説明

船舶の主機制御システムおよび方法

【課題】海象に合わせたガバナ制御を行って主機の燃費を改善する。
【解決手段】様々な波高、波周期、対水船速、船舶の重量等の組合せに対して船体運動を考慮したプロペラ流入速度をシミュレーションにより算出する。算出されたプロペラ流入速度の変動から主機回転数の変動を算出してその標準偏差σを求める。これらの結果を基準偏差データベース16とする。基準偏差データベース16を参照して航行中の波高、波周期、対水船速、船舶の重量から標準偏差を求め許容回転数偏差ΔNtを算出する。制御部14において主機11のPID制御を行い、ゲインの異なる複数の制御モードを設ける。比較部15における回転数偏差と許容回転数偏差ΔNtの比較に基づいて制御部14の制御モードを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の主機制御システムおよび方法に関し、特に複数のモード間でガバナ制御を切り替える主機制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶における主機の調速制御では、一般にPID制御などを用いて実回転数が目標回転数に維持されるような制御が行われる。また、このような回転数を一定に維持する制御において、操船性を維持しつつ燃費の向上を図る目的で、実回転数または設定回転数の値が所定範囲を超えたときに、PID制御部のゲインを変更する制御方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−191774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成は、海象や船速を考慮した制御ではないので、燃費改善の効果は十分ではない。
【0005】
本発明は、海象に合わせたガバナ制御を行い、主機の燃料消費を更に抑えることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主機制御システムは、主機の制御を複数の制御モードの下で行う制御手段と、主機の制御における制御量を検出する制御量検出手段と、船速および航行海域の波浪情報を用いて推定される制御量の変動量と、検出された制御量とに基づいて制御モードの選択を行うモード選択手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
主機制御システムは、例えば推定された変動量から制御量の許容偏差を算出する許容偏差算出手段を備える。更に、主機制御システムは、例えば許容偏差と制御量の制御偏差との比較を行う比較手段を備え、制御モードの選択は、例えば比較手段における比較に基づいて行われる。これにより、極めて簡略な構成で、海象に応じた制御モードの選択が可能になる。
【0008】
制御量は例えば主機の回転数であり、許容偏差算出手段は、例えば主機の最大定格回転数からのマージンを考慮した許容偏差を算出する。また、マージンを変更するためのマージン変更手段を備えてもよい。これにより、主機の過回転の発生をより確実に防止することができる。
【0009】
許容偏差は、例えば変動量の標準偏差に基づき算出される値である。許容偏差は、例えば標準偏差の定数倍とされ、定数を変更するための定数変更手段を備えてもよい。また許容偏差が標準偏差の定数倍のとき、定数は、例えば2〜3.5である。
【0010】
許容偏差算出手段は、例えば船速、波浪情報に基づくデータベースを参照して変動量を算出する。また、変動量は例えば船舶の重量を考慮した値であり、データベースは船舶の重量に関わる項目を含む。これにより、簡単な構成で迅速・正確に海象に合せた制御モードの切り替えを行うことができる。
【0011】
制御モードには、例えば波浪により変動する制御量の目標値へ復帰を積極的に行う積極制御モードと、例えば波浪による制御量の変動を許容する程度の消極的な制御を行う消極制御モードとが含まれ、モード選択手段は、制御量の値が許容偏差を超えているときに積極制御モードを選択する。
【0012】
モード選択手段は、例えば消極制御モードから積極制御モードへの変更後、所定時間、消極制御モードへの変更を禁止する。このとき所定時間は主機の応答時間よりも長い。これにより、主機が応答する前に消極制御モードに戻ってしまうことを防止できる。また上記船速は例えば対水船速であり、対水船速は例えば対地船速と測地情報と海流データとから算出される。更に、主機制御システムは、例えば波浪情報を入力するための入力手段を備える。
【0013】
本発明の船舶は、上記主機制御システムを備えたことを特徴としている。
【0014】
また本発明の船舶の主機制御方法は、複数の制御モードの下で主機の運転を制御し、制御量を検出し、船速および航行海域の波浪情報を用いて推定される制御量の変動量と、検出された制御量とに基づいて、制御モードの選択を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、海象に合わせたガバナ制御を行うことができ、主機の燃料消費を更に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態の船用主機制御システムの構成を示す制御ブロック図である。
【図2】図1の制御部の詳細を示すブロック図である。
【図3】比較部で行われる制御モード切替判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態である船舶の主機制御システムの構成を示す制御ブロック図である。
【0018】
主機制御システム10において、主機11の出力軸(不図示)は推進用のプロペラ(不図示)に直結、または変速機を介して間接的に連結される。主機11は、例えば機関の実回転数(制御量)が目標回転数(目標値)になるようにフィードバック制御される。目標回転数は、例えば操船者Cにより制御卓12を通して設定される。設定された目標回転数は、回転数指令Noとして回転数偏差算出部13に入力される。出力軸の回転は図示しないセンサを用いて検出され、実回転数Neとして回転数偏差算出部13に入力される。
【0019】
回転数偏差算出部13では、検出された実回転数Neと回転数指令Noとの間の回転数偏差(Ne−No)が算出される。算出された回転数偏差(Ne−No)は、制御部14および比較部15に出力される。制御部14では、入力された回転数偏差(Ne−No)に基づき操作量であるガバナ指令が算出され、主機11の操作端(燃料制御バルブや蒸気弁(図示せず))が制御され、燃料供給量が調整される。
【0020】
また、本実施形態では、比較部15はタイマ15Cを備え、比較部15では制御偏差である回転数偏差(Ne−No)およびタイマ15Cの値が所定条件(後述)を満たしているか否かが判定される。比較部15は、この判定に基づき制御部14へモード選択信号を出力し、制御部14ではモード選択信号に基づいて制御モード(後述)の選択・切替えが行われる。
【0021】
本実施形態では、所定条件の1つとして、例えば回転数偏差の絶対値|Ne−No|が許容回転数ΔNt内に収まっているか否かが判定される。許容回転数ΔNtは、例えばシミュレーションや実験等により予め作成された基準偏差データベース16を参照して許容回転数算出部17において算出される。本実施形態の基準偏差データベース16には、波浪状況(例えば波高、波周期など)、対水船速、積荷の状態(船の重量)の各値の組合せに対する機関回転数基準偏差(回転数変動の標準偏差)σが記録され、許容回転数算出部17では、基準偏差データベース16を参照して得られた機関回転数基準偏差σから、許容回転数ΔNtが求められる(後述)。
【0022】
ここで、波浪状況と積荷の状態(船の重量)は、操船者Cにより制御卓12を介して入力される。一方、対水船速Vrは、対地船速Vgと海流速度Vmから求められる。対地船速Vgは、例えばGPSなどの測地・対地船速器18を用いて取得され、海流速度Vmは、測地・対地船速器18で得られる地点情報と海流データベース19から取得される。すなわち、対水船速Vrは、対地船速補正部20において対地船速Vgと海流速度Vmの値を用いて算出され、基準偏差データベース16へと入力される。
【0023】
次に図2の制御ブロック図を参照して制御部14の詳細について説明する。本実施形態では、例えば速度形のPIDアルゴリズムが用いられる。
【0024】
本実施形態では、制御モードとして消極制御モードと積極制御モードが用意され、回転数偏差算出部13からの回転数偏差(Ne−No)は、消極制御モードに対応する消極制御演算部22と、積極制御モードに対応する積極制御演算部23にそれぞれ出力される。
【0025】
消極制御演算部22では、回転数偏差に対してそれぞれ1/Ti1、s、TD1・sの演算(sはラプラス演算子)が施され、その後、3つの値が加算されるとともに制御ゲインKp1が掛けられて切替部24に出力される。また、積極制御演算部23では、回転数偏差に対してそれぞれ1/Ti2、s、TD2・sの演算が施され、その後、3つの値が加算されるとともに制御ゲインKp2が掛けられて切替部24に出力される。
【0026】
切替部24は、比較部15(図1参照)からのモード選択信号に従って、選択された制御モードに対応する演算部22、23からの出力のみを選択的に積算部25へと出力する。積算部25では、切替部24で選択された消極制御演算部22からの出力、または積極制御演算部からの出力に対して積分演算1/sが施されガバナ指令(操作量)として主機11の操作端へと出力される。
【0027】
ここで消極制御モードは、波浪による実回転数(制御量)Neの変動を許容する程度の消極的な制御を行うモードであり、実回転数Neの変動が現在の波浪状況における通常の変動範囲内にある場合に選択され、特にレーシングなどによる過回転発生の危険のない状態で選択される。
【0028】
また積極制御モードは、波浪により変動する実回転数(制御量)Neの目標回転数(目標値)Noへの復帰を積極的(早期)に行うモードであり、現状の波浪状況において通常起こりえない大きな実回転数Neの変動が発生した場合に選択される。
【0029】
したがって、消極制御演算部22のKp1は、積極制御演算部23のKp2よりも小さい値に設定される。また、Ti1とTi2、TD1とTD2は制御対象の周波数特性に応じて設定されるもので、通常は略同じ値が設定されるが、外乱と制御対象の周波数特性が類似するときには、Ti1、Ti2の組とTD1、TD2の組にそれぞれ異なる値(組毎に類似する値)が与えられ得る。
【0030】
次に、図1および図3のフローチャートを参照して、比較部15において実行される処理および所定の条件の具体例について説明する。なお、本実施形態のガバナシステムは、手動制御モードと自動制御モードを備え、図3のフローチャートに示される処理は、操船者Cにより自動制御モードが選択されときに開始される。なお、自動制御モードが選択された直後には消極制御モードが選択され、比較部15からは消極制御モードに対応するモード選択信号が制御部14に出力されている。また、手動制御モードでは、例えば常に積極制御モードが選択されている。
【0031】
ステップS100では、タイマ15Cのカウント値CNが0に設定される。その後ステップS102において、回転数偏差の絶対値|Ne−No|が許容回転数ΔNtよりも小さいか否かが判定される。絶対値|Ne−No|が許容回転数ΔNtよりも小さいと判定されると、ステップS104においてタイマ15Cのカウント値CNが、予め設定された所定値CSよりも大きいか否かが判定される。
【0032】
ステップS104においてCN>CSと判定されるとステップS106において制御部14に出力されるモード選択信号が消極制御モードに対応する信号に切り替えられ処理はステップS102へと戻る。一方、ステップS104においてCN>CSでないと判定されると、処理は直ちにステップS102へと戻る。
【0033】
また、ステップS102において|Ne−No|<ΔNtでないと判定されると、ステップS108において現在のモード選択信号が消極制御モードに対応するものであるか否かが判定される。消極制御モードであると、ステップS110においてカウント値CNがリセットされるとともにタイマ15Cが起動され、カウント値CNの所定時間毎の計数が開始される。その後ステップS112において、制御部14に出力されるモード選択信号が積極制御モードに対応する信号へと切り替えられ処理はステップS102へと戻る。
【0034】
また、ステップS108において現在出力されているモード選択信号が消極制御モードではないと判定されると処理は直ちにステップS102に戻る。
【0035】
すなわち、比較部15における上記処理によれば、消極制御モードから積極制御モードへの切替えでは、回転数偏差の絶対値|Ne−No|が許容回転数ΔNtよりも大きいと判定されると、直ちに制御モードの切替えが行われる。一方、積極制御モードから消極制御モードへの切替えでは、積極制御モードが選択されてから所定時間(所定値CSに対応)、制御モードの切替えが禁止され、この間モード選択信号が変更されることはない。制御モード切替えの禁止は、所定時間経過後に解除され、回転数偏差の絶対値|Ne−No|が許容回転数ΔNtよりも小さいと判定されると、積極制御モードから消極制御モードへと切り替えられる。
【0036】
上記所定時間(設定値CS)は、例えば積極制御モードへと制御モードを切り替えた直後に、機関回転数の応答よりも速く制御モードが消極制御モードへ戻ることを防止することや、負荷変動の周期を考慮して決定される。すなわち、主機の操作端の入力に対する機関回転数応答を一次遅れに単純化したときの時定数、および自動運転が実施され得る波浪状況により誘起される負荷変動周期よりも長い時間(例えば8〜12秒程度)が設定される。
【0037】
次に、許容回転数ΔNtについて説明する。許容回転数ΔNtは、本実施形態では機関回転数基準偏差(標準偏差)σの定数倍、例えば2〜3.5倍、より好ましくは2.5〜3倍として許容回転数算出部17において算出される。すなわち、回転数偏差の絶対値|Ne−No|が許容回転数ΔNtよりも大きくなることは、通常の回転数変動の範囲においては殆どあり得ず、このような場合には積極制御が必要になると考えられる。なお、この定数は、操船者Cによって設定・変更可能であることが好ましい。
【0038】
また、目標回転数(回転数指令)Noと許容回転数ΔNtの和(No+ΔNt)が主機11の最大定格回転数Nmよりも大きいと、実回転数Neが最大定格回転数Nmを超えてしまう可能性がある。したがって、本実施形態において許容回転数算出部17は、和(No+ΔNt)の値が最大定格回転数Nmを超えないように、ΔNtの値を(Nm−No)よりも小さい値に自動的に変更する機能を備える。このとき、ΔNtの値と(Nm−No)の値の間に回転数マージンを設けることが好ましく、回転数マージンは例えば操船者Cにより設定・変更可能である。すなわち、許容回転数算出部17は、設定されたマージンと主機10の最大定格回転数から上述された許容回転数ΔNtを補正して出力する。
【0039】
また、機関回転数基準偏差σは以下のように流体解析を用いて予め求められる。すなわち、様々な状況における船舶の対水速度(対水船速)、波高、波周波数(波浪情報)、船舶の重量等の組合せに対して、船体運動を考慮した流体解析を行うことで推進用プロペラへの流入速度の変動を計算し、このプロペラ流入速度の変動に基づいて各組合せに対する機関回転数基準偏差σを求める。
【0040】
より詳しく説明すると、プロペラ形状(例えばピッチ)が既知であれば、プロペラ流入速度から、プロペラ効率最大の条件の下で、最適なプロペラ回転速度が一意的に決定される。したがって、プロペラと直結、または変速機を介して連結された主機出力軸の最適プロペラ回転速度に対する回転数の変動は、その定数倍として計算される。この機関回転数変動のシミュレーションから、対水船速、波浪情報(波高、波周波数)、船舶の重量の各組合せに対する主機の回転数変動の標準偏差σが算出される。
【0041】
なお、船体重量が極めて大きい船舶では、船体運動が小さいため船体運動を考慮したシミュレーションを省略できる。この場合、船舶の重量に関わる項目を基準偏差データベースから省くことができ、船舶重量に関わる情報の操船者Cによる入力も不要となる。この場合、操船者Cは、波浪情報と目標回転数のみを制御卓12を通して入力さればよい。また、大型タンカーなどでは、空荷時と満載時におけるデータのみを用意し、操船者Cは、両者の何れかを選択する構成であってもよい。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、現在の対水船速と波浪情報から主機の制御モードを海象に合わせて適切に選択でき燃料消費を大幅に抑えることができる。特に、本実施形態では、現在の対水船速、波浪情報から推定される主機回転数変動の回転数基準偏差(標準偏差)から回転数変動の許容偏差を求め、これに基づいて制御モードの切替えを行うので極めて簡略な構成で海象に対応したガバナ制御を実現できる。特に波高数メートルの波浪状況下で外洋を航行する場合には、従来の一般的な主機回転数制御を用いた船舶に比べ1%〜2%の燃費改善効果がある。
【0043】
また、本実施形態では、様々な船速、波浪情報に対応する回転数基準偏差(標準偏差)を予めシュミレーションし、これらの関係をデータベースとして保存・利用するため、簡略な構成で迅速に現在の船速、波浪情報に対応した基準偏差を求められる。
【0044】
更に本実施形態では、測地・対地船速器で得られるデータと、海流データベースの情報とから、現在のより正確な対水船速が得られるので、高い精度で制御モードの切替えを行うことができる。また、本実施形態では、船舶の重量も基準偏差データベースにおける回転数基準偏差分類の1項目とするとともに、積荷の状態を入力することで船舶の正確な重量を把握しているので、回転数基準偏差のより正確な推定が可能である。
【0045】
また本実施形態では、主機の最大定格回転数との関係で許容偏差の補正を行うので、主機の過回転が防止される。更に、許容回転数偏差と目標値との和と、最大定格回転数との間にマージンを設け、これを調整可能とすることで、より柔軟かつ安全なガバナ制御が可能である。
【0046】
なお、本実施形態では、自動制御において、消極制御モードと積極制御モードの2つの制御モードが用意されたが、例えばフューエルインデックスを固定するフューエルモードを更に自動制御における制御モードとして加えてもよい。この場合、例えば、上述した許容回転数偏差(第1の許容回転数偏差)よりも小さい第2の許容回転数偏差を消極制御モードとフューエルモードとの間の切替判定に用い、第2の許容回転数偏差よりも回転数偏差が大きいときに消極制御モードに切替え、例えば所定時間の間、回転数偏差が第2の許容回転数偏差を超えない場合に消極制御モードからフューエルモードへの切替えを行うようにしてもよい。なお、自動制御を積極制御モードとフューエルモードのみで構成してもよいし、別の物理量を制御量とする制御モード(例えばトルクセンサ等を用いた出力制御)や、それらとの組合せを自動制御に用いることも可能である。更に、本実施形態では、速度形のPIDを用いたがそれ以外の制御形式であってもよい。
【0047】
また、本発明をフィードバック制御以外に適用することも可能である。また本実施形態では、船速、波浪情報、船舶の重量に対する基準回転数偏差(標準偏差)のデータベースを用いたが、近似式や、データベースと補間式を併用する構成とすることもできる。
【0048】
また回転数(制御量)の許容偏差を標準偏差以外の値から求めることも可能である。すなわち、制御量の変動の分布を表す標準偏差以外の代表値から算出さ、例えば、制御量の変動の各周期における最大値、最小値と制御量の平均値の差を求め、これの平均値から許容偏差を求めることもできる。なお、本実施形態では制御偏差と許容偏差を比較したが、目標値と許容偏差の和と制御量を比較してもよい。
【0049】
また、海流による影響が少ないときには、対水船速の代わりに対地船速を用いることも考えられる。本実施形態では、波浪情報が目視により確認され操船者によって入力されたが、これらの情報をセンサ等を用いて自動的に取得してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 主機制御システム
11 主機
12 制御卓
13 回転数偏差算出部
14 制御部
15 比較部
16 基準データベース
17 許容回転数算出部
18 測地・対地船速器
19 海流データベース
20 対地船速補正部
22 消極制御演算部
23 積極制御演算部
24 切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主機の制御を複数の制御モードの下で行う制御手段と、
前記制御における制御量を検出する制御量検出手段と、
船速および航行海域の波浪情報を用いて推定される前記制御量の変動量と、検出された前記制御量とに基づいて前記制御モードの選択を行うモード選択手段と
を備えることを特徴とする船舶の主機制御システム。
【請求項2】
推定された前記変動量から前記制御量の許容偏差を算出する許容偏差算出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の主機制御システム。
【請求項3】
前記許容偏差と前記制御量の制御偏差との比較を行う比較手段を備え、前記制御モードの選択が前記比較に基づいて行われることを特徴とする請求項2に記載の主機制御システム。
【請求項4】
前記制御量が前記主機の回転数であることを特徴とする請求項2または請求項3の何れか一項に記載の主機制御システム。
【請求項5】
前記許容偏差算出手段は、前記主機の最大定格回転数からのマージンを考慮した許容偏差を算出することを特徴とした請求項4に記載の主機制御システム。
【請求項6】
前記マージンを変更するためのマージン変更手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の主機制御システム。
【請求項7】
前記許容偏差が前記変動量の標準偏差に基づき算出される値であることを特徴とする請求項2〜6の何れか一項に記載の主機制御システム。
【請求項8】
前記許容偏差が前記標準偏差の定数倍とされ、前記定数を変更するための定数変更手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の主機制御システム。
【請求項9】
前記定数が2〜3.5であることを特徴とする請求項8に記載の主機制御システム。
【請求項10】
前記許容偏差算出手段が、前記船速、前記波浪情報に基づくデータベースを参照して前記変動量を算出することを特徴とする請求項2に記載の主機制御システム。
【請求項11】
前記変動量が前記船舶の重量を考慮した値であり、前記データベースが前記船舶の重量に関わる項目も含むことを特徴とする請求項10に記載の主機制御システム。
【請求項12】
前記制御モードには、波浪により変動する前記制御量の前記目標値へ復帰を積極的に行う積極制御モードと、波浪による前記制御量の変動を許容する程度の消極的な制御を行う消極制御モードとが含まれ、前記モード選択手段は、前記制御量の値が前記許容偏差を超えているときに前記積極制御モードを選択することを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の主機制御システム。
【請求項13】
前記モード選択手段が、前記消極制御モードから前記積極制御モードへの変更後、所定時間、前記消極制御モードへの変更を禁止することを特徴とする請求項12に記載の主機制御システム。
【請求項14】
前記所定時間が前記主機の応答時間よりも長いことを特徴とする請求項13に記載の主機制御システム。
【請求項15】
前記船速が対水船速であることを特徴とする請求項1〜14の何れか一項に記載の主機制御システム。
【請求項16】
前記対水船速が、対地船速と測地情報と海流データとから算出されることを特徴とする請求項15に記載の主機制御システム。
【請求項17】
前記波浪情報を入力するための入力手段を備えることを特徴とする請求項1〜16の何れか一項に記載の主機制御システム。
【請求項18】
請求項1〜17の何れか一項に記載の主機制御システムを備えることを特徴とする船舶。
【請求項19】
複数の制御モードの下で主機の運転を制御し、制御量を検出し、船速および航行海域の波浪情報を用いて推定される制御量の変動量と、検出された前記制御量とに基づいて、前記制御モードの選択を行うことを特徴とする船舶の主機制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−214471(P2011−214471A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82367(P2010−82367)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】