説明

色変換部材およびその製造方法、発光装置、表示装置

【課題】簡易な製造プロセスで、蛍光体の劣化を抑制することが可能な色変換部材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】蛍光体含有キャップ10Aの製造方法は、樹脂材料Aを成形する工程において、樹脂材料Aに蛍光体Bを混練することにより、樹脂材料Aと蛍光体Bとを一体的に成形するものである。蛍光体含有キャップ10Aでは、蛍光体Bが分散して含有されているため、水蒸気や酸素に曝されにくくなる。従って、蛍光体を水蒸気等から保護するために、蛍光体をガラスなどで挟み込む等の蛍光体の封止工程が不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を用いて色変換を行う色変換部材とその製造方法、およびこの色変換部材を用いた発光装置ならびに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄型の表示装置として液晶ディスプレイ(LCD;Liquid Crystal Display)が用いられている。液晶ディスプレイでは、液晶パネルを背後から全面にわたり照射するバックライトが利用されており、その構造により液晶ディスプレイは直下方式とエッジライト方式に大別することができる。エッジライト方式は、表示領域の全面にわたって設けられた導光板の側面に発光素子を設けたものであり、導光板の側面から入射させた光を内部を伝播させたのち導光板の上面から取り出すものである。一方、直下方式は、例えば基板上に複数の発光素子を配設することにより、全体として面発光を行うものである。
【0003】
このようなバックライトとして、発光素子としての青色発光ダイオードの光出射側に、色変換を行う蛍光体層を設け、変換された色光と青色光とを混色させることにより擬似白色光を実現する発光装置が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
具体的には、特許文献1では、GaN系の青色発光ダイオードチップ上に、YAG蛍光体を混合した樹脂をポッティングすることにより、青色光の一部を蛍光体層において黄色光に変換して白色光を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−49657号公報
【特許文献2】特開2004−352928号公報
【特許文献3】特開2007−23267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記のような蛍光体層は、大気中の酸素や水蒸気に対して脆弱であり、酸素や水蒸気等に曝されると劣化するという問題がある。これにより、蛍光体の色変換効率が低下し、発光装置の発光輝度や色度が劣化してしまう。このような蛍光体の劣化は、特に高温高湿の環境下において顕著である。そこで、特許文献2では、青色発光ダイオードを封止する外装キャップに蛍光体層を塗布形成した後、真空または不活性雰囲気において気密封止する手法が用いられている。また、特許文献3には、蛍光体層を2枚のガラス基板で挟み込んで封止する手法が提案されている。しかしながら、特許文献2,3の手法では、製造プロセスが複雑になるという問題がある。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡易な製造プロセスで、蛍光体の劣化を抑制することが可能な色変換部材およびその製造方法、これを用いた発光装置ならびに表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の色変換部材の製造方法は、樹脂材料を成形する工程を含み、この工程において、樹脂材料に一の色光を他の色光に変換する蛍光体を混練することにより、樹脂材料と蛍光体とを一体的に成形するものである。これにより、蛍光体が含有されてなる色変換部材が形成される。
【0009】
本発明の色変換部材は、一の色光を他の色光に変換する蛍光体を含有してなるものである。
【0010】
本発明の発光装置は、光源部と、光源部から発せられた一の色光を他の色光に変換する蛍光体を含有してなる色変換部材とを備えたものである。
【0011】
本発明の表示装置は、上記本発明の発光装置と、その色変換部材を通過した光を用いて画像を表示する表示パネルを備えたものである。
【0012】
本発明の色変換部材および発光装置ならびに表示装置では、一の色光が色変換部材に入射すると、その色光の一部が、色変換部材に含有された蛍光体によって他の色光へ変換される。これにより、未変換の一の色光と変換された他の色光とが混ざり合って出射する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の色変換部材および色変換部材の製造方法によれば、樹脂材料を成形する際、この樹脂材料に、一の色光を他の色光に変換する蛍光体を混練するようにしたので、樹脂材料と蛍光体とを一体的に成形することが可能となる。このとき、蛍光体は色変換部材の内部に分散して含有されているので、酸素や水蒸気に曝されにくい。また、蛍光体粒子の一つ一つが樹脂材料に包まれて分散することになるので、複数種類の蛍光体を使用する場合に異なる蛍光体間での交互作用が生じにくいという利点もある。従って、蛍光体を酸素や水蒸気から保護するために形成した蛍光体をガラスなどで挟み込む等、蛍光体の封止工程が不要となる。よって、簡易な製造プロセスで、蛍光体の劣化を抑制することが可能となる。また、本発明の発光装置および表示装置によれば、上記のような色変換部材を有しているので、輝度や色度の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置の断面構成を表す模式図である。
【図2】図1に示した蛍光体含有キャップの成形工程で使用する射出成形機の概略構成を表す模式図である。
【図3】実施例に係る蛍光体含有樹脂の経時的な輝度変化を表す図である。
【図4】変形例1に係る発光装置の断面構成を表す模式図である。
【図5】図1に示した蛍光体含有キャップの成形工程で使用する押し出し成形機の概略構成を表す模式図である。
【図6】図1に示した蛍光体含有キャップの成形工程で使用するカレンダー成形機の概略構成を表す模式図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の断面構成を表す模式図である。
【図8】変形例2に係る表示装置の断面構成を表す模式図である。
【図9】変形例3に係る表示装置の断面構成を表す模式図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る発光装置の断面構成を表す模式図である。
【図11】変形例4に係る発光装置の断面構成を表す模式図である。
【図12】変形例5に係る発光装置の断面構成を表す模式図である。
【図13】変形例6に係る発光装置の断面構成を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行い、(2)〜(9)においては、第1の実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。

(1)第1の実施の形態:LEDの外装部材に蛍光体を含有させた例
(2)変形例1:外装部材の内側に蛍光体含有部材を設けた例
(3)第2の実施の形態:基板上に複数のLEDを配設してなる光源部の光出射側に蛍光体含有シートを設けた例
(4)変形例2:蛍光体含有シートを拡散フィルムと拡散板との間に設けた例
(5)変形例3:拡散板に蛍光体を含有させた例
(6)第3の実施の形態:導光板の光出射面に蛍光体含有シートを設けた例
(7)変形例4:導光板の底面に蛍光体含有シートを設けた例
(8)変形例5:導光板の側面(光入射面)に蛍光体含有シートを設けた例
(9)変形例6:導光板自体に蛍光体を含有させた例
【0016】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1Aの断面構造を模式的に表すものである。発光装置1は、例えば各種照明や液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等のバックライトとして用いられるものである。この発光装置1は、発光素子として、例えばLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)チップ11を備えている。LEDチップ11は、ワイヤボンド13により、陽極フレーム12Aおよび陰極フレーム12Bに電気的に接続されており、全体が蛍光体含有キャップ10A(色変換部材)によって封止されている。LEDチップ11は、例えば400nm〜500nmに中心波長を有する青色発光ダイオードである。
【0017】
蛍光体含有キャップ10Aは、LEDチップ11を気密封止するためのパッケージ部材であり、その外観の形状が曲面を有するドーム状(半球状)となっている。この蛍光体含有キャップ10Aは、主原料を樹脂材料Aとすると共に、蛍光体Bを含有したもの(いずれも図1には図示せず)である。樹脂材料Aとしては、透明性、加工性および耐熱性などの観点から、例えばポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)および環状非晶質ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂や、多官能アクリレート、多官能ポリオレフィン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂などが挙げられる。特に、青色発光ダイオードもしくは近紫外発光ダイオードによって劣化が軽微なものが好ましい。
【0018】
蛍光体Bは、蛍光体含有キャップ10Aの内部に分散した状態で含有されており、入射した色光をより長い波長域の色光に変換する材料により構成されている。蛍光体Bとしては、例えばLEDチップ11として青色発光ダイオードを用いた場合、青色光によって励起されて緑色光、赤色光もしくは黄色光等を発生させる蛍光体材料を少なくとも一種含んだものが挙げられる。黄色変換の蛍光体材料としては、(Y,Gd)3(Al,Ga)512:Ce3+(通称YAG:Ce3+)、α−SiAlON:Eu2+などが挙げられる。黄色もしくは緑色変換の蛍光体材料としては、 (Ca,Sr,Ba)2SiO4:Eu2+などが挙げられる。緑色変換の蛍光体材料としては、SrGa24:Eu2+、β−SiAlON:Eu2+、Ca3Sc2Si312:Ce3+などが挙げられる。赤色変換の蛍光体材料としては、(Ca,Sr,Ba)S:Eu2+、(Ca,Sr,Ba)2Si58:Eu2+、CaAlSiN3:Eu2+などが挙げられる。蛍光体Bは、このような各種蛍光体材料を適切な配合比で含んだものである。
【0019】
このような蛍光体含有キャップ10Aは、例えば次のような手法により作製することができる。ここで、一般的なプラスチック等の樹脂製品の製造工程は、樹脂製造工程と成形加工工程に大別される。樹脂製造工程は、原料から化学合成を行い、成形加工用の樹脂材料を製造する工程である。成形加工工程は、樹脂製造工程を経て得られた樹脂材料を、各種成形法を用いて製品形状となるように成形する工程(1次加工工程)と、1次加工品に接着、切断および塗布等の処理を行う工程(2次加工工程)に分類される。
【0020】
本実施の形態では、まず、上記樹脂製造工程において、上述した材料よりなる樹脂材料Aを製造する。この後、製造した樹脂材料Aに、次の1次加工工程の準備工程として、除湿、混和、余熱などの処理を施す。一方、蛍光体Bを、上述した蛍光体材料を所望の配合比で調合することにより形成しておく。続いて、上記1次加工工程において、樹脂材料Aをドーム状に成形する際に、蛍光体Bを添加する。これにより、蛍光体含有キャップ10Aを得る。成形法としては、例えば射出成形法、押し出し成形法、カレンダー成形法、流出成形法、積層板成形法、成膜成形法、圧縮成形法、移送成形法、焼成法、注型法、吹込成形法、インフレーション成形法、溶液浸漬成形法、発泡成形法、反応射出成形法等が挙げられる。但し、本実施の形態のようなドーム状の成形に際しては、射出成形法を用いることが望ましい。以下、この射出成形法を例に挙げて、上記1次加工工程について説明する。
【0021】
図2は、射出成形機110の概略構成を模式的に表すものである。射出成形機110は、ホッパー111、シリンダ112、加熱ヒータ113、プランジャ114、キャビティ115aを有する金型115および冷却部116を備えている。成形の際には、ホッパー111に、樹脂材料Aと蛍光体Bとを混練して投入する。これにより、射出成形機110では、混練された樹脂材料Aおよび蛍光体Bが、一定の割合でシリンダ112内に供給され、加熱ヒータ113により加熱される。シリンダ112内では、樹脂材料Aが可塑化により流動化(軟化)し、この流動状態の混和物がプランジャ114によって加圧されることにより、金型115のキャビティ115aへ射出注入される。キャビティ115aに注入された混和物は、冷却部116により冷却されて固化する。これにより、混和物は、金型115の型形状に対応した形状(ここでは、ドーム状)に成形される。この後、固化した混和物をキャビティ115aから取り出すことで、蛍光体Bを含有してなる蛍光体含有キャップ10Aを得る。
【0022】
本実施の形態の発光装置1Aでは、LEDチップ11から発せられた青色光が、蛍光体含有キャップ10Aに入射すると、入射した青色光の一部は、蛍光体含有キャップ10A内に分散している蛍光体Bを通過する。この蛍光体Bを通過する青色光は、蛍光体Bの構成材料に応じて、他の波長域の色光(例えば、赤色光や緑色光)に変換される。すなわち、蛍光体含有キャップ10Aを色変換されずにそのまま通過した青色光と、蛍光体Bによって色変換された色光との混色により、例えば白色光となって外部へ出射される。
【0023】
特に、上記のような蛍光体含有キャップ10Aの成形時に、樹脂材料Aに蛍光体Bを混練することにより、樹脂材料Aと蛍光体Bとを一定的に成形することができる。このとき、蛍光体Bは成形された樹脂材料Aの内部に分散して存在することになるので、酸素や水蒸気に曝されにくい。また、蛍光体Bの粒子の一つ一つが樹脂材料Aに包まれて分散することになるので、複数種類の蛍光体材料を使用する場合に異なる蛍光体材料間での交互作用が生じにくいという利点もある。従って、蛍光体を酸素や水蒸気から保護するために、例えば形成した蛍光体をガラスなどで挟み込む等、蛍光体の封止工程が不要となる。よって、簡易な製造プロセスで、蛍光体の劣化を抑制することが可能となる。これにより、発光装置1Cでは、発光輝度や色度の劣化を抑制することができる。また、蛍光体Bを酸素や水蒸気等から保護するために、高額な薄ガラスや特殊な保護膜を用いる必要がないため、低コストとなる。
【0024】
また、これにより、特に水蒸気に対して脆弱とされる(Ca,Sr)S:Eu2+およびSrGa24:Eu2+などの硫化物材料、酸硫化物材料、および発光イオンに各種有機配位子を配位させた錯体蛍光体等も好適に使用可能となる。
【0025】
ここで、本実施の形態の実施例として、樹脂材料Aに蛍光体Bを混連して成形した樹脂部材を作製し、この蛍光体含有樹脂部材の発光輝度を測定する実験を行った。その結果を、図3に示す。但し、蛍光体含有樹脂部材への入射光としては青色光を使用すると共に、樹脂材料Aとしてはポリカーボネート、蛍光体Bとしては一般的に高温高湿環境下において輝度劣化が大きいとされる緑色変換の蛍光体材料をそれぞれ用いた。この蛍光体含有樹脂を、85℃90%RHの高温高湿環境下に放置して、経過時間ごとに発光輝度(初期値を1とする)を測定した。また、この実施例の比較例として、成形済みのポリエチレンテレフタレートの表面に、スクリーン印刷法を用いて蛍光体を塗布したサンプルを作製し、実施例と同様、発光輝度の経時的変化を調べた。但し、実施例と比較例とにおいて、使用する蛍光体は同一材料とし、かつ同量とした。
【0026】
図3に示したように、樹脂材料Aに蛍光体Bを混練して成形した実施例では、成形済みの樹脂部材に蛍光体を塗布した比較例に比べ、高温高湿の環境下において、発光輝度の低下が小さくなっていることがわかる。これは、高温高湿の環境下において、実施例における蛍光体Bの劣化が抑制されていることを示している。また、経時的な劣化も少なく、長時間の使用による輝度変動や色度変動を抑制し得ることもわかる。
【0027】
(変形例1)
図4は、上記第1の実施の形態の変形例(変形例1)に係る発光装置1Bの断面構造を模式的に表すものである。発光装置1は、上記第1の実施の形態の発光装置1Bと同様、発光素子としてのLEDチップ11を備え、このLEDチップ11がワイヤボンド13により陽極フレーム12Aおよび陰極フレーム12Bに電気的に接続されたものである。但し、本変形例では、LEDチップ11の直上に蛍光体含有板10B(色変換部材)が配設されており、全体が外装キャップ14によって封止されている。
【0028】
蛍光体含有板10Bは、外装キャップ14の内側において、LEDチップ11の直上にLEDチップ11から離隔して配設された平板状の部材である。この蛍光体含有板10Bは、上記第1の実施の形態と同様、主原料を樹脂材料Aとすると共に、蛍光体Bを分散した状態で含有したものである。このような蛍光体含有板10Bについても、上記第1の実施の形態の蛍光体含有キャップ10Aと同様の成形法を用いて作製することが可能である。但し、本変形例のように平板状を成形する際には、上述した1次加工工程において、押し出し成形法やカレンダー成形法を用いることが望ましい。以下、押し出し成形法およびカレンダー成形法を用いる場合について説明する。
【0029】
図5は、押し出し成形機120の概略構成を模式的に表すものである。押し出し成形機120は、ホッパー121、シリンダ122、加熱ヒータ123、スクリュー124、冷却部125、引き取り部126および切断部127を備えている。このような押し出し成形機120を用いて成形する場合には、ホッパー121に樹脂材料Aおよび蛍光体Bを混練して投入することにより、シリンダ122内で樹脂材料Aと蛍光体Bとの混和物が流動状態となる。この混和物が、冷却部125、引き取り部126および切断部127を経ることにより、所望の型形状に押し出されて成形される。これにより、蛍光体Bを含有してなる蛍光体含有キャップ10Aを得る。
【0030】
図6は、カレンダー成形機130の概略構成を模式的に表すものである。カレンダー成形機130は、ホッパー131、押し出し機132、混練ロール133、カレンダーロール134、冷却部135および巻き取り部136を備えている。このようなカレンダー成形機を用いて成形する場合には、ホッパー131に樹脂材料Aおよび蛍光体Bを混練して投入することにより、押し出し機132において樹脂材料Aおよび蛍光体Bの混和物を形成し、この混和物をカレンダーロール134を通すようにする。あるいは、混練ロール133において、樹脂材料Aおよび蛍光体Bの混和物を形成したのち、カレンダーロール134を通してもよい。カレンダーロール134を通過した混和物は、冷却部135および巻き取り部136を経て、所望の形状に成形される。これにより、蛍光体Bを含有してなる蛍光体含有キャップ10Aを得る。
【0031】
このように、蛍光体Bを含有させた蛍光体含有板10Bを、外装キャップ14の内側に配設してもよい。すなわち、LEDチップ11が外装キャップ14により封止された発光装置1Bにおいて、上記第1の実施の形態のように蛍光体Bを含有する樹脂部材は、外装キャップ部分(蛍光体含キャップ10A)に限られない。本変形例の発光装置1Bのような構成であっても、上記第1の実施の形態の発光装置1Aと同等の効果を得ることができる。また、本変形例のような平板状の部材に蛍光体を含有させた場合、上記第1の実施の形態のようなドーム状の部材に蛍光体を含有させる場合に比べ、LED自体の輝度むらに起因する色むらが生じにくくなる。
【0032】
<第2の実施の形態>
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る表示装置2の断面構成を表す模式図である。表示装置2は、例えば液晶ディスプレイであり、表示パネル20とバックライトとしての発光装置1Cとを備えている。これらの表示パネル20と発光装置1Cとの間には、発光装置1Cの側から順に、拡散板23、拡散フィルム24、レンズフィルム25および反射型偏光フィルム26が設けられている。
【0033】
表示パネル20は、例えば、TFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)素子や各種駆動回路および画素電極等が形成されたTFT基板と、カラーフィルタや対向電極等が形成された対向基板との間に液晶層(いずれも図示せず)を封止してなるものである。この表示パネル4の光入射側および光出射側には、それぞれ偏光板(図示せず)が互いに偏光軸が直交するように貼り合わされている。
【0034】
拡散板23および拡散フィルム24は、入射光を拡散して強度分布を均一化するものである。レンズフィルム25は、例えばプリズム状(三角柱状)の突起が同一面内に複数並列したものであり、入射光を例えば正面方向に集光する機能を有する。反射型偏光フィルム26は、一方の偏光を透過させ、他方の偏光を下方(発光装置1Cの側)に反射させて再利用に供するものであり、光利用効率を高めるために設けられている。
【0035】
発光装置1Cは、基板21上に複数のLED22を配置してなるものであり、これら複数のLED22の直上に、その全面に対向するように蛍光体含有シート10Cが設けられている。LED22は、例えば青色発光ダイオードから構成されている。蛍光体含有シート10Cは、上記第1の実施の形態の蛍光体含有キャップ10Aと同様、主原料を樹脂材料Aとすると共に、蛍光体Bを分散した状態で含有したものである。但し、本実施の形態では、蛍光体含有シート10Cは、シート状に成形されている。このような蛍光体含有シート10Cについても、上記第1の実施の形態において挙げたような各種成形法を用いて作製することが可能である。但し、本実施の形態においても、上記変形例1と同様、上述した1次加工工程において、押し出し成形法やカレンダー成形法を用いることが望ましい。
【0036】
この表示装置1では、複数のLED22から発せられた青色光が、蛍光体含有シート10Cに入射すると、入射した青色光の一部は、蛍光体含有シート10C内に分散している蛍光体Bを通過する。これにより、上記第1の実施の形態と同様、蛍光体含有シート10Cを色変換されずにそのまま通過した青色光と、蛍光体Bによって色変換された色光との混色により、例えば白色光が上方へ出射する。発光装置1Cから出射された白色光は、拡散板23、拡散フィルム24により拡散されたのち、レンズフィルム25により集光され、反射型偏光フィルム26を通過して表示パネル20を照射する。この照射光が、表示パネル20において画像データに基づいて変調されることにより、画像表示が行われる。このように、本実施の形態の発光装置1Cにおいても、蛍光体Bを含有する蛍光体含有シート10Cを設けることにより、蛍光体Bの劣化を抑制して、発光輝度や色度の劣化を抑制することができる。
【0037】
(変形例2)
図8は、上記第2の実施の形態の変形例(変形例2)に係る表示装置の断面構造を模式的に表すものである。この表示装置では、上記第2の実施の形態の表示装置1における拡散板23と拡散フィルム24との間に、蛍光体含有シート10Cを配設したものである。上記第2の実施の形態では、基板21およびLED22の直上に蛍光体含有シート10Cを設けた場合について説明したが、蛍光体含有シート10Cの配置場所はこれに限定されない。本変形例のように、拡散板23と拡散フィルム24との間に設けられていてもよいし、拡散フィルム24とレンズフィルム25との間に設けられていてもよい。なお、蛍光体含有シート10Cは、反射型偏光フィルム26よりも下方であれば、光学的に大きな影響は生じないため、何処に配置するようにしてもよい。
【0038】
(変形例3)
図9は、上記第2の実施の形態の変形例(変形例3)に係る表示装置の断面構造を模式的に表すものである。この表示装置では、複数のLED22と拡散フィルム24との間に、蛍光体含有拡散板10Dが設けられている。蛍光体含有拡散板10Dは、主原料を樹脂材料Aとする拡散板に蛍光体Bを含有させたものであり、光拡散機能と色変換機能との双方を兼ね備えている。このような蛍光体含有拡散板10Dを成形する際には、上記第1の実施の形態で挙げた各種成形法を用いて作製することが可能であるが、望ましくは押し出し成形法や射出成形法を用いるようにする。
【0039】
この蛍光体含有拡散板10Dのように、蛍光体Bを含有させる樹脂部材は、例えば光拡散機能など、他の光学機能を有していてもよい。これにより、上記第2の実施の形態と同等の効果を得ることができると共に、光学機能層を積層してなる表示装置において、部品点数を減らすことが可能となる。なお、本変形例では、拡散板に蛍光体Bを含有させることにより光拡散機能を有する蛍光体含有拡散板10Dを例に挙げて説明したが、これに限定されず、レンズフィルムに蛍光体Bを含有させるようにしてもよい。すなわち、集光機能を有する蛍光体含有レンズフィルムとしてもよい。また、複数のLED22上に、上記のような光拡散機能を有する蛍光体含有拡散板や集光機能を有する蛍光体含有レンズフィルムを設けたものを発光装置として用いるようにしてもよい。
【0040】
<第3の実施の形態>
図10(A)は、本発明の第3の実施の形態に係る発光装置1Dの断面構造を模式的に表すものである。発光装置1Dは、例えば液晶ディスプレイ等のバックライトとして用いられるものである。この発光装置1Dは、導光板31の側面にLED30が配設されたものであり、LED30から発せられた光を、導光板31内を全反射により伝搬させたのちに上方に取り出すことによって面発光を行うものである。この導光板31の上面(光出射面)上には、上記第2の実施の形態で説明した蛍光体含有シート10Cが設けられている。LEDは、例えば青色発光ダイオードにより構成されている。
【0041】
導光板31の底面(光出射面に対向する面)には、光取り出し用の加工として、例えば複数の溝31aが形成されている。この溝31aにより、導光板31中を伝搬する光は、その全反射条件が崩され(臨界角未満となり)、導光板31の上方から出射するようになっている。
【0042】
本実施の形態では、LED30から発せられた青色光が導光板31の内部へ入射すると、この青色光は、導光板31内を全反射により伝搬したのち、溝31aによって導光板31の上方へ出射する。導光板31を出射した青色光は、蛍光体含有シート10Cに入射すると、この蛍光体含有シート10Cに含有された蛍光体Bによって、その一部が色変換される。これにより、蛍光体含有シート10Cを色変換されずにそのまま通過した青色光と、蛍光体Bによって色変換された色光との混色により、例えば白色光が上方へ出射する。このように、蛍光体Bを含有した蛍光体含有シート10Cを導光板31の光出射側に設けるようにしてもよい。このような場合であっても、蛍光体Bの劣化抑制により、発光輝度や色度の劣化を抑制することが可能となる。
【0043】
また、導光板31における光取り出し加工は、上記のような溝31aに限定されない。例えば、図10(B)に示したように、その底面に複数のドット32aが印刷された導光板32を用いるようにしてもよい。
【0044】
(変形例4)
図11(A)は、上記第3の実施の形態の変形例(変形例4)に係る発光装置1Eの断面構造を模式的に表すものである。本変形例では、上記第3の実施の形態と同様、導光板31の側面にLED30が配設されており、導光板31の底面には複数の溝31aが形成されている。但し、本変形例では、導光板31の底面側に蛍光体含有シート10Cが設けられた構成となっている。本変形例では、溝31aによって全反射条件が崩される際に、青色光が蛍光体含有シート10Cに含有された蛍光体Bを通過すると、色変換がなされ、導光板31の上方へ出射される。よって、導光板31の上方からは混色により白色光が取り出される。
【0045】
このように、蛍光体含有シート10Cは、導光板31の底面に設けるようにしてもよい。この場合であっても、上記第3の実施の形態と同等の効果を得ることができる。なお、本変形例においても、光取り出し加工としては、溝31aに限定されず、図11(B)に示したように、導光板32の底面にドット32aを印刷した構成であってもよい。
【0046】
(変形例5)
図12(A)は、上記第3の実施の形態の変形例(変形例5)に係る発光装置1Fの断面構造を模式的に表すものである。本変形例では、上記第3の実施の形態と同様、導光板31の側面にLED30が配設されており、導光板31の底面には複数の溝31aが形成されている。但し、本変形例では、導光板31の光入射面(LED30が配設されている面)に、蛍光体含有シート10Cが設けられた構成となっている。本変形例では、LED30から発せられた青色光の一部は、導光板31内に入射する前に色変換される。このようにして色変換がなされた色光と青色光とが、導光板31内を伝搬したのち、溝31aによって導光板31の上方へ出射される。よって、導光板31の上方から、混色により白色光が取り出される。
【0047】
このように、蛍光体含有シート10Cは、導光板31の光入射面に設けるようにしてもよい。この場合であっても、上記第3の実施の形態と同等の効果を得ることができる。なお、本変形例においても、光取り出し加工としては、溝31aに限定されず、図12(B)に示したように、導光板32の底面にドット32aを印刷した構成であってもよい。
【0048】
(変形例6)
図13(A)は、上記第3の実施の形態の変形例(変形例6)に係る発光装置1Gの断面構造を模式的に表すものである。本変形例では、上記第3の実施の形態と同様、側面にLED30を配設してなる導光板を備えたものである。但し、本変形例では、この導光板として、蛍光体含有導光板10Eを用いている。この蛍光体含有導光板10Eは、主原料を樹脂材料Aとすると共に蛍光体Bを含有してなる導光板であり、その底面に複数の溝10Eaが形成されたものである。このような蛍光体含有導光板10Eを成形する際には、上記第1の実施の形態で挙げた各種成形法を用いて作製することが可能であるが、望ましくはカレンダー成形法、押し出し成形法および積層板成形法を用いるようにする。
【0049】
本変形例では、LED30から発せられた青色光が蛍光体含有導光板10Eに入射すると、この青色光は蛍光体含有導光板10E内を伝搬したのち、溝10Eaにおいて全反射条件を崩され、これにより蛍光体含有導光板10Eの上方へ出射する。この蛍光体含有導光板10E内を通過する過程において、青色光の一部が蛍光体Bによって色変換される。よって、蛍光体含有導光板10Eの上方からは混色により白色光が取り出される。
【0050】
この蛍光体含有導光板10Eのように、導光板自体に蛍光体Bを含有させた構成としてもよく、この場合であっても、上記第3の実施の形態と同等の効果を得ることができる。また、本変形例においても、光取り出し加工としては、溝10Eaに限定されず、図13(B)に示したように、蛍光体含有導光板10Fの底面にドット10Faを印刷した構成であってもよい。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、LEDとして青色発光ダイオードを用いた構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、比較的短い波長領域の色光を発する光源、例えば近紫外発光ダイオードを用いるようにしてもよい。この場合、蛍光体Bとしては、緑色変換もしくは黄色変換の蛍光体材料として、(Ca,Sr,Ba)2SiO4:Eu2+、BAM:Eu2+,Mn2+およびα−SiAlON:Eu2+などを用いることができる。また、赤色変換の蛍光体材料として、Y22S:Eu3+、La22S:Eu3+、(Ca,Sr,Ba)2Si58:Eu2+、CaAlSiN3:Eu2+、LiEuW28、Ca(Eu,La)4Si313、Eu229系、(La,Eu)2312、(Ca,Sr,Ba)3MgSi28:Eu2+,Mn2+、CaTiO3:Pr3+,Bi3+などを用いることができる。また、青色変換の蛍光体材料として、BAM:Eu2+、(Ca,Sr,Ba)5(PO43Cl:Eu2+などを用いることができる。但し、発光効率や耐候性の観点からは、青色発光ダイオードを用いることが好ましい。
【0052】
また、上記実施の形態では、樹脂材料Aとして熱可塑性樹脂を用い、加熱により軟化させたのち、冷却することにより所望の形状となるように固化させる手法を例に挙げて説明したが、この熱可塑性樹脂に限らず、熱硬化性樹脂を用いるようにしてもよい。但し、樹脂材料Aとして熱硬化性樹脂を用いる場合には、例えば加熱金型を用いて加熱することによって、所望の形状となるように固化すればよい。
【0053】
更に、上記実施の形態では、本発明の表示装置として液晶ディスプレイを用いた構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、他の表示装置にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1A〜1G…発光装置、2…表示装置、10A…蛍光体含有キャップ、10B…蛍光体含有部材、10C…蛍光体含有シート、10D…蛍光体含有拡散板、10E,10F…蛍光体含有導光板、11…LEDチップ、12A…陽極フレーム、12B…陰極フレーム、13…ワイヤボンド、14…外装キャップ、20…表示パネル、21…基板、22,30…LED、23…拡散板、24…拡散フィルム、25…レンズフィルム、26…反射型偏光フィルム、31,32…導光板、110…射出成形機、120…押し出し成形機、130…カレンダー成形機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料を成形する工程を含み、
前記工程において、前記樹脂材料に一の色光を他の色光に変換する蛍光体を混練することにより、前記樹脂材料と前記蛍光体とを一体的に成形する
色変換部材の製造方法。
【請求項2】
前記工程は、
前記樹脂材料と前記蛍光体とを混練したのち、前記樹脂材料を軟化させることにより、前記樹脂材料と前記蛍光体との混和物を形成するステップと、
前記混和物における樹脂材料を固化させることにより、前記混和物を成形するステップと
を含む請求項1に記載の色変換部材の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂材料をドーム状に成形する
請求項1または2に記載の色変換部材の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂材料を射出成形法を用いて成形する
請求項3に記載の色変換部材の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂材料を平板状またはシート状に成形する
請求項1または2に記載の色変換部材の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂材料を、カレンダー成形法または押し出し成形法を用いて成形する
請求項5に記載の色変換部材の製造方法。
【請求項7】
一の色光を他の色光に変換する蛍光体を含有してなる
色変換部材。
【請求項8】
光源部と、
前記光源部から発せられた一の色光を他の色光に変換する蛍光体を含有してなる色変換部材と
を備えた発光装置。
【請求項9】
前記光源部は一の発光素子から構成され、
前記色変換部材は、前記発光素子を封止する外装部材として設けられている
請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記光源部は一の発光素子から構成され、
前記色変換部材は、前記発光素子を封止する外装部材の内側に設けられている
請求項8に記載の発光装置。
【請求項11】
前記光源部は複数の発光素子が同一面上に配設されてなり、
前記色変換部材は、前記光源部の光出射側に前記光源部の全面に対向して設けられている
請求項8に記載の発光装置。
【請求項12】
前記色変換部材は、光拡散機能または集光機能を有する
請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記光源部は、発光素子と、この発光素子から発せられた光を伝播させて面発光を行う導光板とを有する
請求項8に記載の発光装置。
【請求項14】
前記色変換部材は、前記導光板の光出射面上に設けられている
請求項13に記載の発光装置。
【請求項15】
前記色変換部材は、前記導光板の光出射面に対向する底面に設けられている
請求項13に記載の発光装置。
【請求項16】
前記色変換部材は、前記導光板の前記発光素子からの光入射面に設けられている
請求項13に記載の発光装置。
【請求項17】
前記色変換部材が前記導光板を兼ねている
請求項13に記載の発光装置。
【請求項18】
光源部と、
前記光源部から発せられた一の色光を他の色光に変換する蛍光体を含有してなる色変換部材と、
前記色変換部材を通過した光を用いて画像を表示する表示パネルと
を備えた表示装置。
【請求項19】
前記色変換部材は、光拡散機能または集光機能を有する
請求項18に記載の表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−171342(P2010−171342A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14627(P2009−14627)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】