説明

自立電源装置

【課題】周波数変動がなく、容易にディーゼル発電機の起動停止が可能で、軽負荷運転時の運転制限の影響が少ない自立電源装置を得る。
【解決手段】自然エネルギーを利用した分散電源1及びディーゼル発電機5を備え商用電源から切り離された自立電源装置であって、蓄電装置4に直流側が接続されたDC/AC変換器12は常時自立運転し、上記ディーゼル発電機はAC/DC変換器11を介して上記蓄電装置に接続され、制御装置8からディーゼル発電機には起動・停止指令と発電機が出力するべき電力指令を送出することで出力端の周波数変動がなく、ディーゼル発電機の容易な運転を可能とする自立電源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、離島や船舶用電源のように商用電源から切り離された電源において太陽光発電や風力発電のような自然エネルギーを利用した分散電源が接続される自立電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
離島や船舶用電源のように商用電源から切り離された自立電源装置においては、連続運転が必要であることから燃費を考慮してディーゼルエンジンなどの内燃機関を利用した発電機を使用している。
【0003】
近年、燃料の削減とCO2削減を目的に、太陽光発電や風力発電のような自然エネルギーを利用した分散電源が発電機に接続されるケースが増えており、これら分散電源を使用した電源装置の安定運転技術が重要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−27797号公報(図1及びその説明)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「太陽光発電システムの設計と施工」(Page41、株式会社オーム社、太陽光発電懇話会)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽光発電装置の基本構成は、「太陽光発電システムの設計と施工」(Page41、株式会社オーム社、太陽光発電懇話会)にも記載されているが、図9に示すように太陽光パネル1を直流として、DCをACに変換する変換器DC/ACとリアクトル20を内蔵した太陽光パワーコンディショナ(以下「パワコン」と略記する)2から成り立っている。
【0007】
太陽光パワコンは、通常の運転として系統電源を基準として運転する連系運転モードと自立運転モードを有している。
【0008】
通常の運転モードである連系運転モードでは、太陽光パワコン2は系統電圧を常に監視しており出力を増加させたい場合には、太陽光パワコン2の内の素子ゲートの点弧を従前よりも早めに動作させ、結果として、ベクトル図を図10に示すように、太陽光パワコン2の出力の位相を系統電圧より進みとなるよう動作する。
【0009】
結果として、連系運転モードで太陽光パワコンは、太陽光パネルのエネルギーを系統に対して電流源として流し込むことができる。
【0010】
自立運転モードは、太陽光パワコンが基準となり負荷への給電を行うものである。
【0011】
従来の商用電源から自立した自立電源装置では、図11に示すように構成されており、ディーゼル発電機を基準の電圧として、太陽光発電は母線電圧に太陽光パワコンの交流電圧を常時同期させる連系運転を行っており、太陽光パネルの発電kWを電流源として、母線に流し込む。
【0012】
この電源装置において、負荷の消費電力と、太陽光パネル1と太陽光パワコン2から交際される太陽光発電およびディーゼル発電機5の発生電力は常に一致させる必要がある。
【0013】
太陽光発電の電力比率を高めようとすると、これが供給電力の変動分要素となり、負荷が必要な需供関係が崩れ、発電機の周波数が増減となり最悪は装置停止に至る。
【0014】
このため、図12に示すように二次蓄電池などのエネルギー蓄積要素を持つDC/AC変換器に、日中の太陽光発電の余剰分を二次電池に充電し、夜間等の太陽光発電が出来ない時間に放電する構成を組む必要がある。
【0015】
この構成の場合、ディーゼル発電機の最大容量は太陽光発電停止と二次電池停止時を考慮した負荷容量以上の選定が必要である。
【0016】
また、一方ではディーゼル発電機は定格の50%程度以下の軽負荷で運転すると燃料噴射圧力が低くなり燃料が上手く燃焼せず、排気管からオイルが滴ることや、黒煙が多量に発生し排気管からオイルが滴るような状況において、突然高負荷で運転を行うと内部機構が故障することがありため、ディーゼルエンジンを選定では、常に全負荷に近い運転が出来るよう、余裕を持たせ過ぎないよう小さ目の選定が必要である。
【0017】
このように、ディーゼル発電機は(1)50%等の軽負荷での運転禁止制限があり、需給制御装置が煩雑である。また、(2)出力端における基準電圧であることから負荷給電停止できない。(3)ディーゼル発電機は回転機械であることから軸ベアリングを持ち、法規で定めた定期点検が必要でありメンテナンス時には負荷への給電も停止する必要といった問題があった。
【0018】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、周波数変動がなく、容易にディーゼル発電機の起動停止が可能で、軽負荷運転時の運転制限の影響が少ない自立電源装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明に係る自立電源装置は、自然エネルギーを利用した分散電源及びディーゼル発電機を備え商用電源から切り離された自立電源装置であって、蓄電装置に直流側が接続されたDC/AC変換器は常時自立運転し、上記ディーゼル発電機はAC/DC変換器を介して上記蓄電装置に接続され、制御装置からディーゼル発電機には起動・停止指令と発電機が出力するべき電力指令を送出することで出力端の周波数変動がなく、ディーゼル発電機の容易な運転を可能とするものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明は、自然エネルギーを利用した分散電源及びディーゼル発電機を備え商用電源から切り離された自立電源装置であって、蓄電装置に直流側が接続されたDC/AC変換器は常時自立運転し、上記ディーゼル発電機はAC/DC変換器を介して上記蓄電装置に接続され、制御装置からディーゼル発電機には起動・停止指令と発電機が出力するべき電力指令を送出することで出力端の周波数変動がなく、ディーゼル発電機の容易な運転を可能とするので、母線の電圧と周波数はディーゼル発電機のような変動は無く、負荷が軽い状況での運転も可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1を示す図で、構成の事例を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態2を示す図で、構成の事例を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態3を示す図で、構成の事例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態3を示す図で、2次電池の直流電圧を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態4を示す図で、構成の事例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態4を示す図で、ディーゼル発電機とDC/AC変換器の電圧垂下特性の例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態5を示す図で、構成の事例を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態5を示す図で、ディーゼル発電機とDC/AC変換器と太陽光パワコンの電圧垂下特性の例を示す図である。
【図9】太陽光パワコンの連系運転原理を示す図である。
【図10】連系運転時のベクトル図を示す図である。
【図11】従来の構成を示す図である。
【図12】従来の従来の二次電池を持つ構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図3に基づいて説明する。図3において,5はディーゼル発電機,1は太陽光発電を構成する太陽光パネル、2は同じく太陽光パネルの直流(DC)を交流(AC)に変換する太陽光パワーコンディショナ(以下「パワコン」と略記する)である。
【0023】
11はAC/DC変換器、12はDC/AC変換器、4は二次電池、6は負荷、14〜16は電力センサ、13は二次電池の充電状態を管理する充電状態監視センサ制御装置である。充電状態監視センサ13は二次電池の電圧と二次電池に流れる電池電流、温度等の情報を基にして、充電の状態を把握するものである。
【0024】
なお図面上、ディーゼル発電機5は、発電機のインピ−ダンスを考慮して、電圧源である交流電源と内部リアクタンスで表現する。
【0025】
次に動作について説明する。
【0026】
まず、DC/AC変換器12は、直流電源である二次電池4を基に交流電圧を出力母線7に出力する。太陽光パワコン2は、母線電圧を基準としてパワコンの主回路を制御し、連系運転を行う。太陽光パワコン2は太陽光パネル1のエネルギーを電流源として、出力母線7に電力を供給し、出力母線7に接続される負荷6が需用として電力を消費する。
【0027】
ディーゼル発電機5は、AC/DC変換器11の交流側に接続される。AC/DC変換器11は、制御装置8からの電力指令に従って発電機の交流を直流に変換し、二次電池4に充電を行う。
【0028】
充電状態監視センサ13は、二次電池4の充電状態を管理する制御装置であり、14は負荷への電力を計測する電力センサ、15は太陽光発電の電力を測定する電力センサ、16は二次電池と出力母線間の電力を測定する電力センサである。
【0029】
制御装置8は、電力センサ14〜16の電力測定値と充電状態監視センサ13の状態を基にディーゼル発電機5へ電力指令と起動停止の指令を送る。
【0030】
ここで、自立電源装置内の電力需給を考えると、需要側は負荷6への電力であり電力センサ14の値、供給側は太陽光発電の電力とディーゼル発電機・二次電池の電力になる。
【0031】
DC/AC変換器12は、自らが基準周波数に基づき電圧を出力するため変動することはなく、(1)太陽光発電に比べ、負荷電力が大きければ二次電池から放電し二次電池4
の電圧が下がる方向、(2)太陽光発電に比べ、負荷電力が小さければ二次電池へ充電し二次電池4の電圧が上がる方向に動作する。
【0032】
この充放電電力は、自立電源装置内の需要電力と供給電力の関係で自動的に決まる。
【0033】
二次電池4は電池として使用可能範囲を持っており、制御装置8は二次電池4の充電状態が閾値以下になった場合は、ディーゼル発電機5を起動し制御装置8からの電力指令により運転をする。逆に充電状態が閾値以上になった場合は、ディゼ−ル発電機5を停止して二次電池として使用可能範囲な範囲にする。
【0034】
ディーゼル発電機5は、二次電池4の充電状態が閾値以下になったら定格容量で充電ができ先に述べたようなディーゼル機関が持つ最低運転容量以上での運転を気にする必要が無い。
【0035】
また、ディーゼル発電機5を停止しても自立電源装置としても負荷には影響せずに運転が可能である。このため、回転機器に特有の定期的なベアリング点検も負荷への給電を継続したまま行うことも可能な効果がある。
【0036】
出力母線の電圧は、自立運転をしているAC/DC変換器12が支配するため、出力周波数は50Hz、60Hz、400Hzのように一定であり、発電機のように変動することはなく、電圧も変動しない。
本実施の形態係る自立電源装置は、ディーゼル発電機にAC/DC変換器(整流器)を設け蓄電池を充電し、蓄電池を基にDC/AC変換器(インバータ)を用いて交流に変換し負荷に供給するものである。
ディーゼル発電機は常に一定負荷での運転が可能となり効率のよい運転が可能で、蓄電池の状態による起動停止が可能であり、満充電になった場合は停止しても負荷には影響しない。
【0037】
図1では太陽光発電として、太陽光パネル1と太陽光パワコン2で記載したが、風力発電のような自然エネルギーを利用した分散電源でも同様の効果が得られる。
【0038】
また、4を二次電池として説明したが、エネルギー蓄積要素であればよく、代わりにスーパキャパシタ(電気二重層コンデンサ)を使用しても同様の効果を得ることができる。
【0039】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、ディーゼル発電機は起動・停止指令と電力指令値を受けるようにしていたが、本実施の形態2では、初期値としてディーゼル発電機のエンジンとして最も効率が良い出力に設定し、運転・停止させる。このため、ディーゼル発電機の燃費の向上を図ることができ経済的に優れた装置を得ることができる。
【0040】
この場合、図2に例示のようにディーゼルエンジンは一定出力で運転することができるため、出力変化に伴う耳障りな騒音の変化についても削減する効果がある。
【0041】
実施の形態3.
上記実施の形態1では、AC/DC変換器11はディーゼル発電機5から二次電池4への充電方向のみとしたが、本実施の形態3では、AC/DC変換器11の制御として逆方向である二次電池4からディーゼル発電機5への回生機能を持たせ、図3に示すような負荷側の不平衡電流に起因する二次電池の交流リップル電圧(自立電源出力周波数の2倍)に対して、リップル電圧が高いポイントに対してはディーゼル発電機5へ回生、リップル電圧が低いポイントに対してはディーゼル発電機からAC/DC変換器へ流れる制御を行
う。
【0042】
これにより、ディーゼル発電機5の周波数は、基本周波数に自立電源出力周波数の2倍のリップルを持ち運転することになるが、二次電池としてはリップル電圧の大きさが低減されることから二次電池の寿命低下を避け、二次電池の寿命を延ばす効果がある。
【0043】
実施の形態4.
上記実施の形態1では、ディーゼル発電機5は二次電池4への充電の機能のみであったが、本実施の形態4では、図5に示すようにサーキットブレーカ17を設ける。
【0044】
図6に示すようにディーゼル発電機5とDC/AC変換器12に出力電流に対する電圧垂下特性を持たせ、かつDC/AC変換器12の制御として、系統周波数と自らの発生周波数との差を補正させる機能を設けることで、ディーゼル発電機5とDC/AC変換器12を並列運転可能とすることができる。
【0045】
この方式により、出力端5の電圧はDC/AC変換器の電圧となるが、発電機とDC/AC変換器が電力を分担することになり、AC/DC変換器11が故障した場合においても負荷への供給が可能であり、装置の信頼性を向上させる効果がある。
【0046】
実施の形態5.
上記実施の形態4で、ディーゼル発電機5とDC/AC変換器11は自立モードで並列運転するが、図7,図8に例示のように、太陽光パワコン2についても自立モードでの垂下特性を持たせ、かつ太陽光パワコン2の制御として、系統周波数と自らの発生周波数との差を補正させる機能を設けることで、ディーゼル発電機5及びDC/AC変換器12と太陽光パワコン2を並列運転可能とすることで、需要と供給の制御が不要となり、制御装置の処理を簡略化できる効果がある。
【0047】
なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
【符号の説明】
【0048】
1 太陽光パネル(分散電源)、
2 太陽光パワコン(太陽光パワーコンディショナ)、
4 二次電池(蓄電装置)、
5 ディーゼル発電機、
6 負荷、
7 出力母線、
8 制御装置、
11 AC/DC変換器、
12 DC/AC変換器、
13 充電状態監視装置、
14 電力センサ、
15 電力センサ、
16 電力センサ、
17 サーキットブレーカ、
19 トランス、
20 リアクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギーを利用した分散電源及びディーゼル発電機を備え商用電源から切り離された自立電源装置であって、蓄電装置に直流側が接続されたDC/AC変換器は常時自立運転し、上記ディーゼル発電機はAC/DC変換器を介して上記蓄電装置に接続され、制御装置からディーゼル発電機には起動・停止指令と発電機が出力するべき電力指令を送出することで出力端の周波数変動がなく、ディーゼル発電機の容易な運転を可能とする自立電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自立電源装置において、ディーゼル発電機を効率のよい出力電力で運転し、上記制御装置からディーゼル発電機に起動・停止指令を与えることでディーゼル発電機の効率を向上させること特徴とする自立電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自立電源装置において、上記AC/DC変換器を上記制御装置から制御して上記蓄電装置から上記ディーゼル発電機への回生機能を持たせ、負荷側の不平衡電流に起因する上記蓄電装置の交流リップル電圧に対して、リップル電圧が高いポイントに対しては上記ディーゼル発電機へ回生し、リップル電圧が低いポイントに対しては上記ディーゼル発電機から上記AC/DC変換器へ流れる制御を行うよう二次電池電圧の交流リップル電圧のエネルギーを上記ディーゼル発電機の回転エネルギーとして吸収させ、上記蓄電装置の交流リップル電圧を低減させることを特徴とする自立電源装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自立電源装置において、上記ディーゼル発電機から負荷に対してサーキットブレーカを設け上記ディーゼル発電機から負荷端に給電し、かつ、上記ディーゼル発電機と上記DC/AC変換器とに出力電流に対する電圧垂下特性を持たせ、かつ上記制御装置から制御して上記DC/AC変換器に、系統周波数と自らの発生周波数との差を補正させる機能を設けることで、上記ディーゼル発電機と上記DC/AC変換器を並列運転可能とすることができることを特徴とする自立電源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の自立電源装置において、上記ディーゼル発電機から負荷に対してサーキットブレーカを設け上記ディーゼル発電機から負荷端に給電し、かつ、上記ディーゼル発電機と上記DC/AC変換器と太陽光パワーコンディショナとに出力電流に対する電圧垂下特性を持たせ、かつ上記制御装置から制御して上記DC/AC変換器と上記太陽光パワコンとに、系統周波数と自らの発生周波数との差を補正させる機能を設けることで、上記ディーゼル発電機と上記DC/AC変換器と上記太陽光パワコンを並列運転可能とすることができることを特徴とする自立電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−13176(P2013−13176A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142653(P2011−142653)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】