説明

航行情報表示装置

【課題】目標地点への到達が容易な航行情報表示装置を提供する。
【解決手段】表示画面10を備えた画像表示器と、自船の位置を検出し、自船位置情報として出力する自船位置検出装置と、自船の船首方向の方位を検出し、方位情報として出力する方位検出装置と、目標地点Tの位置情報を記憶する位置情報記憶手段と、自船位置情報と方位情報と目標地点Tの位置情報とに基づいて、現在の船首方向を上向きとし、かつ現在の自船位置を固定表示してなる仮想水面42上に、前記目標地点Tを示す目標マーク41と、該目標地点Tを基準とする複数の等距離線39とを変動表示してなる目標到達支援画像31を前記表示画面10に表示する表示制御手段とを具備するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船の航行に有益な情報を提供する航行情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般の航行情報表示装置は、表示画面を備えた画像表示器と、自船の位置を検出する自船位置検出装置と、船首方向の方位を検出する方位検出装置とを備え、地図上に自船位置と船首方向を示してなる自船位置画像を表示画面に表示する。また、釣り船用の航行情報表示装置等では、魚群探知機等によって発見した漁礁等の位置情報を記憶し、必要に応じて自船位置画像の地図上に表示可能となっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図7(a)は、従来の航行情報表示装置の表示画面10に表示される自船位置画像29の一例である。かかる自船位置画像29では、等深線32や海岸線等が記載された地図28に、自船位置と船首方向が船形の自船マーク34で表示され、目標地点が四角形の目標マーク41で表示される。ここで、一般的な自船位置画像29では、自船マーク34が表示画面10に固定的に表示され、自船位置や船首方向が変化すると、図7(a)から図7(b)への変化のように、自船マーク34が固定されたまま、背景の地図28や方位マーク36、目標マーク41が変動表示される。かかる自船位置画像29によれば、操船者は、地図28上の自船マーク34と目標マーク41を対比することで、目標地点までの距離や相対方位を把握できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−198424号公報(段落0035 図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、釣り船の目標とする漁礁は小さいものだと直径10m以下である。このため、目標とする漁礁が小さい場合は、操船者は数メートル単位の誤差範囲で自船を目標地点に到達させなくてはならない。このような僅かな許容誤差の範囲で自船を目標地点に到達させるのは簡単ではない。陸上とは異なり、水上には目標地点を示す目印など存在せず、航行情報表示装置が表示する自船位置画像のみを頼りに目標地点へ操船しなければならないためである。
【0006】
すなわち、航行情報表示装置に基づく操船では、自船位置画像を介して目標地点の位置を間接的に認識するため、目標地点を直接目視できる場合に比べて、目標地点の位置がわかり難く、目標地点の位置を認識するまでに遅れ(認知遅れ)が生じる。また、検出した最新の自船位置や船首方向を自船位置画像に反映するまでの遅れ(表示遅れ)もある。従来の航行情報表示装置では、こうした認知遅れや表示遅れが、操船者が認知する目標地点と、実際の目標地点の位置にズレを生じさせ、目標地点への正確な到達を難しくしている。このため、従来の航行情報表示装置では、操船者が目標地点へ上手く操船できず、目標地点へのアプローチを繰り返すことがある。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来構成よりも目標地点への到達を容易にする航行情報表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表示画面を備えた画像表示器と、自船の位置を検出し、自船位置情報として出力する自船位置検出装置と、自船の船首方向の方位を検出し、方位情報として出力する方位検出装置と、目標地点の位置情報を記憶する位置情報記憶手段と、前記自船位置検出装置が出力する自船位置情報と、方位検出装置が出力する方位情報と、位置情報記憶手段が記憶する目標地点の位置情報とに基づいて、現在の船首方向を上向きとし、かつ現在の自船位置を固定表示してなる仮想水面上に、前記目標地点を示す目標マークと、該目標地点を基準とする複数の等距離線とを変動表示してなる目標到達支援画像を前記表示画面に表示する表示制御手段とを備えることを特徴とする航行情報表示装置である。
【0009】
本発明に係る目標到達支援画像では、目標到達支援画像に表示される複数の等距離線によって、操船者は、目標地点までの距離を容易に把握可能となる。また、目標到達支援画像では、等距離線が自船位置ではなく目標地点を基準に表示されるため、目標地点までの相対方位も容易に把握できる。すなわち、等距離線が目標マークとともに変動することで、操船者は、画像全体で目標地点の相対方位を把握できるのである。また、ヒトは無意識に円の中心に向かう傾向があるため、目標マークを囲む複数の等距離線によって、操船者は目標地点到達に必要な操舵を違和感なく直感的に行うことができる。したがって、本発明にあっては、操船者は、目標到達支援画像によって、自船に対する目標地点の相対位置(距離及び相対方位)を瞬間的に認知し、目標地点に向けてスムーズに操船することが可能となる。
【0010】
また、本発明にあっては、前記表示制御手段は、前記目標到達支援画像に地図を表示しないことが提案される。かかる構成にあっては、目標到達支援画像の背景に、海岸線や等深線等の地図情報が表示されないため、自船位置や船首方向の検出から目標到達支援画像を表示するまでの表示遅れが極めて小さくなる。すなわち、図7に示した従来の自船位置画像29では、自船位置や船首方向が変化するたびに背景地図を書き換える処理が発生するため、演算処理が複雑で表示遅れが大きいという欠点があるが、かかる構成では、目標到達支援画像を表示するのに地図の書換え処理が不要となり、演算処理が単純になるから、高価なハードウェアを用いることなく、目標到達支援画像の表示遅れを小さくできるのである。
【0011】
また、本発明にあっては、前記表示制御手段は、前記目標到達支援画像の等距離線に、目標地点からの距離を標記して、目標地点までの距離を一層認知し易くすることが提案される。また、目標地点までの距離を認知し易くするために、目標到達支援画像に表示する複数の等距離線は、目標地点を基準に等距離間隔で表示することも提案される。
【発明の効果】
【0012】
以上に述べたように、本発明に係る目標到達支援画像は、目標地点までの距離及び相対方位を瞬時に認知可能とし、目標地点への直感的な操舵を可能とするものである。このため、本発明によれば、目標地点へ操船する際の認知遅れを従来構成よりも大幅に短縮でき、操船者は、より確実に目標地点へ到達可能となる。
【0013】
また、目標到達支援画像に地図を表示しない構成とした場合には、既存の自船位置画像に比べて表示遅れが極めて小さくなり、高価な機器を用いることなく、略リアルタイムの目標地点を目標到達支援画像に表示可能となり、目標地点への到達が一層容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】航行情報表示装置1の制御回路を示すブロック図である。
【図2】画像表示器9の表示画面10の表示例である。
【図3】(a)は、目標到達支援画像31の表示例であり、(b)は、目標到達支援画像31の別の表示例である。
【図4】(a)は、目標到達支援画像31の表示例であり、(b)は、(a)の目標到達支援画像31によってイメージされる水上の目標地点Tを示す概念図である。
【図5】(a)は、目標到達支援画像31の表示例であり、(b)は、(a)の画像を縮尺変更した時の表示例である。
【図6】変形例の目標到達支援画像31の表示例である。
【図7】従来の航行情報表示装置に係る自船位置画像29の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を、以下の実施例に従って説明する。
【0016】
図1は、実施例の航行情報表示装置1の制御回路を示すブロック図である。航行情報表示装置1は、マイクロコンピュータからなる主制御部11を備えている。この主制御部11には、航行情報表示装置1の統括的な制御を処理実行するための中央処理装置(CPU)12が配設される。この中央処理装置12には、測定情報等を読み書きするための測定情報用メモリ(RAM)13が、データのやり取りを行うデータバス(図示省略)を介して接続されている。また、この中央処理装置12には、地図情報が記憶された地図情報用メモリ(ROM)14が、データを読み書きするアドレスを指定するための情報を一方的に伝えるアドレスバス(図示省略)を介して接続されている。さらに、中央処理装置12には、種々の制御を処理実行するためのプログラムが格納されるプログラム用メモリ(ROM)15や、演算に必要なデータが記憶される演算用メモリ(RAM)16も接続されている。また、主制御部11には、計時装置17が設けられており、この計時装置17から中央処理装置12へ随時時刻情報が出力される。
【0017】
さらに、主制御部11には、入力ポート(図示省略)及び出力ポート(図示省略)が設けられ、これらのポートを介して方位検出装置2、自船位置検出装置3が接続される。また、本実施例の航行情報表示装置1は魚群探知機を兼ねるものであり、主制御部11には魚探用送受波装置4が接続される。
【0018】
前記方位検出装置2は、例えば地磁気によりマグネットが回転する様に構成し、該マグネットの回転角度を磁束変化としてホール素子により検知するタイプの方位検出装置や、フラックスゲートセンサーや、ジャイロセンサー等の方位検出装置が適用され得る。この方位検出装置2は、N極検出方向と船首方向とが平行となる様に船の適宜箇所に取り付けられる。
【0019】
かかる方位検出装置2は、船首方向の現方位に対応して変化するsin出力又はcos出力を発生する。この出力は、A/D変換器25を介して方位情報として主制御部11に出力され、該中央処理装置12で解読される。
【0020】
自船位置検出装置3は、GPSアンテナ23と、該GPSアンテナ23と主制御部11とを接続するGPS演算回路24とにより構成されており、GPSアンテナ23が受信した信号に基づいて、経度及び緯度で特定される自船の二次元絶対位置を検出し、検出した二次元絶対位置を自船位置情報として主制御部11の入力ポートへ出力する。
【0021】
魚探用送受波装置4は、超音波を送受信する送受波部20と、該送受波部20と主制御部11とを接続する送受波制御回路21とから構成されており、主制御部11から送受波制御回路21へ所定のトリガー信号が出力されると、送受波部20が所定波長の超音波パルスを水中に送波するようになっている。そして、水底や魚群に反射した反響波が送受波部20で受波されると、送受波制御回路21が、送受波部20が受波した反響波の情報(受波タイミングや受波強度等)をデジタル信号に変換し、反響波情報として主制御部11へ出力する。
【0022】
送受波制御回路21から主制御部11に反響波情報が入力されると、中央処理装置12は、該反響波情報を、GPS演算回路24から出力された自船位置情報と、計時装置17から出力された時刻情報と関連付けて、1セットの測定情報として測定情報用メモリ13に記憶する。測定情報用メモリ13は、約5時間分の測定情報を記憶可能な容量を有しており、測定情報は測定順に蓄積記憶される。測定情報が記憶容量を超えた場合には、古い測定情報が順次削除される。
【0023】
地図情報用メモリ14には、所要領域の海岸線及び等深線付きの二次元地図情報、又は三次元地図情報がベクトルデータとして記憶される。
【0024】
また、主制御部11の入力ポートには、オペレータが種々の設定を入力するためのキー操作部26が接続される。このキー操作部26はポインティングデバイスや複数のボタンを備えており、オペレータは、これらを操作することによって、画像表示器9の表示モードや各種の表示設定等を変更できる。
【0025】
また、本実施例にあっては、表示画面10に表示された地図上の地点を、キー操作部26を介して指定することにより、当該地点の位置情報(二次元絶対座標)を測定情報用メモリ13に記憶可能となっている。このため、オペレータは、魚探用送受波装置4の反響波情報から好適な漁礁等を発見した場合には、当該地点の位置情報を記憶させておくことができる。そして、本実施例では、このように位置情報を記憶した地点は、目標地点として指定して地図上に表示可能となる。すなわち、本実施例においては、測定情報用メモリ13が本発明に係る位置情報記憶手段を構成する。
【0026】
また、主制御部11の入出力ポートには表示制御回路18が接続されており、該表示制御回路18に、画像表示器9が接続される。画像表示器9は、横長矩形状の表示画面10(図2参照)を備えるものであり、TFTやLCD、CRT等によって構成される。
【0027】
以上の構成によれば、中央処理装置12が、測定情報用メモリ13に記憶された各情報や、地図情報用メモリ14の地図情報等を随時読み出して、キー操作部26の操作によって選択された表示モードや表示設定に基づいて種々の所要画像データを生成し、さらに生成した各画像データから表示画面情報を生成し、表示制御回路18へと出力する。表示制御回路18は、中央処理装置12から表示画面情報を受け取ると、その表示画面情報を適正なビデオ信号に変換し、画像表示器9へと出力する。すなわち、本実施例では、これらの中央処理装置12や表示制御回路18によって、本発明における表示制御手段が構成される。
【0028】
図2は、画像表示器9の表示画面10の一表示例である。図2に示すように、表示画面10には、地図28上に自船位置等を示してなる自船位置画像29や、反響波情報を可視化して時系列表示してなる反響波画像30、そして、本発明に係る目標到達支援画像31等が表示される。本実施例の航行情報表示装置1では、前記キー操作部26の操作によって、図2に示すように、これらの画像29〜31を並列表示したり、重ねて表示したりすることができる。また、任意の画像29〜31を表示画面10全体に表示することもできる。
【0029】
前記自船位置画像29は、図2に示すように、等深線32や海岸線33が付された自船位置周辺地図28の上に、自船の現在位置と、現時点の船首方向と、航跡とを示してなるものである。詳述すると、自船の現在位置は、地図28に付される船形の自船マーク34の位置によって示され、船首方向は、該自船マーク34の尖った先端の向きにより示される。そして、航跡は地図28上の航跡ライン35によって示される。また、自船位置画像29の左上部には地図28のN極方向を示す方位マーク36が付されている。かかる自船位置画像29では、自船位置と船首方向が固定的に表示される。すなわち、自船位置や船首方向が変化すると、自船マーク34の位置や向きを変動させず、背景地図28が移動・回転するように自船位置画像29が更新される。
【0030】
前記反響波画像30は、図2に示すように、可視化した反響波情報を幅方向に沿って測定した順番に並べてなるものである。反響波画像30では、より新しい反響波情報が右側に、より古い反響波情報が左側に来るように表示される。縦軸は送波した超音波が反射した水深を示し、受波した反響波の強さが色や濃淡によって表される。反響波画像30において、幅方向に連続的に表示されている反響波は水底で反射した水底エコー38であり、水底エコー38の上方に塊状に表示されている反響波は魚群で反射した魚群エコー37である。
【0031】
以下に、本発明の要部に係る構成について説明する。
【0032】
上述のように、本実施例の航行情報表示装置1では、自船位置画像29の地図28上の点をキー操作部26で指定することにより、指定した地点の位置情報(二次元絶対座標)を測定情報用メモリ13に記憶可能となっており、操作者は、測定情報用メモリ13に記憶された任意の地点を目標地点として設定可能となっている。
【0033】
図2に示すように、目標地点に設定された地点は、自船位置画像29の地図28上に四角形の目標マーク41として示される。本実施例では、目標到達支援画像31は、目標地点周辺の狭い水域で目標地点への到達を支援するのに特化した画像であり、通常、目標地点へ向かう際には、目標到達支援画像31を用いる前に、まず、自船位置画像29に示された目標マーク41を手掛かりに目標地点の周辺水域まで航行する。
【0034】
目標到達支援画像31は、上述のように、目標地点周辺にあって、目標地点への精密な到達を支援するためのものである。この目標到達支援画像31を用いる際には、画像の表示遅れを最小限にするために、図3(a)に示すように、目標到達支援画像31を表示画面10全体に表示して、その他の画像を極力表示しないことが望ましい。
【0035】
目標到達支援画像31は、図3(a)に示すように、平面表示した仮想水面42に、現在の自船位置と船首方向を固定表示するとともに、目標地点と、該目標地点を基準とする複数の等距離線39とを、自船位置及び船首方向の変化に合わせて変動表示してなるものである。この目標到達支援画像31は、目標地点の相対位置を示すものであり、表示遅れを最小限に抑えるために海岸線や等深線等の地図情報は表示しない。
【0036】
仮想水面42は、自船に対する目標地点の相対位置を示すための平面である。この仮想水面42では自船位置と船首方向が固定され、仮想水面42上の全ての点は、自船からの距離と、船首方向に対する相対方位によって規定される。目標到達支援画像31では、仮想水面42の原点となる自船位置が画像の中央に固定的に表示され、該自船位置には自船位置画像29同様に船形の自船マーク34が付されている。また、目標到達支援画像31では、仮想水面42は船首方向が画像の上方となるよう固定され、前記自船マーク34は画像中央に先端を上向きにして固定表示される。
【0037】
目標到達支援画像31では、図3(a)に示すように、仮想水面42上の目標地点に対応する位置に、四角形状の目標マーク41が表示され、また、自船マーク34と目標マーク41を結ぶように直線状のガイドライン40が表示される。そして、かかる目標到達支援画像31の仮想水面42上に、目標マーク41を中心に、複数の等距離線39が等間隔に同心円状に表示される。この等距離線39は、目標地点を基準として、等距離間隔(ここでは10m間隔)で表示されており、各等距離線39には、目標地点までの距離がメートル単位で標記される。
【0038】
かかる目標到達支援画像31は、自船位置検出装置や方位検出装置が自船位置情報や方位情報を出力するのに合わせて高頻度で更新される。目標到達支援画像31では、上記のように、自船位置と船首方向が固定的に表示されるため、画像が更新されても自船マーク34は変動せず、自船位置と船首方向の変化に合わせて目標マーク41やガイドライン40、等距離線39が変動表示される。例えば、図3(a)の目標到達支援画像31の状態にあって、自船を自船マーク34の位置からP地点まで航行させた場合には、図3(b)に示すように、自船マーク34の位置・向きが固定されたまま、目標マーク41や等距離線39が自船マーク34の周囲を移動するように目標到達支援画像31が更新されることとなる。
【0039】
かかる目標到達支援画像31によれば、操船者は、仮想水面42上に表示される複数の等距離線39によって目標地点までの距離を簡単に把握可能となる。特に、等距離線39は、目標マーク41を中心に等距離間隔で同心円状に形成され、また、各等距離線には目標地点までの距離が標記されるため、操船者は目標地点までの距離を瞬時に把握できる。また、目標到達支援画像31では、等距離線39が目標マーク41とともに変動するため、操船者は、画像全体で目標地点の相対方位を把握でき、目標地点の相対方位も瞬時に把握できるという利点がある。
【0040】
このように、本実施例にあっては、操船者は、目標到達支援画像31によって目標地点までの距離及び相対方位を瞬時に把握可能となる。このため、操船者は、例えば、図4(a)に示すような目標到達支援画像31を見た時に、図4(b)に示すように、目標地点Tが自船周囲のどの辺りにあるかを瞬間的にイメージできる。また、目標マーク41を中心とする同心円状の等距離線は、円の中心に近づこうとする人間心理を利用して、操船者に目標地点到達に必要な操舵を違和感なく自然に行わせる。したがって、本実施例の航行情報表示装置1によれば、操船者は、自船に対する目標地点の相対位置(距離及び相対方位)を瞬間的に認知して、目標地点に向けてスムーズに操船することが可能となり、目標地点へ操船する際の認知遅れが小さくなる。
【0041】
また、目標到達支援画像31は、図5(a)に示すように、目標マーク41が表示画面10から外れてしまった場合でも、画像全体に表示される等距離線39によって、目標マーク41(目標地点)の位置を容易に把握できるという利点がある。なお、目標到達支援画像31は、既存の自船位置画像の地図同様に、仮想水面42の縮尺を変更できる。このため、目標マーク41が表示画面10から外れてしまった場合や、外れそうな場合には、手動操作又は自動制御によって、図5(b)に示すように、目標マーク41が表示画面10に収まるように仮想水面42の縮尺を変更することができる。
【0042】
以下に、航行情報表示装置1の主制御部11における、目標到達支援画像31の画像データの作成処理について説明する。まず、中央処理装置12は、測定情報用メモリに記憶された最新の自船位置情報及び方位情報、また、目標地点の位置情報を読み出して、自船位置と目標地点の絶対座標の差分から、目標地点までの距離と絶対方位を含むベクトルデータを算出する。続いて、かかるベクトルデータを、最新の方位情報に基づいて、船首方向に対する相対方位に回転変換し、目標地点までの距離と相対方位を含むベクトルデータを算出する。そして、中央処理装置12は、算出したベクトルに基づいて、原点に自船マーク34が付された所定縮尺の仮想水面42に、目標マーク41とガイドライン40、そして、同心円状の等距離線39を示した目標到達支援画像用の画像データを作成する。目標到達支援画像31の表示中は、目標到達支援画像31に示される目標地点の位置が最新情報に基づいたものとなるように、中央処理装置12が、かかる画像データ作成処理を高頻度で繰り返して目標到達支援画像31を頻繁に更新する。
【0043】
上記のように、目標到達支援画像31の画像データは、目標地点までの距離と相対方位のベクトルデータと、仮想水面42の縮尺を規定するだけで簡単に作成でき、また、前記ベクトルは、最新の自船位置情報及び方位情報から簡単に算出できる。このため、画像更新のたびに地図を移動・回転させる演算処理が必要な自船位置画像29に比べて、目標到達支援画像31は、画像データの作成するための演算処理が極めて簡単であり、最新の自船位置や方位情報を検出してから画像更新までの表示遅れが極めて小さく、目標地点の相対位置を略リアルタイムで操船者に示すことができる。
【0044】
このように、本実施例に係る目標到達支援画像31によれば、従来構成の自船位置画像29(図7参照)を頼りに操船するのに比べて、操船時の認知遅れ及び表示遅れをともに小さくすることができ、操船者は、従来構成よりも確実に目標地点に到達可能となる。
【0045】
なお、本発明における航行情報表示装置は、上記実施例の形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。
【0046】
例えば、上記実施例の航行情報表示装置1は、魚群探知機を兼ねるものであるが、本発明の航行情報表示装置は、魚群探知機を兼ねるものに限定されず、表示画面に反響波画像を表示する必要もない。本発明の航行情報表示装置は、表示画面に少なくとも目標到達支援画像を表示するものであればよい。
【0047】
また、本発明に係る目標到達支援画像も、上記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。例えば、上記実施例においては、目標到達支援画像には自船位置と目標地点の相対位置が表示されるのみであるが、その他にも潮流の方向や流速、風速や風向きなどの航行に影響する要素についても表示するようにしてもよい。
【0048】
また、実施例に係る目標到達支援画像31は、平面表示した仮想水面42上に目標地点の相対位置を示してなる二次元的なものであり、仮想水面42の向きを表示画面10と一致させたものであるが、本発明に係る目標到達支援画像31は、図6(a),6(b)に示すように、仮想水面42の向きを表示画面10に対して傾斜させて、三次元的な表示態様にすることも可能である。かかる三次元的な表示態様は、画像のリアリティが高く、操船者の認知遅れを一層小さくできる。ただし、表示遅れは大きくなるため、ハードウェアの処理能力が高く、表示遅れが無視できるほど小さい場合に好適に採用し得る。
【0049】
また、実施例に係る目標到達支援画像31では、各等距離線に目標地点からの距離が標記されているが、実施例のように複数の等距離線を等距離間隔で表示する場合には、隣接する等距離線の距離間隔を示して、目標地点からの距離標記を省略してもかまわない。
【0050】
また、実施例に係る目標到達支援画像31では、表示遅れを最小限に抑えるために海岸線や等深線等の地図情報を表示していないが、本発明に係る目標到達支援画像31は、地図を表示しないものには限定されない。例えば、目標地点付近の地形に特徴があり、目標到達に地図情報が有益である場合には、目標到達支援画像31に等深線等の地図情報を表示するようにしてもかまわない。
【符号の説明】
【0051】
1 航行情報表示装置
2 方位検出装置
3 自船位置検出装置
9 画像表示器
10 表示画面
29 自船位置画像
31 目標到達支援画像
32 等深線
33 海岸線
34 自船マーク
36 方位マーク
39 等距離線
40 ガイドライン
41 目標マーク
42 仮想水面
T 目標地点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面を備えた画像表示器と、
自船の位置を検出し、自船位置情報として出力する自船位置検出装置と、
自船の船首方向の方位を検出し、方位情報として出力する方位検出装置と、
目標地点の位置情報を記憶する位置情報記憶手段と、
前記自船位置検出装置が出力する自船位置情報と、方位検出装置が出力する方位情報と、位置情報記憶手段が記憶する目標地点の位置情報とに基づいて、現在の船首方向を上向きとし、かつ現在の自船位置を固定表示してなる仮想水面上に、前記目標地点を示す目標マークと、該目標地点を基準とする複数の等距離線とを変動表示してなる目標到達支援画像を前記表示画面に表示する表示制御手段とを備えることを特徴とする航行情報表示装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記目標到達支援画像に地図を表示しないことを特徴とする請求項1記載の航行情報表示装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記目標到達支援画像の等距離線に、目標地点からの距離を標記することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の航行情報表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−169801(P2011−169801A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34845(P2010−34845)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000116091)ロイヤル工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】