説明

良好な水溶解性を有する作用物質のための作用物質の制御送達を有する医薬組成物

本発明は、a)作用物質を有し、有機酸および/または有機酸の塩を有するコアと;b)コアを包囲するコーティングであって、カチオン性基またはアニオン性基15質量%以下を有する(メタ)アクリレートコポリマーから構成され、アクリル酸またはメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステル93〜98質量%とアルキル基中に第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマー7〜2質量%とのラジカル重合した単位から構成される(メタ)アクリレートコポリマーを少なくとも60質量%含むポリマー含有量を備えるコーティングとを含み、作用物質の水溶解性が20℃で少なくとも10g/lであり、コーティングが1〜50μmの平均粒径を有する二酸化ケイ素粒子を含むこととを特徴とする、医薬製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な水溶解性を有する作用物質のための作用物質の制御放出を有する医薬組成物の分野に関する。
【0002】
背景技術
欧州特許公開公報第0463877号は、活性医薬成分を有するコアと、撥水性塩およびエチルアクリレート、メチルメタクリレート、ならびにトリメチルアンモニウムエチルメタクリレート−クロリドの水不溶性コポリマーを備える単層コーティングフィルムとからなる、作用物質の遅延放出を有する医薬組成物を記載している。撥水性塩は、例えば、ステアリン酸Caまたはステアリン酸Mgでよい。シグモイド型の放出プロットが得られる。
【0003】
欧州特許公開公報第0225085号、欧州特許公開公報第0122077号、および欧州特許公開公報第0123470号は、有機溶液による種々のコーティングを備える薬物コアにおける有機酸の使用を記載している。本質的に、シグモイド型放出プロファイルが生じる。欧州特許公開公報第0436370号は、活性医薬成分および有機酸を有するコアと、水性噴霧によって塗布された、エチルアクリレートとメチルメタクリレートとトリメチルアンモニウムエチルメタクリレート−クロリドとのコポリマーである外側コーティングフィルムとからなる、作用物質の遅延放出を有する医薬組成物を記載している。この例でも、シグモイド型放出プロットが同様に得られる。
【0004】
欧州特許第1117387号は、欧州特許公開公報第0436370号と類似のシステムを記載している。本質的な違いは、塩形態での有機酸の使用であり、このことによって、具体的には遅延期の持続時間、およびシグモイド型放出プロットの勾配に有益な影響を及ぼすことが可能である。記載されている可能な加工助剤は、とりわけ粉砕シリカおよび細孔形成剤である。
【0005】
解決課題及び解決手段
多数の剤形および作用物質に対して、作用物質の遅延放出(遅延期)を伴う開始期、それに続く主要となる放出期(パルス期)、および消滅期を有するシグモイド型放出プロファイルを有することは治療的に価値がある。一般的な目的は、遅延期における作用物質放出は可能な限り低く、それに続くパルス期における作用物質放出は可能な限り迅速なことである。この目標は、部分的に、欧州特許公開公報第0436370号および欧州特許第1117387号の技術的教示によって達成される。欧州特許第1117387号においては、特に酢酸ナトリウムを用いて、良好な結果が得られている。しかし、改良は引き続き必要とされている。課題の1つは、欧州特許公開公報第0436370号および欧州特許第1117387号において開示されているシグモイド型作用物質放出を有する医薬製剤をさらに発展させて、上述の目標に近付くことであると考えられていた。
【0006】
この課題は、
a)作用物質を有し、また有機酸および/または有機酸の塩を有するコアと、
b)コアを包むコーティングであって、カチオン性基またはアニオン性基15質量%以下を有し、アクリル酸またはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステル93〜98質量%とアルキル基中に第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマー7〜2質量%とのラジカル重合した単位から構成される(メタ)アクリレートコポリマーを少なくとも60質量%含む、(メタ)アクリレートコポリマーのポリマー含有量を備えるコーティングとを含み、
作用物質が20℃で少なくとも10g/lの水溶解性を有し、
コーティングが1〜50μmの平均粒径を有する二酸化ケイ素粒子を含むことを特徴とする、医薬製剤によって解決されている。
【0007】
本発明の構成
コア(a)
最も単純な例では、コアは、作用物質と有機酸および/または有機酸の塩のみから構成されるが、通常は、コアは、例えばノンパレイユなどの担体、および例えばコロイド状シリカまたはポリビニルピロリドン(PVP)などの医薬賦形剤をさらに含む。
【0008】
コア(a)は、例えば
・ コアの質量に基づき、97.5〜2.5質量%、好ましくは80〜5質量%の量の作用物質
・ コアの質量に基づき、2.5〜97.5質量%、好ましくは5〜80質量%、具体的には10〜50質量%の量の有機酸および/または1つ以上の有機酸の塩
・ 場合によっては、コアの質量に基づき、0〜95質量%、好ましくは10〜50質量%の量の医薬賦形剤
・ 場合によっては、コアの質量の0〜95質量%、好ましくは10〜50質量%の比率の担体
からなる。
【0009】
コアは、例えば、直接圧縮、押し出し、およびそれに続く球状化、湿式もしくは乾式造粒、または直接ペレット化(例えば、ディスク上)によって、あるいは作用物質を含まないビーズ(ノンパレイユ)上もしくは作用物質を含む粒子上に粉末を結合させること(粉末積層)によって、製造することができる。
【0010】
作用物質に加えて含有される医薬賦形剤は、例えば、セルロースおよびその誘導体、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、(メタ)アクリレート、デンプンおよびその誘導体、または糖類などの結合剤でもよい。
【0011】
コアは、均質であっても、あるいは積層構造を有してもよい。積層構造を有する場合、作用物質は、好ましくは外層に位置する。有機酸および/または有機酸の塩がコアの外層を形成することは、特に好ましい。
【0012】
有機酸
使用される有機酸は、毒物学的に許容され、薬物中に使用できなければならない。好ましい種類は、個別の処方物によって異なる。クエン酸、フマル酸、ギ酸、コハク酸、酢酸、マレイン酸、酒石酸、グルタル酸、または乳酸などの有機酸が好ましい。
【0013】
コハク酸は、本発明の目的に特に適している。クエン酸は、原則的には同様に適しているが、生理的条件にほぼ相当する緩衝媒質中で得られる放出プロファイルは、コハク酸を用いた場合ほど急勾配ではない。酢酸は、時に安定性の問題を導くことがあるが、これは、剤形の保存中に生じることがある。コハク酸の使用では、このような問題はこれまでのところ知られていない。
【0014】
酸の種類は、作用物質放出プロット、特にシグモイド型放出プロットにおける勾配を制御する。
【0015】
有機酸は、好ましくはコアの外層として、結合剤で結合されて、本発明による処方物中に存在してよい。これらは、溶液の噴霧によって、あるいは結合剤溶液を同時に添加しながらの粉末塗布によって、塗布することができる。
【0016】
しかしながら、個々の場合により、作用物質が有機酸との混合物の形で塗布される、あるいは作用物質層と塩層との間にシーリング層が適用される変形形態もまた価値がある。有機酸は、外層を形成するように、最後にコアに塗布することもできる。
【0017】
コアの質量の比率としての有機酸の量は、2.5〜97.5質量%、好ましくは5〜80質量%、具体的には10〜50質量%でよい。
【0018】
有機酸の塩
有機酸の塩は、有機酸よりも好ましい。ほとんどの場合、塩形態の有機酸を使用すると、有機酸と比較して、遅延期の作用物質放出が少なく、その後に迅速な作用物質放出が見られる。
【0019】
使用される有機酸の塩は、毒物学的に許容され、薬物中に使用できなければならない。アルカリ金属塩(アンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム)が好ましい。好ましい種類は、個別の処方物によって異なるが、本発明による官能基の他に、イオンの薬理学的作用も考慮しなければならない。コハク酸、クエン酸、フマル酸、ギ酸、酢酸、マレイン酸、酒石酸、グルタル酸、または乳酸などの弱い有機酸の塩が好ましい。
【0020】
コハク酸ナトリウムは、本発明の目的に特に適している。クエン酸ナトリウムは、原則的には同様に適しているが、生理的条件にほぼ相当する緩衝媒質中で得られる放出プロファイルは、コハク酸ナトリウムを用いた場合ほど急勾配ではない。酢酸ナトリウムは、時に安定性の問題を導くことがあるが、これは、剤形の保存中に生じることがある。コハク酸ナトリウムの使用では、このような問題はこれまでのところ知られていない。
【0021】
酸の種類は、作用物質放出用量プロット、特にシグモイド型放出プロットにおける勾配を制御する。
【0022】
塩は、コアの外層として、結合剤で結合されて、本発明による処方物中に存在してよい。これらは、溶液の噴霧によって、あるいは結合剤溶液を同時に添加しながらの粉末塗布によって、塗布することができる。
【0023】
しかしながら、個々の場合により、作用物質が塩との混合物の形で塗布される、あるいは作用物質層と塩層との間にシーリング層が適用される変形形態もまた価値がある。有機酸の塩は、外層を形成するように、最後にコアに塗布することもできる。
【0024】
コアの質量の比率としての有機酸の塩の量は、2.5〜97.5質量%、好ましくは5〜80質量%、具体的には10〜50質量%でよい。
【0025】
コーティングb)
コーティングb)は、1つ以上の(メタ)アクリレートコポリマー、SiO2粒子、および場合により、例えば可塑剤、顔料、湿潤剤、離型剤などの従来の医薬賦形剤からなる。外側コーティングは、好ましくは、コアを直接包み、コアとコーティングフィルムとの間にはさらなる層は存在しない。
【0026】
コーティングのポリマー成分は、含有されるSiO2粒子、および例えば適切な場合に存在する可塑剤などのさらなる賦形剤とともにフィルムに加工され、連続したコーティングまたはコーティングフィルムを形成する。コーティングまたはコーティングフィルムは、全体として、コア中に含まれる有機酸および/またはその塩と共に、作用物質送達を制御する。
【0027】
コーティングb)のポリマー含有量
コーティングb)のポリマー含有量は、アクリル酸またはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステル93〜98質量%とアルキル基中に第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマー7〜2質量%とからなるラジカル重合したモノマー単位からの(メタ)アクリレートコポリマー(EUDRAGIT(登録商標) RS型)1つまたは場合によっては複数を少なくとも60質量%、好ましくは85〜95質量%含む。コーティングのポリマー含有量は、場合により、前述のポリマー型100%からなってもよい。
【0028】
コーティングのポリマー含有量は、コアの質量に基づき、好ましくは10〜200質量%、好ましくは20〜100質量%になってよい。
【0029】
コーティングのポリマー含有量は、コーティングに基づき、少なくとも50質量%になるべきである。コーティングは、場合により、前記(メタ)アクリレートコポリマーとSiO2含有量のみからなってもよい。しかしながら、通常はコーティングは、SiO2含有量に加え、例えば可塑剤または顔料などの薬学的に常用の添加剤をさらに含むであろう。
【0030】
本発明の原理は、コアの必須成分とコーティングの必須成分との推定される相互作用に基づいている。
【0031】
本発明による効果は、驚くべきことに、少なくとも10g/l、好ましくは少なくとも30g/l、より好ましくは少なくとも100g/lの水溶解性を有する作用物質を用いてのみ生じる。この相互作用を確実にするためには、前記(メタ)アクリレートコポリマー少なくとも50質量%をコーティングの構成に含んで、所望の相互作用を達成する。かかる(メタ)アクリレートコポリマーは、市販されており、徐放性コーティングに長い間使用されている。これらは、事実上水不溶性である。これらは、単独でもあるいは他の(メタ)アクリレートコポリマーとの混合物の形でも使用できる。
【0032】
本発明によって、シグモイド型作用物質放出特性を達成するためには、コーティングb)のポリマー含有量は、前記コポリマー型(Eudragit(登録商標) RS型)少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも85質量%、あるいは100質量%からなるべきである。
【0033】
好ましいアクリル酸またはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステルは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、およびメチルメタクリレートである。
【0034】
特に好ましい第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート−クロリドである。
【0035】
相当するコポリマーは、例えば、メチルメタクリレート50〜70質量%、エチルアクリレート20〜40質量%、トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート−クロリド7〜2質量%から構成することができる。
【0036】
好ましいコポリマーは、メチルメタクリレート65質量%、エチルアクリレート30質量%、および2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート−クロリド5質量%を含む(EUDRAGIT(登録商標) RS)。
【0037】
(メタ)アクリレートコポリマーの混合物
コーティングのポリマー含有量は、(メタ)アクリレートコポリマーの混合物の形態であってもよい。加えて混合物に使用される(メタ)アクリレートコポリマーは、15質量%以下のカチオン性基またはアニオン性基を有するべきである。アルキル基中に15質量%を超えるカチオン性基またはアニオン性基、すなわち塩基性基または酸性基を含有すると、これらの要素の互いとの相互作用は、望ましくないあるいはほとんど予測できないような影響を受ける。
【0038】
混合物の場合、アクリル酸またはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステル93〜98質量%と、アルキル基中に第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマー7〜2質量%とからなるラジカル重合したモノマー単位からの(メタ)アクリレートコポリマー(EUDRAGIT(登録商標) RS型)の比率は、それぞれコアの質量に基づき、少なくとも60質量%、好ましくは85〜95質量%である。混ぜられるポリマーの比率は、最大40質量%、好ましくは5〜15質量%であり、混合されたポリマーの比率は合計100質量%となる。
【0039】
混合物に適した(メタ)アクリレートコポリマーは、例えば、85から93未満の質量%のアクリル酸またはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステルと、7を上回り15までの質量%のアルキル基中に第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマーとのラジカル重合したモノマー単位から構成されてもよい。このような(メタ)アクリレートコポリマーは、市販されており、徐放性コーティングに長い間使用されている(EUDRAGIT(登録商標) RL型)。混合物中の比率は、最大40質量%、好ましくは5〜15質量%としてよい。
【0040】
混合物に特に適したコポリマーは、例えば、メチルメタクリレート60質量%、エチルアクリレート30質量%、および2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート−クロリド10質量%を含む(EUDRAGIT(登録商標) RL)。
【0041】
混合物にさらに適した(メタ)アクリレートコポリマーは、95〜100質量%、具体的には95を上回り100までの質量%のアクリル酸またはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステルと、最大5質量%、または0〜5質量%、具体的には0から5未満の質量%のアクリル酸またはメタクリル酸とからなる。このような(メタ)アクリレートコポリマーは、市販されている(EUDRAGIT(登録商標) NE型)。
【0042】
外側コーティングフィルムb)の(メタ)アクリレートコポリマー含有量は、例えば:
アクリル酸またはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステル93〜98質量%と、アルキル基中に第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマー2〜7質量%とからなる(メタ)アクリレートコポリマー60〜99質量%、好ましくは85〜95質量%と、
85から93未満の質量%のアクリル酸またはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステルと、7を上回り15までの質量%のアルキル基中に第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマーとからなる(メタ)アクリレートコポリマー1〜40質量%、好ましくは5〜15質量%と、
の混合物でもよい。
【0043】
好ましいアクリル酸またはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステルは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、およびメチルメタクリレートである。
【0044】
特に好ましい第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート−クロリドである。
【0045】
全般的な(メタ)アクリレートコポリマーの製造
(メタ)アクリレートコポリマーは、自体公知の方法で、ラジカル塊状重合、溶液重合、パール重合、または乳化重合によって得ることができる。これらは、例えば、押出し顆粒、粉砕粉末、溶液、または分散液の形態であってもよい。
【0046】
コーティング
ポリマーの適用は、コアのサイズおよび表面、作用物質の溶解性、ならびに所望の放出プロファイルによって異なる。コアの質量に基づくコーティングのポリマー含有量は、10〜200質量%、好ましくは15〜100質量%であってよい。
【0047】
コーティングは、複数の層の形で、あるいは混合物として塗布することができる。ポリマーの混合物は、放出プロファイルの第2段階において特定の傾斜を開始させる。コーティング中の第4級アンモニウム基含有量は、溶解した物質の透過性と、それに従い拡散速度とを制御する(McGinity, Ed., Aqueous Polymeric Coatings for Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Dekker, Inc.、第4章(208〜216ページ))。親水性の第4級アンモニウム基の比率がより高いことは、放出速度がより速いことを意味する。放出プロファイルの第2段階において作用物質送達を制御することのさらなる可能性は、このようにして実現される。
【0048】
追加外層
本発明による製剤は、メタクリル酸残基5〜60質量%を含む(メタ)アクリレートコポリマーでさらに包んでもよい。このようにすると、胃液耐性を有するが、腸液に可溶性の被膜を有する製剤を提供することが可能である。
【0049】
また、メタクリル酸40〜60質量%、およびメチルメタクリレート60〜40質量%またはエチルアクリレート60〜40質量%からなるアニオン性(メタ)アクリレートコポリマー(EUDRAGIT(登録商標) LまたはEDDRAGIT(登録商標) L100−55型)も好適である。
【0050】
EUDRAGIT(登録商標) Lは、メチルメタクリレート50質量%とメタクリル酸50質量%のコポリマーである。
【0051】
EUDRAGIT(登録商標) L 100−55は、エチルアクリレート50質量%とメタクリル酸50質量%のコポリマーである。EUDRAGIT(登録商標) L 30D−55は、EUDRAGIT(登録商標) L 100−55を30質量%含む分散液である。
【0052】
同様に好適なのは、メタクリル酸20〜40質量%とメチルメタクリレート80〜60質量%から構成されるアニオン性(メタ)アクリレートコポリマー(EUDRAGIT(登録商標) S型)である。
【0053】
特に好適なのは、メチルメタクリレート10〜30質量%、メチルアクリレート50〜70質量%、およびメタクリル酸5〜15質量%、好ましくは8〜12質量%からなる(メタ)アクリレートコポリマーである(EUDRAGIT(登録商標) FS型)。
【0054】
EUDRAGIT(登録商標) FSは、メチルメタクリレート25質量%、メチルアクリレート65質量%、およびメタクリル酸10質量%のコポリマーである。EUDRAGIT(登録商標) FS 30 Dは、EUDRAGIT(登録商標) FSを30質量%含む分散液である。
【0055】
また、
メタクリル酸および/またはアクリル酸20〜34質量%と、
メチルアクリレート20〜69質量%と、
エチルアクリレート0〜40質量%、および/または、場合により、
ビニル共重合が可能なさらなるモノマー0〜10質量%と、
から構成される、コポリマー(国際公開第2003/072087号を参照)は、ISO 11357−2の下位条項3.3.3によるコポリマーのガラス転移温度が60℃以下であるという条件で、本発明の目的に適している。この(メタ)アクリレートコポリマーは、破断特性でのその良好な伸びにより、ペレットを圧縮して錠剤にするのに特に適している。
【0056】
このコポリマーは、具体的には、
メタクリル酸またはアクリル酸(メタクリル酸の方が好ましい)20〜34質量%、好ましくは25〜33質量%、特に好ましくは28〜32質量%と、
メチルアクリレート20〜69質量%、好ましくは35〜65質量%、特に好ましくは35〜55質量%と、場合により、
エチルアクリレート0〜40質量%、好ましくは5〜35質量%、特に好ましくは15〜35質量%とが一緒にラジカル重合した単位からなり、ただし、ISO 11357−2の下位条項3.3.3によるコポリマーのガラス転移温度(Tmg)(可塑剤を添加せず、残留モノマー含有量(REMO)100ppm未満、加熱速度10℃/分、窒素雰囲気で測定)は60℃以下、好ましくは40〜60℃、特に好ましくは45〜55℃である。
【0057】
コポリマーは、好ましくは、実質的にあるいは独占的に、上述の定量比のモノマー(メタクリル酸、メチルアクリレート、およびエチルアクリレート)からなる。
【0058】
しかしながら、本質的特性を損なうことなく、0から10までの範囲の質量%、例えば1〜5質量%の少量のビニル共重合が可能なさらなるモノマー(例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、またはヒドロキシエチルメタクリレートなど)が含まれていることもまた可能である。
【0059】
前記コポリマーの混合物を使用して、特定の放出プロファイルまたは放出部位を調節することも可能である。
【0060】
本明細書において、ガラス転移温度とは、具体的には、ISO 11357−2の下位条項3.3.3に明記される中点温度(Tmg)を意味する。測定は、可塑剤と添加せず、残留モノマー含有量(REMO)100ppm未満で、加熱速度10℃/分、窒素雰囲気下で実施する。
【0061】
コポリマーは、自体公知の方法で、ラジカル塊状重合、溶液重合、パール重合、または乳化重合によって得られる。これらは、加工前に、適切な粉砕、乾燥、または噴霧プロセスにより、本発明による粒径範囲にしなければならない。これは押出して冷却したペレットを単に破砕するか、あるいはホットカットにより行うことができる。
【0062】
粉末の使用は、特にさらなる粉末または液体と混合する場合に有利なとなりうる。粉末を製造するのに適した装置の細目は当業者に周知であり、これには例えば、エアジェットミル、ピンディスクミル、コンパートメントミルがある。場合により、適当な篩過手順を含むことも可能である。産業用の大規模な量に適したミルは、例えば圧力約6barで作動される対向流ジェットミル(Multi No.4200)である。
【0063】
さらに、
メタクリル酸および/またはアクリル酸20〜33質量%と、
メチルアクリレート5〜30質量%と、
エチルアクリレート20〜40質量%と、
10を上回り30までの質量%のブチルメタクリレートと、
場合により、
ビニル共重合が可能なさらなるモノマー0〜10質量%とから構成され、モノマーの比率が合計100質量%になるコポリマー(国際公開第2004/096185号を参照)も、ISO 11357−2の下位条項3.3.3によるコポリマーのガラス転移温度(中点温度Tmg)が55〜70℃であるという条件で、本発明の目的に適している。この種類のコポリマーは、その力学的性質により、ペレットを圧縮して錠剤にするのに特に適している。
【0064】
前述のコポリマーは、具体的には、
メタクリル酸またはアクリル酸(メタクリル酸の方が好ましい)20〜33質量%、好ましくは25〜32質量%、特に好ましくは28〜31質量%と、
メチルアクリレート5〜30質量%、好ましくは10〜28質量%、特に好ましくは15〜25質量%と、
エチルアクリレート20〜40質量%、好ましくは25〜35質量%、特に好ましくは28〜32質量%と、
ブチルメタクリレート10を上回り30までの質量%、好ましくは15〜25質量%、特に好ましくは18〜22質量%とが一緒にラジカル重合した単位から構成され、このモノマー組成は、コポリマーのガラス転移温度が、55〜70℃、好ましくは59〜66℃、特に好ましくは60〜65℃となるように選択される。
【0065】
前記コポリマーの混合物を使用して、放出プロファイルまたは放出部位を調整することも可能である。
【0066】
本明細書において、ガラス転移温度とは、具体的には、ISO 11357−2の下位条項3.3.3に明記される中点温度(Tmg)を意味する。測定は、可塑剤と添加せず、残留モノマー含有量(REMO)100ppm未満で、加熱速度10℃/分、窒素雰囲気下で実施する。
【0067】
コポリマーは、好ましくは、実質的にあるいは独占的に、90、95、または99から100質量%までの範囲で、上述の定量比のモノマー(メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、およびブチルメタクリレート)からなる。
【0068】
しかしながら、必ずしも本質的特性を損なうことなく、0から10までの範囲の質量%、例えば1〜5質量%の少量のビニル共重合が可能なさらなるモノマー(例えば、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピロリドン、マロン酸ビニル、スチレン、ビニルアルコール、酢酸ビニル、および/またはそれらの誘導体など)が含まれていることもまた可能である。
【0069】
二酸化ケイ素粒子
コアを包むコーティングは、1〜50μmまでの範囲の平均粒径を有する二酸化ケイ素粒子を含む。コーティング中に含まれる二酸化ケイ素粒子は、粘着防止剤としての役割も担っている。本発明による効果、具体的にはパルス期を4時間未満に短縮する効果は、請求されているようにこの種類の粒子をコーティング中で使用した時に生じる。異なる平均粒径のSiO2粒子の使用時、あるいは例えばタルクまたはモノステアリン酸グリセロール(GMS)などの別の離型剤の単独での使用時には、驚くべきことに、本発明の有利な効果は生じないようである(実施例を参照)。
【0070】
コーティングは、例えばISO 13320−1によるレーザー回折によって測定できる平均粒径(d50)が、1〜50μm、好ましくは1〜30μm、特に好ましくは1〜10μmの二酸化ケイ素粒子(SiO2粒子)を含む。最良の結果は、例えばゾルゲルプロセスによって製造される、沈降および粉砕されたSiO2を用いて達成される。またこの種類の二酸化ケイ素は、ドイツ薬局方(DAB 1999)により、「Silicii dioxidium praecipitatum」として指定されている。もちろん、実証された医薬品質を有する、あるいは純度に関してDAB 1999の要件に適合する医薬品質を有する製品または二酸化ケイ素粒子が優先される。
【0071】
本発明の目的に不適切なのは、Aerosil(登録商標)タイプのコロイド状SiO2である。これは火炎プロセスによって製造され、通常は100nm未満の範囲の平均粒径を有する。ただし後者は、例えばコアを配合するための賦形剤としては、批判なく使用できる。
【0072】
二酸化ケイ素粒子の好ましい使用量は、コーティング中の(メタ)アクリレートコポリマーの乾燥質量に基づき、5〜50質量%、特に好ましくは10〜40質量%、また特に10〜30質量%のSiO2である。
【0073】
さらなる薬学的に常用の賦形剤
コアおよび/またはコーティングは、さらなる薬学的に常用の賦形剤を含んでもよい。
【0074】
さらなる添加剤は、具体的には加工助剤としての機能を果たし、信頼でき、かつ再現可能な製造プロセスと、優れた長期間の保存安定性とを確保することを目的としている。これらはコーティングの透過性に影響を与える可能性があり、このことは、場合により、追加的な制御要素として用いることができる。
【0075】
コアは、例えば、直接圧縮、押し出し、およびそれに続く球状化、湿式もしくは乾式造粒、または直接ペレット化(例えば、ディスク上)によって、あるいは作用物質非含有ビーズ(ノンパレイユ)上もしくは作用物質含有粒子上に粉末を結合させること(粉末積層)によって、製造することができる。作用物質に加えて存在する医薬賦形剤は、例えば、セルロースおよびその誘導体、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、(メタ)アクリレート、デンプンおよびその誘導体、または糖類などの結合剤でよい。
【0076】
− 可塑剤:
可塑剤は、具体的にはコーティング中またはコーティングの(メタ)アクリレートコポリマー中に存在してもよい。可塑剤として好適な物質は、通常は、分子量100〜20000を有し、分子中に、例えばヒドロキシル基、エステル基、またはアンモニウム基などの親水性基を1つ以上含む。これらはしばしば、室温で液体のエステル類:クエン酸エステル、フタル酸エステル、セバシン酸エステル、またはヒマシ油である。好適な可塑剤の例には、クエン酸トリエチルなどのクエン酸アルキル、グリセロールエステル、フタル酸アルキル、セバシン酸アルキル、ショ糖エステル、ソルビタンエステル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、およびポリエチレングリコール4000〜20000がある。好ましい可塑剤は、クエン酸トリエチルおよびクエン酸アセチルトリエチルである。
可塑剤は、コーティングの1つあるいは場合により複数のポリマーに基づき、例えば、5〜25質量%の量で存在してもよい。
【0077】
− 粘着防止剤:
コーティング中に含まれる二酸化ケイ素粒子は、粘着防止剤としての役割も担っている。従って、通常は、また好ましくは、さらなる粘着防止剤は必要ない、あるいは存在しない。ただし、さらなる粘着防止剤の追加使用の可能性は除外しない。
【0078】
通常親油性を有するこれらの物質は、噴霧懸濁液に添加することができ、本発明に従って存在するSiO2に加えて、フィルムコーティング中にコアの凝集を防ぐ。例えば、HLB3〜8を有する、タルク、あるいは例えばモノステアリン酸グリセロールなどの非イオン性乳化剤を使用することが可能である。この量は、ポリマーに基づき1〜100質量%でよい。ただし、本発明において望ましい放出プロファイルが損なわれていないことに、常に留意しなければならない。
【0079】
−さらなる賦形剤
自体公知の方法で添加できるさらなる薬学的に常用の賦形剤は、例えば、安定剤、着色剤、抗酸化剤、湿潤剤、細孔形成剤、顔料、光沢剤などである。
【0080】
フィルムコーティングの塗布:
塗布プロセスは、有機溶液からの、あるいは融解による水性分散液からの噴霧塗布によって、あるいは直接粉末塗布によって行なわれる。この際に、均一で細孔のないコーティングを製造することが実施に不可欠である。
【0081】
従来技術の塗布プロセスは、例えば、Bauer, Lehmann, Osterwald, Rothgang, "Ueberzogene Arzneiformen" Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH Stuttgartの第7章(165〜196ページ)を参照されたい。
【0082】
塗布についての関連する特性、要求される試験、および仕様は、薬局方に記載されている。
【0083】
詳細は、例えば、下記のものなどの通例の教本に記載されている。
【0084】
− Voigt, R. (1984); Lehrbuch der pharmazeutischen Technologie; Verlag Chemie Weinheim−Beerfield Beach/Florida−Basle
− Sucker, H., Fuchs, P., Speiser, P.: Pharmazeutische Technologie, Georg Thieme Verlag Stuttgart (1991)の特に、第15章および第16章(626〜642ページ)
− Gennaro, A., R.(編集), Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton Pennsylvania (1985)の第88章(1567〜1573ページ)
− List, P.H. (1982): Arzneiformenilehre, Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH, Stuttgart
【0085】
作用物質(生物活性物質):
本発明は、20℃での水溶解性が、少なくとも10g/l、好ましくは少なくとも30g/l、特に好ましくは少なくとも50g/l、とりわけ好ましくは少なくとも100g/l、200g/l、300g/l、または400g/lである作用物質に適している(例えば、Pharmeuropa−Technical Guide for the Elaboration of Monographs, 3rd Edition (1999)の第IV章、付表IVに記載の、1分間激しく振盪し、20℃で15分間精製水中に放置する、などの標準方法に基づく水への溶解性)。驚くべきことに、例えばテオフィリンなどの水溶解性が低い作用物質では、それ以外は請求されているとおりの処方物を用いても、本発明の有利な効果は生じないようである。
【0086】
本発明との関連において使用される医薬物質は、ヒトまたは動物の身体上または体内で、
1.疾患、状態、身体的障害、または病的症状を治癒、緩和、予防、または診断するため、
2.状態、身体の状況もしくは機能、または精神状態を明らかにするため、
3.ヒトまたは動物の身体により生成された活性物質または体液を置換するため、
4.病原体、寄生体、または外因性物質を撃退、排除、または無害化するため、あるいは
5.身体の状態、状況、もしくは機能、または精神状態に影響を与えるため、
に使用するためのものである。
【0087】
従来の医薬物質は、例えばthe Rote Listeまたはthe Merck Indexなどの参考文献に記載されている。
本発明によって、上記で定義した意味での所望の治療効果に適合し、かつ適当な熱安定性を有する全ての作用物質を使用することが可能である。
【0088】
医薬製剤は、例えば、20℃での水溶解性が少なくとも10g/lである以下の作用物質のうちの1つ以上を含むことができ、場合により、これらは水溶性の薬学的に使用される塩の形態であってもよい:
アセブトロール、アミトリプチリン、アリピプラゾール、アテノロール、アトロピン、ベタキソロール、ビソプロロール、ブパバカイン、ビュープロピオン、ブタバルビタール、カルテオロール、カルベジロール、セファゾリン、セフォタキシム、クロルフェニラミン、クロルプロマジン、クリンダマイシン、コデイン、ジルチアゼム、ジメルカプロール、ジフェンヒドラミン、ドーパミン、ドキシラミン、デュロキセチン、フレキサイニド、フルオキセチン、フルフェナジン、フルラゼパム、ゲンタマイシン、ヒドララジン、ヒドロコルチゾン、ハイドロキノン、ヒヨスチアミン、イソニアジド、イソプロテレノール、カナマイシン、ラベトロール、リシノプリル、メチプラノロール、メキシレチン、モルヒネ、ナドロール、ネオマイシン、ノルエピネフリン、ノルトリプチリン、オンダンセトロン、オクスプレノロール、オキシメタゾリン、オキシモルフォン、パロキセチン、ペンブトロール、フェニレフリン、ピンドロール、プレドニゾロン、プリマキン、プロプラノロール、ピロカイン、ソタロール、スルファジアジン、タモキシフェン、テルブタリン、チモロール、トラマドール、トラゾドン、トリフルプロマジン、テトラサイクリン、ツボクラリン、ベンラファクシン、および/またはベラパミル。これらの作用物質は、水溶性の薬学的に使用される塩の形態のものが特に好ましい。
【0089】
本発明の目的に特に好ましい作用物質は、塩酸フェニレフリンおよび硫酸テルブタリンである。
【0090】
投与形態およびさらなる実施形態
記載されている剤形を経口投与により直接使用することは、原則的に可能である。しかしながら、好ましくは、多粒子形態(多単位剤形)のためのさらなる加工手順が続く:
本発明によって製造したコーティングされた剤形は、単回用量としてゼラチンカプセルおよび袋(サシェ)に、あるいは計量装置を備える好適な多回用量容器に分注することができる。摂取は、固形あるいは液体中に懸濁した形で行なわれる。
【0091】
顆粒の圧縮(場合によりさらなる賦形剤の混合後)により、摂取後に崩壊して徐放サブユニットを放出する錠剤が得られる。ポリエチレングリコールまたは脂質中に凝塊を埋め込み、坐剤または膣用の剤形を製造することも同様に可能である。
【0092】
また、外側コーティングは、さらなる従来技術コーティングと組み合わせても、あるいは一緒に用いてもよい。この特別な例では、外側コーティングb)は、最も外側のコーティングではない。この目的に適しているのは、具体的には、メタクリル酸残基10〜60質量%を含み、それ以外は例えばメチルメタクリレートおよび/またはエチルアクリレートから構成される(メタ)アクリレートコポリマー(EUDRAGIT(登録商標) LまたはS型)である。このようにして、本発明による処方物と組み合わせて、味覚マスキング特性、あるいは結腸内での標的放出のための処方物をさらに実現することが可能である。
【0093】
使用
本発明による医薬製剤もしくは組成物を用いて、20℃での水溶解性が少なくとも10g/lの作用物質のための医薬製剤もしくは組成物、または剤形を製造することができ、この剤形は、遅延期とパルス期と消滅期とを有するシグモイド型作用物質放出特性を示し、ヨーロッパ薬局方によるパドル装置(100rpm、pH6.8の緩衝液中)での作用物質放出が遅延期におよそ10%であり、その後の作用物質放出がパルス期の4時間未満でさらに80%であることを特徴とする。
【0094】
USPによる作用物質放出については、具体的には、USP 28−NF23, General Chapter <711>, Dissolution, Apparatus 2 (Paddle), Method <724> "Delayed Release (Enteric Coated) Articles−General General Drug Release Standard", Method B (100rpm, 37°C)を参照されたい。ただし、ヨーロッパ薬局方によるpH6.8の緩衝液を用いる。
【0095】
シグモイド型作用物質放出特性は、例えば、欧州特許公開公報第0463877号、欧州特許第1117387号、および欧州特許公開公報第0436370号から、当業者に十分に周知である。
【0096】
剤形
本発明による製剤は、既知の方法で、剤形を製造するのに適している。この製剤は、例えばペレット形態で存在してよく、これは薬学的に常用の賦形剤を用いて自体公知の方法で加工して、多粒子剤形、具体的にはペレット含有錠剤、小型錠剤、カプセル、サシェ、または再構成可能な粉末にすることができる。
【0097】
製剤は、好ましくは、ペレットの形態で圧縮して、例えば錠剤を得ることができる。
【0098】
製剤は、例えば、具体的には、ゼラチンカプセル内に入れられて、それによって包まれたペレットまたは小型錠剤の形態であってもよい。
【0099】
実施例
使用するコポリマー
コポリマー1
メチルメタクリレート65質量%、エチルアクリレート30質量%、および2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート−クロリド5質量%(EUDRAGIT(登録商標) RS)
コポリマー2
メチルメタクリレート60質量%、エチルアクリレート30質量%、および2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート−クロリド10質量%(EUDRAGIT(登録商標) RL)
第1表のデータは乾燥物質に基づく。
【0100】
作用物質の水溶解性
Pharmeuropa−Technical Guide for the Elaboration of Monographs, 3rd Edition (1999)の第IV章、付表IVに基づく水溶解性(15分間振盪するが、20℃で)
テオフィリン:水溶解性=8.4g/l(20℃)
塩酸フェニレフリン:水溶解性=500g/l(20℃)
硫酸テルブタリン:水溶解性=500g/l(20℃)
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)作用物質を有し、有機酸および/または有機酸の塩を有するコアと、
b)前記コアを包むコーティングであって、カチオン性基またはアニオン性基15質量%以下を有し、アクリル酸またはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステル93〜98質量%とアルキル基中に第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマー7〜2質量%とのラジカル重合した単位から構成される(メタ)アクリレートコポリマーを少なくとも60質量%含む、(メタ)アクリレートコポリマーのポリマー含有量を備えるコーティングとを含む医薬製剤において、
前記作用物質が20℃で少なくとも10g/lの水溶解性を有し、かつ
前記コーティングが1〜50μmまでの範囲の平均粒径を有する二酸化ケイ素粒子を含むことを特徴とする医薬製剤。
【請求項2】
前記コーティングのポリマー含有量が、
アクリル酸またはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステル93〜98質量%と、アルキル基中に第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマー7〜2質量%とから構成される(メタ)アクリレートコポリマー60〜99質量%と、
アクリル酸またはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステル85から93未満の質量%と、アルキル基中に第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマー7を上回り15までの質量%とから構成される(メタ)アクリレートコポリマー1〜40質量%との混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記コーティングb)のポリマー含有量が、
アクリル酸またはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステル93〜98質量%と、アルキル基中に第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマー7〜2質量%とからなる(メタ)アクリレートコポリマー60〜99質量%と、
アクリル酸またはメタクリル酸のC1−〜C4−アルキルエステル95〜100質量%と、アクリル酸またはメタクリル酸0〜5質量%とからなる(メタ)アクリレートコポリマー1〜40質量%との混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート−クロリドが、アルキル基中に第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマーとして、前記(メタ)アクリレートコポリマー中に存在することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
前記コアおよび/または前記コーティングが、薬学的に常用の賦形剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
前記コーティングのポリマー含有量が、前記コアの質量に基づき、10〜200質量%になることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
前記コーティングのポリマー含有量が、含有されるSiO2の比率と合わせて、前記コーティングに基づき、合計10〜100質量%となることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
クエン酸、フマル酸、ギ酸、酢酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、グルタル酸、もしくは乳酸、またはそれらのアンモニウム、リチウム、ナトリウム、またはカリウム塩、あるいは前記物質の混合物が、有機酸および/または有機酸の塩として使用されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
前記二酸化ケイ素粒子が、沈降二酸化ケイ素を含むことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
前記コーティング中に含まれる(メタ)アクリレートコポリマーに基づき、5〜50質量%の二酸化ケイ素粒子が含まれていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項11】
圧縮して錠剤となっていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項12】
ゼラチンカプセルで包まれることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項13】
前記有機酸および/または前記有機酸の塩は、前記コアの外層を形成することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項14】
メタクリル酸残基10〜60質量%を含む(メタ)アクリレートコポリマーでさらに包まれていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項15】
以下の作用物質:アセブトロール、アミトリプチリン、アリピプラゾール、アテノロール、アトロピン、ベタキソロール、ビソプロロール、ブパバカイン、ビュープロピオン、ブタバルビタール、カルテオロール、カルベジロール、セファゾリン、セフォタキシム、クロルフェニラミン、クロルプロマジン、クリンダマイシン、コデイン、ジルチアゼム、ジメルカプロール、ジフェンヒドラミン、ドーパミン、ドキシラミン、デュロキセチン、フレキサイニド、フルオキセチン、フルフェナジン、フルラゼパム、ゲンタマイシン、ヒドララジン、ヒドロコルチゾン、ハイドロキノン、ヒヨスチアミン、イソニアジド、イソプロテレノール、カナマイシン、ラベトロール、リシノプリル、メチプラノロール、メキシレチン、モルヒネ、ナドロール、ネオマイシン、ノルエピネフリン、ノルトリプチリン、オンダンセトロン、オクスプレノロール、オキシメタゾリン、オキシモルフォン、パロキセチン、ペンブトロール、フェニレフリン、ピンドロール、プレドニゾロン、プリマキン、プロプラノロール、ピロカイン、ソタロール、スルファジアジン、タモキシフェン、テルブタリン、チモロール、トラマドール、トラゾドン,トリフルプロマジン、テトラサイクリン、ツボクラリン,ベンラファクシン、および/またはベラパミルのうちの1つまたは複数が、場合により水溶性の薬学的に使用される塩の形態で含まれていることを特徴とする請求項1から14までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項に記載の医薬製剤を、遅延期とパルス期と消滅期とを有するシグモイド型作用物質放出プロファイルを示す少なくとも10g/lの20℃での水溶解性を有する作用物質のための剤形を製造するために用いる使用であって、ヨーロッパ薬局方によるパドル装置(100rpm、pH6.8の緩衝液中)での作用物質放出が前記遅延期におよそ10%であり、その後の作用物質放出が前記パルス期の4時間未満でさらにおよそ80%であることを特徴とする使用。

【公表番号】特表2010−501015(P2010−501015A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524903(P2009−524903)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066583
【国際公開番号】WO2008/019712
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】