説明

自走式クリーナ

【課題】 床への設置面積が小さく容易に小回りを行い、また、全体的な重量バランスがよく安定性に優れ、しかも、狭い隙間を確実に掃除する。
【解決手段】 自走クリーナ1の底面に第1の吸引口6を形成し、この吸引口6の長手方向側面に沿って案内部10を設け、この案内部と第1の吸引口との間に連通部12を設ける。案内部内に管体11の摺動部13を摺動自在に配置し、この摺動部の先端に第2の吸引口14aを設けたノズル部14を設ける。摺動部の後端部側を閉塞し、その後端部から延長部材15を延出させ、この延長部材にラックギアを形成する。また、摺動部の後端部側における第1の吸引口側には開口部13aを設ける。そして、モータ16の回転を延長部材に伝え、延長部材を押し出したときはノズル部を自走クリーナから突出させて狭い隙間の掃除を行い、また、延長部材を引き上げたときにはノズル部を自走クリーナ内に収納する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自走しつつ吸引口から塵を吸引して床面の掃除を行う自走式クリーナに関する。
【0002】
【従来の技術】特開平7−319542号公報に記載の自走式掃除機は、走行部、車体部、作業部からなり、走行部は2つの駆動輪を駆動輪駆動モータで駆動して走行する。車体部は走行部に対して回転可能であり、壁や障害物を検知するセンサや距離を計測するセンサを設けている。作業部は細長い形状の吸引ノズルを車体部後面に対して突出させて、左右に移動可能になっている。また、吸引ノズルを車体部後面に対して平行にして、左右に移動可能になっている。そして、この吸引ノズルを左右に移動させることによって、狭い隙間や部屋の隅や角などを掃除できるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このように作業部を構成する吸引ノズルを常時突出した状態にしたのでは、掃除機全体として床への設置面積が大きくなって小回りができないという問題があった。また、吸引ノズルのために全体的な重量バランスが悪くなり安定性が悪いという問題があった。そこで、本発明は、床への設置面積を小さくできて容易に小回りができ、また、全体的な重量バランスがよくて安定性に優れ、しかも、狭い隙間や部屋の隅や角などを確実に掃除することができる自走式クリーナを提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、本体底部に進行方向とは交叉する方向に長尺な第1の吸引口を設け、この第1の吸引口から塵を吸引して床面の掃除を行う自走式クリーナにおいて、先端部の側面に第2の吸引口を形成した管体と、第1の吸引口の長手方向側面に沿って配置され、管体を摺動自在に案内する案内部と、この案内部と第1の吸引口とを連通する連通部と、管体の先端部を本体から外部に突出させる往動作及び管体の先端部を本体内に収納させる復動作を行う駆動手段と、管体の側面に形成され、管体の往動作時に連通部に連通する開口部とを設け、管体の往動作時に第2の吸引口から開口部、連通部を経由して第1の吸引口に塵の吸引を行わせることにある。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)図1、図2及び図3に示すように、自走クリーナ1は、平面投影した場合に略円形となる構成になっている。そして、この自走クリーナ1は、略円形の中心線近傍の左右に車輪2a,2bを回転自在に配置し、この車輪2a,2bをモータ3a,3bによって減速機4a,4bを介してそれぞれ個々に駆動するようになっている。なお、自走クリーナ1の平面投影した場合の形状としては四角形であっても、多角形であってもよい。
【0006】前記自走クリーナ1は、後方中央部に向きが自在に変更できる旋回輪5を設け、前記車輪2a,2bとこの旋回輪5とで姿勢を保つようにしている。また、図示はしないが、前記車輪2a,2bには回転数をモニタするエンコーダが取り付けられ、クリーナの外周には周囲の障害物を探知する超音波センサ等の複数のセンサが例えば等間隔に配置されている。そして、この自走クリーナ1は、エンコーダと各センサからの情報を処理し、決まったアルゴリズムに従って走行するように前記各モータ3a,3bを制御するようになっている。
【0007】前記自走クリーナ1は、底面における前後の中央よりも若干前方に位置して、左右に長尺な塵の第1の吸引口6を形成し、また、内部に集塵室7、フィルタ8、ファンモータ9を収納し、ファンモータ9の動作によって前記第1の吸引口6から塵を吸込んで集塵室7に集め、空気のみをフィルタ8及びファンモータ9を経由して排出するようになっている。
【0008】前記第1の吸引口6の長手方向側面に沿って円管状の案内部10を設け、この案内部10と第1の吸引口6との間にはこれらを連通する連通部12が、クリーナ1の前進方向(図中矢印方向)に向かって左側に偏った位置に設けられている。
【0009】前記案内部10内に管体11の中央部を構成する円管状の摺動部13を摺動自在に配置している。前記管体11は、前進方向に向かって左側の先端部を合成ゴムなどの可撓性のチューブ状部材からなるノズル部14で構成している。そして、前記ノズル部14の床面の面した側面に細長い第2の吸引口14aを設けている。前記摺動部13とノズル部14とは連通している。なお、前記ノズル部14の先端は開放していても閉塞していてもよい。
【0010】前記管体11は、後端部を四角形状の延長部材15で構成している。すなわち、前記摺動部13の後端部側は閉塞しており、その閉塞部から前記延長部材15を延出させている。前記延長部材15における前記第1の吸引口6側とは反対側の側面15aにはラックギアを形成している。前記摺動部13の後端部側における前記第1の吸引口6側には開口部13aを設けている。
【0011】前記案内部10は自走クリーナ1の底部における左右の略中央部に、前進方向に向かって左側が低くなるように斜めに配置され、管体11の摺動部13を収納するとともに管体11のノズル部14を自走クリーナ1の底部左側に延出している。また、前記案内部10は管体11の延長部材15を自走クリーナ1の底部右側に延出している。このとき、前記案内部10は前記延長部材15と同一形状の孔を介して延長部材15を延出させ、これにより、管体11が案内部10内で回転するのを防止している。
【0012】前記自走クリーナ1の底部右側には、前記第1の吸引口6とは反対側に位置してモータ16を設け、このモータ16の回転軸にピニオンギア17を取り付けている。前記ピニオンギア17はクラウンギア18に歯合している。前記クラウンギア18には歯車19が一体に形成され、この歯車19に前記延長部材15に形成されたラックギアが歯合している。
【0013】従って、モータ16の回転により、ピニオンギア17、クラウンギア18及び歯車19が回転し、これにより延長部材15が自走クリーナ1の左右方向に移動し、案内部10に沿って摺動部13が摺動するようになっている。すなわち、前記モータ16、ピニオンギア17、クラウンギア18及び歯車19は前記管体11を往動作及び復動作する駆動手段を構成している。
【0014】通常は、図3に示すように、案内部10に摺動部13全体が収納され、ノズル部14が自走クリーナ1の底部に収まっているが、モータ16の一方向の回転により、摺動部13が案内部10から押し出され、ノズル部14が自走クリーナ1の左端から床面に向かって突出し、最終的に、図4に示すように、摺動部13の開口部13aが連通部12に重なった位置でモータ16が停止するようになっている。
【0015】この自律走行クリーナ1は、エンコーダとセンサからの情報を処理し、進行方向の障害物を回避しながら自律走行し、ファンモータ9の回転により第1の吸引口6から塵を吸込んで集塵室7に集め、空気のみをフィルタ8及びファンモータ9を経由して排出することで床面を掃除する。このとき、管体11の摺動部13が案内部10に収納され、摺動部13の側面によって連通部12が略塞がれるようになるので、ファンモータ9の回転による吸込みがノズル部14に影響を与えることはない。すなわち、ノズル部14に負圧が生じることはない。
【0016】また、狭い隙間や部屋の隅や角などを掃除するときには、自律走行クリーナ1は、モータ16を一方向に回転し延長部材15をギアにより押し出す。これにより、案内部10から摺動部13が押し出され、開口部13aが連通部12に重なった位置でモータ16が停止する。このときノズル部14は狭い隙間や部屋の隅や角などに配置される。しかも、摺動部13が斜め下に押し出されるので、ノズル部14は床面に極めて近い位置で停止する。
【0017】この状態でファンモータ9が回転すると、第1の吸引口6が負圧になり、さらに、連通部12、開口部13a、摺動部13を経由してノズル部14も負圧状態となり、このノズル部14の第2の吸引口14aから塵を確実に吸込み、摺動部13、開口部13a、連通部12、第1の吸引口6を経由して集塵室7に集める。このようにして、突出したノズル部14によって狭い隙間や部屋の隅や角などが掃除できる。また、ノズル部14は合成ゴムなどの可撓性のチューブ状部材からなるので、走行中に振動やぶれが生じてもノズル部14はそれを吸収することができる。
【0018】狭い隙間や部屋の隅や角などの掃除が終了すると、モータ16が今度は他方向に回転し、延長部材15をギアにより引き上げる。これにより、摺動部13が案内部10内に引き戻され、ノズル部14が自律走行クリーナ1の底部に収納される。
【0019】このように、ノズル部14は使用しないときには自律走行クリーナ1の底部に収納されるので、自律走行クリーナ1が移動するようなときにノズル部14が邪魔になることはない。すなわち、狭い隙間や部屋の隅や角などを掃除するためのノズル部14を備えているにも係わらず自律走行クリーナ1の床面に対する設置面積を小さくすることができ、従って、部屋の隅や角などでも容易に小回りすることができる。また、ノズル部14を自律走行クリーナ1の底部に収納した状態では全体的な重量バランスがとれ、従って、自律走行クリーナ1が移動するときの安定性に優れている。なお、この実施の形態ではピニオンギア17とクラウンギア18とで軸の向きを変更したが、傘歯車やウォームギア等を使用してもよい。また、モータ16の回転軸とピニオンギア17との間に減速機を介在させてもよい。
【0020】(第2の実施の形態)なお、前述した実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。これは、図5に示すように、モータ16の配置する位置を変えたもので、延長部材を、ラックギアのない延長部材151とし、モータ16をこの延長部材151の上方に立てて配置している。前記モータ16の回転軸にプーリ20を取付け、無端ベルト21をこのプーリ20ともう一つのプーリ22との間に掛け渡し、前記無端ベルト21の一部を前記延長部材151に固定している。
【0021】この構成においても、モータ16が一方向に回転すると、プーリ20及び無端ベルト21が回転し、延長部材151が無端ベルト21により押し出される。これにより、案内部10から摺動部13が押し出され、開口部13aが連通部12に重なった位置でモータ16が停止する。また、モータ16が他方向に回転すると、プーリ20及び無端ベルト21が逆方向に回転し、延長部材151が無端ベルト21により引き上げられる。これにより、摺動部13が案内部10内に引き戻され、ノズル部14が自律走行クリーナ1の底部に収納される。
【0022】従って、この実施の形態においても前述した実施の形態と同様の作用効果を奏するものである。なお、モータ16の回転軸とプーリ20との間に減速機を介在させてもよい。
【0023】(第3の実施の形態)なお、前述した実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。これは、図6に示すように、摺動部13における開口部13aの両側の外周部にシール部材としてOリング23,24を嵌め込み、案内部10の内周面との間の隙間を塞ぐようにしている。また、前記案内部10における連通部12とノズル部側先端部との間の内周部にシール部材としてOリング25を嵌め込んでいる。
【0024】これにより、ノズル部14を突出させ、摺動部13の開口部13aを連通部12に重ねてノズル部14から塵を吸込むとき、第1の吸引口6の負圧が連通部12から案内部10に逃げることが無く、負圧を連通部12及び開口部13aを介して摺動部13、ノズル部14に確実に伝達することができる。
【0025】また、ノズル部14を自律走行クリーナ1の底部に収納したとき、摺動部13の側面で連通部12を閉塞しても第1の吸引口6の負圧が案内部10側に逃げるのを充分に阻止することは困難である。しかし、Oリング23,24,25によって負圧が案内部10から外部に逃げるのを阻止できるので、結果として、第1の吸引口6の負圧が案内部10を経由して外部に逃げるのを充分に阻止することができ、第1の吸引口6のみによる塵の吸引に悪影響を与える虞はない。
【0026】なお、前述した各実施の形態では管体として、中央部が円管状の摺動部からなる管体を使用したが、摺動部の構成はかならずしも円管状である必要はなく、四角形管状や多角形管状であってもよい。勿論、この場合、案内部の形状は摺動部の形状に合わせる必要があり、シール部材もOリングでなく専用のシール部材を使用することになる。
【0027】また、前述した各実施の形態では案内部及び管体を斜めに配置したがこれに限定するものではなく、水平に配置したものであってもよい。
【0028】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、床への設置面積を小さくできて容易に小回りができ、また、全体的な重量バランスがよくて安定性に優れ、しかも、狭い隙間や部屋の隅や角などを確実に掃除することができる自走式クリーナを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の、第1の実施の形態に係る自走クリーナの内部構成を示す平面図。
【図2】同実施の形態に係る自走クリーナの内部構成を示す側面図。
【図3】同実施の形態に係る自走クリーナの内部構成を示す正面図。
【図4】同実施の形態に係る自走クリーナにおけるノズル部の突出状態を示す図。
【図5】本発明の、第2の実施の形態に係る自走クリーナの内部構成を示す正面図。
【図6】本発明の、第3の実施の形態に係る自走クリーナの内部構成を示す正面図。
【符号の説明】
1…自走クリーナ
6…第1の吸引口
10…案内部
11…管体
12…連通部
13…摺動部
13a…開口部
14…ノズル部
14a…第2の吸引口

【特許請求の範囲】
【請求項1】 本体底部に進行方向とは交叉する方向に長尺な第1の吸引口を設け、この第1の吸引口から塵を吸引して床面の掃除を行う自走式クリーナにおいて、先端部の側面に第2の吸引口を形成した管体と、前記第1の吸引口の長手方向側面に沿って配置され、前記管体を摺動自在に案内する案内部と、この案内部と前記第1の吸引口とを連通する連通部と、前記管体の先端部を本体から外部に突出させる往動作及び前記管体の先端部を本体内に収納させる復動作を行う駆動手段と、前記管体の側面に形成され、前記管体の往動作時に前記連通部に連通する開口部とを設け、前記管体の往動作時に前記第2の吸引口から開口部、連通部を経由して前記第1の吸引口に塵の吸引を行わせることを特徴とする自走式クリーナ。
【請求項2】 管体は、先端部を可撓性部材で形成し、その側面に第2の吸引口を形成したことを特徴とする請求項1記載の自走式クリーナ。
【請求項3】 案内部は、管体の往動作時に先端部が床面に向かって突出するように斜めに配置したことを特徴とする請求項1記載の自走式クリーナ。
【請求項4】 管体は開口部から案内部内面への空気漏れを防止するシール部材を前記開口部の両側に配置し、前記案内部は連通部から前記管体の先端部への空気漏れを防止するシール部材をその連通部と先端部との間に配置したことを特徴とする請求項1記載の自走式クリーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2003−325406(P2003−325406A)
【公開日】平成15年11月18日(2003.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−143511(P2002−143511)
【出願日】平成14年5月17日(2002.5.17)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】