説明

良否判定装置、良否判定方法および良否判定プログラム

【課題】信頼性が高い線形判別分析の判定結果を距離判別分析に反映させることにより、距離判別分析の閾値決定に対する収斂性を高め、距離判別分析の持つ簡便な判定性能を向上させるとともに、線形判別分析と距離判別分析とを共用することにより、優れた判定精度を実現できる良否判定装置、良否判定方法および良否判定プログラムを提供する。
【解決手段】検査対象から複数のパラメータを取得するパラメータ取得手段と、サンプルデータに基づいて算出した判別関数に検査対象に対応するパラメータを代入して得られる変数と閾値とを比較する線形判別分析手段と、パラメータ空間において良サンプルデータに対応する良クラスターの中心位置から検査対象に対応する要素の位置までの距離と閾値とを比較する距離判別分析手段と、線形判別分析手段および距離判別分析手段のいずれにおいても良のカテゴリーに判別された場合に良判定する良否判定手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の良否を判定する良否判定装置、良否判定方法および良否判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品の良否を判定する良否判定装置として、多変量線形判別分析(以後、線形判別分析と呼ぶ。)を用いる良否判定装置が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。このような装置では、良否属性が既知の多数のサンプルから複数のパラメータを取得して線形判別分析の変数(説明変数)とし、これらの複数のパラメータから良カテゴリーと否カテゴリーとの度数分布を分離させる変数を与える線形判別関数(以後、判別関数と呼ぶ。)を求め、良否判定対象から測定した複数のパラメータを代入して得られる上記判別関数の算出結果と閾値とを比較することにより良否を判定する。
【0003】
また、他の良否判定装置として、多変量の距離判別分析(以後、距離判別分析と呼ぶ。)を用いる良否判定装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。このような装置では、良否属性が既知の多数のサンプルから複数のパラメータを取得して距離判別分析の変数(説明変数)とし、これら複数のパラメータが投射されるパラメータ空間におけるクラスター同士の距離の近似により属性の同じクラスターを結合し、これら各クラスターの中心位置と良否判定対象から測定した複数のパラメータに対応する要素の位置との間のユークリッド距離に基づいて、良否判定対象に対応する要素がどのクラスターに属するかを判別することにより良否を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−254501号公報
【特許文献2】特開2004−085216号公報
【特許文献3】特開2006−226708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1および2のような線形判別分析による良否判定装置では、良否のカテゴリーを最も良く分離する判別関数を用いることにより、判別精度に優れる良否判定を実現できるものの、良否のカテゴリーに対して分離度の高い判別関数を求めるためには各カテゴリーの特徴を表すパラメータからなる多量のサンプルデータを収集する必要がある。また、収集したサンプルデータに基づいて判別関数が算出されるため、例えば、浮き、欠品、不濡れ等の不良原因別の不良品に対して、サンプル数の多い不良原因の不良品では信頼性の高い判別結果を得られるが、サンプル数の少ない不良原因の不良品では良品と誤判定されてしまう判別結果となる場合があり、これを防ぐためには、不良原因別の不良品のそれぞれについて多量のサンプルデータを必要とするといった問題があった。
さらに、線形判別分析の場合には、2つのカテゴリーを閾値となる境界線(面)によって2分する手法であるため、カテゴリーの度数分布の平均値から離れた外れ値に相当する判別結果であっても、閾値の何れの側に属するかで良否が判定されるといった問題があった。そのため、判別関数を求めるために選択されたパラメータとの相関が低い未知の不良を、正確に判別することが難しいといった問題があった。
【0006】
一方、上記特許文献3のような距離判別分析による良否判定装置では、クラスターの中心からのユークリッド距離に基づいて良否を判定できるため、検査開始時などの不良品サンプルの少ない場合であっても、良品サンプルのデータのみを用いて良品に似ているものを識別できる利便性はある。しかし、良否のカテゴリー同士が十分に分離されない場合があり、不良品を良品として誤判定してしまういわゆる流出率が高くなることを防ぐために、検査開始時において安全率の高い閾値を設定することが必要となる。そのため、安全率の高い閾値により、良品を不良品として誤判定してしまういわゆる見過ぎ率が高くなってしまうといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決せんとするもので、信頼性が高い線形判別分析の判定結果を距離判別分析に反映させることにより、距離判別分析の閾値決定に対する収斂性
を高め、距離判別分析の持つ簡便な判定性能を向上させるとともに、線形判別分析と距
離判別分析とを共用することにより、互いの良否のカテゴリー判別の特徴を生かし、優れた判定精度を実現できる良否判定装置、良否判定方法および良否判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の通りである。
1.検査対象から良否判定要因となる複数のパラメータを取得するパラメータ取得手段と、
良否属性が既知の複数のサンプルに対応する前記複数のパラメータから良カテゴリーと否カテゴリーとの度数分布を分離させる変数を与えるように選択された複数のパラメータからなる判別関数を求め、前記度数分布に基づいて設定される判定基準としての前記判別関数の線形判別閾値と、前記判別関数に検査対象に対応するパラメータを代入して得られた算出結果と、を比較して当該検査対象の良否のカテゴリーを判別する線形判別分析手段と、
前記複数のパラメータが投射されるパラメータ空間において、良属性を有する複数のサンプルに対応する要素によって構成された良クラスターの中心位置に対する距離として設定される判定基準としての距離判別閾値と、前記中心位置に対する検査対象に対応する要素の距離と、を比較して当該検査対象の良否のカテゴリーを判別する距離判別分析手段と、
前記線形判別分析手段により良のカテゴリーに判別された検査対象について前記距離判別分析手段により良否のカテゴリーを判別し、前記線形判別分析手段および前記距離判別分析手段のいずれにおいても良のカテゴリーに判別された場合にのみ良判定する良否判定手段と、を備えることを特徴とする良否判定装置。
2.上記1.において、目視により検査対象の良否のカテゴリーを判別する目視判別手段と、
前記距離判別分析手段により否のカテゴリーに判別された検査対象について前記目視判別手段により良否のカテゴリーを判別し、前記距離判別分析手段および前記目視判別手段のいずれにおいても否のカテゴリーに判別された場合にのみ否判定する予備良否判定手段と、
前記予備良否判定手段により良否判定された検査対象に対応する前記複数のパラメータとその良否判定結果とをサンプルデータとして蓄積するサンプルデータ蓄積手段と、を更に備え、
前記良否判定手段は、
前記線形判別分析手段が、前記サンプルデータに基づいて設定される前記線形判別閾値により良否のカテゴリーを判別し、
前記距離判別分析手段が、前記サンプルデータのうち良のカテゴリーに判別されたデータに基づいて設定される前記距離判別閾値により良否のカテゴリーを判別し、これらの判別結果に基づいて当該検査対象の良否を判定することを特徴とする。
3.検査対象から良否判定要因となる複数のパラメータを取得するパラメータ取得工程と、
良否属性が既知の複数のサンプルに対応する前記複数のパラメータから良カテゴリーと否カテゴリーとの度数分布を分離させる変数を与えるように選択された複数のパラメータからなる判別関数を求め、前記度数分布に基づいて設定される判定基準としての前記判別関数の線形判別閾値と、前記判別関数に検査対象に対応するパラメータを代入して得られた算出結果と、を比較して当該検査対象の良否のカテゴリーを判別する線形判別分析工程と、
前記複数のパラメータが投射されるパラメータ空間において、良属性を有する複数のサンプルに対応する要素によって構成された良クラスターの中心位置に対する距離として設定される判定基準としての距離判別閾値と、前記中心位置に対する検査対象に対応する要素の距離と、を比較して当該検査対象の良否のカテゴリーを判別する距離判別分析工程と、
前記線形判別分析工程により良のカテゴリーに判別された検査対象について前記距離判別分析工程により良否のカテゴリーを判別し、前記線形判別分析工程および前記距離判別分析工程のいずれにおいても良のカテゴリーに判別された場合にのみ良判定する良否判定工程と、を備えることを特徴とする良否判定方法。
4.上記3.において、目視により検査対象の良否のカテゴリーを判別する目視判別工程と、
前記距離判別分析工程により否のカテゴリーに判別された検査対象について前記目視判別工程により良否のカテゴリーを判別し、前記距離判別分析工程および前記目視判別工程のいずれにおいても否のカテゴリーに判別された場合にのみ否判定する予備良否判定工程と、
前記予備良否判定工程により良否判定された検査対象に対応する前記複数のパラメータとその良否判定結果とをサンプルデータとして蓄積するサンプルデータ蓄積工程と、を更に備え、
前記良否判定工程は、
前記線形判別分析工程が、前記サンプルデータに基づいて設定される前記線形判別閾値により良否のカテゴリーを判別し、
前記距離判別分析工程が、前記サンプルデータのうち良のカテゴリーに判別されたデータに基づいて設定される前記距離判別閾値により良否のカテゴリーを判別し、これらの判別結果に基づいて当該検査対象の良否を判定することを特徴とする。
5.検査対象から良否判定要因となる複数のパラメータを取得するパラメータ取得機能と、
良否属性が既知の複数のサンプルに対応する前記複数のパラメータから良カテゴリーと否カテゴリーとの度数分布を分離させる変数を与えるように選択された複数のパラメータからなる判別関数を求め、前記度数分布に基づいて設定される判定基準としての前記判別関数の線形判別閾値と、前記判別関数に検査対象に対応するパラメータを代入して得られた算出結果と、を比較して当該検査対象の良否のカテゴリーを判別する線形判別分析機能と、
前記複数のパラメータが投射されるパラメータ空間において、良属性を有する複数のサンプルに対応する要素によって構成された良クラスターの中心位置に対する距離として設定される判定基準としての距離判別閾値と、前記中心位置に対する検査対象に対応する要素の距離と、を比較して当該検査対象の良否のカテゴリーを判別する距離判別分析機能と、
前記線形判別分析機能により良のカテゴリーに判別された検査対象について前記距離判別分析機能により良否のカテゴリーを判別し、前記線形判別分析機能および前記距離判別分析機能のいずれにおいても良のカテゴリーに判別された場合にのみ良判定する良否判定機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とする良否判定プログラム。
6.上記5.において、目視により検査対象の良否のカテゴリーを判別する目視判別機能と、
前記距離判別分析機能により否のカテゴリーに判別された検査対象について前記目視判別機能により良否のカテゴリーを判別し、前記距離判別分析機能および前記目視判別機能のいずれにおいても否のカテゴリーに判別された場合にのみ否判定する予備良否判定機能と、
前記予備良否判定機能により良否判定された検査対象に対応する前記複数のパラメータとその良否判定結果とをサンプルデータとして蓄積するサンプルデータ蓄積機能と、を更に備え、
前記良否判定機能は、
前記線形判別分析機能が、前記サンプルデータに基づいて設定される前記線形判別閾値により良否のカテゴリーを判別し、
前記距離判別分析機能が、前記サンプルデータのうち良のカテゴリーに判別されたデータに基づいて設定される前記距離判別閾値により良否のカテゴリーを判別し、これらの判別結果に基づいて当該検査対象の良否を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の良否判定装置によると、良否判定手段が、線形判別分析手段により良のカテゴリーに判別された検査対象について距離判別分析手段により良否のカテゴリーを判別し、線形判別分析手段および前記距離判別分析手段のいずれにおいても良のカテゴリーに判別された場合にのみ良判定する。このように線形判別分析と距離判別分析とを共用することにより、距離判別分析において良否のカテゴリー同士が十分に分離されない場合であっても、線形判別分析により予め特定の否カテゴリーを排除することができ、その結果、安全率の高い距離判別閾値を設定する必要がなく、距離判別分析の閾値算出に対する収斂性を高めることができる。これにより、判定精度に優れた良否判定装置を実現できる。
【0010】
また、目視により検査対象の良否のカテゴリーを判別する目視判別手段と、前記距離判別分析手段により否のカテゴリーに判別された検査対象について前記目視判別手段により良否のカテゴリーを判別し、前記距離判別分析手段および前記目視判別手段のいずれにおいても否のカテゴリーに判別された場合にのみ否判定する予備良否判定手段と、前記予備良否判定手段により良否判定された検査対象に対応する前記複数のパラメータとその良否判定結果とをサンプルデータとして蓄積するサンプルデータ蓄積手段と、を更に備え、前記良否判定手段は、前記線形判別分析手段が、前記サンプルデータに基づいて設定される前記線形判別閾値により良否のカテゴリーを判別し、前記距離判別分析手段が、前記サンプルデータに基づいて設定される前記距離判別閾値により良否のカテゴリーを判別し、これらの判別結果に基づいて当該検査対象の良否を判定する場合は、運用初期のサンプルデータの数が少ない状態においても良否判定を実行することができるとともに、予備良否判定手段による良否判定にて取得した十分な数のサンプルデータに基づいて実運用の良否判定を実行することができる。すなわち、通常の生産工程においては歩留まりが高いことが必然であり、不良品のサンプルを取得することは困難である。一方、良品サンプルは容易に取得できるため、これらに基づいて良否判定を実行すれば、不良品サンプルを取得するための多大な時間を必要とすることなく、比較的初期の段階から良否判定装置を運用することができる。また、距離判別分析により否のカテゴリーであると判別された検査対象については目視による検査を実行して、真の良否を判定する。これにより、良品を不良品と誤判定してしまうことを確実に防ぐことができる。
【0011】
以上は、本発明が装置として実現される場合について説明したが、かかる装置を実現する方法やプログラム、当該プログラムを記録した媒体としても発明は実現可能である。また、以上のような良否判定装置は単独で実現される場合もあるし、ある方法に適用され、あるいは同方法が他の機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、上記に示す良否判定装置、良否判定方法および良否判定プログラムに限らず、各種の態様を含むものである。したがって、本発明思想は、プログラム、ソフトウェアであったり、ハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。
発明の思想の具現化例として上記装置を制御するためのソフトウェアとなる場合には、かかるプログラム、ソフトウェア、あるいはソフトウェアを記録した記録媒体上においても存在し、利用される。
【0012】
また、プログラム、ソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。一次複製品、二次複製品などの複製段階についても同等である。その他、供給装置として通信回線を利用して行う場合でも本発明が利用されていることにはかわりない。さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態にかかる良否判定装置の全体図である。
【図2】本実施形態にかかるコンピュータの内部ブロック図である。
【図3】本実施形態にかかる良否判定を行うためのソフトウェアブロック図である。
【図4】サンプルデータテーブルの例を示す図である。
【図5】本実施形態にかかるサンプルデータ登録処理のフローチャートを示す図である。
【図6】視野Sの例を示す平面図である。
【図7】評価領域Eの例を示す平面図である。
【図8】本実施形態にかかる距離判別分析判定基準作成処理のフローチャートを示す図である。
【図9】パラメータ空間を示すグラフの例を示す図である。
【図10】距離に対する度数分布図の例を示す図である。
【図11】本実施形態にかかる予備良否判定処理のフローチャートを示す図である。
【図12】本実施形態にかかる線形判別分析判定基準作成処理のフローチャートを示す図である。
【図13】判別関数の変数に対する度数分布図の例を示す図である。
【図14】本実施形態にかかる実運用時の良否判定処理のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)良否判定装置の構成:
(2)サンプルデータ登録処理:
(3)良否判定処理:
(3−1)予備良否判定処理:
(3−2)実運用時の良否判定処理:
【0015】
(1)良否判定装置の構成:
図1は、本発明にかかる良否判定装置の構成を示している。同図において、良否判定装置10は、相互に接続された撮像ユニット20とコンピュータ30とから構成されている。撮像ユニット20は検査対象物の実装基板50を撮像して撮像イメージを生成し、同撮像イメージをコンピュータ30に出力する。コンピュータ30は撮像イメージを入力し、同撮像イメージを解析することにより、撮像を行った実装基板50の良否を判定する。図1において、撮像ユニット20は、実装基板50が一定位置に載置されるとともに、コントローラ21の指令に基づいてX−Y(水平)方向に移動可能なX−Yステージ23を備えている。カメラ22は、所定の光学レンズからなる光学系22aを鉛直下方に配向させており、鉛直下方の像を入力することが可能となっている。カメラ22の内部にはCCD撮像板22bが備えられており、光学系22aは鉛直下方の像をCCD撮像板22bに結像することが可能となっている。
【0016】
CCD撮像板22bはドットマトリックス状に配列された複数のCCD撮像素子で構成されている。CCD撮像素子は、それぞれ入力した光に応じて電荷を発生させる光電素子であるとともに、同発生した電荷を一時的に記憶する。そして、CCD撮像素子にて生成した電荷をデジタル信号に変換しつつ、順次コントローラ21に転送する。コントローラ21は、転送された上記デジタル信号をCCD撮像板22bにおけるCCD撮像素子の個々のアドレスに対応づけながら画像メモリ(VRAM)21aに蓄積する。すなわち、VRAM21aにおいてCCD撮像素子に対応する画素ごとに上記デジタル信号の階調を有する画像データが生成される。なお、本実施形態において、上記デジタル信号はCCD撮像素子に入力された光の輝度を表現するものとする。すなわち、画素ごとに輝度値を有する画像データがVRAM21aにおいて記憶される。
【0017】
上記のようにしてVRAM21aに記憶された画像データはコンピュータ30に対して出力される。また、カメラ22にて撮像を行うごとにVRAM21aには新たな画像データが記憶される。コントローラ21は、X−Yステージ23に対して駆動信号を出力しており、同駆動信号に応じてX−Yステージ23が水平方向に駆動される。むろん、X−Yステージ23上の一定位置に載置された実装基板50も水平移動することとなる。このようにすることにより、カメラ22を移動させることなく、実装基板50上のあらゆる位置にカメラ22の視野を移動させることが可能となる。なお、カメラ22にて撮像する際には、X−Yステージ23が停止するため、静止画像が撮像されることとなる。
【0018】
X−Yステージ23から所定量上方にリングライト24が保持されている。リングライト24は発光素子としてLEDを具備している。このLEDは円環状に形成されており、その中心位置が上方視においてカメラ22の光学系22aの中心位置と一致させられている。すなわち、リングライト24はカメラ22の視野を外側から一定の角度で照射することが可能となっている。これにより、実装基板50のリングライト24による反射像をカメラ22にて撮像した2次元の画像データを生成することができる。なお、リングライト24は図示のように一段ではなく径の異なるリングライトを上下に複数配置し、照明角度の異なる画像データを生成するようにしてもよい。また、カメラ22にて撮像した画像データを撮像イメージというものとする。
【0019】
図2は、コンピュータ30の内部構成をブロック図により示している。同図において、コンピュータ30は、主要な構成としてCPU31とRAM32とビデオメモリ(VRAM)33とハードディスク(HDD)34を備えている。CPU31は、HDD34に記憶されたオペレーティングシステム(OS)34aや良否判定プログラム34b等に基づいた処理を実行させる演算装置であり、同処理を実行する際にRAM32をワークエリアとして使用する。VRAM33は、画像データを記憶するために特化したメモリであり、撮像イメージ33aが記憶される。なお、撮像イメージ33aは、コントローラ21のVRAM21aから転送された画像データである。
【0020】
その他の構成として、コンピュータ30にはビデオインターフェイス(I/F)35と入力インターフェイス(I/F)37とI/O39が備えられている。ビデオI/F35にはディスプレイ等の表示部36が接続され、入力I/F37にはキーボードやマウス等の入力部38が接続され、I/O39には撮像ユニット20のコントローラ21が接続されている。I/O39は、コントローラ21に対してX−Yステージ23を駆動させるための信号や、カメラ22にて撮像を実行させるための信号等を出力するとともに、コントローラ21から撮像イメージの入力を受け付けている。
【0021】
図3は、コンピュータ30にて実現されるソフトウェアの構成とデータの流れを示している。CPU31およびRAM32にて、OS34aと良否判定プログラム34bとが実行されており、そのモジュール構成が示されている。良否判定プログラムMPは、撮像データ入力部SP1と距離判別分析部SP2と線形判別分析部SP3と目視データ入力部SP4と表示制御部SP5とを備えている。
【0022】
撮像データ入力部SP1は、撮像実行部SP11と撮像イメージ取得部SP12とパラメータ算出部SP13とを有している。撮像実行部SP11は、HDD34に記憶された基板データ34cを取得し、同基板データ34cに基づいて撮像ユニット20に撮像を実行させる。具体的に説明すると、基板データ34cには、実装基板50の大きさや実装された部品の位置や大きさや形状や個数といった情報が格納されており、これらの情報に基づいてX−Yステージ23を駆動させる。したがって、実装基板50上における所望の位置にカメラ22の視野を動かすことができ、実装基板50上における所望の位置について良否判定を実行することができる。
【0023】
撮像イメージ取得部SP12は、コントローラ21から撮像イメージを入力し、VRAM33に撮像イメージ33aを記憶させる。パラメータ算出部SP13は撮像イメージ33aを入力し、撮像イメージ33aから複数のパラメータを算出する。ここで、パラメータとは撮像イメージ33aにおいて、はんだが撮像された画素領域から得られる特徴値であり、例えば平均輝度や最大輝度や最小輝度やエッジ数等のような値である。むろん、これらに限られるものではない。本実施形態において、パラメータはh(hは正の整数)種類用意されるものとする。なお、各パラメータの値をパラメータ値p(kは0からhまでの整数)と表記するものとする。
【0024】
また、パラメータ算出部SP13は、カメラ22の視野のどの位置にはんだが配置されているかという位置情報を基板データ34cから取得するため、はんだに対応する画素領域について画素データを抽出し、パラメータ値pを算出することができる。パラメータ算出部SP13が算出したパラメータ値pは、HDD34に割り当てられたサンプルデータテーブル34dに格納される。図4は、サンプルデータテーブル34dを示しており、同サンプルデータごとに良/否が識別されている。この良否属性は、使用者によって入力部38を介して入力される。なお、実際の量産製品においては、歩留まりが高いため、不良品の数は良品の数より大幅に少ないことが多い。したがって、このような実際の量産製品をサンプルとする場合には、否属性のサンプル数は良属性のサンプルより大幅に少なくなる。
【0025】
距離判別分析部SP2は、中心値算出部SP21と距離算出部SP22と距離判別閾値設定部SP23と距離判別良否判定部SP24とを有している。中心値算出部SP21は、サンプルデータテーブル34dから良否属性が良のグループの要素に対応したパラメータ値pを取得し、このパラメータ値pの中心値を算出する。そして、距離算出部SP22は、この中心値と、中心値を算出する際に用いた良属性を有するサンプルデータのパラメータ値pおよび検査対象に対応するパラメータ値pと、のユークリッド距離を算出する。
【0026】
距離判別閾値設定部SP23は、上述の中心値と、中心値を算出する際に用いた良属性を有するサンプルデータのパラメータ値pと、のユークリッド距離について、この距離に対する度数平均と標準偏差とを算出し、これらに基づいて、所定の見過ぎ率となるような値を距離判別閾値として設定する。
距離判別良否判定部SP24は、距離算出部SP22が算出した距離と距離判別閾値設定部SP23で設定された距離判別閾値とを比較して、距離判別分析における検査対象の良否のカテゴリーを判別する。
【0027】
線形判別分析部SP3は、判別関数算出部SP31と線形判別閾値算出部SP32と線形判別良否判定部SP33とを有している。判別関数算出部SP31は、ある変数を与える関数であって、当該変数に対して良カテゴリーと否カテゴリーとの度数分布を作成した場合に、両分布が良く分かれる判別関数を算出する処理を行う。この変数は上記パラメータ値pの関数である。本実施形態では、判別関数は、サンプルデータテーブル34dに格納されているパラメータ値pとそれらの良否判定結果とを用いて算出される。また、本実施形態において上記パラメータ値pはh種類存在するが、本実施形態においては良否のカテゴリーの分布を分離する際に効果的な変数を選別して所定数のパラメータ値pで判別関数を規定している。
【0028】
線形判別閾値算出部SP32は、判別関数算出部SP31により算出された判別関数により与えられる各サンプルデータに対応する変数Zについて、良カテゴリーと否カテゴリーとの度数分布別に度数平均と標準偏差とを算出し、これらに基づいて、所定の流出率と見過ぎ率とを満たすような線形判別閾値を算出する。
【0029】
線形判別良否判定部SP33は、判別関数により与えられる検査対象に対応する変数Zと、線形判別閾値算出部SP32が算出した線形判別閾値とを比較して、線形判別分析における検査対象の良否のカテゴリーを判別する。
【0030】
目視データ入力部SP4は、後述のサンプルデータ登録処理の際のパラメータ値pに対応づけられる良否判定結果の入力を受け付けたり、予備良否判定処理において距離判別分析の結果が否である検査対象について、目視による再検査を行った際の真の判定結果の入力を受け付けたりする。また、後述する距離判別閾値や線形判別閾値を設定するための数値の入力等も受け付ける。
表示制御部SP5は、撮像イメージ33aや良否判定処理の過程で生成された各種データ等を表示部36に出力することによってディスプレイ上にそれらのイメージを表示させる。
【0031】
(2)サンプルデータ登録処理:
本実施形態におけるサンプルデータ登録処理では、予め用意された良否属性が既知のサンプルから、後述する良否判定処理で用いる判定基準を作成するための複数のパラメータを算出し、これら複数のパラメータと良否属性とをサンプルデータとして登録する。
図5は、サンプルデータ登録処理の流れを示している。同図において、ステップS100にて、サンプルとして用意された実装基板50の撮像を行う。サンプルとして用意された実装基板50に対しては、予め目視検査等の他の手法によってはんだの良否判定が行われており、実装基板50に形成されたはんだの良否が判明している。
【0032】
ステップS110においては、撮像イメージ33aが生成され、撮像イメージ取得部SP12が撮像イメージ33aをVRAM33に記憶させる。図6は、カメラ22の視野Sを示している。同図において、カメラ22にて撮像される視野Sには、実装基板50上の複数の実装部品やはんだが含まれることとなる。なお、本実施形態においては、実線で示すチップ部品51のはんだ52の形状についての良否判定を説明するものとする。ステップS110においては、視野S全体を表す画像データとして撮像イメージ33aが生成される。
【0033】
ステップS120においては、撮像イメージ33aからはんだ52が含まれる画素データのみを抽出する。すなわち、図6においてはんだ52の周辺を実線で囲んだ評価領域Eの内側の画素データのみを抽出する。なお、ステップS120においてCPU31は、HDD34に記憶された基板データ34cに基づいて、視野Sのどこに良否判定対象のはんだ52が配置されているかを特定する。そして、はんだ52が撮像された画素に予め登録されたサイズの評価領域Eを設定して、同評価領域Eに属する画素データの抽出を行う。
【0034】
図7は、評価領域Eの様子を模式的に示している。同図において、評価領域Eは破線で区画された多数の画素Pa,bで構成されている。なお、各画素Pa,bの輝度値Ba,bは、実装基板50上における各CCD撮像素子が画像入力を担当する領域の平均輝度を意味する。なお、評価領域Eは図示の形状に限られるものではなく、算出するパラメータに応じて形状や個数が決定される。
【0035】
ステップS130においては、ステップS120にて抽出した画素データについてパラメータ値pを算出する。例えば、パラメータ値pのひとつとして平均輝度を算出する場合には、評価領域Eに含まれる全画素の輝度値Ba,bの積算値を全画素数で除算した値がパラメータ値pとして算出されることとなる。同様に、評価領域Eに含まれる全画素の輝度値Ba,bに対してパラメータ算出部SP13が所定の演算を行うことにより、他の種類のパラメータ値pを全部でh種類算出する。算出されたパラメータ値pは、当該評価領域Eに対応するはんだに対して与えられた固有の通し番号とともに上述したサンプルデータテーブル34dに格納される。
【0036】
ステップS140においては、サンプルデータテーブル34dに格納されたパラメータ値pに対応づけて良否属性を登録する。使用者は予め実装基板50上のはんだについての良否を目視検査等によって取得しており、これらの情報を、入力部38を介して入力する。すると、サンプルデータテーブル34dにおける"良否属性"の欄に情報が追記される。これにより、一つのはんだ52についてパラメータ値pと既知の良否判定結果とを対応づけて登録することができる。
【0037】
以上において、一つのはんだ52についてパラメータ値pと既知の良否判定結果とを対応づけて登録する処理を説明したが、通常、撮像イメージ33aには「はんだ無」「部品浮き」「部品欠品」「部品位置ずれ」等の複数の検査項目が含まれるため、撮像イメージ33aにおいて各はんだの評価領域Eに対するステップS120〜S140の処理を繰り返すこととなる。さらに、単一の実装基板50上においても多数の部品が実装され多数の評価領域Eが存在するため、X−Yステージ23によって視野Sを移動させつつステップS100〜S140が繰り返されることとなる。この場合、予め全ての検査項目についてパラメータ値pを算出しておき、各はんだと良否属性との対応関係を損なうことなく、一括して良否属性を登録するようにしてもよい。
【0038】
(3)良否判定処理:
次に、実際に製品を検査する際に行われる良否判定処理について説明する。本実施形態においては、実運用の良否判定処理である線形判別分析と距離判別分析とによる良否判定処理を実行する前に、距離判別分析と目視による判別とによる予備良否判定処理を実行する。すなわち、本実施形態においては、予備良否判定処理を実施した後に、実運用の良否判定処理を実施する。
【0039】
上述のように、線形判別分析では、良否のカテゴリーに対して分離度の高い判別関数を求めるために各カテゴリーの特徴を表すパラメータからなる多量のサンプルデータを収集する必要があるが、実際の量産製品においては、歩留まりが高いため、良品の数に対して不良品の数が大幅に少ないことが多く、不良サンプルのデータを収集することは極めて困難である。一方、距離判別分析では、比較的入手しやすい良品サンプルのデータのみを用いて良否を判別することができる。したがって、本実施形態では、予備良否判定処理により、良否判定を実行しつつ、実運用時の良否判定処理のためのサンプルデータを蓄積する。そして、十分な数のサンプルデータを収集した時点で、実運用の良否判定処理に移行する。
【0040】
(3−1)予備良否判定処理
本実施形態における予備良否判定処理は、複数のパラメータに対して良否の属性が予め分かっている比較的少数の良サンプルデータに基づいて距離判別分析に用いる判定基準を作成し、これを用いた距離判別分析による判別と、目視による判別とを実施するものである。すなわち、予備良否判定処理は、装置立ち上げ時等において、不良サンプルのデータを収集することなく運用開始できる良否判定処理であるとともに、後述する実運用時の良否判定処理に用いる判定基準を作成するための多量のサンプルデータを蓄積するための仮運用の良否判定処理である。
【0041】
最初に、距離判別分析に用いる判定基準の作成処理について説明する。本実施形態における距離判別分析では、パラメータ空間において、良属性を有するパラメータに対応する要素によって構成されるクラスターの中心位置からのユークリッド距離として設定される距離判別閾値を判定基準としている。したがって、距離判別分析の判定基準作成処理では、サンプルデータのうち良属性を有するサンプルデータを用いて、それらのパラメータ空間における中心値から良クラスターの範囲を定める距離を算出して判定基準を作成する。距離判別分析の判定基準作成処理は、図8のフローチャートに従って実行される。
【0042】
最初に、中心値算出部SP21は、サンプルデータテーブル34dを参照し、登録されているすべてのサンプルデータのうち、良属性を有するサンプルデータを抽出する(ステップS200)。ステップS210では、それらのパラメータ値pをh次元のパラメータ空間における座標とした各要素により構成される良クラスターの中心値を算出する。図9は、サンプルデータテーブル34dに記述されたパラメータ値pをパラメータのh次元のパラメータ空間における座標として示している。なお、同図においては図示の簡略化のためh=2の平面にて座標を示しているが、実際にはパラメータの種類hごとに軸が形成されたh次元の空間となる。むろん、h=1,2となる場合もあり、その場合はそれぞれ直線と平面上にパラメータ値pをプロットすることができる。上記において、s番目のサンプルデータの座標P(s)は、以下の式(1)のように表すことができる。
【数1】

なお、図9において、各サンプルデータに対応する要素の座標P(s)は×で示されている。
【0043】
また、t個の要素で構成されるクラスターの中心値Cは、h種類のパラメータpを全要素分積算し、同積算値を全要素数tによって除算したパラメータpの相加平均として算出される。すなわち、中心値Cは、
【数2】

のように表すことができる。
次に、ステップS220において、距離算出部SP22は、中心値Cと各要素の座標P(s)とのユークリッド距離を算出する。中心値Cとs番目の要素の座標P(s)との距離CP(s)は以下の式で表すことができる。
【数3】

【0044】
ステップS230では、上述のように取得したユークリッド距離CP(s)に対する度数分布図を作成する。作成された度数分布図は、例えば、図10のようになる。そして、ステップS240では、この度数分布図において度数平均と標準偏差を算出する。度数平均と標準偏差を算出すると、距離判別閾値設定部SP23は、ステップS250にて入力部38での見過ぎ率入力を受け付ける。すなわち、本距離判別分析の判定基準作成処理においては、入力部38によって見過ぎ率を入力できるようになっており、この見過ぎ率に基づいて距離判別閾値を算出する。すなわち、見過ぎ率は、良否を判定される検査対象が良品であるにも関わらず否判定されてしまう確率であって、上述の度数分布図における標準偏差σによって算出することができる。
【0045】
標準偏差によれば、正規分布において、変数が度数平均と標準偏差との間に含まれる確率あるいは変数が標準偏差より外側の裾部分に含まれる確率を容易に特定することができ、標準偏差を定数倍することによって、入力された見過ぎ率にすることができる。すなわち、ステップS250にて見過ぎ率が入力されることによって、標準偏差σに対して乗じる係数αが決定される。例えば、見過ぎ率0.00031が入力された場合、係数α=4となる。なお、ステップS250においては、標準偏差に対して乗じる係数α自体の入力を受け付けても良いし、予め保存された見過ぎ率データ(あるいは標準偏差データ)に基づいて見過ぎ率を特定しても良い。
【0046】
いずれにしても、ステップS250にて見過ぎ率を受け付けてその値を特定すると、ステップS260においては、当該見過ぎ率を与えるような閾値Tds=Ads+ασを算出する。算出された閾値TdsはHDD34に保存される(ステップS270)。このようにして、距離判別分析における良否のカテゴリーを判別するため基準となる閾値Tが設定される。
【0047】
上述のようにして距離判別分析の判定基準が作成されるが、予備良否判定処理に用いる距離判別分析の判定基準は、見過ぎ率の高い係数α=4未満の数値を使用している。距離判別分析においては、比較的入手しやすい良サンプルのみを用いて良否を判別することができるが、それでも多量の実装基板を目視により良否判定するのは大変な労力を要する。このため、本実施形態における予備良否判定処理では、ごく少数のサンプルに基づいて距離判別分析の判定基準を作成する。そして、明らかに良品であるものについては目視判定することなく良品と判定し、不良品の疑いがあるものについてのみ目視判定を実施する。そして、上記のように見過ぎ率を比較的高く設定することにより、ごく少数の良サンプルデータに基づいて作成された距離判別分析の判定基準であっても不良品の流出を抑えている。
なお、後述の実運用時の良否判定処理に用いる距離判別分析の判定基準は、この予備良否判定処理にて蓄積された十分な数のサンプルデータに基づいて作成されるので、見過ぎ率の係数α=4以上の数値に設定される。
【0048】
次に、予備良否判定処理について説明する。図11は、予備良否判定処理の流れを示している。なお、同図において、ステップS330までの検査対象の実装基板50を撮像してパラメータ値pを算出する工程は、サンプルデータ登録処理のステップS130までと同様であるため説明を省略する。ただし、ここで撮像を行う実装基板50は、良否判定の対象となる基板であり、良否判定の結果が未知である。ステップS330において、実装基板50上のあるはんだについてのパラメータ値p,p・・p・・p(h−1),pが算出される。ステップS340では、距離判別分析の判定基準である距離判別閾値と比較される距離CXが算出される。
【0049】
図11のステップS340にて、距離算出部SP22は、パラメータ値p,p・・p・・p(h−1),pで定義されるパラメータ空間内の座標X={p,p・・p・・p(h−1),p}と、距離判別分析の判定基準を作成する際に算出された良カテゴリーの中心値Cとの距離を算出する。すなわち、座標Xと中心値Cとのユークリッド距離を上記式(3)と同様の手法によって算出する。図9において、○で示される座標Xは検査対象に対応する要素の座標として示されている。
【0050】
ステップS350において、距離判別良否判定部SP24は、ステップS340にて算出した座標Xの良カテゴリーの中心値Cに対する距離CXと、予め判定基準として算出されている距離判別閾値Tdsとを比較する。距離CXが閾値Tdsよりも小さいと判別された場合は、この検査対象が良カテゴリーであると判別し、この検査対象についての判定結果を記憶する(ステップS355)。そして、次の検査対象について同様の処理を繰り返す。なお、この判定結果とともに、当該検査対象のパラメータ値についても記憶させるようにしてもよい。また、これら判定結果とパラメータ値は、データとして出力したり、後述の目視による判別と同様に、サンプルデータとしてサンプルデータテーブル34dに追加登録したりするようにしてもよい。
【0051】
ステップS350において、距離CXが閾値Tdsよりも小さいと判別されなかった場合は、ステップS360にて目視による判別を実施する。目視による判別では、距離判別分析により否カテゴリーであると判別された検査対象について、真に否であるのかを判別する。具体的には、表示部36に検査対象である評価領域Eのイメージを表示させ、これに基づいて目視により良否のカテゴリーを判別する。目視判別により良カテゴリーであると判別された場合はステップS370にて良判定し、否カテゴリーであると判別された場合はステップS380にて否判定する。最後に、この検査対象についての良否の判定結果とパラメータ値とをサンプルデータテーブル34dに追加登録する(ステップS390)。このとき、目視判定にて否と判定された検査対象について、その不良の原因についても併せて登録する。そして、次の検査対象について同様の処理を繰り返す。
【0052】
このように、予備良否判定処理では、距離判別分析と目視判別による良否判定を実施するとともに、実運用時の良否判定における線形判別分析の判定基準を作成するために用いる良否カテゴリーのサンプルデータを収集する。そして、これらの処理を繰り返し実行し、線形判別分析の判定基準を作成するに十分な、所定数(例えば、300個)の否カテゴリーのサンプルデータを収集した時点で、実運用時の良否判定処理へ移行する。
【0053】
(3−2)実運用時の良否判定処理
本実施形態における実運用時の良否判定処理では、目視判定による必要な数のサンプルデータに基づいて線形判別分析の判定基準および距離判別分析の判定基準を予め作成し、これらを用いて線形判別分析および距離判別分析を実施する。本実施形態においては、線形判別分析の判定基準および距離判別分析の判定基準を作成するための必要な数のサンプルデータは、上述の予備良否判定処理にて蓄積されたサンプルデータである。
【0054】
最初に、実運用時の良否判定処理に用いる判定基準の作成処理について説明する。上述のように、実運用時の良否判定処理では、線形判別分析と距離判別分析とを実施する。これらのうち、距離判別分析判定基準については、上述の予備良否判定処理に用いる距離判別分析判定基準と同様に作成されるため、その作成方法は省略し、線形判別分析に用いる判定基準の作成処理について説明する。
【0055】
なお、本良否判定処理に用いる距離判別分析判定基準について、その作成に用いられるサンプルデータは、上述のように、予備良否判定処理にて蓄積したサンプルデータのうちの良カテゴリーに属するサンプルデータである。すなわち、実運用時の良否判定処理に用いる距離判別分析判定基準は、上述の予備良否判定処理に用いる距離判別分析判定基準とは異なる判定基準である。そして、その見過ぎ率係数は、予備良否判定処理で用いた距離判別分析判定基準の見過ぎ率係数の数値よりも低いα=4未満に設定されている。
【0056】
本実施形態における線形判別分析では、良否属性が既知のパラメータ値とその良否属性とから良カテゴリーと否カテゴリーとの度数分布を分離する変数を与える判別関数を算出し、その判別関数から与えられる変数の分布傾向から統計的推定を行うことにより算出される線形判別閾値を判定基準としている。したがって、本判定基準作成処理では、サンプルデータを用いてそれらの度数分布における良否のカテゴリーを分離する判別関数を算出し、その度数分布に基づいて判定基準となる閾値を算出する。線形判別分析の判定基準作成処理は、図12のフローチャートに従って実行される。
【0057】
最初に、判別関数算出部SP31は、サンプルデータテーブル34dを参照し、登録されているすべてのサンプルデータを取得する(ステップS400)。ステップS410では、それらのパラメータ値pの中から判別関数の説明変数として組み入れるパラメータ値pを選択する。すなわち、上述の距離判別分析に用いる判定基準を作成する際には全てのパラメータを用いたが、線形判別分析に用いる判定基準作成においては、全パラメータのうち、良品と不良品の度数分布が良く分離するパラメータ値pを選択し、それらを判別関数の説明変数として採用する。
【0058】
なお、本実施形態では、パラメータ値pの中から判別関数に用いるパラメータを選択するに当たり、他のいずれかのパラメータとの相関の強さを示す値が所定の大きさ以上となるパラメータを非使用パラメータとして予め排除しておき、他のパラメータとの相関が比較的低いパラメータの中からのみ選択するようにしている。これにより、判別関数の多重共線性を除去するようにしている。具体的には、各パラメータ相互の相関の強さを定量化した相関係数を算出し、相関係数が所定値以上になるパラメータの数を良カテゴリーと否カテゴリーとのそれぞれについて集計し、それらの集計の合計値が大きいパラメータを非使用パラメータにする処理を繰り返す。これにより、相関係数が一定値以上になるパラメータが順に排除されていき、最終的には一定値未満の相関係数となるパラメータのみが残る。
【0059】
上述のようにして選別されたパラメータの中から判別関数に用いるパラメータを選択する。このパラメータの選択においては、例えば、総当たり法、前進選択法、後退消去法、逐次法等を採用して、良否の度数分布を良く分離する特定のパラメータを選択する。本実施形態においては、総当たり法により全てのパラメータの組み合わせを求め、良否の度数分布を最も良く分離する組合せを選択するようにしている。次に、これらのパラメータを変数とした判別関数をステップS420にて算出する。判別関数は、
【数4】

で表現される。なお、ここで、aは係数、xは各パラメータが代入される変数、nは選択されたパラメータの数である。上記判別関数は各パラメータ値を変数として有しており、この判別関数により変数"Z"が与えられる。なお、選択されるパラメータ値pは、「はんだ無」、「部品浮き」、「部品欠品」、「部品位置ずれ」などの検査項目毎に異なるものを選択し、それぞれについての判別関数が算出される。
【0060】
判別関数は、当該Zについて上記良カテゴリーと否カテゴリーとの度数分布図を作成した際に両者を最も分離するようなZを与えるように上記係数が決定されることによって算出され、例えば、下記式(5)における相関比ηを最大にする係数を決定して算出することができる。
【数5】

なお、上記式(5)でlは良カテゴリーあるいは否カテゴリーを識別する識別符号であり、nlはカテゴリー毎のサンプル数であり、上部に直線が付されたxは総平均である。
【0061】
上記式(5)において、相関比ηが最大になると全平方和Sと群間平方和Sの比が最大になる。この状態においては両カテゴリーの群間分散がなるべく大きく(各カテゴリーの平均がなるべく離れる)、各カテゴリーの分散がなるべく小さくなる。したがって、判別関数に対する度数分布においては両カテゴリーが非常に良く分離する。なお、以上のような判別関数の算出は、現代数学社1983年5月1日初版発行、田中豊・脇本和昌著「多変量統計解析法」等に詳述されている。判別関数算出部SP31が以上のようにして各係数aを算出すると、当該係数およびパラメータを示すデータを判別関数データとしてHDD34に保存する。
【0062】
上述のようにして良カテゴリーと否カテゴリーとを最も分離するようなZを与える判別関数が算出されると、線形判別閾値算出部SP32は、判別関数に対する各カテゴリーの度数分布図を作成する(ステップS430)。すなわち、上記パラメータ値データと良否判定結果データとを取得し、判別関数の変数として規定されたパラメータにサンプルの各パラメータ値を代入してZの値を算出し、サンプルデータテーブル34dに登録された目視による良否判定に基づいて良否別に度数を計測して度数分布図を作成する。
【0063】
ステップS440では、図13のように作成された度数分布図において、良否のカテゴリー別にサンプルについての度数平均と標準偏差を算出する。同図において判別関数Z=0が両カテゴリーの度数平均の中心に位置しており、否カテゴリーの度数平均を"Adc"、良カテゴリーの度数平均を"−Adc"と示している。また、否カテゴリーの標準偏差をσ、良カテゴリーの標準偏差をσとして示している。
【0064】
ステップS440にてサンプルについての度数平均および標準偏差を算出すると、ステップS450にて入力部38での流出率入力を受け付ける。本実施形態における線形判別分析判定基準作成処理では入力部38によって流出率を入力できるようになっており、この流出率に基づいて閾値を決定する。すなわち、流出率は良否判定対象が不良であるにもかかわらず良判定してしまうことによって、不良品が検出されることなく流出する確率であり、否カテゴリーの標準偏差σによって算出することができる。
【0065】
上述のように、標準偏差によれば、正規分布において、変数が度数平均と標準偏差との間に含まれる確率あるいは変数が標準偏差より外側の裾部分に含まれる確率を容易に特定することができる。そしてこの場合、否カテゴリーの度数分布に基づいて算出された標準偏差σを定数倍(β倍)することによって、入力された流出率にすることができる。なお、ステップS450においては、流出率自体の入力を受け付けても良いし、標準偏差に対して乗じる係数の入力を受け付けても良いし、予め保存された流出率データ(あるいは標準偏差データ)に基づいて流出率を特定しても良い。
【0066】
いずれにしても、ステップS450にて流出率を受け付けてその値を特定すると、ステップS460においては当該流出率を与えるような線形判別分析の閾値Tdcを算出して仮決定する。図13に示す例では、Tdc=Adc−βσにて閾値Tdcを仮決定している。本実施形態においては、流出率の管理に加えて見過ぎ率の管理をも実施しており、この意味でステップS460の閾値Tdcは仮決定された値である。見過ぎ率は良否判定対象が良品であるにもかかわらず不良判定がなされることによって、いわば過剰に閾値を厳しくしている状況(見過ぎ)が発生する確率であり、良カテゴリーの標準偏差σによって算出することができる。
【0067】
本実施形態においては、ステップS470にて見過ぎ率データを取得し、(Tdc+Adc)/σが所定の係数γより大きいか否かを判別して、上記仮決定された閾値Tdcが良カテゴリーの度数平均からその標準偏差σのγ倍より遠いか否かを判別する。同ステップS470にて(Tdc+Adc)/σがγより大きいと判別されたときには上記仮決定された閾値Tdcが流出率と見過ぎ率との双方から十分な値であるとして、閾値Tdcを閾値データhとしてHDD34に保存する(ステップS480)。ステップS470にて(Tdc+Adc)/σがγより大きいと判別されないときには、見過ぎ率が高いとしてパラメータの再決定を実施する。
【0068】
すなわち、良否判定対象の形状について良否を適正に判定できるパラメータが得られてなかったとしてパラメータ選択を実施し、上記の流出率と見過ぎ率を満足するパラメータを決定する。この再決定を行うことによって、十分な流出率および見過ぎ率を確保できない状態で良否判定装置の運用を開始してしまうことを防止することができる。また、ノウハウの蓄積をしなくても高性能で装置の運用を開始することができる。なお、本実施形態では見過ぎ率データを予めHDD34に保存していたが、むろん、入力部38を介してこの見過ぎ率を特定するための値を入力させる構成等を採用可能である。また、本実施形態では、前記特許文献2の実施例のように度数平均および標準偏差を算出し、これらに基づいて所定の流出率となるように線形判別閾値を設定したが、良否のカテゴリーの度数分布が十分に分離でき、閾値が各カテゴリーの度数平均から4σ以上の値に設定できるパラメータが選択できた場合には、特許文献1の実施例のように線形判別分析における判別関数の本来の閾値であるところの各度数平均の中間値を閾値として採用してもよい。
【0069】
次に、実運用時の良否判定処理について説明する。図14は、実運用時の良否判定処理の流れを示している。なお、ステップS530までは、上記予備良否判定と同様に、サンプルデータ登録処理のステップS130までと同様であるため説明を省略する。
図14のステップS540では、予め算出されている各判別関数に、ステップS530で取得したパラメータ値のうちの上記で選択されたパラメータの値を代入して判別関数毎の変数Zを算出する。そして、ステップS550において、線形判別良否判定部SP33は、算出された判別関数毎の変数Zの値と、各判別関数に対応する線形判別閾値Tdcとを比較する。各変数Zが各閾値Tdcより大きいと判別された場合は、ステップS585にて、各変数Zの当該検査対象を否判定する。各変数Zがそれらに対応する各閾値Tdcより小さいと判別された場合は、ステップS560へ移行する。
【0070】
ステップS560では、距離算出部SP22によりパラメータ値p,p・・p・・p(h−1),pで定義されるパラメータ空間内の座標X={p,p・・p・・p(h−1),p}と、良カテゴリーの中心値Cとの距離CXを算出する。そして、ステップS570において、距離判別良否判定部SP24は、ステップS560にて算出した座標Xの良カテゴリーの中心値Cに対する距離CXと、予め判定基準として算出されている距離判別閾値Tdsとを比較する。距離CXが閾値Tdsよりも小さいと判別された場合は、ステップS580にて良判定する。距離CXが閾値Tdsよりも小さいと判別されなかった場合は、ステップS585にて否判定する。
【0071】
最後に、この検査対象のはんだ52についての良否の判定結果を記憶する(ステップS590)。なお、この良否判定結果とともに、当該検査対象のパラメータ値についても記憶させるようにしてもよいし、否判定された検査対象についてはその不良原因についても併せて記憶させるようにしてもよい。これらは、データとして出力したり、サンプルデータとしてサンプルデータテーブル34dに追加登録したりするようにしてもよい。不良原因の記憶に際しては、不良と判別された際の判定基準に基づいて自動的に記憶するようにしてもよいし、上述の予備良否判定処理のように、目視により特定した不良原因を、入力部38を介して入力して記憶するようにしてもよい。なお、サンプルデータとして追加登録される場合には、各判定基準を修正する際に用いることができる。
【0072】
このように、本良否判定処理では、線形判別分析に用いる判別関数および閾値は不良原因別に算出されるので、検査対象のはんだ52が特定の不良原因を有する不良品である場合には、線形判別分析において確実に否カテゴリーであることを判別することができる。一方、距離判別分析では、良属性を有する要素で構成されるクラスターの位置と検査対象に対応する要素の位置とに基づいて良否を判別するので、線形判別分析で見逃された特定不良原因以外の不良原因を有する不良品についても正しく良否を判別することができる。すなわち、線形判別分析と距離判別分析とを共用することにより、両判別分析方式の特徴を生かすとともに、互いの欠点を補完することのできる判定精度に優れた良否判定を実現できる。
【0073】
なお、本実施形態では、予備良否判定処理にてサンプルデータを蓄積し、それらを用いて作成した線形判別分析の判定基準および距離判別分析の判定基準により良否判定を実施するようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、予め良否属性が既知な必要数のサンプルを用意できるのであれば、サンプルデータ登録処理にてそれらのサンプルデータを蓄積し、予備良否判定処理を経ることなく線形判別分析および距離判別分析による良否判定処理を実施するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10;良否判定装置、20;撮像ユニット、21;コントローラ、21a;画像メモリ(VRAM)、22;カメラ、22a;光学系、22b;CCD撮像板、23;X−Yステージ、24;リングライト、30;コンピュータ、31;CPU、32;RAM、33;ビデオメモリ(VRAM)、33a;撮像イメージ、34;ハードディスク(HDD)、34a;オペレーティングシステム(OS)、34b;良否判定プログラム、34c;基板データ、34d;サンプルデータテーブル、35;ビデオインターフェイス、36;表示部、37;入力インターフェイス、38;入力部、39;I/O、50;実装基板、51;チップ部品、52;はんだ、SP1;撮像データ入力部、SP11;撮像実行部、SP12;撮像イメージ取得部、SP13;パラメータ算出部、SP2;距離判別分析部、SP21;中心値算出部、SP22;距離算出部、SP23;距離判別閾値設定部、SP24;距離判別良否判定部、SP3;線形判別分析部、SP31;判別関数算出部、SP32;線形判別閾値算出部、SP33;線形判別良否判定部、SP4;目視データ入力部、SP5;表示制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象から良否判定要因となる複数のパラメータを取得するパラメータ取得手段と、
良否属性が既知の複数のサンプルに対応する前記複数のパラメータから良カテゴリーと否カテゴリーとの度数分布を分離させる変数を与えるように選択された複数のパラメータからなる判別関数を求め、前記度数分布に基づいて設定される判定基準としての前記判別関数の線形判別閾値と、前記判別関数に検査対象に対応するパラメータを代入して得られた算出結果と、を比較して当該検査対象の良否のカテゴリーを判別する線形判別分析手段と、
前記複数のパラメータが投射されるパラメータ空間において、良属性を有する複数のサンプルに対応する要素によって構成された良クラスターの中心位置に対する距離として設定される判定基準としての距離判別閾値と、前記中心位置に対する検査対象に対応する要素の距離と、を比較して当該検査対象の良否のカテゴリーを判別する距離判別分析手段と、
前記線形判別分析手段により良のカテゴリーに判別された検査対象について前記距離判別分析手段により良否のカテゴリーを判別し、前記線形判別分析手段および前記距離判別分析手段のいずれにおいても良のカテゴリーに判別された場合にのみ良判定する良否判定手段と、を備えることを特徴とする良否判定装置。
【請求項2】
目視により検査対象の良否のカテゴリーを判別する目視判別手段と、
前記距離判別分析手段により否のカテゴリーに判別された検査対象について前記目視判別手段により良否のカテゴリーを判別し、前記距離判別分析手段および前記目視判別手段のいずれにおいても否のカテゴリーに判別された場合にのみ否判定する予備良否判定手段と、
前記予備良否判定手段により良否判定された検査対象に対応する前記複数のパラメータとその良否判定結果とをサンプルデータとして蓄積するサンプルデータ蓄積手段と、を更に備え、
前記良否判定手段は、
前記線形判別分析手段が、前記サンプルデータに基づいて設定される前記線形判別閾値により良否のカテゴリーを判別し、
前記距離判別分析手段が、前記サンプルデータのうち良のカテゴリーに判別されたデータに基づいて設定される前記距離判別閾値により良否のカテゴリーを判別し、これらの判別結果に基づいて当該検査対象の良否を判定する請求項1記載の良否判定装置。
【請求項3】
検査対象から良否判定要因となる複数のパラメータを取得するパラメータ取得工程と、
良否属性が既知の複数のサンプルに対応する前記複数のパラメータから良カテゴリーと否カテゴリーとの度数分布を分離させる変数を与えるように選択された複数のパラメータからなる判別関数を求め、前記度数分布に基づいて設定される判定基準としての前記判別関数の線形判別閾値と、前記判別関数に検査対象に対応するパラメータを代入して得られた算出結果と、を比較して当該検査対象の良否のカテゴリーを判別する線形判別分析工程と、
前記複数のパラメータが投射されるパラメータ空間において、良属性を有する複数のサンプルに対応する要素によって構成された良クラスターの中心位置に対する距離として設定される判定基準としての距離判別閾値と、前記中心位置に対する検査対象に対応する要素の距離と、を比較して当該検査対象の良否のカテゴリーを判別する距離判別分析工程と、
前記線形判別分析工程により良のカテゴリーに判別された検査対象について前記距離判別分析工程により良否のカテゴリーを判別し、前記線形判別分析工程および前記距離判別分析工程のいずれにおいても良のカテゴリーに判別された場合にのみ良判定する良否判定工程と、を備えることを特徴とする良否判定方法。

【請求項4】
目視により検査対象の良否のカテゴリーを判別する目視判別工程と、
前記距離判別分析工程により否のカテゴリーに判別された検査対象について前記目視判別工程により良否のカテゴリーを判別し、前記距離判別分析工程および前記目視判別工程のいずれにおいても否のカテゴリーに判別された場合にのみ否判定する予備良否判定工程と、
前記予備良否判定工程により良否判定された検査対象に対応する前記複数のパラメータとその良否判定結果とをサンプルデータとして蓄積するサンプルデータ蓄積工程と、を更に備え、
前記良否判定工程は、
前記線形判別分析工程が、前記サンプルデータに基づいて設定される前記線形判別閾値により良否のカテゴリーを判別し、
前記距離判別分析工程が、前記サンプルデータのうち良のカテゴリーに判別されたデータに基づいて設定される前記距離判別閾値により良否のカテゴリーを判別し、これらの判別結果に基づいて当該検査対象の良否を判定する請求項3記載の良否判定方法。
【請求項5】
検査対象から良否判定要因となる複数のパラメータを取得するパラメータ取得機能と、
良否属性が既知の複数のサンプルに対応する前記複数のパラメータから良カテゴリーと否カテゴリーとの度数分布を分離させる変数を与えるように選択された複数のパラメータからなる判別関数を求め、前記度数分布に基づいて設定される判定基準としての前記判別関数の線形判別閾値と、前記判別関数に検査対象に対応するパラメータを代入して得られた算出結果と、を比較して当該検査対象の良否のカテゴリーを判別する線形判別分析機能と、
前記複数のパラメータが投射されるパラメータ空間において、良属性を有する複数のサンプルに対応する要素によって構成された良クラスターの中心位置に対する距離として設定される判定基準としての距離判別閾値と、前記中心位置に対する検査対象に対応する要素の距離と、を比較して当該検査対象の良否のカテゴリーを判別する距離判別分析機能と、
前記線形判別分析機能により良のカテゴリーに判別された検査対象について前記距離判別分析機能により良否のカテゴリーを判別し、前記線形判別分析機能および前記距離判別分析機能のいずれにおいても良のカテゴリーに判別された場合にのみ良判定する良否判定機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とする良否判定プログラム。
【請求項6】
目視により検査対象の良否のカテゴリーを判別する目視判別機能と、
前記距離判別分析機能により否のカテゴリーに判別された検査対象について前記目視判別機能により良否のカテゴリーを判別し、前記距離判別分析機能および前記目視判別機能のいずれにおいても否のカテゴリーに判別された場合にのみ否判定する予備良否判定機能と、
前記予備良否判定機能により良否判定された検査対象に対応する前記複数のパラメータとその良否判定結果とをサンプルデータとして蓄積するサンプルデータ蓄積機能と、を更に備え、
前記良否判定機能は、
前記線形判別分析機能が、前記サンプルデータに基づいて設定される前記線形判別閾値により良否のカテゴリーを判別し、
前記距離判別分析機能が、前記サンプルデータのうち良のカテゴリーに判別されたデータに基づいて設定される前記距離判別閾値により良否のカテゴリーを判別し、これらの判別結果に基づいて当該検査対象の良否を判定する請求項5記載の良否判定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−112572(P2011−112572A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270705(P2009−270705)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】