説明

船外機の動力伝達装置

【課題】ベベルギアの製造コストを低減できると共に動力伝達効率を向上でき、更にベベルギアの全体としての耐久性を、加工工数を増加させることなく向上できること。
【解決手段】ベベルギア機構28を備えた船外機の動力伝達装置30において、ベベルギア機構28は、ドライブシャフト21に装着された駆動ベベルギア22と、プロペラシャフト23に配置された前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25とを有し、前進用従動ベベルギア24と後進用従動ベベルギア25は、駆動ベベルギア22に常時噛み合うと共に、ドッグクラッチ27を介してプロペラシャフト23に選択的に断続可能に構成され、駆動ベベルギア22、前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25が直歯型のベベルギアにて構成され、駆動ベベルギア22のみが、歯の側面を歯筋方向の中間部で歯幅方向外方に膨らませるクラウニング部を有して構成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの駆動力をドライブシャフトからプロペラシャフトへ伝達する、ベベルギア機構を備えた船外機の動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船外機において、エンジンの駆動力は、エンジンのクランクシャフトに連結されて下方に延びるドライブシャフトから、後端にプロペラが取り付けられて水平に延びるプロペラシャフトへ伝達する必要があるため、ドライブシャフトとプロペラシャフトとの間にベベルギア機構が介在されている。
【0003】
このベベルギア機構は、プロペラと共に水中に没するギアケース内に収容される。このギアケースは、航走中に水の抵抗が発生して動力損失になるため、水の抵抗を少なくするように、前方投影面積を小さくして小型に構成することが要請されている。
【0004】
従って、従来の船外機におけるベベルギア機構では、特許文献1に記載のように、歯形状がスパイラル(曲がり歯)形状のグリーソン歯型のベベルギアが採用されて、ギアを小径化してギアケースの小型化の要請に対処している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−25603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、スパイラルのグリーソン歯型を歯形状として採用したベベルギアは、ストレート歯形を歯形状とするベベルギアと比較して、互いに噛み合う歯間に生ずる摩擦による動力損失のために動力伝達効率が低くなり、動力性能の低下や燃費の悪化などの不具合が発生する恐れがある。この不具合は、特に小出力の船外機において大きな課題となっている。
【0007】
また、スパイラルのグリーソン歯型を歯形状として採用したベベルギアは、製作に専用設備が必要になるため、製造コストが上昇してしまう。
【0008】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、ベベルギアの製造コストを低減できると共に、動力伝達効率を向上でき、更に、駆動ベベルギア及び従動ベベルギアの全体としての耐久性を、加工工数を増加させることなく向上させることができる船外機の動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エンジンにより駆動されるドライブシャフトと、このドライブシャフトによりベベルギア機構を介して駆動されるプロペラシャフトとを備えた船外機の動力伝達装置において、前記ベベルギア機構は、前記ドライブシャフトに装着された駆動ベベルギアと、前記プロペラシャフトに互いに対向して配置され前記駆動ベベルギアに噛み合う前進用従動ベベルギア及び後進用従動ベベルギアとを有し、前記前進用従動ベベルギアと前記後進用従動ベベルギアは、前記駆動ベベルギアに常時噛み合うと共に、クラッチ機構を介して前記プロペラシャフトに選択的に断続可能に構成され、前記駆動ベベルギア、前記前進用従動ベベルギア及び前記後進用従動ベベルギアが直歯型のベベルギアにて構成され、前記駆動ベベルギアのみが、歯の側面を歯筋方向の中間部で歯幅方向外方に膨らませるクラウニング部を有して構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動ベベルギア及び従動ベベルギアが直歯型のベベルギアにて構成されたので、スパイラルのグリーソン歯型の場合に比べ、ベベルギアの製造コストを低減できると共に、摩擦による動力損失が減少するので動力伝達効率を向上させることができる。
【0011】
更に、前進用従動ベベルギア及び後進用従動ベベルギアの両者に噛み合う駆動ベベルギアにクラウニング部が設けられたので、駆動ベベルギアと従動ベベルギアのそれぞれの歯の接触面積を増大させることができ、従って、これらの歯の接触面圧を減少させることができる。この結果、駆動ベベルギア及び従動ベベルギアの全体としての耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、前進用従動ベベルギア及び後進用従動ベベルギアの両者に噛み合う駆動ベベルギアにクラウニング部が設けられたので、前進用従動ベベルギアと後進用従動ベベルギアのそれぞれにクラウニング部を設ける必要がない。このため、ベベルギアの加工工数の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る船外機の動力伝達装置における一実施形態が適用されたエンジン駆動の船外機を示す左側面図。
【図2】図1のギアケース内を破断して動力伝達装置のベベルギア機構を示す断面図。
【図3】図2の駆動ベベルギアを示す断面図。
【図4】図2の従動ベベルギアを示す断面図。
【図5】図3における駆動ベベルギアの基準ピッチ円錐の母線に沿って切断した歯の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。但し、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明に係る船外機の動力伝達装置における一実施形態が適用された船外機を示す左側面図である。この図1に示す船外機10はエンジンホルダ12を備え、このエンジンホルダ12にエンジン11が搭載される。エンジンホルダ12の下部にオイルパンブロック13、ドライブシャフトハウジング14及びギアケース15が順次組み付けられている。図中符号16は、エンジン11、エンジンホルダ12及びオイルパンブロック13を覆うエンジンカバーである。
【0016】
船外機10は、図示しないパイロットシャフトがスイベルブラケット17に枢支されることで水平方向に回動自在に支持され、このスイベルブラケット17がスイベルシャフト18を介してクランプブラケット19に対し鉛直方向に回動自在に支持され、クランプブラケット19が船体の船尾部20に固定される。これにより、船外機10は、船体に対し、水平方向及び鉛直方向に旋回可能に取り付けられる。
【0017】
この船外機10は、エンジン11により駆動されるドライブシャフト21と、このドライブシャフト21によりベベルギア機構28(後述の駆動ベベルギア22、前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25)を介して駆動されるプロペラシャフト23と、を備えた動力伝達装置30を有する。
【0018】
つまり、エンジン11は、そのクランクシャフト29を鉛直方向に向けて縦置きに設置される。このエンジン11におけるクランクシャフト29の回転力は、エンジンホルダ12、オイルパンブロック13、ドライブシャフトハウジング14及びギアケース15内を鉛直方向に延在するドライブシャフト21に伝達される。このドライブシャフト21の下端部には、図2に示すように駆動ベベルギア22が固定して装着される。この駆動ベベルギア22は、ギアケース15内で水平方向に配置されたプロペラシャフト23に互いに対向して回転自在に遊嵌された前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25に常時噛み合う。
【0019】
また、プロペラシャフト23には、一端部にプロペラ26が固定されると共に、ドッグクラッチ27が回転一体、且つ軸方向にスライド可能に嵌合される。即ち、ドッグクラッチ27は、プロペラシャフト23の軸方向に移動可能に、このプロペラシャフト23にスプライン結合されると共に、ドッグピン34を介してプロペラシャフト23と回転一体に設けられ、且つ軸方向両端にドッグ27Aを備える。
【0020】
ドッグクラッチ27はクラッチ機構として機能し、前進用従動ベベルギア24と後進用従動ベベルギア25をプロペラシャフト23に選択的に断続させる。つまり、ドッグクラッチ27のドッグ27Aが、前進用従動ベベルギア24のドッグ24Aまたは後進用従動ベベルギア25のドッグ25Aに択一に噛み合うことで、ドライブシャフト21及び駆動ベベルギア22を経て前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25に伝達されたエンジン11の回転力は、ドッグクラッチ27を介してプロペラシャフト23へ伝達され、プロペラ26が正転または逆転する。これにより、船体は前進(フォワード)側または後進(リバース)側の推進力を得る。
【0021】
船外機10は、このように、ドッグクラッチ27をフォワード位置(ドッグクラッチ27のドッグ27Aを前進用従動ベベルギア24のドッグ24Aに噛み合わせる位置)に切り換えてプロペラシャフト23(プロペラ26)を正転状態とし、またはドッグクラッチ27をリバース位置(ドッグクラッチ27のドッグ27Aを後進用従動ベベルギア25のドッグ25Aに噛み合わせる位置)に切り換えてプロペラシャフト23を逆転状態とし、またはドッグクラッチ27をニュートラル位置(ドッグクラッチ27のドッグ27Aを前進用従動ベベルギア24のドッグ24A及び後進用従動ベベルギア25のドッグ25Aに噛み合わせない位置)に切り換えてプロペラシャフト23をニュートラル状態とするシフト機構を有し、このシフト機構がドッグクラッチ作動部31を備える。
【0022】
ドッグクラッチ作動部31は、ドッグクラッチ27を作動(直線移動)させるものであり、シフトロッド33、シフトカム36、プッシュロッド37及びクラッチスプリング38を有して構成される。
【0023】
シフトロッド33は、ギアケース15内に上下方向に移動可能に設けられる。このシフトロッド33は、図1に示すように、ドライブシャフトハウジング14とギアケース15との結合部付近でクラッチロッド32に直接連結される。このクラッチロッド32は、スイベルブラケット17に枢支されたパイロットシャフト(不図示)内に挿通されると共に、船体に設置されたシフト操作レバー(不図示)により昇降操作される。
【0024】
シフトカム36は、図2に示すようにシフトロッド33の下端部に結合され、カム面35(後述)を備える。また、プッシュロッド37は、プロペラシャフト23内で、このプロペラシャフト23の軸方向に移動可能に設けられ、シフトカム36のカム面35とドッグクラッチ27のドッグピン34との間に配設される。また、クラッチスプリング38は、プロペラシャフト23内に配設され、ドッグピン34を介してプッシュロッド37へ付勢力を付与し、このプッシュロッド37をシフトカム36のカム面35に当接させる。
【0025】
前記シフトカム36のカム面35には、上方から下方へ向かってフォワード位置35F、ニュートラル位置35N、リバース位置35Rが順次連続して形成され、シフトカム36はディテント機構39によってこれらの各位置に位置決めされる。このカム面35のフォワード位置35F、ニュートラル位置35N、リバース位置35Rは、それぞれドッグクラッチ27をフォワード位置、ニュートラル位置、リバース位置の各シフト位置に位置付けるものである。
【0026】
シフト操作レバー(不図示)が操作されて、クラッチロッド32を介しシフトロッド33が上下方向に移動することで、シフトカム36のカム面35に倣ってプッシュロッド37が軸方向に移動する。このプッシュロッド37がシフトカム36のカム面35のフォワード位置35Fに当接したときに、クラッチスプリング38の作用でドッグクラッチ27のドッグ27Aが前進用従動ベベルギア24のドッグ24Aに噛み合って、ドッグクラッチ27がフォワード位置に切り換えられる。これにより、ドライブシャフト21の駆動力が駆動ベベルギア22、前進用従動ベベルギア24及びドッグクラッチ27を経てプロペラシャフト23へ伝達され、プロペラ26が正転して船体が前進する。
【0027】
また、プッシュロッド37がシフトカム36のカム面35のリバース位置35Rに当接したときには、このプッシュロッド37の作用でドッグクラッチ27のドッグ27Aが後進用従動ベベルギア25のドッグ25Aに噛み合って、ドッグクラッチ27がリバース位置に切り換えられ。これにより、ドライブシャフト21の駆動力が駆動ベベルギア22、後進用従動ベベルギア25及びドッグクラッチ27を経てプロペラシャフト23へ伝達され、プロペラ26が逆転して船体が後進する。
【0028】
更に、プッシュロッド37がシフトカム36のカム面35のニュートラル位置35Nに当接したときには、プッシュロッド37またはクラッチスプリング38の作用で、ドッグクラッチ27のドッグ27Aが前進用従動ベベルギア24のドッグ24A及び後進用従動ベベルギア25のドッグ25Aのいずれにも噛み合わなくなり、ドッグクラッチ27がニュートラル位置に切り換えられる。これにより、ドライブシャフト21の駆動力はプロペラシャフト23及びプロペラ26へ伝達されず、プロペラ26は船体の推進を停止する。
【0029】
ところで、駆動ベベルギア22は、図3に示すように、ドライブシャフト21が挿入される軸孔41を有する軸部42に傘部43が一体に設けられ、この傘部43に複数の歯44が、周方向に所定間隔で形成されている。これらの複数の歯44は、歯形がストレート形状の直歯型に構成され、基準ピッチ円錐45の母線Nが、駆動ベベルギア22の軸線Xに対して角度αだけ傾斜して設けられている。この駆動ベベルギア22に噛み合う前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25も、後述のクラウニング部46を除き、図4に示すように駆動ベベルギア22と略同様に構成されている。
【0030】
これらの駆動ベベルギア22、前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25は、歯44がストレート形状の直歯型に構成されたことで精密鍛造工程にて製造されるが、歯切り加工工程で製造されてもよい。
【0031】
更に、駆動ベベルギア22は、図5に示すように、歯44の側面(一側面47Aと他側面47B)に、この歯44の側面を歯筋方向の中間部で歯幅方向外方へ膨らませるクラウニング部46を有し、このクラウニング部46は、歯44の一側面47Aと他側面47Bとで異なる諸元(クラウニング部46無しも含む)に形成されている。本実施形態では、例えば駆動ベベルギア22の歯44の一側面47Aのみにクラウニング部46が形成され、他側面47Bにはクラウニング部46が形成されていない。駆動ベベルギア22の歯44の一側面47Aにのみクラウニング部46を設けるのは、この一側面47Aのみが前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25の歯44に当接するからである。
【0032】
図5における符号48は、歯44の基本歯形状である。駆動ベベルギア22の歯44における他側面47Bと、前進用従動ベベルギア24の歯44における一側面47A及び他側面47Bと、後進用従動ベベルギア25の歯44の一側面47A及び他側面47Bは、上記基本歯形状48で形成されている。
【0033】
また、駆動ベベルギア22の歯44における一側面47Aに形成されるクラウニング部46は、半径Rの単一の円弧で形成され、その円弧中心(クラウニング中心O)が駆動ベベルギア22の小径端44B側に片寄って設定されている。即ち、クラウニング中心Oを含み歯幅方向に平行な直線Mが、歯44の大径端44A、小径端44Bからの距離をそれぞれa、bとしたとき、a>bに設定される。尚、直線Mと、駆動ベベルギア22のギア中心P(即ち前記基準ピッチ円錐の頂点)との距離L(図3、図5)は、駆動ベベルギア22のギア中心Pを基準とした「クラウニング中心位置」として設定される。
【0034】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)〜(6)を奏する。
【0035】
(1)駆動ベベルギア22、前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25が直歯型のベベルギアにて構成されたので、スパイラルのグリーソン歯型の場合に比べ、ベベルギアの製造コストを低減できると共に、駆動ベベルギア22の歯44と従動ベベルギア24及び25の歯44との間に生ずる摩擦による動力損失が減少するので動力伝達効率を向上させることができる。
【0036】
(2)本実施形態の駆動ベベルギア22では、歯44の一側面47Aにクラウニング部46が設けられているため、以下の効果を有する。
【0037】
つまり、駆動ベベルギア22から前進用従動ベベルギア24、後進用従動ベベルギア25に駆動力を伝達する際、これらの前進用従動ベベルギア24、後進用従動ベベルギア25から駆動ベベルギア22に作用する駆動反力(駆動力の反力)は、駆動ベベルギア22の軸線Xに沿うスラスト方向分力の他、ラジアル方向分力となって駆動ベベルギア22に作用する。直歯型のベベルギアでは、グリーソン歯型のベベルギアに比べ上述のラジアル方向分力が大きいので、このラジアル方向分力によって駆動ベベルギア22は、前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25からラジアル方向に離間して位置ずれする。
【0038】
このとき、駆動ベベルギア22の歯44と前進用従動ベベルギア24、後進用従動ベベルギア25の歯44においては、小径端44B側の接触面積が少なくなって、歯44の全体の接触面積が減少し、このため特に大径端44A側の接触面圧が増大して、駆動ベベルギア22、前進用従動ベベルギア24、後進用従動ベベルギア25の耐久性が低下してしまう。
【0039】
そこで、本実施形態では、前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25の両者の歯44に噛み合う駆動ベベルギア22の歯44における一側面47Aにクラウニング部46を形成することによって、駆動ベベルギア22の歯44と前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25の歯44との接触面積を増大させることができる。従って、これらの駆動ベベルギア22の歯44と前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25の歯44との接触面圧を減少させることができる。この結果、駆動ベベルギア22と前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25の耐久性を、全体として向上させることができる。
【0040】
これにより、駆動ベベルギア22の位置ずれを防止するために駆動ベベルギア22、前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25を収容するギアケース15の剛性を高める必要がなく、従ってこのギアケース15を大型化する必要がない。
【0041】
(3)前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25の両者に噛み合う駆動ベベルギア22にクラウニング部46が設けられたので、前進用従動ベベルギア24と後進用従動ベベルギア25のそれぞれにクラウニング部46を設ける必要がない。このため、ベベルギア22、24、25の加工工数の増加を抑制できる。
【0042】
(4)駆動ベベルギア22の歯44における一側面47Aに形成されるクラウニング部46は、クラウニング中心Oを歯44の小径端44B側に片寄らせて設定されている。これにより、駆動ベベルギア22の歯44における一側面47Aの大径端44A側を大きくクラウニングして、この一側面47Aにおける大径端44A側の接触面積を増大させることができる。この結果、この駆動ベベルギア22の歯44の一側面47Aにおける大径端44A側の接触面圧を減少させることができ、駆動ベベルギア22の耐久性を向上させることができる。
【0043】
(5)本実施形態では、精密鍛造成形される駆動ベベルギア22における歯44の側面(一側面47A)にクラウニング部46が形成されている。駆動ベベルギア22を精密鍛造する場合には、歯型を容易に調整できるので、この駆動ベベルギア22の歯44の側面にクラウニング部46を形成し易く、このクラウニング部46を含めた歯型の成形精度を向上させることができる。
【0044】
(6)駆動ベベルギア22は、歯44の一側面47Aのみが前進用従動ベベルギア24及び後進用従動ベベルギア25の歯44に接触するので、この一側面47Aにのみクラウニング部46が形成されている。このクラウニング部46は、歯44の歯厚を薄くすることになるので、駆動ベベルギア22において歯44の一側面47Aのみにクラウニング部46を設け、他側面47Bを基本歯形状48とすることで、この歯44の歯厚を良好に確保でき、駆動ベベルギア22の強度低下を防止できる。
【0045】
更に、駆動ベベルギア22の歯44における一側面47Aのみにクラウニング部46を設けることで、駆動ベベルギア22における歯44の加工工数を半減でき、駆動ベベルギア22の製造コストを低減できる。
【符号の説明】
【0046】
10 船外機
11 エンジン
21 ドライブシャフト
22 駆動ベベルギア
23 プロペラシャフト
24 前進用従動ベベルギア
25 後進用従動ベベルギア
27 ドッグクラッチ(クラッチ機構)
28 ベベルギア機構
30 動力伝達装置
44A 大径端
44B 小径端
46 クラウニング部
47A 一側面
47B 他側面
O クラウニング中心
R 半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動されるドライブシャフトと、このドライブシャフトによりベベルギア機構を介して駆動されるプロペラシャフトとを備えた船外機の動力伝達装置において、
前記ベベルギア機構は、前記ドライブシャフトに装着された駆動ベベルギアと、前記プロペラシャフトに互いに対向して配置され前記駆動ベベルギアに噛み合う前進用従動ベベルギア及び後進用従動ベベルギアとを有し、
前記前進用従動ベベルギアと前記後進用従動ベベルギアは、前記駆動ベベルギアに常時噛み合うと共に、クラッチ機構を介して前記プロペラシャフトに選択的に断続可能に構成され、
前記駆動ベベルギア、前記前進用従動ベベルギア及び前記後進用従動ベベルギアが直歯型のベベルギアにて構成され、
前記駆動ベベルギアのみが、歯の側面を歯筋方向の中間部で歯幅方向外方に膨らませるクラウニング部を有して構成されたことを特徴とする船外機の動力伝達装置。
【請求項2】
前記駆動ベベルギアは、歯の一側面と他側面に、異なる諸元のクラウニング部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の船外機の動力伝達装置。
【請求項3】
前記クラウニング部は単一の円弧で形成され、円弧中心をベベルギアの小径端側に片寄らせて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の船外機の動力伝達装置。
【請求項4】
前記駆動ベベルギアは、歯の一側面のみにクラウニング部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の船外機の動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−171603(P2012−171603A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38906(P2011−38906)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】