説明

船体用制御装置及び船体用制御プログラム並びに船体用制御プログラムを組み込んだ自動操舵装置

【課題】補助推進装置の設置や舵の制御が不要で、目標位置を設定するだけで目標位置までの経路上に船体を漂流させる船体用制御装置及び船体用制御プログラム並びに船体用制御プログラムを組み込んだ自動操舵装置を提供する。
【解決手段】船体は、船体用制御装置1とGPS航法装置2とクラッチ制御装置3とスラスタ制御装置5とを備える。繰船者が目標位置を設定すると、現在位置から目標位置までの設定経路が算出され、船体と設定経路との離間距離が限界偏位量を超えた場合、クラッチ制御装置3がクラッチ4を嵌めて船体を推進させ、船体が設定経路上に復帰するとクラッチ制御装置3がクラッチ4を脱して船体を停止させる。また、船体はスラスタ6を備えるため、船首方位を設定した方位に保持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船体の自動制御に係るものであり、船体を設定漂流経路上に保持する船体用制御装置及び船体用制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船上での釣りには対象魚種によって、流し釣りやポイント釣りなどの釣り方がある。ポイント釣りとは船体を定点に保持させ釣りをするものであり、流し釣りとは船体を漂流させながら釣りをするものである。流し釣りの場合、種々の魚が潮の流れに沿って泳ぐため、潮の流れに沿って釣れば、釣果を上げることが期待できる。
【0003】
このような流し釣りをするため、主推進装置とは別途補助推進装置を2基備えた船体において、船体の現方位及び現位置と、目的地点との距離及び乖離角度θを算出して、目的地点からの離間距離rmと所定の離間許容限界距離Rmとの関係が、rm≧Rmの場合に、乖離角度θに基づき2つの補助推進装置を駆動制御して船体を目的地に向けて進行制御する制御装置を備えた自動復帰航行装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この発明によると、魚を釣りたいポイントで主推進装置を停止した船体は漂流を開始し、船体の現在位置と目的地点との離間距離rmが、あらかじめ設定した限界離間距離Rmを越えると、左右2つの補助推進装置が駆動制御され、船体が目的地点に復帰する。その後、補助推進装置を停止し、再び船体を漂流させる。このように、これら一連の動作を繰り返すことで、目的地点を中心として限界離間距離Rmを半径とする領域内で船体は自動的に往復航行することとなり、この領域内で流し釣りができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、目的地点を中心とした一定領域内で釣りができるが、殆どの場合に海上では風が吹いているので、推進機を停止した船体は潮と風の双方の影響によって押し流される。そのため、船体が漂流する方向と潮の流れる方向とにズレが生じることとなる。また、特許文献1に係る発明は、流し釣りを制御するものと言うよりは、従来から多数提案されている定点保持制御における閾値の設定を変更したものであり、従来の定点保持制御と本質的には変わらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−315474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように特許文献1に記載の自動復帰航行装置には、以下の点で改良すべき余地がある。
1)定点に船体を自動復帰させるための制御装置であり、当該定点を中心とする領域内での流し釣りは可能であるが、当該制御装置では設定領域外での船体の制御並びに流し釣りができない。
2)設定領域内において流し釣りをする場合にも、風の影響を受け、船体が漂流する方位と潮の流れの方位とにズレが生じるが、これを自動的に修正できない。
3)主推進装置とは別途、補助推進装置の設置が必須であるため、制御が複雑となり、かつ、コストもかかる。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、補助推進装置の設置が不要であり、目標位置を設定するだけで、初期位置から目標位置までの設定漂流経路上に船体を漂流させるように制御できる船体用制御装置及び船体用制御プログラム並びに船体用制御を組み込んだ自動操舵装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために本発明に係る船体用制御装置は、推進器と、クラッチと、該クラッチを制御するクラッチ制御装置と、設定した方位に船首方位を保持するためのスラスタと、船体の船首方位を検出する方位検出手段と設定方位を入力する設定方位入力手段と前記船首方位と前記設定方位とが一致するか否かを判定する方位一致判定手段と前記船首方位と前記設定方位とが一致しない場合に前記スラスタを作動するスラスタ作動手段と前記船首方位と前記設定方位とが一致する場合に前記スラスタを停止するスラスタ停止手段とを有するスラスタ制御装置と、前記船体の位置(初期位置及び現在位置)を検出する位置検出手段と目標位置を入力する目標位置入力手段と前記船体の初期位置から設定した目標位置までの設定漂流経路を算出する設定漂流経路算出手段と前記現在位置と前記設定漂流経路との偏位量(ズレ)を算出する偏位量算出手段とを有するGPS航法装置と、を備えた船体を設定漂流経路上に保持するための船体用制御装置であって、
前記スラスタ制御装置は、前記偏位量を前記GPS航法装置より受信する偏位量受信手段と、前記偏位量の閾値を限界偏位量として設定する限界偏位量設定手段と、前記偏位量が前記限界偏位量を超えた場合に、前記クラッチを嵌める指令を前記クラッチ制御装置に出力するクラッチ嵌指令出力手段と、前記クラッチ嵌指令により前記クラッチが嵌まることにより前記船体が推進し、前記船体が前記設定漂流経路上に帰着した場合に、前記クラッチを脱する指令を前記クラッチ制御装置に出力するクラッチ脱指令出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、停止した船体を、漂流させたい方位上の点を目標位置に設定するだけで、船体の初期位置から目標位置までの設定漂流経路が算出され、船体はこの設定漂流経路に沿って漂流するように制御される。従って、操船者は初期位置から目標位置までの間、船体の操舵をすることなく流し釣りをすることができる。また、潮流方位上の点を目標位置に設定することで、容易に、潮流に沿って船体を漂流させることができる。
【0011】
また、本発明の制御は、スラスタを設置した船体のクラッチの嵌脱動作を制御するものであり、船体の位置と設定漂流経路との偏位量が所定の範囲を超えた場合にクラッチを嵌め、船体が設定漂流経路に帰着するとクラッチを脱するという制御である。そのため、補助推進装置の設置や舵の制御は不要である。これは、スラスタ制御装置によりスラスタが船体の向きを制御し、船首が常時設定方位を向くこととなるため、クラッチを嵌めれば船体は設定方位に向かって前進することとなる。したがって、原則として舵の制御や補助推進機自体も不要となる。
【0012】
さらに、設定方位を、設定漂流経路と船首方位とが垂直となるよう設定することで、最短距離で設定漂流経路へ復帰することとできる。
ここで、以下語句について説明する。
・「スラスタ」とは、船を横方向に動かすための動力装置である。具体的には、船体の水面下前方に左右に渡るトンネルを通し、その中にプロペラをつけて、横向きに水流を出すことにより船を横滑りさせる装置である。狭い航路を通過する時や、離着岸をスムーズに行う時に有効で、また、沖合での船釣時などにおいては舳先の向きを簡単に変えることができる。
・「スラスタ制御装置」とは、スラスタを制御するための機器であり、設定方位を入力することで、スラスタを動作させて船首方位を設定方位に保持することができる。
・「目標位置」とは、操船者が目的とする位置を設定するというよりむしろ、船体を漂流させたい方向を決めるための、仮の目標位置をいう。なお、目標位置は操船者が任意に設定することができる。
・「設定漂流経路」とは、初期位置から目標位置まで船体を漂流させる設定経路をいう。この設定漂流経路の算出方法は、従来からある中分緯度航法や大圏航法、漸長緯度航法などを用いればよい。
・「偏位量」とは、船体の現在位置の設定漂流経路からのズレ量、つまりクロストラックエラー(XTE)のことをいう。
・「限界偏位量」とは、例えば、1.8m、18m、180mなど操船者によって任意に定めた偏位量の閾値をいう。つまり、限界偏位量とは、偏位量の境界を定めるものである。また、この限界偏位量に0.1mといった余りに短い距離を設定するのは、各機器の保守上好ましくない。このように設定すると、船体の揺れや多少の波の影響で制御が行われてしまい、常時船体用制御装置等が作動することとなるからである。
【0013】
請求項2に係る船体用制御装置は、推進器と、クラッチと、該クラッチを制御するクラッチ制御装置と、設定した方位に船首方位を保持するためのスラスタと、船体の船首方位を検出する方位検出手段と設定方位を入力する設定方位入力手段と前記船首方位と前記設定方位とが一致するか否かを判定する方位一致判定手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致しない場合に前記スラスタを作動するスラスタ作動手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致する場合に前記スラスタを停止するスラスタ停止手段とを有するスラスタ制御装置と、前記船体の位置(初期位置及び現在位置)を検出する位置検出手段と、目標位置を入力する目標位置入力手段とを有するGPS航法装置とを備えた船体を設定漂流経路上に保持するための船体用制御装置であって、
前記初期位置と前記目標位置とを前記GPS航法装置より受信して、前記船体の初期位置から前記目標位置までの設定漂流経路を算出する設定漂流経路算出手段と、前記現在位置を前記GPS航法装置より受信して、前記現在位置と前記設定漂流経路との偏位量(ズレ)を算出する偏位量算出手段と、前記偏位量の閾値を限界偏位量として設定する限界偏位量設定手段と、前記偏位量が前記限界偏位量を超えた場合に、前記クラッチを嵌める指令を前記クラッチ制御装置に出力するクラッチ嵌指令出力手段と、前記クラッチ嵌指令により前記クラッチが嵌まることにより前記船体が推進し、前記船体が前記設定漂流経路上に帰着した場合に、前記クラッチを脱する指令を前記クラッチ制御装置に出力するクラッチ脱指令出力手段と、を備えたこととしてもよい。
【0014】
この構成によれば、船体用制御装置がGPS航法装置の機能を一部兼ね備えることとできる。
【0015】
請求項3に係る船体用制御装置は、前記目標位置に代えて、目標方位を入力することにより、前記設定漂流経路として、前記初期位置から前記目標方位へ向けての漂流経路を用いることとしてもよい。
【0016】
この構成によれば、目標位置の代わりに目標方位を入力するだけで、船体の初期位置から目標方位への漂流経路が算出され、船体はこの設定漂流経路に沿って流されるように制御される。
【0017】
請求項4に係る船体用制御装置は、前記クラッチ脱指令出力手段が、前記船体が前記設定漂流経路上に帰着した場合に代えて、前記船体が前記設定漂流経路を横切って、再度前記偏位量が前記限界偏位量を超えた場合に、前記クラッチを脱する指令を出力する手段であることを備えることとしてもよい。
【0018】
この構成によれば、船体が設定漂流経路上に帰着した場合にクラッチを脱する制御に代えて、船体が設定漂流経路を超えて再度限界偏位量に達した場合にクラッチを脱する制御とすることもできる。そうすることで、クラッチの嵌・脱動作の間隔を約2倍にすることができ、クラッチやクラッチ制御装置の頻繁な作動を防止できる。
【0019】
請求項5に係る船体用制御装置は、前記初期位置と前記目標位置とが一致する場合には、前記偏位量として、前記現在位置と前記設定漂流経路との偏位量に代えて、前記現在位置と前記目標位置との二点間偏位量を用い、前記方位一致判定が、前記船首方位と前記設定方位との一致・不一致の判定に代えて、前記現在位置から前記目標位置までの二点間方位を前記GPS航法装置より受信して、前記現在船首方位と前記二点間方位との一致・不一致の判定とすることとしてもよい。
【0020】
この構成によれば、目標位置を船体の初期位置に設定すれば、船体は目標位置(初期地位)に保持されるよう制御されるため、流し釣りに加えて、ポイント釣りをすることができる。
【0021】
請求項6に係る船体用制御装置は、前記クラッチ制御装置が、手動操作用スロットルレバーとシフトレバーを備えたプッシュプルケーブル式のコントロールヘッドを介して前記エンジンの前記クラッチを中立状態・前進状態・後進状態に遠隔操作できる制御装置であって、前記シフトレバーの位置を切り換える駆動力を発生させるモータと、このモータの駆動力をプッシュプルケーブルを介して前記シフトレバーに伝達あるいは伝達を解除する電磁クラッチとを備えたアクチュエータユニットを設け、このアクチュエータユニットに電気式リモートコントローラとしてのポータブル発信器を接続し、前記コントロールヘッドのシフトレバーをプッシュプルケーブルを介して位置制御可能に構成し、前記ポータブル発信器には、ダイヤル式のツマミを中立位置から時計方向と反時計方向とへ回転可能に設け、前記ツマミを前記中立位置から一方へ最大回転角の範囲内で最大回転位置へ回転させると前進し、前記ツマミを前記中立位置から他方へ最大回転角の範囲内で最大回転位置へ回転させると後進するとともに、前記ツマミを中立位置から両方向にそれぞれ前記最大回転角より狭い範囲内で回転させると、それぞれ前進潮立てと後進潮立てとを行い、前進潮立ておよび後進潮立てとも前記ツマミの回転角で前進時間あるいは後進時間および中立時間の長短で複数段階に分かれており、前進時間あるいは後進時間および中立時間についてはあらかじめ各段階ごとに設定され、前進潮立て・後進潮立てともに前記エンジンの回転数はアイドリングに近い微速で航行される一方、中立時間の間はスクリューの回転が停止するようにしたこととしてもよい。
【0022】
この構成によれば、前記流し釣り制御に加え、一つのツマミを回転させてツマミの位置を決めるだけで、船体の前進・後進とともに、前進潮立ておよび後進潮立てを自動的に行えるため、操作が楽なうえに、潮の流れが変化してもツマミの位置の変更で対応でき、操船ポジションから離れて魚釣りに専念することができる。具体的には、潮の流れや風の強さを考慮してスイッチのON/OFFで中立時間や前進時間および後進時間を手動で選択できるので、自動制御に加えて、手動操作によって操船者の詳細な調整が可能である。
【0023】
請求項7に係る船体用制御装置は、推進器と、クラッチと、該クラッチを制御するクラッチ制御装置と、設定した方位に船首方位を保持するためのスラスタと、船体の船首方位を検出する方位検出手段と、設定方位を入力する設定方位入力手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致するか否かを判定する方位一致判定手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致しない場合に前記スラスタを作動するスラスタ作動手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致する場合に前記スラスタを停止するスラスタ停止手段とを有するスラスタ制御装置と、前記船体の位置(初期位置及び現在位置)を検出する位置検出手段と、目標位置を入力する目標位置入力手段と、前記船体の初期位置から設定した目標位置までの設定漂流経路を算出する設定漂流経路算出手段と、前記現在位置と前記設定漂流経路との偏位量(ズレ)を算出する偏位量算出手段と、を有するGPS航法装置とを備えた船体を設定漂流経路上に保持するための船体用制御装置であって、
前記偏位量を前記GPS航法装置より受信して、前記偏位量の閾値を限界偏位量として設定し、前記偏位量が前記限界偏位量を超えた場合に、前記クラッチを嵌める指令を前記クラッチ制御装置に出力し、前記クラッチが嵌まることにより前記船体が推進し、前記船体が前記設定漂流経路上に帰着した場合に、前記クラッチを脱する指令を前記クラッチ制御装置に出力することを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、本発明のプログラムを、船体用制御装置をはじめ、例えば自動操舵装置やクラッチ制御装置、航法装置などに組み込むことによって、スラスタを備えた船体を漂流させたい方位上の点を目標位置に設定するだけで、船体の初期位置から目標位置までの設定漂流経路が算出され、船体をこの設定漂流経路に沿って流されるように制御できる。従って、操船者は初期位置から目標位置までの間、船体を操舵することなく流し釣りができる。また、潮流方位上の点を目標位置に設定することで、容易に、潮流に沿って船体を漂流させることができる。
【0025】
なお、本発明の制御は、スラスタを設置した船体のクラッチの動作を制御するものであり、離間距離が所定の範囲を超えるとクラッチを嵌め、船体が設定漂流経路に帰着するとクラッチを脱する制御である。そのため、補助推進装置の設置や舵の制御は不要である。
【0026】
請求項8に係る船体用制御プログラムは、推進器と、クラッチと、該クラッチを制御するクラッチ制御装置と、設定した方位に船首方位を保持するためのスラスタと、船体の船首方位を検出する方位検出手段と、設定方位を入力する設定方位入力手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致するか否かを判定する方位一致判定手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致しない場合に前記スラスタを作動するスラスタ作動手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致する場合に前記スラスタを停止するスラスタ停止手段とを有するスラスタ制御装置と、前記船体の位置(初期位置及び現在位置)を検出する位置検出手段と、目標位置を入力する目標位置入力手段とを有するGPS航法装置とを備えた船体を設定漂流経路上に保持するための船体用制御装置であって、
前記初期位置と入力した前記目標位置とを前記GPS航法装置より受信して、前記船体の初期位置から前記目標位置までの設定漂流経路を算出し、前記現在位置を前記GPS航法装置より随時受信して、前記現在位置と前記設定漂流経路との偏位量(ズレ)を算出し、前記偏位量の閾値を限界偏位量として設定し、前記偏位量が前記限界偏位量を超えた場合に、前記クラッチを嵌める指令を前記クラッチ制御装置に出力し、前記クラッチが嵌まることにより前記船体が推進し、前記船体が前記設定漂流経路上に帰着した場合に、前記クラッチを脱する指令を前記クラッチ制御装置に出力することとしてもよい。
【0027】
この構成によれば、船体用制御プログラムに航法装置の機能を兼ねることができる。
【0028】
請求項9に係る船体用制御プログラムは、前記目標位置に代えて、目標方位を入力することにより、前記設定漂流経路として、前記初期位置から前記目標方位へ向けての漂流経路を用いてもよい。
【0029】
請求項10に係る船体用制御プログラムは、前記クラッチを脱する指令が、前記船体が前記設定漂流経路上に帰着した場合に代えて、前記船体が前記設定漂流経路を横切って、再度前記偏位量が前記限界偏位量を超えた場合に、前記船体の推進機を停止させる指令を出力することとしてもよい。
【0030】
請求項11に係る船体用制御プログラムは、前記初期位置と前記目標位置とが一致する場合には、前記偏位量を、前記現在位置と前記設定漂流経路との偏位量に代えて、前記現在位置と前記目標位置との二点間偏位量とすることに切り替え、前記方位一致判定を、前記現在船首方位と前記設定方位との一致・不一致の判定に代えて、前記現在位置から前記目標位置までの二点間方位を前記GPS航法装置より受信して、前記船首方位と前記二点間方位との一致・不一致の判定とすることに切り替えることとしてもよい。
【0031】
請求項12に係る自動操舵装置は、前記船体の船首方位及び船体位置を検出する検出手段と、目的地点を設定する設定手段と、前記船体の当初船体位置から前記目的地点までの設定航路を算出する航路算出手段と、前記設定航路と前記船体の現在船首方位と現在船体位置とから前記船体に設定航路上を航行させるため舵の動作を制御する制御手段とを備えた自動操舵装置であって、請求項7〜11いずれか1項に記載の船体用制御プログラムが組み込まれていてもよい。
【0032】
この構成によれば、自動操舵装置が、船体用制御機能を備えることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る船体用制御装置及び船体用制御プログラム並びに船体用制御プログラムを組み込んだ自動操舵装置は、上記の構成からなるため、次のような優れた効果がある。
目標位置を設定するだけで、船体を設定漂流経路上に沿って漂流するように制御できる。この時、潮流の方位上に目標位置を設定すれば、潮流に沿って流し釣りができる。また、主としてクラッチの嵌・脱制御であるため、舵の制御や補助推進機の設置が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1に係る船体用制御装置(スラスタあり・GPS機能なし)の構成及びこれに接続する機器を示すブロック図である。
【図2】スラスタを示す図である。
【図3】(a)は、本発明の実施例1に係る船体用制御装置又は船体用制御プログラムを用い、船体の復帰を、設定漂流経路上への復帰に設定した場合の船体制御の一例を示す図である。(b)は、(a)における制御フローを示すフローチャートである。
【図4】(a)は、本発明の実施例1に係る船体用制御装置又は船体用制御プログラムを用い、船体の復帰を、設定漂流経路上を超えて再度限界偏位量へ達した場合、と設定した時の船体制御の一例を示す図である。(b)は、(a)における制御フローを示すフローチャートである。
【図5】(a)は、本発明の実施例1に係る船体用制御装置又は船体用制御プログラムを用い、目標位置を初期位置に設定した場合の一例を示す図である。(b)は、(a)における制御フローを示すフローチャートである。
【図6】(a)は、実施例1の変形例であるクラッチ制御装置及びクラッチのレイアウトを示す説明図である。(b)は、同クラッチ制御装置のポータブル発信器の一部拡大図である。
【図7】本発明の実施例2の船体用制御装置(スラスタあり・GPS機能あり)の構成及びこれに接続する機器を示すシステム図である。
【図8】(a)は、本発明の実施例2の船体用制御装置(スラスタあり・GPS機能あり)又は船体用制御プログラムにおける、設定経路上への復帰の制御フローを示すフローチャートである。(b)は、(a)において、目標位置を初期位置に設定した場合の制御フローを示すフローチャートである。
【図9】偏位量(クロストラックエラー)の算出方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る船体用制御装置及び船体用制御プログラム並びに船体用制御プログラムを組み込んだ操舵装置についての実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0036】
1.[船体用制御装置1及びその他機器の構成]
本発明の船体用制御装置1は、図1に示すように、船体用制御装置1に、GPS航法装置2、クラッチ制御装置3、スラスタ制御装置5が接続されている。
【0037】
(GPS航法装置2)
GPS航法装置2は、船体Aの位置(初期位置及び現在位置)と、目標位置を入力する目標位置入力部と、船体Aの初期位置から目標位置までの設定漂流経路を算出して、船体Aの現在位置と設定漂流経路との偏位量(クロストラックエラー)を算出する制御部とを有する。
【0038】
なお、偏位量(クロストラックエラー)の算出方法は、従来のGPS航法装置におけるクロストラックエラーの算出方法を用いればよい。その他、次のような算出方法を用いることもできる。例えば、図15に示すように、船体Aの初期位置を始点(0,0)とする座標をとる。そして、始点(0,0)と目標位置(a,b)とを通る直線αと、船体Aの現在位置(x、y)と始点(0,0)とを結ぶ線分βとを座標上に引く。次に、始点を中心として直線αと線分βとの角度θと、線分βの長さLを算出する。この長さLにsinθを乗じ、絶対値をとることで、現在位置から直線αに引いた垂線の長さが算出でき、これを設定漂流経路と現在位置との偏位量として算出する。また、船体Aの現在位置から設定漂流経路への設定方位とは、具体的には、図9中の直線αに直交する方位のことをいう。
【0039】
なお、前記の目標位置の入力に代えて、目標方位を入力した場合には、初期位置から目標方位へ向けての漂流経路が算出される。
【0040】
(クラッチ制御装置3)
クラッチ制御装置3は、推進機のエンジンに配されたクラッチ4と接続されており、推進機の作動・停止をクラッチ4の嵌脱により制御する。そして、船体用制御装置1は、クラッチ制御装置3に対して、クラッチ4の嵌脱指令を出力する。
【0041】
(スラスタ制御装置5)
スラスタ制御装置5は、図2に示す船体Aの下前方に設けたスラスタ6を制御するための装置である。また、スラスタ制御装置5は、船体Aの船首方位を検出する検出部(図示せず)と、設定方位を入力する入力部(図示せず)とを有し、随時船首方位と設定方位との一致・不一致を判定する。そして、これらが不一致の場合には船体Aの船首方位を設定方位に向けるべくスラスタ6を作動させ船体Aを回転させ、これらが一致するとスラスタ6を停止させる。このようにして、船体Aの船首方位を設定方位に常時保持する。
【0042】
(船体用制御装置1)
船体用制御装置1は、制御部1aと記憶部1bと入力部1cとを備える。入力部1cは、偏位量の閾値を限界偏位量として設定するための入力装置である。記憶部1bは、GPS航法装置2が算出した偏位量や、入力部1cにより設定した限界偏位量、スラスタ制御装置5が判定した方位一致判定などのデータを受信し、記憶する。制御部1aは、これらデータより偏位量が限界偏位量を超えるか否かを判定し、超えている場合には、クラッチ制御装置3にクラッチ4の嵌指令を出力する。また、一旦嵌指令を出力した後は、偏位量が0(又は、あらかじめ設定した範囲内)となった場合にクラッチ制御装置3に対してクラッチ4の脱指令を出力する。なお、偏位量が0(又は、あらかじめ設定した範囲内)となった場合に代えて、偏位量が一旦0となり、再度限界偏位量に達した場合に、クラッチ制御装置3に対してクラッチ4の脱指令を出力する設定としてもよい。
【0043】
2.[制御フロー1]
次に、船体用制御プログラムを用いて流し釣りをする場合の、船体Aを設定漂流経路上へ保持する制御フローについて、図3、図4を用いて説明する。
【0044】
(ステップS1)
流し釣りを開始しようとする操船者は、船体Aを停止し、船体Aを漂流させたい経路を決めて、GPS航法装置2の入力部より目標位置を入力する。そうすると、GPS航法装置2は船体Aの初期位置を検出し、船体Aの初期位置から目標位置までの設定漂流経路を算出する。(なお、操船者は、目標位置の代わりに目標方位をGPS航法装置2に入力することもできる。目標方位を入力すると、GPS航法装置2は、船体Aの初期位置を検出し、船体Aの初期位置から目標方位に向けての設定漂流経路を算出する。)
【0045】
(ステップS2)
次に、船体用制御装置1は、操船者があらかじめ入力部1cで設定した船体Aと設定漂流経路との偏位量(ズレ)の限界偏位量を、記憶部1bに限界偏位量データとして格納される。なお、このステップS2とステップS1とは、順不同であり、どちらを先に行ってもよい。
【0046】
(ステップS3)
船体Aが漂流を開始すると、GPS航法装置2は各時点における船体Aの位置(現在位置)を随時検出し、ステップS1で算出した設定漂流経路と現在位置との偏位量(現在偏位量a1)を随時算出し、現在偏位量データとして船体用制御装置1に送信され、記憶部1bに格納される。なお、現在偏位量は随時変化するが、その都度、現在偏位量データとして船体用制御装置1に送信され、記憶部1bにおいて現在偏位量データが更新される。
【0047】
(ステップS4)
そして、制御部1aは、記憶部1bから現在偏位量データ及び限界偏位量データを取り出し、その大小を判定する。
この時、(現在偏位量a1)≦(限界偏位量X)の場合、ステップS3に戻る。一方、(現在偏位量a1)>(限界偏位量X)の場合には、ステップS5に進む。
【0048】
(ステップS5)
制御部1aが(現在偏位量a1)>(限界偏位量X)と判定すると、その結果がスラスタ制御装置5に送信される。それを受信したスラスタ制御装置5は、クラッチ5の嵌指令(推進機作動指令)を送信する。そうすると、クラッチ制御装置4がクラッチ5を嵌め、推進機が作動して、船体Aは前進を開始する。
【0049】
(ステップS6)
推進機が作動し、船体Aが前進状態にある時にも、随時GPS航法装置2は現在偏位量a2を算出し、船体用制御装置1に対し現在偏位量データを送信し、船体用制御装置1はこれを受信する。
【0050】
(ステップS7)
これを受けて、船体用制御装置1の制御部1aは、船体Aが設定漂流経路上に復帰したか否かを判断するため、随時現在偏位量データがあらかじめ設定した範囲内であるか否かを判定する。
上記あらかじめ設定した範囲とは、例えば−0.3m〜+0.3mの範囲等をいい、現在偏位量がこの範囲内にあると、船体Aが設定経路上に復帰したと制御部1aが認識する。ここで、現在偏位量が0の場合に、船体Aが設定経路上に復帰というように設定することも可能であるが、船体Aは海上の潮流・風の影響を常に受けており、現在偏位量が0となる瞬間は少ない。したがって、所定の範囲を定めなければ、制御部1aが船体Aの設定漂流経路上への復帰との認識に時間を要することとなってしまうため、好ましくない。
そして、現在偏位量a2があらかじめ設定した範囲内(例えば、−0.3m〜+0.3m)にあると制御部1aが判定した場合(|現在偏位量a2|≦0.3m)、ステップS8へ進む。一方、範囲外と判定した場合(|現在偏位量a2|>0.3m)には、現在偏位量a2が範囲内に入るまで、ステップS6とステップS7をループする。
【0051】
(ステップS8)
船体用制御装置1の制御部1aが、|現在偏位量a2|≦0.3mと判定し、船体Aが設定経路上に復帰したと判断すると、制御部1aは船体Aを停止させるべく、クラッチ4の脱指令(推進機停止指令)をクラッチ制御装置3に対して送信する。
そうすると、クラッチ制御装置3がクラッチ4を脱し、船体Aが停止して、船体Aが漂流状態に戻る。
【0052】
その後、ステップS3に戻り、以後ステップS3〜ステップS8を繰り返す。
【0053】
なお、ステップS1、ステップS2の目標位置及び限界偏位量Xの設定は、フローの途中でも随時変更可能であり、これらを変更した場合は、ステップS1に戻り、再度フローがスタートする。
【0054】
また、上記船体用制御プログラムを、従来の自動操舵装置(オートパイロット)に組み込むことで、通常の自動操舵に加え、本発明の船体用制御を行うことができる。
【0055】
さらに、ステップS7の設定漂流経路上に戻ったか否かの判定を、前記のように設定漂流経路を基準とする場合(図3)に代えて、ステップS7bに示すように現在現位量が再度限界偏位量に達したか否かを基準とすることもできる(図4)。
【0056】
図3と図4とでは、クラッチ4を脱するタイミング、つまり船体Aの停止のタイミングが異なる。具体的には、図3では船体Aが設定経路上へ復帰した場合に、クラッチ4を脱して船体Aを停止させる制御であるが、図4では一旦船体Aが前進した後、船体Aが設定経路上を超えて、現在偏位量が再度限界偏位量に達した場合に、クラッチ4を脱して船体Aを停止させる制御である。このようにすることで、クラッチ4の嵌・脱のスパンが略2倍となるため、クラッチ4の嵌・脱の頻度を略1/2とすることができる。
【0057】
3.[制御フロー2]
続いて、船体用制御プログラムを用いてポイント釣りをする場合の、目標位置を船体Aの初期位置に設定した場合の制御フローについて、図5を用いて説明する。
【0058】
(ステップS101)
ポイント釣りを開始しようとする操船者は、ポイント釣りをする位置で船体Aを停止し、その位置をGPS航法装置2の入力部より目標位置として入力する。
【0059】
(ステップS102)
次に、船体用制御装置1は、操船者があらかじめ入力部1cで設定した船体Aと目標位置との偏位量(二点間偏位量)の限界偏位量Yを、限界偏位量データとして記憶部1bに格納する。なお、ステップS101とステップS102とは、順不同である。
【0060】
(ステップS103)
船体Aが漂流を開始すると、GPS航法装置2は各時点における船体Aの位置(現在位置)を随時検出し、目標位置と現在位置との偏位量(現在偏位量b1)を随時算出し、現在偏位量データとして船体用制御装置1に送信され、記憶部1bに格納される。なお、現在偏位量b1は随時変化するが、その都度、現在偏位量データとして船体用制御装置1に送信され、記憶部1bにおいて現在偏位量データが更新される。
【0061】
(ステップS104)
そして、制御部1aは、記憶部1bから現在偏位量データ及び限界偏位量データを取り出し、その大小を判定する。
この時、(現在偏位量b1)≦(限界偏位量Y)の場合、ステップS103に戻る。一方、(現在偏位量b1)>(限界偏位量Y)の場合には、ステップS105に進む。
【0062】
(ステップS105)
制御部1aが(現在偏位量b1)>(限界偏位量Y)と判定すると、その結果をGPS航法装置2及びスラスタ制御装置5に送信する。それを受信したGPS航法装置2は、その時点における船体Aの現在位置を検出して、現在位置から目標位置までの二点間方位を算出する。そして、GPS航法装置2は二点間方位データを船体用制御装置1に送信し、船体用制御装置1がそれを受信して、記憶部1bに二点間方位データを格納する。
【0063】
(ステップS106)
一方、制御部1aからの(現在偏位量b1)>(限界偏位量Y)判定を受信したスラスタ制御装置5は、スラスタ制御装置5内部に設けられた検出部(図示せず)によって船体Aの船首方位を検出する。そして、スラスタ制御装置5は船体Aの船首方位データを船体用制御装置1に送信し、船体用制御装置1がそれを受信して、記憶部1bに船首方位データを格納する。
【0064】
(ステップS107)
続き、船体用制御装置1の制御部1aは、受信した二点間方位データと船首方位データを記憶部1bより取り出し、これら二点間方位と船首方位とが一致するか否か(方位偏差が0か否か)について判定する。
この時、これら方位が一致しない場合は、ステップS108に進む。一方、方位が一致する場合は、ステップS109に進む。
【0065】
(ステップS108)
方位が一致しない場合、船体用制御装置1がその判定結果をスラスタ制御装置5に送信し、これを受信したスラスタ制御装置5はスラスタ6を作動させ、船体Aの船首方位を修正する。そして、方位偏差が0となると、スラスタ6を停止する。その後、ステップS103に戻る。
【0066】
(ステップS109)
一方、方位が一致する場合、船体用制御装置1がその判定結果をクラッチ制御装置3に送信し、これを受信したクラッチ制御装置3はクラッチ4を嵌め、船体Aが前進を開始する。
【0067】
(ステップS110)
船体Aが前進状態にある時にも、随時GPS航法装置2は現在偏位量b2を算出し、船体用制御装置1に現在偏位量データを送信し、船体用制御装置1がこれを受信して、記憶部1bに格納する。
【0068】
(ステップS111)
船体用制御装置1の制御部1aは、船体Aが目標位置に復帰したか否かを判断するため、随時、現在偏位量があらかじめ設定した所定範囲内(−0.3m〜+0.3m)であるか否かを判定する。
そして、現在偏位量b2が所定範囲内にあると制御部1aが判定した場合(|現在偏位量b2|≦0.3m)、ステップS112へ進む。一方、範囲外と判定した場合(|現在偏位量b2|>0.3m)には、現在偏位量b2が範囲内に入るまで、ステップS110とステップS111をループする。
【0069】
(ステップS112)
船体用制御装置1の制御部1aが、|現在偏位量b2|≦0.3mと判定し、船体Aが目標位置に復帰したと判断すると、制御部1aは船体Aを停止させるべく、クラッチ4の脱指令(船体A停止指令)をクラッチ制御装置3に送信する。
そうすると、クラッチ制御装置3がクラッチ4を脱し、船体Aが停止して、船体Aが漂流状態に戻る。
【0070】
その後、ステップS103に戻り、以後ステップS103〜ステップS112を繰り返す。
【0071】
なお、ステップS101、ステップS102の目標位置及び限界偏位量Yの設定は、フローの途中でも随時変更可能であり、これらを変更した場合は、ステップS101に戻り、再度フローがスタートする。
【0072】
4.[変形例]
次に、実施例1のクラッチ制御装置3に代えて、自動制御に加え手動制御も可能であって、手動制御用の遠隔装置(ポータブル発信器)が接続されたクラッチ制御装置30を用いた変形例について説明する。なお、その他船体用制御装置1、GPS航法装置2、スラスタ制御装置5等の構成については、変更しないため、これらの構成については説明を省略する。
【0073】
上記の通り、クラッチ制御装置30は、手動制御機能が付加されているため、船体Aの自動制御に加えて、操船者が手動により船体Aの前進・中立・後進の微調整が可能である。さらに手動制御用遠隔装置によって、操作を操船者の手元で行うことができる。
【0074】
このクラッチ制御装置30は、図6(a)に示すようにエンジン41のガバナを制御して回転数を調整するスロットル42と、クラッチ40を中立状態から前進または後進に切り換えるシフト43とを、それぞれプッシュプルケーブルを介して手動での操作も可能なメカ式のコントロールヘッド34を制御するためのアクチュエータユニット31を備える。
【0075】
クラッチ制御装置30のアクチュエータユニット31には、電気式リモートコントローラとしてのポータブル発信器(手動制御用遠隔装置)32が接続されている。アクチュエータユニット31内にはモータMと電磁(励磁)クラッチCとレバーLおよび制御部(図示せず)が配され、モータMの回転により電磁クラッチCを介して特定方向に移動するレバーLがプッシュプルケーブルによりコントロールヘッド34のシフトレバー35の回転操作部(図示せず)に接続されている。
【0076】
ポータブル発信器32は、図6(b)に示すようにダイヤル式のツマミ33を中立位置から時計方向と反時計方向とへ回転可能に備えている。ツマミ33は最大150°両方向に回転可能で、時計方向へ150°回転した位置が前進(連続)、反時計方向へ150°回転した位置が後進(連続)である。また、中立位置から両方向に25°〜108°の範囲が、それぞれ前進潮立てと後進潮立てとであり、前進潮立ておよび後進潮立てとも前進または後進時間と中立時間の長短で1〜7段階に分かれている。前進時間についてはあらかじめ1段目が1秒、7段目が30秒に設定され、2段目〜6段目は5秒・10秒・15秒・20秒・25秒に設定されている。図6(a)中の符号36はスロットル42を操作するためのスロットルレバーである。
【0077】
上記時間の設定は一例であって、限定されるものではない。なお、上記(連続)とは、潮立ての時間設定により、前進−中立あるいは後進−中立を繰り返すのではなく、常に前進あるいは後進を継続する状態であることを言う。
【0078】
また、前後進ともにエンジン41の回転数はアイドリングに近い微速で航行される。
【0079】
さらに、中立時間も前進時間あるいは後進時間に対応してツマミ33の位置で各段階ごとにあらかじめ設定されているが、図示を省略した2つのディップスイッチのON/OFFで前進時間と同じ・その75%・同125%・同150%の4通りに設定できるようになっている。後進時間は別の1つのディップスイッチのON/OFFで前進時間と同じまたはその150%の2通りに設定できるようになっている。なお、ここに記載した具体的な数値はあくまで一例であって、限定されるものではない。
【実施例2】
【0080】
1.[船体用制御装置101及びその他機器の構成]
次に、船体用制御装置1にGPS機能を追加した船体用制御装置101を用いた実施例2について、図7,図8に基づき説明する。
具体的には、前記船体用制御装置1に代えて、船体Aの位置(初期位置及び現在位置)の検出をする検出部101e、目標位置を設定する入力部101d、表示部101fとを備え、制御部101aに、船体Aの初期位置から目標位置までの設定漂流経路を算出する機能、船体Aの現在位置と設定漂流経路との偏位量(クロストラックエラー)を算出する機能とを組み込んだ船体用制御装置101とするものである(図7参照)。
【0081】
つまり、本変形例における船体用制御装置101は、前記船体用制御装置1にGPS航法装置2の機能を備えることとしたものである。その他のクラッチ制御装置3やスラスタ制御装置5等については、実施例1の場合と同様とする。
【0082】
本変形例の船体用制御装置101を用いた場合の制御は、図8に示す通りとなる。図8(a)は流し釣りをする場合のコース制御、図8(b)はポイント釣りをする場合のポイント制御のフローを示す。
【0083】
2.[制御フロー1’]
制御フロー1’は、概ね、実施例1の[制御フロー1]のステップS1〜ステップS4が、ステップS201〜ステップS204に置き換わったものであり(図8(a))、ステップS1〜ステップS4でGPS航法装置2が行っていた設定漂流経路及び現在偏位量の算出等を、船体用制御装置101が行うこととなる。以下、詳細を記載する。
【0084】
(ステップS201)
流し釣りを開始しようとする操船者は、船体Aを停止し、船体Aを漂流させたい経路を決めて、船体用制御装置101の入力部101dより目標位置を入力する。そうすると、検出部101eは船体Aの初期位置を検出し、制御部101aが船体Aの初期位置から目標位置までの設定漂流経路を算出する。(なお、操船者は、目標位置の代わりに目標方位を制御部101dに入力することもできる。目標方位を入力すると、検出部101eは、船体Aの初期位置を検出し、制御部101aが船体Aの初期位置から目標方位に向けての設定漂流経路を算出する。)
【0085】
(ステップS202)
次に、設定漂流経路と船体Aとのズレの許容範囲である限界偏位量Xを、操船者が入力部101cより設定入力する。そうすると、限界偏位量が記憶部101bに限界偏位量データとして格納される。なお、このステップS201とステップS202とは、順不同であり、どちらを先に行ってもよい。
【0086】
(ステップS203−1)
船体Aが漂流を開始すると、船体用制御装置101の検出部101eは各時点における船体Aの位置(現在位置)を随時検出し、記憶部101bに格納される。
【0087】
(ステップS203−2)
そして、制御部101aは、記憶部101bからステップS201で算出した設定漂流経路と現在位置とを取り出し、設定漂流経路と現在位置との偏位量(現在偏位量a1)を随時算出し、現在偏位量データとして記憶部101bに格納する。なお、現在偏位量は随時変化するが、その都度、現在偏位量データとして記憶部101bにおいて現在偏位量データが更新される。
【0088】
(ステップS204)
そして、制御部101aは、記憶部101bから現在偏位量データ及び限界偏位量データを取り出し、その大小を判定する。
この時、(現在偏位量a1)≦(限界偏位量X)の場合、ステップS203に戻る。一方、(現在偏位量a1)>(限界偏位量X)の場合には、ステップS205に進む。
【0089】
(ステップS205)
制御部1aが(現在偏位量a1)>(限界偏位量X)と判定すると、その結果がクラッチ制御装置3に送信される。それを受信したクラッチ制御装置3は、クラッチ4の嵌指令(推進機作動指令)を送信する。そうすると、クラッチ制御装置3がクラッチ4を嵌め、推進機が作動して、船体Aは前進を開始する。
【0090】
(ステップS206)
推進機が作動し、船体Aが前進状態にある時にも、随時検出部101eは船体Aの現在位置を検出し、これに基づき制御部101aは、現在偏位量a2を算出して記憶部101bに格納する。
【0091】
(ステップS207)
これを受けて、制御部101aは、船体Aが設定漂流経路上に復帰したか否かを判断するため、随時現在偏位量データがあらかじめ設定した範囲内(例えば、−0.3m〜+0.3m)であるか否かを判定する。
そして、現在偏位量a2があらかじめ設定した範囲内にあると制御部101aが判定した場合(|現在偏位量a2|≦0.3m)、ステップS208へ進む。一方、範囲外と判定した場合(|現在偏位量a2|>0.3m)には、現在偏位量a2が範囲内に入るまで、ステップS206とステップS207をループする。
【0092】
(ステップS208)
制御部101aが、|現在偏位量a2|≦0.3mと判定し、船体Aが設定経路上に復帰したと判断すると、制御部101aは船体Aを停止させるべく、クラッチ4の脱指令(推進機停止指令)をクラッチ制御装置3に対して送信する。そうすると、クラッチ制御装置3がクラッチ4を脱し、船体Aが停止して、船体Aが漂流状態に戻る。
【0093】
その後、ステップS203に戻り、以後ステップS203〜ステップS208を繰り返す。
【0094】
なお、ステップS201、ステップS202の目標位置及び限界偏位量Xの設定は、フローの途中でも随時変更可能であり、これらを変更した場合は、ステップS201に戻り、再度フローがスタートする。
【0095】
また、実施例1の制御フロー1と同様、ステップS207の設定漂流経路上に戻ったか否かの判定を、前記のように設定漂流経路を基準とする場合に代えて、現在偏位量が再度限界偏位量に達したか否かを基準とすることもできる。
【0096】
3.[制御フロー2’]
続いて、ポイント釣りをする場合の、目標位置を船体Aの初期位置に設定した場合の制御フロー2’について、図7(b)を用いて説明する。[制御フロー2’]においては、実施例1の[制御フロー2]のステップS101〜ステップS104が、ステップS301〜ステップS304に置き換わり(図7(b))、ステップS101〜ステップS104でGPS航法装置2が行っていた現在偏位量の算出や、船体Aの船首方位の検出を、船体用制御装置101が行うこととなる。
【0097】
(ステップS301)
ポイント釣りを開始しようとする操船者は、ポイント釣りをする位置で船体Aを停止し、入力部101dから初期位置を目標位置として設定入力する。
【0098】
(ステップS302)
次に、設定漂流経路と船体Aとのズレの許容範囲である限界偏位量Yを、操船者が入力部101cより設定入力する。そうすると、限界偏位量が記憶部101bに限界偏位量データとして格納される。なお、このステップS301とステップS302とは、順不同であり、どちらを先に行ってもよい。
【0099】
(ステップS303−1)
船体Aが漂流を開始すると、検出部101eは各時点における船体Aの位置(現在位置)を随時検出し、記憶部101bに格納される。
【0100】
(ステップS303−2)
そして、制御部101aは、記憶部101bからステップS301で検出した目標位置と現在位置とを取り出し、設定漂流経路と現在位置との二点間偏位量(現在偏位量b1)を随時算出し、現在偏位量データとして記憶部101bに格納する。なお、現在偏位量は随時変化するが、その都度、現在偏位量データとして記憶部101bにおいて現在偏位量データが更新される。
【0101】
(ステップS304)
そして、制御部101aは、記憶部101bから現在偏位量データ及び限界偏位量データを取り出し、その大小を判定する。
この時、(現在偏位量b1)≦(限界偏位量Y)の場合、ステップS303に戻る。一方、(現在偏位量b1)>(限界偏位量Y)の場合には、ステップS305に進む。
【0102】
(ステップS305)
制御部101aが(現在偏位量b1)>(限界偏位量Y)と判定すると、検出部101eは船体Aの現在位置を検出して、それに基づき制御部101aが現在位置から目標位置までの二点間方位を算出し、記憶部101bに二点間方位データとして格納する。
その一方で、制御部101aは、(現在偏位量b1)>(限界偏位量Y)との判定結果をスラスタ制御装置5に送信する。
【0103】
(ステップS306)
制御部101aから、(現在偏位量b1)>(限界偏位量Y)との判定結果を受信したスラスタ制御装置5は、スラスタ制御装置5内部に設けられた検出部(図示せず)によって船体Aの船首方位を検出する。そして、スラスタ制御装置5は船体Aの船首方位データを船体用制御装置101に送信し、船体用制御装置101がそれを受信して、記憶部101bに船首方位データを格納する。
【0104】
(ステップS307)
続き、制御部101aは、受信した二点間方位データと船首方位データを記憶部101bより取り出し、これら二点間方位と船首方位とが一致するか否か(方位偏差が0か否か)について判定する。
この時、これら方位が一致しない場合は、ステップS308に進む。一方、方位が一致する場合は、ステップS309に進む。
【0105】
(ステップS308)
方位が一致しない場合、船体用制御装置101がその判定結果をスラスタ制御装置5に送信し、これを受信したスラスタ制御装置5はスラスタ6を作動させ、船体Aの船首方位を修正する。そして、方位偏差が0となると、スラスタ6を停止する。その後、ステップS303に戻る。
【0106】
(ステップS309)
一方、方位が一致する場合、船体用制御装置101がその判定結果をクラッチ制御装置3に送信し、これを受信したクラッチ制御装置3はクラッチ4を嵌め、船体Aが前進を開始する。
【0107】
(ステップS310)
船体Aが前進状態にある時にも、随時検出部101eは船体Aの現在位置を検出して、これに基づき制御部101aが現在偏位量b2を算出し、記憶部101bに格納する。
【0108】
(ステップS311)
続き、制御部101aは、記憶部101bから現在偏位量b2を取り出し、船体Aが目標位置に復帰したか否かを判断するため、随時現在偏位量b2があらかじめ設定した所定範囲内(−0.3m〜+0.3m)であるか否かを判定する。
そして、制御部101aが現在偏位量b2が所定範囲内にあると判定した場合(|現在偏位量b2|≦0.3m)、ステップS312へ進む。一方、範囲外と判定した場合(|現在偏位量b2|>0.3m)には、現在偏位量b2が範囲内に入るまで、ステップS310とステップS311をループする。
【0109】
(ステップS312)
制御部101aが、|現在偏位量b2|≦0.3mと判定し、船体Aが目標位置に復帰したと判断すると、制御部101aは船体Aを停止させるべく、クラッチ4の脱指令(船体A停止指令)をクラッチ制御装置3に送信する。
そうすると、クラッチ制御装置3がクラッチ4を脱し、船体Aが停止して、船体Aが漂流状態に戻る。
【0110】
その後、ステップS303に戻り、以後ステップS303〜ステップS312を繰り返す。
【0111】
なお、ステップS301、ステップS302の目標位置及び限界偏位量Yの設定は、フローの途中でも随時変更可能であり、これらを変更した場合は、ステップS301に戻り、再度フローがスタートする。
【符号の説明】
【0112】
A 船体
1 船体用制御装置
1a 制御部
1b 記憶部
1c 入力部
2 GPS航法装置
3 クラッチ制御装置
4 クラッチ
5 スラスタ制御装置
6 スラスタ
30 クラッチ制御装置
31 アクチュエータユニット
32 ポータブル発信器
33 ツマミ
M モータ
C 電磁クラッチ
L レバー
34 コントロールヘッド
35 シフトレバー
36 スロットルレバー
40 クラッチ
41 エンジン
42 スロットル
43 シフト
101 船体用制御装置
101a 制御部
101b 記憶部
101c 入力部
101d 入力部
101e 検出部
101f 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進器と、クラッチと、該クラッチを制御するクラッチ制御装置と、設定した方位に船首方位を保持するためのスラスタと、
船体の船首方位を検出する方位検出手段と、設定方位を入力する設定方位入力手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致するか否かを判定する方位一致判定手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致しない場合に前記スラスタを作動するスラスタ作動手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致する場合に前記スラスタを停止するスラスタ停止手段とを有するスラスタ制御装置と、
前記船体の位置(初期位置及び現在位置)を検出する位置検出手段と、目標位置を入力する目標位置入力手段と、前記船体の初期位置から設定した目標位置までの設定漂流経路を算出する設定漂流経路算出手段と、前記現在位置と前記設定漂流経路との偏位量(ズレ)を算出する偏位量算出手段とを有するGPS航法装置と、を備えた船体を設定漂流経路上に保持するための船体用制御装置であって、
前記偏位量を前記GPS航法装置より受信する偏位量受信手段と、
前記偏位量の閾値を限界偏位量として設定する限界偏位量設定手段と、
前記偏位量が前記限界偏位量を超えた場合に、前記クラッチを嵌める指令を前記クラッチ制御装置に出力するクラッチ嵌指令出力手段と、
前記クラッチ嵌指令により前記クラッチが嵌まることにより前記船体が推進し、前記船体が前記設定漂流経路上に帰着した場合に、前記クラッチを脱する指令を前記クラッチ制御装置に出力するクラッチ脱指令出力手段と、を備えたことを特徴とする船体用制御装置。
【請求項2】
推進器と、クラッチと、該クラッチを制御するクラッチ制御装置と、設定した方位に船首方位を保持するためのスラスタと、
船体の船首方位を検出する方位検出手段と、設定方位を入力する設定方位入力手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致するか否かを判定する方位一致判定手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致しない場合に前記スラスタを作動するスラスタ作動手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致する場合に前記スラスタを停止するスラスタ停止手段とを有するスラスタ制御装置と、
前記船体の位置(初期位置及び現在位置)を検出する位置検出手段と、目標位置を入力する目標位置入力手段とを有するGPS航法装置と、を備えた船体を設定漂流経路上に保持するための船体用制御装置であって、
前記初期位置と前記目標位置とを前記GPS航法装置より受信して、前記船体の初期位置から前記目標位置までの設定漂流経路を算出する設定漂流経路算出手段と、
前記現在位置を前記GPS航法装置より受信して、前記現在位置と前記設定漂流経路との偏位量(ズレ)を算出する偏位量算出手段と、
前記偏位量の閾値を限界偏位量として設定する限界偏位量設定手段と、
前記偏位量が前記限界偏位量を超えた場合に、前記クラッチを嵌める指令を前記クラッチ制御装置に出力するクラッチ嵌指令出力手段と、
前記クラッチ嵌指令により前記クラッチが嵌まることにより前記船体が推進し、前記船体が前記設定漂流経路上に帰着した場合に、前記クラッチを脱する指令を前記クラッチ制御装置に出力するクラッチ脱指令出力手段と、を備えたことを特徴とする船体用制御装置。
【請求項3】
前記目標位置に代えて、目標方位を入力することにより、
前記設定漂流経路として、前記初期位置から前記目標方位へ向けての漂流経路を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の船体用制御装置。
【請求項4】
前記クラッチ脱指令出力手段が、
前記船体が前記設定漂流経路上に帰着した場合に代えて、
前記船体が前記設定漂流経路を横切って、再度前記偏位量が前記限界偏位量を超えた場合に、前記クラッチを脱する指令を出力する手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の船体用制御装置。
【請求項5】
前記初期位置と前記目標位置とが一致する場合には、
前記偏位量として、前記現在位置と前記設定漂流経路との偏位量に代えて、前記現在位置と前記目標位置との二点間偏位量を用い、
前記方位一致判定が、前記船首方位と前記設定方位との一致・不一致の判定に代えて、前記現在位置から前記目標位置までの二点間方位を前記GPS航法装置より受信して、前記現在船首方位と前記二点間方位との一致・不一致の判定とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の船体用制御装置。
【請求項6】
前記クラッチ制御装置が、
手動操作用スロットルレバーとシフトレバーを備えたプッシュプルケーブル式のコントロールヘッドを介して前記エンジンの前記クラッチを中立状態・前進状態・後進状態に遠隔操作できる制御装置であって、前記シフトレバーの位置を切り換える駆動力を発生させるモータと、このモータの駆動力をプッシュプルケーブルを介して前記シフトレバーに伝達あるいは伝達を解除する電磁クラッチとを備えたアクチュエータユニットを設け、このアクチュエータユニットに電気式リモートコントローラとしてのポータブル発信器を接続し、前記コントロールヘッドのシフトレバーをプッシュプルケーブルを介して位置制御可能に構成し、前記ポータブル発信器には、ダイヤル式のツマミを中立位置から時計方向と反時計方向とへ回転可能に設け、前記ツマミを前記中立位置から一方へ最大回転角の範囲内で最大回転位置へ回転させると前進し、前記ツマミを前記中立位置から他方へ最大回転角の範囲内で最大回転位置へ回転させると後進するとともに、前記ツマミを中立位置から両方向にそれぞれ前記最大回転角より狭い範囲内で回転させると、それぞれ前進潮立てと後進潮立てとを行い、前進潮立ておよび後進潮立てとも前記ツマミの回転角で前進時間あるいは後進時間および中立時間の長短で複数段階に分かれており、前進時間あるいは後進時間および中立時間についてはあらかじめ各段階ごとに設定され、前進潮立て・後進潮立てともに前記エンジンの回転数はアイドリングに近い微速で航行される一方、中立時間の間はスクリューの回転が停止するようにしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の船体用制御装置。
【請求項7】
推進器と、クラッチと、該クラッチを制御するクラッチ制御装置と、設定した方位に船首方位を保持するためのスラスタと、
船体の船首方位を検出する方位検出手段と、設定方位を入力する設定方位入力手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致するか否かを判定する方位一致判定手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致しない場合に前記スラスタを作動するスラスタ作動手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致する場合に前記スラスタを停止するスラスタ停止手段とを有するスラスタ制御装置と、
前記船体の位置(初期位置及び現在位置)を検出する位置検出手段と、目標位置を入力する目標位置入力手段と、前記船体の初期位置から設定した目標位置までの設定漂流経路を算出する設定漂流経路算出手段と、前記現在位置と前記設定漂流経路との偏位量(ズレ)を算出する偏位量算出手段とを有するGPS航法装置と、を備えた船体を設定漂流経路上に保持するための船体用制御装置であって、
前記偏位量を前記GPS航法装置より受信して、
前記偏位量の閾値を限界偏位量として設定し、
前記偏位量が前記限界偏位量を超えた場合に、前記クラッチを嵌める指令を前記クラッチ制御装置に出力し、
前記クラッチが嵌まることにより前記船体が推進し、前記船体が前記設定漂流経路上に帰着した場合に、前記クラッチを脱する指令を前記クラッチ制御装置に出力することを特徴とする船体用制御プログラム。
【請求項8】
推進器と、クラッチと、該クラッチを制御するクラッチ制御装置と、設定した方位に船首方位を保持するためのスラスタと、
船体の船首方位を検出する方位検出手段と、設定方位を入力する設定方位入力手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致するか否かを判定する方位一致判定手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致しない場合に前記スラスタを作動するスラスタ作動手段と、前記船首方位と前記設定方位とが一致する場合に前記スラスタを停止するスラスタ停止手段とを有するスラスタ制御装置と、
前記船体の位置(初期位置及び現在位置)を検出する位置検出手段と、目標位置を入力する目標位置入力手段とを有するGPS航法装置と、を備えた船体を設定漂流経路上に保持するための船体用制御装置であって、
前記初期位置と入力した前記目標位置とを前記GPS航法装置より受信して、前記船体の初期位置から前記目標位置までの設定漂流経路を算出し、
前記現在位置を前記GPS航法装置より随時受信して、前記現在位置と前記設定漂流経路との偏位量(ズレ)を算出し、
前記偏位量の閾値を限界偏位量として設定し、
前記偏位量が前記限界偏位量を超えた場合に、前記クラッチを嵌める指令を前記クラッチ制御装置に出力し、
前記クラッチが嵌まることにより前記船体が推進し、前記船体が前記設定漂流経路上に帰着した場合に、前記クラッチを脱する指令を前記クラッチ制御装置に出力することを特徴とする船体用制御プログラム。
【請求項9】
前記目標位置に代えて、目標方位を入力することにより、
前記設定漂流経路として、前記初期位置から前記目標方位へ向けての漂流経路を用いることを特徴とする請求項7又は8に記載の船体用制御プログラム。
【請求項10】
前記クラッチを脱する指令が、
前記船体が前記設定漂流経路上に帰着した場合に代えて、
前記船体が前記設定漂流経路を横切って、再度前記偏位量が前記限界偏位量を超えた場合に、前記船体の推進機を停止させる指令を出力することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の船体用制御プログラム。
【請求項11】
前記初期位置と前記目標位置とが一致する場合には、
前記偏位量を、前記現在位置と前記設定漂流経路との偏位量に代えて、前記現在位置と前記目標位置との二点間偏位量とすることに切り替え、
前記方位一致判定を、前記船首方位と前記設定方位との一致・不一致の判定に代えて、前記現在位置から前記目標位置までの二点間方位を前記GPS航法装置より受信して、前記現在船首方位と前記二点間方位との一致・不一致の判定とすることに切り替えることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の船体用制御プログラム。
【請求項12】
前記船体の船首方位及び船体位置を検出する検出手段と、目的地点を設定する設定手段と、前記船体の当初船体位置から前記目的地点までの設定航路を算出する航路算出手段と、前記設定航路と前記船体の現在船首方位と現在船体位置とから前記船体に設定航路上を航行させるため舵の動作を制御する制御手段とを備えた自動操舵装置であって、
請求項7〜11いずれか1項に記載の船体用制御プログラムが組み込まれたことを特徴とする自動操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−17058(P2012−17058A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156712(P2010−156712)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(392000497)マロール株式会社 (9)
【Fターム(参考)】