説明

自立型平板瓦の製造方法

【課題】金型構造が簡単になり、前記したようなメンテナンスを省略できる自立型平板瓦の製造方法を提供する。
【解決手段】第1に、2箇所に設けられた成形体2の引掛け凸部33、33の尻側小端面33a、33aを成形体の尻24から外方向に突出させて成形するため、表型4では、尻側端面3を成形するための表型側面板42の成形面42aを、表型主板41面に対して91度〜98度の角度に開いて傾斜させて固定している。さらに、尻側端面3の引掛け凸部33の両側に2箇所、計4箇所に小凸部34を成形するため、表主板41に固定された、尻側端面3を成形するための側面板42の成形面42aに対応した凹形状の小凹部43を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立型平板瓦の製造方法に関するものであって、特に、自立性を向上させた平板瓦に関する。
【背景技術】
【0002】
平板粘土瓦の搬送時の自立性を改良した構造が、特許文献1の提案されている。これには、瓦本体の尻部端部に上下に突出する凸部を成形して、尻部を下にして縦立させ整列させるときその基底幅を拡幅することで、安定させて自立させることができるようにしたものである。
【0003】
また、本発明出願人は、このようは自立型の平板瓦に生じる乾燥時の収縮歪みを研削、修正し、瓦の尻部端面の平面性を改良するようにした平板瓦の製造方法を特許文献2に提案している。この製造方法は、例えば、図4に例示する平板瓦本体1の尻部端面11において、引掛け凸部12の端面に第1小凸部12aを設け、また上辺縁部位に第2小凸部13aを設けて、それら第1小凸部12aと第2小凸部13aの突出高さを研削することにより調整してから、焼成するようにしたものである。
【0004】
【特許文献1】特開平11−36521号公報:各図面
【特許文献2】特開2002−88981号公報:図2など
【0005】
ところで、引掛け凸部の端面に前記のような第1小凸部を設けるには、瓦生地をプレス成形するに当って、尻部端面を成形するための型面に予め相当形状の凹部を設けておき、その凹部に充填された粘土生地が、型はずし後に突出した第1小凸部を形成するよう構成されるのが生産技術上好ましい。このような第1小凸部成形用凹部は、裏面成形用型との境界部分に設定されるので、金型構造が複雑になるうえ、磨耗し易いので補修などメンテナンスに多くの手間と費用がかかるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、金型構造が簡単になり、前記したようなメンテナンスを省略できる自立型平板瓦の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題は、成形、乾燥後に、成形体の尻側端面を部分的に平面研削機で研削する工程を備えた自立型平板瓦の製造方法であって、表型と裏型とからなるプレス成形型により粘土生地から、表面、裏面および裏面方向に突出する引掛け凸部を含む尻側端面を備えた成形体を成形するに際して、尻側端面を成形するための表型側面板の成形面を、表型主板面に対して91度〜98度の角度に開いて傾斜させた表型を用いて、成形体の引掛け凸部の尻側小端面を成形体の尻から外方向に突出させて成形するとともに、引掛け凸部以外の尻側端面に小凸部を成形することを特徴とする本発明の自立型平板瓦の製造方法によって、解決することができる。
また、本発明は、尻側端面を成形するための前記表型側面板の成形面に凹部を設けた表型を用いて、成形体の尻側端面の表側縁部から裏側縁部に向けて高さが低くなる勾配を持った小凸部を形成する前記形態に好ましく具体化される。
【0008】
さらに、本発明は、前記成形体の引掛け凸部の尻側小端面と、小凸部とを平面研削機で研削して、その尻側小端面と小凸部との先端とを結んだ平面と、成形体の主板面とがなす角度が予め定めた所定の角度になるよう調整する前記自立型平板瓦の製造方法として具体化される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自立型平板瓦の製造方法は、このように、成形体の引掛け凸部の尻側小端面を成形体の主板面に対して所定角度に開いて成形することになるので、その引掛け凸部小端面を他の部分に比較して尻から外方向に自ずから突出させることになるから、成形体の尻側端面全体を研削する必要がなく研削工程で研削面積を少なくできる。また同時に、成形体の尻側端面の小凸部を研削することにより、焼成時の自立角度を容易に調整できる利点が得られるとともに、金型構造が簡単になり、磨耗する部分も少なくなるのでメンテナンスも容易になる利点が得られる。よって本発明は、従来の問題点を解消した自立型平板瓦の製造方法として、技術的価値はきわめて大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の自立型平板瓦の製造方法に係る実施形態について、図1〜3,4、5〜7を参照しながら説明する。
先ず、本発明は、以下に詳述する成形体2の成形工程に続く乾燥工程後に、成形体2の尻側端面3を部分的に平面研削機(図示せず)で研削することによって、尻側端面3を下に頭23を上にして安定して自立させて焼成することができる自立型平板瓦の製造方法に関する。そして、成形工程では、表型4と裏型5とからなるプレス成形型により粘土生地から、表面21、裏面22および裏面方向に突出する2箇所の引掛け凸部33を含む尻側端面3を備えた成形体2を成形する点では、従来方法と基本的には同様である。
【0011】
この表型4は、図2に示すように、成形体2の表面21を成形するための表主板41の両側に、尻側端面3を成形するための側面板42と、頭部23を成形するための側面板44とが固定されて構成されている。 同様に、裏型5は、成形体2の裏面22を成形するための裏主板51の両側に、成形体2の両側端面を成形するための側面板52、53が固定されて構成されている。
【0012】
そして、表型4と裏型5とは、上下に組み合せるときに、それぞれの側面板42、44と側面板52、53とが互い違いに組み合されて、その間に成形空間(キャビティ)が形成されるよう配置されていて、図3にしめすように、この成形空間に押し出し機から得られた平板状粘土生地を配置し、この表型4と裏型5とにより圧搾することによって成形体2を得ることができる。
【0013】
なお、実際には、成形体2の表面21および裏面22などに造形されている凹凸形状などを成形するための凹凸型面が、表主板41、側面板42、44および裏主板51、側面板52、53のそれぞれに配設されているのであるが、この図2、3においては、説明を簡便にするため省略されている。
【0014】
そして、本発明の特徴とするところは、第1に、2箇所に設けられた成形体2の引掛け凸部33、33の尻側小端面33a、33aを成形体の頭23から尻24方向に突出させて成形する点にあり、この尻側小端面33a、33aを突出させるために、本発明での表型4は、尻側端面3を成形するための表型側面板42の成形面42aを、表型主板41面に対して91度〜98度の角度に開いて傾斜させた点がその要点となっている。
【0015】
第2に特徴とするところは、引掛け凸部33以外の尻側端面3に小凸部34を成形する点にあり、図1の例では、引掛け凸部33の両側に2箇所、計4箇所に小凸部34を配置しているが、本発明では、これに限定されず、少なくとも1箇所、好ましくは左右に計2箇所配置するのがよい。
このように、成形体2の尻側端面3に小凸部34を成形するには、図5に例示するように、表主板41に固定された、尻側端面3を成形するための側面板42の成形面42aに小凹部43を設けることで達成できる。
【0016】
この場合、前記表型側面板42の成形面42aに小凹部43の凹形状は、図5,6、7に示す通り、成形体の尻側端面3の表側縁部近傍の突出部34aから裏側縁部近傍の平坦部34bに向けて突出高さが小さくなる勾配面を持った小凸部34を形成するように、表主板41の裏面41aとの境界部分に深さが最も深い最凹部43aを設け、成形面42aと面一になる下方の平坦部43bに向けて底面43cが浅くなる凹形状とするのが好ましい。
【0017】
このような金型構造において、表裏型4、5は垂直方向にプレス操作されるので、小凹部43の底面43cの勾配が垂直(表主板41の裏面41aに対して直角)の場合、図6、7に示されるように、小凸部34が突出高さが尻側端面3に対して最大になる。さらに、最凹部43aが深くなるよう設定する(図8に示すように、底面43cの勾配を変化させて最凹部43aを、平坦部43bを基点とした垂直線45(一点鎖線で表示)より深くする)と、底面43cの勾配は表主板41の裏面41aに対して直角以下の角度となるので、型はずし時の型の動きからみると、下方の平坦部43bが成形された小凸部34と干渉して押し潰すように作用すると考えられた。
【0018】
しかし、試験の結果、最凹部43aを平坦部43bを基点とした前記垂直線45より0.8mm深く設定しても支障がないことが分った。つまり、凹部43により成形される小凸部34は、型はずし時の型動作から想定される高さより高く成形され得るのである。その理由は、成形直後の成形体は、押し潰されてもその形状はある程度復元するという相応の粘弾性の性質を持っているからと思われる。
【0019】
かくして、本発明の自立型平板瓦の製造方法では、成形工程で得られる成形体2は、表型側面板42の成形面42aを下方に所定の傾斜角度で開くことにより、引掛け凸部33の尻側小端面33aを成形体の尻から外方向に突出させた状態で成形される。同時に、表型側面板42の成形面42aに設けた小凹部43によって、尻側端面3に前記形状の小凸部34が成形されるのである。この小凸部34の高さが、予想より0.8mmだけ高く成形できることも分った。
【0020】
このように本発明によれば、表型側面板42の成形面42aに傾斜角度を与えることで引掛け凸部33の尻側小端面33aを突出させることができるので、型の方に突出部成形用凹部を省略できるから、金型構造が簡単になり、磨耗箇所も少なくて済むようになり、金型の製作コストやメンテナンスコストも低減できるという利点が得られる。
【0021】
なお、本発明では、表型側面板42の成形面42aの前記した傾斜角度を91〜98度としたのは、91度未満では、尻側小端面33a、33aの突出高さが少ないので、成形誤差以下となり、平面研削機による研削効率の向上に寄与しないから好ましくないからであるが、93度以上の場合がその効果が十分に発揮できるので、より好ましい。
また、98度超えの場合は、尻側小端面33a、33aの突出高さが過大となり、平面研削機による研削効率を低下させるからである。
【0022】
こうようにして得た成形体2を乾燥した後に、成形体2の2箇所の引掛け凸部33の尻側小端面33aと、複数個の小凸部34との突出面を平面研削機で研削し、その引掛け凸部の尻側小端面33aと小凸部34との研削面とを結んだ平面と、成形体2本体とがなす角度が予め定めた所定の角度、例えば90±3度の範囲内の角度になるよう調整する工程を含む自立型平板瓦の製造方法が実施できるのである。かくして、本発明によれば、焼成時に成形体を焼成台車上に自立整列させるときに、最も安定した自立角度を選択することができる利点も得られるのである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明により得られる瓦成形体を説明するための要部斜視図。
【図2】本発明の金型を説明するため、開放した表型、裏形の状態を示す要部斜視図。
【図3】本発明の金型の動きを説明するため、表型、裏形の位置関係を示す側面図。
【図4】従来の瓦成形体を説明するための要部斜視図。
【図5】本発明の表型側の小凹部を示す、斜め下方から仰ぎ見た要部斜視図。
【図6】本発明の成形体の引掛け凸部尻側小端面と、小凸部とを同一面上に表現し表型、裏形の位置関係を概念的に示す側断面図。
【図7】本発明の成形体の小凸部を説明するための要部斜視図。
【図8】図6の変形例を説明するための要部拡大断面図。
【符号の説明】
【0024】
2:成形体、21:表面、22:裏面、23:頭
3:尻側端面、33:引掛け凸部、33a:尻側小端面、34:小凸部、34a:突出部、34b:平坦部
4:表型、41:表主板、41a:裏面、42:側面板、42a:成形面、43:小凹部、43a:最凹部、43b:平坦部、43c:底面、44:側面板、45:垂直線
5:裏型、51:裏主板、52:側面板、53:側面板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形、乾燥後に、成形体の尻側端面を部分的に平面研削機で研削する工程を備えた自立型平板瓦の製造方法であって、表型と裏型とからなるプレス成形型により粘土生地から、表面、裏面および裏面方向に突出する引掛け凸部を含む尻側端面を備えた成形体を成形するに際して、尻側端面を成形するための表型側面板の成形面を、表型主板面に対して91度〜98度の角度に開いて傾斜させた表型を用いて、成形体の引掛け凸部の尻側小端面を成形体の尻から外方向に突出させて成形するとともに、引掛け凸部以外の尻側端面に小凸部を成形することを特徴とする自立型平板瓦の製造方法。
【請求項2】
尻側端面を成形するための前記表型側面板の成形面に凹部を設けた表型を用いて、成形体の尻側端面の表側縁部から裏側縁部に向けて高さが低くなる勾配を持った小凸部を形成する請求項1に記載の自立型平板瓦の製造方法。
【請求項3】
前記成形体の引掛け凸部の尻側小端面と、小凸部とを平面研削機で研削して、その尻側小端面と小凸部との先端とを結んだ平面と、成形体の主板面とがなす角度が予め定めた所定の角度になるよう調整する請求項2に記載の自立型平板瓦の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−96135(P2009−96135A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272100(P2007−272100)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(392005470)新東株式会社 (15)
【Fターム(参考)】