説明

航空機ターボジェットから補助動力を取り出す方法およびその方法を実施するように設置されたターボジェット

【課題】アイドリング運転中の高圧タービンの動作に影響を与えずに、新しいレベルのトルクを送達する必要があることを考慮して、知られているシステムの改善を探究すること。
【解決手段】航空機に搭載された装置に必要な電力を生成する。補助動力は高圧タービン(21)によって駆動されるシャフト(27)によって取り出され、アイドリング運転中に、低圧タービン(23)の効率は高圧タービンが必要な補助動力を送達するのに十分な速度で動作できるように低下される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に搭載される装置に必要な補助動力の生成に関し、動力はこの航空機のターボジェットから取り出される。
【背景技術】
【0002】
最近の航空機には電力の要求がますます大きくなっている。かつてない大出力の発電機が用いられている。そのような発電機は航空機のターボジェットによって駆動される。高圧タービンに結合されたシャフトから必要な機械的動力を取り出すことは知られている。さらに詳細には、半径方向シャフトがこの高圧タービンに結合した軸状シャフトに機械的に連結され、この動力は発電機を駆動するギアボックスに送達される。大量の電力が必要なとき、エンジンがアイドリング運転中には、地上または飛行中にかかわらず発電機を駆動するのに高いレベルのトルクが必要であるので、その対策には問題が発生する。このトルクは高圧タービンに望ましくない動作範囲での動作を招く傾向がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、補助動力に関する最近の要求を考慮して、したがって、アイドリング運転中の高圧タービンの動作に影響を与えずに、新しいレベルのトルクを送達する必要があることを考慮して、知られているシステムの改善を探究する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の基礎となる考えは、アイドリング運転中に、高圧タービンの下流に位置する低圧タービンの効率を低下させ、エンジンからの推力増加を招くことなく高圧タービンの回転速度を高めることを可能にする(そこから高いレベルの動力を取り出すことが可能なレベルで)ことからなり、そのような推力増加はエンジンのアイドリング運転の段階中に望ましくない。
【0005】
さらに正確には、本発明は、上流から下流へ、高圧タービンと低圧タービンを含む航空機ターボジェットから補助動力を取り出す方法を提供し、この動力を高圧タービンによって駆動されるシャフトを経由して取り出すことからなる型式のものであり、アイドリング運転の範囲内で、この高圧タービンが必要な補助動力を供給するのに十分な速度で動作することを可能にするように、この低圧タービンの効率の低下を制御することを特徴とする。
【0006】
したがって、低圧タービンの効率が低下するので、それはよりゆっくり回転するが、高圧タービンはより速く回転する。
【0007】
低圧タービンの効率は、この低圧タービンの可動ブレードの半径方向クリアランスを操作することによって低下させることができる。
【0008】
可動ブレードの半径方向クリアランスを変化させることはそれ自体知られている形式(低圧タービン軸クリアランス制御(LPTACC)の制御を用いる)であるが、異なる用途に用いられることを観察すべきである。
【0009】
他の有利な特徴によれば、低圧タービンの効率の低下はこのタービンの少なくともいくつかの段階のノズル羽根のピッチを操作することによって得ることができる。低圧タービンのノズル羽根の可変ピッチシステムはタービンの回転速度の変化に用いられる(これはその効率の低下であると考えることができる)。これらの手段の両方を組み合わせることが可能である。
【0010】
エンジンコンピュータはこれらのパラメーターをエンジンの速度と電力要求に応じて変化させることが可能である。したがって、エンジン推力の増加を避けることが可能であり(低圧タービンの効率の損失を制御することによって)、したがって、そこから大量の動力が取り出されるにもかかわらず、この高圧タービンの動作点を臨界値以上に保つレベルで高圧タービンの速度を維持することが可能である。
【0011】
有利な特徴によれば、この低圧タービンの効率の変化は、高圧タービンで駆動されるシャフトと発電機との間に配置された(従来の)機械的伝達システムによって送達されるトルクの測定値へサーボ制御される。
【0012】
本発明はまた、上流から下流へ、高圧タービンおよび低圧タービンと、この高圧タービンによって駆動されるシャフトと、このシャフトに連結されてそこから動力を取り出す機械的な伝達システムとを含む航空機ターボジェットを提供し、ターボジェットはこの低圧タービンの効率を変化させる効率変化手段およびこの効率変化手段を制御する制御手段とを含み、この制御手段は消費されている補助動力の量を表す信号を送達するセンサーによって制御されることを特徴とする。
【0013】
機械的伝達システムは(装置の他の部分で)1つ以上の発電機を駆動する。
【0014】
この効率変化手段は低圧タービンの可動ブレードの半径方向クリアランスを制御するためのシステムおよび/またはこの低圧タービンのノズル羽根のピッチを制御するためのシステムを含むことができる。
【0015】
有利には、この効率変化手段はトルクセンサーに応答するコンピュータを含み、それ自体高圧タービンで駆動されるこのシャフトとこの発電機との間に配置されたこの機械的伝達システムに結合される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、添付の図面を参照して純粋に例示として与えられる以下の説明によって良好に理解され、他の利点をさらに良好に明瞭にすることができる。
【0017】
図1および図2にそれぞれ概略図で示した2つの実施形態は、低圧タービンの効率の修正を受け持つ2つのシステムを制御するのに適したコンピュータを提供することによって組み合わせることができる。
【0018】
図1に示したバイパスターボジェット11は、上流から下流へ、従来通りファン13と、低圧圧縮機15と、高圧圧縮機17と、燃焼室19と、高圧タービン21と、低圧タービン23とを含む。低圧タービン23はファン13と低圧圧縮機15の両方を駆動する軸状シャフト25に機械的に接続される。高圧タービン21は特に高圧圧縮機17を駆動する軸状シャフト27に接続される。この副組み立て体は高圧スプールと呼ばれる。シャフト27は適切な減速ギアを経由して発電機33を駆動する半径方向シャフト31を有する機械的伝達システム29に機械的に連結される。
【0019】
今日、機上に搭載された装置および全ての乗客室装置が必要とする電力を送達するための発電機33は高動力発生機を必要とし、それによって半径方向シャフト31を経由して大量のトルクの伝達を必要とする。
【0020】
本実施例において、トルクは半径方向シャフト31に結合されたトルクセンサー37によって測定される。トルクセンサーは半径方向シャフト31によって送達されるトルク、したがって高圧タービン21から取り出される動力を表す信号を送達する。この信号は、低圧タービンの少なくとも1つの構造パラメーターを制御するのに適したコンピュータ40の入力に加えられる。さらに詳細には、このパラメーターは、エンジンのアイドリング運転中に、高圧タービンが十分な速度で動作できるようにこの低圧タービンの効率を変化(低下)させることを可能にするパラメーターの1つである。したがって、高圧タービンが望ましくない動作領域で動作することなく、必要な補助動力を取り出すことができる。
【0021】
図1の実施例において、コンピュータ40aは低圧タービンの可動ブレードのための半径方向クリアランスを制御する機能を組み込む。したがって、このコンピュータからの制御出力42はシステム44(それ自体知られている)に作用し、低圧タービンの半径方向クリアランスを制御する。このクリアランス制御システムはLPTACC型であり、他の用途で知られている。ブレードの半径方向クリアランスが増加すると、低圧タービンの効率は低下し、したがって、ファン13からの推力がアイドリング運転で不適切な動作になることなく、高圧スプールはその臨界速度以上での動作が可能になる。
【0022】
図2の実施例において、全体的な配置は同じであり、再説明は行わない。しかし、ここでは、コンピュータ40bはこの低圧タービン23のノズル羽根45の可変ピッチを制御する機能を組み込むように設計されている。したがって、このタービンのノズル羽根には、ケーシング49の外側から起動されるピッチ変更システム47が設けられる。
【0023】
無論、上述のように、コンピュータは上述の制御機能の両方、すなわち、可動ブレードの半径方向クリアランスの制御およびノズル羽根の可変ピッチの制御を組み込むことができる。
【0024】
トルクセンサー37から送達される信号は発電機33から引き出されている補助動力を表す。したがって、トルクセンサー37によって送達された信号はコンピュータに送達され、コンピュータは、そこから必要とする低圧タービン23の効率の「低下」の測定値を導き出し、エンジンのアイドリング運転中、高圧スプールの動作を十分なレベルで維持することができ、ファン13によって発生する推力が適切なアイドリング運転に矛盾しないようにする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による補助動力取り出しシステムを設けた航空機ターボジェットの概略断面図である。
【図2】図1と同様の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
13 ファン
15 低圧圧縮機
17 高圧圧縮機
19 燃焼室
21 高圧タービン
23 低圧タービン
25、27 軸状シャフト
29 機械的伝達システム
31 半径方向シャフト
33 発電機
37 トルクセンサー
40、40a、40b コンピュータ
42 制御出力
44 半径方向クリアランス
45 ノズル羽根
47 ピッチ変更システム
49 ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から下流へ高圧タービン(21)と低圧タービン(23)を含む航空機ターボジェットから補助動力を取り出す方法であって、前記動力を高圧タービンによって駆動されるシャフト(27)を経由して取り出すことからなる型式のものであり、前記高圧タービン(21)が必要とする補助動力を供給するのに十分な速度で動作するのを可能にするように、アイドリング運転の範囲内で、前記低圧タービン(23)の効率の低下を制御することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記低圧タービンの可動ブレードの半径方向クリアランス(44)を操作することによって効率を低下させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低圧タービンのノズル羽根のピッチ(47)を操作することによって効率を低下させることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記低圧タービンの効率の変化が、高圧タービンで駆動される前記シャフトと発電機(33)との間に配置された機械的伝達システム(29)によって送達されるトルクの測定値(37)へサーボ制御されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
上流から下流へ、高圧タービン(21)および低圧タービン(23)と、前記高圧タービンによって駆動されるシャフト(27)と、このシャフトに連結されてそこから動力を取り出す機械的な伝達システム(29)とを含む航空機ターボジェットであって、ターボジェットは前記低圧タービンの効率を変化させる効率変化手段(44から47)および前記効率変化手段を制御する制御手段(40aから40b)とを含み、前記制御手段は消費されている補助動力の量を表す信号を送達するセンサー(37)によって制御されることを特徴とする、航空機ターボジェット。
【請求項6】
前記効率変化手段が前記低圧タービンの可動ブレードの半径方向クリアランス(44)を制御するシステムを含むことを特徴とする、請求項5に記載のターボジェット。
【請求項7】
前記効率変化手段が前記低圧タービンのノズル羽根のピッチを制御するシステム(47)を含むことを特徴とする、請求項5または6に記載のターボジェット。
【請求項8】
前記効率変化手段が、高圧タービンによって駆動される前記シャフトと発電機(33)との間に配置された機械的伝達システムに結合したトルクセンサーによって制御されるコンピュータ(40aから40b)を含むことを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載のターボジェット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−202596(P2008−202596A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−32751(P2008−32751)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】