説明

航空荷物用ICタグラベル及び航空荷物用のICタグラベルの製造方法

【課題】安価に、かつ、容易に製造できる航空荷物用ICタグラベル及び航空荷物用ICタグラベルの製造方法を提供する。
【解決手段】印字層11と略同様の面積を有し、第1の接合層12を介して印字層11に接合され、印字層11の強度を補強するベースフィルム層15上に、ICチップ13及びアンテナ14を設けた。ベースフィルム層15は、二軸延伸されたポリプロピレンフィルムとし、ICチップ13及びアンテナ14を設けたウェブ状のベースフィルム層15と印字層11とをドライラミネート法を用いて接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空荷物に取り付けられ、非接触通信可能な航空荷物用ICタグラベル及び航空荷物用のICタグラベルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICタグは、RFID(Radio Frequency Identification)とも称され、個体の識別が可能な情報を保持するICチップを備え、専用の読み取り機を用いて、無線通信により非接触での情報の読み取りが可能となっている。
ICタグは小型であり、単体毎の認識が可能であることから、近年では、製品等の工場での工程管理や、流通情報の管理等、様々な分野において利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、航空荷物に取り付けられる非接触ICタグとリライト表示部を備えたICバゲージタグが開示されている。特許文献1では、プラスチック基材にアンテナコイルを形成してICチップを装着した非接触ICタグを、ICバゲージタグに貼付する形態となっているので、製造工程が多く、煩雑であった。また、非接触ICタグのプラスチック基材は、ICバゲージタグのベースとなるプラスチック基材とは別のものであるので、プラスチック基材の消費量が嵩み、生産コストがかかるという問題があった。
【特許文献1】特開2001−240218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、安価に、かつ、容易に製造できる航空荷物用ICタグラベル及び航空荷物用ICタグラベルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、印字可能な印字層(11)と、前記印字層の片面に設けられる第1の接合層(12)と、前記第1の接合層を介して前記印字層に接合され、前記印字層の強度を補強するベースフィルム層(15)と、アンテナ(14)と、前記アンテナに電気的に接続されたICチップ(13)と、前記ベースフィルム層の前記印字層とは反対側に設けられる第2の接合層(16)と、前記第2の接合層の前記ベースフィルム層とは反対側に設けられる剥離層(17)と、を備え、航空荷物に取り付けられる航空荷物用ICタグラベルであって、前記ベースフィルム層は、前記印字層と略同様の面積を有し、前記アンテナ及び前記ICチップは、前記ベースフィルム層上に設けられること、を特徴とする航空荷物用ICタグラベル(10)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の航空荷物用ICタグラベルにおいて、前記ベースフィルム層(15)は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて形成されていること、を特徴とする航空荷物用ICタグラベル(10)である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の航空荷物用ICタグラベルにおいて、略帯状であり、一方の端部に設けられる控え部(10B)と、前記ICチップと前記アンテナとを有するラベル部(10A)と、前記控え部と前記ラベル部との境界部分に形成された第1の切り離し予定線(18)と、を有し、前記第1の切り離し予定線に沿って切り離し可能であること、を特徴とする航空荷物用ICタグラベル(10)である。
請求項4の発明は、請求項3に記載の航空荷物用ICタグラベルにおいて、前記剥離層(17)には、前記第1の切り離し予定線(18)より前記ラベル部(10A)側に第2の切り離し予定線(19)が形成され、前記剥離層は、前記第2の切り離し予定線に沿って切り離し可能であること、を特徴とする航空荷物用ICタグラベル(10)である。
請求項5の発明は、印字可能な印字層(11)と、前記印字層の片面に設けられる第1の接合層(12)と、前記印字層と略等しい面積を有し、前記第1の接合層を介して前記印字層に接合され、前記印字層の強度を補強するベースフィルム層(15)と、前記ベースフィルム層上に形成されたアンテナ(14)と、前記アンテナに電気的に接続されたICチップ(13)と、前記ベースフィルム層の前記印字層とは反対側に設けられる第2の接合層(16)と、前記第2の接合層の前記ベースフィルム層とは反対側に設けられる剥離層(17)と、を備え、航空荷物に取り付けられる航空荷物用ICタグラベル(10)の製造方法であって、ウェブ状の前記ベースフィルム層に、前記ベースフィルム層の長手方向に沿って、複数組の前記アンテナと前記ICチップとを、略等間隔に並べて形成するアンテナ及びICチップ形成工程と、前記アンテナ及びICチップ形成工程の後に、ウェブ状の前記ベースフィルム層と、ウェブ状の前記印字層とを一体に接合する接合工程と、前記接合工程の後に、前記第2の接合層を形成する第2の接合層形成工程とを有すること、を特徴とする航空荷物用ICタグラベルの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明による航空荷物用ICタグラベルは、印字層と略同様の面積を有し、第1の接合層を介して印字層に接合され、印字層の強度を補強するベースフィルム層上に、アンテナ及びICチップが設けられるので、インレットを別途用意して接合する工程を減らすことができ、容易に製造できる。また、インレットに使用するプラスチック製の基材等が不要になり、生産コストを抑えることができる。
【0007】
(2)ベースフィルム層は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて形成されているので、引っ張り強度や剛性、耐熱性等を向上させることができ、航空荷物用ICタグラベルとして使用に耐え得る十分な強度とできる。
【0008】
(3)航空荷物用ICタグラベルは、略帯状であり、一方の端部に設けられる控え部と、ICチップとアンテナとを有するラベル部と、控え部とラベル部との境界部分に形成された第1の切り離し予定線とを有し、第1の切り離し予定線に沿って切り離し可能であるので、別途控えを用意する必要がないので、コストを低減できる。また、情報の印字をラベル部と控え部と同時に行えるので、使用時の作業効率を向上できる。
【0009】
(4)剥離層には、第1の切り離し予定線よりラベル部側に第2の切り離し予定線が形成され、剥離層は、第2の切り離し予定線に沿って切り離し可能であるので、ラベル部と控え部とに切り離す際に、ラベル部側の第2の接合層の一部が露出する形態とできる。従って、ラベル部を荷物に取り付ける際に、剥離層を剥離する作業を行う必要がなく、使用時の作業効率を向上できる。
【0010】
(5)本発明による航空荷物用ICタグラベルの製造工程は、ウェブ状のベースフィルム層に、ベースフィルム層の長手方向に沿って、複数組のアンテナとICチップとを、略等間隔に並べて形成するアンテナ及びICチップ形成工程と、アンテナ及びICチップ形成工程の後に、ウェブ状のベースフィルム層と、ウェブ状の印字層とを一体に接合する接合工程と、接合工程の後に、第2の接合層を形成する第2の接合層形成工程とを有するので、別途インレット等を用意する必要がなく、生産コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、安価に、かつ、容易に製造できる航空荷物用ICタグラベル及び航空荷物用ICタグラベルの製造方法を提供するという目的を、印字層と略同様の面積を有し、第1の接合層を介して印字層に接合され、印字層の強度を補強するベースフィルム層上に、アンテナ及びICチップを設けることにより実現した。
【0012】
(実施形態)
図1は、本実施形態の航空荷物用ICタグラベル10を示す図である。図1(a)は、航空荷物用ICタグラベル10の平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示した矢印S1−S2断面での断面図である。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
さらに、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、特許請求の範囲の記載は、フィルムという記載で統一して使用した。従って、板、シート、フィルムの文言は、適宜置き換えることができるものとする。例えば、ベースフィルムは、ベースシートとしてもよいし、ベース板としてもよい。
【0013】
本実施形態の航空荷物用ICタグラベル10は、略帯状であり、航空機に搭乗する際に預ける手荷物に取り付けられる、いわゆるバゲージタグである。
航空荷物用ICタグラベル10は、印字層11,第1の接合層12,ICチップ13,アンテナ14,ベースフィルム層15,第2の接合層16,剥離層17,第1のミシン目部18,第2のミシン目部19等を備えている。
印字層11は、紙製又は樹脂製のシート状の部材等を用いて形成され、印字可能な層である。本実施形態では、印字層11は、感熱紙を用いており、その表面(第1の接合層12とは反対側)に印字可能である。
使用時には、この印字層11には、航空荷物用ICタグラベル10が取り付けられる荷物の行き先や航空便の内容、所有者の氏名等の情報が、文字や記号等で印字される。
【0014】
第1の接合層12は、印字層11とベースフィルム層15とを接合する機能を有する層であり、印字層11の一方の面の全面に、接着剤を用いて形成されている。
本実施形態では、印字層11とベースフィルム層15とは、ドライラミネート法を用いて接合され、第1の接合層12は、ウレタン樹脂系のドライラミネート法用の接着剤が用いられている。
ベースフィルム層15は、第1の接合層12を介して印字層11に接合される層であり、その強度が印字層11よりも強く、印字層11の強度を補強する機能を有している。このベースフィルム層15は、印字層11と略等しい面積であり、印字層11の片面(剥離層17側の面)全面を覆うように設けられている。
本実施形態では、ベースフィルム層15は、二軸延伸されたポリプロピレンフィルム(OPP(biaxial oriented polypropylene)フィルム)を用いて形成されている。このOPPフィルムは、機械的性質(引っ張り強度、剛性)、耐熱性等に優れている。従って、印字層11に、印字層11と略等しい面積のベースフィルム層15を接合することにより、航空荷物用ICタグラベル10は、バゲージタグとして使用に適した強度となる。
【0015】
アンテナ14は、ベースフィルム層15に形成された導電パターンであり、アルミニウムやアルミニウム合金等のアルミニウム系の材料を用いて形成されている。本実施形態では、アンテナ14は、ダイポール型のアンテナである。このアンテナ14は、本実施形態では、ベースフィルム層15の片面に、アルミニウムをエッチングすることにより形成されている。
ICチップ13は、半導体素子を含む集積回路であり、個体の識別を可能にするユニークID等を記録している。ICチップ13は、不図示の電極部を有しており、この電極部が、アンテナ14に設けられた不図示の接点部と電気的に接続するように設けられ、ベースフィルム層15に接合されている。
【0016】
本実施形態の航空荷物用ICタグラベル10は、ICチップ13及びアンテナ14により、UHF帯(860〜960MHz)の周波数を使用した電波方式による非接触情報通信が可能である。
なお、図1(a)には、理解を容易にするために、破線によって、ICチップ及びアンテナ14が設けられている領域が示されているが、本実施形態の航空荷物用ICタグラベル10では、印字層11側からは、その形状を観察し難い形態となっている。なお、以下に示す図2(a)及び図3(a)においても同様とする。
このICチップ13及びアンテナ14は、略帯状の航空荷物用ICタグラベル10(ベースフィルム層15)の任意の位置に設けることが可能であるが、ICチップ13の破損等を防止する観点から、少なくともICチップ13は、印字層11に印字が予定される領域を避けて配置されることが望ましい。
【0017】
第2の接合層16は、ベースフィルム層15の印字層11とは反対側(すなわち、ベースフィルム層15と剥離層17との間)に設けられる層であり、本実施形態では、アクリル系の粘着剤を、ベースフィルム層15の剥離層17側の全面を覆うように塗布して形成されている。なお、第2の接合層16は、粘着性を有するシート状の部材を用いて形成してもよい。
剥離層17は、第2の接合層16のベースフィルム層15とは反対側に設けられる層であり、第2の接合層16に剥離可能に接合されている。本実施形態では、第2の接合層16側の面は剥離性を有しているが、他方の面(第2の接合層16とは反対側の面)の剥離性は第2の接合層16側の面に比べて低い。また、本実施形態では、剥離層17の第2の接合層16とは反対側の面は、印字可能であり、予め、航空荷物用ICタグラベル10の使用方法や、航空荷物用ICタグラベル10が取り付けられる荷物に対する航空会社の保障に関する注意書き等が印刷されている。
【0018】
航空荷物用ICタグラベル10は、ICチップ13及びアンテナ14を有するラベル部10Aと、長手方向の端部に形成された控え部10Bとを有しており、ラベル部10Aと控え部10Bとの境界部分には、第1の切り離し予定線として、第1のミシン目部18が形成されている。本実施形態では、第1のミシン目部18は、航空荷物用ICタグラベル10の長手方向に直交する方向に、印字層11から第2の接合層16まで達する深さで形成されており、航空荷物用ICタグラベル10は、この第1のミシン目部18に沿ってラベル部10Aと控え部10Bとに切り離し可能である。
【0019】
なお、本明細書中では、ミシン目部とは、任意の層等に所定の間隔で連続して並んで形成された貫通孔だけでなく、貫通孔と貫通孔との間の領域も含めてミシン目部と呼ぶこととする。
剥離層17には、航空荷物用ICタグラベル10の長手方向において、第1のミシン目部18よりもラベル部10A側に、第2の切り離し予定線として、第2のミシン目部19が形成されている。剥離層17は、第2のミシン目部19に沿って切り離し可能である。本実施形態では、第2のミシン目部19は、第1のミシン目部18に略平行に形成されている。
【0020】
(製造方法)
本実施形態の航空荷物用ICタグラベル10の製造方法について説明する。
まず、ウェブ状のベースフィルム層15上に、その長手方向に沿って複数組のアンテナ14及びICチップ13を等間隔に並ぶように設ける(アンテナ及びICチップ形成工程)。
次に、アンテナ14及びICチップ13を設けたウェブ状のベースフィルム層15と、ウェブ状の印字層11とをドライラミネート法によって接合する(接合工程)。本実施形態では、印字層11の片面にドライラミネート法用の接着剤(第1の接合層12)を塗布し、接着剤中の溶媒を乾燥させ、乾いた状態にした後に、ニップロール等を用いてベースフィルム層15と貼り合わせている。なお、第1の接合層12となる接着剤は、ベースフィルム層15に塗布してもよい。
【0021】
印字層11とベースフィルム層15とを接合した後に、ベースフィルム層15の印字層11とは反対側に第2の接合層16を形成する(第2の接合層形成工程)。本実施形態では、粘着剤を塗布して第2の接合層16を形成するが、粘着性を有するシート状の部材等を、ベースフィルム層15に接合して、第2の接合層16を形成してもよい。
第2の接合層16を形成した後に、剥離層17を第2の接合層16上に剥離可能に接合し、各ミシン目部や不図示のハーフカット等を形成所定の寸法に切断する。本実施形態では、1つの航空荷物用ICタグラベル10に1対のICチップ13及びアンテナ14が備えられるように切断している。ハーフカットは、印字層11やベースフィルム層15,第2の接合層16の面積が、剥離層17の面積よりも若干小さくなるように形成され、このハーフカットに沿って、印字層11等の不要な領域を剥離層17から剥離し、形状を整える。
これらの工程を経て、図1に示すような形状の航空荷物用ICタグラベル10となる。
【0022】
なお、本実施形態では、ベースフィルム層15に第2の接合層16を形成した後に、剥離層17を第2の接合層16上に剥離可能に接合する例を示したが、これに限らず、例えば、両面に粘着性を有するシート状の部材の片面に剥離性を有するシート状の部材が剥離可能に接合された部材を、ベースフィルム層15に接合することにより、第2の接合層16及び剥離層17を設けてもよい。
【0023】
(使用方法)
本実施形態の航空荷物用ICタグラベル10の使用方法の一例を説明する。
搭乗者(荷物の所有者)が、空港の手荷物預かり所等で荷物を預けると、航空会社の職員等は、行き先や搭乗便、所有者の氏名等の必要な情報を不図示の端末に入力する。端末は、情報を入力可能な入力部と、航空荷物用ICタグラベル10と非接触通信可能なリーダライタ部と、印字層11に印字可能なプリンタ部(本実施形態では、感熱式プリンタ)等を備えている。
端末には航空荷物用ICタグラベル10が備えられており、入力された情報は、リーダライタ部によってICチップ13に記録される。また、入力された情報は、プリンタ部により、印字層11の表面に、文字や記号、バーコード等として、ラベル部10Aに1箇所以上と、控え部10Bとに印字される。
【0024】
ICチップ13への記録と印字層11への印字を行った航空荷物用ICタグラベル10を端末から外し、印字された情報に誤りがないか等を確認してから、第1のミシン目部18に沿ってラベル部10Aと控え部10Bとを切り離す。このとき、剥離層17は、第2のミシン目部19に沿って切り離される。
切り離された控え部10Bは、搭乗者に渡され、荷物引渡し時に荷物を照合する控えとして使用される。
一方のラベル部10Aは、剥離層17が第2のミシン目部19で切り離されたことにより、第2の接合層16が露出した領域16Aを有する形態となる。この状態のラベル部10Aを、荷物の持ち手等に通し、領域16Aを長手方向の対向する端部の剥離層17に接合してループ状とし、荷物に取り付ける。
ラベル部10Aは、ICチップ13及びアンテナ14を有しているので、非接触通信が可能であり、例えば、空港における荷物の仕分けが容易に、かつ、確実に行える。
また、控え部10B側に残った剥離層17を剥離した場合には、手帳やパスポート等に控え部10Bを貼付することができ、紛失を防止できる。
【0025】
ここで、比較例の航空荷物用ICタグラベル50について説明する。
図2は、比較例の航空荷物用ICタグラベル50である。図2(a)は、比較例の航空荷物用ICタグラベル50の平面図であり、図2(b)は、図2(a)に示した矢印S3−S4断面での断面図である。
なお、前述した従来例と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
比較例の航空荷物用ICタグラベル50は、印字層11,第1の接合層12,ベースフィルム層51,第2の接合層16,ICチップ13,アンテナ14,基材層52,第3の接合層54,剥離層17,第1のミシン目部18,第2のミシン目部19等を備えている。また、比較例の航空荷物用ICタグラベル50は、第1のミシン目部18によって、ラベル部50Aと控え部50Bとに切り離し可能である。この比較例のラベル部50A及び控え部50Bの使用方法等は、本実施形態のラベル部10A及び控え部10Bと略同様である。
【0026】
比較例のベースフィルム層51は、アンテナ14及びICチップ13を備えていない点が異なる以外は、本実施形態のベースフィルム層15と略同様の形態である。
比較例のICチップ13及びアンテナ14は、ベースフィルム層51とは別体の基材層52に形成されており、ICチップ13,アンテナ14,基材層52によって形成される部分は、インレット53と呼ばれる。このインレット53の面積は、印字層11の面積に比べて小さい。基材層52は、インレットのベースとなる部分であり、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate)を用いて形成され、その厚みはベースフィルム層51に比べて厚い。このインレット53は、第2の接合層16に接合されている。
第3の接合層54は、インレット53の剥離層17側に形成される層であり、例えば、粘着剤を塗布して形成されている。
【0027】
比較例の航空荷物用ICタグラベル50は、ドライラミネート法等によりウェブ状の印字層11とウェブ状のベースフィルム層51とを接合し、第2の接合層を形成した後に、予め作製する等して用意しておいたインレット53(ICチップ13,アンテナ14,基材層52)に第3の接合層54を形成したものを、第2の接合層16上に所定の間隔で配列して接合する。そして、第2の接合層16及び第3の接合層54上に剥離層17を剥離可能に接合し、ミシン目部等を形成した後に、所定の寸法に切断して形成される。
【0028】
本実施形態の航空荷物用ICタグラベル10は、比較例の航空荷物用ICタグラベルに比べて、層構成が少なく、基材層52及び第3の接合層54を省くことができ、生産コストを抑えることができる。
また、本実施形態では、インレット53を第2の接合層16上に接合する作業が不要であるので、製造工程を減らすことができ、容易に製造できる。
さらに、比較例の航空荷物用ICタグラベル50では、第3の接合層54が形成されたインレット53を、第2の接合層16に接合しているため、インレット53及び第3の接合層54の段差に起因する凹凸が生じるが、本実施形態では、ICチップ13及びアンテナ14をベースフィルム層15に設けるので、そのような段差を比較例に比べて小さくできる。従って、プリンタ等での搬送を、よりスムーズに行える。
【0029】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態において、第2の接合層16は、航空荷物用ICタグラベル10の剥離層17側の面全面に形成される例を示したが、これに限らず、例えば、航空荷物用ICタグラベル10の剥離層17側の面の一部にのみ形成する形態としてもよい。
図3は、航空荷物用ICタグラベルの変形形態の一例を示す図である。図3(a)は、変形形態の航空荷物用ICタグラベル10−2の平面図であり、図3(b)は、図3(a)中に示す矢印S5−S6断面での断面図である。
変形形態の第2の接合層16−2は、航空荷物用ICタグラベル10−2の長手方向において、ベースフィルム層15の控え部10B側の端部から第1のミシン目部18よりラベル部10A側まで形成されている。また、剥離層17−2は、第2の接合層16−2の面積と略等しい面積であり、第2のミシン目部が形成されていない。
【0030】
変形形態の航空荷物用ICタグラベル10−2を、第1のミシン目部18に沿って、ラベル部10−2Aと控え部10−2Bとに切り離すと、剥離層17−2が剥離され、ラベル部10−2A側の第2の接合層16−2Aが露出し、荷物の持ち手等に取り付け可能となる。
このような形態とすれば、第2の接合層16−2を形成する粘着剤や剥離層17−2を形成する剥離紙等の使用量を減らすことができ、より生産コストを抑えることができる。
なお、第2の接合層は、ラベル部側に、接合に必要な面積だけ形成する形態(すなわち、図3(b)に示す領域16−2Aのみに形成する形態)とすれば、さらに生産コストを抑えることができる。
【0031】
(2)本実施形態において、航空荷物用ICタグラベル10は、UHF帯の周波数を使用し、電波方式による非接触通信を行なう例を示したが、これに限らず、例えば、マイクロ波の周波数帯(2.45GHz)を使用するICタグとしてもよいし、125kHz〜135kHzの周波数帯や、13.56MHzの周波数帯を使用し、電磁誘導方式の非接触通信を行なう航空荷物用ICタグラベルとしてもよい。
【0032】
(3)本実施形態では、印字層11は感熱紙としたが、これに限らず、例えば、感熱フィルム等でもよく、使用するプリンタの特性に応じたものを、適宜選択して使用してよい。
また、本実施形態では、感熱式のプリンタを使用して印字層11に印字する例を示したが、これに限らず、例えば、熱転写式のプリンタや、インクジェット式のプリンタ、レーザー方式のプリンタ等、適宜選択して使用してよい。
【0033】
(4)本実施形態では、第1の接合層12は、ドライラミネート法用の接着剤である例を示したが、これに限らず、例えば、ホットメルト型の接着剤や、2液硬化型の接着剤等を用いてもよい。従って、本実施形態では、印字層11とベースフィルム層15とは、ドライラミネート法によって接合される例を示したが、第1の接合層12に使用する接着剤に合わせて、適宜接合方法を選択できる。
【0034】
(5)本実施形態において、アンテナ14は、アルミニウム系の材料を用い、エッチングによりベースフィルム層15に形成される例を示したが、これに限らず、例えば、銅を用いて形成してもよいし、導電性を有するインク等を用いて印刷等により形成してもよい。
【0035】
(6)本実施形態において、第1の切り離し予定線及び第2の切り離し予定線として、第1のミシン目部18及び第2のミシン目部19が形成される例を示したが、これに限らず、例えば、ハーフカット等を形成してもよい。
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態及び各変形形態によって限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態の航空荷物用ICタグラベル10を示す図である。
【図2】比較例の航空荷物用ICタグラベル50を示す図である。
【図3】航空荷物用ICタグラベルの変形形態の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10 航空荷物用ICタグラベル
11 印字層
12 第1の接合層
13 ICチップ
14 アンテナ
15 ベースフィルム層
16 第2の接合層
17 剥離層
18 第1のミシン目部
19 第2のミシン目部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字可能な印字層と、
前記印字層の片面に設けられる第1の接合層と、
前記第1の接合層を介して前記印字層に接合され、前記印字層の強度を補強するベースフィルム層と、
アンテナと、
前記アンテナに電気的に接続されたICチップと、
前記ベースフィルム層の前記印字層とは反対側に設けられる第2の接合層と、
前記第2の接合層の前記ベースフィルム層とは反対側に設けられる剥離層と、
を備え、航空荷物に取り付けられる航空荷物用ICタグラベルであって、
前記ベースフィルム層は、前記印字層と略同様の面積を有し、
前記アンテナ及び前記ICチップは、前記ベースフィルム層上に設けられること、
を特徴とする航空荷物用ICタグラベル。
【請求項2】
請求項1に記載の航空荷物用ICタグラベルにおいて、
前記ベースフィルム層は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて形成されていること、
を特徴とする航空荷物用ICタグラベル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の航空荷物用ICタグラベルにおいて、
略帯状であり、
一方の端部に設けられる控え部と、
前記ICチップと前記アンテナとを有するラベル部と、
前記控え部と前記ラベル部との境界部分に形成された第1の切り離し予定線と、
を有し、
前記第1の切り離し予定線に沿って切り離し可能であること、
を特徴とする航空荷物用ICタグラベル。
【請求項4】
請求項3に記載の航空荷物用ICタグラベルにおいて、
前記剥離層には、前記第1の切り離し予定線より前記ラベル部側に第2の切り離し予定線が形成され、
前記剥離層は、前記第2の切り離し予定線に沿って切り離し可能であること、
を特徴とする航空荷物用ICタグラベル。
【請求項5】
印字可能な印字層と、
前記印字層の片面に設けられる第1の接合層と、
前記印字層と略等しい面積を有し、前記第1の接合層を介して前記印字層に接合され、前記印字層の強度を補強するベースフィルム層と、
前記ベースフィルム層上に形成されたアンテナと、
前記アンテナに電気的に接続されたICチップと、
前記ベースフィルム層の前記印字層とは反対側に設けられる第2の接合層と、
前記第2の接合層の前記ベースフィルム層とは反対側に設けられる剥離層と、
を備え、航空荷物に取り付けられる航空荷物用ICタグラベルの製造方法であって、
ウェブ状の前記ベースフィルム層に、前記ベースフィルム層の長手方向に沿って、複数組の前記アンテナと前記ICチップとを、略等間隔に並べて形成するアンテナ及びICチップ形成工程と、
前記アンテナ及びICチップ形成工程の後に、ウェブ状の前記ベースフィルム層と、ウェブ状の前記印字層とを一体に接合する接合工程と、
前記接合工程の後に、前記第2の接合層を形成する第2の接合層形成工程と、
を有すること、
を特徴とする航空荷物用ICタグラベルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−80423(P2009−80423A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251267(P2007−251267)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】