説明

色ずれ映像信号の輪郭補正回路及び方法

【課題】カメラのレンズの色収差などによりRGB間のずれている部分では、映像信号によってはR+GなどRGBを混合した信号から輪郭補正信号を生成すると高周波成分がでてこなくなり、画像の鮮鋭感を増大させることができない場合がある。
【解決手段】色収差があるところではGだけ、またはRの混合比を減らした信号から輪郭補正信号を生成することで、レンズの色収差などによりRGB間でずれのある映像信号に対して、RGBを混合した信号から輪郭補正信号を生成する場合にも画像の鮮鋭感を増大させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの倍率色収差などが原因でRGB間の位相がずれて色ずれのある映像信号に対する輪郭補正を行う装置やシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラのレンズの倍率色収差(以下単に色収差と表記する)が原因で映像の中心部から離れるほどRGBの信号どうしで、ずれてしまう現象がある。これはレンズの屈折率が光の波長によって異なるために起こる現象で、図8に示すようにレンズの中心部を通過する被写体の光はどの波長の光もまっすぐに進み、RGBで固体撮像素子に到達したところでの結像位置がずれることはほとんどない。しかし、レンズの端を通過する光はそれぞれの波長によって屈折の角度が異なるために図8の上のほうの丸のように固体撮像素子に到達したところでの結像位置がずれてしまう。そして、この現象は図9に示すようにレンズを中心に点対象にずれる性質を持っている。
【0003】
一般にカメラでは映像の鮮鋭感を強調するために映像信号から高周波成分を取り出して元の映像信号に加算する輪郭補正という処理が行われる。そして、この高周波成分を取り出す信号にはRGBの信号を混合した信号が用いられることがよくある。しかし、前述の色収差があるとRGB間の信号がずれているためにそのまま混合してしまうと、LPFの効果が生じ画面の端のほうでは十分な輪郭補正の効果が得られない。
【0004】
これに対して、特許文献1では、画面の周辺部の輪郭補正量を増やすことで色収差により減衰した輪郭補正量を補うことが行われている。
【特許文献1】特開2003−230052号公報(段落番号[0050])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように画面の周辺部の輪郭補正量を増やすだけでは映像によっては全く意味をなさない場合がある。その場合について具体的に説明する。
説明に用いる映像信号はG信号に対するR信号の色ずれが色収差によって2画素あるとし、G信号とR信号を1対1の比率で加算して2で割った信号から輪郭補正信号を生成することとする。
【0006】
図2は輪郭信号を抽出する輪郭補正信号生成回路の最も基本的な構成図である。図2において、201〜204は1クロック信号を遅延する遅延回路、205と207は信号を−1倍する乗算器、206は信号を2倍する乗算器、208は乗算器205〜207の出力信号を加算する加算器である。但し、1クロックの幅は固体撮像素子の画素の間隔と一致しているとする。
【0007】
まず、色ずれがない場合の本来の輪郭補正の動作を図3を併用して説明する。画面の中心部ではG信号とR信号は、図3の信号(a)と信号(b1)のようにずれていない。これらの信号を1対1の比で加算して2で割ると図3の信号(c1)が得られる。この信号(c1)を図2の輪郭補正信号生成部に入力すると、遅延回路201〜204で遅延されて乗算器205〜207に入力するための2クロックずつずれた信号が得られる。そしてこの2クロックずつずれた信号の真ん中の位置の信号すなわち遅延回路202の出力信号を乗算器206で2倍して残りの2つの信号をそれぞれ乗算器205及び乗算器207で−1倍して、加算器208で加算すると、図3の信号(d1)が得られる。そして、この輪郭補正信号を図3の信号(a)に加算すると図3に信号(e1)となり、元の信号が強調された信号が得られる。ここで、図3の信号(a)自身が高周波成分であり、その高周波成分が強調されるので、映像としては鮮鋭感が増えることになる。
【0008】
次に色ずれがある場合の動作を輪郭補正信号の元になる信号源としてRとGを1対1の比で加算して2で割った信号を用いる場合について図4を併用して説明する。画面の端のほうはG信号とR信号は、図4の信号(a)と信号(b2)のようにずれている。これらの信号を1対1の比で加算して2で割ると図4の信号(c2)が得られる。この信号(c2)を図2の輪郭補正信号生成部に入力すると、遅延回路201〜204で遅延されて乗算器205〜207に入力するための2クロックずつずれた信号が得られる。そしてこの2クロックずつずれた信号の真ん中の位置の信号すなわち遅延回路202の出力信号を乗算器206で2倍して残りの2つの信号をそれぞれ乗算器205及び乗算器207で−1倍して、加算器208で加算すると、図3の信号(d2)が得られる。そして、この輪郭補正信号を図3の信号(a)に加算すると図3に信号(e2)となり、元の信号は強調されず、映像として鮮鋭感を増やすことができていない。
【0009】
本発明では以上のような色収差などによりRGBどうしで映像信号がずれているときにも画面周辺部での鮮鋭感を増やすことのできる輪郭補正回路及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願第1の発明の輪郭補正回路は、画面の位置に対応した第1の映像信号に対する第2の映像信号のずれ量を生成するずれ量生成手段と、前記ずれ量が第1の所定の画素以上のときは0を前記第1の所定の画素以下のときは1から前記ずれ量を引いた値に第2の所定の値をかけたゲインを生成するゲイン生成手段と、前記第2の映像信号と前記ゲインを乗算する乗算手段と、前記乗算手段の出力と前記第1の映像信号を加算する加算手段と、前記加算手段の出力信号から高周波成分を取り出して輪郭補正信号を生成する輪郭補正信号生成手段と、前記輪郭補正信号と前記第1の映像信号を加算する加算手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
本願第2の発明の輪郭補正方法は、画面の位置に対応した第1の映像信号に対する第2の映像信号のずれ量を生成するずれ量生成工程と、前記ずれ量が第1の所定の画素以上のときは0を前記第1の所定の画素以下のときは1から前記ずれ量を引いた値に第2の所定の値をかけたゲインを生成するゲイン生成工程と、前記第2の映像信号と前記ゲインを乗算する乗算工程と、前記乗算工程の出力と前記第1の映像信号を加算する加算工程と、前記加算工程の出力信号から高周波成分を取り出して輪郭補正信号を生成する輪郭補正信号生成工程と、前記輪郭補正信号と前記第1の映像信号を加算する加算工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の本発明により、レンズの色収差などによりRGB間でずれのある映像信号に対して、RGBを混合した信号から輪郭補正信号を生成する場合にも画像の鮮鋭感を増大させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
説明に用いる映像信号はG信号に対するR信号の色ずれが色収差によって2画素あるとし、G信号とR信号を1対1の比率で加算して2で割った信号から輪郭補正信号を生成することとする。
【0015】
図1は本発明の輪郭補正回路の構成図である。図1において、101は色収差量生成部、102はゲイン生成部、103は乗算器、104と106は加算器、105は信号の高周波成分を抽出する輪郭補正信号生成部である。
【0016】
図1の輪郭補正回路について図5を併用して説明する。色収差量生成部101ではG信号に対するR信号のずれが2画素なので、2画素ずれているという信号をゲイン調整部102に送る。そしてゲイン調整部102では2画素ずれているのでゲインとして0を出力する。
【0017】
G信号を図5の(a)に示すような2クロックごとに変化する信号とすると、R信号はG信号に対して2画素ずれているので図5の(b2)の波形となる。そして、この信号(b2)とゲイン調整部102から出力される0を乗算器103で乗算し、図5の信号(b3)が得られる。そして、この信号(b3)は加算器104にて信号(a)と加算され、信号(c3)を得る。そして信号(c3)は輪郭補正信号生成部105に入力され、図5の信号(d3)が得られる。そして、この信号(d3)を図3の信号(a)に加算すると図5に信号(e3)となり、元の信号が強調された信号が得られる。ここで、図5の信号(a)自身が高周波成分であり、その高周波成分が強調されるので、映像としては鮮鋭感が増えることになる。なお、輪郭補正信号生成部105の構成は図2に示す通りで、その動作は背景の技術のところで述べた色ずれがない場合と全く同じ動作になるので、ここでの説明は省略する。
【0018】
なお、本実施の形態では輪郭補正信号の生成回路は簡単な構成で説明したが、通常はゲインの調整をはじめ、映像信号の輝度や色などによる調整など様々な調整がなされた後、輪郭補正信号は映像信号に加算される。
【0019】
また、本実施の形態の輪郭補正回路をカメラに適用するときは、図6に示すようにガンマ補正の前後に入れる場合が多い。
【0020】
(実施の形態2)
図7は本発明の輪郭補正方法のフロチャートであり、以下にその処理手順を説明する。
実施の形態1で説明した信号と同じく、説明に用いる映像信号はG信号に対するR信号の色ずれが色収差によって2画素あるとし、G信号とR信号を1対1の比率で加算して2で割った信号から輪郭補正信号を生成することとする。
【0021】
図7の輪郭補正方法について図5を併用して説明する。まずG信号に対するR信号のずれを求め、2画素という値を得る。G信号を図5の(a)に示すような2クロックごとに変化する信号とすると、R信号はG信号に対して2画素ずれているので1画素以上ということから信号2にかけるゲインとして0が得られ、信号2に0をかけて2画素ずれているので図5の(b3)が得られる。そして、この信号(b3)は信号(a)と加算され、信号(c3)を得る。そして信号(c3)に対して式[数1]で示す演算を行い、
−Z+2+2―Z-2 ―――[数1]
図5の信号(d3)が得られる。そして、この信号(d3)を図3の信号(a)に加算すると図5に信号(e3)となり、元の信号が強調された信号が得られる。ここで、図5の信号(a)自身が高周波成分であり、その高周波成分が強調されるので、映像としては鮮鋭感が増えることになる。
【0022】
なお、本実施の形態では輪郭補正信号の生成は簡単な演算で説明したが、通常はゲインの調整をはじめ、映像信号の輝度や色などによる調整など様々な調整がなされた後、輪郭補正信号は映像信号に加算される。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の輪郭補正回路または輪郭補正方法を用いることにより、RGB間でのずれ、すなわち色ずれがあっても、RGBを混合した信号から輪郭補正信号を生成しても画面の端のほうで鮮鋭感を増加させることができるようになり、電子カメラなどの映像機器に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の輪郭補正回路の構成を示す図
【図2】基本的な輪郭補正信号生成回路の構成を示す図
【図3】通常の輪郭補正処理をしたときの入力信号の波形と信号の値を示す図
【図4】従来例の輪郭補正処理をしたときの入力信号の波形と信号の値を示す図
【図5】本発明の実施の形態の入力信号の波形と信号の値を示す図
【図6】本発明の輪郭補正回路を電子カメラに適用した場合の図
【図7】本発明の実施の形態の輪郭補正回路の構成を示す図
【図8】レンズの色収差を説明するための図
【図9】レンズの色収差を説明するための図
【符号の説明】
【0025】
101 色収差量生成部
102 ゲイン生成部
103 乗算器
104 加算器
105 輪郭補正信号生成部
106 加算器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面の位置に対応した第1の映像信号に対する第2の映像信号のずれ量を生成するずれ量生成手段と、
前記ずれ量が第1の所定の画素以上のときは0を前記第1の所定の画素以下のときは1から前記ずれ量を引いた値に第2の所定の値をかけたゲインを生成するゲイン生成手段と、
前記第2の映像信号と前記ゲインを乗算する乗算手段と、
前記乗算手段の出力と前記第1の映像信号を加算する加算手段と、
前記加算手段の出力信号から高周波成分を取り出して輪郭補正信号を生成する輪郭補正信号生成手段と、
前記輪郭補正信号と前記第1の映像信号を加算する加算手段と、
を具備することを特徴とする輪郭補正回路。
【請求項2】
画面の位置に対応した第1の映像信号に対する第2の映像信号のずれ量を生成するずれ量生成工程と、
前記ずれ量が第1の所定の画素以上のときは0を前記第1の所定の画素以下のときは1から前記ずれ量を引いた値に第2の所定の値をかけたゲインを生成するゲイン生成工程と、
前記第2の映像信号と前記ゲインを乗算する乗算工程と、
前記乗算工程の出力と前記第1の映像信号を加算する加算工程と、
前記加算工程の出力信号から高周波成分を取り出して輪郭補正信号を生成する輪郭補正信号生成工程と、
前記輪郭補正信号と前記第1の映像信号を加算する加算工程と、
を有することを特徴とする輪郭補正方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−254175(P2006−254175A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69076(P2005−69076)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】