。すなわち、レーザーレンジファインダ12は、レーザーを射出し、自機周囲の障害物に反射して戻ってきたレーザーの検出角度、及び、レーザーの電播時間を計測する。そして、レーザーレンジファインダ12は、計測した伝播時間を用いて自機と障害物との間の距離を算出し、算出した距離及びその角度を障害物情報として電子制御装置20へ出力する。
【0036】
超音波センサ13は、一対の発信器及び受信器を用いて構成され、本実施形態では、16個の超音波センサ13が搭載されている。この16個の超音波センサ13は、本体11の周方向に沿って等間隔に本体11に取り付けられている。なお、図1においては、正面と背面に取り付けられた2個の超音波センサ13を示し、その他の超音波センサ13を省略している。16個の超音波センサ13は、自機を中心として自機の全周囲360°をカバーするように超音波を発信する。
【0037】
各超音波センサ13は、超音波を発信した後、自機周囲の障害物に反射して戻ってきた超音波を検出し、超音波の伝播時間を計測する。これにより、自機の周囲360°の障害物を検出することができる。各超音波センサ13は、計測した伝播時間を用いて、自機と障害物との間の距離を算出し、算出した距離を障害物情報として電子制御装置20へ出力する。
【0038】
ステレオカメラ14は、本体11の上部正面に配置され、ステレオ画像を用いた三角測量の原理に基づいて、自機から障害物までの距離及び角度を算出する。ステレオカメラ14は、算出した距離及びその角度を障害物情報として電子制御装置20へ出力する。
【0039】
自律移動体1は、移動手段として、本体11の下側に設けられた4つの電動モータ15と、4つの電動モータ15の駆動軸それぞれに装着されたオムニホイール16とを備えている。4つのオムニホイール16は、同一円周上に90°ずつ角度をずらして等間隔に配置されている。自律移動体1は、4つの電動モータ15を独立して制御することにより、4つのオムニホイール16それぞれの回転方向及び回転速度を個別に調節し、360°の任意の方向に移動することができる。すなわち、自律移動体1は、障害物を回避するために、本体11の向きを変えずに、左右、後方、斜め方向等、任意の方向に移動することができる。
【0040】
自律移動体1が備える電子制御装置20は、自律移動体1の制御を総合的に司るものである。電子制御装置20は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに後述する各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM、及びバックアップRAM等から構成されている。また、電子制御装置20は、レーザーレンジファインダ12、超音波センサ13、及びステレオカメラ14とマイクロプロセッサとを電気的に接続するインターフェイス回路、及び電動モータ15を駆動するドライバ回路等も備えている。
【0041】
電子制御装置20は、移動を制御するために主要な構成要素として、障害物情報統合部21と、記憶部22と、算出部23と、行動選択部24と、移動制御部25とを備えている。障害物情報統合部21は、レーザーレンジファインダ12、超音波センサ13、及びステレオカメラ14から出力された障害物情報を入力し、入力した障害物情報を統合する。算出部23は、障害物情報及び記憶部22に記憶された各種情報等を用いて状況を解析する。
【0042】
行動選択部24は、解析された状況に基づいて、通常行動、回避行動、停止行動、又は、退避行動のいずれかの行動を選択する。そして、移動制御部25が、選択された行動に基づいて電動モータ15を制御することにより、自律移動体1は状況に応じた移動を行う。なお、行動選択部24は、特許請求の範囲に記載の選択手段として機能し、移動制御部25は制御手段として機能する。
【0043】
引き続いて、図2を参照して、電子制御装置20の構成要素についてより詳細に説明する。図2は、電子制御装置20の構成を示すブロック図である。電子制御装置20は、算出部23へ各種の情報を提供するための構成要素として、上述した障害物情報統合部21及び記憶部22の他に、経路計画部26と、幅特定部27と、自己位置推定部28とを備える。
【0044】
記憶部22は、特許請求の範囲に記載の記憶手段として機能し、水平方向の自機の大きさを予め記憶している。この自機の大きさは、水平な平面において自機が内包される円の直径を用いて表される。本実施形態では、自機の大きさが、水平な平面において自機が内接する円の直径を用いて表され、この場合、水平な平面としては、円の直径が最大となる面が選択される。すなわち、本実施形態では、自機の大きさが、自律移動体1について水平方向の最大寸法を示している。
【0045】
また、記憶部22は環境地図を予め記憶している。環境地図は、自律移動体1が移動する環境の地図情報であり、既知の障害物が存在する領域を示す情報である。既知の障害物は、壁、家具、取り付けられた備品等の静止した障害物等である。これらの既知の障害物が存在する領域は、既知の障害物領域として環境地図に予め登録されている。なお、既知の障害物領域は、通路面に置かれた障害物だけでなく、壁面に取り付けられた障害物又は天井から吊り下げられた障害物のうち、自律移動体1と干渉する可能性のある高さに位置する障害物を路面上に投影した領域を含んでもよい。
【0046】
経路計画部26は、自律移動体1の現在地を出発地として目的地までの経路を計画する。出発地は、後述する自己位置推定処理により推定してもよいし、ユーザが入力してもよい。目的地は、ユーザが設定してもよいし、自律移動体1が自ら設定してもよい。例えば、自律移動体1自ら、自機の充電が必要なことを検知し、充電器のある充電ステーションまで移動する場合には、環境地図上において予め記憶された充電器の位置を目的地に自ら設定する。
【0047】
経路計画部26は、自機の大きさと、環境地図とを用いて、環境地図上の既知の障害物と干渉することなく移動できる経路を抽出する。そして、経路計画部26は、抽出した複数の経路の中から、出発地と目的地との間をつなぐ最短経路を探索することにより経路を計画する。経路は、人や他の自律移動体が移動する領域にも設定される。例えば、自律移動体1が病院内を移動する場合、病院内の廊下等に経路が設定される。
【0048】
経路計画部26は、計画した経路上に複数のサブゴールを設定する。サブゴールは、仮想ポテンシャル法を用いて移動制御を行う際に、移動目標方向への引力を設定するために用いられる点である。図3(a)を参照して、サブゴール63について説明する。図3は、移動制御に用いる各種の情報を説明するための図であり、図3(a)は、サブゴール63を説明するための図である。
【0049】
図3において、ハッチングで示す領域が、既知の障害物領域61を示している。既知の障害物領域61に挟まれた領域が、自律移動体1の通路95である。すなわち、この通路95は、自律移動体1が移動可能な領域である。通路95上には、ライン状の経路68が計画されている。図3では、黒色の四角形によって3つのサブゴール63が示されている。なお、サブゴール63について個々のサブゴールを区別するときは、サブゴール631、サブゴール632、サブゴール633と表記する。
【0050】
図3(a)は、目的地に向かう経路方向が、紙面に向かって左下から右上方向である場合を示す。経路68は、任意の経路計画手法によって、主に通路95の幅方向中央に沿って設定される。従って、サブゴール63は、主に、サブゴール631及びサブゴール632のように、通路95の幅方向中央に設定される。ただし、通路95の奥に既知の障害物が存在する場合、右折又は左折等する場合には、通路95の中央からずれた位置に経路68が計画される。この場合、サブゴール633のように、通路95の中央からずれた位置にサブゴール63が設定される。
【0051】
経路計画部26は、サブゴール631〜633の環境地図上における各位置と、各サブゴール631〜633の順序とを特定する。各サブゴール631〜633の順序は、目的地に向かう順に設定される。特定されたサブゴール631〜633の各位置及び順序は、経路計画部26によって記憶部22へ出力され、記憶部22に記憶される。
【0052】
幅特定部27は、特許請求の範囲に記載の幅特定手段として機能し、各サブゴール63について空間サイズD1を特定する。空間サイズD1は、通路95の幅方向の大きさを示す。なお、空間サイズD1は、特許請求の範囲に記載の通路幅に相当する。幅方向は、通路95上において、通路面と平行な面において経路方向と略直交する方向である。図3(b)に示されるように、本実施形態では、空間サイズD1は、自機の大きさD2と経路余裕D3とによって表される。自機の大きさD2は、上述したように、水平な平面において自機が内接する円の直径である。
【0053】
経路余裕D3は、自機の大きさD2の円によって近似される自機がサブゴール63に位置する場合に、自機と壁等の既知の障害物領域61との間の余裕を示す。すなわち、この経路余裕D3は、自機の大きさD2の円によって近似される自機がサブゴール63に位置する場合に、幅方向の一方に移動可能な距離を示す。従って、空間サイズD1は、D2+(D3×2)によって示される。なお、経路余裕D3の2倍の大きさ(D3×2)は、自律移動体1が通路95において幅方向に移動可能な距離を示し、特許請求の範囲に記載の移動余裕に相当する。
【0054】
経路余裕D3は、刻み幅D4を用いて示される。サブゴール63を中心とする自機の大きさD2の円と、幅方向の一方に位置する壁等の既知の障害物領域61との距離D5が、刻み幅D4のX倍より大きく、刻み幅D4の(X+1)倍より小さい場合、経路余裕D3は刻み幅D4×Xによって示される。図3(b)に示される例では、サブゴール63を中心とする自機の大きさD2の円と既知の障害物領域61との距離D5が、刻み幅D4の2倍より大きく、刻み幅D4の3倍より小さいので、経路余裕D3は刻み幅D4×2によって示される。このような経路余裕D3を用いて空間サイズD1を表すことにより、移動制御上において、自律移動体1が移動可能な空間の幅方向の大きさを空間サイズD1によって定義することができる。
【0055】
刻み幅D4は、例えば、10cm程度に設定される。この刻み幅D4は、環境に応じて値を変更可能なパラメータである。例えば、病院内等、不特定の人の通りが比較的多い環境では、刻み幅D4を比較的大きい値として、人に対する安全性を優先してもよい。一方、倉庫内等、関係者以外の人の通りが比較的少ない環境では、刻み幅D4を比較的小さく設定して、自律移動体1の走行効率を優先してもよい。
【0056】
幅特定部27は、環境地図に基づいて、各サブゴール63の経路余裕D3を特定し、経路余裕D3と自機の大きさD2とによって表される空間サイズD1を取得する。そして、生成された各サブゴール63の空間サイズD1は、記憶部22に記憶される。
【0057】
自己位置推定部28は、デットレコニング(Dead−reckoning)技術及びSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)技術を利用して、環境地図上における自律移動体1の位置を推定する。
【0058】
デッドレコニング技術は、電動モータ15の回転量から移動ロボットの移動量を算出する技術である。本実施形態では、4つの電動モータ15それぞれの駆動軸に、駆動軸の回転角度を検出するエンコーダが取り付けられている。自己位置推定部25は、エンコーダから出力される各電動モータ15の回転角度から、初期位置又は前回推定された自己位置からの自律移動装置1の移動量を演算する。
【0059】
SLAM技術は、センサを用いて移動ロボット周囲の環境形状を把握し、その形状データをもとに、環境地図を作成すると共に、ロボットの自己位置を推定する技術である。本実施形態では、自己位置推定部28が、障害物情報統合部21によって統合された障害物情報を用いて自機周囲の環境形状を把握する。
【0060】
より具体的には、自己位置推定部28は、障害物情報統合部21から入力した障害物情報に基づき、自機を中心とした二次元の極座標上において、自機周囲の障害物の存在を示す障害物点を特定する。そして、自己位置推定部28は、電動モータ15の移動量を参照して、極座標上の障害物点と、直交座標で示された環境地図上における既知の障害物領域61とを照合し、環境地図上における極座標の中心を自己位置と推定する。
【0061】
また、図3(c)に示すように、環境地図上の自己位置64が推定されると、障害物情報統合部21は、自機周囲の障害物の存在を示す障害物点65の位置を環境地図上において特定する。なお、図3(c)において、障害物点65を白抜の三角により示している。
【0062】
次に、自律移動体1が行う行動の種類について説明する。自律移動体1が行う行動には、通常行動、回避行動、停止行動、及び退避行動の4つがある。そして、退避行動には、更に細かく分けて、待機行動と迂回行動とがある。通常行動は、計画された経路に従って移動する行動であり、干渉する障害物が検出されない場合に選択される行動である。回避行動、停止行動、及び退避行動については、図4を参照して説明する。
【0063】
図4(a)が回避行動を説明するための図であり、図4(b)が停止行動、図4(c)が退避行動のうち待機行動、図4(d)が退避行動のうち迂回行動を説明するための図である。図4において、ハッチングされた矩形状の領域は、既知の障害物領域61を示し、クロスハッチングされた楕円状の領域は、未知の障害物領域を示している。未知の障害物領域は、環境地図に既知の障害物領域61として登録されていない領域であり、自律移動体1にとって未知の障害物が存在する領域である。未知の障害物には、人等の動く障害物と、荷物等の静止した障害物とが含まれ、人が台車を押しながら移動している場合等もある。
【0064】
図4に示す破線は、計画された経路68を示している。既知の障害物を避けるように経路68が計画される。このため、移動中において、自律移動体1の移動目標方向に未知の障害物が出現する場合がある。この場合、自律移動体1は、そのまま前進した場合に干渉する干渉障害物66が存在することを障害物情報に基づいて検出し、回避行動、停止行動、又は退避行動のいずれかを選択する。
【0065】
回避行動は、通路95上において干渉障害物66を回避して目的地67へ向かって進む行動である。このため、回避行動は、干渉障害物66と既知の障害物領域61との間に、自律移動体1が通過する余裕がある場合に選択される。図4(a)において、一点鎖線で示す線が、回避行動時の移動を示している。
【0066】
停止行動は、通路95の端に寄って停止する行動である。干渉障害物66と既知の障害物領域61との間に自律移動体1が通過する余裕がない場合であっても、自律移動体1と干渉障害物66とがそれぞれ端に寄ってくれれば、自律移動体1と干渉障害物66とが通路95上ですれ違うことができる場合がある。自律移動体1が通路95上で干渉障害物66とすれ違うことができれば、退避行動を行うより効率的に目的地67へ到達することができる。そこで、通路95上で自律移動体1が干渉障害物66とすれ違うだけの余裕がある場合には、停止行動が選択される。この場合、自律移動体1は、停止位置69を自ら設定する。図4(b)において、一点鎖線で示す線が、停止行動時の移動を示している。
【0067】
退避行動は、干渉障害物66が存在する通路95から退避する行動である。通路95上で干渉障害物66とすれ違うだけの余裕がない場合に、退避行動が選択される。退避行動のうち待機行動は、通路95と交わる退避路70に退避して、待避位置で待機する行動である。これにより、干渉障害物66が人等の自律して移動可能なものである場合、干渉障害物66が通路95を通過することができる。待機行動を行う場合、自律移動体1は、待機位置71を自ら設定する。図4(c)において、一点鎖線で示す線が、待機行動時の移動を示している。
【0068】
退避行動のうち迂回行動は、干渉障害物66が存在する通路95を迂回する行動である。この場合、自律移動体1は、干渉障害物66が存在する通路95を迂回する迂回路97を通って、目的地67まで移動する。図4(d)において、一点鎖線で示す線が、迂回行動時の移動を示している。なお、図4(c)(d)では、待機行動時及び迂回行動時に、自律移動体1が干渉障害物66の手前の位置100から後方の通路に移動する場合を示しているが、位置100の左右に通路があれば、位置100から左右に移動してもよい。また、位置100と干渉障害物66との間に左右の通路があれば、前進してから左右に移動してもよい。
【0069】
自律移動体1が状況に合わせて行動を選択するために、算出部23は、干渉距離算出部231と、最近傍特定部232と、障害物特定部233と、通過点距離算出部234と、エッジ距離算出部235と、到達時間算出部236とを備える。そして、行動選択部24は、通常行動選択部241と、回避行動選択部242と、停止行動選択部243と、退避行動選択部244とを備える。
【0070】
干渉距離算出部231は、通常行動選択部241が通常行動を選択するか否か判定するために干渉距離を算出する。干渉距離は、自律移動体1と干渉障害物66との間の距離である。図5を参照して、干渉距離算出部231による干渉距離の算出方法について説明する。図5は、干渉距離の算出方法を説明するための図である。
【0071】
まず、図5(a)に示すように、干渉距離算出部231は移動目標方向72を決定する。干渉距離算出部231は、自己位置推定部28によって推定された自己位置64から一定範囲内のサブゴール63を特定し、自己位置64から一定範囲内の各サブゴール63に向かうベクトルを設定する。図5(a)に示す例では、自己位置64より前方のサブゴール632,633に向かうベクトルが設定される。そして、干渉距離算出部231は、設定した複数のベクトルの合成ベクトルを算出し、算出した合成ベクトルの方向を移動目標方向72とする。この移動目標方向72は、自律移動体1が移動する目標となる方向であり、仮想ポテンシャル法を用いて移動を制御する際の引力方向となる。
【0072】
次に、図5(b)に示すように、干渉距離算出部231は、干渉ゾーン73を設定する。干渉ゾーン73は、移動目標方向72と平行に延びた帯状の領域であり、移動目標方向72と垂直な幅方向の大きさ74は、自機の大きさD2又は自機の大きさD2に余裕を加えた大きさに設定される。また、干渉ゾーン73は、幅方向の中央に自己位置64が位置するように設定される。そして、干渉距離算出部231は、障害物情報によって特定される障害物点65のうち、自己位置64より前方の干渉ゾーン73内に位置する障害物点65を干渉点75として特定する。図5(b)において、特定される干渉点75を黒色の三角で示し、その他の障害物点65を白色の三角で示している。なお、図5においては、干渉障害物66を破線で示している。
【0073】
最後に、図5(c)に示すように、干渉距離算出部231は、自律移動体1から各干渉点75までの距離76を算出する。距離76は、移動目標方向72と平行な方向の距離である。干渉距離算出部231は、算出した距離76のうち最も小さい距離を干渉距離D6とする。
【0074】
干渉距離算出部231によって算出された干渉距離D6が予め定められた閾値より大きい場合、及び、干渉距離算出部231によって干渉点75が特定されなかった場合、通常行動選択部241は、干渉障害物66が検出されなかったと判断する。干渉障害物66が検出されなかったと判断した場合、通常行動選択部241は、通常行動を選択する。一方、通常行動選択部241は、干渉距離D6が閾値以下の場合、干渉障害物66が検出されたと判断し、通常行動を選択しない。この場合、回避行動選択部242、停止行動選択部243、退避行動選択部244によって、通常行動以外の行動が選択される。
【0075】
干渉距離D6が閾値以下の場合、最近傍特定部232は、干渉点75のうち自律移動体1と干渉する最も近い点である最近傍干渉点79を特定する。これにより、最近傍特定部232は、特許請求の範囲に記載の最近傍特定手段として機能する。最近傍特定部232は、干渉距離算出部231によって算出された干渉距離D6の干渉点75を最近傍干渉点79として特定する。図5(c)では、最近傍特定部232によって特定される最近傍干渉点79を黒色の三角で示し、その他の干渉点75を白色の三角で示している。
【0076】
障害物特定部233は、干渉障害物66のエッジを特定するために、一纏まりとみなすことができる障害物点65をクラスタリングする。なお、障害物特定部233は、特許請求の範囲に記載の障害物特定手段として機能する。図6を参照して、障害物特定部233によるクラスタリングの方法を説明する。図6は、クラスタリングの方法を説明するための図である。
【0077】
まず、図6(a)に示すように、障害物特定部233は、エッジ検出ゾーン80を設定する。エッジ検出ゾーン80は、移動目標方向72と垂直に延びた帯状領域であり、移動目標方向72と平行な幅方向の中央に最近傍干渉点79が位置するように設定される。エッジ検出ゾーン80の幅方向の大きさ81は、任意に設定可能であるが、例えば、10〜20cm程度に設定される。そして、障害物特定部233は、障害物点65の中からエッジ検出ゾーン80に含まれる障害物点82を特定し、特定した障害物点82をクラスタリングする。図6(a)において、クラスタリングされた障害物点82を黒色の三角で示し、その他の障害物点65を白色の三角で示す。
【0078】
障害物特定部233は、最近傍干渉点79と近い順に、エッジ検出ゾーン80内の障害物点82か否か特定していく。特定された障害物点82の隣に位置する障害物点83がエッジ検出ゾーン80から外れている場合、障害物特定部233は、その障害物点83が特異点か否かの判定を行う。特異点か否かの判定を行うために、図6(b)に示すように、障害物特定部233は、特異点検出ゾーン84を設定する。特異点検出ゾーン84は、移動目標方向72と平行に延びた帯状領域であり、移動目標方向72と垂直な幅方向の中央に、判定対象となる障害物点83が位置するように設定される。
【0079】
障害物特定部233は、エッジ検出ゾーン80と特異点検出ゾーン84とが重なる領域85内に位置する障害物点65がある場合には、障害物点83を特異点と判定し、領域85内の障害物点65を含めてクラスタリングを行う。そして、領域85内の障害物点65を最近傍干渉点79と近い順に、エッジ検出ゾーン80内の障害物点82か否か判定していく。図6(b)に示す例では、領域85内の障害物点65は存在しないので、上記で特定した障害物点82のみをクラスタリングする。
【0080】
これにより、エッジ検出ゾーン80内において、最近傍干渉点79と一纏まりとみなすことができる障害物点65が、クラスタリングされる。そして、障害物特定部233は、クラスタリングした障害物点82から、移動目標方向72と直交するに最も離れた2つの障害物点82をエッジ点86として特定する。すなわち、エッジ点86は、自律移動体1の前方に位置して横方向へ延びた帯状のエッジ検出ゾーン80内において、干渉障害物66の両端の位置を示す点とみなすことができる。図6においては、見やすくするために、自機の大きさD2を示す円に対して、エッジ検出ゾーン80の幅を大きく描いているが、実際は、自機の大きさD2に対してエッジ検出ゾーン80の幅が小さいので、2つのエッジ点86を結ぶ直線は、移動目標方向72と略垂直となる。
【0081】
回避行動選択部242が、障害物特定部233によって特定されたエッジ点86を有する干渉障害物66を経路上において回避することが可能か否か判定するために、通過点距離算出部234は、通過点距離を算出する。通過点距離は、干渉障害物66を通路95上で回避する場合に自律移動体1が通る回避通過点と、計画された経路68との間の距離である。すなわち、通過点距離算出部234は、自律移動体1が干渉障害物66を回避するために経路68からどれだけ離れる必要があるのかを算出する。
【0082】
図7を参照して、通過点距離算出部234による回避通過点91と経路68との間の距離を算出する方法を説明する。図7は、回避通過点91と経路68との距離を算出する方法を説明するための図である。
【0083】
まず、図7(a)に示すように、通過点距離算出部234は、回避方向を選択する。通過点距離算出部234は、2つのエッジ点86のうち自己位置64に近いエッジ点86を中心とする仮想円87を設定する。この仮想円87の半径88は、自機の大きさD2の半分に余裕を加算した安全距離に設定される。このように、エッジ点86を仮想円87に設定することにより、自律移動体1を点として扱うことができる。
【0084】
そして、通過点距離算出部234は、自己位置64を通り仮想円87に接する2本の接線891,892を引く。通過点距離算出部234は、2本の接線891,892から一つの接線を選択し、回避方向90に設定する。図7(a)に示す例では、一方の接線891が、2つのエッジ点86に挟まれているので、この一方の接線891方向に自律移動体1が移動すれば、干渉障害物66に干渉する。他方の接線892の方向に移動すれば、干渉障害物66を回避することができる。そこで、通過点距離算出部234は、エッジ点86に挟まれていない方の接線892を回避方向90に設定する。
【0085】
なお、図7(b)に示す例では、2本の接線893,894の間に2つのエッジ点86が位置している。この場合、通過点距離算出部234は、自己位置64に近いエッジ点86側の接線893を回避方向90に設定する。
【0086】
次に、図7(c)に示すように、通過点距離算出部234は、回避方向90を示す接線89と仮想円87との接点を回避時に通る回避通過点91として特定する。そして、通過点距離算出部234は、サブゴール631とサブゴール632とを結ぶ経路68と、回避通過点91との間の最短距離を通過点距離D7として算出する。
【0087】
回避行動選択部242は、通過点距離D7と、直近又は直前のサブゴール631の経路余裕D3とに基づいて、回避行動を選択するか否か判定する。図8を参照して、回避行動を選択するか否か判定する方法について説明する。図8は、回避行動を選択するか否か判定する方法を説明するための図である。
【0088】
図8(a)に示す例のように、通過点距離D7が経路余裕D3以下であれば、干渉障害物66を回避するために、自律移動体1が回避通過点91にずれた場合であっても、既知の障害物領域61と自律移動体1との間に余裕がある。そこで、通過点距離D7が経路余裕D3以下である場合、回避行動選択部242は回避可能と判定する。その結果、回避行動選択部242は、回避行動を選択する。
【0089】
図8(b)に示す例のように、通過点距離D7が経路余裕D3より大きい場合、干渉障害物66を回避するためにずれると、既知の障害物領域61と干渉する可能性があるため、回避行動選択部242は回避不可能と判定する。その結果、回避行動選択部242は、回避行動を選択しない。
【0090】
回避行動選択部242が回避行動を選択しなかった場合、停止行動選択部243が停止行動と退避行動のいずれかを選択するために、エッジ距離算出部235は、2つのエッジ点86の間の距離を算出する。図9を参照して、停止行動と退避行動との選択方法について説明する。図9は、停止行動と回避行動との選択方法を説明するための図である。
【0091】
図9(a)に示されるように、エッジ距離算出部235は、2つのエッジ点86の間の距離を算出し、算出した距離を干渉障害物66の大きさD8とする。このため、エッジ距離算出部235を有する算出部23は、特許請求の範囲に記載の算出手段として機能する。干渉障害物66の大きさD8は、通路面と平行な面において移動目標方向72と略直交する方向の大きさであり、干渉障害物66におけるエッジ検出ゾーン80内の部分の大きさである。
【0092】
停止行動選択部243は、空間サイズD1と、自機の大きさD2と、干渉障害物66の大きさD8とに基づいて、停止行動と退避行動のいずれかを選択する。停止行動は、障害物があるために、移動目標方向72には移動できず、回避行動を行うには道幅の余裕がないが、自律移動体1と干渉障害物66とが端に寄れば、自律移動体1と干渉障害物66とが通路95上においてすれ違うだけの余裕がある場合に選択される。
【0093】
停止行動選択部243は、自機の大きさD2と干渉障害物66の大きさD8との合計値が、空間サイズD1より小さい場合に、通路95上において自律移動体1と干渉障害物66とがすれ違うだけの余裕があると判定する。その結果、停止行動選択部243は、通路95の端によけて停止するために、停止行動を選択する。図9(a)に示される例では、自機の大きさD2と干渉障害物66の大きさD8との合計値が、空間サイズD1より小さいので、停止行動が選択される。停止行動選択部243は、自機の大きさD2と干渉障害物66の大きさD8との合計値が、空間サイズD1以上である場合に、通路95において自律移動体1と干渉障害物66とがすれ違うだけの余裕がないと判定する。その結果、停止行動選択部243は、退避行動を選択する。図9(b)に示される例では、自機の大きさD2と干渉障害物66の大きさD8との合計値が、空間サイズD1以上であるため、退避行動が選択される。
【0094】
なお、停止行動選択部243は、ステレオカメラ14によって撮影された画像を解析して、干渉障害物66が人や他の自律移動体等のように避ける行動をとることができる障害物であるか否かを判定し、この判定結果を加味して、停止行動又は待避行動を選択してもよい。この場合、停止行動選択部243は、自機の大きさD2と干渉障害物66の大きさD8との合計値が空間サイズD1より小さく、且つ、干渉障害物66が避ける行動をとることができる障害物である場合に、停止行動を選択する。また、停止行動選択部243は、自機の大きさD2と干渉障害物66の大きさD8との合計値が空間サイズD1より小さい場合であっても、干渉障害物66が避ける行動をとることができる障害物でない場合は、待避行動を選択する。
【0095】
停止行動が選択された場合に、自ら停止位置を設定するため、電子制御装置20は停止位置設定部29を備える。停止位置設定部29は、通路95上で干渉障害物66とすれ違うために通路95の端によけて停止する停止位置を設定する。この停止位置設定部29は、特許請求の範囲に記載の停止位置設定手段として機能する。
【0096】
図10を参照して、停止位置の設定方法を説明する。図10は、停止位置の設定方法を説明するための図である。停止位置設定部29は、上記で設定された回避方向90を用いて停止位置69を設定する。停止位置設定部29は、回避方向90を示す直線上で、通路95の端に位置し、且つ、既知の障害物領域61から余裕を持った位置に停止位置69を設定する。
【0097】
一方、退避行動が選択された場合、退避行動選択部244は、待機行動と迂回行動とのいずれかを選択する。退避行動選択部244は、待機行動と迂回行動とのうち目的地まで到達するのにかかる時間が早い方の行動を選択する。このため、到達時間算出部236は、待機行動を選択した場合の目的地までの到達時間と、迂回行動を選択した場合の到達時間とを算出する。
【0098】
図2に戻って、電子制御装置20は、到達時間算出部236が待機行動と迂回行動との到達時間を算出するために、退避経路計画部30を備える。退避経路計画部30は、記憶部22に記憶された環境地図と、経路計画部26によって既に計画された経路68等を利用して、退避経路を探索する。退避経路には、待機行動が選択された場合に用いる待機位置までの経路と、迂回行動が選択された場合に用いる迂回路97とが含まれる。退避経路計画部30は、待機位置を設定し、設定した待機位置までの経路を計画する待機位置設定部301と、迂回路97を探索し、迂回路97を通って目的地67まで移動する経路を計画する迂回路探索部302とを備える。待機位置設定部301は、特許請求の範囲に記載の待機位置設定手段として機能し、迂回路探索部302は、探索手段として機能する。
【0099】
図11を参照して、待機位置設定部301による待機位置の設定方法について説明する。図11は、待機位置の設定方法について説明するための図である。まず、待機位置設定部301は、待機位置71を設定可能な経路余裕D3を有する退避路70を特定する。待機位置71を設定可能な退避路70としては、干渉障害物66が存在する通路95と交わる通路がある。
【0100】
通路95において、他の通路と交わる交差点上のサブゴール63では、交差点以外の通路95上のサブゴール63より経路余裕D3が大きい。従って、待機位置設定部301は、例えば、記憶部22に記憶された各サブゴール63の経路余裕D3に基づいて、自己位置64より後方の、好ましくは、自己位置64から最も近い交差点上のサブゴール63を特定する。なお、自己位置64が交差点のサブゴール63上であれば、そのサブゴール63を特定してもよい。また、自己位置64と干渉障害物66との間に交差点上のサブゴール63があり、自己位置64と干渉障害物66との間に余裕がある場合には、そのサブゴール63を特定してもよい。
【0101】
そして、待機位置設定部301は、特定した交差点上のサブゴール63の位置で通路95と交わる通路を、待機位置71を設定する退避路70として特定する。次に、待機位置設定部301は、特定した退避路70上において、通路95の経路72に対して垂直な直線96上に待機位置71を設定する。そして、待機位置設定部301は、待機位置71を一時的な目的地に設定し、自己位置64から待機位置71までの経路計画を行う。なお、待機位置設定部301は、交差点上のサブゴール63に限らず、空間サイズD1が自機の大きさD2と干渉障害物66の大きさD8との合計値以上のサブゴール63を特定し、特定したサブゴール63付近において、最大限に端に寄った位置を待機位置に設定してもよい。
【0102】
迂回路探索部302は、干渉障害物66が存在する通路95を迂回するための迂回路97(図4(d))を探索し、自己位置64から目的地67までの経路を計画する。なお、待機位置設定部301による経路計画と、迂回路探索部302による迂回路97の経路計画とは、環境地図、空間サイズD1、自機の大きさD2等に基づいて、上述した経路計画部26による経路計画と同様なアルゴリズムを用いて行われる。
【0103】
到達時間算出部236は、待機行動を選択した場合の目的地67までの到達時間と、迂回行動を選択した場合の到達時間とを算出する。到達時間算出部236は、待機位置設定部301によって計画された経路と、経路計画部26によって計画された元の経路68とに基づいて待機行動時の到達時間を算出する。待機行動の到達時間として、自己位置64から待機位置71まで移動する時間、待機する時間、及び、待機位置71から再び元の計画された経路68に従って目的地67まで移動する時間の合計値を算出する。
【0104】
また、到達時間算出部236は、迂回路探索部302によって計画された経路に基づいて、迂回行動時の到達時間を算出する。具体的には、到達時間算出部236は、迂回行動の到達時間として、自己位置64から迂回路97を通って目的地67まで移動する時間を算出する。
【0105】
退避行動選択部244は、算出された待機行動と迂回行動の到達時間のうち、到達時間が短い方の行動を選択する。以上、算出部23の算出結果に基づいて、行動選択部24が行動を選択する方法について説明した。次に、移動制御部25が、選択された行動に基づいて、自律移動体1の移動を制御する方法について説明する。
【0106】
移動制御部25は、本実施形態では、仮想ポテンシャル法を用いて、障害物を回避しながら目的地67までの移動を制御する。仮想ポテンシャル法は、サブゴール63に対する仮想的な引力ポテンシャル場と、障害物に対する仮想的な斥力ポテンシャル場とを重ね合わせた仮想的なポテンシャル場を生成し、この仮想的なポテンシャル場で生じる力を移動制御に用いる方法である。移動制御部25は、仮想ポテンシャル法を用いて移動制御を行うために、ベクトル算出部251と、出力変換部252とを備える。
【0107】
ベクトル算出部251は、行動選択部24によって選択された行動に基づいて引力ベクトルを算出する。また、ベクトル算出部251は、自己位置64、自己の移動速度、経路余裕D3、及び障害物情報に基づいて特定される障害物の位置及び移動速度等に基づいて、斥力ベクトルを算出する。そして、ベクトル算出部251は、引力ベクトルと斥力ベクトルの合成ベクトルを算出する。
【0108】
出力変換部252は、ベクトル算出部251によって算出された合成ベクトルを電動モータ15の出力に変換する。出力変換部252は、合成ベクトルのノルムによって示される速度で合成ベクトルの方向へ移動するように、4つの電動モータ15の出力を調整する。
【0109】
通常行動が選択された場合、引力ベクトルは、自己位置64近傍のサブゴール63の位置及び距離に基づいて算出される。例えば、引力ベクトルの方向は、上述した移動目標方向72に設定される。ノルムは、例えば、サブゴール63毎に割り当てられた所定の入力速度に設定される。これにより、通常行動が選択された場合、移動制御部25は、計画された経路68に従うと共に、斥力ベクトルに基づいて障害物を避けながら目的地67に向かって移動するように電動モータ15を制御する。
【0110】
回避行動が選択された場合、引力ベクトルの方向は、回避方向90に設定され、ノルムは、例えば、所定の入力速度に設定される。これにより、回避行動が選択された場合、移動制御部25は、通路95上において、干渉障害物66を回避するように電動モータ15を制御する。
【0111】
停止行動が選択された場合、停止位置69に到達するまで、引力ベクトルの方向は、自己位置64から停止位置69に向かう方向に設定され、ノルムは、自己位置64と停止位置69との間の距離に応じて設定される。図12は、停止位置までの距離と速度との関係を示すグラフである。図12において、横軸が、自己位置64及び停止位置69間の距離を示し、縦軸が、停止行動時の引力ベクトルのノルム、すなわち速度を示す。
【0112】
図12に示すように、引力ベクトルのノルムは、自己位置64と停止位置69との間の距離が抽出範囲以上である場合、所定の入力速度に設定される。なお、移動目標方向72を特定する際に、自己位置64から一定範囲内のサブゴール63を特定したが、この一定範囲を抽出範囲に設定することができる。引力ベクトルのノルムは、自己位置64と停止位置69との間の距離が抽出範囲以下である場合、自己位置64が停止位置69に近づくにつれて小さくなり、自己位置64と停止位置69との間の距離が余裕αまで近づいた位置で0となる。これにより、自律移動体1は、減速しながら停止位置69に近づき、ノルムが0の値になると、停止する。余裕αは、本実施形態では、自機の大きさD2の半分の値、又は、自機の大きさD2の半分の値に任意の余裕を加算した値に設定される。
【0113】
仮想ポテンシャル法では、引力ベクトルと引力ベクトルのノルム(速度)をリミットにした斥力ベクトルとを合成して、合力ベクトルを算出する。このため、ノルムが小さくなるほど、障害物を回避する力が小さくなり、障害物を避けにくくなる。このため、電子制御装置20は、自律移動体1が停止するように移動制御が行われる際に、干渉判定を行う干渉判定部31を備える。
【0114】
図13を参照して、干渉判定部31による干渉判定の方法を説明する。図13は、干渉判定の方法を説明するための図である。干渉判定部31による干渉判定は、上述した干渉距離算出部231によって算出される干渉距離D6を用いて行われる。
【0115】
図13に示すように、干渉距離算出部231は、上記と同様に、干渉ゾーン73を設定する。干渉ゾーン73は、移動目標方向72と平行に延びた帯状の領域であり、移動目標方向72と垂直な幅方向の大きさ74は、自機の大きさD2又は自機の大きさD2に余裕を加えた大きさに設定される。また、干渉ゾーン73は、幅方向の中央に自己位置64が位置するように設定される。なお、移動目標方向72として、自己位置64から停止位置69へ向かう方向(回避方向90)が設定される。
【0116】
そして、干渉距離算出部231は、障害物情報によって特定される障害物点65のうち、自己位置64より前方の干渉ゾーン72内に位置する干渉点75を特定する。図13は、未知の障害物99が干渉ゾーン73内に移動して来た場合を示している。干渉距離算出部231は、特定した干渉点75から自律移動体1までの移動目標方向72に沿った距離102を算出する。干渉点75が複数特定された場合は、それぞれの距離102が算出される。そして、干渉距離算出部231は、算出した距離102のうち最小の距離を干渉距離D6とする。
【0117】
干渉判定部31は、干渉距離算出部231によって算出された干渉距離D6が、停止に要する距離より小さい場合、干渉すると判定する。停止に要する距離は、本実施形態では(現在の速度)×(減速にかかる時間)+(余裕)の式によって推定される。一方、干渉判定部31は、干渉点75が特定されなかった場合、及び、干渉距離D6が停止に要する距離以上である場合には、干渉しないと判定する。
【0118】
干渉判定部31によって干渉すると判定された場合、ベクトル算出部251は、引力ベクトルのノルムを0に設定して、自律移動体1が停止するように制御する。すなわち、移動制御部25は、停止位置69に向かう途中で、干渉判定部31によって干渉すると判定された場合、停止するように制御する。
【0119】
また、移動制御部25は、退避行動が選択された場合も、停止位置に移動してから停止するように制御した後、待機位置71又は迂回路へ退避するように移動を制御する。すなわち、移動制御部25は、退避行動が選択された場合、上述した停止行動を行ってから退避行動を行うように制御する。このため、停止位置設定部29は、退避行動が選択された場合も停止位置69を設定する。
【0120】
退避行動として待機行動が選択された場合、移動制御部25は、停止位置69から待機位置71へ退避してから所定時間待機した後、再び元の通路95に戻るように移動を制御する。そして、移動制御部25は、再び元の経路68に従って移動を制御する。退避行動として迂回行動が選択された場合、移動制御部25は、停止位置69から迂回路に移動するように制御し、迂回路を通って目的地67まで移動するように制御する。
【0121】
引き続いて、電子制御装置20による移動制御の処理手順について説明すると共に、自律移動体1の動作について説明する。まず、図14を参照して、自律移動体による行動選択処理の処理手順を説明する。図14は、行動選択処理の処理手順を示すフローチャートである。この行動選択処理は、自律移動体1が目的地67に向かって自律移動しているときに、所定の周期で実行される。
【0122】
まず、ステップS101では、自己位置64と自己位置64より前方の複数のサブゴール63の位置とに基づいて、移動目標方向72が決定される(図5(a))。なお、これに先立って、環境地図上の自己位置64の推定と、環境地図上の自機周囲の障害物の存在を示す障害物点65の特定が行われる。次に、ステップS102では、移動目標方向72と平行な干渉ゾーン73が設定され、干渉ゾーン73内の干渉点75のうち最も自機に近い最近傍干渉点79と自律移動体1との間の距離、すなわち干渉距離D6が算出される(図5(b)(c))。
【0123】
続くステップS103では、ステップS102で算出された干渉距離D6が閾値以下か否かが判定される。これにより、自律移動体1の前方に干渉障害物66が存在するか否かが判定される。ステップS103において干渉距離D6が閾値より大きい場合、ステップS104へ処理が進む。ステップS104では、通常行動が選択される。通常行動が選択されると、移動制御部25による制御により、自律移動体1は、通路95上を移動目標方向72へ向かって移動する。
【0124】
ステップS103において、干渉距離D6が閾値以下である場合、ステップS105へ処理が進む。ステップS105では、干渉障害物66のエッジ点86が特定される。このエッジ点を特定する処理の処理手順について、図15を参照して説明する。図15は、エッジ点86の特定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0125】
エッジ点の特定処理は、まず、ステップS1051において、干渉点75のうち自律移動体1と干渉する可能性があり、最も近い点である最近傍干渉点79が特定される(図5(c))。次に、ステップS1052では、最近傍干渉点79を含み移動目標方向72に直交する方向に延びたエッジ検出ゾーン80が、設定される(図6(a))。そして、ステップS1053では、エッジ検出ゾーン80に含まれる障害物点82が特定される。すなわち、一纏まりとみなすことができる障害物点82がクラスタリングされる(図6(a))。エッジ検出ゾーン80に含まれると特定された障害物点82の隣の障害物点83が、エッジ検出ゾーン80に含まれない場合、ステップS1054では、移動目標方向72と平行に延びた特異点検出ゾーン84が設定される(図6(b))。
【0126】
続くステップS1055では、エッジ検出ゾーン80と特異点検出ゾーン84とが重なる領域85(図6(b)においてクロスハッチングされた領域)に障害物点65が存在するか否かに基づいて、障害物点83が特異点か否かを判定する。そして、障害物点83が特異点であれば、領域85内に存在する障害物点65も含めてクラスタリングする。そして、ステップS1056では、クラスタリングされた障害物点65のうち、移動目標方向72と略直交する方向に最も離れた2つの障害物点をエッジ点86として特定する(図6(b))。以上の処理により、2つのエッジ点86が特定される。その後、図14のステップS106へ処理が移行する。
【0127】
ステップS106では、干渉障害物66を回避するための回避方向90が選択される(図7(a)(b))。そして、ステップS107では、干渉障害物66を回避する場合に通過する回避通過点91と経路68との間の最短距離である通過点距離D7が算出される(図7(c))。
【0128】
ステップS108では、回避通過点91と経路68との間の通過点距離D7が、経路余裕D3以下か否かが判定される。これにより、通路95上において干渉障害物66を回避できるか否かが判定される。ステップS108において、通過点距離D7が経路余裕D3以下である場合、ステップS109へ処理が進む。ステップS109では、回避行動が選択される。回避行動が選択されると、移動制御部25による制御により、自律移動体1は、通路95上において、干渉障害物66を回避するために、回避方向90へ向かって移動する。
【0129】
ステップS108において、通過点距離D7が経路余裕D3より大きい場合、ステップS110へ処理が進む。ステップS110では、干渉障害物66について、移動目標方向72と略直交する方向の大きさD8が算出される。続くステップS111では、干渉障害物66の大きさD8と自機の大きさD2との合計値が、空間サイズD1より小さいか否かが判定される。これにより、計画された経路を含む通路95上で、干渉障害物66と自律移動体とがすれ違うことができるか否かが判定される。
【0130】
ステップS111において、干渉障害物66の大きさD8と自機の大きさD2との合計値が、空間サイズD1より小さい場合、ステップS112に処理が進む。ステップS112では、停止行動が選択される。ステップS111において、干渉障害物66の大きさD8と自機の大きさD2との合計値が、空間サイズD1以上である場合、干渉障害物66とすれ違うことができないと自律移動体1によって判断され、ステップS113に処理が進む。ステップS113では、退避行動が選択される。
【0131】
次に、図16を参照して、停止行動が選択された場合の移動制御処理の処理手順について説明する。図16は、停止行動時の移動制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0132】
まず、ステップS121では、一時停止するために移動する方向が決定される(図10)。本実施形態では、移動する方向として回避方向90が選択される。次に、ステップS122では、停止位置69が通路95の端に設定される。ステップS123では、停止位置69へ移動してから停止するように移動制御が行われる。この際、干渉判定が実行され、近づいてくる未知の障害物に干渉するおそれが高いと判定されると、停止位置69に到達していなくても停止するように制御される。
【0133】
ステップS124では、停止位置69で所定時間待機するように制御される。その後、ステップS125では、障害物情報に基づいて、干渉障害物66がいなくなったことが確認されると、ステップS126では、元の計画された経路68に基づく移動制御に復帰する。以上の処理により、自律移動体1が通路95の端によけて停止するので、自律移動体1が干渉障害物66に道を譲ることができる。このため、干渉障害物66が人であれば、ストレスなく前進することができる。そして、自律移動体1は、干渉障害物66がいなくなると、元の経路68に従った移動を再開する。
【0134】
次に、図17を参照して、退避行動のうち待機行動と迂回行動とのいずれかの行動を選択する行動選択処理の処理手順を説明する。図17は、待機行動と迂回行動との選択処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0135】
ステップS131では、障害物点65に基づく干渉障害物66の位置と、干渉障害物66の大きさD8を用いて、通過できない通路が特定される。次に、ステップS132では、待機位置71を設定可能な経路余裕D3を有する退避路70が特定される。そして、ステップS133では、退避路70上に待機位置71が設定される。続くステップS134では、自己位置64から待機位置71までの経路計画が行われ、待機行動が選択された場合の目的地までの到達時間が算出される。
【0136】
また、ステップS135では、干渉障害物66が存在する経路を迂回する迂回路97が探索される。次に、ステップS136では、迂回行動が選択された場合の目的地までの到達時間が算出される。続いて、ステップS137では、待機行動は迂回行動より目的地までの到達時間が速いか否かが判断される。
【0137】
ステップS137において、待機行動が迂回行動より到達時間が速い場合は、処理がステップS138へ進む。ステップS138では、待機行動が選択される。ステップS137において、待機行動が迂回行動より到達時間が遅い場合、及び待機行動と迂回行動との到達時間が同じ場合は、処理がステップS139へ進む。ステップS139では、迂回行動が選択される。
【0138】
引き続いて、図18を参照して、退避行動が選択されてから待機行動又は迂回行動を行うまでの自律移動体1の動きについて説明する。図18は、退避行動が選択された場合の動作を示すタイミングチャートである。
【0139】
行動選択部24は、所定の周期で行動を選択する。移動制御部25は、行動選択部24による選択結果、及び、タイミングに基づいて、電動モータ15を制御する。図18に示される例のように、通常行動が選択されていた状態から退避行動が選択されると、移動制御部25は、停止行動を開始するように電動モータ15を制御する。停止位置設定部29によって停止位置69が設定され、停止位置69に向けて減速しながら移動し、停止位置69で停止するように、電動モータ15が制御される。
【0140】
連続して再度、退避行動が選択されると、行動選択部24によって退避経路計画部30に、待機位置までの経路計画及び迂回路97の経路計画が要求される。そして、退避経路計画30によって待機位置までの経路計画及び迂回路の経路計画が行われる。この経路計画が行われている間、行動選択部24によって退避行動が選択され続けていれば、自律移動体1は、停止位置69で停止した状態となるように制御される。例えば、経路計画が行われている間に、人である干渉障害物66が自律移動体1を避けて通過した場合等により、再び元の計画された経路68に従って自律移動体1が移動できる状態になった場合、通常行動が選択される。この場合は、元の経路計画に復帰する。
【0141】
待機位置までの経路計画及び迂回路97の経路計画が、退避経路計画部30によって出力されると、それぞれの目的地67までの到達時間が算出され、算出された到達時間に基づいて、待機行動又は迂回行動が選択される。そして、選択された退避行動が行われる。なお、上述した図17のステップS135において、迂回路97が探索された結果、迂回路が存在しない場合は、ステップS137において待機行動が選択される。また、図17のステップ132において退避路71が決定されなかった場合は、退避路71及び迂回路97が存在しないので、停止行動が選択される。そして、停止後、例えば、自律移動体1が備えるディスプレイにエラー表示が行われるか、又は、エラーが発生した旨の音声が再生される。
【0142】
迂回行動が選択された場合は、計画された迂回路97を通って目的地67まで移動するように電動モータ15が制御される。待機行動が選択された場合は、待機位置71に向けて減速しながら移動し、待機位置71で停止するように電動モータ15が制御される。そして、待機位置71で停止した状態で、所定時間が経過した後、元の通路95に戻って、元の計画された経路に従って移動するように電動モータ15が制御される。
【0143】
本実施形態では、退避行動が1度選択されただけでは退避行動に移行せず、複数回連続して退避行動が選択された場合に、退避行動に移行するように制御が行われる。このため、センサノイズ等によって誤って退避行動が選択された場合に、前進できるにもかかわらず、退避行動が実行されることを防止できる。
【0144】
また、退避行動が選択された場合においても、停止行動を行うことにより、一旦道を譲る行動を行うことができる。そして、停止している間にも行動を選択する処理を行うので、道を譲る行動の間に干渉障害物66の動きを判定し、状況に応じて、元の通路95に戻るか、退避行動を行うか選択することができる。これにより、自律移動体1と対向する人のストレスを軽減でき、自律移動体1は、最小限の時間で目的地に到達することができる。
【0145】
以上説明した本実施形態に係る自律移動体1は、自機の大きさD2と干渉障害物66の大きさD8との合計値が空間サイズD1より小さい場合に、停止行動を選択する。これにより、通路95上において自律移動体1が干渉障害物66とすれ違うだけの余裕がある状況においては、停止行動が選択される。従って、干渉障害物66が人である場合には、自律移動体1が停止した状態で、自律移動体1と人とが通路95上ですれ違うことができる。また、自律移動体1は、自機の大きさD2と干渉障害物66の大きさD8との合計値が空間サイズD1以上である場合に、退避行動を選択する。これにより、通路95上において自律移動体1が干渉障害物66とすれ違うだけの余裕がない状況においては、退避行動が選択される。このため、自律移動体1が停止しても干渉障害物66とすれ違うことができない場合、自律移動体1が退避する。従って、通路95上に干渉障害物1が存在する場合、自律移動体1が状況に応じて適切に停止行動又は退避行動を行うことができる。また、本実施形態では、自律移動体1が、周囲の状況に応じて、回避行動、停止行動、待機行動、迂回行動のいずれが適切か判断することにより、目的地67に速やかに移動することができる。
【0146】
上述した行動の選択を行わずに仮想ポテンシャル法を用いて移動制御を行う場合、干渉障害物66を通路95上で回避できない状況では、干渉障害物66の存在による斥力と目的地67へ向かう引力とがつり合う場合がある。この場合、自律移動体は、干渉障害物66を前にして前後に繰り返して移動する。これに対して、本実施形態に係る自律移動体1は、回避行動と、停止行動、及び退避行動を状況に応じて選択するので、回避行動ができないと判断した場合は、回避行動を行わず、停止行動又は退避行動を行う。従って、仮想ポテンシャル法を用いた移動制御において、自律移動体1が干渉障害物66を前にして前後に繰り返して移動する行動を防止することができる。
【0147】
また、自律移動体1は、障害物が存在する障害物点65のうち自機と干渉する最も近い最近傍干渉点79を特定する。そして、自律移動体1は、障害物点65の中から、最近傍干渉点79を含み移動目標方向72に直交する方向に延びたエッジ検出ゾーン73に含まれる複数の障害物点82を特定する。これにより、自律移動体1は、最近傍干渉点79と一纏まりとみなすことができる障害物点82をクラスタリングすることができる。そして、自律移動体1は、エッジ検出ゾーン73内における一纏まりとみなした障害物について、2つのエッジ点82間の距離を干渉障害物66の大きさD8として算出する。これにより、自機の前方に位置する干渉障害物66のエッジ検出ゾーン73内の部分について、移動目標方向72に略直交する方向の大きさD8を算出することができる。すなわち、移動目標方向72に位置し、自機との間の距離が最も近い干渉障害物66について、大きさD8を算出することができる。
【0148】
上記実施形態において、自機の大きさD2が、自機を内包する又は自機と内接する円の直径により近似され、空間サイズD1が、自機の大きさD2と経路余裕D3とを用いて示される。これにより、自機の大きさD2が、水平方向における自機の最大寸法以上の値を用いて表され、空間サイズD1は、自機の最大寸法以上の値と、自機が幅方向に移動可能な距離を用いて表される。従って、自機が何れの方向を向いているかに関わらず、通路95上において障害物とすれ違うだけの余裕があるか否かを判定することができる。また、空間サイズD1が経路余裕D3を用いて示され、経路余裕D3が値を任意に変更可能なパラメータを用いて示されることにより、自機が移動する環境に応じてパラメータの値を設定することにより、空間サイズD3を環境に応じて定義することができる。
【0149】
また、自律移動体1は、停止行動を選択した場合に、停止位置69を障害物情報に基づいて通路95の端に設定し、停止位置69に移動してから停止する。これにより、自律移動体1は、周囲の状況に応じて、干渉障害物66とすれ違うためによけて停止する停止位置69を自ら設定して移動することができる。従って、干渉障害物66が人である場合に、人に道を譲る行動を行うことができる。また、環境によってセンサノイズが発生した場合に、誤って停止行動を選択するたびに、停止することを防止できる。
【0150】
また、自律移動体1は、待機行動を選択した場合に、退避路70上の待機位置71を自ら設定し、設定した待機位置71に向かって退避する。これにより、自律移動体1と干渉障害物66とが通路95上ですれ違うことができない状況においては、自律移動体1が通路95から退避することにより、干渉障害物66が通路95上を通過可能な状況を作り出すことができる。また、自律移動体1は、迂回行動を選択した場合に、干渉障害物66が存在する通路95を迂回する迂回路97を自ら探索し、探索した迂回路97に向かって退避する。従って、干渉障害物66が通路95上を通過可能な状況を作り出すと共に、自律移動体1は、迂回路97を通って目的地67まで移動することができる。更に、自律移動体1は、停止位置69まで移動して停止してから待機行動又は迂回行動を行うので、干渉障害物66に道を譲ってから、退避することができる。これにより、自律移動体1と対向する人のストレスを軽減することができる。
【0151】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、停止行動が選択されたときに、停止位置69まで移動してから停止することとしたが、その場で停止するように制御してもよい。
【0152】
また、例えば、上記実施形態の自律移動体1は、円柱形状の本体11と本体11下部にオムニホイールが取り付けられたロボットとしたが、本体11形状及び移動手段はこれに限られない。
【0153】
また、上記実施形態では、待機行動が選択された場合、待機位置71で停止した状態で、所定時間経過した後、元の通路95に戻ることとしたが、待機位置71で停止した状態から元の通路95に戻る際のトリガは、これに限られない。例えば、待機位置71で停止した状態で、元の通路95と退避路70とが交差するエリアを監視して、干渉障害物66が移動したことを検出すると、元の通路95に戻るように構成してもよい。
【0154】
また、退避行動中に、障害物情報に基づいて干渉障害物66を監視して、状況に応じて、元の経路計画に従った移動に復帰してもよい。例えば、干渉障害物66が自機の目的地67の方向へ進んでいることが検出された場合は、元の経路計画に従った移動に復帰してもよい。また、干渉障害物66が存在する領域の先に、経路余裕D3が比較的大きいエリアがある場合は、元の経路計画に従った移動に復帰してもよい。また、干渉障害物66が荷物を積んでいる場合に、荷物を下ろすことにより、大きさが小さくなり、自律移動体1が通路95を通過できる状態になった場合は、元の経路計画に従った移動に復帰してもよい。
【0155】
また、上記実施形態では、待機行動と迂回行動のいずれかを選択する際に、待機行動を選択した場合の到達時間と、迂回行動を選択した場合の到達時間を算出し、算出した到達時間に基づいて行動を選択したが、これに限られない。待機行動を選択した場合の移動距離と、迂回行動を選択した場合の移動距離に基づいて、待機行動と迂回行動のいずれかを選択してもよい。この場合、待機行動時に待機する時間をその間に移動できる距離に換算する等して、待機時間を加味して移動距離を算出することが好ましい。
【0156】
また、上記実施形態では、自機を内包する又は自機が内接する円の直径を用いて自機の大きさD2を表したが、これに限られない。例えば、自律移動体1が有する円柱状の本体11の両側面に2本のアームがそれぞれ取り付けられていた場合、自律移動体1の幅方向のサイズを自律移動体の大きさとしてもよい。また、上記実施形態では、空間サイズD1を、自機の大きさD2と経路余裕D3とを用いて表したが、通路95の道幅の大きさを用いて示しても良い。
【0157】
また、上記実施形態では、自機の大きさD2と干渉障害物66の大きさD8と空間サイズD1とに基づいて、停止行動と退避行動とのいずれかを選択することとしたが、干渉障害物66の大きさD8と経路余裕D2とに基づいて、停止行動と退避行動とのいずれかを選択してもよい。この場合、停止行動選択部243は、干渉障害物66の大きさD8が経路余裕D3の2倍の大きさより大きい場合に停止行動を選択し、干渉障害物66の大きさD8が経路余裕D3の2倍の大きさ以下の場合に退避行動を選択する。
【符号の説明】
【0158】
1 自律移動体
12 レーザーレンジファインダ
13 超音波センサ
14 ステレオカメラ
22 記憶部
24 行動選択部
25 移動制御部
27 幅特定部
29 停止位置設定部
65 障害物点
66 干渉障害物
68 経路
69 停止位置
70 退避路
71 待機位置
72 移動目標方向
79 最近傍干渉点
80 エッジ検出ゾーン
86 エッジ点
95 通路
97 迂回路
232 最近傍特定部
233 障害物特定部
234 エッジ距離算出部
302 迂回路探索部
D1 空間サイズ
D2 自機の大きさ
D3 経路余裕
D8 干渉障害物の大きさ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
計画された経路に従って自律的に移動する自律移動体であって、
水平方向の自機の大きさを記憶する記憶手段と、
前記計画された経路が設定され、自機が移動可能な領域である通路の幅方向の大きさを示す通路幅を特定する幅特定手段と、
自機周囲の障害物情報を取得する障害物情報取得手段と、
前記障害物情報取得手段によって取得された障害物情報に基づいて、通路面と平行な面において自機の移動目標方向と略直交する方向について、前記移動目標方向に存在する障害物の大きさを算出する算出手段と、
前記記憶手段によって記憶された自機の大きさ、前記幅特定手段によって特定された前記通路幅、及び前記算出手段によって算出された障害物の大きさに基づいて、停止行動又は退避行動を選択する選択手段と、
前記選択手段によって前記停止行動が選択された場合、自機を停止させるように制御し、前記選択手段によって前記退避行動が選択された場合、自機を退避させるように制御する移動制御手段と、
を備えることを特徴とする自律移動体。
【請求項2】
前記選択手段は、前記自機の大きさと前記障害物の大きさとの合計値が前記通路幅より小さい場合に、前記停止行動を選択し、前記合計値が前記通路幅以上である場合に、前記退避行動を選択することを特徴とする請求項1に記載の自律移動体。
【請求項3】
前記算出手段は、
前記障害物情報に基づいて特定された環境地図上の点であって、自機周囲の障害物の存在を示す点の中から、前記移動目標方向に存在し、自機と最も近い点を特定する最近傍特定手段と、
前記地図上の点の中から、前記最近傍特定手段によって特定された点を含み前記移動目標方向と略直交する方向に延びた帯状領域に含まれる点を特定する障害物特定手段と、を有し、
前記障害物特定手段によって特定された点を用いて、前記障害物の大きさを算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の自律移動体。
【請求項4】
前記算出手段は、前記障害物特定手段によって特定された複数の点のうち、前記移動目標方向と略直交する方向に最も離れた2点間の距離を前記障害物の大きさとして算出することを特徴とする請求項3に記載の自律移動体。
【請求項5】
前記記憶手段は、水平な平面において自機を内包する円の直径を前記自機の大きさとして記憶し、
前記幅特定手段は、前記通路において自機が幅方向に移動可能な距離を示す移動余裕を特定し、該移動余裕と前記自機の大きさとの合計値を前記通路幅として特定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自律移動体。
【請求項6】
前記移動余裕は、値を任意に変更可能なパラメータを用いて表されることを特徴とする請求項5に記載の自律移動体。
【請求項7】
前記障害物情報に基づいて前記通路の端に停止位置を設定する停止位置設定手段を備え、
前記移動制御手段は、前記選択手段によって前記停止行動が選択された場合、前記停止位置設定手段によって設定された停止位置に移動して停止するように制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の自律移動体。
【請求項8】
前記通路と交わる退避路上に待機位置を設定する待機位置設定手段を備え、
前記移動制御手段は、前記選択手段によって前記退避行動が選択された場合に、前記待機位置に向かって退避するように制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の自律移動体。
【請求項9】
前記移動制御手段は、前記待機位置に退避してから所定時間待機した後、再び前記計画された経路に従って移動するように制御することを特徴とする請求項8に記載の自律移動体。
【請求項10】
前記移動目標方向に障害物が存在する通路を迂回する迂回路を探索する探索手段を備え、
前記制御手段は、前記選択手段によって前記退避行動が選択された場合、前記探索手段によって探索された迂回路へ退避するように制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の自律移動体。
【請求項11】
前記制御手段は、前記選択手段によって前記退避行動が選択された場合、前記停止位置設定手段によって設定された停止位置に移動して停止するように制御した後、退避するように制御することを特徴とする請求項7に記載の自律移動体。
【請求項12】
計画された経路に従って自律的に移動する自律移動体であって、
前記計画された経路が設定された通路において自機が幅方向に移動可能な距離を示す移動余裕を特定する幅特定手段と、
自機周囲の障害物情報を取得する障害物情報取得手段と、
前記障害物情報取得手段によって取得された障害物情報に基づいて、通路面と平行な面において自機の移動目標方向と略直交する方向について、前記移動目標方向に存在する障害物の大きさを算出する算出手段と、
前記幅特定手段によって特定された前記移動余裕と、前記算出手段によって算出された障害物の大きさとに基づいて、停止行動又は退避行動を選択する選択手段と、
前記選択手段によって前記停止行動が選択された場合に、自機を停止させるように制御し、前記選択手段によって前記退避行動が選択された場合に、自機を退避させるように制御する移動制御手段と、
を備えることを特徴とする自律移動体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−22467(P2012−22467A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159100(P2010−159100)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト、ロボット搬送システム(サービスロボット分野)、全方向移動自律搬送ロボット開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】