説明

航空画像処理装置および航空画像処理方法

【課題】航空写真等の画像中に含まれる日陰領域の認識率を高めて、より効率よく正確な地図の作成を支援することが可能な航空画像処理装置および航空画像処理方法を提供すること。
【解決手段】航空画像処理装置では、中央制御部510が日陰発生角度と、ポリゴン生成部550が生成したポリゴンを構成する各線分の画像上の角度とを比較して、ポリゴンを構成する線分のうち日陰発生角度に合致するものがあるか否かを判定し、影の線分と地物の線分に関する倍率が日陰発生延長倍率に合致するか否かを判定し、影となる線分で囲まれた領域の色調が隣接する全てのポリゴンよりも暗いか否かを判定する処理を行い、その処理の結果、影となる線分で囲まれた領域が日陰領域であると識別する。そして、識別した日陰領域のポリゴンを生成する処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空写真画像や衛星画像等の写真画像を用いて写真画像中の地物を解析し地図の作成を支援する航空画像処理装置および航空画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に搭載されたカーナビゲーションやGPS機能が搭載された携帯端末(特に携帯電話)等の普及により電子地図データの利用者は年々増加の傾向にある。この為、現在位置や目的地等のデータをより明確かつ詳細に把握でき、より正確で、より最新で、より情報量の抱負な電子地図データをより安価に作成する地図作成システムの開発が望まれている。
【0003】
従来から航空写真に基づいて地図のデータを作成する方法が知られている。ここで、地図とは、地形図、住宅地図、道路地図、土地利用図、土地被覆図、カーナビゲーション用電子地図、パソコン用電子地図等を指す。航空写真を用いて前記のような地図を作成する技術については、「コンピュータマッピング」(坂内、角本、太田、林
著:昭晃堂、1992年p45〜p50)に地図作成手法と題して記述されている。
【0004】
上述した従来方法は、ネガフィルムに画像を写し取ったカメラの影像を人手により映像上に写された地物の輪郭線等から地物形状をトレースする作業を必要としていたが、デジタルカメラの出現と画素数の向上や、デジタルカメラの画像上から地物を検出する感度センサーの向上によりネガフィルムと同等以上の地図作成のためのデータ量をデジタルデータとして取り込むことに成功している。
【0005】
そこで、下記の特許文献1に、高性能なデジタルカメラで撮影した航空写真や衛星画像からエッジ抽出による色情報の変化境界を線分化して地物をポリゴン化して電子データとしてデータベースに取り込むことが提案されている。
【0006】
しかし自然光から撮影した航空写真や衛星画像には、必ず発生する非地物である地物の影がエッジ抽出による色情報の変化境界として解析されてしまい、地物の正確な形状を検出してエッジ抽出を行うことができず地物のポリゴン化の妨げとなっている。
【0007】
そこで、下記の特許文献2に、自然光から撮影した航空写真や衛星画像に必ず発生する非地物の影をエッジ抽出した色情報領域のグループ化により、他者より相対的に暗いと言う尺度で地物の影でできた領域を画像上から認識することが提案されている。
【0008】
また、下記の特許文献3に、日陰領域の画像解像度を上げるために画像入力装置のダイナミックレンジを拡大する画像編集により画像鮮明度を上げる提案がされている。しかし日陰領域がなくなるわけではなく全体の詳細度が向上するものである。
【0009】
【特許文献1】特開2004−252213号公報
【特許文献2】特開平11−283012号公報
【特許文献3】特開平6−105224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、近年、デジタルカメラにより撮影される画像の技術の進歩、電波や光、赤外を利用する人工衛星を使用したリモートセンシング技術の進歩により、航空写真や衛星画像から詳細に地物を検出した地図データを作成することが可能になってきている。特に、航空写真ではその解像度は20cm程度までの精度を誇るようになってきており、またオルソ補正技術の向上により平準的な精度向上が目覚しい。そのため、航空写真や衛星画像のデジタル画像から地物のポリゴンデータを自動生成することが可能となってきている。このため地物の変化を適時にとらえ常に最新の地図データの作成が試みられるようになってきた。
【0011】
しかし、照明器具を使えない航空写真や衛星画像の場合、太陽光をもとに撮影を行なうしかない。したがって、今日のデジタルカメラ等の解像度と感度制御技術の向上により航空写真や衛星画像の日陰部分についても太陽光の地表面や地物との乱反射により色調変化が生まれその地物形状を画像上で地図作成の作業者等が目で確認し、目視できるようになってきたとしても、地図データ作成用の装置での画像上で直接太陽光があたった領域(以後、日照領域と呼ぶ)を含む幅の広い色の階調領域で地物形状を検出する従来の機能では、色の階調差の少ない画像上で地物の陰になり直接太陽光をあたらなかった領域(以後、日陰領域と呼ぶ)の形状までも機械化により自動認識することは可能ではなかったため、画像上の日陰領域が航空写真や衛星画像のデジタル画像から正確に地物の形状を把握してポリゴンデータを自動生成することの妨げになっているという問題点を抱えている。
【0012】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、航空写真等の画像中に含まれる日陰領域の認識率を高めて、より効率の良い正確な地図の作成を支援することが可能な航空画像処理装置および航空画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、写真画像を用いて地図の作成を支援する航空画像処理装置において、
写真画像に関する情報および写真画像上の地物から発生する影に基づいて、影の延長方向および所定方向間の日陰発生角度を解析する日陰角度解析手段と、
写真画像に関する情報および写真画像上の地物の長さおよび地物から発生する影に基づいて、この地物の長さおよび影に関する倍率を示す日陰発生延長倍率を解析する日陰倍率解析手段と、
写真画像中の地物の輪郭線を抽出し、この輪郭線を結線処理することによりポリゴンを生成するポリゴン生成手段と、
前記ポリゴン生成手段が生成したポリゴンから、前記日陰発生角度および日陰発生延長倍率の情報を用いて日陰領域を抽出し日陰領域のポリゴンを生成する日陰領域抽出手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の航空画像処理装置において、
前記日陰領域抽出手段は、
前記ポリゴン生成手段が生成したポリゴンを構成する線分から前記日陰発生角度に合致する線分を検出する日陰角度検出手段と、
前記日陰角度検出手段が検出した日陰発生角度に合致する線分が日陰発生延長倍率に合致するか否かを判定する日陰延長判定手段と、
前記日陰延長判定手段が判定した結果合致する場合に、前記日陰発生角度に合致する線分を用いて日陰領域のポリゴンを生成する日陰ポリゴン生成手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項3にかかる発明は、写真画像を用いて地図の作成を支援する航空画像処理方法において、
写真画像に関する情報および写真画像上の地物から発生する影に基づいて、影の延長方向および所定方向間の日陰発生角度を解析するステップと、
写真画像に関する情報および写真画像上の地物の長さおよび地物から発生する影に基づいて、この地物の長さおよび影に関する倍率を示す日陰発生延長倍率を解析するステップと、
写真画像中の地物の輪郭線を抽出し、この輪郭線を結線処理することによりポリゴンを生成するステップと、
前記ポリゴン生成手段が生成したポリゴンから、前記日陰発生角度および日陰発生延長倍率の情報を用いて日陰領域を抽出し日陰領域のポリゴンを生成するステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る航空画像処理装置および航空画像処理方法は、航空写真等の画像中に含まれる日陰領域の認識率を高めて、より効率の良い正確な地図の作成を支援することが可能となる。
【0017】
請求項1に係る発明によれば、日陰角度解析手段が、写真画像に関する情報および写真画像上の地物から発生する影に基づいて、影の延長方向および所定方向間の日陰発生角度を解析し、日陰解析手段が、写真画像に関する情報および写真画像上の地物の長さおよび地物から発生する影に基づいて、この地物の長さおよび影に関する倍率を示す日陰発生延長倍率を解析しておき、日陰領域抽出手段がポリゴン生成手段が生成したポリゴンから、日陰発生角度および日陰発生延長倍率の情報を用いて日陰領域を抽出し日陰領域のポリゴンを生成するので、日陰領域の認識を高めてより正確に検出することが可能となり、効率の良い正確な地図の作成を支援することが可能となる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、日陰角度検出手段がポリゴン生成手段が生成したポリゴンを構成する線分から日陰発生角度に合致する線分を検出し、日陰延長検出手段が日陰角度検出手段が検出した日陰発生角度に合致する線分が日陰発生延長倍率に合致するか否かを判定し、日陰延長判定手段が判定した結果合致する場合に、日陰ポリゴン生成手段が日陰発生角度に合致する線分を用いて日陰領域のポリゴンを生成するので、日陰領域を正確に識別したポリゴンを生成でき、日陰領域の認識を高めて効率の良い正確な地図の作成を支援することが可能となる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、写真画像に関する情報および写真画像上の地物から発生する影に基づいて、影の延長方向および所定方向間の日陰発生角度を解析し、写真画像に関する情報および写真画像上の地物の長さおよび地物から発生する影に基づいて、この地物の長さおよび影に関する倍率を示す日陰発生延長倍率を解析しておき、生成したポリゴンから、日陰発生角度および日陰発生延長倍率の情報を用いて日陰領域を抽出し日陰領域のポリゴンを生成するので、日陰領域の認識を高めてより正確に検出することが可能となり、効率の良い正確な地図の作成を支援することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る航空画像処理装置を実施するための最良の形態について説明する。本実施の形態における航空画像処理装置は、航空写真や衛星画像等の画像から画像に関する情報等に基づいて画像上の地物から発生する影に関する情報を解析して地物のポリゴン生成を支援するためのデータを生成する自然陰影判別情報採取機能付き航空画像撮影システム100と、正確な地図作成を支援するデータベースとなる地物のポリゴンを作成する地物ポリゴン生成システム500とから構成されている。
【0021】
図1は、本実施の形態における航空画像処理装置のうち自然陰影判別情報採取機能付き航空画像撮影システム100の構成を示す説明図である。航空画像撮影システム100は、航空写真等を撮影したデジタルカメラ等の撮影手段から画像データに関する情報を取り込む画像撮影部110と、画像撮影部110が撮影した航空写真等の画像データに基づいて処理を行う撮影中央制御部120と、航空写真等の画像データに関する情報や画像データ上の地物から発生する影に基づいて地物のポリゴン生成を支援するためのデータを生成する日陰情報解析部130とを備えている。また、航空画像撮影システム100の外部には撮影中央制御部120が処理を行った地物のポリゴン生成を支援するためのデータや航空写真等の画像データを記憶する日陰情報付き航空画像DB200が接続されている。
【0022】
航空画像撮影システム100は、例えば一般的なパーソナルコンピュータに、上述した画像撮影部110、撮影中央制御部120、日陰情報解析部130等の各要素の機能ブロックを演算制御するためのプログラムをインストールし、CPU等がそれぞれの機能を制御することによって構成され実現される。日陰情報付き航空画像DB200は、航空画像撮影システム100の外部に情報の送受信が可能に接続されて構成されていても良く、例えば、サーバからインターネット等の通信網を介して接続されオンラインで記憶する、CD−ROMなどの記録媒体によって記憶する構成であっても良い。また、これらの各要素の機能ブロックは、本実施の形態においては、パーソナルコンピュータのCPUがコンピュータプログラムを実行することによってソフトウェア的に構成されるが、それぞれの機能ブロックを実現した各装置を用いてハードウェア的に構成することも可能である。
【0023】
画像撮影部110は、外部に接続等されている航空写真等の撮影を行ったデジタルカメラ等の撮影手段からCharge Coupled Device(電荷結合素子)、カメラファイルの光受生体等により航空写真等の画像データの撮像素子を記録して取り込むと同時に、この航空写真等画像データに関する撮影情報をセンサーにより記録して取り込む機能を有する。ここで、撮影情報とは、撮影日時、撮影位置の緯度経度情報、撮影範囲、撮影方位、撮影標高、撮影カメラ角度、レンズの画角等が含まれている。
【0024】
撮影中央制御部120は、画像撮影部110や日陰情報解析部130等を制御し、画像撮影部110から得られた画像データ及び撮影情報をデジタル化し、日陰情報解析部130から得られたデータをデジタル化して日陰情報付き航空画像DB200へ格納する機能を有する。
【0025】
日陰情報解析部130は、撮影情報に含まれる撮影日時、撮影位置の緯度経度情報等に基づいて、太陽方位、太陽高度を算出し、さらに、撮影情報に含まれる撮影方位、撮影標高、撮影カメラ角度等の情報に基づいて航空写真等の画像上の地物から発生する影について処理を行い、影の延長方向および所定方向間の日陰発生角度や、地物の長さおよび影に関する倍率を示す日陰発生延長倍率等を含む日陰情報を解析する機能を有する。
【0026】
ここで、日陰情報とは、航空写真等で撮影した画像上で地物が太陽光を受けた方向と反対方向に伸びて発生する影に関する情報であり、特に、日陰発生角度および日陰発生延長倍率を含む情報である。
【0027】
日陰発生角度とは、航空写真等を撮影した撮影方法に応じて、航空写真等の画像上の地物から影が発生して伸びていく方位を示す角度であり、基本的に太陽が存在する方位と正反対を指す方位角度のことである。図3は、航空写真等の撮影を行った撮影方法や撮影画像、地物から発生した影の日陰発生角度を示す説明図である。図3の10、20に示すように、撮影方法1、2では、同一日時での太陽光12、22で照らされた地物11、21から発生して伸びた影は、図3の30、40に示すように、撮影方法1、2における撮影位置、撮影方位、撮影カメラ角度、撮影標高、レンズの画角等の条件に影響され、それぞれの撮影方法1、2毎に影が伸びていく方位が決定される。したがって、日陰発生角度とは、航空写真等の画像上で地物から発生している角度のことであり、図3の30、40に示すように、画像上で東西方向に伸びる東西方向線53、63と、地物から発生する影52、62が伸びていく方向との間の角度θ51、61のことである。日陰情報解析部130は、撮影位置、撮影方位、撮影カメラ角度、撮影標高、レンズの画角等の条件の情報に基づいて、影が伸びていく方位を決定し、この決定した影の方位と、東西方向線とから日陰発生角度を解析し算出する。
【0028】
日陰発生延長倍率とは、画像上の地物の地平面の高さに対してその地物から発生する影がどれだけ伸びているかを示す倍率であり、基本的に太陽高度に比例するものである。図4は、航空写真等の画像上に写された地物と、地物から発生する影の様子を示す説明図である。図4の70、80に示すように、撮影画像3、4における撮影方法での撮影位置、撮影方位、撮影カメラ角度、撮影標高、レンズの画角等の条件に影響され、それぞれの撮影画像3、4毎に地物の地平面の高さに対するその地物から発生する影が日陰発生角度の方位上に伸びていく倍率が決定される。したがって、日陰発生延長倍率とは、航空写真等の画像上で地物から伸びている倍率のことであり、図4の70、80に示すように、塔73、83から発生する影74、84について、塔73、83の地平面の高さを示す画像上の長さα71、81に対する、影74、84の日陰発生角度の方位上に伸びていく画像上の長さβ72、82との倍率β/αのことである。日陰情報解析部130は、撮影位置、撮影方位、撮影カメラ角度、撮影標高、レンズの画角等の条件の情報に基づいて、地物から発生する影が日陰発生角度の方位上に伸びていく倍率を解析して算出し、日陰発生延長倍率を決定する。
【0029】
太陽方位、太陽高度は、撮影情報に含まれる撮影日時、撮影位置の緯度経度情報等に基づいて計算される冗長データである。
【0030】
また、日陰情報解析部130は、以下のようにして日陰発生角度および日陰発生延長倍率を解析しても良い。図5は、航空写真等の画像上に写された地物と、地物から発生する影から上述と異なる方法で解析する方法を示す説明図である。図5のA0に示すように、予め電力供給用の鉄塔、電柱等の形状が特定されている定型的な地物の形状等の情報をマーカパターンとして登録しておき、図5の90に示すように、撮影画像5の画像上からこのマーカパターンに一致する地物と影を自動的に認識して検出し、図5のB0に示すように、この検出した地物B4と、地物B4から発生する影B5と東西方向線とから角度θB1、すなわち、日陰発生角度と、地物B4の長さαB2と影B5の長さβB3とから日陰発生延長倍率を解析して検出する方法をとることもできる。
【0031】
図2は、日陰情報付き航空画像DB200の構成を示す説明図である。日陰情報付き航空画像DB200には、航空写真等の画像データの1コマ毎を識別するための画像番号211に対して、撮影した日時を示す撮影日時212、撮影した位置を示す撮影位置の緯度経度情報213、画像に写された範囲を示す撮影範囲214、撮影した方位を示す撮影方位215、撮影した位置の標高を示す撮影標高216、撮影したカメラの角度を示す撮影カメラ角度217、カメラのレンズの画角218、撮影時の太陽光等の日照量219、日陰情報解析部130が解析した太陽方位220、太陽高度221、日陰発生角度222、日陰発生延長倍率223、航空写真等の画像のデータ224が関連付けて格納されている。
【0032】
図6は、地物ポリゴン生成システム500の構成を説明する説明図である。地物ポリゴン生成システム500は、この地物ポリゴン生成システム500内の各要素の機能ブロックの動作を制御する中央制御部510と、日陰情報付き航空画像DB200等に記憶されている画像のデータを読み出して入力する画像情報入力部520と、画像情報入力部520が入力した画像上の色調等を編集する画像データ編集部530と、画像上に表示された地物の輪郭線である画像エッジを抽出する処理を行う画像エッジ抽出部540と、画像エッジ抽出部540が抽出した画像エッジを用いて地物のポリゴンを生成する処理を行うポリゴン生成部550と、ポリゴン生成部550が生成したポリゴンのデータに基づいて地物から発生する影となる部分として日陰領域を識別するための処理を行う日陰領域識別部560とを備えている。また、地物ポリゴン生成システム500の外部には、日陰情報付き航空画像DB200、日陰情報を含まない画像に関する各種のデータや航空写真等の画像データを記憶する日陰情報無し航空画像DB300、画像情報入力部520が入力した画像の日陰情報等を一時的に記憶する日陰情報パラメータ400、地物ポリゴン生成システム500が生成した地物のポリゴン等のデータを記憶する地物ポリゴンDB600が接続されている。
【0033】
地物ポリゴン生成システム500は、例えば一般的なパーソナルコンピュータに、上述した中央制御部510、画像情報入力部520、画像データ編集部530、画像エッジ抽出部540、ポリゴン生成部550、日陰領域識別部560等の各要素の機能ブロックを演算制御するためのプログラムをインストールし、CPU等がそれぞれの機能を制御することによって構成され実現される。日陰情報付き航空画像DB200、日陰情報無し航空画像DB300、日陰情報パラメータ400、地物ポリゴンDB600は、地物ポリゴン生成システム500の外部に情報の送受信が可能に接続されて構成されていても良く、例えば、サーバからインターネット等の通信網を介して接続されオンラインで記憶する、CD−ROMなどの記録媒体によって記憶する構成であっても良い。また、これらの各要素の機能ブロックは、本実施の形態においては、パーソナルコンピュータのCPUがコンピュータプログラムを実行することによってソフトウェア的に構成されるが、それぞれの機能ブロックを実現した各装置を用いてハードウェア的に構成することも可能である。
【0034】
画像情報入力部520は、日陰情報付き航空画像DB200に記憶された画像のデータ224とこれに関連付けられた日陰発生角度222、日陰発生延長倍率223等の情報を読み出して地物ポリゴン生成システム500に入力する機能を有する。また、日陰情報無し航空画像DB300に記憶された後述する画像のデータ617や、図5のB0に示すように、画像上からオペレータ等が所定の器具を用いて測定、算出等を行った日陰発生角度、日陰発生延長倍率の情報を図示しない操作手段により入力したことに応じて、発生角度621、日陰発生延長倍率622等として日陰情報パラメータ400に格納し、画像のデータ617と共に地物ポリゴン生成システム500に入力する機能を有する。
【0035】
画像データ編集部530は、画像情報入力部520が入力した航空写真等の画像上の色調を、例えば画像上の地物の輪郭線が容易に検出可能なように色調の変化の境界部分等の色調を変更して編集を行う機能を有する。主に画像上の画素毎の濃淡変換としての階調変換・色調変換、画像上の色調の変化の境界部分における領域に基づく濃淡変換、即ち、空間フィルタリングとしての画像上の地物等の強調(シャープネス)の処理や平滑化(スムージング)の処理等を行い画像上から画像エッジの抽出によるポリゴンの生成処理に最適な一般的な画像変換を行う機能を有する。
【0036】
画像エッジ抽出部540は、航空写真等の画像上の差分演算の処理を行い、その処理で発生した画像上の雑音成分をSobel(ゾーベル)フィルタ、Prewitt(プレヴィット)フィルタ等を使い雑音の低減とノイズの除去を行なって、画像エッジを検出する機能を有する。
【0037】
ポリゴン生成部550は、画像エッジ抽出部540が抽出した画像エッジ成分の線分を結線する処理等を行いポリゴン化して地物のポリゴンを生成する機能を有する。例えば画像エッジの線分の断線した部分をグループ化等により結線してポリゴン化を行う。
【0038】
また、ポリゴン生成部550は、生成したポリゴンのサイズを示す領域が予め設定されていた最小の矩形サイズより小さい場合、また、画像エッジの線分の境界部分の揺らぎの振幅が予め設定された値より小さい場合には、例えば航空写真等に偶然写された人影や樹木等の地図に表示する建築物等の表示対象物ではないと判定し、ポリゴンを削除するようになっている。
【0039】
図8は、ポリゴン生成部550が画像上の地物からポリゴンを生成した例を示す説明図である。図8では、地物ポリゴン生成部550が図8のC0に示す撮影画像6から、画像エッジ抽出部540が画像上の色調の変化の境界部分から地物の輪郭線である画像エッジを抽出する処理を行い、地物ポリゴン生成部550がこの画像エッジの線分の結線処理等により、図8のD0に示すように、地物ポリゴン1を生成した様子を示している。なお、このポリゴン生成の例では、図8のC0に示すように、地物の影となる日陰領域C4と、地物領域C6とは、撮影した際の光量不足等の条件に影響され、画像データ編集部530の編集処理を経ても日照領域と日陰領域とを区別して画像エッジを抽出するための濃淡の差の階調度が広がらずに同色判定され、図8のD4に示すように、1つの地物ポリゴンとして生成されている。
【0040】
日陰領域識別部560は、地物ポリゴン生成部550が生成したポリゴンのデータに対して処理を行い、地物の日陰発生角度222、621や日陰発生延長倍率223、622の情報を用いて、地物から発生した影の部分である日陰領域を識別して抽出する機能を有する。
【0041】
図7は、日陰情報無し航空画像DB300、日陰情報パラメータ400、地物ポリゴンDB600の構成を示す説明図である。日陰情報無し航空画像DB300には、航空写真等の画像データの1コマ毎を識別するための画像番号611に対して、撮影した日時を示す撮影日時612、撮影した位置を示す撮影位置の緯度経度情報613、画像に写された範囲を示す撮影範囲614、撮影した方位を示す撮影方位615、撮影した位置の標高を示す撮影標高616、航空写真等の画像のデータ617が関連付けて格納されている。
【0042】
日陰情報パラメータ400には、画像情報入力部520が入力した画像の日陰情報として日陰発生角度621、日陰発生延長倍率622が画像番号611に関連付けられて一時的に格納されている。地物ポリゴンDB600には、地物ポリゴン生成部550がポリゴン生成の処理を行った画像データを識別するための画像番号211、611に対応する画像番号631に対して、撮影した日時を示す撮影日時632、撮影した位置を示す撮影位置の緯度経度情報633、画像上に含まれるポリゴンの数を示すポリゴン数634、画像上で生成した道路、河川、湖池、建物形状等の地物の各ポリゴンに関する画像上の座標点等のデータを含むポリゴンデータ635が関連付けて格納されている。
【0043】
続いて、本実施の形態における航空画像処理装置の動作について、図9、図11に示すフローチャート図を用いて詳細に説明する。まず、地物ポリゴン生成システム500において、ポリゴン生成部550が生成したポリゴンから日陰領域を識別するための処理について図9に示すフローチャート図を用いて説明する。地物ポリゴン生成システム500の中央制御部510は、日陰領域識別部560により画像上の地物ポリゴンを構成する線分が日陰発生角度に合致するか否かを判定する処理を行う(ステップS11)。
【0044】
中央制御部510は、地物ポリゴンDB600に記憶されたポリゴンデータ635とこれに関連付けられた画像番号631を読み出し、この画像番号631に基づいて日陰情報付き航空画像DB200または日陰情報パラメータ620を検索し、画像番号631に対応する画像番号211、611に関連付けられた日陰発生角度222または621、日陰発生延長倍率223または622を読み出す。そして、日陰発生角度222または621の情報を参照して、日陰発生角度と、ポリゴン生成部550が生成したポリゴンを構成する各線分の画像上の角度とを比較して、ポリゴンを構成する線分のうち日陰発生角度に合致するものがあるか否かを判定する処理を行う。例えば、図10に示す地物のポリゴンの例では、図10のF0に示す画像上のポリゴンF1を構成する各線分が、G0に示す日陰発生角度を成す線分G1と角度が合致するか否かを判定する。無い場合には(ステップS11のNO)、ステップS15の処理を実行する。
【0045】
次に、中央制御部510は、日陰発生角度に合致するものがある場合には(ステップS11のYES)、日陰発生角度に合致する影の線分と地物の線分に関する倍率が日陰発生延長倍率に合致するか否かを判定する処理を行う(ステップS12)。日陰発生延長倍率223または622の情報を参照して、日陰発生角度に合致する影となる部分の線分の画像上の長さβと、この影となる部分の線分に接続された線分の画像上の長さαに基づいて日陰発生延長倍率β/αを算出し、この数値が日陰発生延長倍率223または622に合致するか否かを判定する処理を行う。例えば、図10に示す地物のポリゴンの例では、図10のF0に示す画像上の日陰発生角度に合致する影となる線分の長さβと、この線分に接続されたポリゴンF1の線分の長さαとに基づいた日陰発生延長倍率が、H0に示す線分H1と線分H2とに基づいた日陰発生延長倍率に合致するか否かを判定する。合致しない場合には(ステップS12のNO)、ステップS15の処理を実行する。
【0046】
次に、中央制御部510は、日陰発生延長倍率が合致する場合には(ステップS11のYES)、影となる線分で囲まれた領域の色調が隣接する全てのポリゴンよりも暗いか否かを判定する処理を行う(ステップS13)。影となる各線分で囲まれた領域の色調と、この領域に隣接する全てのポリゴンの色調を検出し、これらの隣接する全てのポリゴンの色調よりもこの領域の色調が暗いか否かを判定する処理を行う。例えば、図10に示す地物のポリゴンの例では、図10のF0に示す画像上の日陰発生角度に合致する影となる各線分で囲まれた領域の色調と、この領域に隣接する全てのポリゴンの色調を検出し、これらの隣接する全てのポリゴンの色調よりもこの領域の色調が暗いか否かを判定する。色調が暗くない場合には(ステップS13のNO)、ステップS15の処理を実行する。
【0047】
次に、中央制御部510は、色調が暗い場合には(ステップS13のYES)、影となる線分で囲まれた領域が日陰領域であると識別し(ステップS14)、地物ポリゴンDB600に記憶された全てのポリゴンのデータに対して処理を行ったか否かを判定する(ステップS15)。全てのポリゴンのデータに対して処理を行った場合には(ステップS15のYES)、処理を終了する。
【0048】
全てのポリゴンのデータに対して処理を行っていない場合には(ステップS15のNO)、以上の処理を行ったポリゴンデータ635に関連付けられた画像番号631をインクリメントする処理等を行い、他のポリゴンデータ635に対してステップS11以降の処理を繰り返し実行していく。
【0049】
続いて、地物ポリゴン生成システム500において、上述の処理で識別された日陰領域のポリゴンを生成するための処理について図11に示すフローチャート図を用いて説明する。まず、地物ポリゴン生成システム500の中央制御部510は、日陰領域を識別するための処理により識別された日陰領域のデータが存在するか否かを判定する処理を行う(ステップS21)。地物ポリゴンDB600内を検索して日陰領域のデータが存在するか否かを判定する処理を行う。存在しない場合には(ステップS21のNO)、処理を終了する。
【0050】
次に、中央制御部510は、日陰領域のデータが存在する場合には(ステップS21のYES)、画像データ編集部530により、画像上の日陰領域について色調の編集等の処理を行う(ステップS22)。例えば、日陰領域の境界部分等の色調を変更することにより、画像エッジ抽出部540が日陰領域の輪郭線を色調の変化に基づいて容易に検出可能となるように編集する処理を行う。例えば、図12に示す日陰領域の例では、図12のJ0に示す画像上の日陰領域J1の境界部分に関して日陰領域J1の内側部分と外側部分とで異なる色調となるように変更する処理等を行う。
【0051】
次に、中央制御部510は、画像エッジ抽出部540により画像上の差分演算の処理を行い、日陰領域の輪郭線部分について雑音の低減とノイズの除去等を行なって、日陰領域の画像エッジを抽出する処理を行う(ステップS23)。
【0052】
次に、中央制御部510は、ポリゴン生成部550により日陰領域の画像エッジ成分の線分を結線する処理等を行い日陰領域のポリゴンを生成する処理を行う(ステップS24)。例えば、図12に示す日陰領域の例では、図12のJ0に示す画像上の日陰領域J1の画像エッジ成分の線分を、断線した部分をグループ化や伸張して繋ぎ合わせる処理等を行って結線しポリゴンを生成する。
【0053】
次に、中央制御部510は、生成したこの日陰領域のポリゴンを日陰領域識別部560によりこの日陰領域が存在する画像の画像番号631に関連付けてポリゴンデータ635に含めて地物ポリゴンDB600に格納する処理を行う(ステップS25)。そして、ステップS21以降の処理を繰り返し実行する。
【0054】
以上のように、本実施の形態における航空画像処理装置では、中央制御部510が日陰発生角度と、ポリゴン生成部550が生成したポリゴンを構成する各線分の画像上の角度とを比較して、ポリゴンを構成する線分のうち日陰発生角度に合致するものがあるか否かを判定し、影の線分と地物の線分に関する倍率が日陰発生延長倍率に合致するか否かを判定し、影となる線分で囲まれた領域の色調が隣接する全てのポリゴンよりも暗いか否かを判定する処理を行い、その処理の結果、影となる線分で囲まれた領域が日陰領域であると識別する。そして、識別した日陰領域のポリゴンを生成する処理を行う。
【0055】
このため、これまで採取が困難だった日陰領域を最適化した航空写真等の画像からの画像エッジ抽出によるポリゴン化を可能にしたので、航空写真や衛星画像の画像から地物のポリゴンデータの自動生成をより正確かつ効率化することが可能になる。航空写真等の画像データを用いて地図を作成する際には、日陰領域のポリゴンにより明確に表示された日陰領域の部分を認識し、地図に誤って日陰領域を表示するトラブル等を防止して、より効率の良い正確な地図の作成を支援することが可能となる。航空写真等の画像中に含まれる日陰領域の認識率を高めて、より効率の良い正確な地図の作成を支援することが可能となる。
【0056】
(他の実施の形態)
上述の実施の形態においては、ステップS13で影となる線分で囲まれた領域の色調が隣接する全てのポリゴンよりも暗いか否かを判定したが、これに限られず、更に色調が暗いか否かを判定すると共に、影となる線分で囲まれた領域の色が黒色であるか否かを判定することとしてもよい。このような処理により、より正確に日陰領域であるか否かを判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施の形態における航空画像処理装置の航空画像撮影システム100の構成を示す説明図である。
【図2】本実施の形態における航空画像処理装置の日陰情報付き航空画像DBを示す説明図である。
【図3】本実施の形態における航空画像処理装置の日陰発生角度を示した説明図である。
【図4】本実施の形態における航空画像処理装置の日陰発生延長倍率を示した説明図である。
【図5】本実施の形態における航空画像処理装置の日陰発生角度、日陰発生延長倍率を示した説明図である。
【図6】本実施の形態における航空画像処理装置の地物ポリゴン発生システムの構成を示す説明図である。
【図7】本実施の形態における航空画像処理装置の日陰情報無し航空画像DB、日陰情報パラメータ、地物ポリゴンDBを示す説明図である。
【図8】本実施の形態における航空画像処理装置の地物のポリゴン生成処理を示す説明図である。
【図9】本実施の形態における航空画像処理装置の日陰領域を識別する処理を示すフローチャートである。
【図10】本実施の形態における航空画像処理装置の日陰発生角度、日陰発生延長倍率を判定する処理を示すフローチャートである。
【図11】本実施の形態における航空画像処理装置の日陰領域のポリゴン生成処理を示すフローチャートである。
【図12】本実施の形態における航空画像処理装置の日陰領域のポリゴン生成処理を示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
100 航空画像撮影システム
110 画像撮影部
120 画像記録中央制御部
130 日陰情報解析部
200 日陰情報付き航空画像DB
300 日陰情報無し航空画像DB
400 日陰情報パラメータ
500 地物ポリゴン生成システム
510 中央制御部
520 画像情報入力部
530 画像データ編集部
540 画像エッジ抽出部
550 ポリゴン生成部
560 日陰領域識別部
600 地物ポリゴンDB





【特許請求の範囲】
【請求項1】
写真画像を用いて地図の作成を支援する航空画像処理装置において、
写真画像に関する情報および写真画像上の地物から発生する影に基づいて、影の延長方向および所定方向間の日陰発生角度を解析する日陰角度解析手段と、
写真画像に関する情報および写真画像上の地物の長さおよび地物から発生する影に基づいて、この地物の長さおよび影に関する倍率を示す日陰発生延長倍率を解析する日陰倍率解析手段と、
写真画像中の地物の輪郭線を抽出し、この輪郭線を結線処理することによりポリゴンを生成するポリゴン生成手段と、
前記ポリゴン生成手段が生成したポリゴンから、前記日陰発生角度および日陰発生延長倍率の情報を用いて日陰領域を抽出し日陰領域のポリゴンを生成する日陰領域抽出手段とを備えたことを特徴とする航空画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の航空画像処理装置において、
前記日陰領域抽出手段は、
前記ポリゴン生成手段が生成したポリゴンを構成する線分から前記日陰発生角度に合致する線分を検出する日陰角度検出手段と、
前記日陰角度検出手段が検出した日陰発生角度に合致する線分が日陰発生延長倍率に合致するか否かを判定する日陰延長判定手段と、
前記日陰延長判定手段が判定した結果合致する場合に、前記日陰発生角度に合致する線分を用いて日陰領域のポリゴンを生成する日陰ポリゴン生成手段とを備えたことを特徴とする航空画像処理装置。
【請求項3】
写真画像を用いて地図の作成を支援する航空画像処理方法において、
写真画像に関する情報および写真画像上の地物から発生する影に基づいて、影の延長方向および所定方向間の日陰発生角度を解析するステップと、
写真画像に関する情報および写真画像上の地物の長さおよび地物から発生する影に基づいて、この地物の長さおよび影に関する倍率を示す日陰発生延長倍率を解析するステップと、
写真画像中の地物の輪郭線を抽出し、この輪郭線を結線処理することによりポリゴンを生成するステップと、
前記ポリゴン生成手段が生成したポリゴンから、前記日陰発生角度および日陰発生延長倍率の情報を用いて日陰領域を抽出し日陰領域のポリゴンを生成するステップとを備えたことを特徴とする航空画像処理方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−219231(P2007−219231A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40531(P2006−40531)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】