説明

航走体の安定ロバスト制御装置、安定ロバスト制御システム、その方法およびプログラム

【課題】舵駆動源が故障し、かつ、正常に動作する舵駆動源が残っている場合においても、水中航走体の姿勢を安定に保つことのできる安定ロバスト制御装置を提供する。
【解決手段】安定ロバスト制御装置10は、舵駆動源7の故障を検知する故障検知手段11と、水中航走体1の姿勢に関する情報を検知するセンサ8にて検出した検出値と目標値との偏差を算出する偏差算出手段14と、水中航走体1の姿勢制御用パラメータとして、偏差に基づいて水中航走体1に付与する制御力および制御モーメントを算出する自動制御パラメータ算出手段15と、制御力および制御モーメントを、配分則に基づいて、各舵駆動源7に対して配分する配分量を算出すると共に、舵駆動源7の故障が検知された場合に、制御力および制御モーメントを、故障が検知された舵駆動源7を除く残りの舵駆動源7に対して再配分する配分量算出手段16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中、空中、陸上等で利用される航走体の姿勢を安定に保つ制御を行う安定ロバスト制御装置、安定ロバスト制御システム、その方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中で利用される航走体(水中航走体)や、空中で利用される航走体(飛行体)の姿勢を安定に保つ技術が知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
特許文献1に開示された水中航走体は、後端部に設けられたスクリューを推進器として水中を航走し、スクリューの上下近傍および左右近傍に設けられた4つの舵を4つのサーボモータでそれぞれ駆動させることで姿勢が制御される。この水中航走体は、制御手段によって、本体の左右方向への傾きを補正するヨー制御と、上下方向への傾きを補正するピッチ制御と、本体のローリングを補正するロール制御とを行うものであり、ロール制御を優先して各サーボモータを個別に制御する。
【0003】
特許文献2に開示された技術は、PI制御で生成した制御コマンドに基づいて、航走体の複数の推力発生器(スラスタ、舵、プロペラ等)に対して、燃料消費が最小となるような最適な推力配分を行うものである。
【0004】
特許文献3に開示された技術は、所定の定位置に静止した飛行船が風に流されないように、PID制御で生成した制御コマンドに基づいて、飛行船の複数のスラスタに対する駆動指令信号を生成し、飛行船を定位置に復帰させて保持する制御を行うものである。
【特許文献1】特開平6−341852号公報(段落0008〜0022、図4)
【特許文献2】特開平2−106492号公報(第2頁右上14行目〜第5頁右上3行目、第3図)
【特許文献3】特開平1−3111997号公報(第2頁左上13行目〜右下12行目、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、複数の推力発生器をそれぞれ駆動する複数の推力発生器駆動源(例えば、アクチュエータ)が正常に動作することを前提としている。そのため、推力発生器駆動源が故障した場合に、航走体の周囲の流体(水、空気、燃料等)が航走体に及ぼす力やモーメントが大きく変化することとなる。その結果、航走体の姿勢を安定に保つことができないという問題がある。例えば、水中航走体が海中で目標に向かって移動しているときに、何らかの理由で1つの姿勢制御舵を駆動するアクチュエータが動作しなくなった場合には、正常に動作するアクチュエータが残っていたとしても、目標へ向かう軌道(航路)をはずれてしまい、目標へ到達することができなくなる。
【0006】
本発明は、前記した問題に鑑み創案されたものであり、推力発生器駆動源が故障し、かつ、正常に動作する推力発生器駆動源が残っている場合においても、航走体の姿勢を安定に保つことのできる航走体の安定ロバスト制御装置、安定ロバスト制御システム、その方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の航走体の安定ロバスト制御装置は、航走体の姿勢を安定に保つための複数の推力発生器と、前記推力発生器を駆動する複数の推力発生器駆動源とを備えた航走体の安定ロバスト制御装置であって、前記推力発生器駆動源の故障を検知する故障検知手段と、前記航走体の姿勢制御用パラメータとして予め算出された、前記航走体に付与する制御力および制御モーメントを、予め定められた配分則に基づいて、前記各推力発生器駆動源に対して配分する配分量を算出すると共に、前記推力発生器駆動源の故障が検知された場合に、前記予め算出された制御力および制御モーメントを、前記故障が検知された推力発生器駆動源を除く残りの推力発生器駆動源に対して再配分する配分量算出手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、航走体の安定ロバスト制御装置は、推力発生器駆動源が故障していない場合には、各推力発生器駆動源に対して、制御力および制御モーメントを配分し、推力発生器駆動源が故障している場合には、故障しているものを除いた残りの推力発生器駆動源に対して、制御力および制御モーメントを再配分する。
【0009】
また、請求項2に記載の航走体の安定ロバスト制御装置は、請求項1に記載の航走体の安定ロバスト制御装置において、前記航走体の姿勢に関する情報を検知するセンサにて検出した検出値と予め定められた目標値との偏差を算出する偏差算出手段と、前記航走体の姿勢制御用パラメータとして、前記偏差に基づいて前記航走体に付与する制御力および制御モーメントを算出する自動制御パラメータ算出手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、航走体の安定ロバスト制御装置は、センサ検出値と目標値との偏差に基づいて、航走体に付与する制御力および制御モーメントを自動的に算出することができる。ここで、自動制御パラメータ算出手段は、例えば、PID制御により制御力および制御モーメントを算出し、算出結果に対応した制御コマンドを配分量算出手段に出力する。
【0011】
また、請求項3に記載の航走体の安定ロバスト制御装置は、請求項1に記載の航走体の安定ロバスト制御装置において、前記航走体の姿勢制御用パラメータに対応した操作コマンドを入力する操作コマンド入力装置から入力された操作コマンドを予め定められた変換則に基づいて変換し、変換結果として前記制御力および制御モーメントを算出する手動制御パラメータ算出手段をさらに備え、前記配分量算出手段が、前記手動制御パラメータ算出手段で算出された制御力および制御モーメントと前記配分則とに基づいて、前記配分量を算出することを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、航走体の安定ロバスト制御装置は、操作者によって入力された操作コマンドを変換則に基づいて変換し、その変換結果を、航走体に付与する制御力および制御モーメントとして算出することができる。ここで、手動制御パラメータ算出手段は、変換結果に対応した制御コマンドを配分量算出手段に出力する。
【0013】
また、請求項4に記載の航走体の安定ロバスト制御装置は、請求項2に記載の航走体の安定ロバスト制御装置において、前記推力発生器駆動源に対する操作コマンドを入力する操作コマンド入力装置から入力された操作コマンドを予め定められた変換則に基づいて変換し、変換結果として制御力および制御モーメントを算出する手動制御パラメータ算出手段と、前記自動制御パラメータ算出手段で算出された制御力および制御モーメントと、前記手動制御パラメータ算出手段で算出された制御力および制御モーメントとを加算する加算手段とをさらに備え、前記配分量算出手段が、前記加算手段で加算された制御力および制御モーメントと前記配分則とに基づいて、前記配分量を算出することを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、航走体の安定ロバスト制御装置は、操作者によって入力された操作コマンドに基づく手動制御の結果と、センサ検出値と目標値との偏差に基づく自動制御の結果とを加算した制御力および制御モーメントと配分則とに基づいて、配分量を算出する。したがって、操作コマンドを入力しない場合の制御と、入力する場合の制御とを行うことが可能となる。例えば、何も故障していない場合には、操作者が操作コマンドを入力しないようにして運用することが可能である。また、例えば、推力発生器駆動源が故障した場合に、一旦は、航走体の姿勢が崩れたり航路がそれたりする。このときに、操作コマンドを入力する運用を行うことで、自動制御の結果と手動制御の結果とが加算される。その結果、航走体が元の状態に復帰するまでに要する時間を短縮することが可能となる。さらに、例えば、センサが故障するなどの重大な故障が発生した場合に、操作者が操作コマンドを入力するように運用することが可能となるので、航走体の運用の信頼性を向上させることができる。
【0015】
また、前記目的を達成するために、請求項5に記載の航走体の安定ロバスト制御システムは、請求項3または請求項4に記載の航走体の安定ロバスト制御装置と、推進手段と、複数の推力発生器と、前記推力発生器を駆動する複数の推力発生器駆動源と、姿勢に関する情報を検知するセンサとを有する航走体と、前記航走体の姿勢制御用パラメータに対応した操作コマンドを入力する操作コマンド入力装置とを備えることを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、航走体の安定ロバスト制御システムは、操作コマンド入力装置を航走体に含むことで有人航走体を実現することが可能である。また、操作コマンド入力装置を航走体と別体とすることで無人航走体を実現することが可能である。
【0017】
また、請求項6に記載の航走体の安定ロバスト制御システムは、請求項5に記載の航走体の安定ロバスト制御システムにおいて、前記操作コマンド入力装置から入力された操作コマンドを前記航走体に送信するコマンド送信装置と、前記送信された操作コマンドを受信するコマンド受信装置とをさらに備え、前記手動制御パラメータ算出手段が、前記受信された操作コマンドを前記変換則に基づいて変換することを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、航走体の安定ロバスト制御システムは、操作コマンド入力装置を航走体と別体とすることで無人航走体を実現することが可能である。ここで、操作コマンドを送受信する方法は、航走体が利用される外部の環境に応じて、音波を用いる方法、あるいは、無線または有線の通信による方法を含む。
【0019】
また、前記目的を達成するために、請求項7に記載の航走体の安定ロバスト制御方法は、航走体の姿勢を安定に保つための複数の推力発生器と、前記推力発生器を駆動する複数の推力発生器駆動源と、安定ロバスト制御装置とを備えた航走体の安定ロバスト制御方法であって、前記安定ロバスト制御装置が、前記推力発生器駆動源の故障を検知する故障検知ステップと、前記航走体の姿勢制御用パラメータとして予め算出された、前記航走体に付与する制御力および制御モーメントを、予め定められた配分則に基づいて、前記各推力発生器駆動源に対して配分する配分量を算出すると共に、前記推力発生器駆動源の故障が検知された場合に、前記予め算出された制御力および制御モーメントを、前記故障が検知された推力発生器駆動源を除く残りの推力発生器駆動源に対して再配分する配分量算出ステップとを有することを特徴とする。
【0020】
かかる手順によれば、航走体の安定ロバスト制御装置は、推力発生器駆動源が故障していない場合には、各推力発生器駆動源に対して、制御力および制御モーメントを配分し、推力発生器駆動源が故障している場合には、故障しているものを除いた残りの推力発生器駆動源に対して、制御力および制御モーメントを再配分する。
【0021】
また、請求項8に記載の航走体の安定ロバスト制御プログラムは、航走体の姿勢を安定に保つための複数の推力発生器と、前記推力発生器を駆動する複数の推力発生器駆動源とを備えた航走体の姿勢を安定に保つために、コンピュータを、前記推力発生器駆動源の故障を検知する故障検知手段、前記航走体の姿勢制御用パラメータとして予め算出された、前記航走体に付与する制御力および制御モーメントを、予め定められた配分則に基づいて、前記各推力発生器駆動源に対して配分する配分量を算出すると共に、前記推力発生器駆動源の故障が検知された場合に、前記予め算出された制御力および制御モーメントを、前記故障が検知された推力発生器駆動源を除く残りの推力発生器駆動源に対して再配分する配分量算出手段、として機能させることを特徴とする。
【0022】
かかる構成によれば、安定ロバスト制御プログラムは、推力発生器駆動源が故障していない場合には、各推力発生器駆動源に対して、制御力および制御モーメントを配分し、推力発生器駆動源が故障している場合には、故障しているものを除いた残りの推力発生器駆動源に対して、制御力および制御モーメントを再配分する。
【発明の効果】
【0023】
請求項1、請求項7または請求項8に記載の発明によれば、推力発生器駆動源が故障し、かつ、正常に動作する推力発生器駆動源が残っている場合においても、航走体の姿勢を安定に保つことができる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、航走体に付与する制御力および制御モーメントを精度よく算出することができる。
【0025】
請求項3に記載の発明によれば、操作者が操作コマンドを入力することで、航走体に所望の運動をさせることが可能となる。
【0026】
請求項4、請求項5または請求項6に記載の発明によれば、航走体の運用の幅を広げ、信頼性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の航走体の安定ロバスト制御装置、安定ロバスト制御システム、その方法およびプログラムを実施するための最良の形態(以下「実施形態」という)について詳細に説明する。以下の実施形態では、航走体の一例として、水中で利用される水中航走体を用いて説明することとする。
【0028】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る水中航走体の安定ロバスト制御システムについて、図1および図2を参照しながら説明する。第1実施形態に係る水中航走体の安定ロバスト制御システムは、水中航走体で実現できる。
【0029】
[安定ロバスト制御システムの構成]
図1は、第1実施形態の安定ロバスト制御システムの外観図であって、(a)は概略平面図、(b)は概略左側面図、(c)は概略背面図をそれぞれ示している。図2は、図1に示した安定ロバスト制御システムの構成図である。
【0030】
水中航走体(安定ロバスト制御システム)1は、図1および図2に示すように、船体2と、推進器3と、姿勢制御舵4と、プロペラ駆動源5と、推進制御装置6と、舵駆動源7と、センサ8と、安定ロバスト制御装置10とを主たる要素として備えている。
【0031】
推進器3は、船体2に推進力を付与するものであり、プロペラ3aを備え、船体2の後端部に配置されている。
【0032】
姿勢制御舵4は、水中航走体(航走体)1の姿勢を安定に保つための制御を行うものである。この姿勢制御舵4は、断面視翼型を有する板状の部材であり、図1(c)に示すように、船体2の後部から45°,135°,225°,315°の方向に沿ってそれぞれ一枚ずつ、放射状(X字状)に合計四枚設けられている。また、姿勢制御舵4の後縁部には、舵駆動源7により駆動される補助翼(推力発生器)4aが設けられている。本実施形態では、この補助翼4aが水中航走体1の姿勢を安定に保つための制御を実質的に行うように構成した。なお、補助翼4aを設けることなく、姿勢制御舵4そのものを舵駆動源7により駆動することで、水中航走体1の姿勢を安定に保つための制御を行うように構成してもよい。この場合には、姿勢制御舵4そのものが推力発生器として機能する。
【0033】
プロペラ駆動源5は、推進制御装置6から出力される制御信号に基づいて、プロペラ3aを正回転または逆回転させるように駆動するものである。プロペラ駆動源5は、例えば、バッテリー駆動の電動モータ等から構成される。
推進制御装置6は、所定のプログラムにしたがって、センサ8の出力に基づいて、目標地点に到達したか否かを判別し、水中航走体1を前進または後進させるために、プロペラ3aを正回転または逆回転させる制御信号をプロペラ駆動源5に出力する。
【0034】
舵駆動源(推力発生器駆動源)7は、安定ロバスト制御装置10から出力される制御信号(舵角指令信号)に基づいて、姿勢制御舵4の補助翼4aを駆動するものであり、例えば、バッテリー駆動のアクチュエータ等から構成される。この舵駆動源7は、補助翼4aを、図1(c)に示す船体2の後部から45°,135°,225°,315°の方向とそれぞれ平行な軸線まわりに回動させる。安定ロバスト制御装置10から出力される舵角指令信号は、姿勢制御舵4の4つの補助翼4aをそれぞれ、適宜必要な方向に必要な角度だけ回動させるためのものである。これらの信号によって、水中航走体1が潜行(下降)、浮上(上昇)、進行方向左方に変針(左回頭)、および進行方向右方に変針(右回頭)することができる。
【0035】
なお、図示は省略するが、水中航走体1内部には、姿勢角(ピッチ角)を調整したり、重力に対する浮力を大きく(または小さく)したりするために、例えば、バラスト水の注排水装置等の浮量調整装置や、重錘を移動させてその重心位置を変化させる重錘移動装置等が格納されている。
【0036】
センサ8は、水中航走体1の運動情報を検知し、検知した運動情報を示すセンサ信号を安定ロバスト制御装置10に出力するものであり、速度計8aと、加速度計8bと、ジャイロセンサ8cとを備える。
速度計8aは、例えば、統合航海システム(INS:Integrated Navigation System)を用いたものであり、水中航走体1の現在の位置(例えば、経度、緯度、深度)や水中航走体1の速度を計測するものである。
加速度計8bは、水中航走体1の加速度を計測するものである。
ジャイロセンサ8cは、水中航走体1の姿勢(ロール角、ピッチ角、ヨー角)を計測するものである。
【0037】
本実施形態では、式(1)に示すように、(X,Y,Z)で、水中航走体1の現在の位置を表し、式(2)に示すように、(φ,θ,Ψ)で、水中航走体1の現在の姿勢として、ロール角、ピッチ角、ヨー角をそれぞれ表すこととする。
【0038】
【数1】

【0039】
安定ロバスト制御装置10は、姿勢制御舵4の補助翼4aを駆動する舵駆動源7に舵角指令信号を出力するものである。この安定ロバスト制御装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、HDD(Hard Disk Drive)と、入出力インタフェース等から構成され、図2に示すように、故障検知手段11と、記憶手段12と、目標値管理手段13と、偏差算出手段14と、自動制御パラメータ算出手段15と、配分量算出手段16とを備えている。
【0040】
故障検知手段11は、舵駆動源7の故障を検知するものである。この故障検知手段11は、4つの舵駆動源7のうちのどれが故障したのかを示す信号を配分量算出手段16に出力する。本実施形態では、舵駆動源7の識別変数を「i(=1,2,3,4)」で表し、故障を検知したときに、その舵駆動源を識別する識別変数iの値を出力するものとする。
【0041】
また、故障を検知する方法は、公知の技術を利用することができる。本実施形態では、舵駆動源7からの出力信号の電流値(または電圧値)を測定して、この測定値が所定のしきい値よりも小さくなったか否かを判別し、所定のしきい値よりも小さくなった場合に、その出力信号を出力している舵駆動源7が故障したものとみなすこととした。例えば、センサ8として、舵駆動源7の回転角の変化を検出するタコジェネレータを備え、この検出値が、1秒間の変化角度が3°であることを目標値として、2.8°〜3.2°であれば正常と判別し、上限値以上または下限値以下であれば故障であるものとすることが可能である。あるいは、しきい値を設定する代わりに、目標値からの誤差が目標値の10%以下である場合に正常であると判別するようにしてもよい。なお、故障検知手段11は、故障したか否かを連続的に判別するようにしてもよいし、一定間隔(例えば、50msごと)で判別を繰り返すようにしてもよい。
【0042】
記憶手段12は、例えば、RAMと、ROMと、HDDとを備えている。本実施形態では、記憶手段12は、目標値記憶部121と、配分則記憶部122とを備えている。これらは、例えば、HDDから構成される。
【0043】
目標値記憶部121は、予め設定された目標値を記憶するものである。この設定された目標値は、水中航走体1の目標とする未来の目標地点(目標位置)と、水中航走体1の目標とする未来の姿勢(目標姿勢)とからなる。本実施形態では、式(3)に示すように、(X,Y,Z)で水中航走体1の目標位置を表す。ここで、記号「〜(チルダ)」は、それぞれ直前の文字の上に付される記号を示し、本明細書では、以下、記号「(チルダ)」を同様な意味で使用する。また、式(4)に示すように、(φ,θ,Ψ)で、水中航走体1の目標姿勢として、ロール角、ピッチ角、ヨー角をそれぞれ表すこととする。
【0044】
【数2】

【0045】
配分則記憶部122は、水中航走体1に付与する制御力および制御モーメントを、各舵駆動源7に、配分するためのルールである配分則を記憶するものである。本実施形態では、配分則は、例えば、線形計画法を利用するアルゴリズムによって構築されている。
【0046】
目標値管理手段13は、目標値記憶部121から目標値を読み出して、偏差算出手段14に出力するものである。
偏差算出手段14は、センサ8にて検出した検出値と、目標値記憶部121から読み出された目標値との偏差を式(5)および式(6)に基づいて算出するものであり、例えば、減算器から構成される。この偏差算出手段14は、算出結果を示す信号を自動制御パラメータ算出手段15に出力する。
【0047】
【数3】

【0048】
自動制御パラメータ算出手段15は、センサ8の検出値と目標値との偏差を示す入力信号に基づいて、水中航走体1の姿勢制御用パラメータとして、水中航走体1の船体2に付与する制御力および制御モーメントを算出するものである。この自動制御パラメータ算出手段15は、算出結果から制御力コマンドおよび制御モーメントコマンド(総称して制御コマンドという)を生成し、配分量算出手段16に出力する。
【0049】
本実施形態では、自動制御パラメータ算出手段15は、PID制御に基づいて制御コマンドを生成する。具体的には、自動制御パラメータ算出手段15は、力コマンド(FXC,FYC,FZC)のX成分、Y成分およびZ成分を、式(7)〜式(9)に基づいてそれぞれ算出する。ここで、制御力コマンド(FXC,FYC,FZC)には、制御力が記述されるので、式(7)〜式(9)は、制御力の各成分を示すこととなる。また、自動制御パラメータ算出手段15は、制御モーメントコマンド(NXC,NYC,NZC)のX成分、Y成分およびZ成分を、式(10)〜式(12)に基づいてそれぞれ算出する。ここで、制御モーメントコマンド(NXC,NYC,NZC)には、制御モーメントが記述されるので、式(10)〜式(12)は、制御モーメントの各成分を示すこととなる。また、前記した式(7)〜式(12)において、eは、式(5)および式(6)に示した偏差、Pは比例ゲイン、Iは積分ゲイン、Dは微分ゲインを示している。
【0050】
【数4】

【0051】
配分量算出手段16は、入力された制御コマンドで示される制御力および制御モーメントを、予め定められた配分則に基づいて、舵駆動源7に対して配分する配分量を算出し、演算結果を示す制御信号を各舵駆動源7に出力するものである。この配分量算出手段16は、舵駆動源7の故障を示す信号が入力された場合には、制御力および制御モーメントを、配分則に基づいて、故障した舵駆動源7を除いた残りの各舵駆動源7に対して配分する配分量を算出し、算出結果を示す制御信号を残りの各舵駆動源7に出力する。つまり、制御力および制御モーメントが再配分されることとなる。
【0052】
具体的には、配分量算出手段16は、式(13)〜式(18)に示す等式条件と、式(19)〜式(21)に示す不等式条件との下で、式(22)に示すJ1の値が最小となるように、各舵駆動源7に対して配分する配分量(FXi,FYi,FZi)を算出する。
【0053】
【数5】

【0054】
【数6】

【0055】
【数7】

ただし、
i2=FXi2+FYi2+FZi2 …式(23)
【0056】
式(13)〜式(22)において、iは舵駆動源7の識別変数を示し、本実施形態では、iの取り得る値は、1,2,3,4である。また、式(13)〜式(22)において、nは舵駆動源7の個数を示し、本実施形態ではnの値は4である。また、式(16)〜式(18)において、lXiは水中航走体1の重心から識別変数iの舵駆動源7までの距離に関するものであり、水中航走体1の重心を三次元座標空間の所定の原点に合致させたときに、重心と舵駆動源7とを結ぶ直線をX軸に投影したときのX軸上の距離を示し、同様にlYiおよびlZiは、Y軸上の距離およびZ軸上の距離をそれぞれ示す。
【0057】
また、式(19)〜式(21)において、Fmiは、i番目の舵駆動源7で発生される推力の大きさであり、この大きさ(絶対値)は、舵駆動源7の最大容量(最大移動量)で決定される(既知の値)。さらに、配分量算出手段16は、舵駆動源7の故障を示す信号が入力された場合には、式(13)〜式(22)において、その入力信号で示される識別変数iの値についての力の成分や距離の値を「0」として計算する。
【0058】
また、式(22)において、J1は、識別変数iの舵駆動源7によって、姿勢制御舵4の補助翼4aを駆動するエネルギーに相当し、f1は、式(23)で定義されたFi2についての所定の評価関数を示す。つまり、配分量算出手段16は、式(22)の左辺のJ1の値が最小となるように、配分量(FXi,FYi,FZi)を変化させながら、式(22)の右辺のFi2の値を求め、そのときの配分量(FXi,FYi,FZi)を求める。式(22)で示される最小値問題の方程式は、例えば、ラグランジェ未定乗数法等の線形計画法を用いて以下のようにして計算することが可能である。この方法として、例えば、特開平2−106492号公報(特許文献2)に開示された方法を利用することができる。具体的には、マトリックス形式で記述された式(24)〜式(27)に示す6元連立一次方程式を解けばよい。
【0059】
Aλ=b …式(24)
【0060】
【数8】

【0061】
【数9】

【0062】
【数10】

【0063】
ここで、式(24)に示すAは、式(25)に示すように6×6の正方行列である。また、式(24)に示すλは、ラグランジェ乗数であり、式(26)に示すように1行6列の行列である。また、式(24)に示すbは、前記した式(13)〜式(18)に示した制御コマンドであり、式(26)に示すように1行6列の行列である。なお、式(27)では、行列中において、制御モーメントコマンドを、前記した式(18)に示すNZC、式(17)に示すNYC、式(16)に示すNXCの順序に配置することとした。式(24)〜式(27)に示す6元連立一次方程式を解くことによって、ラグランジェ乗数λ1〜λ6の値を求めることができる。一方、前記した式(22)の左辺のJ1の値が最小となるときに、識別変数iの舵駆動源7が発生する推力のX成分、Y成分およびZ成分は、式(28)〜式(30)で表すことができる。したがって、式(28)〜式(30)の各右辺に含まれるラグランジェ乗数λ1〜λ6に対して、6元連立一次方程式を解くことによって求めた値を代入することによって、配分量(FXi,FYi,FZi)を決定することができる。
【0064】
【数11】

【0065】
ここで、決定した推力の配分量(FXi,FYi,FZi)と、舵駆動源7の移動量との対応関係式(または対応関係テーブル)は、予め求められて記憶手段12に記憶されており、配分量算出手段16は、当該対応関係式(または対応関係テーブル)に基づいて、舵駆動源7の移動量を求め、求めた移動量を示す制御信号を該当する舵駆動源7に出力する。なお、決定した推力の配分量(FXi,FYi,FZi)の値をそのまま舵駆動源7の移動量として出力するようにしてもよい。
【0066】
なお、故障検知手段 11、目標値管理手段13、偏差算出手段14、自動制御パラメータ算出手段15および配分量算出手段16は、CPUが記憶手段12のHDD等に格納された所定のプログラムをRAMに展開して実行することにより実現することができる。
【0067】
[安定ロバスト制御システムの動作]
図2に示した安定ロバスト制御システム(水中航走体)1の動作について、安定ロバスト制御装置10の動作を中心に図3を参照(適宜図2参照)して説明する。図3は、図2に示した安定ロバスト制御システムの動作を示すフローチャートである。ここでは、水中航走体1が目標地点へ移動するときに、移動中の姿勢を制御する場合を想定している。また、以下のステップS1およびステップS2は、推進制御装置6の処理を示し、ステップS3ないしステップS7は、安定ロバスト制御装置10の処理を示している。
【0068】
まず、安定ロバスト制御システム1は、推進制御装置6によって、プロペラ3aを回転させる制御信号をプロペラ駆動源5に出力し、プロペラ駆動源5によって、プロペラ3aを駆動する(ステップS1)。そして、推進制御装置6は、目標地点に到達したか否かを判別する(ステップS2)。目標地点に到達した場合(ステップS2:Yes)、安定ロバスト制御システム1は、処理を終了する。一方、目標地点に到達していない場合(ステップS2:No)、安定ロバスト制御システム1では、推進制御装置6が、引き続きプロペラ3aを駆動し続ける。
【0069】
また、安定ロバスト制御装置10が、偏差算出手段14によって、姿勢制御に関する目標値とセンサ検出値との偏差を算出し(ステップS3)、自動制御パラメータ算出手段15によって、目標値とセンサ検出値との偏差に基づいて、水中航走体1に付与する制御力および制御モーメントを算出する(ステップS4)。続いて、安定ロバスト制御装置10は、故障検知手段11によって、舵駆動源7が故障したか否かを判別する(ステップS5)。舵駆動源7が故障している場合(ステップS5:Yes)、安定ロバスト制御装置10は、配分量算出手段16によって、故障中の舵駆動源7を制御対象から除外し(ステップS6)、その上で、制御力および制御モーメントを配分則に基づいて残りの舵駆動源7に対して配分する(ステップS7)。各舵駆動源7は、各配分量に対応した移動量で作動する。これにより、姿勢制御舵4の補助翼4aがそれぞれ回動する。その結果、水中航走体1の姿勢を制御することができる。
【0070】
一方、ステップS5において、舵駆動源7が正常である場合(ステップS5:No)、安定ロバスト制御装置10は、配分量算出手段16によって、ステップS6をスキップしてステップS7に進む。この場合には、配分量算出手段16は、制御力および制御モーメントを配分則に基づいてすべての舵駆動源7に対して配分する。ステップS7に続いて、安定ロバスト制御システム1は、ステップS2に戻る。
【0071】
なお、安定ロバスト制御装置10は、一般的なコンピュータに、前記した各ステップを実行させる安定ロバスト制御プログラムを実行することで実現することもできる。このプログラムは、通信回線を介して配布することも可能であるし、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0072】
第1実施形態に係る安定ロバスト制御システム1によれば、水中航走体1の舵駆動源7に故障が発生し、正常に動作する舵駆動源7が残っている場合においても、水中航走体1の姿勢を安定に保つことができる。また、残っている舵駆動源7を、その時点で最小のエネルギーで駆動させることができる。その結果、水中航走体1の信頼性を向上させることができる。
【0073】
(第2実施形態)
[安定ロバスト制御システムの構成]
図4は、第2実施形態の安定ロバスト制御システムの構成図である。安定ロバスト制御システム1Aは、図4に示すように、水中航走体100と、監視装置200とを備えている。水中航走体100は、コマンド受信装置20を備え、安定ロバスト制御装置10Aの機能が異なる点を除いて、図2に示した水中航走体1と同一の構成なので、同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0074】
コマンド受信装置20は、監視装置200から音波によって送られる操作コマンドを受信し、安定ロバスト制御装置10Aに出力するものである。
安定ロバスト制御装置10Aは、記憶手段12に配分則記憶部122と、変換則記憶部123とを備えると共に、手動制御パラメータ算出手段17を備えている。
【0075】
変換則記憶部123は、コマンド受信装置20で受信する操作コマンドを、水中航走体100に付与する制御力および制御モーメントに変換するための変換則を記憶するものであり、例えば、メモリやハードディスク等から構成される。
【0076】
手動制御パラメータ算出手段17は、コマンド受信装置20で受信する操作コマンドを、変換則記憶部123に記憶された変換則に基づいて変換し、変換結果として水中航走体100に付与する制御力および制御モーメントを算出するものである。この手動制御パラメータ算出手段17は、制御力および制御モーメントに対応する制御コマンドを配分量算出手段16に出力する。本実施形態では、手動制御パラメータ算出手段17は、操作コマンドから、入力時に入力された角度と方向とを検出し、検出した角度を力の大きさに変換すると共に、検出した方向を力の向きに変換する。
【0077】
監視装置200は、水中航走体100の現在位置を監視し、操作コマンドを水中航走体100に送信することで、水中航走体100を遠隔操作するものである。この監視装置200は、例えば、CPUと、RAMと、ROMと、HDDと、入出力インタフェース等から構成され、図4に示すように、航走体検知装置201と、表示装置202と、コマンド入力装置203と、コマンド送信装置204とを備えている。
【0078】
航走体検知装置201は、音波の反響を測定することにより、水中航走体100の位置を測定するものであり、例えば、アクティブソナーやパッシブソナーから構成される。
表示装置202は、水中航走体100の位置を表示するものであり、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、EL(Electronic Luminescence)等から構成される。
【0079】
コマンド入力装置(操作コマンド入力装置)203は、水中航走体100の姿勢制御用パラメータに対応した操作コマンドを入力するものであり、例えば、コンピュータ一般に用いられるマウスやキーボード、レバーやボタンを組み合わせた遠隔操縦装置、ジョイスティック等から構成される。本実施形態では、コマンド入力装置203は、ジョイスティックで構成されることとした。
コマンド送信装置204は、コマンド入力装置203から入力された操作コマンドを音波によって水中航走体100に送信するものである。
【0080】
次に、コマンド入力装置203による操作コマンドの入力方法について図5を参照して説明する。図5は、図4に示したコマンド入力装置の説明図である。コマンド入力装置203は、図5(a)に示すように、直立したジョイスティックレバーを倒したときに、倒れたジョイスティックレバーの向く方向と鉛直方向との間の角度によって、制御力の大きさを表す。例えば、図5(a)に示すように、「70°」の位置まで倒した場合の制御力の大きさは、「35°」の位置まで倒した場合の制御力の大きさの2倍となる。
【0081】
また、コマンド入力装置203は、図5(b)に示すように、直立したジョイスティックレバーを倒したときに、倒れたジョイスティックレバーの向く方向を水平面に投影した場合の方向と水平面内の基準方向との間の角度によって、制御力の向きを表す。例えば、図5(b)に示すようにジョイスティックレバーを倒した場合には、進行方向右を基準としたときに、進行方向右から前方に向かって「40°」の方向を指すこととなる。
【0082】
図5に示したジョイスティック(コマンド入力装置203)は、水平面内において、前進、後退、左回頭、および右回頭を指定するためのものである。そこで、水中航走体1が下降および上昇するために、同様なジョイスティック(コマンド入力装置203)を設けてある。なお、入力する力の大きさと向きとを切り替えるモード切替手段を設けることで、1つのジョイスティック(コマンド入力装置203)によって、前進、後退、左回頭、右回頭、下降および上昇を指定するようにしてもよい。
【0083】
さらに、水中航走体1の姿勢を制御するために制御モーメントを入力するためのジョイスティックを備えてもよい。例えば、図5に示したジョイスティック(コマンド入力装置203)を用いた場合には、直立したジョイスティックレバーを倒したときに、倒れたジョイスティックレバーの向く方向と鉛直方向との間の角度によってピッチ角を表し、倒れたジョイスティックレバーの向く方向を水平面に投影した場合の方向と水平面内の基準方向との間の角度によって、ヨー角を表す。なお、ジョイスティックレバーを逆方向に倒したときには角度の値の正負を逆転させる。また、ロール角を指定するために、同様なジョイスティック(コマンド入力装置203)を別に設けるか、1つのジョイスティックをモード切替できるように構成する。
【0084】
[安定ロバスト制御システムの動作]
図4に示した安定ロバスト制御システム1Aの動作について、安定ロバスト制御装置10Aの動作を中心に図6を参照(適宜図4参照)して説明する。図6は、図4に示した安定ロバスト制御システムの動作を示すフローチャートである。以下のステップS21およびステップS22は、推進制御装置6の処理を示し、図3のフローチャートに示したステップS1およびステップS2の各処理と同様なので説明を省略する。また、以下のステップS23〜ステップS27は、安定ロバスト制御装置10Aの処理を示している。
【0085】
ステップS23において、安定ロバスト制御装置10Aは、手動制御パラメータ算出手段17によって、操作コマンドを受信したか否かを判別する(ステップS23)。操作コマンドを受信していない場合(ステップS23:No)、安定ロバスト制御システム1Aは、ステップS22に戻る。すなわち、目標地点に到達したか否かを判別する。一方、操作コマンドを受信した場合(ステップS23:Yes)、安定ロバスト制御装置10Aは、手動制御パラメータ算出手段17によって、変換則に基づいて、水中航走体100に付与する制御力および制御モーメントを算出する(ステップS24)。以下のステップS25〜ステップS27の各処理は、図3のフローチャートに示したステップS5〜ステップS7の各処理と同様なので説明を省略する。なお、ステップS23〜ステップS27の一連の処理を手動制御という。
【0086】
第2実施形態に係る安定ロバスト制御システム1Aによれば、操作者によって入力された操作コマンドを変換則に基づいて変換し、その変換結果を、水中航走体100に付与する制御力および制御モーメントとして算出することができる。したがって、水中航走体100を監視できる場合に、水中航走体100を操作者の所望の姿勢になるように安定的に制御することができる。
【0087】
(第3実施形態)
[安定ロバスト制御システムの構成]
図7は、第3実施形態の安定ロバスト制御システムの構成図である。安定ロバスト制御システム1Bは、水中航走体100Bと監視装置200(図7では図示せず、図6参照)とを備えている。水中航走体100Bは、安定ロバスト制御装置10Bの機能が異なる点を除いて、図4に示した水中航走体100と同一の構成なので、同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0088】
安定ロバスト制御装置10Bは、故障検知手段11Bと、記憶手段12と、目標値管理手段13と、偏差算出手段14と、自動制御パラメータ算出手段15と、配分量算出手段16と、手動制御パラメータ算出手段17と、切替手段18と、加算手段19とを備えている。ここで、故障検知手段11B、切替手段18および加算手段19以外の構成は、図2または図4と同一の構成なので同一の符号を付して説明を省略する。
【0089】
故障検知手段11Bは、舵駆動源7の故障を検知すると共に、センサ8の故障を検知するものである。この故障検知手段11Bは、センサ8の故障のレベルを判定し、判定結果に応じた信号を切替手段18に出力する。
【0090】
本実施形態では、故障検知手段11Bは、通常、切替手段18にオン信号を出力する。そして、故障検知手段11Bは、レベル1の故障であると判別した場合には、切替手段18にオフ信号を出力する。ここで、レベル1の故障とは、水中航走体100Bの動きを安定化させるための制御を、自動制御から手動制御に切り替える必要のある重大な故障である。例えば、センサ8が完全に機能しなくなるような故障を起こした場合を示す。
【0091】
また、故障検知手段11Bは、レベル2の故障であると判別した場合には、切替手段18にオン信号を出力し続けると共に、検知した故障情報を、配分量算出手段16に出力する。ここで、レベル2の故障とは、水中航走体100Bの動きを安定化させるための制御として、手動制御に完全に切り替える必要のない軽微な故障である。例えば、センサ8が機能はするが、設定どおりの性能を果たさなくなった場合や、舵駆動源7が故障した場合を示す。
【0092】
切替手段18は、故障検知手段11Bからのオン信号によって、自動制御パラメータ算出手段15から配分量算出手段16へ向かう入力信号を通過させるようにスイッチを切り替えるものである。また、切替手段18は、故障検知手段11Bからのオフ信号によって、自動制御パラメータ算出手段15から配分量算出手段16へ向かう入力信号を遮断させるようにスイッチを切り替える。
【0093】
加算手段19は、切替手段18を介して自動制御パラメータ算出手段15から入力する信号と、手動制御パラメータ算出手段17から入力する信号とを加算して配分量算出手段16に出力するものである。
【0094】
前記した構成によって、安定ロバスト制御装置10Bは、故障検知手段11Bによる故障レベルの判別結果に基づいて、手動制御パラメータ算出手段17で制御コマンドを生成するか、あるいは、自動制御パラメータ算出手段15と手動制御パラメータ算出手段17とを併用して制御コマンドを生成することとなる。このうち、自動制御パラメータ算出手段15と手動制御パラメータ算出手段17とを併用して制御コマンドを生成するようにした場合には、コマンド受信装置20が操作コマンドを受信しなければ、手動制御パラメータ算出手段17の生成する制御コマンドが実質的に「0」になり、加算手段19の出力信号は、実質的に、自動制御パラメータ算出手段15の生成する制御コマンドと等しくなってしまう。
【0095】
つまり、安定ロバスト制御装置10Bが、自動制御パラメータ算出手段15と手動制御パラメータ算出手段17とを併用して制御コマンドを生成するようにしていたとしても、故障が同じ条件のときに、以下に示すように、複数通りの運用が考えられる。
【0096】
例えば、舵駆動源7が正常であり、かつ、センサ8が軽微な故障をした場合を想定する。この場合には、自動制御のみで対応し、故障の影響が甚大になってきたときにだけ、監視装置200から操作コマンドを送信するような運用が可能である(これを実質的自動制御という)。
【0097】
また、センサ8が正常であり、かつ、舵駆動源7が故障した場合には、操作コマンドを全く送信せずに自動制御で対応することが可能である(これを完全自動制御という)。完全自動制御は、第1実施形態の場合に相当する。また、この場合には、実質的自動制御で運用することも可能である。あるいは、操作コマンドを常に送信することが可能である(これを手動併用制御という)。特に、手動併用制御の運用を行う場合には、水中航走体100Bが元の状態に復帰するまでに要する時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0098】
このような複数通りの運用ができる理由は、本実施形態では、監視装置200の操作者が、監視装置200の表示装置202(図4参照)に表示された水中航走体100Bの運動軌跡に基づいて、センサ8の故障が重大であるか、あるいは、軽微であるかの最終的な判断をするからである。なお、監視装置200において、表示装置202(図4参照)に表示された水中航走体100Bの運動軌跡と、目標とする運動軌跡との偏差に基づいて、運用のレベル(完全自動制御、実質自動制御、手動併用制御)を自動的に判別するように構成してもよい。そして、判別した運用のレベルに応じた照明、ブザー、アナウンス等の報知手段によって、操作者に対して、操作コマンドの送信が必要か否かを報知するようにしてもよい。
【0099】
[安定ロバスト制御システムの動作]
図7に示した安定ロバスト制御システム1Bの動作について、安定ロバスト制御装置10Bの動作を中心に図8を参照(適宜図7参照)して説明する。図8は、図7に示した安定ロバスト制御システムの動作を示すフローチャートである。以下のステップS41、S42およびS51は、推進制御装置6の処理を示し、このうち、ステップS41、S42は、図3のフローチャートに示したステップS1、S2の各処理と同様なので説明を省略する。また、以下のステップS43〜ステップS50は、安定ロバスト制御装置10Bの処理を示している。このうち、ステップS43、S44、および、ステップS46〜S48の各処理は、図3のフローチャートに示したステップS3〜ステップS7の各処理と同様なので説明を省略する。
【0100】
安定ロバスト制御装置10Bは、ステップS44で制御力および制御モーメントを算出した後、ステップS45において、故障検知手段11Bによって、センサ8の故障のレベルを判別する。センサ8が故障していないか、または、故障レベルがレベル2の場合(ステップS45:No)、ステップS46〜S48を実行する。一方、センサ8の故障レベルがレベル1である場合(ステップS45:Yes)、故障検知手段11Bは、切替手段18にオフ信号を出力する。これによって、切替手段18は、自動制御パラメータ算出手段15から配分量算出手段16へ向かう入力信号を遮断させるようにスイッチを切り替える。すなわち、手動に切り替える(ステップS49)。
【0101】
そして、安定ロバスト制御装置10Bは、手動制御パラメータ算出手段17および配分量算出手段16によって、手動制御を行う(ステップS50)。このステップS50の処理は、図6のフローチャートに示したステップS23〜ステップS27の一連の処理を指している。ステップS50に続いて、安定ロバスト制御システム1Bは、推進制御装置6によって、目標地点に到達したか否かを判別する(ステップS51)。目標地点に到達した場合(ステップS51:Yes)、安定ロバスト制御システム1Bは、処理を終了する。目標地点に到達していない場合(ステップS52:No)、安定ロバスト制御システム1Bでは、安定ロバスト制御装置10BがステップS50に戻る。
【0102】
第3実施形態に係る安定ロバスト制御システム1Bによれば、操作者によって入力された操作コマンドに基づく手動制御の結果と、センサ8の検出値と目標値との偏差に基づく自動制御の結果とを加算した制御力および制御モーメントと配分則とに基づいて、配分量を算出する。したがって、操作コマンドを入力しない場合の制御と、入力する場合の制御とを行うことが可能となる。つまり運用の幅が広がり、水中航走体100Bの運用の信頼性を向上させることができる。
【0103】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る水中航走体の安定ロバスト制御システムは、その構成および動作を、前記した第1実施形態と同様なものとすることができる。ただし、前記した第1実施形態では、配分量算出手段16は、式(22)で示される最小値問題の方程式を、ラグランジェ未定乗数法を用いて計算するものとしたが、本実施形態では、ペナルティ法等の非線形計画法を用いて計算するものとする。したがって、構成を示す構成図および動作を示すフローチャートを省略し、必要な場合は図1ないし図3を参照して、配分量算出手段16が計算に利用する非線形計画法のアルゴリズムを説明する。
【0104】
まず、式(31)で示すJ2と、式(32)で示すJ3を導入する。
【0105】
【数12】

【0106】
【数13】

【0107】
2は、正常なすべての舵駆動源7によって、姿勢制御舵4の補助翼4aを駆動するエネルギーに相当し、f2は、xについてのコスト関数(第1評価関数)を示す。ここで、xは、水中航走体1の重心を始点とする制御力のベクトルを示す変数であり、その絶対値(ベクトルの距離)が最小となるものを探すための指標となるものである。
また、J3は、J2を変換したものであり、F(x,r,t)は、x,r,tについてのトータルコスト関数(第2評価関数)を示す。rとtは、それぞれ可変パラメータである。
式(31)および式(32)において、iは舵駆動源7の識別変数を示し、iの取り得る値は、1〜4である。また、nは舵駆動源7の個数を示し、本実施形態では4である。
【0108】
式(32)において、Hj(x)は等式条件の数値である。なお、j=1,2,…,pである。本実施形態では、p=3である。そのため、Hj(x)は、具体的には、式(33)〜式(35)で表される。これらの式(33)〜式(35)は、前記した式(13)〜式(15)に対応している。式(33)〜式(35)の左辺を示すHj(x)は、それぞれ、計算をする上で便宜上おいたものであり、数値としては0(零)となる。
また、式(32)において、Gk(x)は不等式条件の数値である。なお、k=1,2,…,qであり、本実施形態では、q=3である。同様に、Gk(x)は、具体的には、式(36)〜式(38)で表される。これらの式(36)〜式(38)は、前記した式(16)〜式(18)に対応している。式(36)〜式(38)の左辺を示すGk(x)は、それぞれ、計算をする上で便宜上おいたものであり、数値としては0(零)となる。
【0109】
【数14】

【0110】
式(32)の最右辺の第2項は、等式条件(Hj(x))のペナルティ関数であり、式(39)のように展開できる。なお、式(39)では一般形で記述している。ここでは、力の3成分に対応してp=3となる。
【0111】
【数15】

【0112】
式(32)の最右辺の第3項は、不等式条件(Gk(x))のペナルティ関数であり、式(40)のように展開できる。なお、式(40)では一般形で記述している。ここでは、モーメントを3軸まわりに展開してq=3となる。
【0113】
【数16】

【0114】
本実施形態では、配分量算出手段16は、式(22)のJ1の代わりに、式(32)で示したトータルコスト関数F(x,r,t)の値が最小となるように、配分量(FXi,FYi,FZi)を変化させながら、制御力に相当する式(32)の最右辺の値を求め、そのときの配分量(FXi,FYi,FZi)をそれぞれ求める。そして、配分量算出手段16は、式(32)で示される最小値問題の方程式を、例えば、公知の準ニュートン法を用いて計算することが可能である。
【0115】
第4実施形態に係る安定ロバスト制御システムによれば、配分量算出手段16が舵駆動源7に対する制御力の配分量を算出する際に用いるコスト関数の段階で、故障中の舵駆動源7を制御対象から排除することができるので、舵駆動源7が正常な場合に必要な計算処理から、舵駆動源7が故障した場合に必要な計算処理へ切り替えるために必要な変更が、線形計画法を用いた場合よりも、容易になる。
【0116】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲で実施することができる。例えば、故障検知手段11(11B)は、舵駆動源7(およびセンサ8)の故障を検知するものとしたが、その他の構成要素の故障を検知するようにしてもよい。また、故障レベルの判定は、2段階(正常、故障)または3段階(正常、レベル1、レベル2)としたが、4段階以上であってもよい。
また、監視装置200は、水中航走体100(100B)と別体であるものとしたが、監視装置を水中航走体に設けて有人水中航走体を構成するようにしてもよい。
【0117】
各実施形態では、姿勢制御舵4をX字状に配置したが、独立駆動できる複数舵であれば、十字状あるいはY字状などの配置としてもよい。また、姿勢制御舵4の枚数は、2枚以上あればよい。また、姿勢制御舵4の後端部に配置された補助翼4aが回動するものとしたが、姿勢制御舵4全体が回動するように構成してもよい。
【0118】
また、推力発生器の一例として姿勢制御舵4を用いて説明したが、これに限定されるものではなく、推力発生器は、例えば、スラスタやプロペラであってもよい。また、推力発生器駆動源の一例として舵駆動源7を用いて説明したが、推力発生器駆動源は、例えば、モータ等のスラスタ駆動源やプロペラ駆動源であってもよい。また、航走体として水中で利用される水中航走体を用いて説明したが、航走体は、空中で利用される飛行体(航空機、飛行船、人工衛星等)や陸上で僅かに浮上して走行可能なホバークラフト(hovercraft)でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】第1実施形態の安定ロバスト制御システムの外観図であって、(a)は概略平面図、(b)は概略左側面図、(c)は概略背面図を示している。
【図2】図1に示した安定ロバスト制御システムの構成図である。
【図3】図2に示した安定ロバスト制御システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態の安定ロバスト制御システムの構成図である。
【図5】図4に示したコマンド入力装置の説明図である。
【図6】図4に示した安定ロバスト制御システムの動作を示すフローチャートである。
【図7】第3実施形態の安定ロバスト制御システムの構成図である。
【図8】図7に示した安定ロバスト制御システムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0120】
1(1A,1B) 安定ロバスト制御システム
2 船体
3 推進器
3a プロペラ
4 姿勢制御舵
4a 補助翼(推力発生器)
5 プロペラ駆動源
6 推進制御装置
7 舵駆動源(推力発生器駆動源)
8 センサ
8a 速度計
8b 加速度計
8c ジャイロセンサ
10(10A,10B) 安定ロバスト制御装置
11(11B) 故障検知手段
12 記憶手段
121 目標値記憶部
122 配分則記憶部
123 変換則記憶部
13 目標値管理手段
14 偏差算出手段
15 自動制御パラメータ算出手段
16 配分量算出手段
17 手動制御パラメータ算出手段
18 切替手段
19 加算手段
20 コマンド受信装置
100(100B) 水中航走体(航走体)
200 監視装置
201 航走体検知装置
202 表示装置
203 コマンド入力装置(操作コマンド入力装置)
204 コマンド送信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航走体の姿勢を安定に保つための複数の推力発生器と、前記推力発生器を駆動する複数の推力発生器駆動源とを備えた航走体の安定ロバスト制御装置であって、
前記推力発生器駆動源の故障を検知する故障検知手段と、
前記航走体の姿勢制御用パラメータとして予め算出された、前記航走体に付与する制御力および制御モーメントを、予め定められた配分則に基づいて、前記各推力発生器駆動源に対して配分する配分量を算出すると共に、前記推力発生器駆動源の故障が検知された場合に、前記予め算出された制御力および制御モーメントを、前記故障が検知された推力発生器駆動源を除く残りの推力発生器駆動源に対して再配分する配分量算出手段とを備えることを特徴とする航走体の安定ロバスト制御装置。
【請求項2】
前記航走体の姿勢に関する情報を検知するセンサにて検出した検出値と予め定められた目標値との偏差を算出する偏差算出手段と、
前記航走体の姿勢制御用パラメータとして、前記偏差に基づいて前記航走体に付与する制御力および制御モーメントを算出する自動制御パラメータ算出手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の航走体の安定ロバスト制御装置。
【請求項3】
前記航走体の姿勢制御用パラメータに対応した操作コマンドを入力する操作コマンド入力装置から入力された操作コマンドを予め定められた変換則に基づいて変換し、変換結果として前記制御力および制御モーメントを算出する手動制御パラメータ算出手段をさらに備え、
前記配分量算出手段は、前記手動制御パラメータ算出手段で算出された制御力および制御モーメントと前記配分則とに基づいて、前記配分量を算出することを特徴とする請求項1に記載の航走体の安定ロバスト制御装置。
【請求項4】
前記推力発生器駆動源に対する操作コマンドを入力する操作コマンド入力装置から入力された操作コマンドを予め定められた変換則に基づいて変換し、変換結果として制御力および制御モーメントを算出する手動制御パラメータ算出手段と、
前記自動制御パラメータ算出手段で算出された制御力および制御モーメントと、前記手動制御パラメータ算出手段で算出された制御力および制御モーメントとを加算する加算手段とをさらに備え、
前記配分量算出手段は、前記加算手段で加算された制御力および制御モーメントと前記配分則とに基づいて、前記配分量を算出することを特徴とする請求項2に記載の航走体の安定ロバスト制御装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の航走体の安定ロバスト制御装置と、推進手段と、複数の推力発生器と、前記推力発生器を駆動する複数の推力発生器駆動源と、姿勢に関する情報を検知するセンサとを有する航走体と、
前記航走体の姿勢制御用パラメータに対応した操作コマンドを入力する操作コマンド入力装置とを備えることを特徴とする航走体の安定ロバスト制御システム。
【請求項6】
前記操作コマンド入力装置から入力された操作コマンドを前記航走体に送信するコマンド送信装置と、
前記送信された操作コマンドを受信するコマンド受信装置とをさらに備え、
前記手動制御パラメータ算出手段は、前記受信された操作コマンドを前記変換則に基づいて変換することを特徴とする請求項5に記載の航走体の安定ロバスト制御システム。
【請求項7】
航走体の姿勢を安定に保つための複数の推力発生器と、前記推力発生器を駆動する複数の推力発生器駆動源と、安定ロバスト制御装置とを備えた航走体の安定ロバスト制御方法であって、
前記安定ロバスト制御装置は、
前記推力発生器駆動源の故障を検知する故障検知ステップと、
前記航走体の姿勢制御用パラメータとして予め算出された、前記航走体に付与する制御力および制御モーメントを、予め定められた配分則に基づいて、前記各推力発生器駆動源に対して配分する配分量を算出すると共に、前記推力発生器駆動源の故障が検知された場合に、前記予め算出された制御力および制御モーメントを、前記故障が検知された推力発生器駆動源を除く残りの推力発生器駆動源に対して再配分する配分量算出ステップとを有することを特徴とする航走体の安定ロバスト制御方法。
【請求項8】
航走体の姿勢を安定に保つための複数の推力発生器と、前記推力発生器を駆動する複数の推力発生器駆動源とを備えた航走体の姿勢を安定に保つために、コンピュータを、
前記推力発生器駆動源の故障を検知する故障検知手段、
前記航走体の姿勢制御用パラメータとして予め算出された、前記航走体に付与する制御力および制御モーメントを、予め定められた配分則に基づいて、前記各推力発生器駆動源に対して配分する配分量を算出すると共に、前記推力発生器駆動源の故障が検知された場合に、前記予め算出された制御力および制御モーメントを、前記故障が検知された推力発生器駆動源を除く残りの推力発生器駆動源に対して再配分する配分量算出手段、
として機能させることを特徴とする航走体の安定ロバスト制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−107943(P2008−107943A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288355(P2006−288355)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.INS
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【Fターム(参考)】